(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記押圧部材による前記反応容器の前記押圧位置が前記反応容器の前記他端側に到達したら,該押圧部材による前記反応容器の押圧を一旦解除し,再度,前記押圧部材により前記反応容器の前記一端側の押圧を開始して,押圧位置を前記一端側から前記他端側に向かって移動させる動作を繰り返すと共に,
前記押圧位置の移動に伴う前記光硬化型樹脂の排出分に対応する新たな光硬化型樹脂を,前記導入口を介して前記反応容器内に導入することを特徴とする請求項1又は2記載の光硬化型樹脂の重合方法。
前記光硬化型樹脂が紫外線硬化型樹脂であり,前記樹脂フィルムの全光線透過率が40%以上であることを特徴とする請求項6〜8いずれか1項記載の光硬化型樹脂重合用の反応容器。
前記光硬化型樹脂が,アクリル系の光硬化型樹脂であると共に,前記樹脂フィルムがガスバリア性を有することを特徴とする請求項6〜9いずれか1項記載の光硬化型樹脂重合用の反応容器。
前記樹脂フィルムが無延伸フィルム,又は二軸延伸フィルムと無延伸フィルムの積層構造であることを特徴とする請求項6〜11いずれか1項記載の光硬化型樹脂重合用の反応容器。
【背景技術】
【0003】
環境保全に対する社会の感覚が鋭敏化するに伴い,粘着剤や接着剤等の接合剤についても無溶剤であることの要求が高まりつつある。
【0004】
このような無溶剤型の粘着剤としては,エマルジョン型の粘着剤も提供されているが,エマルジョン型の粘着剤は一般に貼着性能が低く,また,耐水性に劣る等の欠点を有する。
【0005】
そのため,無溶剤型でありながら,耐水性,耐湿度性,耐熱性に優れる粘着剤として,光硬化型粘着剤が注目されている。
【0006】
光硬化型粘着剤は,主成分である光重合性モノマーに光重合開始剤や,必要に応じて添加剤が添加された液体状の光硬化型樹脂
前駆体〔この液体状の光硬化型樹脂
前駆体には,アクリルシロップのように光重合性モノマーの一部が重合してオリゴマーとなった粘性液体状のものも含む〕を原料とし,これらの液体状の光硬化型樹脂
前駆体に励起光を照射して,粘着剤として必要とされる粘度まで重合,硬化させることによって製造される。
【0007】
このような光硬化型粘着剤は,一般にバッチ式で製造され,アクリル系の光硬化型樹脂のように酸素によって重合が阻害される,所謂「酸素障害」が生じる光硬化型樹脂の重合では,酸素障害を回避するために内部を窒素置換した密閉式の反応槽内に前述した液体状の光硬化型樹脂を投入すると共に,この光硬化型樹脂に励起光を照射して光重合開始剤を励起させ,反応熱による温度上昇を冷却や新たなモノマー/オリゴマーの投入等によって制御しながら重合反応を行わせている。
【0008】
なお,前述したような光重合性モノマーを主成分とする光硬化型樹脂に対する光照射を行うものではないが,光硬化型樹脂を一部に含む材料,又は,光重合性モノマーと混合する前の重合開始剤の前駆体等の材料に対し,連続して光を照射する方法が提案されている。
【0009】
このような方法として,後掲の特許文献1には,
図7に示すように,細長い円筒状の光源130と,この光源130の外周を取り囲むように配置された透明なスパイラル状のガラス管110を設け,光硬化型樹脂を含む粒状ゲルと水性媒体との混合流体がスパイラル状のガラス管110を通過する際に光源130からの励起光を照射することで,前記混合流体中の粒状ゲルに含まれる光硬化型樹脂を硬化させることが提案されている(特許文献1の特許請求の範囲及び図面)。
【0010】
また,後掲の特許文献2には,
図8に示すように,溝210を備えた第1基板201と,この第1基板201に形成された溝210を覆うように,石英ガラスやライムソーダガラスなどの透明なガラスからなる第2基板202を前記第1基板201に接着すると共に,前記溝210の端部に連通する入口211と出口212をそれぞれ設け,入口211から出口212に至り前記溝内を移動するブレンステッド酸前駆体溶液に光源240からの光を照射することで,開始剤となるブレンステッド酸を生じさせた後,このブレンステッド酸が生じた溶液を前記出口212より排出させた後,カチオン重合性モノマー溶液と合流させて重合を開始させる構成を提案する(特許文献2[0020]〜[0024]欄,
図2,
図3)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
前述したバッチ式の重合方法では,光源より照射された励起光は,反応槽内に貯留されている光硬化型樹脂の表面から5000μm程度の深さまでしか到達せず,反応槽の内部までは届かない。
【0013】
そのため,反応槽内に貯留されている光硬化型樹脂の全体に励起光を照射して重合反応を行わせるためには,光硬化型樹脂を攪拌しながら励起光を照射する必要があり,重合に長時間を要すると共に,光硬化型樹脂を攪拌するための装置構成が必要となる。
【0014】
このように,励起光が光硬化型樹脂の内部にまで到達し難いという問題を解消する方法として,光源を反応槽内に貯留されている光硬化型樹脂内に浸漬配置することも考えられる。
【0015】
しかし,この場合には,光源の保護カバー表面に光硬化型樹脂が反応付着することで励起光が保護カバーを透過できなくなることから,保護カバーの表面に重合付着した光硬化型樹脂を掻き取るためのスクレーパーを設ける必要がある等,装置構成は更に複雑となる。
