(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
走行機体の後部に昇降自在に連結され、前記走行機体の走行に応じて、圃場面をシートで覆いつつ、シートの上から圃場に苗を植え付ける植付作業機を備えるマルチ移植機であって、
前記植付作業機は、
シートを繰り出し可能に保持するシート保持部と、
該シート保持部から繰り出されたシートを圃場面に押し付けるシート押えローラと、
圃場に苗を植え付ける植付機構と、
圃場面に対する前記植付作業機の高さを感知する感知フロートと、を備え、
前記走行機体は、
前記植付作業機を昇降させる油圧昇降機構と、
前記感知フロートによる高さ感知に応じた前記油圧昇降機構の動作制御に基づいて、圃場面に対する前記植付作業機の高さを自動的に制御する油圧昇降制御手段と、
前記感知フロートによる高さ感知に対する前記油圧昇降制御手段の油圧制御感度を、鋭い側に調節したときには植付作業機の圃場面に対する沈み込みを抑制し、鈍い側に調節したときには植付作業機の圃場面に対する浮きを抑制すべく調節する油圧制御感度調節手段と、
前記植付作業機の圃場面への下降又は接地に際し、前記油圧制御感度調節手段による油圧制御感度を設定感度よりも鈍くなる側に調節することで、植付作業機の圃場面に対する浮きが抑制された押し付けがなされることでシート押えローラによるシートの圃場面への押付力を増加させる作業開始時制御感度鈍化手段と、
前記作業開始時制御感度鈍化手段が前記油圧制御感度を鈍くした後、前記走行機体が所定距離走行したタイミングで前記油圧制御感度を前記設定感度に戻す作業開始後制御感度戻し手段と、を備えることを特徴とするマルチ移植機。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このようなマルチ移植機では、作業始めにシートが圃場面に十分に密着しなかった場合、シートの引き摺りが発生し、シートの繰り出し不良となる虞があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記の如き実情に鑑みこれらの課題を解決することを目的として創作されたものであって、請求項1の発明は、走行機体の後部に昇降自在に連結され、前記走行機体の走行に応じて、圃場面をシートで覆いつつ、シートの上から圃場に苗を植え付ける植付作業機を備えるマルチ移植機であって、前記植付作業機は、シートを繰り出し可能に保持するシート保持部と、
該シート保持部から繰り出されたシートを圃場面に押し付けるシート押えローラと、圃場に苗を植え付ける植付機構と、圃場面に対する前記植付作業機の高さを感知する感知フロートと、を備え、前記走行機体は、前記植付作業機を昇降させる油圧昇降機構と、前記感知フロートによる高さ感知に応じた前記油圧昇降機構の動作制御に基づいて、圃場面に対する前記植付作業機の高さを自動的に制御する油圧昇降制御手段と、前記感知フロートによる高さ感知に対する前記油圧昇降制御手段の油圧制御感度を
、鋭い側に調節したときには植付作業機の圃場面に対する沈み込みを抑制し、鈍い側に調節したときには植付作業機の圃場面に対する浮きを抑制すべく調節する油圧制御感度調節手段と、前記植付作業機の圃場面への下降又は接地に際し、前記油圧制御感度調節手段による油圧制御感度を設定感度よりも鈍く
なる側に調節することで、植付作業機の圃場面に対する浮きが抑制された押し付けがなされることでシート押えローラによるシートの圃場面への押付力を増加させる作業開始時制御感度鈍化手段と、前記作業開始時制御感度鈍化手段が前記油圧制御感度を鈍くした後、前記走行機体が所定距離走行したタイミングで前記油圧制御感度を前記設定感度に戻す作業開始後制御感度戻し手段と、を備えることを特徴とするマルチ移植機である。
