【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成28年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「未利用熱エネルギーの革新的活用技術研究開発」に係る委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
水と水溶性塩と水溶性有機液体とを混合した液体を作動媒体とし、当該作動媒体を加熱して前記水と前記水溶性有機液体とを蒸発させる再生器と、当該再生器で蒸発した第1の混合蒸気を冷却して凝縮する凝縮器と、当該凝縮器で凝縮された凝縮液を減圧蒸発させ、その気化熱で低温冷熱を得る蒸発器と、当該蒸発器で発生した第2の混合蒸気を前記水溶性塩に吸収させる吸収器と、を有する吸収冷凍機において、
前記再生器から抜き出した作動媒体の濃度または液組成の少なくとも何れか一つを計測する第1の液組成計測装置と、
前記第1の液組成計測装置による計測結果に基づいて、前記再生器に供給する作動媒体の液組成を調整する制御装置と、
前記再生器で蒸発されなかった作動媒体を前記吸収器に戻す作動媒体戻し機構と、
前記作動媒体戻し機構における前記再生器と前記吸収器との間に設けられ、前記吸収器内の常温の前記第2の混合蒸気を吸収した前記水溶性塩の水溶液と、前記再生器で加熱された高温の作動媒体との間で熱交換を行う熱交換器と、
前記吸収器、前記再生器、前記凝縮器または前記蒸発器の少なくとも何れか一つに、水を供給する水供給装置と、
水溶性有機液体を供給する水溶性有機液体供給装置と、を有し、
前記第1の液組成計測装置は、
前記熱交換器により熱交換された後の作動媒体の濃度または液組成の少なくとも何れか一つを計測する吸収冷凍機。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態にかかる吸収冷凍機1を説明する。
図1は、実施の形態にかかる吸収冷凍機1の構成とその系統を説明する模式図である。
【0015】
[吸収冷凍機の構成]
図1に示すように、吸収冷凍機1は、作動媒体を加熱し、所定の成分を蒸発させる再生機10と、再生器10から供給された蒸気を冷却及び凝縮して液体を生成する凝縮器20と、凝縮器20から供給された液体を減圧蒸発させ、その気化熱で低温冷熱を得る蒸発器30と、蒸発器30から供給された蒸気を臭化リチウム水溶液に吸収させて、蒸発器30内を低圧にする吸収器40と、吸収冷凍機1の全体制御を行う制御装置50とを備える。
【0016】
吸収器40には、ジオキサン供給装置60と、水供給装置70と、インヒビター供給装置73とが設けられている。吸収器40には、ジオキサン供給装置60により1.4ジオキサンが供給され、水供給装置70により水が供給され、インヒビター供給装置73によりインヒビターが供給される。
【0017】
ジオキサン供給装置60は、ジオキサン供給管61と、バルブ62とを有している。バルブ62の開閉は、制御装置50(後述する操作処理装置53)により制御される。
【0018】
水供給装置70は、水供給管71と、バルブ72とを有している。バルブ72の開閉は、制御装置50(後述する操作処理装置53)により制御される。
【0019】
インヒビター供給装置73もまた、インヒビター供給管とバルブとを有しており、バルブの開閉は、制御装置50(後述する操作処理装置53)により制御される。
このインヒビター供給装置73から供給されるインヒビターは、主に水酸化リチウムが用いられ、吸収器40内の臭化リチウム水溶液に添加されることで防食機能を発揮する。
【0020】
吸収器40では、臭化リチウム水溶液に1.4ジオキサンを混合した3成分系の作動媒体が用いられており、この3成分系の作動媒体は、ポンプ80により再生器10に供給される。
【0021】
再生器10では、吸収器40から供給された3成分系の作動媒体が加熱されるようになっている。再生器10での加熱により、3成分系の作動媒体のうち水と1.4ジオキサンとが蒸発して高濃度の臭化リチウム水溶液が生成される。この再生器10における作動媒体の加熱は、工場での排熱などが利用される。
【0022】
再生器10で蒸発した水と1.4ジオキサンの混合蒸気は、管101を介して凝縮器20に供給される。また、再生器10で生成された高濃度の臭化リチウム水溶液は、管102を介して吸収器40に戻されるようになっている。
【0023】
ここで、管102における再生器10と吸収器40との間には、熱交換器90が設けられている。この熱交換器90では、ポンプ80により再生器10に供給される前の常温(約15℃〜40℃)の3成分系の作動媒体と、再生器10で生成された高温の臭化リチウム水溶液との間で熱交換が行われる。
【0024】
これにより、吸収器40における3成分系の作動媒体は、常温よりも高い温度に加熱されたのち再生器10に供給されるので、再生器10での加熱に要する熱エネルギーを少なくすることができる。
【0025】
また、再生器10で生成された高温の臭化リチウム水溶液は、常温近くまで冷却されたのち吸収器40に戻される。その結果、吸収器40での高濃度の臭化リチウム水溶液の冷却に要する熱エネルギーを少なくすることができる。
【0026】
熱交換器90の下流側には、バルブ85が設けられており、このバルブ85の開閉により再生器10から吸収器40に戻される高濃度の臭化リチウム水溶液の量が調整される。バルブ85の開閉は、制御装置50(後述する操作処理装置53)により制御される。
【0027】
凝縮器20では、内部が冷却されるようになっており、再生器10から供給された水と1.4ジオキサンの混合蒸気は冷却及び凝縮されて、水と1.4ジオキサンが混合したジオキサン水溶液が生成される。このジオキサン水溶液は、管103を介して蒸発器30に供給される。
【0028】
凝縮器20と蒸発器30との間を接続する管103には、バルブ86が設けられており、蒸発器30に供給されるジオキサン水溶液の量は、バルブ86により調整される。このバルブ86の開閉は、制御装置50(後述する操作処理装置53)により制御される。
【0029】
また、凝縮器20には、当該凝縮器20の底部に残ったジオキサン水溶液を排出する排出管95が設けられており、バルブ87によりジオキサン水溶液の排出量が調整される。このバルブ87の開閉もまた、制御装置50(後述する操作処理装置53)により制御される。