【0016】
しかも,前述したバッチ式の構成では,酸素障害を回避するために,密閉式の反応槽を使用することから,適切に冷却が行われない場合,反応熱による重合反応の促進が更なる発熱と反応の促進を連鎖的に引き起こし,樹脂材料の温度の制御ができなくなる「熱暴走」が生じ,この熱暴走によって反応槽の内部温度が異常上昇すれば,反応槽が爆発する危険性もある。
【0017】
また,バッチ式の重合反応では,酸素障害を回避するために反応槽内の空気を窒素置換する必要があり,封入用の窒素を購入するための費用がランニングコストを高めると共に,窒素置換を行うための装置構成と工程管理が必要で,これらのコストが製品価格を高めることとなると共に,窒素が作業者の呼吸に悪影響を与えるおそれもある。
【0018】
これに対し,特許文献1及び特許文献2として紹介したように,ガラス等の透光性材料内に形成された流路110,210内を通過する材料に対し光を照射するようにした構成では,酸素を排除した状態で材料に対し光の照射を行うことができるだけでなく,順次導入される材料に対し連続して励起光を照射することができるため,バッチ式の処理に比較して処理能力の増大が期待できる。
【0019】
しかし,特許文献1及び特許文献2で示したような構造の流路110,210を通過する材料に対する励起光の照射は,特許文献1や特許文献2で対象としている材料に対しては行うことができたとしても,本願で励起光の照射対象とするような,光重合性モノマーを主成分とし,光重合開始剤を含んだ液体状の光硬化型樹脂に対する励起光の照射には使用できない。
【0020】
すなわち,特許文献1のように光硬化性樹脂を含む粒状ゲルと水性媒体との混合流体を励起光の照射対象とする場合,励起光の照射によって粒状ゲルに含まれる光硬化型樹脂が重合して粒状ゲルが硬化したとしても,この粒状ゲルは水性媒体内に存在しているため,流路の内壁に対する樹脂の重合付着は生じ難く,また,硬化するのは粒状ゲルのみであって水性媒体は変化しないため,混合流体はその流動性を失わないことから,混合流体の粘度増等に伴う流路の目詰まり等が生じることもない。
【0021】
また,特許文献2のようにブレンステッド酸前駆体溶液を励起光の照射対象とする場合,光の照射によって開始剤であるブレンステッド酸が生成されたとしても,この時点では溶液中にカチオン重合体モノマーが存在していないことから,ブレンステッド酸が生成された溶液は依然,液体の状態を維持し,この場合にも流路内壁に対する樹脂の重合付着や,溶液の粘度増に伴う流路の目詰まりは生じない。
【0022】
しかし,処理対象とする材料が,本願のように光重合性モノマーを主成分とし,しかも光重合開始剤を含んだ液体状の光硬化型樹脂である場合,このような光硬化型樹脂が流路内に存在する際に励起光を照射すると,光硬化型樹脂は流路内で重合を開始するために,重合した光硬化型樹脂が流路の内壁面に付着する。
【0023】
そのため,流路面積が狭い場合には目詰まりが生じ,また,流路面積が広い場合,光硬化型樹脂を通過させることはできても流路の内壁に付着した光硬化性樹脂が励起光の透過を阻むため,その後に流路内を通過する光硬化型樹脂に励起光が届かなくなる。
【0024】
また,流路内で目詰まりが生じた状態で,流路内の光硬化型樹脂が熱暴走によって高温になると爆発等が生じる危険性もあり,この爆発によって流路を構成するガラスや高温となった材料が飛び散れば極めて危険である。
【0025】
仮に,このような流路内での目詰まりを,例えば高圧を掛けて材料を押し出すことで防止できたとしても,この場合,流路を構成するスパイラル状のガラス管110(特許文献1)や,ガラス製の第2基板202(特許文献2)は,材料の押出圧力に耐え得る強度を持たせるためにある程度,厚く形成する必要があり,ガラスによる励起光の吸収率が高くなる(一例として励起光が紫外線である場合,厚さ3mmの石英ガラスで約70%の紫外線吸収率となる)。
【0026】
その結果,光硬化型樹脂を所定の重合度で重合させるためには,流路を長くとって長時間,光の照射を行う必要があり,装置が大型化すると共に処理時間も長くなる。
【0027】
なお,以上の説明では,光硬化型樹脂の粘着剤を製造するために光重合を行う場合を例に挙げて説明したが,前述した問題は,粘着剤を製造する場合に限らず,例えば前述したアクリルシロップのように光硬化性モノマーの一部を重合させてオリゴマーとした,粘性を有するシロップ状の光硬化型樹脂を得るために重合を行う場合等のように,光硬化性モノマーを主成分とし,かつ,光重合開始剤を含んだ液体状の光硬化型樹脂の重合を行ういずれの場合において同様に生じ得る。
【0028】
そこで,本発明は,上記従来技術における欠点を解消するために成されたものであり,比較的簡単な構成により前述した光硬化型樹脂に対する励起光の照射と重合を,目詰まり等を生じさせることなく,必要に応じて空気を遮断した状態で連続して行うことができ,仮に熱暴走等が生じた場合であっても爆発等を生じさせることなく安全に重合を行うことができる光硬化型樹脂の重合方法及び前記方法に使用する反応容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0029】
