(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
車両の開口部の縁に取り付けられる取り付け部を外周縁部に有するとともに、前記取り付け部で取り付けた状態のままで開閉可能にする開閉部を有した車両用防虫ネットであって、
前記開閉部における下端部に、下端から縦に延びて前記開閉部を閉じたときに互いに当接する線状の当接縁が形成され、
これら当接縁の端面に、当該車両用防虫ネットの平面方向での当接で互いに係合し合う面ファスナを備え、
前記開閉部における前記当接縁より上に、スライドファスナを備えた
車両用防虫ネット。
【背景技術】
【0002】
リヤハッチ(リヤゲート)用の防虫ネットとしては、下記特許文献1に開示のものがある。
【0003】
この防虫ネットは、リヤハッチが上方へ開いた状態で開口部を覆う防虫ネット本体を有し、防虫ネット本体の全周に、固定手段としての複数の磁性体が配置されている。また、防虫ネットの中央部には、上端付近から下端まで、出入口用のスリットが形成され、このスリットはスライドファスナで開閉する構造である。
【0004】
下記特許文献2には車両用網戸が開示されている。この網戸は網の全周に外枠を備えたものであり、この外枠は、断面U字状の部分を有し、この部分が密閉器具とボディーの間に挟み付けられて固定される。この網戸においても出入りのための開閉部を備えることが開示され、開閉部にはチャックが設けられている。
【0005】
これらの構成では車両の開口に取り付けた状態において防虫の効果を得られるものの、使いにくい面があった。
【0006】
たとえば、出入りのために開閉を行う場合、スライドファスナのスライダを下端まで移動させなければならず、車内側からの開閉作業に際しては、体をかがめて手を足元まで下ろす必要がある。また、車両に対する取り付けに関していえば、特許文献2のようにウェザーストリップの下に挟み込むことは、特許文献1の磁性体による貼り付けと比べて、隙間なく取り付けて防虫効果を高められる点でよいが、車内に水が入ることがあった。しかも、挟み込む部分は枠であるため、取り付け作業にあたってはウェザーストリップの全体を外す必要があり面倒なうえに、非使用時に扱いにくい。
【発明を実施するための形態】
【0013】
この発明を実施するための一形態を、以下図面を用いて説明する。
図1に、車両用防虫ネット11(以下、「防虫ネット」という)の表面図を示す。「表面」とは、
図2に示したように車両51に取り付けたときに外側に位置する面である。これとは逆に「裏面」とは、車両51に取り付けたときに内側に位置する面をいう。
【0014】
この防虫ネット11は、取り付け状態である
図2に示したように、車両51のリヤゲート部分の開口部52に適用するのに適した略長方形状であり、略全体が防虫を可能とする目合いの柔軟な網地12で構成されている。防虫ネット11の形状は、取り付ける対象である開口部52の形状に合わせて適宜形成され、図示例のような左右対称形状でなくてもよい。また、特定の車種や開口部52のみに適用できる形状とするほか、複数車種や開口部52に共通で使用できる形状としてもよい。開口部52としてはリヤゲート部分のほかに、ワンボックス車両の横のスライドドア部分などもある。
【0015】
防虫ネット11は、車両51の開口部52の縁に取り付けられる取り付け部13を外周縁部に有するとともに、取り付け部13で取り付けた状態のままで開閉可能にする開閉部14を有している。
【0016】
取り付け部13は、防虫ネット11の裏面図である
図3に示したように、複数の板材15を外周縁に沿って離間配置して構成されている。板材15の配設に際して、板材15が防虫ネット11の外周縁から外に非突出な状態、つまり板材15が外周縁より内側に収まるように固定される。板材15は、
図4に示したように車両51のウェザーストリップ53より内側に位置するトリム54の下に挟み込み可能な厚さと大きさに設定され、変形可能でありながらも適宜の硬さを有するものである。板材15には、たとえば発泡ポリエチレンなどの合成樹脂製のものを使用するとよい。
【0017】
板材15は、防虫ネット11の上端縁と左右両側縁に備えられ、固定部位に応じて適宜幅で適宜長さに形成されており、防虫ネット11の上端部の縦断面図である
図5に示したように、縁布16と共に縫着により固定されている。縫着は、板材15の内側(防虫ネット11の外周縁と反対側)の端が網地12から浮き上がらないように縁まで縫って固定される。
