特許第6952550号(P6952550)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6952550地盤の混合処理装置及びそれを用いた混合処理工法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6952550
(24)【登録日】2021年9月30日
(45)【発行日】2021年10月20日
(54)【発明の名称】地盤の混合処理装置及びそれを用いた混合処理工法
(51)【国際特許分類】
   E02D 3/12 20060101AFI20211011BHJP
【FI】
   E02D3/12 102
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-181857(P2017-181857)
(22)【出願日】2017年9月22日
(65)【公開番号】特開2019-56254(P2019-56254A)
(43)【公開日】2019年4月11日
【審査請求日】2020年8月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000236610
【氏名又は名称】株式会社不動テトラ
(74)【代理人】
【識別番号】100088708
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】今給黎 健一
(72)【発明者】
【氏名】永石 雅大
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 英次
(72)【発明者】
【氏名】村上 恵洋
(72)【発明者】
【氏名】深田 久
【審査官】 高橋 雅明
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−130404(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第01045073(EP,A1)
【文献】 特開2005−188237(JP,A)
【文献】 特開2016−075058(JP,A)
【文献】 特開2014−009510(JP,A)
【文献】 特開2000−345555(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回動可能な回転軸と、前記回転軸下端側に設けられた掘削手段及び該掘削手段の上側に設けられて回転軸に対し略直角に突設した攪拌翼を有した撹拌手段と、前記撹拌翼に設けられた吐出手段と、前記回転軸に沿って配管されて前記吐出手段から改良材を圧縮エアーと共に噴射可能にする供給管とを備えている地盤の混合処理装置であって、
前記攪拌手段は、前記攪拌翼より上側に設けられて回転軸を一周する間に、回転軸の径方向への突出寸法が下端側を最大で上側に行くにしたがって次第に小さくなるスパイラルないしはヘリカル形状からなり、かつ、上下に貫通されたエアー上昇用開口を設けたヘリカルリボン翼を有し
前記ヘリカルリボン翼は、前記回転軸の径方向への突出寸法が下端側を前記攪拌翼と略同じか若干短く、上端側を下端の1/2以下となっていることを特徴とする地盤の混合処理装置。
【請求項2】
前記開口は、前記回転軸の周囲寄りに設けられて、翼面積の50%以上の大きさに形成されていることを特徴とする請求項1に記載の地盤の混合処理装置。
【請求項3】
請求項1又は2の地盤の攪拌混合処理装置を用いて、前記回転軸を回転しつつ軟弱地盤中に貫入及び/又は引抜き過程にて、前記吐出手段から噴射される改良材と原位置土を前記撹拌手段により混合すると共に、前記改良材に含まれていた圧縮エアーの前記回転軸に沿った上昇を伴う地盤の混合処理工法であって、
