(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の自動ドアは、自動ドアに故障が発生したことや故障の原因を速やかに特定することができ、自動ドアの速やかな修理の一助となり得るものとなっている。しかし、特許文献1の自動ドアは、それに故障が発生したことを検知することができても、それに故障が発生しそうな状態にあることを検知できるものとはなっていなかった。このため、同文献の自動ドアでは、上述した定期点検を省力化することはできず、定期点検に要するコストを抑えることができなかった。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するために為されたものであり、自動ドアが故障しそうな状況にあることを把握することができ、自動ドアの故障の発生を未然に防ぎ得る自動ドア駆動装置を提供するものである。また、この自動ドア駆動装置を備えた自動ドアを提供することも本発明の目的である。さらに、この自動ドアを監視するための自動ドア監視システムを提供することも本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題は、
自動ドアのドアパネルの開閉方向に沿って設けられるガイドレールと、
ガイドレールに当接しながら回転するガイドローラ、及び、ドアパネルを固定するドアパネル固定部を有するローラユニットと、
ローラユニットをガイドレールに沿って移動させるローラユニット駆動手段と
ローラユニット駆動手段を制御することによりドアパネルの開閉を制御する開閉コントローラと
を備えた自動ドア駆動装置であって、
ガイドローラ又はガイドレールの振動を直接的又は間接的に検知することにより、ガイドローラ又はガイドレールの異常を検知するガイドローラ異常検知手段を備えた
ことを特徴とする自動ドア駆動装置
を提供することによって解決される。
【0008】
ここで、「ガイドローラ又はガイドレールの振動を直接的又は間接的に検知する」という記載における「直接的に検知する」とは、ガイドローラ又はガイドレールに生じた振動自体(加速度の変化など)を、ガイドローラそのもの又はガイドレールそのものに取り付けたセンサで検知することを云う。これに対し、同記載における「間接的に検知する」には、ガイドローラに対して一体的に取り付けられたガイドローラ以外の部材(ガイドローラが振動するとそれにつられて振動する部材)の振動、又は、ガイドレールに対して一体的に取り付けられたガイドレール以外の部材(ガイドレールが振動するとそれにつられて振動する部材)の振動を検知することで、ガイドローラ又はガイドレールの振動を検知する意味と、加速度の変化など、振動に直接的に関連する物理量の変化ではなく、音の大きさなど、振動に間接的に関連する物理量の変化により、ガイドローラ又はガイドレールの振動を検知する意味との2つの意味がある。
【0009】
上記のように、ガイドローラ異常検知手段でガイドローラ又はガイドレールの振動を検知することによって、自動ドアの故障の発生を未然に防ぐことが可能になる。というのも、自動ドアの故障の原因の多くは、ガイドローラやガイドレールに異物(虫など)が付着した状態でドアパネルの開閉が繰り返されることによる。つまり、ガイドローラやガイドレールに異物が付着した状態でドアパネルの開閉が繰り返されると、ガイドローラやガイドレールに変形が生じたり、ガイドローラがガイドレールから脱輪したりして、ドアパネルが正常に開閉しなくなる。この点、ガイドローラやガイドレールの振動を検知することによって、ガイドローラやガイドレールに異物が付着したことを早期に検知することができるからである。
【0010】
本発明の自動ドア駆動装置において、ガイドローラ異常検知手段による検知情報は、自動ドア駆動装置自身(自動ドア駆動装置に内蔵されたメモリなど)に蓄積されるようにしてもよい。しかし、この場合には、自動ドア駆動装置に蓄積された検知情報を定期的に読み出してチェックする必要がある。このため、上記の定期点検の省力化という面では、大きな成果を得にくい。
