(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6952395
(24)【登録日】2021年9月30日
(45)【発行日】2021年10月20日
(54)【発明の名称】ヒータ
(51)【国際特許分類】
H05B 3/03 20060101AFI20211011BHJP
H05B 3/48 20060101ALI20211011BHJP
F23Q 7/00 20060101ALI20211011BHJP
【FI】
H05B3/03
H05B3/48
F23Q7/00 V
F23Q7/00 605B
【請求項の数】4
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2017-187556(P2017-187556)
(22)【出願日】2017年9月28日
(65)【公開番号】特開2019-61920(P2019-61920A)
(43)【公開日】2019年4月18日
【審査請求日】2020年5月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡村 健
【審査官】
吉澤 伸幸
(56)【参考文献】
【文献】
実開平02−020293(JP,U)
【文献】
特開昭62−022911(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 3/03
H05B 3/48
F23Q 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
棒状のセラミック体と、該セラミック体の内部に位置しており前記セラミック体の外周面に引き出された発熱抵抗体と、前記発熱抵抗体のうち引き出された部分を覆うように前記セラミック体に嵌め合わされるとともに前記発熱抵抗体に電気的に接続される金属筒とを有しており、
前記引き出された部分を通り前記セラミック体の軸方向に対して垂直な断面を見たときに、前記金属筒の内周の形状が円形状であるとともに、前記セラミック体が前記金属筒の内周面に隙間なく接しているとともに、前記引き出された部分は前記金属筒の内周面よりも内側に位置しており、前記引き出された部分と前記金属筒の内周面との間にのみ導電性部材が設けられていることを特徴とするヒータ。
【請求項2】
前記引き出された部分を通り前記セラミック体の軸方向に対して垂直な断面を見たときに、前記引き出された部分が直線状であることを特徴とする請求項1に記載のヒータ。
【請求項3】
前記引き出された部分を通り前記セラミック体の軸方向に対して垂直な断面を見たときに、前記導電性部材と前記引き出された部分との界面が凹凸であることを特徴とする請求項1に記載のヒータ。
【請求項4】
前記ヒータの軸方向に対して垂直な断面における前記導電性部材の形状が、前記ヒータの軸方向に進むにつれて変化していることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のヒータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、自動車エンジンのグロープラグに用いられるヒータに関する。また、本発明のヒータは、燃焼式車載暖房装置における点火用若しくは炎検知用のヒータ、石油ファンヒータ等の各種燃焼機器の点火用のヒータ、酸素センサ等の各種センサ用のヒータまたは測定機器の加熱用のヒータ等に用いることができる。
【背景技術】
【0002】
自動車エンジンのグロープラグ等に用いられるヒータとして、特許文献1に記載のヒータが挙げられる。特許文献1に記載のヒータは、セラミック体と、セラミック体の外周面に引き出された発熱抵抗体と、セラミック体に嵌め合わされるとともに発熱抵抗体のうち引き出された部分に接続される金属筒とを有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017−53619号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のヒータにおいては、金属筒と発熱抵抗体との接続信頼性を保ちつつ、金属筒とセラミック体とを隙間無く嵌め合わせることが困難であった。具体的には、発熱抵抗体のうち引き出された部分が、セラミック体の表面よりも外側に位置している場合には、金属筒とセラミック体との間に隙間が生じてしまうおそれがあった。また、発熱抵抗体のうち引き出された部分が、セラミック体の表面よりも内側に位置している場合には、金属筒と発熱抵抗体との電気的な接続が十分に行われないおそれがあった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のヒータは、棒状のセラミック体と、該セラミック体の内部に位置しており前記セラミック体の外周面に引き出された発熱抵抗体と、前記発熱抵抗体のうち引き出された部分を覆うように前記セラミック体に嵌め合わされるとともに前記発熱抵抗体に電気的に接続される金属筒とを有している。さらに、前記引き出された部分を通り前記セラミック体の軸方向に対して垂直な断面を見たときに、前記金属筒の内周の形状が円形状であると