請求項2の発明は、植付作業行程の終端で操作され、圃場に繰り出されるシートの終端を切断するシート切断手段と、前記シート切断手段の操作に際し、前記油圧制御感度を前記設定感度よりも鈍くすることで、前記植付作業機を圃場面に押し付けるシート切断時制御感度鈍化手段と、前記シート切断時制御感度鈍化手段が前記油圧制御感度を鈍くした後、前記植付作業機が上昇したタイミングで前記油圧制御感度を前記設定感度に戻すシート切断後制御感度戻し手段と、を備えることを特徴とする請求項1に記載のマルチ移植機である。
【発明の効果】
【0006】
請求項1の発明によれば、植付作業機の圃場面への下降又は接地に際し、油圧制御感度を設定感度よりも鈍くすることで、植付作業機を圃場面に押し付ける作業開始時制御感度鈍化手段を備えるので、作業始めにシートを圃場面に確実に密着させ、シートの引き摺りを防止できる。また、作業開始時制御感度鈍化手段が油圧制御感度を鈍くした後、走行機体が所定距離走行したタイミングで油圧制御感度を設定感度に戻す作業開始後制御感度戻し手段を備えるので、油圧制御感度が鈍いままの状態で作業が行われることを抑制できる。また、油圧制御感度調節手段を利用して植付作業機を圃場面に押し付けるので、制御上の簡単な変更で実現できるだけでなく、押付力を油圧制御感度調節範囲内に制限し、過剰な押し付けによる植付作業機の破損も防止できる。
また、請求項2の発明によれば、シート切断手段の操作に際し、油圧制御感度を設定感度よりも鈍くすることで、植付作業機を圃場面に押し付けるシート切断時制御感度鈍化手段を備えるので、シート切断時にシートを圃場面に確実に密着させ、シートの弛みや浮き上がりに起因する切断不良を防止できる。また、シート切断時制御感度鈍化手段が油圧制御感度を鈍くした後、植付作業機が上昇したタイミングで油圧制御感度を設定感度に戻すシート切断後制御感度戻し手段を備えるので、油圧制御感度が鈍いままとなることを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の第1実施形態に係るマルチ移植機の全体左側面図である。
【
図2】本発明の第1実施形態に係るマルチ移植機の全体斜視図である。
【
図3】本発明の第1実施形態に係るマルチ移植機のシート保持部及びローラフロートを示す要部側面図である。
【
図4】本発明の第1実施形態に係るマルチ移植機のシート切断機構を示す要部側面図である。
【
図5】本発明の第1実施形態に係るマルチ移植機の植付クラッチを示す要部断面図である。
【
図6】本発明の第1実施形態に係るマルチ移植機の作業機操作カムを示す要部側面図である。
【
図7】本発明の第1実施形態に係るマルチ移植機のローラフロートと油圧制御バルブとの連結構造を示す要部側面図である。
【
図8】本発明の第1実施形態に係るマルチ移植機の操作パネルを示す正面図である。
【
図9】本発明の第1実施形態に係るマルチ移植機の制御構成を示すブロック図である。
【
図10】本発明の第1実施形態に係るマルチ移植機のマルチ引き摺り防止制御の作用説明図である。
【
図11】本発明の第1実施形態に係るマルチ移植機の制御部が実行する作業機操作制御のフローチャートである。
【
図12】本発明の第1実施形態に係るマルチ移植機の制御部が実行するマルチ引き摺り防止制御のフローチャートである。
【
図13】本発明の第1実施形態に係るマルチ移植機の制御部が実行するマルチ切断時制御のフローチャートである。
【
図14】本発明の第2実施形態に係るマルチ移植機の要部側面図である。
【
図15】本発明の第2実施形態に係るマルチ移植機の要部背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の第1実施形態について、図面に基づいて説明する。
図1及び
図2において、1はマルチ移植機の走行機体であって、該走行機体1の後部には、油圧昇降機構2を介して植付作業機3が連結されている。油圧昇降機構2は、走行機体1の後部に植付作業機3を昇降自在に連結する昇降リンク機構4と、該昇降リンク機構4と走行機体1との間に介設されるリフトシリンダ5とを備え、該リフトシリンダ5の油圧伸縮動作に応じて植付作業機3が昇降される。
【0009】