【0011】
これに対し、ガイドローラ異常検知手段が異常(ガイドローラやガイドレールの振動)を検知したことを、自動ドア駆動装置やその周辺に設けたランプやスピーカなどの報知手段で報知するようにすれば、定期点検の省力化を図り得る。しかし、この場合には、自動ドアの付近を通りがかった人は、その自動ドアに異常が生じていることを把握できるものの、その情報が自動ドアのメンテナンスを行う人に速やかに伝わるとは限らず、自動ドアのメンテナンス時期が遅れるおそれがある。
【0012】
このため、本発明の自動ドア駆動装置は、ガイドローラ異常検知手段による検知情報を外部(自動ドアの管理業者のコンピュータなど)に送信するための検知情報送信手段を備えたものとすることが好ましい。これにより、自動ドアの管理業者は、自動ドアに異常が生じたことを速やかに把握することができ、その自動ドアのメンテナンスを早期に行うことが可能になる。したがって、自動ドアの故障の発生を未然に防ぎやすくなる。
【0013】
この構成は、
ドアパネルが固定されたローラユニットにおけるガイドローラがガイドレールに当接しながら回転し、ローラユニットがガイドレールに沿って移動することにより、ドアパネルの開閉を行う自動ドアを監視するための自動ドア監視システムであって、
ガイドローラ又はガイドレールの振動を直接的又は間接的に検知することにより、ガイドローラ又はガイドレールの異常を検知するガイドローラ異常検知手段と、
ガイドローラ異常検知手段による検知情報を外部に送信するための検知情報送信手段と、
検知情報送信手段によって送信された検知情報を受信する検知情報受信手段と、
検知情報受信手段が受信した検知情報を出力するための出力手段と
を備えたことを特徴とする自動ドア監視システム
に好適に組み込むことができる。
【0014】
本発明の自動ドア駆動装置において、ガイドローラ異常検知手段は、ガイドローラ又はガイドレールの振動を直接的又は間接的に検知できるものであれば特に限定されない。例えば、ガイドローラ異常検知手段は、加速度センサで加速度を検知することによって、ガイドローラ又はガイドレールの振動を直接的又は間接的に検知するものとすることができる。また、ガイドローラ異常検知手段は、マイクで異音を検知することによって、ガイドローラ又はガイドレールの振動を直接的又は間接的に検知するものとすることもできる。
【0015】
本発明の自動ドア駆動装置は、ドアパネルの開閉状態を検知するための開閉状態検知手段と、開閉状態検知手段による検知情報を外部に送信するための検知情報送信手段とを備えたものとすることも好ましい。これにより、自動ドアの使用状況(ドアパネルの開閉回数など)を把握することも可能になる。開閉状態検知手段による検知情報を外部に送信するための検知情報送信手段は、ガイドローラ異常検知手段による検知情報を外部に送信するための検知情報送信手段とは独立して設けることもできるが、通常、共通のものとされる。
【発明の効果】
【0016】
以上のように、本発明によって、自動ドアが故障しそうな状況にあることを把握することができ、自動ドアの故障の発生を未然に防ぎ得る自動ドア駆動装置を提供することが可能になる。また、この自動ドア駆動装置を備えた自動ドアを提供することも可能になる。さらに、この自動ドアを監視するための自動ドア監視システムを提供することも可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の自動ドア駆動装置の好適な実施態様について、図面を用いてより具体的に説明する。以下で述べる構成は、飽くまで一例である。本発明の自動ドア駆動装置の技術的範囲は、以下で述べる構成に限定されず、発明の趣旨を損なわない範囲で適宜変更を施すことができる。
【0019】
1. 自動ドア駆動装置の概要