前記攪拌手段による混合では、前記改良材と原位置土を前記攪拌翼の回転により専ら水平域内で回転方向の動きを伴って攪拌し、かつ、前記ヘリカルリボン翼の回転及び前記吐出手段から改良材と共に噴射される圧縮エアーの前記開口を介した上昇流により左右及び上下方向の動きを伴って攪拌することを特徴とする混合処理工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、改良材を軟弱地盤中に噴出し、原位置土と混合する地盤の混合処理装置及びそれを用いた混合処理工法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
地盤の混合処理装置は、図8に示した特許文献1や図9に示した特許文献2のごとく、駆動装置により回転される回転軸11(文献2では1)及び回転軸下端に設けられた掘削手段19(文献2では8)及び該掘削手段の上側に設けられて回転軸に対し略直角に突設した攪拌翼15,17(文献2では3A,3B)を有した撹拌手段と、撹拌翼に設けられた吐出手段16e,18e(文献2では図9(b)の混合エジェクタ13や同(c)のノズル20)と、回転軸に沿って配管されて吐出手段から改良材を圧縮エアーと共に噴射可能にする供給管16a,18a(文献2では2A,2B)とを備えている。
【0003】
この装置を用いる混合処理工法では、生石灰やセメントミルク等の固化系改良材を地盤中の原位置土と混合し、改良材と粘性土等の原位置土と化学的な結合作用を利用して、強固な柱状パイルを造成したり、土質性状を安定化することにより地盤強度を向上する。処理操作では、回転軸を回転しつつ軟弱地盤中に貫入及び/又は引抜き過程にて、吐出手段から噴射される改良材と原位置土を撹拌手段により攪拌すると共に、改良材に含まれていた圧縮エアーの回転軸に沿った上昇を伴う。
【0004】
すなわち、吐出手段は、撹拌翼の付け根部や先端側に設けられており、改良材を圧縮エアーと共に撹拌翼の回転によって形成される空隙部に噴射される。噴射された改良材は、撹拌翼の回転に伴って回転軌跡に散布され、原位置土と混合撹拌される。圧縮エアーは回転軸11に沿って地表側へ上昇される。この場合、文献1では図8(b)のごとく攪拌翼の基端側に設けられた空気抜孔37を通じて、文献2では図9のごとく回転軸1の周囲にあって上下方向に延びているエアー回収用リブ材9により回転軸と原位置土との間に形成される隙間を通じてそれぞれ上昇され地表へ放出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4187077号公報
【特許文献2】特許第3416774号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記地盤の混合処理装置及び工法では、改良材と原位置土との混合度合いが地盤改良品質をほぼ決めるため、品質を確保する上では改良材が原位置土に均一に混ざるようにすることが重要となる。そのような点から、従来は、回転軸の回動速度や混合時間の設定等の処理制御面から対処すると同時に、撹拌翼と共に設けられる各種の共廻り防止手段(文献2では4)により撹拌翼の移動に伴う土の共廻りを阻止したり、撹拌翼や撹拌翼同士の間に付着した土を除去するという混合機構面からも対処している。換言すると、噴射された改良材と原位置土は、攪拌翼の回転により専ら水平域内で回転方向の動きを伴って混合攪拌される。混合度合いを上げる構成としては、回転軸を引抜き時に回転させながら、強制昇降手段によって上下動を繰り返しながら引抜きを行う、いわゆるデュアルウエイミキシング(2方向複合攪拌)と称される方法もある。しかし、従来構造では、原位置土として攪拌翼の根元近くの土砂と攪拌翼の先端側の土砂とが混ざり合うような構成に欠けるため、混合度合いを更に上げることが難しい。また、図9の混合エジェクタ吐出方式では、改良材をエアーに同伴させ霧状に放出させることで、改良域全体に改良材を散布することが可能となり、またエアリフト効果で土が移動し易くなり、土の上昇を促す効果はあるが、更に有効活用するためには改善の必要性があった。
