(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6952394
(24)【登録日】2021年9月30日
(45)【発行日】2021年10月20日
(54)【発明の名称】試料保持具
(51)【国際特許分類】
H01L 21/683 20060101AFI20211011BHJP
H05B 3/74 20060101ALI20211011BHJP
【FI】
H01L21/68 N
H05B3/74
【請求項の数】7
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-187530(P2017-187530)
(22)【出願日】2017年9月28日
(65)【公開番号】特開2019-62137(P2019-62137A)
(43)【公開日】2019年4月18日
【審査請求日】2020年5月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】芦原 義浩
【審査官】
宮久保 博幸
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−300374(JP,A)
【文献】
特開2006−024433(JP,A)
【文献】
特開2006−332410(JP,A)
【文献】
特開2006−013199(JP,A)
【文献】
特開平08−026863(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/683
H05B 3/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の主面に試料保持面を有するセラミック体と、
該セラミック体の他方の主面に設けられた帯状の発熱抵抗体とを備えており、
前記他方の主面は、前記発熱抵抗体に接する第1領域と、該第1領域に隣接する領域であって、凹部が設けられている第2領域とを有しており、
前記凹部は、格子状の溝であることを特徴とする試料保持具。
【請求項2】
一方の主面に試料保持面を有するセラミック体と、
該セラミック体の他方の主面に設けられた帯状の発熱抵抗体とを備えており、
前記他方の主面は、前記発熱抵抗体に接する第1領域と、該第1領域に隣接する領域であって、凹部が設けられている第2領域とを有しており、
前記第2領域の外周のうち前記第1領域に接していない部分の形状が波状であることを特徴とする試料保持具。
【請求項3】
前記第2領域は、前記第1領域よりも表面が粗いことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の試料保持具。
【請求項4】
前記他方の主面に垂直な断面を見たときに、前記第2領域は、前記第1領域よりも幅が小さいことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の試料保持具。
【請求項5】
前記発熱抵抗体および前記凹部の表面には、同じ物質であって、前記セラミック体の内部に含まれる粒子とは異なる物質からなる粒子が存在していることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の試料保持具。
【請求項6】
前記粒子は、前記発熱抵抗体を形成する構成元素の酸化物であることを特徴とする請求項5に記載の試料保持具。
【請求項7】
前記凹部は、並んで配置された複数の溝であることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の試料保持具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体集積回路の製造工程などで半導体ウェハ等の各試料を保持するために用いられる試料保持具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体製造装置などに用いられる試料保持具として、例えば、特許文献1に記載の半導体製造・検査装置が知られている。特許文献1に記載の半導体製造・検査装置は、セラミック基板と、その表面に設けられた抵抗発熱体とを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−253799号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような半導体製造・検査装置においては、ヒートサイクル下において抵抗発熱体が熱膨張した際に、セラミック基板と抵抗発熱体との熱膨張差に起因して、抵抗発熱体がセラミック基板から剥がれてしまうおそれがあった。その結果、半導体製造・検査装置の耐久性を高めることが困難であった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の試料保持具は、一方の主面に試料保持面を有するセラミック体と、該セラミック体の他方の主面に設けられた帯状の発熱抵抗体とを備えており、前記他方の主面は、前記発熱抵抗体に接する第1領域と、該第1領域に隣接する領域であって、凹部が設けられている第2領域とを有して