本発明の自動ドア駆動装置は、建物などの自動ドアのドアパネル付近に設けられる。自動ドアのドアパネルにおける手前側(自動ドアの利用者が入る側)と奥側(自動ドアの利用者が出る側)には、通行者などの物体の存在を検知するためのセンサが設けられる。ドアパネルの手前側領域や奥側領域に通行者が入ったことがこれらのセンサで検知されると、自動ドア駆動装置によってドアパネルが開方向に駆動され、ドアパネルが開かれる。ドアパネルが開いてから所定時間が経過するか、通行者が自動ドアを通り抜けたことが検知されると、自動ドア駆動装置によってドアパネルが閉方向に駆動され、ドアパネルが閉じられる。このように、自動ドア駆動装置は、ドアパネルを駆動してドアパネルの開閉を自動的に行うものとなっている。自動ドアのドアパネルにおける手前側の領域や奥側の領域の通行者の存在を検知する上記のセンサは、自動ドア駆動装置を駆動するタイミングを検知するものであるため、「駆動センサ」や「起動センサ」と呼ばれている。
【0020】
図1は、本発明に係る自動ドア駆動装置10の一例を示した斜視図である。
図1及び後掲する
図2においては、x軸、y軸及びz軸からなる座標系を示している。以下においては、同座標系におけるx軸方向を「左右」方向、x軸方向負側を「左」側、x軸方向正側を「右」側と呼び、同座標系におけるy軸方向を「前後」方向、y軸方向負側を「前」側又は「手前」側、y軸方向正側を「後」側又は「奥」側と呼び、同座標系におけるz軸方向を「上下」方向、z軸方向負側を「下」側、z軸方向正側を「上」側と呼ぶことがある。しかし、これらは飽くまで説明の便宜を考慮してのものであり、本発明の自動ドア駆動装置10を設置する向きなどを限定するものではない。
【0021】
本実施態様の自動ドア駆動装置10は、
図1に示すように、取付用ベース部材11と、ガイドレール12と、ローラユニット13と、ローラユニット駆動手段14と、ガイドローラ異常検知手段15と、開閉状態検知手段16と、開閉コントローラ17と、検知情報送信手段18とで構成されている。以下、各部について詳しく説明する。
【0022】
2. 取付用ベース部材
取付用ベース部材11は、自動ドア駆動装置10を自動ドアのドアパネル30付近に取り付けるためのものとなっている。取付用ベース部材11は、通常、自動ドアのドアパネル30の上側に設けられる。本実施態様の自動ドア駆動装置10においては、取付用ベース部材11を、ドアパネル30のドアパネル30の上側における「無目」又は「欄間」と呼ばれる部分に配している。取付用ベース11の手前側(
図1におけるy軸方向負側)の面は、図示省略のカバーによって覆われる。このため、
図1に示されたガイドレール12やローラユニット13などの部材は、外部からは見えない状態とされる。
【0023】
3. ガイドレール
ガイドレール12は、ドアパネル30の開閉方向(
図1におけるx軸方向)に沿って設けられたレール状の部材となっている。このガイドレール12は、後述するローラユニット13をドアパネル30の開閉方向(x軸方向)にガイドするものとなっている。本実施態様の自動ドア駆動装置10においては、取付用ベース部材11の下縁から前方に突き出た部分(取付用ベース部材11の底板部)の前縁に沿った箇所にガイドレール12を設けている。
【0024】
図2は、
図1の自動ドア駆動装置10を前方から見た状態を示した正面図であって、
図2(a)は、ドアパネル30が閉位置にある状態(閉状態)を示し、
図2(b)は、ドアパネル30が開位置にある状態(閉状態)とをそれぞれ示した図である。
図2に示すように、ガイドレール12の一端側(x軸方向正側の端部寄りの箇所)には、閉位置用ストッパー20が設けられており、ガイドレール12の他端側(x軸方向負側の端部寄りの箇所)には、開位置用ストッパー21が設けられている。閉位置用ストッパー20は、
図2(a)に示されるように、閉位置にあるドアパネル30が閉位置を越えて閉方向(x軸方向正側)へ移動しないようにローラユニット30に当接してローラユニット30の移動を規制するためのものとなっている。一方、開位置用ストッパー20は、