ともに、前記セラミック体が前記金属筒の内周
面に
隙間なく接しているとともに、
前記引き出された部分は前記金属筒の内周面よりも内側に位置しており、前記引き出された部分と前記金属筒
の内周面との間に
のみ導電性部材が設けられている。
【発明の効果】
【0006】
本発明のヒータによれば、引き出された部分と金属筒との間に導電性部材が設けられていることによって、引き出された部分をセラミック体の表面よりも内側に位置させることができるので、金属筒とセラミック体との間に隙間が生じてしまうおそれを低減できる。また、引き出された部分がセラミック体の表面よりも内側に位置していても、引き出された部分と金属筒との間に導電性部材が設けられていることによって、金属筒と発熱抵抗体との接続信頼性を保つことができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】(a)はヒータの一例のうちセラミック体を示す断面図であり、(b)は側面図である。
【
図3】
図2に示すヒータをα−αで切った断面図である。
【
図6】(a)はヒータの一例を示す断面図であり、(b)はX−X´で切った断面図であり、(c)はY−Y´で切った断面図であり、(d)はZ−Z´で切った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1、2に示すように、ヒータ1は、セラミック体2と、セラミック体2に埋設された発熱抵抗体3と、セラミック体を覆う金属筒4とを備えている。
【0009】
ヒータ1におけるセラミック体2は、例えば長手方向を有する棒状に形成されたものである。このセラミック体2には発熱抵抗体3が埋設されている。ここで、セラミック体2はセラミックスを有している。これにより急速昇温時の信頼性が高いヒータ1を提供することが可能になる。セラミックスとしては、酸化物セラミックス、窒化物セラミックスまたは炭化物セラミックス等の電気的に絶縁性を有するセラミックスが挙げられる。特に、セラミック体2は、窒化珪素質セラミックスを有していてもよい。窒化珪素質セラミックスは、主成分である窒化珪素が強度、靱性、絶縁性および耐熱性の観点で優れているからである。
【0010】
窒化珪素質セラミックスを有するセラミック体2は、例えば、主成分の窒化珪素に対して、焼結助剤として3〜12質量%のY
2O
3、Yb
2O
3またはEr
2O
3等の希土類元素酸化物、0.5〜3質量%のAl
2O
3および焼結体に含まれるSiO
2量が1.5〜5質量%となるようにSiO
2を混合し、所定の形状に成形し、その後、1650〜1780℃でホットプレス焼成することによって得ることができる。セラミック体2の長さは、例えば20〜50mmに設定され、セラミック体2の直径は例えば3〜5mmに設定される。
【0011】
なお、セラミック体2として窒化珪素質セラミックスを有するものを用いる場合は、MoSiO
2またはWSi
2等を混合し、分散させてもよい。この場合には、母材である窒化珪素質セラミックスの熱膨張率を発熱抵抗体3の熱膨張率に近付けることができ、ヒータ1の耐久性を向上させることができる。
【0012】
発熱抵抗体3は、セラミック体2の内部に設けられている。発熱抵抗体3はセラミック体2の内部に位置している。発熱抵抗体3は、電流を流すことによって発熱する部材である。発熱抵抗体3は、セラミック体2の外周面に引き出された引出部31を有している。発熱抵抗体3の形成材料としては、W,MoまたはTiなどの炭化物、窒化物または珪化物などを主成分とするものを使用することができる。
【0013】
さらに、セラミック体2が窒化珪素質セラミックスを有する場合は、発熱抵抗体3は、無機導電体のWCを主成分とし、これに添加される窒化珪素の含有率が20質量%以上であってもよい。例えば、窒化珪素質セラミックスを有するセラミック体2中において、発熱抵抗体3となる導体成分は窒化珪素と比較して熱膨張率が大きいため、通常は引張応力がかかった状態にある。これに対して、発熱抵抗体3中に窒化珪素を添加することにより、発熱抵抗体3の熱膨張率をセラミック体2の熱膨張率に近付けることができるので、ヒータ1の昇温時および降温時の熱膨張率の差による応力を緩和することができる。
