特許第6952387号(P6952387)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6952387
(24)【登録日】2021年9月30日
(45)【発行日】2021年10月20日
(54)【発明の名称】電動/液圧両用シリンダ装置
(51)【国際特許分類】
   F15B 15/14 20060101AFI20211011BHJP
   F16H 25/22 20060101ALI20211011BHJP
   H02K 7/06 20060101ALI20211011BHJP
【FI】
   F15B15/14 Z
   F15B15/14 340Z
   F16H25/22 Z
   H02K7/06 A
【請求項の数】11
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2021-71167(P2021-71167)
(22)【出願日】2021年4月20日
【審査請求日】2021年5月24日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】394007849
【氏名又は名称】株式会社堀内機械
(74)【代理人】
【識別番号】110000844
【氏名又は名称】特許業務法人 クレイア特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】真下 和昌
(72)【発明者】
【氏名】新井 隆智
【審査官】 谿花 正由輝
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−337353(JP,A)
【文献】 実公昭48−034455(JP,Y1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F15B 15/14
F16H 25/22
H02K 7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒形のシリンダチューブと、前記シリンダチューブ内にあって、電動駆動される第1ピストンと、液圧駆動される第2ピストンと、前記第1ピストンと前記第2ピストンとの両方の力を伝達するピストンロッドとを備え、
前記第1ピストンは軸心に設けられた雌ねじに螺合するボールねじをモータで回転することによって駆動され、
前記第1ピストンの外周に設けられた凸状のキーと、前記キーと係合し、前記シリンダチューブに貫通して設けられた長穴とよりなる廻り止め機構を有し、
前記長穴を前記シリンダチューブの外部から覆う蓋を有するとともに、前記蓋を取外し可能とする電動/液圧両用シリンダ装置。
【請求項2】
円筒形のシリンダチューブと、前記シリンダチューブ内にあって、電動駆動される第1ピストンと、液圧駆動される第2ピストンと、前記第1ピストンと前記第2ピストンとの両方の力を伝達するピストンロッドとを備え、
前記第1ピストンは軸心に設けられた雌ねじに螺合するボールねじをモータで回転することによって駆動され、
前記第1ピストンの外周に設けられた凸状のキーと、前記キーと係合し、前記シリンダチューブに貫通して設けられた長穴とよりなる廻り止め機構を有し、
前記第2ピストンが液圧駆動される場合、前記第1ピストンは電動駆動されないように構成された、電動/液圧両用シリンダ装置。
【請求項3】
円筒形のシリンダチューブと、前記シリンダチューブ内にあって、電動駆動される第1ピストンと、液圧駆動される第2ピストンと、前記第1ピストンと前記第2ピストンとの両方の力を伝達するピストンロッドとを備え、
前記第1ピストンは軸心に設けられた雌ねじに螺合するボールねじをモータで回転することによって駆動され、
前記第1ピストンの外周に設けられた凸状のキーと、前記キーと係合し、前記シリンダチューブに貫通して設けられた長穴とよりなる廻り止め機構を有し、
前記第2ピストンが液圧駆動される場合、前記第1ピストンは電動駆動されないように構成され、
前記第2ピストンは両側にシリンダ室を有し、一方の前記シリンダ室に液圧を作用させる第1液圧駆動モードと、他方の前記シリンダ室に液圧を作用させる第2液圧駆動モードと、両側の前記シリンダ室を共通接続する非駆動モードとを備え、
前記第1ピストンと前記第2ピストンとはともに前記ピストンロッドと連結固定され、
前記ピストンロッドの駆動開始から、所定の距離または所定の時間前記ピストンロッドが移動するまでの間は、前記第2ピストンが前記第1液圧駆動モードまたは前記第2液圧駆動モードで液圧駆動される、電動/液圧両用シリンダ装置。
【請求項4】
円筒形のシリンダチューブと、前記シリンダチューブ内にあって、電動駆動される第1ピストンと、液圧駆動される第2ピストンと、前記第1ピストンと前記第2ピストンとの両方の力を伝達するピストンロッドとを備え、
前記第1ピストンは軸心に設けられた雌ねじに螺合するボールねじをモータで回転することによって駆動され、
前記第1ピストンの外周に設けられた凸状のキーと、前記キーと係合し、前記シリンダチューブに貫通して設けられた長穴とよりなる廻り止め機構を有し、
前記第2ピストンが液圧駆動される場合、前記第1ピストンは電動駆動されないように構成され、