図2(b)に示されるように、開位置にあるドアパネル30が開位置を越えて開方向(x軸方向負側)へ移動しないようにローラユニット30に当接してローラユニット30の移動を規制するためのものとなっている。
【0025】
4. ローラユニット
ローラユニット13は、ガイドレール12に沿って移動することで、ドアパネル30を開閉方向(x軸方向)に移動させるものとなっている。本実施態様の自動ドア駆動装置10において、ローラユニット13は、
図1に示すように、ガイドローラ13aと、ドアパネル固定部13bと、ベルト固定部13cとで構成されている。
【0026】
ガイドローラ13aは、ガイドレール12に当接しながら回転する車輪状の部材となっている。このガイドローラ13aによって、ローラユニット13は、ガイドレール12上を抵抗なく円滑に移動できるようになっている。本実施態様の自動ドア駆動装置10において、ガイドローラ13aは、左右方向(x軸方向)に所定間隔を隔てて一対に配している。
【0027】
ドアパネル固定部13bは、ドアパネル30を固定するための部分となっている。既に述べたように、本実施態様の自動ドア駆動装置10は、ドアパネル30の上側に配されるものであるところ、ドアパネル固定部13bは、ドアパネル30の上部を固定することで、ドアパネル30を吊り下げた状態に保持するものとなっている。このように、ドアパネル30を吊り下げた状態に保持するタイプのローラユニット13は、「ドアハンガー」と呼ばれることもある。
【0028】
ベルト固定部13cは、後述するローラユニット駆動手段14におけるタイミングベルト14cに固定するための部分となっている。すなわち、ローラユニット13は、このベルト固定部13cを介してタイミングベルト14cに固定される。このため、ローラユニット13は、タイミングベルト14cの動きに追従して開閉方向(x軸方向)に移動するようになっている。より具体的には、ローラユニット駆動手段14が駆動されてタイミングベルト14cにおけるベルト固定部13cが固定される部分がx軸方向負側(開方向)に移動すると、ローラユニット13もx軸方向負側(開方向)に移動し、タイミングベルト14cにおける同部分がx軸方向正側(閉方向)に移動すると、ローラユニット13もx軸方向正側(閉方向)に移動するようになっている。
【0029】
5. ローラユニット駆動手段
ローラユニット駆動手段14は、ローラユニット13をガイドレール12に沿って移動させるためのものとなっている。ローラユニット駆動手段14は、斯様な機能を発揮できるのであれば、その具体的な構成を特に限定されない。本実施態様の自動ドア駆動装置10においては、
図1に示すように、駆動プーリ14aと、従動プーリ14bと、タイミングベルト14cと、ドアエンジン14dとでローラユニット駆動手段14を構成している。
【0030】
駆動プーリ14aは、取付用ベース部材11の一端側(x軸方向正側の端部寄りの箇所)に回転可能な状態で設けられている。一方、従動プーリ14bは、取付用ベース部材11の他端側(x軸方向負側の端部寄りの箇所)に回転可能な状態で設けられている。この駆動プーリ14a及び従動プーリ14bには、無端状(環状)のタイミングベルト14cが掛け回されている。
【0031】
ドアエンジン14dは、駆動プーリ14aに回転力を加えることで、駆動プーリ14a及び従動プーリ14bに掛け回されたタイミングベルト14cを周回方向正側(y軸方向負側から見て時計回り方向)又は周回方向逆側(y軸方向負側から見て反時計回り方向)に移動させるものとなっている。タイミングベルト14cがその周回方向に移動すると、それに固定されたローラユニット13と、ローラユニット13に吊り下げた状態に保持されたドアパネル30とが、タイミングベルト14cが移動する向きに移動するようになっている。これにより、ドアパネル30が開方向又は閉方向に移動される。このドアエンジン14dは、通常、電気モータを用いたものとされる。
【0032】
6. ガイドローラ異常検知手段