【0030】
蒸発器30では、当該蒸発器30内が低圧となるように維持されており、凝縮器20から供給されたジオキサン水溶液が低温で蒸発するようになっている。蒸発器30で発生した水と1.4ジオキサンの混合蒸気は、管108を介して吸収器40に供給される。
【0031】
蒸発器30では、ジオキサン水溶液が蒸発する過程で、気化熱により冷熱が得られるようになっている。この冷熱は、蒸発器30での冷媒との熱交換により、冷熱取出部96から取り出される。
【0032】
冷熱取出部96には、温度センサ91が設けられており、この温度センサ91により冷熱取出部96から取り出された冷媒の温度を計測する。温度センサ91は、制御装置50(後述する温度データ処理装置52)に接続されており、温度センサ91で計測された温度情報は制御装置50(後述する温度データ処理装置52)に送信される。
【0033】
ここで、蒸発器30内のジオキサン水溶液は、水よりも凝固点が低くなり、水と1.4ジオキサンを混合させた実施の形態のジオキサン水溶液(作動媒体)では、凝固点が0℃よりも低くなる。よって、蒸発器30では、0℃以下の冷熱が、冷熱取出部96から取り出される。
【0034】
前述した再生器10、凝縮器20、蒸発器30及び吸収器40には、それぞれ液位計11、21、31及び41が設置されている。液位計11、21、31及び41は、再生器10、凝縮器20、蒸発器30及び吸収器40内に残留する液体の底部からの高さ位置(液位)を計測するものである。
【0035】
それぞれの液位計11、21、31及び41は、制御装置50(後述する液位データ処理装置51)に接続されており、液位計で計測された各容器の液位情報は、制御装置50(後述する液位データ処理装置51)に送信される。
【0036】
ここで、再生器10と吸収器40との間には、液組成計測装置65が設けられている。液組成計測装置65は、再生器10で生成された高濃度の臭化リチウム水溶液の液組成(又は/及び濃度)を計測する。液組成計測装置65は、制御装置50(後述する液組成データ処理装置55)に接続されており、計測した臭化リチウム水溶液の液組成(又は/及び濃度)を制御装置50(後述する液組成データ処理装置55)に送信する。
【0037】
液組成計測装置65で計測された後の、高濃度の臭化リチウム水溶液は、管104を介して吸収器40に供給されるようになっている。これにより、液組成計測装置65は、再生器10から抜き出した高濃度の臭化リチウム水溶液の組成を計測すると共に、計測後の臭化リチウム水溶液をそのまま吸収器40に戻すようになっている。これにより、液組成計測装置65は、吸収冷凍機1の運転サイクルの中で、臭化リチウム水溶液の液組成を連続して計測することができる。
【0038】
液組成計測装置65と再生器10との間を接続する管105には、ポンプ81が接続されており、このポンプ81により、再生器10内に貯留した高濃度の臭化リチウム水溶液を含む3成分系の作動媒体が液組成計測装置65に供給される。このポンプ81の駆動は、制御装置50(後述する操作処理装置53)により制御される。
【0039】
実施の形態では、液組成計測装置65の供給側には、恒温槽66が設けられている。高濃度の臭化リチウム水溶液は、恒温槽66で一定の温度にされた後、液組成計測装置65で液組成が計測されるようになっている。
【0040】
また、蒸発器30にも、管106を介して液組成計測装置67が設けられている。液組成計測装置67は、蒸発器30で蒸発した水と1.4ジオキサンの混合蒸気(2成分系の混合蒸気)を、管106を介して抜き出して、その組成を計測する。そして、液組成計測装置67は、計測した水と1.4ジオキサンの混合蒸気を、管107を介してそのまま凝縮器20に供給するようになっている。このように、液組成計測装置67は、吸収冷凍機1の運転サイクルの中で混合蒸気を連続して計測することができる。
【0041】
蒸発器30と液組成計測装置67との間を接続する管106には、ポンプ82が設けられており、このポンプ82により、蒸発器30内の水と1.4ジオキサンの混合蒸気が液組成計測装置67に供給される。このポンプ82の駆動は、制御装置50(後述する操作処理装置53)により制御される。
【0042】
実施の形態では、液組成計測装置67の供給側には、恒温槽68が設けられている。水と1.4ジオキサンの混合蒸気は、恒温槽68で一定の温度にされた後、液組成計測装置67で液組成が計測されるようになっている。
【0043】
次に、制御装置50を説明する。
図1に示すように、制御装置50は、液位データ処理装置51と、温度データ処理装置52と、操作処理装置53と、モニタ54と、液組成データ処理装置55とを有する。
【0044】
液位データ処理装置51は、液位計11、21、31及び41から送信された液位データを取り込み、演算処理する装置である。
【0045】
温度データ処理装置52は、温度センサ91から送信された温度データを取り込み、演算処理する装置である。
【0046】
操作処理装置53は、液位データ処理装置51、温度データ処理装置52、液組成データ処理装置55での各データの処理結果に基づいて、バルブ62、72、85、86、87、及びポンプ80、81、82を制御する装置である。
【0047】
モニタ54は、送信された液位データ、温度データ、各バルブの開閉状態などを表示する装置である。
【0048】
液組成データ処理装置55は、液組成計測装置65、67の液組成データを取り込み、演算処理する装置である。実施の形態では、液組成データ処理装置55は、再生器10と蒸発器30の液組成データを演算処理する。
【0049】
[液組成計測方法]
次に、液組成データ処理装置55における、液組成の計測方法を説明する。
図2は、液組成計測方法を説明する図である。
本願発明者は、鋭意研究の結果、被計測媒体(例えば、再生器10内の3成分系の作動媒体、蒸発器30内の2成分系の混合蒸気)の異なる2以上の物理的性質に基づいて、被計測媒体における水のモル分率Xc、被計測媒体における水と臭化リチウムの重量分率ξを算出する演算式を構築した。
【0050】