【0018】
また板材15の固定は、防虫ネット11の裏面、つまり車両51に取り付けたときに内側に位置する面に行われる。このため、取り付け部13をトリム54の下に挟み込んだときには、板材15は
図4にしたように、板材15がトリム54側で、網地12が車体側に位置することになる。
【0019】
防虫ネット11の左右両側縁における板材15を取り付ける範囲は、下端部を除く位置としており、板材15を取り付けない下端部には、面ファスナの一方からなる取付け用面ファスナ17を備えている。この取付け用面ファスナ17は、車両51の対向部分の適宜位置や車両51に予め備えた面ファスナの相手部材に係合するものである。
【0020】
開閉部14は、
図6に示したように、大きく開放可能に構成されている。すなわち、開閉部14は、
図1〜
図3に示したように防虫ネット11を分断する切り込みで形成され、間隔をあけて2本並設されている。これら開閉部14は、必要に応じて大きくひらけるように、防虫ネット11の上端部から下端にかけて延びる縦長形状である。具体的には、2本の開閉部14は直線状であり、それらの間隔は人が出入りするのに十分な間隔に設定されており、平行である。
【0021】
つまり、このような開閉部14を有する防虫ネット11は、2本の開閉部14においてそれぞれ別々に開閉する開閉態様と、2本の開閉部14を同時に開いて開閉部14間の部分を上方に上げる開閉態様の2種類の開閉が可能である。
図6では後者の例を示している。
【0022】
なお、開閉部14は切り込みからなるものではなく、適宜幅開いた形状の開口部(図示せず)と、この開口部を覆って塞ぐ被覆部(図示せず)で構成することもできる。
【0023】
開閉部14は、閉じた状態を維持するため、閉止手段としてスライドファスナ18を備えている。スライドファスナ18は、表面側からでも裏面側からでも開閉操作できるようにスライダ18aの表裏両面に引手18bを備えている。
【0024】
スライドファスナ18を備える部分は、
図7にも示したように、開閉部14の下端部を除く部位である。開閉部14における下端部には、防虫ネット11の下端から縦に延びて開閉部14を閉じたときに互いに当接する線状の当接縁19が形成され、これら当接縁19に、
図8に示したように防虫ネット11の平面方向での当接で互いに係合し合う面ファスナ21a,21bを備えている。
【0025】
すなわち、開閉部14の下端部は面ファスナ21a,21bで係脱する部分であり、それより上方の部分はスライドファスナ18で係脱する部分である。当接縁19は、スライドファスナ18を有する部分と同様に直線状である。
【0026】
このような構成の開閉部14は、
図7、
図8に示したように、開閉部14における当接縁19を含む部分、つまりこの例では開閉部14の全体にスライドファスナ18を備え、当接縁19に相当する部位に、スライドファスナ18の務歯18cを覆う面ファスナ21a,21bを備えて構成する。面ファスナ21a,21bは、
図8に示したように横断面U字状に折り曲げた状態でスライドファスナ18に縫着される。つまり面ファスナ21a,21bは当接縁19の端面のほかにこれを挟む表面と裏面にも備えられる。
【0027】
相対向する一対の当接縁19のうちの一方の上端部には、
図7に示したように縁布16と同様の材料のテープからなる止め部材22が縫着されており、スライドファスナ18のスライダ18aの降下を積極的に阻止するようにしている。
【0028】
2本の開閉部14の間における下端部には、開閉部14間の部分を巻き上げた状態に保持することを可能にするカバーシート23が形成されている。カバーシート23は、網地12とは異なり、貫通した目を有しないシート状である。
【0029】
カバーシート23は、防虫ネット11の下端部の縦断面図である
図9に示したように、車両51に取り付けたときに内側、つまり裏側に位置する奥側シート部23aと、車両51に取り付けたときに外側、つまり表側に位置する手前側シート部23bを有する2重構造である。奥側シート部23aと手前側シート部23bの長さは、巻き上げた防虫ネット11、つまり防虫ネット11におけるカバーシート23より上の網地12部分を巻き上げたときにその部分を包み込める長さに形成されている。そして、奥側シート部23aと手前側シート部23bとの対比では、手前側シート部23bが奥側シート部23aよりも縦に長く形成され、手前側シート部23bの左右の両側縁に前述の当接縁19が形成されている。