ガイドローラ異常検知手段15は、ガイドローラ13a又はガイドレール12に生じた振動を直接的又は間接的に検知することにより、ガイドローラ13a又はガイドレール12の異常を検知するものとなっている。すなわち、既に述べたように、ガイドローラ13aやガイドレール12に異物が付着した状態でドアパネル30の開閉が繰り返されると、ガイドローラ13aやガイドレール12に変形が生じたり、ガイドローラ13aがガイドレール12から脱輪したりして、ドアパネル30が正常に開閉しなくなる。特に、ガイドローラ13aやガイドレール12には、ガイドレール12上をガイドローラ13aがスムーズに移動できるようにするため、油が塗布されるところ、この油に虫などの異物が付着しやすく、自動ドアの故障の原因となる。ガイドローラ異常検知手段15は、自動ドアの故障の原因となるガイドローラ13aやガイドレール12への異物の付着を、ガイドローラ13aがガイドレール12上で移動する際にガイドローラ13aやガイドレール12に生じる振動を検知することで、自動ドアの故障の予兆を捉えるものとなっている。
【0033】
ガイドローラ異常検知手段15は、ガイドローラ13aやガイドレール12の振動を直接的又は間接的に検知できるものであれば特に限定されない。ガイドローラ異常検知手段15は、振動センサや加速度センサなど、対象物の振動を直接的に検知するものであってもよいし、マイクなど、対象物の振動を間接的に検知するものであってもよい。振動センサや加速度センサとしては、振動によって生じる対象物と検知部(電極)とで構成されるコンデンサの静電容量の変化によって振動を検知する静電容量式のものや、検知部(コイル)に高周波電流を流して対象物に生ずる渦電流の強度の変化によって振動を検知する渦電流式のものや、振動に伴って検知部(圧電素子)に生ずる変形を圧電素子が出力する電気信号によって振動を検知する圧電式のものなどが例示される。
【0034】
本実施態様の自動ドア駆動装置10においては、
図3に示すように、ガイドローラ異常検知手段15として、加速度センサ15aと、マイク15bとの2種類を設けている。
図3は、本発明に係る自動ドア駆動装置10を含む自動ドア監視システムの一例を示したブロック図である。加速度センサ15aが検知した振動(加速度)が所定の閾値を超えると、ガイドローラ13a又はガイドレール12に異常が発生したと判断される。また、マイク15bが検知した音の大きさが所定の閾値を超えると、ガイドローラ13a又はガイドレール12に異常が発生したと判断されるようになっている。このように、ガイドローラ異常検知手段15として、2種類を用いることによって、ガイドローラ13aやガイドレール12の異常をより確実に検知することが可能となっている。
【0035】
ガイドローラ異常検知手段15を設ける箇所は、ガイドローラ13aやガイドレール12に生じた振動や音を検知できる箇所であれば特に限定されない。ガイドローラ異常検知手段15として、上記の加速度センサ15aのように、対象物の振動を直接的に検知するものを用いる場合には、ガイドローラ異常検知手段15は、通常、ガイドローラ13aやガイドレール12自体に取り付けられるか、ガイドローラ13aやガイドレール12に一体的に接続されてガイドローラ13aやガイドレール12が振動するとそれに追従して振動する部材に取り付けられる。一方、ガイドローラ異常検知手段15として、上記のマイク15bのように、対象物の振動を音で検知するものを用いる場合には、ガイドローラ13aやガイドレール12から生じた音を検知できる範囲であれば、ガイドローラ異常検知手段15を比較的自由に配置することができる。
【0036】
本実施態様の自動ドア駆動装置10においては、
図1に示すように、取付用ベース部材11に取り付けたセンサボックス19内にガイドローラ異常検知手段15(加速度センサ15a及びマイク15b)を収容している。このセンサボックス19には、ガイドローラ異常検知手段15のほか、後述する検知情報送信手段18も内蔵している。このように、ガイドローラ異常検知手段15及び検知情報送信手段18を共通のボックス(センサボックス19)に収容してユニット化することにより、既設の自動ドアを本発明の自動ドアの構成を備えたものへと容易に改造することが可能になる。
