(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6952505
(24)【登録日】2021年9月30日
(45)【発行日】2021年10月20日
(54)【発明の名称】キャスター付巻上機装置、及びキャスター付巻上機台
(51)【国際特許分類】
B66B 7/00 20060101AFI20211011BHJP
B66B 11/04 20060101ALI20211011BHJP
【FI】
B66B7/00 G
B66B11/04 Z
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-115311(P2017-115311)
(22)【出願日】2017年6月12日
(65)【公開番号】特開2019-1563(P2019-1563A)
(43)【公開日】2019年1月10日
【審査請求日】2020年3月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000236056
【氏名又は名称】三菱電機ビルテクノサービス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹内 進
【審査官】
須山 直紀
(56)【参考文献】
【文献】
特開2015−145296(JP,A)
【文献】
特開平11−223548(JP,A)
【文献】
登録実用新案第3035006(JP,U)
【文献】
特開2015−124088(JP,A)
【文献】
国際公開第2013/179423(WO,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2015/0027815(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 7/00
B66B 11/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベーターのロープが巻回される綱車、及び前記綱車を回動させる電動機を含み、下方側に開口すると共に高さ方向に延在するキャスター収納部を有する本体部と、
少なくとも前記高さ方向の下方側部分が前記本体部よりも前記高さ方向の下方側に突出する突出位置と、全ての部分が前記キャスター収納部に収納される収納位置との間を前記高さ方向に移動可能なキャスターと、
前記キャスターを前記突出位置と前記収納位置との間を前記高さ方向に移動させるキャスター移動機構と、を備え、
前記本体部には、前記綱車及び前記電動機を含む巻上機と、前記巻上機が載置され、前記巻上機と機械台との間に配置される巻上機台とが含まれ、
前記キャスター収納部は、前記巻上機台に設けられ、
前記キャスター移動機構が、前記キャスターが回動自在に取り付けられるキャスター取付部と、前記キャスター取付部の上端部と一体化された先端部を含んで前記高さ方向に延在するボルト及び前記本体部に固定されて前記ボルトに螺合するナットを含むジャッキボルトと、を有し、
前記巻上機台が、前記巻上機の幅方向に延在すると共に高さ方向に間隔をおいて延在する上側延在部及び下側延在部を有し、
前記ナットが前記高さ方向に関して前記上側延在部と前記下側延在部の両方に間隔をおいた状態で前記上側延在部と前記下側延在部の間に位置し、
前記キャスターが前記収納位置に位置している状態で前記キャスターの全ての部分が前記下側延在部の下端よりも前記高さ方向の上側に位置する、巻上機装置。
【請求項2】
請求項1に記載の巻上機装置において、
前記下側延在部に固定されると共に前記キャスター移動機構の外方側を覆う被覆板を備え、
前記キャスターが前記突出位置に位置している状態で、ボルトで前記被覆板と前記キャスター取付部を固定することができるようになっており、
前記キャスターが前記収容位置に位置している状態でも、前記ボルトで前記被覆板と前記キャスター取付部を固定することができるようになっている、巻上機装置。
【請求項3】
請求項1に記載の巻上機装置において、
前記巻上機台が前記高さ方向に延在する高さ方向延在部を有し、
前記高さ方向延在部に固定されると共に前記ナットと一体に構成される摺動板を備え、
前記キャスター取付部は、上下動する際に前記摺動板上を摺動し、前記摺動板に案内され、
前記キャスター取付部が、前記摺動板に当接する平板上の取付部を有し、
前記取付部をボルトで前記摺動板に固定することで前記突出位置及び前記収容位置で前記キャスター取付部を前記巻上機台に固定できるようになっている、巻上機装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1つに記載の巻上機装置において、