前記第2ピストンは片側にシリンダ室を有し、前記シリンダ室に液圧を作用させる第3液圧駆動モードと、前記シリンダ室に液圧を作用させない非駆動モードとを備え、
前記第1ピストンは前記ピストンロッドと連結固定され、
前記ピストンロッドの一方向への駆動開始から、所定の距離または所定の時間前記ピストンロッドが移動するまでの間は、前記第2ピストンが前記第3液圧駆動モードで液圧駆動される、電動/液圧両用シリンダ装置。
【請求項5】
円筒形のシリンダチューブと、前記シリンダチューブ内にあって、電動駆動される第1ピストンと、液圧駆動される第2ピストンと、前記第1ピストンと前記第2ピストンとの両方の力を伝達するピストンロッドとを備え、
前記第1ピストンは軸心に設けられた雌ねじに螺合するボールねじをモータで回転することによって駆動され、
前記第1ピストンの外周に設けられた凸状のキーと、前記キーと係合し、前記シリンダチューブに貫通して設けられた長穴とよりなる廻り止め機構を有し、
前記第2ピストンが液圧駆動される場合、前記第1ピストンは同じ方向に電動駆動されるように構成され、
前記第2ピストンは両側にシリンダ室を有し、一方の前記シリンダ室に液圧を作用させる第1液圧駆動モードと、他方の前記シリンダ室に液圧を作用させる第2液圧駆動モードと、両側の前記シリンダ室を共通接続する非駆動モードとを備え、
前記第1ピストンと前記第2ピストンとはともに前記ピストンロッドと連結固定され、
前記ピストンロッドの駆動開始から、所定の距離または所定の時間前記ピストンロッドが移動するまでの間は、前記第2ピストンが前記第1液圧駆動モードまたは前記第2液圧駆動モードで液圧駆動される、電動/液圧両用シリンダ装置。
【請求項6】
円筒形のシリンダチューブと、前記シリンダチューブ内にあって、電動駆動される第1ピストンと、液圧駆動される第2ピストンと、前記第1ピストンと前記第2ピストンとの両方の力を伝達するピストンロッドとを備え、
前記第1ピストンは軸心に設けられた雌ねじに螺合するボールねじをモータで回転することによって駆動され、
前記第1ピストンの外周に設けられた凸状のキーと、前記キーと係合し、前記シリンダチューブに貫通して設けられた長穴とよりなる廻り止め機構を有し、
前記第2ピストンが液圧駆動される場合、前記第1ピストンは同じ方向に電動駆動されるように構成され、
前記第2ピストンは片側にシリンダ室を有し、前記シリンダ室に液圧を作用させる第3液圧駆動モードと、前記シリンダ室に液圧を作用させない非駆動モードとを備え、
前記第1ピストンは前記ピストンロッドと連結固定され、
前記ピストンロッドの一方向への駆動開始から、所定の距離または所定の時間前記ピストンロッドが移動するまでの間は、前記第2ピストンが前記第3液圧駆動モードで液圧駆動される、電動/液圧両用シリンダ装置。
【請求項7】
前記長穴を前記シリンダチューブの外部から覆う蓋を有するとともに、前記蓋を取外し可能とした請求項2から6のいずれか1項に記載の電動/液圧両用シリンダ装置。
【請求項8】
前記第2ピストンが液圧駆動される場合、前記第1ピストンは同じ方向に電動駆動されるように構成された、請求項1または7に記載の電動/液圧両用シリンダ装置。
【請求項9】
前記キーは真鍮製であり、前記シリンダチューブは鋼鉄製である、請求項1から8のいずれか1項に記載の電動/液圧両用シリンダ装置。
【請求項10】
前記長穴を経由して前記雌ねじに潤滑剤を注入する経路を有する、請求項1からのいずれか1項に記載の電動/液圧両用シリンダ装置。
【請求項11】
前記ボールねじの回転量を積算することによって、前記ピストンロッドの位置を検出する位置検出器を備える、請求項1から10のいずれか1項に記載の電動/液圧両用シリンダ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廻り止め機構を有する電動/液圧両用シリンダ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電動/液圧両用シリンダ装置など、2種類のピストンを有し、高推力駆動と高速駆動とを兼ね備えた駆動装置に関しては、多くの発明が出願されている。
【0003】
例えば、特許文献1(特開2008−304034号公報)には、ノックアウトピンの作動をフレキシブルに制御することができ、設備の大型化等を防ぐことができる鍛造プレスにおけるノックアウト装置およびかかるノックアウト装置に利用しうるシリンダ装置が開示されている。
特許文献1に記載のシリンダ装置では、作動流体により作動する両ロッドシリンダと、両ロッドシリンダの一方のロッドを、その軸方向から押して移動させうる押圧機構とからなり、押圧機構が、一方のロッドに対して非固定であって、一方のロッドの端部を他方のロッドに向かって押しうる押圧部材と、押圧部材を、ネジナット機構によって一方のロッドの軸方向に沿って進退させる移動手段とからなる。両ロッドシリンダを駆動する駆動源を選択すれば、使用する状況に合わせて、両ロッドシリンダを最適な状態で作動させることができる。
【0004】
また、特許文献2(特開2005−337353号公報)には、制御が容易で、大容量の設備にも対応可能な油圧シリンダ装置が開示されている。