おり、前記凹部は、格子状の溝であることを特徴とする。
また、本開示の試料保持具は、一方の主面に試料保持面を有するセラミック体と、該セラミック体の他方の主面に設けられた帯状の発熱抵抗体とを備えており、前記他方の主面は、前記発熱抵抗体に接する第1領域と、該第1領域に隣接する領域であって、凹部が設けられている第2領域とを有しており、前記第2領域の外周のうち前記第1領域に接していない部分の形状が波状であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本開示の試料保持具によれば、試料保持具の耐久性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図3】
図1に示す試料保持具のAの領域を拡大した断面図である。
【
図4】
図2に示す試料保持具のBの領域を拡大した平面図である。
【
図5】
図2に示す試料保持具のBの領域の別の例を示す平面図である。
【
図6】
図2に示す試料保持具のBの領域の別の例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
試料保持具10について、詳細に説明する。
【0009】
図1は、試料保持具10の一例を示す断面図である。
図1に示すように、この試料保持具10は、セラミック体1と、発熱抵抗体2とを備えている。
【0010】
セラミック体1は、試料を保持するための部材である。セラミック体1の形状は、例えば主面が円形状の円板状である。セラミック体1は、一方の主面に試料保持面11を有する。セラミック体1は、例えば窒化アルミニウムまたはアルミナ等のセラミック材料からなる。セラミック体1は、例えば複数のグリーンシートを積層して、これを窒素雰囲気中
で焼成することによって得ることができる。セラミック体1の内部には、必要に応じて、静電吸着用電極が設けられていてもよい。セラミック体1の寸法は、例えば形状が円板状のときは、主面の直径を200〜500mmに、厚みを5〜25mmにすることができる。
【0011】
発熱抵抗体2は、電流が流れることによって発熱する部材である。発熱抵抗体2は、試料保持面11に保持された試料を加熱するために設けられている。発熱抵抗体2は、セラミック体1の他方の主面に設けられている。発熱抵抗体2は、帯状の部材である。
図2に示すように、発熱抵抗体2は、例えば複数の折返し部分を有するパターンからなり、セラミック体1の他方の主面のほぼ全面に設けられている。これにより、発熱抵抗体2は、試料保持具10のほぼ全面を均一に加熱することができる。
【0012】
発熱抵抗体2の材質は、例えば金、銀、パラジウムまたは白金等の金属材料からなる。発熱抵抗体2は、例えば二酸化ケイ素等のガラス成分を含んでいてもよい。発熱抵抗体2の寸法は、例えば幅を2mmに、厚みを0.01〜0.1mmに、長さを1〜10mにすることができる。
【0013】
本開示の試料保持具10は、
図3に示すように、セラミック体1の他方の主面は、発熱抵抗体2に接する第1領域12と、第1領域12に隣接する領域であって、凹部3が設けられている第2領域13とを有している。これにより、第1領域12におけるセラミック体1が、発熱抵抗体2の熱膨張に伴って第2領域13の凹部3に向かって変形することができる。そのため、第1領域12においてセラミック体1と発熱抵抗体2との間に生じる熱応力を吸収することができる。これにより、発熱抵抗体2がセラミック体1から剥がれてしまうおそれを低減することができる。その結果、試料保持具10の耐久性を高めることができる。なお、
図3は、
図1のAの領域を拡大した断面図である。
【0014】
第2領域13とは、セラミック体1の他方の主面のうち、凹部3が設けられている部分であって、かつ第1領域12に隣接する領域を意味している。凹部3は、他方の主面を平面視したときの形状が、たとえば楕円形状または長方形状である。凹部3は、第1領域12に沿って設けられていてもよい。凹部3は、例えば溝状であってもよい。また、凹部3が溝状である場合は、凹部3は発熱抵抗体2が伸びる方向に対して斜めになるように設けられていてもよい。凹部3の寸法は、例えば深さが0.002〜0.08mmで、例えば凹部3が溝状に伸びる場合においては、幅が0.01〜0.2mmで長さが0.01〜0.5mmである。凹部3は複数設けられていてもよい。また、複数の溝が重なって並ぶことで、全体として一つの凹部3となっていてもよい。凹部3は、例えばレーザートリミング等の手法で設けることができる。
【0015】
なお、