【0037】
7. 開閉状態検知手段
開閉状態検知手段16は、ドアパネル30の開閉状態を検知するためのものとなっている。開閉状態検知手段16としては、ドアパネル30が完全に閉じられた閉状態となったことを検知するものや、ドアパネル30が完全に開かれた開状態となったことを検知するものや、閉状態及び開状態の双方を検知するものなどが例示される。開閉状態検知手段16は、通常、近接センサや光電センサなどの非接触式センサや、リミットスイッチなどの接触式センサが例示される。これらのセンサにより、ドアパネル30が閉位置(閉状態となる位置)や開位置(開状態となる位置)に来たことを検知することで、ドアパネル30の開閉状態を検知することができる。
【0038】
本実施態様の自動ドア駆動装置10においては、
図1に示すように、取付用ベース部材11における中段部(より厳密には、取付用ベース部材11の中段部に固定されたセンサボックス19)に下向きに取り付けた近接センサ16a(検知部)と、ローラユニット13の上縁部に取り付けた被検知部16bとで、開閉状態検知手段16を構成している。近接センサ16aと被検知部16bは、ドアパネル30が閉状態となったときに上下(z軸方向)に重なるようになっている。このため、近接センサ16aがオン(近接センサ16aが被検知部16bを検知している状態)になっていると、ドアパネル30が閉状態にあり、近接センサ16aがオフ(近接センサ16aが被検知部16bを検知していない状態)になっていると、ドアパネル30が閉状態にない(開状態などにある)と判断することができるようになっている。
【0039】
8. 開閉コントローラ
開閉コントローラ17は、ローラユニット駆動手段14を制御することによりドアパネル30の開閉を制御するものとなっている。すなわち、本実施態様の自動ドア駆動装置10においては、既に述べたように、ドアパネル30における手前側の領域に通行者が入ったことを検知するセンサ(以下においては、「第一駆動センサ」と呼ぶ。)と、ドアパネル30における奥側の領域に通行者が入ったことを検知するセンサ(以下においては、「第二駆動センサ」と呼ぶ。)とが設けられているところ、開閉コントローラ17は、ドアパネル30が閉状態にあるときに第一駆動センサや第二駆動センサがオン(通行者を検知した状態)になると、ドアパネル30を開方向に駆動するようローラユニット駆動手段14に制御信号を出力し、ドアパネル30が開状態になって所定時間が経過するか、通行者がドアパネル30の反対側に通り抜けたことを検知すると、ドアパネル30を閉方向に駆動するようローラユニット駆動手段14に制御信号を出力するようになっている。
【0040】
開閉コントローラ17は、上記の機能を発揮できるのであれば特に限定されないが、通常、CPUを備えた制御基板とされる。本実施態様の自動ドア駆動装置10において、開閉コントローラ17は、制御基板をボックス内に収容したものを用いている。開閉コントローラ17を設ける場所も特に限定されないが、本実施態様の自動ドア駆動装置10においては、取付用ベース部材11の奥側の面に固定している。
【0041】
9. 検知情報送信手段
検知情報送信手段18は、ガイドローラ異常検知手段15による検知情報を外部に送信するためのものとなっている。本実施態様の自動ドア駆動装置10においては、既に述べたように、ドアパネル30の開閉状態を検知する開閉状態検知手段16も設けているところ、検知情報送信手段18は、この開閉状態検知手段16による検知情報も外部に送信するようになっている。検知情報送信手段18は、上記の機能を発揮できるのであれば、その構成を特に限定されない。本実施態様の自動ドア駆動装置10においては、
図3に示すように、送信基盤18aと、送信制御部18bと、送信モジュール18cとで検知情報送信手段18を構成している。
【0042】