植付作業機3は、シートSで圃場面を覆いつつ、シートSの上から圃場面に苗を植え付けるマルチ仕様であり、マット苗が載置される苗載台6と、苗載台6から苗を掻取って圃場に植付ける植付機構7と、圃場面に対する植付作業機3の高さ(以下、適宜対地高さという。)を感知するローラフロート8(感知フロート)と、シートSを繰り出し可能に保持するシート保持部9と、植付作業機3が上昇した際のシートSの垂れ下がりを規制するシートホルダ10と、圃場面に敷設したシートSを圃場面に押し付けるシート押えローラ11と、圃場面に敷設したシートSを植付行程の終端で切断するシート切断機構12(シート切断手段)と、繰り出すシートSが無くなるシート切れ状態を検出するシート切れ検出機構13と、を備えて構成され、走行機体1から伝動される植付動力で植付作業を行う。
【0010】
シート保持部9は、ロール状に巻かれたシートS(以下、シートロールRという。)を回転可能に収容するシートロールケース9aと、シートロールケース9aの左右側部を開閉可能に覆うカバー9bと、を備えており、
図3に示すように、シートロールケース9aに収容されたシートロールRからシートSが繰り出される。シート保持部9は、シートSを強制的に繰り出す機構は持たず、シートSと圃場面との密着力を利用し、機体走行に伴ってシートSを繰り出す。
【0011】
カバー9bは、残ったロール芯の取出しや、予備シートロールRの挿入に際してシートロールケース9aの左右側部を開閉させる。
図1及び
図2に示すように、本実施形態のマルチ移植機は、走行機体1の左右側部に予備シートロールRを支持するとともに、後端部の支軸14aを支点として後方外方に回動可能な予備シートロール支持装置14を備えており、植付作業機3を上昇させた状態で、予備シートロール支持装置14を後方外方に回動させると、予備シートロールRがシートロールケース9aの側方に移動するので、予備シートロールRをシートロールケース9aに容易に挿入できる。
【0012】
図1に示すように、シートホルダ10は、側面視においてシート保持部9の下部から植付作業機3の下方に沿って後方に延出されており、植付作業機3が上昇した際にシートSの垂れ下がりを規制する。本実施形態のシートホルダ10は、前端側を支点として上下回動可能に設けられており、前端側に連結されるホルダ操作レバー10aの操作に応じて、植付作業機3の下方に沿う作業位置と、植付作業機3の下方から離間する非作業位置(作業始めなどにシートSを手動で繰り出すための位置)とに回動変姿可能となっている。
【0013】
図1に示すように、シート押えローラ11は、側面視においてローラフロート8の後方に配置され、圃場面に敷設したシートSを圃場面に押し付ける。このようなシート押えローラ11が条間に位置するように複数配置されることで、敷設されたシートSの浮き上がりや捲れが防止される。
【0014】
図1及び
図4に示すように、シート切断機構12は、圃場面に敷設したシートSを植付行程の終端で切断するためのものであり、植付作業機3に前端側を支点として上下回動可能に設けられる切断アーム12aと、切断アーム12aの後端部に設けられる切断刃12bと、走行機体1の後部に前後操作可能に設けられる切断操作レバー12cと、切断操作レバー12cの操作に応じて、切断アーム12aを上下回動させる連結ワイヤ12dと、切断操作レバー12cの操作を検出する切断操作検出スイッチ12eと、を備えて構成されている。
【0015】
図2に示すように、シート切れ検出機構13は、シートロールRから繰り出されるシートSに接触する前後回動可能なシート切れ検出レバー13aと、シート切れ検出レバー13aをシートSと接触する方向(前方)に付勢するバネ13bと、シート切れ検出レバー13aの回動変位を検出するシート切れ検出スイッチ13cと、を備える。
図2に仮想線で示すように、繰り出されるシートSがあるときは、シート切れ検出レバー13aがシートSの張力を受けて後方に回動しているため、シート切れ検出スイッチ13cはOFF状態であるが、繰り出されるシートSがなくなると、シート切れ検出レバー13aが前方に回動するため、シート切れ検出スイッチ13cがON状態となってシート切れ状態が検出される。