以下、液組成計測装置65と、液組成計測装置65で計測された被測定媒体の物理的性質に基づいて演算を行う液組成データ処理装置55とを、液組成データ処理装置55で算出した演算式の算出方法と共に説明する。
[0000]
図2に示すように、液組成計測装置65は、被計測媒体(再生器10内の高濃度の臭化リチウム水溶液:3成分系の作動媒体)の組成を、異なる方法でそれぞれ計測するための複数の計測部(実施の形態では、第1計測部651、第2計測部652、第3計測部653)を有している。
【0051】
ここで、第1計測部651、第2計測部652、第3計測部653は、被計測媒体のそれぞれ異なる物理的性質を利用して、被計測媒体の組成を測定する装置である。
【0052】
第1計測部651は、光学的性質を利用して被計測媒体の組成を計測する装置である。光学的性質とは、例えば、被計測媒体の透過度、旋光度、屈曲率、濁度、色度などが挙げられる。
【0053】
第2計測部652は、電気的性質を利用して被計測媒体の組成を計測する装置である。電気的性質とは、例えば、被計測媒体のpH、電気導電率、酸化還元電位、イオンメータなどが挙げられる。
【0054】
第3計測部653は、流体としての性質を利用して被計測媒体の組成を計測する装置である。流体としての性質とは、例えば、密度、粘度などが挙げられる。
【0055】
図2に示すように、実施の形態の液組成計測装置65には、再生器10で生成された高濃度の臭化リチウム水溶液(被計測媒体)の一部が導入される。
【0056】
高濃度の臭化リチウム水溶液は、再生器10での加熱により高温になっている。そのため、高濃度の臭化リチウム水溶液は、液組成計測装置65に導入される前に、液組成計測装置65の供給側に設けられた恒温槽66で、常温に近い一定の温度まで冷却される。
【0057】
そして、高濃度の臭化リチウム水溶液は所定の流路で分岐して、液組成計測装置65の第1計測部651と第2計測部652と第3計測部653の何れか2以上に供給される。
【0058】
このように、m種類の被計測媒体が混合されている場合、m−1種類の計測装置に導入して、液組成を計測する。実施の形態では、再生器10から導入された臭化リチウム水溶液は、水と臭化リチウムと1.4ジオキサンの3種類の成分が含まれた混合液であるので、前述した第1計測部651から第3計測部653のうちの何れか2(3−1種)種類の計測部に導入して、異なる2種類の物理的性質の計測を行う。
【0059】
計測後の被計測媒体(高濃度の臭化リチウム水溶液)は、そのまま吸収器40へ戻される。
【0060】
液組成計測装置65で計測された被計測媒体の液組成データは、制御装置50の液組成データ処理装置55に送信される。
【0061】
制御装置50の液組成データ処理装置55では、液組成計測装置65(第1計測部651、第2計測部652、第3計測部653)で計測された複数の異なる性質の液組成データを取得すると共に、この液組成データに所定の重み係数f、g、r、sを加えて、臭化リチウム水溶液(3成分系の作動媒体)の水モル分率Xcと、臭化リチウムの重量分率ξの演算を行う。
【0062】
例えば、臭化リチウム水溶液(被計測媒体)の水モル分率Xcと、臭化リチウムの重量分率ξは、第1計測部651で計測した臭化リチウム水溶液の屈折率n、第2計測部652で計測した臭化リチウム水溶液の電気伝導率σに重み係数をf、g、r、sを加えて、次の数式(1)、(2)で表すことができる。
【0063】
Xc=(n、σ、fi(i=1〜4)、gi(i=1〜4)) ・・・・ (1)
【0064】
ξ=(n、σ、ri(i=1〜4)、si(i=1〜4)) ・・・・ (2)
【0065】
ここで、重み係数f、g、r、sは、それぞれ4個(i=1〜4)、合計16個あり、複数の温度に対してそれぞれ設定することが好ましい。特に、実施の形態のように、被計測媒体を恒温槽66で一定の温度に設定している場合には、重み係数f、g、r、sは、一定の温度の1つの設定値(パターン)だけでよくなるので、演算式の構築時間を短縮化することができる。
【0066】
次に、水、臭化リチウム、及び1.4ジオキサンを含む3成分系の作動媒体の凝固点の変化を説明する。
図3は、水、臭化リチウム、及び1.4ジオキサンを含む3成分系の作動媒体の凝固点を説明する図(以下、凝固点図と表記する)である。
【0067】
図3に示す凝固点図では、横軸に作動媒体の水モル分率Xc、縦軸に凝固点「℃」が設定されており、臭化リチウムの重量分率ξに対して示されている。水モル分率Xc=1は、作動媒体に1.4ジオキサンが全く含まれない場合、すなわち水と臭化リチウムのみの混合液を表している。
【0068】
臭化リチウムの重量分率ξ=0、すなわち作動媒体に臭化リチウムが全く含まれない場合、水モル分率Xc=1での作動媒体の成分は水であり、この場合の凝固点は0℃である。
【0069】
水モル分率Xcが1から減少すると(1.4ジオキサンの濃度が高くなると)、ある一定の水モル分率Xcまでは凝固点は下がるが、ある一定の水モル分率Xcよりも下がるとそれ以上は凝固点が下がらず、反対に凝固点が上がってしまうことが分かる。
【0070】
また、臭化リチウムの重量分率ξが増加すると(臭化リチウムの濃度が高くなると)、凝固点は下がることが分かる。
【0071】
ここで、臭化リチウムは水溶性塩であり、臭化リチウムの濃度が高くなると凝固点が下がる一方、沸点を高めることとなる。臭化リチウムが高濃度になると、蒸発器30での臭化リチウム水溶液の蒸発が阻害されると共に、蒸発器30内の伝熱管に臭化リチウムの結晶が析出することにより伝熱が阻害され冷熱が得られにくくなる。
【0072】
このため、蒸発器30では、凝固点の降下、沸点の上昇、及び結晶化を起こさないように最適な水と臭化リチウムの重量分率ξを設定する必要がある。ここで、凝固点の最小値は、重量分率ξが大きいほど水モル分率Xcが高くなる側(
図3の右側)へシフトしており、凝固点と沸点と結晶化温度を考慮した上で、蒸発器30で必要な冷熱温度と、その冷熱温度を得るための混合液の組成を設定することとなる。
【0073】
吸収冷凍機1では、冷媒と作動媒体とを、再生器10〜吸収器40との間で循環させる閉サイクルを形成している。例えば、吸収器40において、1.4ジオキサンを添加しない臭化リチウム水溶液の場合、再生器10と蒸発器30で水だけが蒸発するため、再生器10と蒸発器30とで蒸気組成が異なることはない。したがって、吸収冷凍機を安定して継続して運転するためには、再生器10と蒸発器30とで水の蒸発流量を等しくすればよい。