前記キャスターが、球形状を有し、
前記キャスターは、キャスター取付部に回動自在に取り付けられ、
前記キャスター取付部には、前記キャスターの直径よりも小さい直径を有する円形の開口を有する下側板部と、球面の一部で構成されて前記キャスターの上側球面部にその径方向に対向する対向面を有し、前記下側板部に固定される上側ブロック部と、前記対向面と前記上側球面部との間に配設される複数の玉と、が含まれる、巻上機装置。
【請求項5】
エレベーターにおいて巻上機が載置される巻上機台であって、
下方側に開口すると共に高さ方向に延在するキャスター収納部を有する機台本体と、
少なくとも前記高さ方向の下方側部分が前記機台本体よりも前記高さ方向の下方側に突出する突出位置と、全ての部分が前記キャスター収納部に収納される収納位置との間を前記高さ方向に移動可能なキャスターと、
前記キャスターを前記突出位置と前記収納位置との間を前記高さ方向に移動させるキャスター移動機構と、
を備え、
前記キャスター移動機構が、前記キャスターが回動自在に取り付けられるキャスター取付部と、前記キャスター取付部の上端部と一体化された先端部を含んで前記高さ方向に延在するボルト及び前記本体部に固定されて前記ボルトに螺合するナットを含むジャッキボルトと、を有し、
前記機台本体が、前記巻上機の幅方向に延在すると共に高さ方向に間隔をおいて延在する上側延在部及び下側延在部を有し、
前記ナットが前記高さ方向に関して前記上側延在部と前記下側延在部の両方に間隔をおいた状態で前記上側延在部と前記下側延在部の間に位置し、
前記キャスターが前記収納位置に位置している状態で前記キャスターの全ての部分が前記下側延在部の下端よりも前記高さ方向の上側に位置する巻上機台。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベーターにおいて、巻上機と、巻上機台を含む巻上機装置に関する。また、本発明は、巻上機台に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載されているように、機械室を有するエレベーターでは、通常、巻上機が巻上機台の上面に固定され、巻上機台が機械室の床面上に配設される機械台(マシンビーム)上に固定される。巻上機台は、例えば水平度の精度がより高い水平面上に巻上機を載置するために設けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開2013−179423号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
エレベーターが昇降路の上部に機械室を有する場合、巻上機は、例えば次のように機械室まで運ばれ、芯出しされる。詳しくは、先ず、巻上機を、クレーンで現場のビルの屋上まで上げる。次に、巻上機を屋上から機械室に搬入する。屋上から機械室への巻上機の搬入経路には、1以上の段差が存在する。
【0005】
巻上機を段差の下方側に移動させるには、巻上機を台車に乗せて台車を横引きし、巻上機が載っている台車を段差の上側周辺に移動させる。そして、チェーンブロック等で巻上機を、段差の下側箇所の直上に吊り上げ、その後、台車を巻上機の下方に移動させ、続いて、チェーンブロックで巻上機を下降させ、段差の下側箇所に移動させた台車上に載置する。
【0006】
この作業は、段差が存在する度に繰り返される。巻上機を機械室まで運搬すると、巻上機を載置している台車を、巻上機の設定場所の周辺まで横引きし移動させる。その後、巻上機を、チェーンブロックで吊り上げた後に下降させ、所定位置の極近傍に配置する。
【0007】
巻上機は、ワイヤーロープが鉛直方向に対して傾斜した状態にならないようにミリ単位の位置合わせで高精度に所定位置に配置されて芯出しされる。ミリ単位の位置合わせは、例えば熟練した作業員が巻上機に局所的な衝撃を付与することで巻上機を微小移動させて実行する。
【0008】
上記巻上機は、倉庫から機械室の所定位置まで常に台車と供に移動させる必要があり、巻上機が障害物の乗り越えのために吊り上げられる度に、台車を先回りして移動させる必要がある。よって、巻上機の移動に大変な工数と労力が必要になる。
【0009】
また、巻上機の重心が台車の重心に対して大きく離れた状態で巻上機が台車に載置されると、台車が傾く虞があり、台車位置を相応しい位置に調整するのに時間を要する。
【0010】
更には、巻上機の芯出しも、局所的な衝撃を付与せずに簡単かつ円滑に実行できれば好ましい。
【0011】
そこで、本発明の課題は、巻上機の移動を、より容易、円滑かつ短時間で実行でき、巻上機の芯出しも、容易かつ円滑に実行できる巻上機装置及び巻上機台を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、本