特許文献2に記載の油圧シリンダ装置は、移動体側ロッドの移動に追従してピストンが油圧で移動するので、ピストンに結合された駆動ロッドが大きな軸力を発生する。開閉弁の移動速度よりも大きな速度でピストンが移動した場合に、開閉弁が開かれてピストンに設けられた作動油通路を介してシリンダの油室の油圧が抜ける。したがって、ピストンは常に開閉弁つまり移動体側ロッドの移動に追随して、移動体側ロッドと同じ速度で移動することになる。移動体側ロッドを移動させる力に比して格段に大きな力で駆動ロッドが駆動され、しかも、駆動ロッドが移動体側ロッドに追従して移動される。
【0005】
また、特許文献3(特開2001−295805号公報)には、低速度かつ高出力を必要とし、その他の行程では早送りを必要とする両機能の要求に応えるねじ・油圧両用のパワーシリンダー機構が開示されている。
特許文献3に記載のねじ・油圧両用のパワーシリンダー機構では、ボールねじの回転軸とナットからなる回転/直動変換機構と、回転軸を内部に有し、その上端側から直結した直結機構によりナットの直動に応じて出力軸を直動するねじ送りシリンダー機構と、ナットの下端に一体化した第1ピストンの付勢をパスカルの原理で伝達する油圧機構により付勢の第2ピストンとこの第2ピストンに一体化した出力軸からなる高推力で直動する油圧シリンダー機構からなり、これら両機構の択一的切換機構をナットの上端側の直結機構に設けた電磁連結器と油圧機構に設けた電磁弁から構成してねじ送りシリンダー機構および油圧シリンダー機構を一体化している。
【0006】
また、特許文献4(特開2017−187089号公報)には、作動力を維持しつつ、小型化を実現することができる多段シリンダ装置が開示されている。
特許文献4に記載の多段シリンダ装置は、第1シリンダチューブと、第1シリンダチューブ内に設けられ、内部に空洞を有する第1ピストンと、第1ピストンの空洞と連通して形成された空洞を有し、かつ第1ピストンと一体に形成された第1ピストンロッドと、第1ピストンの空洞および第1ピストンロッドの空洞からなる小シリンダチューブと、第1シリンダチューブと異なる第2シリンダチューブと、第2シリンダチューブ内に設けられた第2ピストンと、第2ピストンと一体に形成され、小シリンダチューブ内を移動する第2ピストンロッドと、を含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−304034号公報
【特許文献2】特開2005−337353号公報
【特許文献3】特開2001−295805号公報
【特許文献4】特開2017−187089号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
例えば金型を利用した機械加工に用いられるシリンダ装置では、金型を移動する往行程と復行程の折り返し点近傍は低速度であるが高出力を必要とし、その他の行程においては生産性の観点から早送りが必要となる。
また、射出成形装置においては、射出スクリュを駆動するには高駆動力が必要であり、一方、精度の高い射出制御を実現するためには正確な速度制御が必要になる。
したがって、これらの装置に用いられる駆動装置としては、駆動距離は短いが高駆動力の駆動方法と、駆動力は小さいが速度の速いおよび/または正確な速度制御の可能な駆動方法とを兼ね備えた駆動装置が必要である。
【0009】
この両者の要求を満たすものとして、液圧シリンダと電動シリンダとを組み合わせた駆動装置がある。この装置では、液圧シリンダで駆動することで高駆動力を実現し、電動シリンダで駆動することで高速および/または正確な速度制御を可能としている。しかし、電動/液圧両用シリンダ装置には以下の課題がある。
1)電動シリンダと液圧シリンダとはシリンダおよびピストンの構造が異なるため、1つの駆動装置で電動シリンダと液圧シリンダとを構成しようとすると、駆動装置の構造が複雑になり、駆動装置の小型化、低価格化の障害となる。
2)液圧シリンダのシリンダ内部に電動シリンダのピストン(電動ボールねじのナットの部分)を挿入する構造にすると、構成は単純化されるが電動シリンダの廻り止め(電動ボールねじが回転するときにナットの回転を阻止する機構)をシリンダ内部に形成する必要がある。
3)また、液圧シリンダのシリンダ内部に電動シリンダのピストンを挿入した場合、電動ボールねじのナットの部分への潤滑剤の注入などのメンテナンスが困難になる。
【0010】
特許文献1に記載のシリンダ装置では、押圧機構(電動シリンダに相当)と両ロッドシリンダ(液圧シリンダに相当)とがそれぞれ独立に形成され、合体されており、構造が複雑である。
図7には、特許文献2の図1に記載の油圧シリンダ装置510の側面断面図を示す。図7において、511は油圧シリンダ、514はピストン、525はボールねじ軸、526はボールねじナット、527はボールねじ支台である。特許文献2に記載の油圧シリンダ装置510の場合も、油圧シリンダ511とボールねじ軸525/ボールねじナット526とからなる電動シリンダとはそれぞれ独立に形成され、合体されており、構造が複雑である。また、ボールねじナット526には、ボールねじ軸525が回転した時の廻り止め機構が必要であるが、特許文献2にはその解決方法が記載されていない。
【0011】