以下に,課題を解決するための手段を,発明を実施するための形態で使用する符号と共に記載する。この符号は,特許請求の範囲の記載と発明を実施するための形態の記載との対応を明らかにするために記載したものであり,言うまでもなく,本願発明の技術的範囲の解釈に制限的に用いられるものではない。
【0030】
上記目的を達成するために,本発明の光硬化型樹脂の重合方法は,
光透過性を有する可撓性の樹脂フィルム11によって構成された,一端10aに導入口12,他端10bに排出口13を備えた扁平な筒状の容器を反応容器10とし,
光重合性モノマーを主成分とし,光重合開始剤を含んだ液体状の光硬化型樹脂
前駆体25’を,前記導入口12を介して前記反応容器10内に導入し,
前記反応容器10内の前記光硬化型樹脂
前駆体25’に対し,前記反応容器10外から励起光を照射すると共に,
前記反応容器10を押圧する押圧部材23によって,前記反応容器10の前記一端10a側から前記他端10b側に向かって該反応容器10の押圧位置Pを移動させることにより,重合後
の光硬化型樹脂25を,前記排出口13を介して前記反応容器10外に絞り出すことを特徴とする(請求項1)。
【0031】
前記樹脂フィルム11としては,好ましくは熱可塑性樹脂のフィルムを使用する(請求項2)。
【0032】
更に,前記押圧部材23による前記反応容器10の前記押圧位置Pが前記反応容器10の前記他端10b側に到達したら,該押圧部材23による前記反応容器10の押圧を一旦解除し,再度,前記押圧部材23により前記反応容器10の前記一端10a側の押圧を開始して,押圧位置Pを前記一端10a側から前記他端10b側に向かって移動させる動作を繰り返すと共に,
前記押圧位置Pの移動に伴う前記光硬化型樹脂の排出分に対応する新たな光硬化型樹脂25を,前記導入口12を介して前記反応容器10内に導入するよう構成することが好ましい(請求項3)。
【0033】
この場合,前記反応容器10に対する前記光硬化型樹脂
前駆体25’の導入は,前記反応容器10よりも高所に配置した原料タンク21からの重力落下により行うことが好ましい(請求項4)。
【0034】
なお,前記光硬化型樹脂
前駆体25’を導入した状態の前記反応容器10の厚さT方向における内部空間14の幅gが5mm〜200mm,好ましくは10mm〜100mm,熱暴走制御からより好ましくは25mm〜60mmとなるように調整することが好ましい(請求項5;
図3(B),(C))。
【0035】
また,本発明の光硬化型樹脂重合用の反応容器10は,
樹脂フィルム11によって構成された,一端10aに処理対象とする液体状の光硬化型樹脂
前駆体25’を導入する導入口12,他端10bに重合後の光硬化型樹脂を排出する排出口13を備えた扁平な筒状の反応容器10であり,
前記樹脂フィルム11が,前記反応容器10外で照射された励起光を前記光硬化型樹脂
前駆体25’が収容される内部空間14に対し透過可能な光透過性を有すると共に,
前記樹脂フィルム11が,前記光硬化型樹脂25を内部に収容した状態の前記反応容器10の押し潰しを可能と成す可撓性を有することを特徴とする(請求項6)。
【0036】
前記反応容器10を構成する前記樹脂フィルム11は,これを熱可塑性樹脂フィルムとすることが好ましい(請求項7)。
【0037】
更に,前記反応容器10は,前記光硬化型樹脂
前駆体25’の収容時,該反応容器10の厚さT方向における内部空間14の幅gが5mm〜200mm,好ましくは10mm〜100mm,より好ましくは25mm〜60mmとなるよう形成することが好ましい(請求項8)。
【0038】
更に,処理対象とする光硬化型樹脂25が紫外線硬化型樹脂である場合,前記樹脂フィルム11として全光線透過率(JIS K 7375 2008)が40%以上のものを使用することが反応時間効率から好ましい(請求項9)。
【0039】
また,処理対象とする光硬化型樹脂25がアクリル系の光硬化型樹脂である場合,前記樹脂フィルム11としてガスバリア性を有するものを使用することが好ましい(請求項10)。
【0040】
更に,前記樹脂フィルム11の厚みは,好ましくは5μm〜500μmであり,紫外線透過性からは12.5μm〜50μmとすることが好ましいが,耐破断性を考慮した厚みとしては,25μm〜150μmが好ましい(請求項11)。
【0041】
なお,前記樹脂フィルム11は,無延伸のものを使用することが好ましく,特にガラス転移点温度Tgが180℃以上である無延伸フィルムの使用が好ましいが,2〜8倍,より好ましくは5倍程度の延伸度の二軸延伸フィルムを使用することもでき,又は前記二軸延伸フィルムと無延伸フィルムを積層した積層フィルムを使用することもできる(請求項12)。
【発明の効果】
【0042】
以上で説明した本発明の構成により,前述した反応容器10を使用して行う本発明の光硬化型樹脂の重合方法によれば,以下の顕著な効果を得ることができた。
【0043】
反応容器10を,光透過性を有する可撓性の樹脂フィルム11によって形成された扁平
な筒状に構成したことで,該反応容器10の厚みT方向に反応容器10外から励起光を照射することで反応容器10内の光硬化型樹脂
前駆体25’全体に比較的短時間で光を照射して重合させることができた。
【0044】