開示に係る巻上機装置は、エレベーターのロープが巻回される綱車、及び前記綱車を回動させる電動機を含み、下方側に開口すると共に高さ方向に延在するキャスター収納部を有する本体部と、少なくとも前記高さ方向の下方側部分が前記本体部よりも前記高さ方向の下方側に突出する突出位置と、全ての部分が前記キャスター収納部に収納される収納位置との間を前記高さ方向に移動可能なキャスターと、前記キャスターを前記突出位置と前記収納位置との間を前記高さ方向に移動させるキャスター移動機構と、を備える。
【0013】
本
開示によれば、巻上機装置が突出位置において下方側部分が本体部よりも高さ方向の下方側に突出するキャスターを有し、巻上機装置がキャスターで移動自在になる。したがって、巻上機装置を移動させるのに台車の持ち運びを一切行う必要がなく、巻上機装置の移動を、より容易、円滑かつ短時間で実行できる
【0014】
また、巻上機装置を所定位置に精密に位置決めする芯出しを行う際も、巻上機装置がキャスターで移動自在な状態で実行でき、巻上機装置に過大な力を付与しなくても巻上機装置を所定位置まで容易に移動させることができる。よって、巻上機装置の芯出しもより容易かつ円滑に実行できる。
【0015】
更には、巻上機装置が所定位置に位置決めされている状態において、キャスター移動機構を用いてキャスターを収納位置に収納できる。よって、巻上機装置の芯出し後、巻上機装置の底面を機械台(マシンビーム)に容易に当接させることができ、巻上機装置を所定位置に安定かつ確実に取り付けできる。
【0016】
また、本
開示において、前記本体部には、前記綱車及び前記電動機を含む巻上機と、前記巻上機が載置され、前記巻上機と機械台との間に配置される巻上機台とが含まれ、前記キャスター収納部は、前記巻上機台に設けられてもよい。
【0017】
巻上機が巻上機台に締結部材で固定された状態で巻上機装置の移動(搬送)を行うことがある。上記構成によれば、そのような場合に、巻上機の移動を、より容易、円滑かつ短時間で実行でき、芯出しも、容易かつ円滑に実行できる。
【0018】
また、本
開示において、前記本体部は、前記綱車及び前記電動機を含む巻上機で構成され、前記巻上機は、巻上機台を介さず機械台に載置され、前記キャスター収納部は、前記巻上機に設けられてもよい。
【0019】
巻上機は、巻上機台を介さずに機械台に直接取り付けられることがある。上記構成によれば、そのような場合に、巻上機の移動を、より容易、円滑かつ短時間で実行でき、芯出しも、容易、かつ円滑に実行できる。
【0020】
また、本
開示において、前記キャスター移動機構が、前記キャスターが回動自在に取り付けられるキャスター取付部と、前記キャスター取付部の上端部と一体化された先端部を含んで前記高さ方向に延在するボルト及び前記本体部に固定されて前記ボルトに螺合するナットを含むジャッキボルトと、を有してもよい。
【0021】
上記構成によれば、キャスター移動機構を簡単安価に構成できる。
【0022】
また、本
開示において、前記キャスターが、球形状を有し、前記キャスターは、キャスター取付部に回動自在に取り付けられ、前記キャスター取付部には、前記キャスターの直径よりも小さい直径を有する円形の開口を有する下側板部と、球面の一部で構成されて前記キャスターの上側球面部にその径方向に対向する対向面を有し、前記下側板部に固定される上側ブロック部と、前記対向面と前記上側球面部との間に配設される複数の玉と、が含まれてもよい。
【0023】
上記構成によれば、車輪型のキャスターとの比較においてキャスター移動機構を所望の方向により円滑に移動させることができる。
【0024】
また、本
開示に係る巻上機台は、エレベーターにおいて巻上機が載置される巻上機台であって、下方側に開口すると共に高さ方向に延在するキャスター収納部を有する機台本体と、少なくとも前記高さ方向の下方側部分が前記機台本体よりも前記高さ方向の下方側に突出する突出位置と、全ての部分が前記キャスター収納部に収納される収納位置との間を前記高さ方向に移動可能なキャスターと、前記キャスターを前記突出位置と前記収納位置との間を前記高さ方向に移動させるキャスター移動機構と、を備える。
【0025】
本
開示によれば、巻上機を上部の載置面に載置して取り付けた状態で、運搬、芯出しを行うことで、巻上機の移動を、より容易、円滑かつ短時間で実行でき、巻上機の芯出しも、容易かつ円滑に実行できる。
【発明の効果】
【0026】
本発明に係る巻上機装置及び巻上機台によれば、巻上機の移動を、より容易、円滑かつ短時間で実行でき、巻上機の芯出しも、容易、かつ円滑に実行できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明の一実施形態に係る巻上機装置を、綱車配置側とは反対側から見たときの模式正面図である。
