(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6952322
(24)【登録日】2021年9月30日
(45)【発行日】2021年10月20日
(54)【発明の名称】水性エマルジョン型床材施工用接着剤用固化剤
(51)【国際特許分類】
B01J 20/12 20060101AFI20211011BHJP
C08J 11/02 20060101ALI20211011BHJP
C08J 11/06 20060101ALI20211011BHJP
B01J 20/14 20060101ALI20211011BHJP
B01J 20/18 20060101ALI20211011BHJP
C09K 3/00 20060101ALI20211011BHJP
【FI】
B01J20/12 A
C08J11/02ZAB
C08J11/06
B01J20/14
B01J20/18 B
C09K3/00 103K
【請求項の数】1
【全頁数】5
(21)【出願番号】特願2017-41453(P2017-41453)
(22)【出願日】2017年3月6日
(65)【公開番号】特開2018-143952(P2018-143952A)
(43)【公開日】2018年9月20日
【審査請求日】2019年12月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】591012738
【氏名又は名称】ヤヨイ化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101432
【弁理士】
【氏名又は名称】花村 太
(72)【発明者】
【氏名】二口 真
(72)【発明者】
【氏名】関根 啓次
(72)【発明者】
【氏名】橋本 健一
(72)【発明者】
【氏名】加野 広己
【審査官】
瀧 恭子
(56)【参考文献】
【文献】
特開平11−000504(JP,A)
【文献】
特開2009−041006(JP,A)
【文献】
国際公開第2010/001710(WO,A1)
【文献】
特開2004−167327(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 20/00−20/28、20/30−20/34
B29B 17/00−17/04
C08J 11/00−11/28
B01D 21/01
C02F 1/52−1/56
C09K 3/00、3/20−3/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エマルジョン型接着剤成分中のエマルジョン成分の分散を阻害するコロイド粒子分散阻害剤と、
吸液性を有する吸液剤とを備え、
前記コロイド粒子分散阻害剤と吸液剤とが、無機系のものであり、
前記コロイド粒子分散阻害剤を5重量部〜50重量部とし、
前記吸液剤は、前記コロイド粒子分散阻害剤と合わせて100重量部となるように、95重量部〜50重量部とし、
前記コロイド粒子分散阻害剤が、硫酸アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、ポリ硫酸第二鉄から選択されるものであり、
前記吸液剤が、セピオライト、アタパルジャイト、珪藻土、活性白土から選択されるものであることを特徴とするエマルジョン型床材施工用接着剤用固化剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不要となった床用接着剤等の水性エマルジョン型接着剤の残存物を固化して廃棄する場合に用いる固化剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
内装施工を行う接着剤については、有機溶剤を主溶媒とする接着剤ではなく、水を主溶媒とする水性系の接着剤を用いることが主流となっている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、床材施工用の接着剤としての床用接着剤は、大型のものは、プラスチック容器、内袋付の段ボール容器、金属容器等に入れた状態(荷姿)で製品出荷している。また、多くの内装工事業者は、新築やリフォームの際に、床用接着剤を使用した後に、工事現場に設置された廃材ラックにこの容器を廃棄していた。しかしながら、近年では、廃材ラックに廃棄される廃材についても、厳密な分別が求められるようになった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−246510号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
もし、容器内に水性系の接着剤が残存したまま廃材ラックに廃棄された場合には、廃材ラックから水性系の接着剤が流出して、設置場所等を汚す弊害が充分に考えられる。また、容器から水性系の接着剤を掻き出すには大きな手間が必要となり、掻き出した接着剤の廃棄自体が難しい。更に、容器を水洗いした場合でも、廃液が出るため、これを一般的な排水とすることができない状況もあった。
【0006】
本発明は、水を主溶媒とした水性系の床材施工用の接着剤を廃棄するに際して、固化させることができるエマルジョン型接着剤用固化剤を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載された発明に係るエマルジョン型床材施工用接着剤用固化剤は、エマルジョン型接着剤成分中のエマルジョン成分の分散を阻害するコロイド粒子分散阻害剤と、
吸液性を有する吸液剤とを備え、
前記コロイド粒子分散阻害剤と吸液剤とが、無機系のものであり、
前記コロイド粒子分散阻害剤を5重量部〜50重量部とし、
前記吸液剤は、前記コロイド粒子分散阻害剤と合わせて100重量部となるように、95重量部〜50重量部とし、
前記コロイド粒子分散阻害剤が、
硫酸アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、ポリ硫酸第二鉄から選択されるものであり、