また,可撓性の樹脂フィルム11で製造された反応容器10は,押圧部材23によって一端10a側から他端10b側に向かって押圧位置Pを移動させることにより,反応容器10内で重合した光硬化型樹脂25を絞り出すように移送,排出させることができ,これにより重合反応によって反応容器10の内壁に付着した光硬化型樹脂25や粘性が増大した光硬化型樹脂25であっても,目詰まり等を生じさせることなく,流動と共に攪拌されて,均一化された状態で容易に排出口13より排出することができた。
【0045】
しかも,反応容器10内の光硬化型樹脂は,前述した反応槽を使用したバッチ式で重合を行う場合に比較して,短時間で材料の入れ代えが行われることから,周囲の空気による空冷と樹脂の入れ替えに伴う液冷によって反応熱の蓄積が起こり難く,温度管理が極めて容易である。
【0046】
仮に,反応容器10内で光硬化型樹脂25が熱暴走した場合であっても,本発明の反応容器10は樹脂フィルム11によって構成されたものであるため,金属製の反応槽や,ガラス管内で反応を行わせる場合に比較して僅かな圧力上昇で破断するため,金属製の反応槽やガラス管内で熱暴走が生じた場合のように大規模な爆発となることがない。
【0047】
特に,反応容器10を構成する樹脂フィルム11を,熱可塑性樹脂によって構成した場合には,反応容器10は,圧力上昇によって破裂する前に光硬化型樹脂25の異常発熱によって溶融して内部圧力を開放するため,破裂等に伴う光硬化型樹脂25の飛散等についても防止することができる。
【0048】
更に,処理対象とする光硬化型樹脂25がアクリル系の光硬化型樹脂のように酸素障害を生じるものである場合には,前述した反応容器10の破断や溶融によって熱硬化型樹脂25が空気に暴露されることで,空気中の酸素によって重合反応が阻害されることで熱暴走を終了させることができる。
【0049】
なお,本発明の反応容器10は,繰り返し使用することも可能であるが,樹脂フィルム11によって製造された本発明の反応容器10は比較的安価であることから,例えば1ロットの生産毎に廃棄して新たなものと交換することも可能であり,残渣ゲル等の汚れを除去することなく反応容器10と共に廃棄することで,反応容器10の洗浄,その他のメンテナンスや保守に要する労力を軽減することもできると共に,洗浄により発生した洗浄液の廃棄等の問題も発生しない。
【0050】
前述した重合方法は,例えば比較的少量の光硬化型樹脂25の重合を行う場合にはバッチ式で行うものとしても良いが,押圧部材23による光硬化型樹脂25の排出を繰り返し行うと共に,押圧部材23による排出分の光硬化型樹脂を,導入口12を介して順次導入することで,比較的容易に光硬化型樹脂25の連続重合を行うことが可能である。
【0051】
更に,本発明の重合方法では,前述したように反応容器10内の光硬化型樹脂25を,押圧位置Pを移動させることで絞り出す構成であることから,押圧部材23がポンプの機能を兼ねる。
【0052】
そのため,反応容器10内に導入する際に光硬化型樹脂
前駆体25’に高い圧力を掛ける必要がなく,例えば導入口12より高所に配置した原料タンク21からの重力落下による導入が可能であり,光硬化型樹脂
前駆体25’の供給側にポンプ等を設ける必要がなく比較的簡単な装置構成によって光硬化型樹脂
前駆体25’の導入を行うことが可能である。
【0053】
しかも,このような原料タンク21からの重力落下により光硬化型樹脂25の導入を行う構成では,光硬化型樹脂25を,一旦原料タンク21内に貯留することで,光硬化型樹脂25内に気泡等として存在する空気が脱気されることで,酸素障害の発生をより確実に防止することができた。
【0054】
なお,本発明の重合方法における光硬化型樹脂25の供給や排出に圧送ポンプや吸引ポンプ又はこれらの双方を併用するものとしても良い。
【0055】
前記光硬化型樹脂
前駆体25’の導入時,反応容器10の厚みT方向における内部空間14の幅gが5mm〜200mmとなるよう構成したことで,励起光を,反応容器10内の光硬化型樹脂
前駆体25’の内部にまで到達させることができ,短時間で確実に重合させることが可能である〔
図3(B),(C)〕。
【0056】
更に,樹脂フィルム11で反応容器10を構成したことで,ガラス管等の場合に比較して反応容器10の壁厚を薄く形成でき,一例として5〜500μmの厚さとすることができたことで,光の中でも透明材料に吸収され易い紫外線の透過率を40%以上とすることが可能で,紫外線硬化型樹脂を処理対象とする場合であっても効率的な重合が可能である。
【0057】
また,樹脂フィルム11をガスバリア性のフィルムとすることで,アクリル系の光硬化型樹脂のように酸素障害が生じる光硬化型樹脂25を処理対象とする場合であっても,窒素置換等を行うことなく酸素障害の発生を確実に防止でき,窒素置換に必要となる窒素の入手が不要であると共に,窒素置換を行うための装置構成や工程が不要となる点でも,低コストでの重合が可能であると共に,窒素を使用しないため,作業員の呼吸に悪影響を与えることもない。
【0058】
なお,反応容器10を構成する樹脂フィルム11を無延伸フィルムとすることで,反応容器10の強度を高めることができ,また,二軸延伸フィルムと無延伸フィルムとの積層構造とした場合,更に耐屈曲性の向上を得ることができた。
【0059】
しかも反応度のバラつきの管理は、本発明の反応容器10を使用して重合を行った後,二次容器内で撹拌することで均一化し、及び/または、オリゴマーやモノマーを投入することで調整可能である。
【発明を実施するための形態】