送信基板18aは、ガイドローラ異常検知手段15(加速度センサ15a及びマイク15b)や、開閉状態検知手段16(近接センサ16a)や、電源22が接続されるとともに、送信制御部18bと、送信モジュール18cとが実装された電子基板となっている。送信制御部18aは、CPUを有するマイコンとなっており、送信に係る各種制御を行う。送信モジュール18cは、データ(検知情報)を外部に送信するためのものとなっている。送信モジュール18cとしては、SIMモジュールやWiFiモジュールなどが例示される。
【0043】
図4は、本発明に係る自動ドア駆動装置10における検知情報送信手段18の送信制御部18bによる処理の一例を説明するフロー図である。本実施態様の自動ドア駆動装置10において、送信制御部18bは、
図3に示す処理を実行している。
【0044】
すなわち、送信制御部18bは、加速度センサ15aやマイク15bや近接センサ16aなどのセンサと通信を行っている(
図4におけるステップS3)。そして、「ドアパネルが開いた(閉状態ではなくなった)」ことを示す信号が近接センサ16aから入力される(
図4におけるステップS4)と、「開データ」を作成して送信モジュール18cから送信する処理を実行する(
図4におけるステップS5)。一方、「ドアパネルが閉じた(閉状態になった)」ことを示す信号が近接センサ16aから入力される(
図4におけるステップS6)と、「開閉データ」を作成して送信モジュール18cから送信する処理を実行する(
図4におけるステップS7)。
【0045】
また、「音が発生した」ことを示す信号がマイク15bから入力される(
図4におけるステップS8)と「音開始処理」を実行する(
図4におけるステップS9)。そして、その後、「その音が止まった」ことを示す信号がマイク15bから入力される(
図4におけるステップS10)と、「音データ」を作成して送信モジュール18cから送信する処理を実行する(
図4におけるステップS11)。さらに、「振動が発生した」ことを示す信号が加速度センサ15aから入力される(
図4におけるステップS12)と、「振動開始処理」を実行する(
図4におけるステップS13)。そして、その後、「その振動が止まった」ことを示す信号が加速度センサ15aから入力される(
図4におけるステップS14)と、「振動データ」を作成して送信モジュール18cから送信する処理を実行する(
図4におけるステップS15)。上記の一連の処理が終わると、後処理(
図4におけるステップS16)を行って、再び、センサ通信(
図4におけるステップS3)へと戻る。
【0046】
このように、本実施態様の自動ドア駆動装置10は、ドアパネル30が開いたことを示す「開データ」や、ドアパネル30が閉じたことを示す「開閉データ」や、音が生じたことを示す「音データ」や、振動が生じたことを示す「振動データ」などの各種のデータが、 送信モジュール18c(検知情報送信手段18)によって、外部へと送信されるようになっている。データ(検知情報)の送信先は、通常、自動ドアの管理業者などの端末50(
図3)とされる。端末50としては、パソコン端末や、タブレット端末や、スマートフォンなどが例示される。
【0047】
本実施態様の自動ドア駆動装置10において、送信モジュール18c(検知情報送信手段18)は、
図3に示されるように、クラウド40を介して端末50にデータ(検知情報)を送信するようになっている。送信モジュール18cとしてWiFiモジュールを用いる場合には、通常、送信モジュール18cとクラウド40(クラウドサーバ)との間にWiFiルータが介在される。
【0048】
ところで、上述した各種データのうち、「開データ」は、ドアパネル30が開いた時刻を含んでおり、「開閉データ」は、ドアパネル30が閉じた時刻を含んでいる。また、「音データ」は、音の大きさ(音圧レベルなど)を含んでおり、「振動データ」は、振動の大きさ(加速度など)を含んでいる。これらのデータ(ログデータ)は、クラウド40(