【
図2】上記巻上機装置を、
図1で矢印Aに示す方向から見たときの模式側面図である。
【
図3】
図1のR部の構造をより詳細に説明するための模式図である。
【
図4】
図2のS部の構造をより詳細に説明するための模式図である。
【
図5】上記巻上機装置のキャスター取付部のジャッキボルトを上から見たときの模式平面図である。
【
図6】変形例の巻上機装置における
図5に対応する模式平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下に、本発明に係る実施の形態について添付図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下において複数の実施形態や変形例などが含まれる場合、それらの特徴部分を適宜に組み合わせて新たな実施形態を構築することは当初から想定されている。また、以下の説明及び図面で、X方向は、巻上機装置1(巻上機台30)の幅方向を表し、Y方向は、巻上機装置1(巻上機台30)の奥行き方向を表し、Z方向は、巻上機装置1(巻上機台30)の高さ方向を表す。X方向、Y方向、及びZ方向は、互いに直交する。
【0029】
図1は、本発明の一実施形態に係る巻上機装置1を綱車配置側とは反対側から見たときの模式正面図であり、
図2は、巻上機装置1を
図1で矢印Aに示す方向から見たときの模式側面図である。
【0030】
巻上機装置1は、例えば、エレベーターの昇降路の上方にある機械室の床面や昇降路下方のピットの床面に設けられる機械台上に配置されて固定される。
図1に示すように、巻上機装置1は、本体部2と、キャスター3と、キャスター移動機構(以下、単に移動機構という)4を備え、本体部2は、巻上機10と、巻上機台30を有する。巻上機10の底面21、及び巻上機台30の上面22の夫々は、XY平面上に広がる。巻上機10の底面が巻上機台30の上面(載置面)上に載置されている状態で、巻上機10は、巻上機台30に図示しないボルトで取り付けられて固定される。
【0031】
図2に示すように、巻上機10は、綱車固定台11と、綱車12を含み、綱車12は、回動自在に綱車固定台11に取り付けられる。詳しくは、綱車12は、回転軸13を有し、回転軸13は、綱車固定台11の内部で軸受14を介して綱車固定台11の静止部16に固定される。
【0032】
巻上機10は、更に電動機17を備える。電動機17は、綱車固定台11内に内蔵される。電動機は、図示しないロータ及びステータを含み、ロータはステータに対して回転する。ロータの出力軸は、綱車12の回転軸13と同一直線上に位置し、回転軸13と一体化されている。綱車12の複数のロープ溝には、複数のロープ(図示せず)が巻回される。例えば、各ロープの一端部は、図示しないカゴの上部に固定され、各ロープの他端部は、図示しない釣合錘に固定される。
【0033】
エレベーターの制御部からの信号に基づいてロータの出力軸が回動することで、回転軸13が回動し、綱車12が回動する。綱車12の回動に伴って、ロープが、カゴ側から釣合錘側に移動するか、釣合錘側からカゴ側に移動し、その結果、カゴが昇降する。なお、電動機は、綱車固定台11の外部に配置されてもよく、電動機の出力軸と綱車の回転軸との間に減速機を配置してもよい。また、ロープの釣合錘側の部分は、釣合錘に固定された綱車に掛け渡された後、昇降路の天井に固定されてもよい。
【0034】
巻上機台30は、一体の鋼材からなる機台本体31を含み、機台本体31は、巻上機10が載置される上面22を有する。
図2に示すように、機台本体31は、断面I字状の第1I字状部32及び断面I字状の第2I字状部33を含み、第1I字状部32は、Y方向の一方側に配設されてX方向に延在し、第2I字状部33は、Y方向の他方側に配設されてX方向に延在する。第1I字状部32と第2I字状部33は、Y方向に延在する1以上の連結部35,36で連結されてもよく、この場合、巻上機台30の取り扱い性を向上できて好ましい。なお、1以上の連結部35,36は存在しなくてもよく、機台本体は、一体構造を有さなくてもよい。巻上機台の機台本体は、XY平面上に広がる上面及び底面を有していれば、如何なる形状、構造であってもよく、例えば、平板状の形状等を有してもよい。
【0035】
図1及び
図2に示すように、巻上機装置1は、4つのキャスター3と、4つの移動機構4とを備える。各移動機構4は、1つのキャスター3をZ方向に上下動させるために設けられる。キャスター3及び移動機構4を含むキャスターアッセンブリは、巻上機装置1のZ方向下端部かつXY方向の隅(角部)に配設される。
【0036】
次に、