特許文献3に記載のねじ・油圧両用のパワーシリンダー機構は油圧ポンプが内蔵されており、電動シリンダで油圧駆動も行う。このため、構造が大変複雑である。また、電動シリンダと油圧シリンダが一体化しており、廻り止め機構を電動シリンダに形成することが難しいため、ボールねじの軸芯をナット回転防止偏芯防止盤の中心から偏芯させることでナットの回転を阻止している。しかし、この場合、軸に偏荷重がかかるため、耐久性に課題がある。耐久性の課題解決には、荷重に耐えるためボールねじの大径化、かつ強力な電動モータが必要で、装置の大型化とコストデメリットを招く。また、ボールねじとナットとの螺合部には潤滑剤の注入などのメンテナンスが必要であるが、特許文献3の構造ではメンテナンスが難しいとの課題もある。
【0012】
特許文献4に記載の多段シリンダ装置は、受圧面積の異なる2つのピストンを内蔵することで高駆動力と高速駆動の両立を実現している。この場合、ボールねじを用いないため、廻り止め機構は必要ない。しかし、特許文献4に記載の多段シリンダ装置では、正確な速度制御は困難である。
【0013】
本発明の主な目的は、駆動距離は短いが高駆動力の駆動方法と、駆動力は小さいが速度の速いおよび/または正確な速度制御の可能な駆動方法とを兼ね備えた、構造が単純で、耐久性が高く、メンテナンスの容易な、電動/液圧両用シリンダ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
(1)
一局面に従う電動/液圧両用シリンダ装置は、円筒形のシリンダチューブと、シリンダチューブ内にあって、電動駆動される第1ピストンと、液圧駆動される第2ピストンと、第1ピストンと第2ピストンとの両方の力を伝達するピストンロッドとを備え、第1ピストンは軸心に設けられた雌ねじに螺合するボールねじをモータで回転することによって駆動され、第1ピストンの外周に設けられた凸状のキーと、キーと係合し、シリンダチューブに貫通して設けられた長穴とよりなる廻り止め機構を有する。
【0015】
この場合、ボールねじをモータで回転して第1ピストンを駆動することによって、速度の速いおよび/または正確な速度制御の可能な駆動方法を実現し、第2ピストンを液圧駆動することによって、高駆動力の駆動方法を実現することができる。
また、第1ピストンと第2ピストンとを1つのシリンダチューブに内蔵することによって、全体構造を単純にすることができ、製造コスト面からメリットがある。
また、電動駆動される第1ピストンをシリンダチューブに内蔵した場合、廻り止め機構が課題になるが、一局面に従う電動/液圧両用シリンダ装置では、第1ピストンの外周に設けられた凸状のキーと、キーと係合し、シリンダチューブに貫通して設けられた長穴とよりなる廻り止め機構を有している。
この構造の回り止め機構は、第1ピストンの軸心からキーと長穴との接点までの距離のトルクを廻り止めに用いることができること、シリンダチューブおよび第1ピストンにスプラインなどの複雑な形状の加工をする必要がないこと、また、第1ピストンの軸心がシリンダチューブの軸心と一致しており、軸に偏荷重がかからないことから、構造が単純で、かつ、耐久性の高い廻り止め機構を実現している。
本機構は、軸心から最も離れた位置で廻り止めがされ、高いトルクに対しても最小限の力で回転抑止できるので、シリンダ装置の小型化を実現することができる。また、構造が単純であるため、メンテナンスが容易なシリンダ装置とすることができる。
【0016】
(2)
第2の発明にかかる電動/液圧両用シリンダ装置は、一局面に従う電動/液圧両用シリンダ装置において、長穴をシリンダチューブの外部から覆う蓋を有すると共に、蓋を取外し可能としてもよい。
【0017】
この場合、蓋をシリンダチューブに固定することによってシリンダチューブの内部への埃等の侵入を避けることができるとともに、蓋を取り外すことによって、第1ピストンおよびボールねじ等のメンテナンスが容易になる。また、電動/液圧両用シリンダ装置の動作時は、長穴を広げる方向に第1ピストンの回転トルクがかかるため、蓋を閉めて長穴の両側を複数のボルトで固定することによって、トルクを受ける長穴を補強することになる。
【0018】
(3)
第3の発明にかかる電動/液圧両用シリンダ装置は、一局面から第2の発明にかかる電動/液圧両用シリンダ装置において、キーは真鍮製であり、シリンダチューブは鋼鉄製であってもよい。
【0019】
この場合、円周方向への圧力が印加された状態での長穴内でのキーの軸方向の移動において、焼き付きを防止することができる。
【0020】
(4)
第4の発明にかかる電動/液圧両用シリンダ装置は、一局面から第3の発明にかかる電動/液圧両用シリンダ装置において、長穴を経由して雌ねじに潤滑剤を注入する経路を有してもよい。
【0021】
この場合、シリンダチューブを分解することなく、長穴を経由して第1ピストンの雌ねじとボールねじとの螺合部に潤滑剤を注入することができ、電動シリンダのメンテナンスが容易になる。
【0022】
(5)
第5の発明にかかる電動/液圧両用シリンダ装置は、一局面から第4の発明にかかる電動/液圧両用シリンダ装置において、第2ピストンが液圧駆動されるときは第1ピストンは電動駆動されないように構成されてもよい。
【0023】