【0030】
巻き上げ状態を保持可能にするため、
図5、
図9に示したように、奥側シート部23aの裏面と防虫ネット11の上端部の裏面、及び手前側シート部23bの表面と防虫ネット11の上端部の表面のそれぞれに、相互に係合し合う係合手段24a,24b,25a,25bを備えている。係合手段24a,24b,25a,25bとしては、図示したように面ファスナが好適である。面ファスナからなる係合手段24a,24b,25a,25bは、それぞれ左右方向に複数ずつ備えられる。
【0031】
カバーシート23における左右方向の中間位置であって奥側シート部23aと手前側シート部23bの間には、2本で一組の結束帯26が備えられている。この結束帯26はそれぞれ表面に、相互に係合する面ファスナ26a,26bを有している。
【0032】
以上のように構成された防虫ネット11は、次のように使用される。
【0033】
車両51に対する取り付けは、取り付け対象の開口部52のトリム54の下に、防虫ネット11を正しい向きにしてその取り付け部13を順に挟み込んで固定する。防虫ネット11の左右両側縁部の下端部は、取付け用面ファスナ17を用いて車体側に係合したり、車体の対応する部位に挟み込んだりして適宜固定される。
【0034】
このような取り付け状態においては、取り付け部13がトリム54の下に挟み込まれているので、ドアの開閉が可能である。防虫ネット11がスライドドア部分の開口部に取り付けられたものである場合には、スライドドアを閉じて、スライドドアの窓を開けての使用もできる。
【0035】
そして、防虫ネット11を通って出入りをする場合には、左右いずれか一方の開閉部14を開くか、左右双方の開閉部14を同時に開いて、防虫ネット11における開閉部14間の部分を上げる。
【0036】
一方の開閉部14を開いて出入りを行う場合には、スライドファスナ18のスライダ18aを上げて、下端部に位置する一対の当接縁19に力をかけて離反させる。左右双方の開閉部14を同時に開いて出入りを行う場合も同様に、スライドファスナ18のスライダ18aを上げて、下端部に位置する一対の当接縁19に力をかけて離反させる。開閉部14の下端部には当接縁19があるぶん、スライドファスナ18を開く操作に際して低くかがむ必要はない。
【0037】
開閉部14を閉じる場合には、スライダ18aを引き下げる。この場合も、開閉部14の下端部には当接縁19があるぶん、たとえ
車内側から閉じるときであっても、スライダ18aを引き下げる操作に際して低くかがむ必要はない。スライダ18aを引き下げた後は、あえて閉じようとしなくても、面ファスナ21a,21bを有する当接縁19同士は防虫ネット11の平面方向で自ずと接近して当接し、互いに係合し合い、開閉部14の下端部は閉止される。
【0038】
左右双方の開閉部14を同時に開いて、防虫ネット11における開閉部14間の部分を上げる態様には、
図10に示したように大きく2つの開放態様がある。ひとつは、防虫ネット11における開閉部14間の部分を半分開く開放態様(
図10の(b))であり、他の一つは、防虫ネット11における開閉部14間の部分を略全開する開放態様(
図10の(d))である。
【0039】
半分開く場合には、スライドファスナ18を開閉部14の縦方向半分くらいまで開けて(
図10の(a))、カバーシート23のうちの奥側シート部23aの係合手段24aを防虫ネット11の上端部の裏面の係合手段24bに係合する。これによって、開閉部14間の部分は下端部が上に留められた二つ折り状態になる(
図10の(b))。
【0040】
略全開とする場合には、スライドファスナ18部分の全体を開いて(
図10の(a))、半分開く場合と同様に、カバーシート23のうちの奥側シート部23aの係合手段24aを防虫ネット11の上端部の裏面の係合手段24bに係合し(
図10の(b))、つづいて、開閉部14間の垂れ下がっている部位をロール状に巻き上げて(
図10の(c))、覆いシートの手前側シート部23bの係合手段25aを防虫ネット11の上端部の表面に設けた係合手段25bに係合する。すると、
図10の(d)に示したように、開閉部14間の部位がカバーシート23で包み込まれた状態となり、大開口が得られる。
【0041】
また、防虫ネット11を使用しない、つまり開口部52に取り付けない場合には、