図3〜
図5を用いて、キャスター3及び移動機構4について詳細に説明する。
図3は、
図1にRで示す領域をより詳細に示す模式図であり、
図4は、
図2にSで示す領域をより詳細に示す模式図である。また、
図5は、Sで示す領域に配設された移動機構4をZ方向上方から見たときの模式平面図である。
【0037】
図3及び
図4に示すように、キャスター3は、球形状を有し、例えば鋼材等の金属材料やセラミック等の樹脂材料で構成される。また、移動機構4は、キャスター取付部41と、ジャッキボルト42を有する。各移動機構4の外方側は、被覆板50で覆われる。被覆板50は、一体構造を有し、Z方向上方から見たときの平面視で略L字状の形状を有する。
【0038】
図3に示すように、被覆板50は、本体部51と、平板状の第1取付部52を含む。第1取付部52は、本体部51のX方向の一方側端部かつZ方向の下側端部からY方向内側に屈曲する。第1I字形状部32は、上側延在部32aと下側延在部32bを有する。第1取付部52は、ボルト55で第1I字状部32の下側延在部32bに固定される。
【0039】
図5に示すように、被覆板50は、更に、第2取付部53を有する。第2取付部53は、本体部51からX方向の一方側に延在する。第2取付部53は、ボルト56で摺動板60に固定され、摺動板60は、ボルト58で第2I字状部33のZ方向延在部38(
図2参照)に固定される。第2取付部53及びボルト56は、キャスター取付部41のナット68よりもZ方向上方に位置する。ナット68については、後でより詳細に説明する。被覆板50は、ボルト55,56,58による機台本体31への第1及び第2取付部52,53の固定によって機台本体31に確実に固定される。被覆板50は、巻上機台30に含まれる。
【0040】
図3及び
図4に示すように、キャスター取付部41は、ブロック状の部材である。キャスター取付部41は、半球状の室45と、Z方向下方側に円形の開口46を有する。半球状の室45は、円形の開口46を介して外部に連通する。半球状の室45には、キャスター3の上部が収納される。半球状の室45の直径は、キャスター3の直径及び開口46の直径の両方よりも大きく、開口46の直径は、キャスター3の直径よりも僅かに小さい。その結果、キャスター3は、キャスター取付部41から離脱不可能になっている。キャスター取付部41は、半球状の凹部を有する上側ブロック部81と、円形の開口46を有する平板状の下側板部82を含み、上側ブロック部81は、接合手段、例えば接着剤、溶接部、締結部材等により下側板部82に固定される。
【0041】
キャスター取付部41は、更に複数の鋼製の玉48を有する。複数の玉48は同一であり、各玉48はキャスター3の直径よりも小さな直径を有する。各玉48は、キャスター3の上側球面部83と、上側ブロック部81において上側球面部83に対向する対向面84との間に配置される。対向面84は球面の一部で構成される。各玉48は自在に回転可能であり、その結果、キャスター3が回転自在になっている。
【0042】
ジャッキボルト42は、ボルト67と、ナット68を有する。ボルト67は、キャスター取付部41の上端部と一体化された先端部72を含む。また、
図4及び
図5に示すように、ナット68は、摺動板60と一体に構成される。摺動板60は、上述のように第2I字状部33に固定されるため、ナット68は、巻上機台30と一体に構成され、巻上機台30に対して静止する。
図4に示すように、ナット68は、ねじ孔76を有し、そのねじ孔76は、ボルト67の軸部に設けられた雄ねじと螺合する。
【0043】
キャスター取付部41の上側ブロック部81は、ボルト95により被覆板50に固定される。ボルト95を外した状態で、ボルト67の頭部77を手又は工具等で一方側に回転させると、ボルト67がナット68に対してZ方向上側に移動し、その結果、ボルト67と一体のキャスター取付部41もZ方向上側に移動する。巻上機台30は、被覆板50と摺動板60とで画定されるキャスター収納部88を有する。キャスター取付部41は、Z方向上側に移動するにしたがってキャスター収納部88に徐々に収納される。
【0044】
他方、ボルト67の頭部77を手又は工具等で他方側に回転させると、ボルト67がナット68に対してZ方向下側に移動し、キャスター取付部41もZ方向下側に移動する。キャスター3は、その一部が巻上機台30よりもZ方向下側に突出する突出位置と、全ての部分が巻上機台30のZ方向下端よりもZ方向上側に位置してキャスター収納部88に収納される収納位置との間を移動可能になっている。キャスター取付部41は、上下動する際に、摺動板60上を摺動し、摺動板60に案内される。
【0045】