【0016】
走行機体1には、エンジン(図示せず)やトランスミッションTが搭載されている。エンジンが出力する動力は、トランスミッションTで変速され、植付作業機3、前輪15及び後輪16に伝動される。トランスミッションTには、
図5に示す植付クラッチCが内装されており、該植付クラッチCの入り(接続)/切り(切断)に基づいて植付作業機3に対する植付動力の伝動が入り/切りされる。
【0017】
図6に示すように、走行機体1には、植付クラッチCやリフトシリンダ5の油圧制御バルブ5aに連繋される作業機操作カム17が設けられている。作業機操作カム17は、作業機操作カムモータ18の駆動にもとづいて「上昇」、「固定」、「自動(下降)」、「植付」の各ポジションに操作される。そして、「上昇」ポジションでは、植付作業機3を上昇させ(植付クラッチCは切り)、「固定」ポジションでは、植付作業機3を任意の高さで固定し(植付クラッチCは切り)、「自動(下降)」ポジションでは、植付作業機3を下降させ(植付クラッチCは切り)、「植付」ポジションでは、植付クラッチCを入りにさせる。また、「自動(下降)」及び「植付」ポジションでは、ローラフロート8の対地高さ検出に基づいて植付作業機3を自動的に昇降制御する機械的な油圧昇降制御が有効になる。
【0018】
図7に示すように、上記の機械的な油圧昇降制御は、ローラフロート8と、油圧制御バルブ5aのバルブアーム5bとを連結するリンク機構からなる油圧昇降制御機構19(油圧昇降制御手段)によって実行される。本実施形態のローラフロート8は、前後一対のローラ8aと、前後一対のローラ8aを連結する連結部材8bと、を備え、連結部材8bの中間部が油圧昇降制御機構19に連結されることで、ローラフロート8の上下動が油圧制御バルブ5aのバルブアーム5bに伝達される。
【0019】
また、油圧昇降制御機構19には、ローラフロート8による高さ感知に対する油圧昇降制御機構19の油圧制御感度を調節する油圧制御感度調節機構20(油圧制御感度調節手段)が設けられている。本実施形態の油圧制御感度調節機構20は、油圧制御感度調節モータ20aと、該油圧制御感度調節モータ20aの駆動に応じてローラフロート8の姿勢を変更する連結ワイヤ20bと、を備える。例えば、油圧制御感度を鋭い側に調節(柔らかい圃場用の感度調節)する場合は、ローラフロート8の姿勢を前下がり傾斜姿勢とし、油圧制御感度を鈍い側に調節(硬い圃場用の感度調節)する場合は、ローラフロート8の姿勢を後下がり傾斜姿勢とする。そして、油圧制御感度を鋭い側に調節すると、植付作業機3の圃場面に対する沈み込みを抑制すべく植付作業機3が上げ気味に昇降制御され、油圧制御感度を鈍い側に調節すると、植付作業機3の圃場面に対する浮きを抑制すべく植付作業機3が下げ気味に昇降制御される。
【0020】
図1、
図2及び
図8に示すように、走行機体1の上部には、オペレータが乗車する運転部21が構成されており、該運転部21には、オペレータが座る運転席22の他、各種の操作具やモニタパネル23を備える操作パネル24が設けられている。操作パネル24には、前輪15を操舵するステアリングハンドル25、植付作業機3の昇降操作や植付クラッチの入り/切り操作を行なう作業機操作レバー26、走行速度を変速する主変速レバー27、植付作業時にON操作される作業準備スイッチ28などの操作具が設けられている。
【0021】
図9に示すように、走行機体1には、植付作業機3の昇降制御や植付クラッチCの入り/切り制御(断接制御)を行う制御部29が設けられている。制御部29の入力側には、前述した切断操作検出スイッチ12e、シート切れ検出スイッチ13c及び作業準備スイッチ28に加え、作業機操作レバー26の上側操作を検出する作業機操作スイッチ(上側)30、作業機操作レバー26の下側操作を検出する作業機操作スイッチ(下側)31、作業機操作カム17のポジションを検出する作業機操作カムポテンショ32、植付作業機3の昇降高さを検出するリフト角ポテンショ33、後輪動力伝動経路の回転(走行距離)を検出する走行距離センサ34などが接続される一方、制御部29の出力側には、前述した作業機操作カムモータ18、油圧制御感度調節モータ20aなどが接続されている。