第1ピストンが電動駆動され、かつ、第2ピストンが液圧駆動された場合、第1ピストンの雌ねじとボールねじとの間に過剰なストレスがかかる場合がある。第5の発明にかかる電動/液圧両用シリンダ装置では、第2ピストンが液圧駆動される間、ボールねじを回転するモータをオフにする等の方法によって、ボールねじが自由回転でき、第1ピストンの雌ねじとボールねじとの間に過剰なストレスがかからないように構成されている。
【0024】
(6)
第6の発明にかかる電動/液圧両用シリンダ装置は、一局面から第4の発明にかかる電動/液圧両用シリンダ装置において、第2ピストンが液圧駆動されるときは第1ピストンは同じ方向に電動駆動されるように構成されてもよい。
【0025】
第6の発明にかかる電動/液圧両用シリンダ装置では、第2ピストンを液圧駆動する場合、第1ピストンを駆動するボールねじの動作方向にあらかじめサーボモータで回転力を与えておき、液圧による力とボールねじの力とを合算してピストンロッドを駆動するように構成されている。
【0026】
(7)
第7の発明にかかる電動/液圧両用シリンダ装置は、第5または第6の発明にかかる電動/液圧両用シリンダ装置において、第2ピストンは両側にシリンダ室を有し、一方のシリンダ室に液圧を作用させる第1液圧駆動モードと、他方のシリンダ室に液圧を作用させる第2の液圧駆動モードと、両側のシリンダ室を共通接続する非駆動モードとを備え、第1ピストンと第2ピストンとはともにピストンロッドと連結固定され、ピストンロッドの駆動開始から、所定の距離または所定の時間ピストンロッドが移動するまでの間は、第2ピストンが第1液圧駆動モードまたは第2液圧駆動モードで液圧駆動されてもよい。
【0027】
この場合、第2ピストンは、一方向および他方向への液圧駆動モードと、両方向へ自由に移動することのできる非駆動モードのうち、いずれかを選択することができる。また、第1ピストンと第2ピストンとはともにピストンロッドと連結固定されていることから、ピストンロッドは、第1ピストンによっても、第2ピストンによっても、両方向への駆動が可能となる。
したがって、第7の発明にかかる電動/液圧両用シリンダ装置は、一方向または他方向へ、電動または液圧により、ピストンロッドを駆動することができる。ただし、金型を利用した機械加工、あるいは射出成形装置等においては、高駆動力の駆動が必要とされるのは、一方向または他方向への駆動開始直後のみであることから、第6の発明にかかる電動/液圧両用シリンダ装置では、ピストンロッドの駆動開始から、所定の距離または所定の時間ピストンロッドが移動するまでの間のみ液圧駆動されるように構成されている。そして、それ以外はピストンロッドを電動駆動することにより、駆動時間の短縮、駆動速度の正確な制御を実現している。
また、第7の発明にかかる電動/液圧両用シリンダ装置は、駆動時間の大半を電動駆動とすることにより駆動装置のエネルギー消費の低減を図っている。
【0028】
(8)
第8の発明にかかる電動/液圧両用シリンダ装置は、第5または第6の発明にかかる電動/液圧両用シリンダ装置において、第2ピストンは片側にシリンダ室を有し、シリンダ室に液圧を作用させる第3液圧駆動モードと、シリンダ室に液圧を作用させない非駆動モードとを備え、第1ピストンはピストンロッドと連結固定され、ピストンロッドの一方向への駆動開始から、所定の距離または所定の時間ピストンロッドが移動するまでの間は、第2ピストンが第3液圧駆動モードで液圧駆動されてもよい。
【0029】
金型を利用した機械加工、あるいは射出成形装置等においては、一方向への駆動開始直後のみ、または他方向への駆動開始直後のみに高駆動力の駆動が必要な場合が多い。第7の発明にかかる電動/液圧両用シリンダ装置は、このような用途に向けて構成されたものであって、第2ピストンは片側のみにシリンダ室を有し、一方向または他方向への駆動開始直後のみピストンロッドを駆動する。そして、一方向または他方向への駆動開始直後を除いては、第1ピストンの電動駆動によってピストンロッドを両方向へ駆動し、駆動時間の短縮、駆動速度の正確な制御、およびエネルギー消費の低減を図っている。
【0030】
(9)
第9の発明にかかる電動/液圧両用シリンダ装置は、一局面から第8の発明にかかる電動/液圧両用シリンダ装置において、ボールねじの回転量を積算することによって、ピストンロッドの位置を検出する位置検出器を備えてもよい。
【0031】
ピストンロッドの位置は、ボールねじの回転量の積算値に正確に比例して移動するため、ボールねじの回転量を積算することによって、ピストンロッドの位置を正確に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】第1の実施形態の電動/液圧両用シリンダ装置の模式的断面図である。
図2】廻り止め機構の模式的斜視図である。
図3】廻り止め機構の模式的上面図である。
図4図3のA−A’面の断面図である。
図5】電動/液圧両用シリンダ装置の動作のフローチャートを示す図である。
図6】第2の実施形態の電動/液圧両用シリンダ装置の模式的断面図である。
図7】従来技術による油圧シリンダ装置の側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付す。また、同符号の場合には、それらの名称および機能も同一である。したがって、それらについての詳細な説明は繰り返さないものとする。
【0034】