【0074】
一方、実施の形態の吸収冷凍機1では、吸収器40において、水、臭化リチウムに1.4ジオキサンを加えた3成分系の作動媒体としている。このような場合、再生器10と蒸発器30とで水と1.4ジオキサンの両成分が蒸発するため、再生器10と蒸発器30の蒸気組成と蒸気流量を同時に等しくする必要がある。
【0075】
次に、再生器10と蒸発器30における水と1.4ジオキサンの蒸気組成の温度依存性図を説明する。
図4は、
図3において水モル分率Xc=Cの位置での再生器10と蒸発器30における水と1.4ジオキサンの蒸気組成の温度依存性図である。
図5は、
図3において水モル分率Xc=Aの位置での再生器10と蒸発器30における水と1.4ジオキサンの蒸気組成の温度依存性図である。
図6は、
図3において水モル分率Xc=Bの位置での再生器10と蒸発器30における水と1.4ジオキサンの蒸気組成の温度依存性図である。
なお、水モル分率Xcは、C>A>Bの関係となっている(
図3参照)。
【0076】
図4〜
図6に示す蒸気組成の温度依存性図では、横軸に温度℃、縦軸に蒸気(液)組成「mol%」を設定している。
【0077】
図4に示すように、水モル分率Xc=Cの場合の蒸気組成は、再生器10と蒸発器30の何れの容器でも、1.4ジオキサンよりも水の量が多くなっている。これは、水モル分率Xc=Cでは、混合蒸気中の水の濃度が高いためである。
【0078】
また、再生器10の方が、蒸発器30よりも蒸気組成における水の量が少なく、1.4ジオキサンの量が多い。よって、水モル分率Xc=Cでは、再生器10と蒸発器30とで、各容器内の液組成(濃度)が異なっていることが分かる。
【0079】
図5に示すように、水モル分率Xc=Aの場合の蒸気組成は、再生器10と蒸発器30の何れの容器でも、1.4ジオキサンよりも水の量が多くなっている。水モル分率Xc=Aもまた、混合蒸気中の水の濃度が高いためである。
【0080】
ここで、水モル分率Xc=Aでは、再生器10と蒸発器30とで、蒸気組成における水の量がほぼ同じとなり、1.4ジオキサンの量もほぼ同じとなる。これは、水モル分率Xc=Aの方が、Xc=Cの場合よりも混合液中の水の濃度が低くなる代わりに、1.4ジオキサンの濃度が高くなっているからである。
【0081】
図6に示すように、水モル分率Xc=Bの場合の蒸気組成は、低温の蒸発器30では、水の量は1.4ジオキサンよりも少なく、高温の再生器10では、水の量は1.4ジオキサンよりも多くなっている。各容器での、水と1.4ジオキサンの液組成(濃度)が異なっていることが分かる。
【0082】
図7は、各容器内での液組成図であり、液組成の重量分率の経時変化を示している。
【0083】
図7では、横軸に時間、縦軸に液組成の重量分率としている。また、初期状態で、再生器10内の水モル分率Xc=B(
図3参照)、吸収器40内の臭化リチウムの重量分率ξ=0.55とする。
【0084】
再生器10内には、吸収器40から、水と1.4ジオキサンと臭化リチウムの混合液(3成分系の作動媒体)が供給される。再生器10では、この混合液が加熱されて、水と1.4ジオキサンが蒸発し、臭化リチウムは蒸発せずに残る。
【0085】
そのため、
図7の右上図に示すように、再生器10内では、時間の経過と共に、1.4ジオキサンが減少し、低い値で一定の値となる。これは、再生器10には、1.4ジオキサンを含む混合液が吸収器40から供給されるが、水モル分率Xc=Bでの1.4ジオキサンの量が少ないためである。
【0086】
凝縮器20内には、再生器10から、水と1.4ジオキサンの混合蒸気が供給される。凝縮器20では、この混合蒸気が冷却されて、水と1.4ジオキサンが凝縮される(ジオキサン水溶液が生成される)。
【0087】
図7の左上図に示すように、凝縮器20内の混合蒸気は、所定時間経過後に水と1.4ジオキサンの量は一定となる。
【0088】
蒸発器30内には、凝縮器20で生成されたジオキサン水溶液が供給される。蒸発器30では、このジオキサン水溶液が蒸発する。
【0089】
図7の左下図に示すように、蒸発器30では、1.4ジオキサンが減少したのち、水モル分率Xc=Aで一定となる。水は増加後に一定の値となる。蒸発器30内のジオキサン水溶液は、水と1.4ジオキサンの混合液であり、臭化リチウムが含まれていないため、
図3のξ=0を見ると初期状態のXc=Bでは凝固点は低い状態にあるが、Xc=Aでは凝固点は高くなることが分かる。
【0090】
吸収器40内には、蒸発器30から供給された水と1.4ジオキサンと、臭化リチウムとの混合液が貯留されている。
【0091】
図7の右下図に示すように、吸収器40では、最終的に水と臭化リチウムと1.4ジオキサンの量は一定の値となる。
【0092】
次に、
図8は、1.4ジオキサンをさらに加えた場合の、再生器10、凝縮器20、蒸発器30、吸収器40内の液組成図であり、液組成の重量分率の経時変化を示している。
【0093】
図8では、横軸に時間、縦軸に液組成の重量分率としている。また、初期状態で、再生器10内の水モル分率Xc=D(
図3参照)、吸収器40内の臭化リチウムの重量分率ξ=0.55としている。
【0094】
図8の右上図に示すように、再生器10では、1.4ジオキサンの量は時間の経過と共に減少する。しかし、
図8に示す再生器10では、
図7の場合よりも混合液中の1.4ジオキサンの量が多いため、1.4ジオキサンの重量分率は、
図7の場合よりも多い値で一定の値となった。また、再生器10では、混合液中の1.4ジオキサンの重量分率が増加した分、水と臭化リチウムの重量分率ξは、
図7の場合よりも減少する。
【0095】
次に、
図8の左上図に示すように、凝縮器20では、
図7の場合よりも、再生器10から供給された水と1.4ジオキサンの混合蒸気に含まれる1.4ジオキサンの量が多くなっている。そのため、凝縮器20では、1.4ジオキサンと水の量が時間の経過とともに一定となるが、
図7の場合よりも、1.4ジオキサンの量が増加し、その分、水の量が減少する。
【0096】