【0022】
制御部29は、ハードウェア及びソフトウェアの協働により実現される機能構成として、作業開始時制御感度鈍化手段(後述するマルチ引き摺り防止制御)と、作業開始後制御感度戻し手段(後述するマルチ引き摺り防止制御)と、シート切断時制御感度鈍化手段(後述するマルチ切断時制御)と、シート切断後制御感度戻し手段(後述するマルチ切断時制御)と、を備える。
【0023】
作業開始時制御感度鈍化手段は、植付作業機3の圃場面への下降又は接地、即ち植付作業の開始に際し、油圧制御感度調節機構20を利用して油圧制御感度を設定感度よりも鈍くする。油圧制御感度を設定感度よりも鈍くすると、植付作業機3が圃場面に押し付けられるので、シート押えローラ11によるシートSの押付力が増加し、シートSを圃場面に確実に密着させることができ、その結果、作業始めにおけるシートSの引き摺りを防止することが可能になる。また、油圧制御感度調節機構20を利用して植付作業機3を圃場面に押し付けるので、制御上の簡単な変更で実現できるだけでなく、押付力を油圧制御感度調節範囲内に制限し、過剰な押し付けによる植付作業機3の破損も防止することが可能になる。
【0024】
作業開始後制御感度戻し手段は、作業開始時制御感度鈍化手段が油圧制御感度を鈍くした後、走行機体1が所定距離L1(
図10参照)だけ走行したタイミングで油圧制御感度を設定感度に戻す。このような作業開始後制御感度戻し手段によれば、植付開始後の適度なタイミングで油圧制御感度が設定感度に戻るので、油圧制御感度が鈍いままの状態で作業が行われることを抑制できる。
【0025】
シート切断時制御感度鈍化手段は、シート切断機構12の操作に際し、油圧制御感度を設定感度よりも鈍くすることで、植付作業機3を圃場面に押し付ける。このようなシート切断時制御感度鈍化手段によれば、シート切断時にシートSを圃場面に確実に密着させ、シートSの弛みや浮き上がりに起因する切断不良を防止することが可能になる。
【0026】
シート切断後制御感度戻し手段は、シート切断時制御感度鈍化手段が油圧制御感度を鈍くした後、植付作業機3が上昇したタイミングで油圧制御感度を設定感度に戻す。このようなシート切断後制御感度戻し手段によれば、油圧制御感度が鈍いままとなることを防止できる。
【0027】
つぎに、上記のような機能構成を実現する制御部29の制御手順について、
図11〜
図13を参照して説明する。
【0028】
図11に示すように、作業機操作制御では、まず、作業機操作レバー26の下側操作及び上側操作を判断する(S101、S102)。ここで、作業機操作レバー26の下側操作があったと判断した場合は、続いて作業準備スイッチ28のON/OFFを判断する(S103)。この判断結果がONの場合は、植付作業機3の状態を判断し(S104〜S106)、ここで植付作業機3の状態が「上昇」の場合は、作業機操作カム17を「固定」ポジションに切換え(S107)、植付作業機3の上昇動作を停止させる。また、植付作業機3の状態が「自動(下降)」の場合は、植付クラッチ規制フラグがOFFであるか否かを判断し(S108)、この判断結果がNOの場合は、そのまま上位ルーチンに復帰する一方、判断結果がYESの場合は、下降動作停止状態(接地状態)であるか否かを判断する(S109)。そして、この判断結果がNOの場合は、植付クラッチ入り待ち状態とする一方(S119)、判断結果がYESの場合は、作業機操作カム17を「植付」ポジションに切換えて植付クラッチCを入りにする(S111)。また、植付作業機3の状態が「固定」の場合は、作業機操作カム17を「自動(下降)」ポジションに切換え(S112)、植付作業機3の状態が「植付」の場合は、そのまま上位ルーチンに復帰する。
【0029】