【0007】
本発明の目的は、以上のような背景から、ヘリカルリボン翼により原位置土つまり土砂が上下左右に動くことで混合効率を向上し、更に土層が上下方向に変化した場合に異なる土層が混じり合うことで土砂の性状を安定化できるようにした地盤の混合処理装置及びそれを用いた混合処理工法を提供することにある。他の目的は以下の内容説明の中で明らかにする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため請求項1の発明は、回動可能な回転軸と、前記回転軸下端側に設けられた掘削手段及び該掘削手段の上側に設けられて回転軸に対し略直角に突設した攪拌翼を有した撹拌手段と、前記撹拌翼に設けられた吐出手段と、前記回転軸に沿って配管されて前記吐出手段から改良材を圧縮エアーと共に噴射可能にする供給管とを備えている地盤の混合処理装置であって、前記攪拌手段は、前記攪拌翼より上側に設けられて回転軸を一周する間に、回転軸の径方向への突出寸法が下端側を最大で上側に行くにしたがって次第に小さくなるスパイラルないしはヘリカル形状からなり、かつ、上下に貫通されたエアー上昇用開口を設けたヘリカルリボン翼を有し、前記ヘリカルリボン翼は、前記回転軸の径方向への突出寸法が下端側を前記攪拌翼と略同じか若干短く、上端側を下端の1/2以下となっていることを特徴としている。
【0009】
以上の本発明において、『攪拌翼』とは、形態に示したごとく回転軸外周に略直角に突設されている板状からなる翼であればよく、図6に例示したごとく水平方向に貫通された練り出し用開口を有した翼(オープン翼と称されている)、更に練り出し用開口窓の内側に設けられて軸に対し回転自在な共廻り防止翼を有した構成も含まれる。『吐出手段』とは、改良材を圧縮エアーと共に噴射する構成であればよく、図8(b)に例示されるような噴射口、図9(b),(c)に例示されるような混合エジェクタやノズルなどである。
【0010】
以上の本発明は、以下のごとく具体化することがより好ましい。すなわち、前記開口は、前記回転軸の周囲寄りに設けられて、翼面積の50%以上の大きさに形成されている構成である(請求項)。
【0011】
これに対し、請求項3の発明は、請求項1又は2の地盤の混合処理装置を用いて、前記回転軸を回転しつつ軟弱地盤中に貫入及び/又は引抜き過程にて、前記吐出手段から噴射される改良材と原位置土を前記撹拌手段により混合すると共に、前記改良材に含まれていた圧縮エアーの前記回転軸に沿った上昇を伴う地盤の混合処理工法であって、前記攪拌手段による混合では、前記改良材と原位置土を前記攪拌翼の回転により専ら水平域内で回転方向の動きを伴って攪拌し、かつ、前記ヘリカルリボン翼の回転及び前記吐出手段から改良材と共に噴射される圧縮エアーの前記開口を介した上昇流により左右及び上下方向の動きを伴って攪拌することを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
請求項1の発明では、請求項3の混合処理工法で特定したごとく、例えば、改良材が圧縮エアーと共に吐出手段から高圧で噴射されると、噴射された改良材が原位置土と攪拌翼の回転により専ら水平域内で回転方向の動きを伴って混合され、かつ、ヘリカルリボン翼の回転及び改良材に含まれていたエアーの開口を介した上昇流により左右及び上下方向の動きを伴って混合され、これにより、従来装置に比べヘリカルリボン翼に対応した分だけ混合効率を向上できる。
【0013】
換言すると、本発明のヘリカルリボン翼は、例えば、回転軸の貫入過程において、攪拌翼で混合された改良材と原位置土を、更に上下方向に移動したり、その上下方向の移動により異なる土層同士(例えば、不陸として下側の粘土層とその上側の腐植土層)を混合することで混ざり合い性状を安定化し、改良品質のバラツキを小さく抑えることを可能にする。また、ヘリカルリボン翼は、回転軸から離れた外側の土砂等を回転軸周りへ効率よく移動し、改良材と原位置土に左右方向の動きと、改良材に含まれていたエアーの開口を介した上昇流、つまりエアーリフトによる上下方向の動きを与え、その結果、混合効率の向上、不陸において異なる土層が混ざり合うことでより安定した改良品質を得られるようにする。