図4に示す状態では、キャスター3は、その一部が巻上機台30よりもZ方向下側に突出する突出位置に位置する。この状態で、ボルト95で被覆板50とキャスター取付部41を固定することで、キャスター3が突出位置に位置している状態を安定的に維持している。また、図示しないが、キャスター3が収納位置に位置している状態においてボルト95を被覆板50及びキャスター取付部41に締め込むことで、キャスター3が収納位置に位置している状態を安定的に維持できる。移動機構4をジャッキボルト42を用いて構成することで、移動機構4を簡単安価に構成できる。
【0046】
上記実施形態によれば、巻上機装置1が、突出位置において一部が巻上機台30よりもZ方向下方側に突出するキャスター3を有し、巻上機装置1がキャスター3で移動自在になる。したがって、巻上機装置1を移動させるのに台車の持ち運びを一切行う必要がなく、巻上機装置1の移動を、より容易、円滑かつ短時間で実行できる。
【0047】
また、巻上機装置1を所定位置に精密に位置決めする芯出しを行う際も、巻上機装置1がキャスター3で移動自在な状態で実行でき、巻上機装置1に過大な力を付与しなくても巻上機装置1を所定位置まで容易に移動させることができる。よって、巻上機装置1の芯出しもより容易かつ円滑に実行できる。
【0048】
また、巻上機装置1が所定位置に位置決めされている状態において、移動機構4を用いてキャスター3を収納位置に収納できる。よって、巻上機装置1の芯出し後、巻上機装置1の底面を機械台に容易に当接させることができ、巻上機装置1を機械台の所定位置に安定かつ確実に取り付けできる。
【0049】
更には、キャスター3が、球形状を有し、複数の玉48が、キャスター3の上側球面部83と、上側ブロック部81において上側球面部83に対向する対向面84との間に配置される。よって、車輪型のキャスターとの比較においてキャスター3を所望の方向により円滑に移動させ易い。
【0050】
尚、本発明は、上記実施形態およびその変形例に限定されるものではなく、本願の特許請求の範囲に記載された事項およびその均等な範囲において種々の改良や変更が可能である。
【0051】
例えば、上記実施形態では、巻上機装置1が、巻上機10と巻上機台30を含み、巻上機10が巻上機台30を介して機械台に固定される場合について説明し、巻上機台30にキャスター収納部88を設ける場合について説明した。しかし、巻上機装置が、巻上機台を有さず、巻上機装置の巻上機が、機械台に直接載置されてもよく、巻上機にキャスター収納部を設けてもよい。
【0052】
また、巻上機装置1が、球状のキャスター3を有する場合について説明した。しかし、巻上機装置は、市販の台車に用いられている車輪型のキャスターを有してもよく、車輪型のキャスターが、その回転軸の方向を自在に変動可能な構成でもよい。
【0053】
また、突出位置及び収納位置で、キャスター取付部41をボルト95で被覆板50に固定する場合について説明した。しかし、
図6、すなわち、変形例の巻上機装置101における
図5に対応する模式平面図に示すように、キャスター取付部141がX方向の片側端部に平板状の取付部185を有してもよい。そして、その取付部185を、ボルト195で摺動板160に固定することで、突出位置及び収納位置でキャスター取付部141を巻上機台130に固定してもよい。
【0054】
また、キャスター収納部88が、被覆板50と摺動板60とで画定される場合について説明した。しかし、巻上機装置は、被覆板を有さなくてもよい。そして、キャスターが、巻上機装置の本体部におけるZ方向の下方端よりも上方に位置してキャスター収納部に収納されている収納位置において、キャスター移動機構及びキャスターが外部から視認可能であってもよい。また、巻上機装置は、摺動板を有さなくてもよく、キャスター取付部は、Z方向に上下動する際に摺動体で案内されなくてもよい。また、突出位置において、キャスター3の一部が巻上機装置1の本体部2よりもZ方向下方側に位置する場合について説明した。しかし、突出位置において、キャスターの全てが巻上機装置の本体部よりもZ方向下方側に位置してもよい。また、キャスター移動機構を、ジャッキボルト42を用いて構成する場合について説明した。しかし、キャスター移動機構を、電動シリンダを用いて構成してもよく、油圧ジャッキを用いて構成してもよい。
【符号の説明】
【0055】
1 巻上機装置、 2 巻上機装置の本体部、 3 キャスター、 4 移動機構、 10 巻上機、 12 綱車、 17 電動機、 30 巻上機台、 31 機台本体、 41 キャスター取付部、 42 ジャッキボルト、 48 玉、 67 ボルト、 68 ナット、 81 上側ブロック部、 82 下側板部、 83 上側球面部、 84 対向面、 88 キャスター収納部、 Z方向 高さ方向。