【実施例】
【0012】
図1〜
図3に示すように、実施例に係る車両用パネル(以下、単にパネルという。)10は、樹脂シート(以下、シートという。)12と、樹脂パネル本体(以下、パネル本体という。)14とを重ねて配置した板状体である。また、パネル10には、シート12とパネル本体14との間に、電気を通す導電部16が形成されている。導電部16は、めっきからなり、シート12の面方向に延びる所要パターンで形成されている。なお、シート12およびパネル本体14は、絶縁性のものである。
【0013】
前記シート12は、ポリプロピレン(PP)やアクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合樹脂(ABS)などの熱可塑性樹脂からなるものが好ましい。
図4に示すように、シート12は、可撓性を有する薄板状のシート材であり、パネル10の三次元形状に合わせた三次元形状で形成されている。なお、実施例のシート12は、自身の厚み方向に曲がった湾曲形状で形成されている。
【0014】
前記パネル本体14は、ポリプロピレン(PP)やアクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合樹脂(ABS)などの熱可塑性樹脂からなるものが好ましく、例えばシート12と同じ種類の樹脂から構成される。
図4に示すように、パネル本体14は、パネル10の三次元形状に合わせた三次元形状で形成されており、実施例では自身の厚み方向に曲がった湾曲形状で形成されている。パネル本体14は、パネル10の形状保持を担う板状部分であり、シート12よりも剛性を有している。
【0015】
前記導電部16は、銅、金、銀、ニッケル、クロム等のめっきで形成することが可能であるが、電気抵抗が比較的低い銅を採用することが好ましい。導電部16は、前述したように三次元形状で形成されるシート12の面に沿って延在している。また、導電部16は、シート12に付与されたプライマからなる下地18(
図5(a)および(b)参照)に重ねて形成されている。
【0016】
図2および
図3に示すように、パネル10には、スイッチなどの電気部品20の電気接点20aや、別の車両用パネル(区別する場合は別のパネルという)22の導電部24と接続するための接続部26,28が設けられている。例えば、接続部26は、パネル本体14に開口14aを形成することで、シート12に形成された導電部16の一部を表側へ露出させ、当該露出部分を接点として用いている(
図2)。なお、接続部26と該接続部26に設置される電気部品20との間に、ゼブラゴム等の柔軟性を有する緩衝通電材を用いてもよい。
【0017】
図3に示すように、別形態の接続部28は、パネル本体14をシート12と比べて小さく形成することで(シート12をパネル本体14より大きく形成することで)、シート12の端部に形成された導電部16の一部を表側へ露出させ、当該露出部分を接点として用いている。パネル10には、シート12における導電部16の形成面と反対側に、接続部28(26)または接続部28(26)の周辺部位に対応させて、リブ等の支持部30をパネル本体14と一体的に形成してもよい。このような支持部30によって、接続部28(26)において可撓性を有するシート12に形成される接点が変形しないように支持することができる。なお、別のパネル22は、導電部24の接点24aが裏面(シート12におけるパネル本体14と反対側の面)に形成されている。
【0018】
次に、パネル10の製造方法について、
図5および
図6を参照して説明する。まず、平坦な板状のシート12に対してプライマを導電部16の形成予定位置に合わせて付与して、所要パターンの下地18を形成する(
図5(a))。ここで、プライマは、金属粒子とバインダとを、水やN−メチルピロリドン等の非プロトン性極性溶媒に分散したインキ組成物であり、未処理またはシランカップリング剤等で表面処理された無機系酸化物等のナノ粒子も含まれていることが好ましい。金属粒子としては、パラジウム粒子とポリカルボン酸系高分子等の分散剤との複合体であることが好ましく、例えば、分散剤の存在下、塩化パラジウム等のパラジウム化合物から供給されるパラジウムイオンを、ヒドラジンヒドラート等のアミン類で還元することによって得ることができる。バインダとしては、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂(PAI)、シェラック樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、ポリオレフィン樹脂、酢酸ビニル塩化ビニル共重合樹脂、ブチラール樹脂等が好ましい。このようなプライマとしては、例えば、特許第6072330号に記載のものが挙げられる。