図8の左下図に示すように、蒸発器30では、吸収冷凍機1の稼働初期に1.4ジオキサンの量が減少したのち、Xc=B(<A)で一定の値となる。水の量は、吸収冷凍機1の稼働初期に増加したのち、一定の値となる。蒸発器30内の水と1.4ジオキサンの混合液には、臭化リチウムが含まれていないため、
図3のξ=0を見ると初期状態のXc=Dでは、1.4ジオキサンが過剰に含まれているため凝固点は高い状態にあるが、次第に1.4ジオキサンの含まれる割合が低下してXc=Bになり、凝固点が降下する。
【0097】
図8の右下図に示すように、吸収器40では、蒸発器30から供給された混合蒸気における1.4ジオキサンの重量分率が増加した分、水と臭化リチウムの重量分率ξがそれぞれ減少する。
【0098】
図7及び
図8に示すように、凝縮器20内の混合液中の1.4ジオキサンの重量分率は、時間と共に増加したのち、一定の値となった。吸収冷凍機1の稼働直後は、1.4ジオキサンが凝縮器20に蓄積されるが、十分に時間が経てばそれ以上は蓄積しないことを表している。
【0099】
ここで、実施の形態では、吸収冷凍機1において、1.4ジオキサンの濃度が適切か否かの判断、及び定常状態になっているか否かの判断方法として、再生器10内の1.4ジオキサンの濃度を基準として判断している。そのため、再生器10内の1.4ジオキサンが減少している間は、定常状態になっていないことを表しており、また、1.4ジオキサンの濃度が0(ゼロ)、又は0(ゼロ)に近ければ混合液中の1.4ジオキサンの添加量が足りないことを表している。
【0100】
このように吸収冷凍機1では、再生器10内の1.4ジオキサンの濃度を計測することで、吸収冷凍機1を安定して継続して運用することができる。
【0101】
ここで、吸収冷凍機1における再生器10内の水と1.4ジオキサンの混合液の水モル分率Xcと、蒸発器30内の水と1.4ジオキサンの混合液の水モル分率Xcの関係を説明する。
図9は、吸収冷凍機1における再生器10内の混合液の水モル分率Xcと、蒸発器30内の混合液の水モル分率Xcの関係を説明する図である。
図9の横軸は再生器10内の混合液の水モル分率Xc、縦軸は蒸発器30内の混合液の水モル分率Xcである。
【0102】
図9において、領域Kと領域Mは、再生器10内の混合液の水モル分率Xcの変化に対して蒸発器30内の混合液の水モル分率Xcの変化が大きい。これに対して、領域Lでは、再生器10内の混合液の水モル分率Xcが変化しても蒸発器30内の混合液の水モル分率Xcの変化が小さい。この領域Lは、蒸発器30内での凝固点の変化が小さく、1.4ジオキサンの添加量に対して尤度を有し、吸収冷凍機1の運用を行う上で好ましい範囲である。
【0103】
この
図9に示す再生器10内の混合液の水モル分率Xcと蒸発器30内の混合液の水モル分率Xcとの関係(領域L)を、液組成データ処理装置55に予め組み込んでおき、
図9における領域Lの範囲で、再生器10と蒸発器30の運用を行えばよい。
【0104】
吸収冷凍機1では、吸収器40に1.4ジオキサンを供給するジオキサン供給装置60(
図1参照)を有しているので、再生器10内又は蒸発器30内の1.4ジオキサンが不足している場合、このジオキサン供給装置60により、1.4ジオキサンを吸収器40に供給する。これにより、吸収器40で吸収された高濃度の1.4ジオキサンを含む混合液が再生器10に供給されるので、再生器10の1.4ジオキサンの濃度を高めることができる。
【0105】
その結果、吸収冷凍機1では、高濃度の1.4ジオキサンを含む混合蒸気が、再生器10から凝縮器20に供給されたのち、凝縮器20で凝縮された高濃度の1.4ジオキサンを含む混合液が蒸発器30に供給されて、蒸発器30内の1.4ジオキサンの濃度を高めることができる。
【0106】
また、吸収冷凍機1では、再生器10又は蒸発器30の1.4ジオキサンが過剰の場合、凝縮器20の高濃度の1.4ジオキサンを含む混合液を排出管95から排出すると共に、吸収器40に設けられた水供給装置70により、吸収器40に水を供給するようになっている(
図1参照)。
【0107】
この結果、凝縮器20内の高濃度の1.4ジオキサンを含む混合液が排出されて、水で薄められた低濃度の1.4ジオキサンを含む混合液が、再生器10に供給される。
【0108】
再生器10では、低濃度の1.4ジオキサンを含む混合蒸気が発生すると共に、この混合蒸気が凝縮器20に供給される。
【0109】
凝縮器20では、低濃度の1.4ジオキサンを含む混合蒸気が冷却及び凝縮されて、低濃度の1.4ジオキサンを含む混合液が生成される。この低濃度の1.4ジオキサンを含む混合液が、蒸発器30に供給されて、蒸発器30内の1.4ジオキサンの濃度が低くなる。
【0110】
前述した凝縮器20内の混合液の抜き出し、吸収器40内への1.4ジオキサン又は水の供給の判断は、液位データ処理装置51が、液位計21、41で計測された各容器の液位に基づいて行う。
【0111】
以上の通り、実施の形態では、
(1)水と臭化リチウム(水溶性塩)と1.4ジオキサン(水溶性有機液体)とを混合した液体を3成分系の作動媒体とし、当該作動媒体を加熱して水と1.4ジオキサンを蒸発させる再生器10と、当該再生器10で蒸発した水と1.4ジオキサンの混合蒸気(第1の混合蒸気)を冷却して凝縮する凝縮器20と、当該凝縮器20で凝縮された水と1.4ジオキサンの混合液(凝縮液)を減圧蒸発させ、その気化熱で低温冷熱を得る蒸発器30と、当該蒸発器30で発生した水と1.4ジオキサンの混合蒸気(第2の混合蒸気)を臭化リチウムに吸収させる吸収器40と、を有する吸収冷凍機1において、再生器10に供給された3成分系の作動媒体の濃度または液組成の少なくとも何れか一つを計測する液組成計測装置65(第1の液組成計測装置)と、液組成計測装置65による計測結果に基づいて、再生器10に供給する3成分系の作動媒体の液組成を調整する制御装置50と、を有する構成とした。
【0112】
このように構成すると、吸収冷凍機1では、再生器10内の3成分系の作動媒体の濃度または液組成のうち、少なくとも何れか一つを計測する液組成計測装置65と、液組成計測装置65の計測結果に基づいて、再生器10に供給する3成分系の作動媒体の液組成を調整する制御装置50を有している。よって、吸収冷凍機1では、再生器10内の3成分系の作動媒体の濃度または液組成を適切に管理できるので、作動媒体が臭化リチウムと1.4ジオキサンを含む3成分になった場合でも、吸収冷凍機1を安定して運用することができる。