[第1の実施形態]
図1は第1の実施形態の電動/液圧両用シリンダ装置100の模式的断面図であり、図2は廻り止め機構の模式的斜視図であり、図3は廻り止め機構の模式的上面図である。
【0035】
(電動/液圧両用シリンダ装置100の構成)
図1において、電動/液圧両用シリンダ装置100は円筒形のシリンダチューブ10、電動駆動される第1ピストン20、液圧駆動される第2ピストン30、ピストンロッド40を備える。第1ピストン20および第2ピストン30はともにシリンダチューブ10の内部に配置されている。また、第1ピストン20、第2ピストン30、およびピストンロッド40は、連結固定されている。
なお、シリンダチューブ10は、液圧駆動部と電動駆動部とで、径が異なっていても良いし同じであっても良い。本実施の形態では、液圧駆動部の径が電動駆動部の径より大きい場合を示す。これにより受圧面積が大きくなり液圧駆動の力を大きくすることができる。
【0036】
(電動シリンダの構成と動作)
電動シリンダの第1ピストン20は軸心に雌ねじが設けられ、ボールねじ70が雌ねじに螺合している。ボールねじ70はベルト85を介してモータ80により回転駆動される。第1ピストン20は、外周に設けた凸状のキー50と、キー50と係合し、シリンダチューブ10に貫通して設けた長穴60とよりなる廻り止め機構を有するため、ボールねじ70が回転すると、第1ピストン20と第1ピストン20に連結固定されたピストンロッド40および第2ピストン30が軸方向に移動する。
ボールねじ70の回転は位置検出器90に伝えられ、位置検出器90はボールねじ70の回転量を積算することによって、ピストンロッド40の軸方向の位置を正確に検出する。
【0037】
(液圧シリンダの構成と動作)
液圧シリンダの第2ピストン30は軸方向の第1ピストン20の側に第1シリンダ室11、反対側に第2シリンダ室12を備えており、それぞれのシリンダ室はシリンダチューブ10および第2ピストン30に設けられたシールリング45で液密に構成されている。
第1シリンダ室11および第2シリンダ室12は第1切換弁110および第2切換弁120に接続されている。また、第1切換弁110の反対側の端子はポンプ130およびタンク150に接続されている。
第2ピストン30を第1ピストン20の側と反対の方向(図1の右方向)へ駆動する第1液圧駆動モードでは、第1切換弁110は順方向(ポンプ130が第1シリンダ室11に接続される方向)に接続され、第2切換弁120はオフとなる。この状態で、ポンプ130をオンすると、第1シリンダ室11の液圧が高まり、第2ピストン30は図1の右方向へ駆動される。
第2ピストン30を図1の左方向へ駆動する第2液圧駆動モードでは、第1切換弁110は逆方向(ポンプ130が第2シリンダ室12に接続される方向)に接続され、第2切換弁120はオフとなる。この状態で、ポンプ130をオンすると、第2シリンダ室12の液圧が高まり、第2ピストン30は図1の左方向へ駆動される。
また、非駆動モードでは、第1切換弁110はオフとなり、第2切換弁120はオンとなる。したがって、非駆動モードでは、第2ピストン30は軸方向において自由に移動できる。
【0038】
(廻り止め機構の構造)
図2に廻り止め機構の模式的斜視図を、図3に廻り止め機構の模式的上面図を示す。また、図4には図3のA−A’面の断面図を示す。なお、図2図3とは蓋53を取り外した状態の図であり、図4は蓋53がシリンダチューブ10に固定された状態の図である。
凸状のキー50が第1ピストン20の外周にねじ止めされ、シリンダチューブ10に貫通して設けられた長穴60と係合している。キー50はシリンダチューブ10の円周方向には長穴60と接しており、したがって第1ピストン20の円周方向の回転を阻止している。一方で、シリンダチューブ10の軸方向には長穴60との間に隙間があり、したがって、第1ピストン20はシリンダチューブ10の軸方向には自由に移動できる。キー50は長穴60の中で軸方向に距離D1移動可能であり、一方、第2ピストン30は軸方向に距離D2移動可能である(図1参照)。この場合、D1はD2より大きい。
【0039】
キー50は真鍮製であり、シリンダチューブ10は鋼鉄製であることが望ましい。これは、円周方向への圧力が印加された状態でのキー50の軸方向の移動において、焼き付きを防止するためである。
また、シリンダチューブ10の長穴60側の側面は平面状で、長穴60とキー50との接触面積を、面圧(単位面積あたりに作用する荷重)が6N/mmより低くなるように設定することが望ましい。これは、キー50からのシリンダチューブ10の円周方向へのトルクに対する耐久力を確保するためである。
【0040】
従来のように、第1ピストン20のトルクをレールを用いて受けようとする場合、ボルト等で固定されるレールの耐久性および剛性が十分でなく、またシリンダチューブ10内にレールを設けることになるため、電動/液圧両用シリンダ装置100が大型化するという問題があった。また、レールを用いてピストンロッド40の回転を止めようとすると、ボールねじ70の回転トルクが大きい場合にピストンロッド40が座屈するという問題があった。また、軸心位置を偏心させて廻り止めをする場合は、トルクを受ける部材の負荷が大きく、またピストンロッド40に偏荷重が掛るため、耐久性の問題があった。