図3においては、第2領域13は第1領域12に隣接して設けられているが、第2領域13は、断面視したときに、必ずしも第1領域12に隣接していなくてもよい。セラミック体1の他方の主面のうち、凹部3が設けられている部分であって、平面視したときに第1領域12に隣接している部分から繋がっていれば、第2領域13とする。
【0016】
また、第2領域13は、第1領域12よりも表面が粗いとよい。例えば
図3に示すように凹部3が底面を有する場合は、凹部3の底面が、第1領域12の表面よりも粗いとよい。これにより、隣り合う発熱抵抗体2間におけるセラミック体1の表面の距離を長くすることができる。そのため、第1領域12に設けられた発熱抵抗体2と、隣り合う第1領域12に設けられた発熱抵抗体2とが、セラミック体1の他方の主面を介してショートしてしまうおそれを低減することができる。その結果、試料保持具10の耐久性を高めることができる。
【0017】
また、第1領域12は、第2領域13よりも表面が滑らかであることによって、第1領域12に接する発熱抵抗体2の厚みのばらつきを低減することができる。そのため、発熱抵抗体2の単位長さ辺りの抵抗値を調整しやすくすることができる。その結果、発熱抵抗体2の均熱性を高めることができる。
【0018】
第1領域12および第2領域13の表面の粗さは、例えばセラミック体1の他方の主面の断面を、ZYGO社の光干渉膜厚計(型番NV7300)を用いて分析することで、比較できる。
【0019】
また、
図3に示すように、他方の主面に垂直な断面を見たときに、第2領域13は、第1領域12よりも幅が小さいとよい。ここでいう第2領域13の幅とは、他方の主面に垂直な断面を見たときに、第2領域13のうち第1領域12側の端部から第1領域12に接していない側の端部までの距離を示している。第2領域13においては、凹部3の影響でセラミック体1の厚みが変化するため、試料保持面11の均熱性を高めることが困難であった。第2領域13の幅が第1領域12よりも小さいことによって、第2領域13が試料保持面11の均熱性に与える影響を低減することができる。その結果、試料保持面11の均熱性を高めることができる。第1領域12の幅が0.3〜4mmのときに、第2領域13の幅を0.01〜0.5mにすることができる。
【0020】
また、発熱抵抗体2および凹部3の表面には、同じ物質であって、セラミック体1の内部に含まれる粒子とは異なる物質からなる粒子が存在しているとよい。これにより、発熱抵抗体2および第2領域13の熱膨張係数を近づけることもできる。そのため、発熱抵抗体2と第2領域13との熱膨張差を低減することもできる。その結果、試料保持具10の耐久性を高めることができる。この場合、粒子の種類は、例えば銀またはパラジウム等にすることができる。
【0021】
また、粒子は、発熱抵抗体2を形成する構成元素の酸化物であるとよい。これにより、粒子が絶縁体として機能するため、発熱抵抗体2がセラミック体1の他方の主面を介して隣り合う発熱抵抗体2とショートしてしまうおそれを低減することができる。その結果、試料保持具10の耐久性を高めることができる。この場合、粒子の種類は、例えば酸化銀またはシリカ等にすることができる。
【0022】
また、
図4に示すように、凹部3は、並んで配置された複数の溝であるとよい。
図4は、
図2のBに示す領域を拡大した平面図である。凹部3が並んで配置された複数の溝であることにより、発熱抵抗体2で生じた熱が複数の溝である凹部3に沿って伝わるため、試料保持具10の均熱性を高めることができる。このときに、複数の溝が重なって設けられて凹部3を形成していてもよい。
【0023】
また、
図5に示すように、凹部3は、格子状の溝であるとよい。これにより、溝が伸びる特定の方向に熱応力が生じるおそれを低減することができる。その結果、試料保持具10の耐久性を高めることができる。
【0024】
また、
図5に示すように、発熱抵抗体2の表面に格子状の溝が設けられており、凹部3は、発熱抵抗体2の表面に設けられた格子状の溝と同じパターンの格子状の溝であってもよい。これにより、発熱抵抗体2の表面の形状と、発熱抵抗体2に隣接するセラミック体1の他方の主面の表面の形状とを近づけることができる。そのため、発熱抵抗体2とセラミック体1との間において、応力が集中するおそれを低減することができる。その結果、試料保持具10の耐久性を高めることができる。
【0025】
また、
図6に示すように、第2領域13の外周のうち第1領域12に接していない部分
の形状が波状であるとよい。これにより、第2領域13の外周のうち第1領域12に接していない部分に加わる応力を分散させることができる。その結果、試料保持具10の耐久性を高めることができる。
【符号の説明】
【0026】
1:セラミック体
11:試料保持面
12:第1領域
13:第2領域
2:発熱抵抗体
3:凹部
10:試料保持具