【0113】
(2)再生器10で蒸発されなかった作動媒体を吸収器40に戻す管102(作動媒体戻し機構)と、管102における再生器10と吸収器40との間に設けられ、吸収器40内の常温の水と1.4ジオキサンの混合蒸気を吸収した臭化リチウム水溶液と、再生器10で加熱された高温の作動媒体との間で熱交換を行う熱交換器90と、を有し、液組成計測装置65は、熱交換器90により熱交換された後の作動媒体の濃度または液組成の少なくとも何れか一つを計測する構成とした。
【0114】
このように構成すると、液組成計測装置65では、熱交換器90で熱交換されて一定の温度に保たれた作動媒体の濃度または液組成を計測するので、液組成の計測における温度の影響を受け難く、濃度や液組成の計測(演算)を簡便に行うことができる。
【0115】
また、再生器10内の作動媒体の液組成を計測することで、制御装置50は、再生器10内の作動媒体の液組成が最も適切な液組成となるように、より迅速に液組成を調整することができる。
【0116】
(3)吸収器40、再生器10、凝縮器20または蒸発器30の少なくとも何れか一つに、水を供給する水供給装置70と、1.4ジオキサンを供給するジオキサン供給装置60と、を有する構成とした。
【0117】
このように構成すると、水供給装置70とジオキサン供給装置60により、吸収器40、再生器10、凝縮器20または蒸発器30の何れか一つの容器内の混合液の液組成を適切に調整することができる。よって、吸収冷凍機1を安定して運用することができる。
【0118】
(4)水供給装置70とジオキサン供給装置60を、吸収器40に設ける構成とした。
【0119】
このように構成すると、吸収器40は、常温付近で運用されているので、水と1.4ジオキサンの混合蒸気を吸収器40に供給することで、吸収器40の温度を常温近傍まで下げることができる。よって、吸収冷凍機1では、吸収器40の温度が高くなることによる運用効率の低下(熱ロス)を抑えることができる。
【0120】
(5)凝縮器20内の作動媒体を排出する排出管95(排出装置)を有する構成とした。
【0121】
凝縮器20は、再生器10、蒸発器30、吸収器40よりも1.4ジオキサンの濃度が高くなる。
よって、このように構成すると、吸収冷凍機1における1.4ジオキサンの濃度が過剰に高くなった場合、最も濃度が高くなる凝縮器20から水と1.4ジオキサンの混合液を排出することで、1.4ジオキサンの濃度を効率よく下げることができる。
【0122】
(6)蒸発器30内の水と1.4ジオキサンの混合液の濃度または液組成のうち、少なくとも何れか一つを計測する液組成計測装置67(第2の液組成計測装置)を有する構成とした。
【0123】
このように構成すると、液組成計測装置67により、蒸発器30内の水と1.4ジオキサンの混合液の濃度又は液組成を計測できる。よって、制御装置50は、液組成計測装置67で計測した測定結果に基づいて、蒸発器30内の混合液の濃度又は液組成を適切な値に調整することができる。
【0124】
(7)また、制御装置50は、液組成計測装置65による再生器10内の3成分系の作動媒体の計測結果に基づいて、水供給装置70またはジオキサン供給装置60または排出管95のうち、少なくとも何れか一つの駆動を制御する構成とした。
【0125】
このように構成すると、制御装置50により、再生器10内の3成分系の作動媒体の濃度又は液組成に基づいて、凝縮器20から高濃度の1.4ジオキサン水溶液を排出すると共に、吸収器40内に水と1.4ジオキサンを供給するので、運転サイクルの中で、再生器10と蒸発器30の作動媒体の濃度又は液組成を適切な値に調整することができる。
【0126】
(8)また、水溶性塩は臭化リチウムであり、水溶性有機液体が1.4ジオキサンまたはアルコール(1プロパノール又は2ブタノール)である構成とした。
【0127】
このように構成すると、吸収冷凍機1の運用を適切に行うことができる。
【0128】
<第2実施形態>
次に、本発明に係る第2の実施形態を説明する。
図10は、第2の実施形態にかかる吸収冷凍機1Aの構成とその系統を説明する模式図である。
この第2の実施形態の吸収冷凍機1Aは、蒸発器30の作動媒体として、水と臭化リチウムと1.4ジオキサンの3成分系の作動媒体を用いている点が、前述した実施形態の蒸発器30の作動媒体として、水と1.4ジオキサンの2成分系の作動媒体を用いていた点と異なる。
【0129】
この第2の実施形態は、前述した実施の形態に対して、(1)吸収器40に臭化リチウム供給装置75を有している点、(2)吸収器40内の水、臭化リチウム、1.4ジオキサンの3成分の混合液の液組成を計測する液組成計測装置94及び恒温槽69を有している点、(3)吸収器40内の3成分の作動媒体を蒸発器30に供給する作動媒体供給装置120を有している点、(4)蒸発器30内の3成分系の凝縮液を吸収器40に供給する凝縮液供給装置121を有している点、(5)吸収器40内の圧力を測定する圧力センサ92を有している点が異なり、その他の構成及び機能は、前述した実施の形態と同一である。
そのため、以下の説明では、前述した実施形態と異なる部分を主に説明し、同一の構成については同一の番号を付し、詳細な説明は省略する。
【0130】
吸収冷凍機1Aでは、吸収器40内の水と臭化リチウムと1.4ジオキサンの3成分を含んだ混合液を、蒸発器30に供給する作動媒体供給装置120が設けられている。これにより蒸発器30内の混合液を、臭化リチウムを含む3成分の混合液とすることができる。
【0131】
3成分の混合液の吸収器40から蒸発器30への供給は、吸収器40から再生器10へ混合液を供給するためのポンプ93を利用し、バルブ98の開閉により調整される。このポンプ93とバルブ98は、制御装置50(操作処理装置53)により制御される。
【0132】
これにより、蒸発器30に混合液に臭化リチウムを入れることで、蒸発器30内の混合液の凝固点を、混合液が水と1.4ジオキサンの2成分のみの混合液の場合よりも、より低い温度にすることができる。よって、吸収冷凍機1Aでは、冷熱取出部96からより低い冷熱を取り出すことができる。
【0133】