一方で、本実施形態によると、キー50は、シリンダチューブ10に設けられた長穴60でボールねじ70の回転トルクを受けるため、軸心から最も離れた位置で廻り止めがされる。したがって、ピストンロッド40に偏荷重が掛らず、高いトルクに対しても最小限の力で回転抑止でき、電動/液圧両用シリンダ装置100の小型化を実現することができる。また、第1ピストン20に設けられたキー50が、ボールねじ70の回転トルクを伝えるため、部材が変形するといった不具合が生じない。さらに、構造が単純であるため、メンテナンスが容易な電動/液圧両用シリンダ装置100とすることができる。
【0041】
シリンダチューブ10の長穴60の周辺は平面になっており、長穴60に沿う両側に長穴60をシリンダチューブ10の外部から覆う蓋53を固定するためのねじ穴52が設けられている。これは、蓋53をシリンダチューブ10に固定することによってシリンダチューブ10内部への埃等の侵入を避けるとともに、蓋53を取り外すことによって、第1ピストン20およびボールねじ70等のメンテナンスを容易にするためである。また、電動/液圧両用シリンダ装置100の動作時は、長穴60を広げる方向に第1ピストン20の回転トルクがかかるため、蓋53を閉めて長穴60の両側を複数のボルトで固定することによって、トルクを受ける長穴60を補強することになる。シリンダチューブ10と蓋53とが接する面は、平面状で鏡面仕上げとすることが好ましい。このシリンダチューブ10の平面と、キー50の天面とは、同一の面とすることが好ましい。
【0042】
また、キー50には、第1ピストン20の雌ねじにグリスアップするためのグリスアップ経路51が開口している。
電動シリンダにおいては、その耐久性を高めるためには、第1ピストン20の雌ねじ部とボールねじ70との螺合部にグリスアップするなどのメンテナンスが重要となる。しかし、螺合部がシリンダチューブ10の内部に位置している場合、螺合部をメンテナンスするためには、従来はシリンダチューブ10を分解することが必要であった。本実施形態の電動/液圧両用シリンダ装置100では、シリンダチューブ10の長穴60に露出するキー50のグリスアップ経路51から螺合部にグリスアップすることができるため、電動/液圧両用シリンダ装置100のメンテナンスが大幅に容易となる。
【0043】
(電動/液圧両用シリンダ装置100の動作のフローチャート)
図5(a)にはピストンロッド40を図1の右方向へ駆動する場合のフローチャートを、図5(b)にはピストンロッド40を図1の左方向へ駆動する場合のフローチャートを示した。ともに、まず液圧でピストンロッド40を所定の距離駆動し、その後、電動で所定の位置まで駆動する場合のフローチャートである。
ピストンロッド40を図1の右方向へ駆動する場合、図5(a)において、まずモータ80オフ、第1切換弁110順方向オン、第2切換弁120オフの状態でポンプ130をオンにし、液圧でピストンロッド40を右方向へ駆動する(ステップS1)。なお、このステップS1において、モータ80をオフにするのではなく、モータ80も第1ピストン20を右方向へ駆動する向きに回転し、第1ピストン20と第2ピストン30との駆動力を合算してピストンロッド40を駆動するように構成してもよい。
次に位置検出器90でピストンロッド40が所定の距離移動したことを確認し(ステップS2)、ポンプ130をオフし、第1切換弁110オフ、第2切換弁オンの状態でモータ80をオンにする(ステップS3)。なお、位置検出器90でピストンロッド40が所定の距離移動したことを確認する代わりに、駆動開始からの時間を計測し、所定の時間経過したことを確認して、ポンプ130をオフし、第1切換弁110オフ、第2切換弁オンの状態でモータ80をオンにしてもよい。
そして、位置検出器90でピストンロッド40が所定の位置に到達したことを確認して終了とする(ステップS3)。
ピストンロッド40を図1の左方向へ駆動する場合(図5(b))は、ステップS5で第1切換弁を逆方向にする点と、ステップS3とステップS7とでモータ80の回転方向が逆である点のみ異なり、その他は図5(a)と同一である。
【0044】
[第2の実施形態]
第1の実施形態の電動/液圧両用シリンダ装置100は、ピストンロッド40を押し方向(図1の右方向)へ駆動する場合も引き方向(図1の左方向)へ駆動する場合も、まず液圧で駆動し、その後電動で駆動するというものであるが、鍛造プレス装置、射出成形装置などのように、押し方向の駆動開始時のみ、または引き方向の駆動開始時のみに高駆動力が必要になる場合がある。
第2の実施形態の電動/液圧両用シリンダ装置100aは、このような場合に限定して構成されたものである。
図6に第2の実施形態の電動/液圧両用シリンダ装置100aの模式的断面図である。第2の実施形態の電動/液圧両用シリンダ装置100aは液圧シリンダの構成と動作のみが、第1の実施形態の電動/液圧両用シリンダ装置100と異なり、電動シリンダおよび廻り止め機構については第1の実施形態の電動/液圧両用シリンダ装置100と同一である。このため、以下では液圧シリンダの構成と動作についてのみ説明する。
【0045】
(液圧シリンダの構成と動作)