【0014】
また、本発明のヘリカルリボン翼では、下端側が広く上端側で狭まっていると、回転軸から離れる外側の土砂等を回転軸近くに移動し易くなる。各種試験からは、外側の土砂等を回転軸つまり内側に移動し易くする上で、ヘリカルリボン翼の翼形状として、上端側を下端の1/2以下にすることが好ましいとの結果であった。なお、ヘリカルリボン翼の長さについては2m以上、通常は2〜3m程度の長さにすることが好ましい。
【0015】
請求項2の発明では、ヘリカルリボン翼の開口が回転軸の周囲寄りで、翼面積の50%以上の大きさに形成されていると、エアーの上昇流、つまりエアーリフト効果により原位置土である土砂等が移動し易くなって改良材との良好な攪拌作用も得られる。
【0016】
請求項3の発明では、地盤の混合処理工法として、上記した請求項1又は2の攪拌混合処理装置による利点を得られる。具体的には、従来の攪拌翼による混合攪拌に加え、ヘリカルリボン翼による回転及びエアーの開口を介した上昇流により左右及び上下方向の動きを伴って混合攪拌する分だけ混合効率を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】発明形態の地盤の混合処理装置の要部を示す正面図である。
図2】(a)と(b)は図1の混合処理装置の上面図と下面図である。
図3図1の攪拌混合処理装置の左側面図である。
図4】上記混合処理装置を用いたときの混合処理工法の作動を説明するための模式図である。
図5】上記混合処理装置の変形例1を示す正面図である。
図6】上記混合処理装置の変形例2を示す正面図である。
図7】上記混合処理装置の変形例3を示す正面図である。
図8】(a)と(b)は特許文献1に開示の図1図3である。
図9】(a)から(c)特許文献2に開示の図1図4図6である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を図面を参照しながら説明する。図1から図4は形態例である地盤の混合処理装置を示し、図5から図7は変形例1から3を示している。以下の説明では、図1から図4に示した混合処理装置、その装置を用いた混合処理工法を明らかにした後、変形例1、2、3に言及する。
【0019】
(装置構造)図1から4に示した地盤の混合処理装置は、2軸構成の例であり、不図示の施工機により同期して昇降される2本の回転軸1,1と、各回転軸1の下端に設けられた掘削手段である掘削刃2と、攪拌手段を構成して回転軸1に対し略直角に突設した三段構成の攪拌翼3A,3B,3C及び最上段の攪拌翼3Cより上側軸部分に設けられたヘリカルリボン翼4と、最下段の撹拌翼3Aに設けられた吐出手段である混合エジェクタ5と、回転軸1内に沿って配管されて混合エジェクタ5から改良材を圧縮エアーと共に噴射可能にする供給管6a,6bと、回転軸1同士の間に設けられた共廻り防止板7とを備えている。以下、これらの細部を明らかにする。
【0020】
まず、回転軸1は、概略筒形からなり、不図示の駆動機構により正逆回動されるもので、上端側1aが多角形に形成されると共に、下端側1bが若干径小に形成されている。上端側1aは、次の回転軸又は駆動機構に連結される連結部である。下端側1bは、下端筒内に装着された掘削手段を構成しているシャフト12と、下から上に向かって順に設けられた攪拌翼3A、共廻り防止板7、攪拌翼3B、共廻り防止板7、攪拌翼3Cとを有している。また、回転軸1には、ヘリカルリボン翼4が攪拌翼3Cより上側の周囲に設けられている。回転軸1内には改良材用供給管6a及びエアー用供給管6bなどが配管されている。供給管6aには固化系供給手段から改良材が圧送される。供給管6bには圧縮エアー供給手段12から圧縮エアーが圧送される(図8(a)を参照)。