また、吸収器40には、臭化リチウム供給装置75と、圧力センサ92とが設けられている。
【0134】
臭化リチウム供給装置75は、臭化リチウム供給管76と、バルブ77とを有している。臭化リチウムは、バルブ77が開かれた場合、臭化リチウム供給管76を介して、吸収器40に供給される。バルブ77の開閉は、制御装置50(操作処理装置53)により制御される。
【0135】
圧力センサ92は、吸収器40内に設けられており、吸収器40内の圧力を計測すると共に、計測した圧力値を温度データ処理装置52に送信するようになっている。
【0136】
吸収冷凍機1Aでは、吸収器40内の3成分の混合液が蒸発器30に供給される構成となっているため、吸収器40内の臭化リチウム濃度が徐々に減少して、吸収器40の吸収能力が低下する恐れがある。
【0137】
そのため、吸収冷凍機1Aでは、吸収器40内の圧力(吸収器40の吸収能力)を圧力センサ92で監視する。そして、制御装置50(操作処理装置53)は、圧力センサ92の計測結果に基づいて、臭化リチウムの濃度が所定値よりも低くなった(吸収器40の吸収能力が低下した)と判断した場合、バルブ77を開いて、臭化リチウム供給管76を介して吸収器40に臭化リチウムを供給する。
【0138】
一方、制御装置50(操作処理装置53)は、圧力センサ92の計測結果に基づいて、臭化リチウムの濃度が所定値よりも高い(吸収器40の吸収能力が適切に保たれている)と判断した場合、バルブ77を閉じて、吸収器40への臭化リチウムの供給を停止する。
【0139】
このように、吸収冷凍機1Aでは、圧力センサ92による吸収器40内の圧力の計測結果に基づいて、吸収器40内の臭化リチウムの濃度を適切に制御することができる。
【0140】
吸収冷凍機1Aには、吸収器40内の混合液の液組成を計測する液組成計測装置94と恒温槽69が設けられている。これにより、制御装置50では、液組成計測装置94により計測した液組成データと、前述した数式(1)、(2)を用いて、吸収器40内の混合液の水モル分率Xcと、臭化リチウムの重量分率ξが算出できる。
【0141】
特に、液組成計測装置94の混合液の供給側には、恒温槽69が設けられており、計測前の混合液を一定の温度にすることができ、制御装置50による数式(1)、(2)を用いた演算を、温度を固定した簡単な数式で演算をすることができる。
【0142】
実施の形態では、吸収器40内の混合液は、水と臭化リチウムと1.4ジオキサンの3成分を含む混合液であるので、液組成計測装置94は、異なる2種類の物理的性質(例えば、光学的性質の透過度と電気的性質の電気伝導率)を計測するようになっている。
【0143】
臭化リチウムは、低温で高濃度ほど結晶化し易い性質を有する。このため、吸収冷凍機1Aでは、液組成計測装置94及び制御装置50による臭化リチウムの重量分率ξの算出結果に基づいて、吸収器40内の臭化リチウムの濃度を適切な値に制御する。
【0144】
なお、吸収器40から液組成計測装置94への混合液の供給は、ポンプ83により行われる。ポンプ83の駆動は、制御装置50(操作処理装置53)により制御される。
【0145】
ここで、吸収冷凍機1Aは、蒸発器30内の水と臭化リチウムと1.4ジオキサンの3成分系の凝縮液を吸収器40に供給する凝縮液供給装置121を有している。
【0146】
凝縮液供給装置121は、ポンプ84とバルブ97とを有しており、このポンプ84とバルブ97により、蒸発器30内の3成分系の凝縮液を吸収器40に供給/停止が決められる。ポンプ84とバルブ97とは、制御装置50(操作処理装置53)により制御される。
【0147】
これにより、吸収冷凍機1Aでは、蒸発器30内の臭化リチウムを含む3成分系の作動媒体が吸収器40に供給され、吸収器40での臭化リチウムの濃度の低下を防止している。
【0148】
次に、第2の実施形態における各容器内での液組成を説明する。
図11は、第2の実施形態における各容器内での液組成図であり、液組成の重量分率の経時変化を示している。
【0149】
図11では、横軸に時間、縦軸に液組成の重量分率としている。また、初期状態で、再生器10内の水モル分率Xc=B(
図3参照)、吸収器40内の臭化リチウムの重量分率ξ=0.55、蒸発器30内の作動媒体の臭化リチウムの重量分率ξ=0.2とした。
【0150】
第2の実施形態では、蒸発器30内の作動媒体は、水と、1.4ジオキサンと、臭化リチウムを含む3成分系の作動媒体である。このため、蒸発器30では、臭化リチウムがほぼ一定の値で含まれており、蒸発器30では、作動媒体の臭化リチウムは蒸発しないため、臭化リチウムの重量分率ξ=0.2でほぼ一定となる。また、蒸発器30での、作動媒体の水モル分率Xc=Aで一定となる。
【0151】
初期状態では、蒸発器30における水モル分率Xc=Bであり、作動媒体の凝固点は低い状態にあるが、時間の経過と共に、蒸発器30における水モル分率Xc=Aとなり、作動媒体の凝固点が上昇する。
【0152】
また、蒸発器30では、作動媒体に臭化リチウムが一定の値で含まれている分、作動媒体中の水と1.4ジオキサンの量は、水と1.4ジオキサンの2成分系の作動媒体の場合よりも全体的に低下する。
【0153】
また、再生器10、凝縮器20、吸収器40での液組成図は、
図7に示す液組成図とほぼ同様となる。
【0154】
次に、蒸発器30の作動媒体を、水と臭化リチウムと1.4ジオキサンの3成分系の作動媒体とし、1.4ジオキサンの量をさらに多く加えた場合の各容器での液組成を説明する。
【0155】
図12は、蒸発器30の3成分系の作動媒体に、1.4ジオキサンをさらに加えた場合の各容器内での液組成図であり、液組成の重量分率の経時変化を示している。
図12では、横軸に時間、縦軸に液組成の重量分率としている。また、初期状態で、再生器10内の水モル分率Xc=D(
図3参照)、吸収器40内の臭化リチウムの重量分率ξ=0.55、蒸発器30内の作動媒体の臭化リチウムの重量分率ξ=0.2とした。
【0156】
図12に示すように、再生器10内の混合液は、時間の経過に伴って、1.4ジオキサンの量が減少したのち、所定の値で一定となった。この場合、蒸発器30での1.4ジオキサンの量が多い分、再生器10での1.4ジオキサンの所定の値は、
図11に示した再生器10内での所定の値よりも大きな値となっている。
【0157】