図4)におけるサーバ(クラウドサーバ)に蓄積され、見やすい状態にされて端末50(
図4)の画面(自動ドア監視画面)に提供される。
図5〜7に、本発明に係る自動ドア駆動装置10を用いた自動ドア監視システムによる自動ドア監視画面(端末50の画面表示)の一例を示す。
図5は、自動ドア監視画面における「開閉」タブをアクティブにした状態を、
図6は、自動ドア監視画面における「エラー起動」タブをアクティブにした状態を、
図7は、自動ドア監視画面における「音・振動」タブをアクティブにした状態をそれぞれ示している。
【0049】
図5に示されるように、自動ドア監視画面における「開閉」タブをアクティブにすると、ドアパネル30が開き始めた時刻(同図中の「開始時間」の項目)と、ドアパネル30が閉じた時刻(同図中の「終了時間」の項目)と、ドアパネル30が開き始めてから閉じ終えるまでの時間(同図中の「時間」の項目)と、ドアパネル30が開閉するときに生じた音の大きさ(同図中の「音」の項目)と、ドアパネル30が開閉するときに生じた振動(加速度)の大きさ(同図中の「振動」の項目)と、ドアパネル30の累計の開閉回数(同図中の「id」の項目)とが、時系列で確認できるようになっている。また、振動に関しては、x軸方向とy軸方向とz軸方向とのそれぞれの成分(
図5中の「X」、「Y」及び「Z」の項目)も確認できるようになっている。さらに、各回のドアパネル30の開閉につき、異常(エラー)の発生の有無(
図5中の「エラー」及び「開閉」の項目)も確認できるようになっている。さらにまた、発生したエラーが、「音」に係るものなのか、「振動(加速度)」に係るものなのか、「起動」に係るものなのかの確認もできるようになっている。
【0050】
また、
図6に示されるように、自動ドア監視画面における「エラー起動」タブをアクティブにすると、上記のクラウドサーバに記録されている開閉動作のうち、「起動」に関するエラーが生じたものが抽出されて表示されるようになって
いる。さらに、
図7に示されるように、「音・振動」タブをアクティブにすると、上記のクラウドサーバに記録されている開閉動作のうち、「音」又は「振動(加速度)」に関するエラーが生じたもの(所定の閾値を超えたもの)が抽出されて表示されるようになっている。エラーとして認識する「音」や「振動(加速度)」の閾値は、コンピュータが自動で設定するようにしてもよいし、人手により入力するようにしてもよい。さらに、図には示していないが、自動ドア監視画面における「すべて」タブをアクティブにすると、上記のクラウドサーバに記録されている開閉動作のうち、いずれかのエラーが生じたものが全て表示されるようになっている。
【0051】
ところで、本実施態様の自動ドア監視システムでは、上記のように、ドアパネル30が開き始めてから閉じ終えるまでの時間(開閉時間)も分かるため、この開閉時間を監視し、開閉時間が閾値を超えたときに、ドアパネル30が開きっぱなしの状態(ドアパネル30が閉じない状態)であることを把握することもできる。このエラーも自動ドア監視画面に表示させるようにしてもよい。この場合、エラーとして認識する開閉時間の閾値も、コンピュータが自動で設定するようにしてもよいし、人手により入力するようにしてもよい。
【0052】
以上のように、本実施態様の自動ドア駆動装置10を用いた自動ドア監視システムは、端末50で
図5〜7に示されるような自動ドア監視画面を確認することで、自動ドアに故障が生じたことは勿論のこと、近い将来に故障を引き起こしそうな兆候を確認することが可能なものとなっている。このため、自動ドアの故障を未然に防ぎ得る。また、自動ドアのメンテナンスを必要なときに遅滞なく行うことができるため、自動ドアのメンテナンスに要する手間やコストも大幅に軽減することも可能となっている。加えて、万が一故障が発生した場合でも、故障発生時の状況を確認することで、故障の原因を高い確度で速やかに特定することも可能である。したがって、自動ドアの修理に要する手間やコストも削減することも可能となっている。