【0021】
各攪拌翼3A〜3Cは、細長い板状からなり、取付筒13に対し左右対にそれぞれ設けられている。左右の攪拌翼は、基端側が図示を省略した補強材により取付筒13に強固に結合支持されている。攪拌翼3A,3B,3Cは、取付筒13が下端側1bの周囲に位置決め固定された状態で回転軸1と一体に回動可動となっている。また、左右の攪拌翼は、回転軸1に嵌合された取付筒13の周囲にあって、図2に示されるごとく若干ずれた状態で溶接等により固定されると共に、回動時に互いに衝突しないように左右端が一方をハ形状、他方を逆ハ形状に形成されている。各攪拌翼は、取付筒13に対し必要に応じて不図示の固定板等で補強固定されることもある。
【0022】
対の攪拌翼3Aのうち、一方の攪拌翼には混合エジェクタ5が設けられている。混合エジェクタ5は、細部を省略したが、図9(b)と同様に、導入筒部14、噴出部17、取付部18からなる。導入筒部14内は、後側のエアー供給部14bと前側の改良材供給部14aとが弁機構等により区画されると共に、各供給部14a,14bに入口13a,13bが設けられている。この弁機構は、導入筒部14の内周に固定されて、エア供給部14bに導入される圧縮エアーを内部に導入可能な弁ケース15と、弁ケース15内と改良材供給部14a側とを開閉する弁部材16とを有している。入口13aには図1の供給管6aが、入口13bには供給管6bが接続パイプ等を介し接続される。弁部材16は、両供給部14a,14bの間を遮断しており、エアー供給部14b内が所定圧になるとバネ部材16aの付勢圧に抗し開状態に切り換えられて圧縮エアーを供給部14b側から供給部14a側へ導入する。供給部14a内に導入された改良材は、供給部14bから導入される圧縮エアーに乗せられて噴出部17側へ導出されて高圧で噴射される。以上の混合エジェクタ5は、撹拌翼3Aの左右略中間箇所に、噴射部17の噴出口13cが撹拌翼3Aの混合作動時における回転方向を向くよう位置決め配置され取付部18を介し溶接等にて固着される(細部は文献2を参照)。
【0023】
これに対し、各共廻り防止板7は、両側の回転軸1同士を連結して各回転軸の振れ止めを兼ねる構成であり、各回転軸1の周囲に配置される筒状体17及び筒状体17に装着される対のブラケット8,8を有し、各回転軸1に対し左右端が両ブラケット8の間に挟持された状態に連結支持されている。筒状体17は、回転軸1の外径よりも若干大きな内径をなし、回転軸1に設けられた上下のストッパー18により回転軸1の定高さ位置に回動自在に組み付けられている。
【0024】
ヘリカルリボン翼4は、回転軸1の径方向への突出寸法が下端側が最大に設定され、上側に行くにしたがって次第に小さくなるスパイラルないしはヘリカル形状であると共に、上下に貫通されたエアー上昇用開口14を有している。すなわち、ヘリカルリボン翼4は、上下端部4a,4bが回転軸1の周囲に固定されると共に、内側に延設された複数の片部4c,4dが回転軸1の周囲に固定された状態となっている。エアー上昇用開口14は、上端部4aと片部4cの間、片部4cと片部4dの間、片部4dと下端部4bとの間にそれぞれ窓状に設けられている。
【0025】
詳述すると、ヘリカルリボン翼4は、図4に模式的に示したように、原位置土の土砂として、回転軸1の回動により回転軸1から離れる外側の土砂を回転軸1近くつまり左右に移動し易くしたり、下端部4bの土砂を上端部4a側つまり上下に移動し易い形状に工夫されている。各種試験からは、回転軸1の径方向への突出寸法が下端側を前記攪拌翼と略同じか若干短く設定されると共に、上端側を下端の1/2以下に設定することが好ましい結果となった。また、ヘリカルリボン翼4は、長さL1が図3に示されるごとく前記攪拌翼のうち最下段の攪拌翼3Aと最上段の攪拌翼3Cとの間の距離L2と同じか長くなるよう設けられている。但し、この長さL1は一般的に2〜3m程度に設定することが好ましい。