また、ステップS103の判断結果がOFFの場合も、植付作業機3の状態を判断し(S113、S114)、ここで植付作業機3の状態が「上昇」の場合は、作業機操作カム17を「固定」ポジションに切換え(S107)、植付作業機3の上昇動作を停止させる。また、植付作業機3の状態が「固定」の場合は、作業機操作カム17を「自動(下降)」ポジションに切換え(S115)、また、植付作業機3の状態が「上昇」以外で、かつ「固定」以外の場合は、そのまま上位ルーチンに復帰する。
【0030】
一方、ステップS102において、作業機操作レバー26の上側操作があったと判断した場合は、植付作業機3の状態を判断し(S115〜S117)、ここで植付作業機3の状態が「固定」の場合は、作業機操作カム17を「上昇」ポジションに切換え(S119)、植付作業機3を上昇させる。また、植付作業機3の状態が「植付」の場合は、作業機操作カム17を「自動(下降)」ポジションに切換えて植付クラッチCを切りにする(S120)。また、植付作業機3の状態が「自動(下降)」の場合は、植付作業機3が下降動作停止状態であるか否かを判断し(S121)、該判断結果がYESの場合は、作業機操作カム17を「上昇」ポジションに切換え(S119)、植付作業機3を上昇させる一方、判断結果がNOの場合は、作業機操作カム17を「固定」ポジションに切換え(S122)、植付作業機3の昇降動作を停止させる。
【0031】
また、作業機操作レバー26の上側操作及び下側操作がない状態では、植付クラッチ規制フラグがOFFであるか否かを判断し(S123)、この判断結果がYESの場合は、植付クラッチ入り待ち状態であるか否かを判断するとともに(S124)、植付作業機3が下降動作停止状態であるか否かを判断する(S125)。そして、両判断結果がYESの場合は、作業機操作カム17を「植付」ポジションに切換えて植付クラッチCを入りにさせ(S126)、それ以外の場合は、そのまま上位ルーチンに復帰する。
【0032】
また、植付クラッチ規制フラグがOFFであるか否かの判断結果がNOである場合も、植付作業機3の状態を判断し(S127)、ここで植付作業機3の状態が「植付」の場合は、作業機操作カム17を「自動(下降)」ポジションに切換えて植付クラッチCを切りにする一方(S128)、植付作業機3の状態が「植付」以外の場合は、そのまま上位ルーチンに復帰する。
【0033】
図12に示すように、マルチ引き摺り防止制御では、まず、作業準備スイッチ28及びシート切れ検出スイッチ13cのON/OFF状態に基づいてマルチ植付作業状態であるか否かを判断する(S201、S202)。つまり、作業準備スイッチ28がONで且つ繰り出すシートSがある場合は、マルチ植付作業状態であると判断してつぎのステップS203に進むが、作業準備スイッチ28がOFFであったり、繰り出すシートSがない場合は、フラグやカウント値をすべてリセットした後(S204)、上位ルーチンに復帰する。
【0034】
ステップS203では、作業機操作カム17のポジションが「固定」から「自動(下降)」に変化したか否かを判断する。この判断結果がYESの場合は、植付作業の開始時であると判断し、油圧制御感度を最も鈍い最鈍感値に調節するとともに、カウントフラグをONにする(S205)。これにより、植付作業機3を圃場面に押し付け、シートSを圃場面に確実に密着させることができる。
【0035】
ステップS203の判断結果がNOの場合は、機体走行中か否かを判断するとともに(S206)、カウントフラグがONか否かを判断する(S207)。つまり、油圧制御感度を鈍くした後の機体走行状態を判断しており、いずれの判断結果もYESの場合は、検出した走行距離Lを累積するとともに(S208)、走行距離Lを設定距離L1と比較する(S209)。そして、走行距離Lが設定距離L1以上であると判断した場合は、走行距離Lのカウントをクリアするとともに、カウントフラグをOFFにし、油圧制御感度を設定値に戻す(S210)。これにより、油圧制御感度が鈍いままの状態で植付作業が行われることを抑制できる。
【0036】