図11に示したように折りたたんで保管しておく。すなわち、左右両側の開閉部14において、それより外側の部分を内側に折り返したのち、上端部側から適宜の太さのロール状に巻いて、全体を棒状にする。このあと、カバーシート23の奥側シート部23aと手前側シート部23bの間に備えた結束帯26を用いて、ロール状に巻いた状態を保持する。
【0042】
このよう使用される防虫ネット11は、次のような使いよさを有する。
【0043】
すなわち、開閉部14における下端部に、面ファスナ21a,21bを有する当接縁19を備えているので、スライドファスナ18による開閉部14の開閉操作は、たとえ車両51の内部から行う場合であっても、足元まで下げる必要がない。つまり、体を窮屈にかがめずとも開閉操作ができるので、作業しやすい。
【0044】
しかも、当接縁19部分は線状、特に直線状に形成されており、当接し合う部分が線であって、この線の面ファスナ21a,21bで開閉する。このため、閉じるときにはあえて閉じようとしなくても防虫ネット11の平面方向での移動変形で半自動的に閉じることができ、開くときには離反方向に僅かに力かければ開くことができ、係合するにも外すにも大きな力は不要である。このため作業性が良い。それにもかかわらず当接縁19部分を閉じたときには虫の侵入を確実に防げる。
【0045】
また、面ファスナ21a,21bは当接縁19の端面のほかにこれを挟む表面と裏面にも備えられているので、
図11に示したようにして折りたたむときにも係合するので、作業しやすい。
【0046】
そして、当接縁19は、スライドファスナ18の務歯18cを面ファスナ21a,21bで覆って構成するので、スライドファスナ18で開閉する部分と、面ファスナ21a,21bで開閉する部分をまったく別の構成とするのではなく、スライドファスナ18を共通にして構成するので、製造が容易で、安価に行える。
【0047】
取り付け部13に関して、車両51のトリム54の下に挟み込み可能な複数の板材15を備えているので、ウェザーストリップ53を車体から外す必要はなく、取り付け作業が容易であるとともに、不測に水が入ることを回避できる。
【0048】
また板材15は、防虫ネット11の外周縁より内側に収めているので、車体との間に虫が入るような隙間ができないように外観も美麗に取り付けることが容易である。しかも、複数の板材15を備えた構成であるので、取り付けるときには必要な部分ごとに順に行える上に、必要ないときにはロール状に巻くこともできて、取扱いが容易である。
【0049】
そのうえ板材15は車両51に取り付けたときに内側に位置する裏面に備えているので、
図4に示したように板材15はトリム54に引っかかるように保持される。このため、強固な固定状態が得られる。
【0050】
開閉の態様に関して、開閉部14を縦に2本形成するとともに、下端部にカバーシート23を備えたので、前述のように二段階の開放など、多様な開閉の仕方の中から必要に応じて適宜選択できて、使いやすい。
【0051】
またカバーシート23は、網地のような貫通した穴を有しないので、
図11に示したように丸めて折りたたんだ時に、カバーシート23が網地12を保護する。つまり、網地12が汚れたり損傷したりすることを防止できる。このため保管が良好に行えるうえに、持ち運びも容易であって、取り扱い易い。
【0052】
さらに、カバーシート23の手前側シート部23bが奥側シート部23aよりも縦に長いので、開閉部14間の部分を上まで巻き上げるときに、操作性が良い。また使用時には、長い方の手前側シート部23bの両側縁が当接縁19であるため表裏の区別も付けやすくなり、適切な使用を促せる。
【0053】
以上の構成はこの発明を実施するための一形態であり、この発明は前述の構成のみに限定されるものではなく、その他の構成を採用することができる。
【0054】
たとえば、開閉部14の閉止手段はスライドファスナ18以外の面ファスナをはじめとする適宜の部材を採用できる。開閉部14の形状は前述のように全体が直線状であるほか、一部に曲線状の部分を有するものであってもよい。開閉部14は前述のように2本形成するほか、1本や3本などとすることもできる。
【0055】
また、カバーシート23は例えば網地や透明の樹脂シートなどで構成してもよい。カバーシート23に備える係合手段24a,24b,25a,25bについても、面ファスナのほか、例えばスナップなどの適宜の部材を使用することができる。