【0061】
次に,本発明の実施形態を,添付図面を参照しながら以下に説明する。
【0062】
〔反応容器〕
本発明において光硬化型樹脂25の重合に使用する反応容器10は,
図1に示すように樹脂フィルム11によって形成された,一端10aに導入口12,他端10bに排出口13を備えた扁平な筒状の容器であり,この反応容器10内に導入された光硬化型樹脂に対し反応容器外に設けた光源30から励起光を照射することで,該反応容器10内において光硬化型樹脂を重合させることができるように構成されている。
【0063】
なお,図示の実施形態では,本発明の反応容器10を,一定幅を有する扁平な筒状容器として構成した例を示したが,この反応容器10は,導入口12及び排出口13の部分を他の部分に比較して狭く形成し,後述する原料の供給源や回収容器等との配管接続を容易に行うことができるように構成するものとしても良く,その形状は,図示の構成に限定されない。
【0064】
この反応容器10を構成する前述の樹脂フィルム11は,反応容器10外より照射された励起光を,内部に収容した光硬化型樹脂
前駆体25’に対し透過可能な光透過性を有すると共に,後述する押圧部材23による絞り出しを可能と成す,可撓性を有するものを使用する。
【0065】
また,重合対象とする光硬化型樹脂がアクリル系の光硬化型樹脂のように,酸素障害を生じるものである場合には,この樹脂フィルム11としてはガスバリア性を有するものを使用することが好ましく,これにより空気中の酸素によって重合が阻害されることを確実に防止する。
【0066】
このような酸素障害の発生防止に必要なガスバリア性を実現するために必要な酸素透過量は、JIS-K-7126に規定する「プラスチックフィルム及びシートのガス透過度試験方法」に準拠した測定において15,000(cc/m
224hr/atm/100μm)以下であり,5,000(cc/m
224hr/atm/100μm)以下が好ましく、反応度から更に好ましくは1,000(cc/m
224hr/atm/100μm)以下である。
【0067】
このような樹脂フィルム11としては,前述した光透過性を有する,ガラス転移点温度Tgが280℃以下の各種材質から選択することができ,熱可塑性樹脂の他,熱硬化性樹脂を使用することも可能である。
【0068】
本発明の反応容器10に使用する樹脂フィルム11としては,一例としてナイロン,ポリエステル,ポリエチレンナフタレート(PEN)等を挙げることができ,また,紫外線等の励起光の透過率(全光線透過率)を40%以上確保することが可能であれば,前述した材質の樹脂フィルムと,可撓性に優れたポリプロピレン,ポリエチレン,ウレタン系フィルムの複合(積層)材料についても使用可能である。
【0069】
これらの樹脂フィルム11は,延伸フィルム,無延伸フィルムのいずれを使用することも可能であるが,無延伸のものの使用が好ましく,特にガラス転移点温度(Tg)が180℃以上の無延伸のフィルムの使用が好ましい。なお,引き裂け強度の点からは,二軸延伸フィルム,好ましくは延伸度が2〜8倍,より好ましくは5倍程度の二軸延伸フィルムを使用することもできる。
【0070】
より好ましくは耐屈曲性の点から,前述した二軸延伸フィルムに更に無延伸フィルムを積層したラミネートフィルムを使用する。
【0071】
樹脂フィルム11の厚みは,一例として5〜500μmの範囲のものが使用可能であり,紫外線等の励起光の透過性の点からは薄いもの程好ましく,重合後の光硬化型樹脂を絞り出す際の押圧部材による押圧と押圧位置の移動に耐え得る強度が確保できれば12.5μm〜50μm程度の厚みのものの使用が好ましいが,耐破断性を考慮した場合の好ましい厚みの範囲は25〜150μmである。
【0072】
前述した樹脂フィルム11による扁平筒状の反応容器の製造は,インフレーション法やブロー成形法により直接,継ぎ目のない筒状のフィルムを成膜することにより製造するものとしても良く,又は,インフレーション法,ブロー成形法,熱溶融押出法,溶剤乾燥キャスト法等によって製造された樹脂フィルム11を貼り合わせることにより本発明の反応容器10を形成するものとしても良い。
【0073】
本発明の反応容器10が有する扁平な形状は,円筒状に形成された樹脂フィルム11が,樹脂フィルムの可撓性によって潰れることで扁平な形状となったものであっても,当初より扁平な形状となるように樹脂フィルム11の貼り合わせ等を行って形成したもののいずれであっても良い。
【0074】
円筒状に樹脂フィルム11を貼り合わせる方法としては,例えば
図2(A)に示すように軸芯40に,樹脂フィルム11を長手方向の一辺に沿って所定幅で重なり合うように螺旋状に巻き付けると共に重なり部分を接着した後,前記軸芯40を抜き取る方法,
図2(B)に示すように軸芯40に対し樹脂フィルム11を平行に巻き付け,巻き終わり端を接着して余分な樹脂フィルム11をカットした後,前記軸芯40を抜き取ることにより製造する方法等がある。
【0075】
また,扁平な筒状に樹脂フィルム11を貼り合わせる方法としては,
図2(C)に示すように樹脂フィルム11を幅方向の中央で2つ折りにして,重なり合う長手方向の二辺同士を接着する方法,
図2(D)に示すように2枚の樹脂フィルム11,11を重ね合わせ,長手方向の2辺を接着する方法,
図2(E)に示すように樹脂フィルム11の長手方向の二辺が上下に重なるように接着する方法等がある。