【0014】
また、発熱抵抗体3に含まれる窒化珪素の含有量が40質量%以下であるときには、発熱抵抗体3の抵抗値のばらつきを小さくさせることができる。従って、発熱抵抗体3に含まれる窒化珪素の含有量は20〜40質量%であってもよい。また、窒化珪素の含有量は25〜35質量%がよい。また、発熱抵抗体3への同様の添加物として、窒化珪素の代わ
りに窒化硼素を4〜12質量%添加することもできる。発熱抵抗体3は全長を3〜15mm、断面積を0.15〜0.8mm
2に設定することができる。
【0015】
金属筒4は、セラミック体2に嵌め合わせられるとともに、発熱抵抗体3に電気的に接続されている。金属筒4は、例えば、ステンレス等の金属材料を有している。ヒータ1をグロープラグ用のヒータとして用いる場合には、金属筒4は、例えば、陰極として用いることができる。
【0016】
ここで、
図3に示すように、ヒータ1は、発熱抵抗体3の引き出された部分(引出部31)を通りセラミック体2の軸方向に対して垂直な断面を見たときに、金属筒4の内周の形状が円形状である。そして、セラミック体2が金属筒4の内周面に接しているとともに、引出部31と金属筒4との間に導電性部材5を有している。
【0017】
引出部31と金属筒4との間に導電性部材5が設けられていることによって、引出部31をセラミック体2の表面よりも内側に位置させることができるので、金属筒4とセラミック体2との間に隙間が生じてしまうおそれを低減できる。また、引出部31がセラミック体2の表面よりも内側に位置していても、引出部31と金属筒4との間に導電性部材5が設けられていることによって、金属筒4と発熱抵抗体3との接続信頼性を保つことができる。
【0018】
導電性部材5としては、例えば、ニッケル、クロム、金、銀、銅または白金等を用いることができる。導電性部材5は、例えば、引出部31の表面を加工した後に、表面にメッキ、蒸着またはスパッタ等を施すことによって設けることができる。引出部31の表面の加工には、例えば、研磨、ブラスト処理またはエッチング等を用いることができる。
【0019】
導電性部材5は、例えば、複数の部分を有していてもよい。例えば、引出部31の表面にニッケル層を下地として設けるとともに、このニッケル層の表面にクロム層を設けてもよい。これにより、引出部31と導電性部材5(ニッケル層)との密着を良好に行うとともに、導電性部材5(クロム層)と金属筒4との密着を良好に行うことができる。
【0020】
また、金属筒4が内周面に金層を有していてもよい。金層は、例えば、メッキまたは蒸着で設けることができる。金属筒4が内周面に金層を有している場合には、導電性部材5のクロム層と金属筒4の金層とを300℃以上に加熱することで合金化させることができる。そのため、焼き嵌めと同時に反応結合も行うことができる。これにより、金属筒4と導電性部材5との接合を良好に行うことができる。
【0021】
導電性部材5の厚みは、例えば、最も厚い部分を0.01〜2mmにすることができる。
【0022】
また、
図3に示すように、軸方向に対して垂直な断面を見たときに、引き出された部分(引出部31)が直線状であってもよい。これにより、ヒートサイクル下において、引出部31において局所的に熱応力が集中するおそれを低減できる。引出部31にクラックが生じるおそれを低減できる。
【0023】
また、
図4に示すように、引き出された部分(引出部31)とセラミック体2との間に隙間があるとともに、隙間に導電性部材5が入り込んでいてもよい。これにより、ヒートサイクル下において、導電性部材5のうち隙間に入り込んでいる部分がアンカーとして機能させることができる。その結果、導電性部材5が引出部31から剥がれてしまうおそれを低減できる。
【0024】
また、
図5に示すように、導電性部材5と引出部31との界面が凹凸であってもよい。これにより、導電性部材8を引出部31から剥がれ難くすることができる。その結果、導電性部材8と引出部31との接続の信頼性を向上できる。
【0025】
また、
図6に示すように、ヒータ1の軸方向に対して垂直な断面における導電性部材5の形状が、ヒータ1の軸方向に進むにつれて変化していてもよい。これにより、ヒータ1の軸方向において、導電性部材5が引出部31から剥がれてしまうおそれを低減できる。
【符号の説明】
【0026】
1:ヒータ
2:セラミック体
3:発熱抵抗体
31:引出部
4:金属筒
5:導電性部材