蒸発器30では、1.4ジオキサンの量が増加し、水モル分率Xc=Bで一定の値となった。蒸発器30内での3成分系の作動媒体中の水モル分率Xc=Dであり、1.4ジオキサンが過剰に含まれているため、蒸発器30における作動媒体の凝固点は高い状態になっているが、最終的には水モル分率Xc=Bになり凝固点が低下する。
【0158】
凝縮器20では、混合液中の1.4ジオキサンの量が時間の経過と共に増加し、その後、所定の値で安定した。吸収冷凍機1Aの稼働直後は、1.4ジオキサンが凝縮器20に蓄積されるが、十分に時間が経過すると、それ以上は蓄積しないからである。
【0159】
図12に示すように、吸収器40では、蒸発器30での1.4ジオキサンの量が増加した分、吸収器40での1.4ジオキサンの量も所定の値まで増加する。
【0160】
次に、第2の実施形態の吸収冷凍機1Aにおける再生器10内の混合液の水モル分率Xcと、蒸発器30内の混合液の水モル分率Xcの関係を説明する。
【0161】
図13は、吸収冷凍機1Aにおける再生器10内の混合液の水モル分率Xcと、蒸発器30内の混合液の水モル分率Xcの関係を説明する図である。
図13の横軸は再生器10内の混合液の水モル分率Xc、縦軸は蒸発器30内の混合液の水モル分率Xcである。
【0162】
図13において、前述した
図9と同様に、領域Qと領域Sは、再生器10内の混合液の水モル分率Xcの変化に対して蒸発器30内の混合液の水モル分率Xcの変化が大きい。これに対して、領域Rでは、再生器10内の混合液の水モル分率Xcが変化しても蒸発器30内の混合液の水モル分率Xcの変化が小さい。この領域Rは、蒸発器30内での凝固点の変化が小さく、1.4ジオキサンの添加量に対して尤度を有し、吸収冷凍機1Aの運用を行う上で好ましい範囲である。
【0163】
よって、この
図13に示す再生器10内の混合液の水モル分率Xcと蒸発器30内の混合液の水モル分率Xcとの関係(領域R)を、液組成データ処理装置55に予め組み込んでおき、
図13における領域Rの範囲で、再生器10と蒸発器30の運用を行えばよい。
【0164】
以上の通り、第2の実施の形態では、
(9)吸収器40内の水と1.4ジオキサンの混合蒸気を、蒸発器30に供給する混合蒸気供給装置120を備える構成とした。
【0165】
このように構成すると、吸収器40内の混合蒸気を利用して、蒸発器30内の混合液の濃度または液組成を適切な値に調整することができる。
【0166】
(10)蒸発器30内の水と1.4ジオキサンの混合液(凝縮液)を抜き出し、当該水と1.4ジオキサンの混合液を吸収器40に供給する凝縮液供給装置121を有する構成とした。
【0167】
このように構成すると、凝縮液供給装置121により、蒸発器30内の凝縮液を吸収器40に戻すことができるので、蒸発器30において、吸収器40から供給された臭化リチウム水溶液により、蒸発器30内の凝縮液の量が過剰になることを防止することができる。
【0168】
(11)吸収器40内の水と臭化リチウムと1.4ジオキサンを含む3成分系の作動媒体の濃度または液組成のうち、少なくとも何れか一つを計測する液組成計測装置94を有する構成とした。
【0169】
このように構成すると、液組成計測装置94により、吸収器40内の臭化リチウムの濃度を管理することができ、吸収器40内の臭化リチウムの濃度が高くなることによる臭化リチウムの結晶化を防止することができる。
【0170】
(12)吸収器40内に臭化リチウム(水溶性塩)の水溶液を供給する臭化リチウム供給装置75(水溶性塩供給装置)を有する構成とした。
【0171】
このように構成すると、臭化リチウム供給装置75により、吸収器40内の臭化リチウムの濃度を所定の値まで高めることができ、臭化リチウムの濃度不足による吸収器40の吸収能力の低下を防止することができる。
【0172】
(13)また、制御装置50は、液組成計測装置67による蒸発器30内の水と臭化リチウムと1.4ジオキサンの3成分系の作動媒体の計測結果に基づいて、吸収器40内の作動媒体を蒸発器30内に供給する作動媒体供給装置120(第2の水溶性塩供給装置)を制御する構成とした。
【0173】
このように構成すると、制御装置50による作動媒体供給装置120の制御により、吸収器40内の作動媒体に含まれる臭化リチウムを、蒸発器30に供給することができ、蒸発器30での臭化リチウムの濃度を適切に調整することができる。
【0174】
(14)また、制御装置50は、液組成計測装置94による吸収器40内の水と1.4ジオキサンを吸収した臭化リチウム水溶液の計測結果に基づいて、吸収器40に臭化リチウムの水溶液を供給する臭化リチウム供給装置75(第1の水溶性塩供給装置)を制御する構成とした。
【0175】
このように構成すると、制御装置50による臭化リチウム供給装置75の制御により、吸収器40内の臭化リチウムの濃度を適切に調整することができる。
【0176】
なお、前述では、水溶性有機液体として、1.4ジオキサンを用いる場合を例示して説明したが、水溶性有機液体として、アルコール類又はアルコール類の混合液でもよい。例えば、アルコール類として、メタノール、エタノール、1プロパノール、2プロパノール、1ブタノール、2ブタノールが適用できる。
【0177】
なお、前述では、水溶性塩として、臭化リチウムを用いる場合を例示して説明したが、水溶性塩であれば、臭化リチウムに限定されるものではない。
【0178】
なお、前述した実施形態では、吸収器40に水供給装置70、ジオキサン供給装置60、臭化リチウム供給装置75を設け、吸収器40内の混合液の液組成を調整することで、再生器10と蒸発器30内での液組成を調整する場合を例示して説明した。しかし、水供給装置70、ジオキサン供給装置60、臭化リチウム供給装置75を設ける位置は、吸収器40に限定されるものではなく、再生器10、凝縮器20、蒸発器30の何れか1つまたは複数に設けても良い。
【0179】
また、前述した実施形態では、液組成計測装置65、67、94は、それぞれ再生器10、蒸発器30、吸収器40に対応させて設けたが、これに限定されるものではない。液組成計測装置は、少なくとも、再生器10、凝縮器20、蒸発器30、吸収器40の何れか一つに対応させて設けていればよく、特に、再生器10に対応させて設けるのが好ましい。