【0076】
上記
図2(A)〜
図2(E)のいずれの方法で反応容器10を製造する場合においても,樹脂フィルム11の重なり部分の接着方法としては,ヒートシール機による熱融着や,接着剤の塗布による接着等,既知の各種の方法を使用することができる。
【0077】
本発明の反応容器10は,これらのいずれの方法で樹脂フィルム11を貼り合わせたものであっても使用可能であり,また,樹脂フィルム11を貼り合わせる方法は,
図2に示した方法に限定されない。
【0078】
もっとも,
図2(A)で示したように樹脂フィルム11を螺旋状に巻き付けて製造した反応容器10では,押圧部材23によって光硬化型樹脂25の絞り出しを行う際,光硬化型樹脂25が反応容器10の長手方向に移動するだけでなく,樹脂フィルム11の継ぎ目に沿った斜め方向への移動をも生じさせることで,移動に伴う攪拌により均一化の効果が増大される。
【0079】
なお,このように螺旋状に巻き付けて形成した反応容器10では,使用中に生じるねじれを防止するために無延伸フィルムの使用が好ましく,特に柔軟性に富んだナイロンの無延伸フィルムの使用が好ましい。
【0080】
以上のようにして製造された反応容器10は,
図3(A)に示すように作業台20等の平面上に載置した状態で,又は,図示せざる円筒状のドラムの内周面や外周面に沿って例えば螺旋状に配置して使用することで,
図3(B)に示すように幅Wがこれらの表面(図示の例では作業台20の表面)に沿って配置された状態で使用される。
【0081】
この反応容器10の幅Wは,光源からの光が照射できる範囲であれば特に制限されず,幅Wを比較的広く取ることで,処理できる光硬化型樹脂25の量を増大させることもできる。
【0082】
一方,前記幅W方向と直交する方向である反応容器10の厚さTは,
図3(B)に示すように光硬化型樹脂
前駆体25’が導入されていない状態では,潰れて上下の内壁同士が接触して内部空間14が消失した状態(空気が排出された状態)となって,厚みTが2枚の樹脂フィルム11の厚みの和となっていることが好ましい。
【0083】
このように,内部空間14が消失している状態で導入口12より光硬化型樹脂25の導入を開始すると,
図3(C)に示すように接触していた内壁間に光硬化型樹脂
前駆体25’が入り込んで内壁が離間して,内部空間14が形成されると共に,この内部空間14が光硬化型樹脂25で満たされることで,空気(酸素)を排した状態で反応容器10内に光硬化型樹脂25を導入することができ,これにより酸素障害を生じさせることなく重合を行うことができる。
【0084】
このように,光硬化型樹脂
前駆体25’の導入により形成される内部空間14は,反応容器10内に導入された光硬化型樹脂25の内部深くまで光を到達させることができるよう,反応容器10の厚みT方向における内部空間14の幅gが厚くなり過ぎないように光硬化型樹脂の導入量等を調整する。
【0085】
一例として樹脂フィルム11の励起光(例えば紫外線)の透過率が40%以上である場合,前記反応容器10の厚みT方向における内部空間の幅gは,5mm〜200mm,好ましくは10mm〜100mm,より好ましくは25mm〜60mmである。
【0086】
〔連続重合方法〕
以上のように構成された反応容器10を使用した連続重合を行うための装置構成例とその動作説明を
図4(A)〜(D)を参照して説明する。
【0087】
図4(A)〜(D)に示す装置構成において,作業台20上に載置した反応容器10の導入口12を,光硬化型樹脂
前駆体25’の供給源21に連通すると共に,排出口13を,重合後の光硬化型樹脂を回収するための回収容器22上にて開口し,該反応容器10の上方には,反応容器10内に導入された光硬化型樹脂25に対し励起光を照射するための光源30を配置している。
【0088】
反応容器10の導入口12に対し光硬化型樹脂
前駆体25’の導入を行う供給源は,
図4(A)〜(D)に示す例では光硬化型樹脂を貯留する原料タンク21であり,反応容器10よりも高所に配置した原料タンク21の下端を反応容器10の導入口12に連通することで,原料タンク21より重力落下した光硬化型樹脂
前駆体25’を反応容器10内に導入することができるように構成されている。
【0089】
この反応容器10上には,前述した作業台20との間で反応容器10を挟んで押し潰す,押圧部材23,図示の例では押圧ローラが設けられている。
【0090】
この押圧ローラ23は,反応容器10の一端10a側において反応容器10の押圧を開始した後,反応容器10の他端10b側に向かって移動すると共に,他端10b側に到達した後,作業台20から離間して反応容器10の押圧を解除し,再度一端10a側に移動して反応容器10の押圧から移動,押圧の解除までの動作を繰り返して行うように構成されている。
【0091】
上記押圧ローラ23の動作により,反応容器10内に導入された光硬化型樹脂25は,押圧位置Pの移動に伴い押圧位置Pに対し排出口13側にある内部空間14内の光硬化型樹脂25は,排出口13に向かって絞り出されると共に,押圧位置Pよりも導入口12側にある内部空間14には,原料タンク21より重力落下した新たな光硬化型樹脂が充填されるようになっている。
【0092】
なお,上記装置の構成要素は,