【0019】
前記シート12へのプライマの付与は、バーコーター、グラビア印刷機(グラビアオフセット)、フレキソ印刷機、インクジェット印刷機、ディスペンサー、ディッピング、スプレー、スピンコーター、ロールコーター、リバースコーター、スクリーン印刷機等を用いることができる。シート12にプライマを付与したら、プライマに含まれる溶媒を揮発及び/又は乾燥させた後に、加熱することで、プライマに含まれるバインダを硬化させる。次いで、シート12をアルカリ処理することで、バインダ成分に被覆されていない最表層のナノ粒子を溶解及び/又は脱落させ、水洗い等の洗浄処理を経て、バインダ成分でナノ粒子が被覆された下地18を得ることができる。
【0020】
次に、下地18が形成されたシート12を、熱プレスや真空成形などによって、得るべきパネル10の形状に合わせて成形する(
図5(b))。実施例では、表側が凸となる湾曲形状のパネル10に合わせて、シート12が湾曲形状に賦形される。また、接続部26に対応して設置される電気部品20に合わせて、シート12に孔12aを設けるなど、必要な加工も行われる(
図5(c))。
【0021】
次に、シート12をめっき処理することで、所要パターンで形成された下地18に重ねてめっきを形成し、シート12に所要パターンの導電部16を設ける(
図5(d))。ここで、めっき方法としては、湿式が採用され、電気めっきであってもよいが、めっき厚の均一性などの利点から無電解めっきのほうが好ましい。
【0022】
前記めっき処理により導電部16を形成したシート12を、成形型32のキャビティ34にセットし(
図6(a)および(b))、所要の樹脂原料をキャビティ34に注入し、パネル本体14をインサート成形する(
図6(c))。パネル本体14の成形方法としては、例えば射出成形が採用される。樹脂原料が硬化する際に、シート12および該シート12に形成された導電部16にパネル本体14が接合し、シート12とパネル本体14とが一体化したパネル10が得られる。ここで、パネル本体14は、シート12に形成された導電部16を覆うように設けられるので、導電部16がパネル本体14とシート12との間に配置される。なお、導電部16において接続部26の接点となる部分には、パネル本体14を形成しないようにすることで、接点がパネル10の表側に露出するように形成される。そして、成形型32からパネル10を取り出し(
図6(d))、電気部品20を接続部26に取り付けることで、接続部26に露出する導電部16の接点と電気部品20の電気接点20aとが電気的に接続する。
【0023】
前記製造方法によれば、成形する前の平たいシート12に印刷等により下地18を形成するので、細かく複雑なパターンの下地18であっても簡単に形成することができる。また、シート12をパネル10に合わせた形状に成形した後にめっき処理を行うので、めっきからなる導電部16をパネル10の形状に合わせて簡単に形成することができる。しかも、導電部16を形成してから、シート12の形状を変えないので、導電部16が断裂したり、シート12から剥がれたりするなどの欠損を防止することができる。更に、導電部16は、何れも樹脂からなるシート12とパネル本体14との間に配置されるので、導電部16を絶縁被覆するなどの処理を省くことができる。更にまた、シート12に対するパネル本体14の形成位置を調整するだけの簡単なことで、導電部16の一部を露出させて、電気部品20に繋げるための接点を簡単に設けることができる。
【0024】
前記パネル10は、自身に導電部16が設けられているので、自身に設置される電気部品20に対して、ワイヤーハーネス等の配線を他の場所から取り回して接続する作業を省略することができる。また、パネル10は、自身に導電部16を備えているので、該パネル10の裏側に配線を通すためのスペースを確保する必要がなく、周辺に配置される部材や装置の設計の自由度向上に寄与し得る。また、導電部16は、めっきから構成されているので、導電性インクなどと比べて電気抵抗が低く、通電効率に優れている。
【0025】
前述した実施例に限らず、例えば以下のように変更してもよい。
(1)実施例では、樹脂シートと樹脂パネル本体からなる2層構造の車両用パネルを説明したが、これに限らず、例えば、樹脂パネル本体の表側を表皮材で覆った3層構造など、3層構造以上の車両用パネルであってもよい。
(2)樹脂シートの両面を樹脂パネル本体で覆う構成であってもよい。
(3)導電部を樹脂シートの両面に互いに独立させて、または繋げて設けてもよい。
(4)導電部は、電気を通す配線に限らず、静電スイッチのセンサー部等に用いるなど、その他の構成にも適用可能である。