図13に示すように、マルチ切断時制御では、まず、作業準備スイッチ28及びシート切れ検出スイッチ13cのON/OFF状態に基づいてマルチ植付作業状態であるか否かを判断する(S301、S302)。つまり、作業準備スイッチ28がONで且つ繰り出すシートSがある場合は、マルチ植付作業状態であると判断してつぎのステップS303に進むが、作業準備スイッチ28がOFFであったり、繰り出すシートSがない場合は、上位ルーチンに復帰する。
【0037】
ステップS303では、作業機操作カム17のポジションが「自動(下降)」又は「植付」であるか否かを判断する。この判断結果がYESの場合は、シートSの切断操作を判断し(S304)、この判断結果もYESの場合は、油圧制御感度を最も鈍い最鈍感値に調節する(S305)。これにより、植付作業機3を圃場面に押し付け、シートSを圃場面に確実に密着させることができるので、シートSの弛みや浮き上がりに起因するシートSの切断不良を防止することが可能になる。
【0038】
一方、ステップS303の判断結果がNOの場合は、作業機操作カム17のポジションが「上昇」であるか否かを判断する(S306)。つまり、シートSの切断操作後における植付作業機3の上昇操作を判断しており、この判断結果がYESの場合は、油圧制御感度を設定値に戻す(S307)。これにより、油圧制御感度が鈍いままとなることを防止できる。
【0039】
叙述の如く構成された本実施形態によれば、植付作業機3の圃場面への下降又は接地に際し、油圧制御感度を設定感度よりも鈍くすることで、植付作業機3を圃場面に押し付ける作業開始時制御感度鈍化手段を備えるので、作業始めにシートSを圃場面に確実に密着させ、シートSの引き摺りを防止できる。
【0040】
また、作業開始時制御感度鈍化手段が油圧制御感度を鈍くした後、走行機体1が所定距離L1だけ走行したタイミングで油圧制御感度を設定感度に戻す作業開始後制御感度戻し手段を備えるので、油圧制御感度が鈍いままの状態で作業が行われることを抑制できる。
【0041】
また、油圧制御感度調節機構20を利用して植付作業機3を圃場面に押し付けるので、制御上の簡単な変更で実現できるだけでなく、押付力を油圧制御感度調節範囲内に制限し、過剰な押し付けによる植付作業機3の破損も防止できる。
【0042】
また、シート切断機構12の操作に際し、油圧制御感度を設定感度よりも鈍くすることで、植付作業機3を圃場面に押し付けるシート切断時制御感度鈍化手段を備えるので、シート切断時にシートSを圃場面に確実に密着させ、シートSの弛みや浮き上がりに起因する切断不良を防止できる。
【0043】
また、シート切断時制御感度鈍化手段が油圧制御感度を鈍くした後、植付作業機3が上昇したタイミングで油圧制御感度を設定感度に戻すシート切断後制御感度戻し手段を備えるので、油圧制御感度が鈍いままとなることを防止できる。
【0044】
つぎに、本発明に第2実施形態に係るマルチ移植機について、
図14及び
図15を参照して説明する。ただし、第1実施形態と共通する構成については、第1実施形態と同じ符号を用いることにより、第1実施形態の説明を援用する。
【0045】
図14及び
図15に示すように、第2実施形態のマルチ移植機は、水を貯留する水タンク101と、切断刃12bの基部に沿って配置される水吐出ノズル102と、水タンク101内の水をホース103を介して水吐出ノズル102に送るポンプ104と、を備える点が第1実施形態と相違している。
【0046】
第2実施形態のマルチ移植機では、切断操作レバー12cが操作されたとき、切断操作検出スイッチ12eの検出信号に応じてポンプ104を駆動し、水タンク101内の水がホース103を介して水吐出ノズル102に送られる。水吐出ノズル102は、左右方向に所定の間隔を介して並ぶ複数の水吐出口102aを有し、これらの水吐出口102aから吐出される水が切断刃12bに沿って流れ、シートSの切断位置を濡らす。これにより、シートSが切れやすくなり、シートSの切断不良を防止できる。
【0047】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形、変更が可能である。