図4(D)中に破線で示したように溜枡26内に配置し,光硬化型樹脂25の熱暴走によって反応容器10が溶ける等して光硬化型樹脂25の漏出が生じた場合,この溜枡26で受け止めて外部への漏出を防止することができるように構成されている。
【0093】
以上の装置構成において,
図4(A)に示すように反応容器10内に光硬化型樹脂25が導入されていない状態で,かつ,押圧ローラ23が反応容器10の一端10a側を押圧している状態では,原料タンク21内に投入された光硬化型樹脂25は,押圧ローラ23による押圧位置Pを超えて反応容器10内に進入することができず,押圧ローラ23よりも他端10b側の反応容器10内には,未だ光硬化型樹脂25が導入されていない状態にある。
【0094】
この状態から,
図4(B)に示すように押圧状態を維持したまま押圧ローラ23を反応容器10の他端10b側に移動させると,この押圧ローラ23の移動に伴う押圧位置Pの移動に伴い,原料タンク21から落下した光硬化型樹脂
前駆体25’は,反応容器10の他端10b側に向かって浸入位置を拡大する。
【0095】
この反応容器10の上方には光源30が配置されており,この光源30による励起光の照射を受けて,反応容器10内に導入された光硬化型樹脂25が重合を開始する。
【0096】
図4(B)に示すように反応容器10の他端10b側における所定位置まで移動した押圧ローラ23は,一旦,作業台から離間して反応容器10の押圧を解除すると共に,反応容器10の一端10a側に移動して,
図4(C)に示すように一端10a側において反応容器10の再度の押圧を開始する。
【0097】
このようにして,反応容器10の一端10a側に移動して反応容器10の再度の押圧を再開した押圧ローラ23が,反応容器10の他端10b側に向かって移動を開始すると,
図4(D)に示すように励起光の照射を受けて重合された反応容器10内の光硬化型樹脂25は反応容器10の他端10b側に向かって移動して排出口13より排出され,回収容器22内に回収される。
【0098】
このように,光硬化型樹脂25を絞り出すようにして排出することで,反応容器10の内壁に付着した光硬化型樹脂25や,重合により粘性が高くなった光硬化型樹脂25であっても確実に排出口13より排出して回収容器22内に回収することができる。
【0099】
なお,図示は省略するが回収容器22内で回転する攪拌翼を設け,回収容器22内に回収された光硬化型樹脂25を更に攪拌して反応のばらつきを是正するものとしても良く,また,この回収容器22内で更にモノマーやオリゴマーを添加して,重合度の調整を行うものとしても良い。
【0100】
また,押圧ローラ23が通過した後の,重合後の光硬化型樹脂25が排出された後の反応容器10の内部空間14(押圧位置Pよりも一端10a側の内部空間14)に,原料タンク21より重力落下した新たな光硬化型樹脂
前駆体25’が導入される。
【0101】
このようにして,押圧ローラ23の移動に伴い新たに反応容器10内に導入された光硬化型樹脂
前駆体25’は,光源30からの励起光の照射を受けて重合し,押圧ローラ23が前述した動作を繰り返すことで,原料タンク21より供給される光硬化型樹脂
前駆体25’を酸素(空気)と接触させることなく連続して重合させることができる。
【0102】
また,反応容器10内の光硬化型樹脂25を,押圧ローラ23によって絞り出すように排出することで,排出口13側に向かって移動する際に光硬化型樹脂が攪拌・混練されることで,均質化された状態の光硬化型樹脂を排出,回収することができる。
【0103】
なお,光源30からの励起光の照射を受けた反応容器10内の光硬化型樹脂25は,反応容器10内で重合反応に伴い発熱するが,光硬化型樹脂25の熱暴走が生じる前に反応容器10からの排出が行われるよう前述した押圧ローラ23の動作タイミングを設定することで,別途,光硬化型樹脂25の温度制御を行うことなく重合を行うことも可能である。
【0104】
もっとも,光硬化型樹脂25の温度制御が必要な場合には,例えば反応容器10を載置する作業台20内に水や油等の熱媒を循環させる図示せざる循環パイプを埋設し,作業台20を介して反応容器10内の光硬化型樹脂25の冷却(場合によっては加温)を行う等,光硬化型樹脂25の温度制御を行うことができるように構成するものとしても良い。
【0105】
なお,
図4を参照した説明では,説明の便宜上,単一の押圧ローラ23を使用する場合を例に挙げて説明したが,複数の押圧ローラ23が等間隔に作業台20上を移動するように構成しても良い。
【0106】
また,
図4の例では,本発明の反応容器10を,水平な作業台20上に載置する構成を示したが,反応容器10は,前述したように図示せざる円筒状のドラムの内周面又は外周面に沿って,例えば螺旋状に配置すると共に,該ドラムの内周面又は外周面に沿って移動する押圧部材を設けるものとしても良い。
【0107】
また,比較的少量の光硬化型樹脂の連続重合を行う場合等においては,前述した押圧部材(押圧ローラ23)を作業員が手作業で操作して熱硬化型樹脂25の絞り出しを行うようにしても良い。
【実施例】
【0108】
以下に本発明の反応容器10を使用して光硬化型樹脂の重合を行った実施例について説明する。
【0109】
〔実施例1〕
(1)反応容器
樹脂フィルム11として,無延伸のナイロン6製フィルム(東レフィルム加工株式会社製「NO1401」:厚さ50μm,幅75mm)を使用して反応容器10を製造した。