液圧シリンダの第2ピストン30aは軸方向の第1ピストン20の側に第3シリンダ室13を備えており、反対側にはシリンダ室はない。第3シリンダ室はシリンダチューブ10および第2ピストン30aに設けられたシールリング45で液密に構成されている。
第3シリンダ室13は第3切換弁140に接続されている。また、第3切換弁140の反対側の端子はポンプ130およびタンク150に接続されている。
第2ピストン30aを第1ピストン20の側と反対の方向(図1の右方向)へ駆動する第3液圧駆動モードでは、第3切換弁140は順方向(ポンプ130が第3シリンダ室13に接続される方向)に接続される。また、非駆動モードでは、第3切換弁140は逆方向となり、タンク150が第3シリンダ室に接続される。したがって、非駆動モードでは、第2ピストン30aは軸方向において自由に移動できる。
【0046】
第1の実施形態の電動/液圧両用シリンダ装置100と第2の実施形態の電動/液圧両用シリンダ装置100aとのもう一つの大きな差は、第1の実施形態の電動/液圧両用シリンダ装置100では第2ピストン30がピストンロッド40に連結固定しているのに対して、第2の実施形態の電動/液圧両用シリンダ装置100aでは第2ピストン30aはピストンロッド40に連結固定しておらず、第2ピストン30aがピストンロッド40の突起47を図6の右方向に押すことによってのみピストンロッド40に力を伝達する点である。
したがって、第2の実施形態の電動/液圧両用シリンダ装置100aでは、ピストンロッド40を図1の右方向へ駆動する場合、モータ80がオフ、第3切換弁140が順方向の状態で、ポンプ130をオンする。すると、第3シリンダ室13の液圧が第2ピストン30aに印加され、第2ピストン30aがピストンロッド40の突起47を押すことによって、ピストンロッド40を右方向へ駆動する。なお、この場合、モータ80をオフにするのではなく、モータ80も第1ピストン20を右方向へ駆動する向きに回転し、第1ピストン20と第2ピストン30aとの駆動力を合算してピストンロッド40を駆動するように構成してもよい。
さらに、第2ピストン30aが図6の右方向に移動した場合、第2ピストン30aの右方向には、シリンダチューブ10の内径縮小部48があり、突起47は内径縮小部48を通過してさらに右に移動することができるが、第2ピストン30aは内径縮小部48に当たり、それ以上右方向に移動することはできない。したがって、第2の実施形態の電動/液圧両用シリンダ装置100aでは、液圧シリンダで駆動できる距離は内径縮小部48の位置で決まっており、駆動開始後のピストンロッド40の移動距離または駆動開始からの経過時間を厳密に測定する必要はない。
この状態で、ポンプ130をオフ、第3切換弁140を逆方向の状態にすると、液圧シリンダは非駆動モードとなり、以降は電動シリンダでピストンロッド40を右方向および左方向へ自由に駆動することができる。
【0047】
本発明において、シリンダチューブ10が『シリンダチューブ』に相当し、第1ピストン20が『第1ピストン』に相当し、第2ピストン30、30aが『第2ピストン』に相当し、ピストンロッド40が『ピストンロッド』に相当し、ボールねじ70が『ボールねじ』に相当し、モータ80が『モータ』に相当し、キー50が『キー』に相当し、長穴60が『長穴』に相当し、電動/液圧両用シリンダ装置100、100aが『電動/液圧両用シリンダ装置』に相当し、蓋53が『蓋』に相当し、グリスアップ経路51が『潤滑剤を注入する経路』に相当し、第1シリンダ室11、第2シリンダ室12、第3シリンダ室13が『シリンダ室』に相当し、位置検出器90が『位置検出器』に相当する。
【0048】
本発明の好ましい一実施形態は上記の通りであるが、本発明はそれだけに制限されない。本発明の精神と範囲から逸脱することのない様々な実施形態が他になされることは理解されよう。さらに、本実施形態において、本発明の構成による作用および効果を述べているが、これら作用および効果は、一例であり、本発明を限定するものではない。
【符号の説明】
【0049】
10 シリンダチューブ
11 第1シリンダ室
12 第2シリンダ室
13 第3シリンダ室
20 第1ピストン
30、30a 第2ピストン
40 ピストンロッド
50 キー
51 グリスアップ経路
53 蓋
60 長穴
70 ボールねじ
80 モータ
90 位置検出器
100、100a 電動/液圧両用シリンダ装置
【要約】      (修正有)
【課題】高駆動力の液圧駆動と、速度の速いおよび/または正確な速度制御の可能な電動駆動の両方を兼ね備えた、構造が単純で、耐久性が高く、メンテナンスの容易な、電動/液圧両用シリンダ装置を提供する。
【解決手段】円筒形のシリンダチューブ10と、シリンダチューブ10内にあって、電動駆動される第1ピストン20と、液圧駆動される第2ピストン30と、第1ピストン20と第2ピストン30との両方の力を伝達するピストンロッド40とを備え、第1ピストン20は軸心に設けられた雌ねじに螺合するボールねじ70をモータ80で回転することによって駆動され、第1ピストン20の外周に設けられた凸状のキー50と、キー50と係合し、シリンダチューブ10に貫通して設けられた長穴60とよりなる廻り止め機構を有する。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7