前記吸液剤が、セピオライト、アタパルジャイト、珪藻土、活性白土から選択されるものであることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、水を主溶媒とする水性系のエマルジョン型接着剤を廃棄するに際して、固化させることができる固化剤を得ることができるという効果がある。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明においては、床用接着剤等のエマルジョン型接着剤成分中のエマルジョン成分の分散を阻害するコロイド粒子分散阻害剤と、吸液性を有する吸液剤とを備えることにより、有機溶媒を含まない水性系のエマルジョン型接着剤を廃棄するに際して、固化させることができる。尚、水性床用接着剤としては、通常、ゴム系ラテックス型接着剤とアクリル樹脂系エマルション型接着剤という呼称が使われており、エマルション粒子がゴムの場合に「ラテックス」という呼称が使われており、本発明におけるエマルジョン型接着剤としては、これら両者を指す。
【0013】
即ち、床用接着剤の主流となっているエマルジョン型接着剤は、接着成分が小滴状に他の液体の中に分散している。この小滴状に分散している液体を分散相、分散させているほうの液体を分散媒というが、乳濁液は放置すれば界面張力によりそれぞれの液体同士が凝集して2液層に分離するが、乳化剤と呼ばれる界面活性剤 (2液の界面に吸着する) を加えることにより安定に保存することができ、これをコロイド分散系という。
【0014】
このコロイド分散系は、小滴状の接着剤粒子が荷電しており、この荷電状態を破棄することで分散していた接着粒子が凝集することとなる。このため、エマルジョン型接着剤成分中のエマルジョン成分の分散を阻害するコロイド粒子分散阻害剤によって、接着剤粒子の帯電を破棄させることにより、分散状態がなくなり、凝集する。接着剤粒子が凝集するため、他の液状成分と一緒に吸液することにより、固化される。固化されたエマルジョン型接着剤は、産業廃棄物として廃棄することができる。
【0015】
特に、本発明のコロイド粒子分散阻害剤及び吸液剤は、無機系のものを用いる。これは、ポリアクリル酸ナトリウム系に代表される高吸水性樹脂(有機系吸液剤)は、コロイド粒子分散阻害剤として使用する多価の金属イオンを持つ無機塩の存在下では極端に吸液量が低下するためでもある。加えて、価格が無機系のものが圧倒的に安価であるからである。
【0016】
本発明の好ましいコロイド粒子分散阻害剤としては、床用接着剤成分中のエマルジョン成分の分散を阻害するものであればよく、多価の金属イオンを有するものが挙げられる。具体的には、コロイド粒子分散阻害剤が、
硫酸アルミニウム、ポリ塩化アルミニウムを始めとする無機アルミ塩、及び/又は、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウムを始めとする多価金属塩
、ポリ硫酸第二鉄から選択される。
【0017】
コロイド粒子分散阻害剤としての硫酸アルミニウムは、別名、硫酸バンドとも呼ばれる無機系凝集剤で、同様にポリ塩化アルミニウム(PAC)、ポリ硫酸第二鉄も、床接着剤接着剤の主成分であるゴム系(SBR)ラテックスやアクリル樹脂系エマルションの分散状態を凝集させる効果が高い。
【0018】
また、同じくコロイド粒子分散阻害剤としての塩化カルシウムは、2価の金属イオンを持つ無機塩で、同様なものに塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム等があり、凝集剤として効果がある。
【0019】
本発明の好ましい吸液剤としては、エマルジョン成分が凝集した接着成分と、その他の分散媒の成分とを吸液させ、固化させる無機系のものであればよい。具体的には、セピオライト、ゼオライト、アタパルジャイト、珪藻土、活性白土、ベントナイト、タルクを始めとする吸液量が高い無機鉱物であるものが選択される。
【0020】
本発明のエマルジョン型接着剤用固化剤としては、コロイド粒子分散阻害剤と吸液剤とを予め混合した一つの混合剤としてもよく、コロイド粒子分散阻害剤と吸液剤とを別々の製剤としてセットとして販売してもよい。一つの混合剤としては、コロイド粒子分散阻害剤を5重量部〜50重量部とし、好ましくは、15重量部〜40重量部とする。また、吸液剤は、コロイド粒子分散阻害剤と合わせて100重量部となるように、95重量部〜50重量部、好ましくは、85重量部〜60重量部とする。
【0021】
また、コロイド粒子分散阻害剤と吸液剤とを別々の製剤としてセットとして販売する場合には、先ず、コロイド粒子分散阻害剤を固化するエマルジョン型接着剤に添加して混合し、コロイド状態が破棄された後に吸液剤を添加しつつ混合し、確実の固化するように吸液剤の投入を終了させればよい。
【実施例】
【0022】
本発明のエマルジョン型接着剤用固化剤の一実施例は次の表1に示す通りである。表1に示した固化剤を床用接着剤等のエマルジョン型接着剤に5〜25%程度添加することで、ペースト状のエマルジョン型接着剤を固化することが確認された。
【0023】
【表1】
【0024】
コロイド粒子分散阻害剤によって、エマルジョン型接着剤特有の粘着性を消すことができ、吸液剤により、固化物としてエマルジョン型接着剤の容器から掻き出しやすくなった。掻き出した固化物については、ペースト(液体)ではなく、固化物なので、廃棄処理しやすくなることが確認された。
【0025】
このエマルジョン型接着剤用固化剤によって、床用接着剤等のエマルジョン型接着剤の容器から固化物として内容物を取り出すことが可能となり、新築工事やリフォーム工事の際に廃材ラックに廃棄することができ、廃材ラックから水性系の接着剤が流出して、設置場所等を汚す弊害もなくなる。
【0026】
また、内容物が固化物として取り出せるため、容器(廃プラ・金属)のリサイクルも容易となる。
【産業上の利用可能性】
【0027】
完全に使用できずに余ったペースト状のエマルジョン型接着剤の処理に対しても、本発明の固化剤を添加して混合することにより、固化物とすることができ、廃棄処理が容易となる。