【0110】
反応容器10の製造は,
図5に示すように,樹脂フィルム11の長手方向一辺11aに沿ってその表面に幅5mmの仮止め用の両面テープ15〔共同技研化学株式会社製「分子勾配膜両面テープ」(登録商標)〕を貼着すると共に,前記両面テープ15に沿ってその内側に,幅5mm,塗布厚み約20μmで無溶剤型のアクリルシリコン系湿気硬化型接着剤16〔コニシ株式会社製「ウルトラX」〕を塗布し,樹脂フィルム11の長手方向の他辺11bの裏面が,前記一辺11aの表面に,10mm幅の重なり代17で重なるように外径25mmの軸芯40の外周に螺旋状に4m巻き付けると共に,接着剤16の硬化後,両面テープ15を剥離すると共に軸芯40を抜き取って,長さ2mの反応容器を製造した。
【0111】
(2)光重合方法
上記の方法で得た反応容器10を,
図6(A)に示すように平滑な作業台20上に載置し,反応容器10の他端10b側を所定長さで180°折り曲げて排出口13を閉じると共に,反応容器10の一端10aを作業台20の表面より100mm高く持ち上げ,一端10aから長さ200mmの範囲を作業台より離間させた状態で,導入口12より光硬化型樹脂25を導入した。
【0112】
導入した光硬化型樹脂
前駆体25’として,予め真空脱気したアクリル酸ブチルモノマー100重量部に対し,紫外線反応開始剤(BASF社製「イルガキュア」)0.05重量部を配合したものを使用した。
【0113】
図6(B)に示すように,導入した光硬化型樹脂
前駆体25’が導入口12から漏出しないように反応容器10の一端10a側を押圧ローラ23等で押圧して導入口12を閉じた状態で,反応容器10の上部より光源30〔20mmwの紫外線ランプ〕より紫外線を約45秒間照射した。
【0114】
反応熱の発生(重合反応の発生)を確認した後,
図6(C)に示すように180°折り曲げておいた反応容器10の他端10b側の折り曲げ部分を展開して排出口13を開放すると共に,反応容器10の一端10a側を押圧していた押圧ローラ23を,反応容器10の他端10b側に向かって移動させて,重合後の光硬化型樹脂25を排出口13より排出させた。
【0115】
また,図示は省略するが押圧ローラ23の移動による光硬化型樹脂25の排出後,排出された光硬化型樹脂25に相当する量の光硬化型樹脂25を導入口12より導入し,前記作業を繰り返して連続して光硬化型樹脂25の光重合を行った。
【0116】
〔実施例2〕
(1)反応容器
実施例1と同様の無延伸のナイロン6製フィルムを同様幅の重なり代17にて重なり合うように外径25mmの軸芯40の外周に螺旋状に4m巻き付けると共に,重なり部分を実施例1における接着剤による接着に代えてヒートシール機にて熱融着した。融着幅は10mmである。その他の条件は実施例1と同様である。
【0117】
(2)光重合方法
実施例1と同一の光硬化型樹脂に対し,実施例1と同様の方法で光重合を行った。
【0118】
〔実施例3〕
(1)反応容器
樹脂フィルム11として,二軸延伸PETフィルム(東レ株式会社製:厚さ50μm,幅75mm)を使用して,反応容器10を製造した。
【0119】
上記樹脂フィルム11を,実施例1で説明したと同様の方法(
図5参照)で直径25mmの螺旋状に巻き,長さ2mの反応容器10を製造した。
【0120】
(2)光重合方法
予め真空脱気したアクリル酸2エチルヘキシルモノマー100重量部に対し,紫外線反応開始剤(BASF社製「イルガキュア184」)0.05重量部を配合してなる光硬化型樹脂を使用した点を除き,実施例1と同様の方法で光重合を行った。
【0121】
〔実施例4〕
(1)反応容器
樹脂フィルム11として,二軸延伸PETフィルム(東レ株式会社製:厚さ50μm,幅75mm)と,無延伸のナイロン6製フィルム(東レフィルム加工株式会社製「NO1401」:厚さ20μm,幅75mm)のラミネート品を使用して,反応容器10を製造した。
【0122】
ラミネートは,PETフィルムにポリエステル系接着剤〔東洋紡株式会社製「バイロン」〕100重量部に対して架橋剤〔東ソー株式会社製「コロネートL」(固形分45%)〕を0.5重量部添加したものを固形分厚み10μmとなるように塗布してドライラミネートした。
【0123】
上記のラミネートフィルムを,実施例1で説明したと同様の方法(
図5参照)で直径25mmの螺旋状に巻き,長さ2mの反応容器10を製造した。
【0124】
(2)光重合方法
予め真空脱気した光重合性モノマー100重量部(アクリル酸ブチル50重量部とアクリル酸2エチルヘキシル50重量部の混合品)に対し,紫外線反応開始剤(BASF社製「イルガキュア184」)0.05重量部を配合してなる光硬化型樹脂を使用した点を除き,実施例1と同様の方法で光重合を行った。
【0125】
〔試験結果〕
上記方法による光重合前後における光硬化型樹脂の粘度を表1に示す。
【0126】
【表1】
【0127】
表1に示すように,実施例1〜4のいずれの場合にも,本発明の方法で処理することで光硬化型樹脂の大幅な粘度増が得られており,本発明の方法によって好適に光重合を行うことができたことが確認された。
【0128】
また,上記実施例1〜4のいずれにおいても,反応容器10の溶解や破断はなく,かつ,反応容器10内に残渣ゲルを殆ど残すことなく光硬化型樹脂の重合を,連続して,一定の再現性を以て行うことができた。