【0026】
開口14は、地中において圧縮エアーが改良材と共に噴射されたとき、回転軸1に沿って上昇つまりエアーリフトを良好に保つ挿通用の穴である。この構成では、ヘリカルリボン翼4の混合作動として、上記したごとく回転軸1から離れる外側の土砂を回転軸1近くつまり左右に移動して改良材と均一となるよう混ぜ、加えてエアーの上昇流により改良材と更に混ざるようにする。すなわち、エアーリフト効果による混合作用を良好に維持されるようにする。各種試験からは、開口14として、回転軸1の周囲寄りに設けることと、翼面積の50%以上の大きさに形成することが好ましい結果となった。
【0027】
(工法)次に、以上の混合処理装置の処理操作について概説する。通常の施工手順は、位置決め工程、改良材噴射・貫入攪拌工程、着底確認・先端処理工程、引き抜き攪拌工程を経て改良杭を造成する。位置決め工程では、施工機により混合処理装置が施工箇所に移動されて位置決めされる。改良材噴射・貫入攪拌工程では、回転軸1が回転されながら連続して貫入操作され、この貫入過程で混合操作が行われる。すなわち、この操作では、改良材が上記固化系供給手段から供給管6aを通じ、圧縮エアーが供給管6bを通じ混合エジェクタ5まで圧送される。そして、混合エジェクタ5では、上記した如く供給部14bが所定圧になると弁部材16が付勢圧に抗して開状態に切り換えられ、圧縮エアーが供給部14bから供給部14a側へ導入されて、供給部14aに導入された改良材がその圧縮エアーに乗せられて噴出部17から、地中へ向けて噴出する(細部は文献2を参照)。着底確認・先端処理工程では、回転軸1の先端部が支持層に到達したことを確認した後、改良材の噴射を停止し、回転軸1を所定寸法引き抜き、再貫入して先端処理を行う。引き抜き攪拌工程では回転軸1が逆回転されながら引き抜かれる。その後、混合処理装置が次の施工位置に移動されることになる。
【0028】
ところで、以上の回転軸1では、攪拌手段として攪拌翼3A〜3Cと共にヘリカルリボン翼4を有している。このため、この混合操作では、改良材と原位置土を攪拌翼3A〜3Cの回転により専ら水平域内で回転方向の動きを伴って攪拌すると共に、ヘリカルリボン翼4の回転及び吐出手段である混合エジェクタ5の吐出部から改良材と共に噴射される圧縮エアーの開口14を介した上昇流により左右及び上下方向の動きを伴って攪拌する。換言すると、ヘリカルリボン翼4の作動としては、例えば、回転軸1の貫入過程において、攪拌翼3A〜3Cで混合された改良材と原位置土を、更に上方向に移動したり、その上方向の移動により異なる土層同士(例えば、不陸として下側の粘土層とその上側の腐植土層)を混合することもでき、それにより土層同士の混ざり合い性状を安定化したり、改良品質のバラツキを小さく抑えることができる。
【0029】
なお、以上の混合処理工法において、改良材の噴出時期は、回転軸1の貫入過程、貫入及び引き抜き過程、引き抜き過程の何れであってもよい。ここで、上記撹拌翼が上下に複数段設けられる場合、混合エジェクタ5や図8(c)のノズル20を何処に設けるか等について必要に応じ設計される。また、固化系改良材は、セメントミルク等の流動物以外に、生石灰やセメント等の如く粉体系でも圧縮エアーに同伴させて吐出することも可能である。
【0030】
(変形例)図5から図7は上記混合処理装置を単軸構成に変更した三例を示している。この説明では、同一部材や部位に同じ符号を付して重複記載を極力さけて、変更点を明らかにする。
【0031】
図5において、地盤の混合処理装置は、不図示の施工機により昇降される単一の回転軸1と、掘削手段である掘削刃2と、攪拌手段を構成して回転軸1に対し略直角に突設した三段構成の攪拌翼3A,3B,3C及び最上段の攪拌翼3Cより上側軸部分に設けられたヘリカルリボン翼4と、最下段の撹拌翼3Aに設けられた吐出手段である混合エジェクタ5と、回転軸1内に沿って配管されて混合エジェクタ5から改良材を圧縮エアーと共に噴射可能にする供給管6a,6bと、複数の共廻り防止板7Aとを備えている。各共廻り防止板7Aは、上記共廻り防止板7と比較して攪拌翼3Aと3Bの間、攪拌翼3Bと3Cの間にそれぞれ配置されている点、回転軸1の周囲に配置される筒状体17及び筒状体17に装着される対のブラケット8,8を有し、回転軸1に対し対応端が両ブラケット8の間に挟持された状態に連結支持されている点で同じ。但し、左右の共廻り防止板7Aは、各攪拌翼の全寸よりも少し長く形成されており、地盤中に貫入された状態で回動し難くなるよう設定されている。
【0032】
図6において、地盤の混合処理装置は、図5の装置構造に比べ共廻防止板7Aを省略していると共に、三段構成の攪拌翼を一段構成の攪拌翼9に変更し簡略化されている。すなわち、左右の攪拌翼9は、それぞれ略コ形状であり、取付筒13Aの周囲に対し上下端部を溶接等で固定されている。左右の攪拌翼9は、取付筒13Aないしは回転軸1との間に練り出し用開口窓19を区画している。そして、この装置構造では、改良材と原位置土を攪拌翼9の回転により専ら水平域内で回転方向の動きを伴って攪拌する過程において、改良材や原位置土の土砂が開口窓19の回転前方向である一方から回転後方向である他方へ練り出され、その練り出し作用により混合度合いを向上できる。以上の装置構造を更に展開する例としては、特許第3287989号公報に開示されているように開口窓19の内側に小型の共廻防止板又はそれに類似の部材を取付筒13Aなどに対し回転自在に付設する構成、ヘリカルリボン翼4と攪拌翼9の間にも上記攪拌翼3Aような板状の攪拌翼、或いは上記共廻り防止板7Aのような回転自在の共廻り防止板を追加するようにしてもよい。
【0033】
図7において、地盤の混合処理装置は、図6の装置構造に比べ攪拌翼9Aと掘削手段である掘削刃及び吐出手段である混合エジェクタが変更されている。すなわち、左右の攪拌翼9Aは、取付筒13Aの周囲に対し溶接等で固定されおり、下縁側に装着された複数の掘削刃2Aと、板厚内に設けられて翼先端面に噴射口を露出している噴射ノズル5Aとを有している。掘削刃2Aは、攪拌翼9Aと共に回転軸1の下端側1bにも装着されている。本発明の掘削手段は、この構成例のごとく回転軸下端側に設けられた掘削翼2Aに限られず、攪拌翼9Aの下縁側に設けられた掘削刃2Aも含まれる。また、噴射ノズル5Aは、噴出口が撹拌翼9Aの先端面に露出しているため、改良材が圧縮エアーと共に噴射されたときの噴射力で原位置土の掘削及び攪拌を攪拌翼9Aの攪拌域より更に径方向に広げることができる。
【0034】
なお、以上の形態例や変形例は本発明を何ら制約するものではない。本発明は、請求項1で特定される技術要素を備えておればよく、細部は必要に応じて種々変更可能なものである。その一例としては、回転軸1の多軸構成として3軸以上を組としたり、ヘリカルリボン翼4の開口構成として螺旋状の連続した枠形に形成する形状も含まれるものである。
【符号の説明】
【0035】
1・・・・・回転軸(1aは上端側、1bは下端側)
2・・・・・掘削刃(掘削手段)
2A・・・・掘削刃(掘削手段)
3A・・・・攪拌翼(攪拌手段)
3B・・・・攪拌翼(攪拌手段)
3C・・・・攪拌翼(攪拌手段)
4・・・・・ヘリカルリボン翼(攪拌手段:14はエアー上昇用開口)
5・・・・・混合エジェクタ(吐出手段)
5A・・・・噴射ノズル(吐出手段)
6a・・・・改良材用供給管
6b・・・・圧縮エアー用供給管
7・・・・・共廻り防止板
8・・・・・共廻り防止板
9・・・・・攪拌翼(攪拌手段:19は練り出し用開口窓)
9A・・・・攪拌翼(攪拌手段)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9