(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6952571
(24)【登録日】2021年9月30日
(45)【発行日】2021年10月20日
(54)【発明の名称】椅子の背凭れ取付構造
(51)【国際特許分類】
A47C 7/40 20060101AFI20211011BHJP
【FI】
A47C7/40
【請求項の数】8
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-205072(P2017-205072)
(22)【出願日】2017年10月24日
(65)【公開番号】特開2019-76361(P2019-76361A)
(43)【公開日】2019年5月23日
【審査請求日】2020年7月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000108627
【氏名又は名称】タカノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087468
【弁理士】
【氏名又は名称】村瀬 一美
(72)【発明者】
【氏名】阿部 直登
【審査官】
齊藤 公志郎
(56)【参考文献】
【文献】
特開2013−70849(JP,A)
【文献】
特開2011−101762(JP,A)
【文献】
特開2013−106727(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2004/0140701(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47C 7/00−74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
背凭れ本体と背凭れ本体と比較して剛性を有する背凭れ支持フレームとを相互に連結して背凭れを構成する椅子の背凭れ取付構造において、
前記背凭れ支持フレームと前記背凭れ本体との合わせ面の中央部分をねじ締結とする一方、
左右両端部の合わせ面では前記背凭れ支持フレームの上部と前記背凭れ本体の下部のいずれか一方に設けた係合部と他方に設けた被係合部とで少なくとも前記背凭れ本体が上方向に移動するのに対し前記係合部と前記被係合部とが係合して相互に連結される連結部を構成して非ねじ締結構造とした
ことを特徴とする椅子の背凭れ取付構造。
【請求項2】
前記連結部は前記背凭れ本体あるいは背凭れ支持フレームのいずれか一方に設けられている爪部材と、他方に設けられている前記爪部材が嵌合する孔または凹部とから成る爪嵌合構造であることを特徴とする請求項1記載の椅子の背凭れ取付構造。
【請求項3】
前記爪部材あるいは前記孔または凹部のいずれか一方の弾性変形を利用して上下方向に変位可能としたことを特徴とする請求項2記載の椅子の背凭れ取付構造。
【請求項4】
前記爪部材は前記背凭れ支持フレームあるいは前記背凭れ本体のいずれか一方に一体成形され、前記孔または凹部は前記背凭れ支持フレームあるいは前記背凭れ本体のいずれか他方に一体成形されたものである請求項2または3記載の椅子の背凭れ取付構造。
【請求項5】
前記背凭れ支持フレームは、前記背凭れ本体の左右両端部を支持する左右一対の背支桿部と、左右の前記背支桿部の間に跨がり前記背凭れ本体の底面を受け支える背凭れ本体取付座とを備えるU字形の背凭れ本体支持部を有し、
前記背凭れ本体は、前記背支桿部の頂部の端面と当接する背支桿部受面と、前記背支桿部の内側面と接する側面と、前記背凭れ本体取付座と接する底面とを有し、
前記背凭れ支持フレームと前記背凭れ本体との合わせ目がU字形を成すことを特徴とする請求項1から4のいずれか1つに記載の椅子の背凭れ取付構造。
【請求項6】
前記背凭れ本体の下部両隅部の前殻部の背後には、前記背支桿部の前記背凭れ本体取付座よりも上側の接合領域を受け入れる空所が形成され、この空所に前記背凭れ支持フレームの前記背支桿部の接合領域が収められ、前記背凭れ本体の前記前殻部の背後を前記背支桿部の前記接合領域で受け支えることで後方向への強度が補強されることを特徴とする請求項5記載の椅子の背凭れ取付構造。
【請求項7】
前記背凭れ本体及び前記背凭れ支持フレームの双方が合成樹脂製であることを特徴とする請求項1から6のいずれか1つに記載の椅子の背凭れ取付構造。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1つに記載の椅子の背凭れ取付構造によって背凭れ本体と背凭れ支持フレームとが連結されて成る背凭れが、回転脚のガススプリングに支持されたメインフレームに揺動可能に支持されているシンクロフレームに固定され、ロッキング可能とされた椅子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、椅子の背凭れ取付構造に関する。さらに詳述すると、本発明は、柔軟性のある背凭れ本体と剛性を有する背凭れ支持フレームとを相互に連結して背凭れを構成する椅子の背凭れ取付構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、合成樹脂製シェルから成る椅子の背凭れにおいて、合成樹脂製シェルの撓みを利用して、着座者の身体にフィットさせたり、クッション性を高めることにより、凭れ心地を良くすることが行われている。この背凭れは、合成樹脂材料により一体成形されて、可撓性を有する低剛性の背凭れ本体を高剛性の背凭れ支持フレームで支えるようにしている。そして、高剛性の背凭れ支持フレームが脚のガスシリンダに支えられるメインフレームに連結されることで、背凭れ本体がメインフレームに支持されている。そして、低剛性の背凭れ本体が、着座者の凭れに応じて前後方向並びに左右方向に撓むように設けられている。他方、背凭れ支持フレームは剛性のある素材で形成され、背凭れの支持強度を確保するように考慮されている。したがって、柔軟性を有する背凭れ本体と剛体から成る背支持フレームとは、一般にボルトで強固に締結されて1つの背凭れを構成するように設けられている(特許文献1)。このとき、ボルトによる連結は、例えば、背凭れの中央部分を2本のボルトで連結すると共に、背凭れの幅方向の左右両端部分においてもボルトでそれぞれ連結されている。これによって、中央の2箇所のボルトで主に前後方向の荷重を支え、左右の端部のボルト締結で背凭れの捻れなどで起こる変形を阻止するように設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−112396号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、背凭れの左右両端部までもボルトで連結した場合、背凭れの左右方向に偏った力が加わった場合、中央締結部を中心にしてねじれ方向に力がかかることから、左右両端部にて連結しているねじ部分に応力が集中してしまう。結果として、ねじ連結部分、特に背凭れの左右両端部附近のボルトを中心にして、破損の可能性やねじ外れの問題が生じる恐れがある。具体的には、背凭れ本体と背支持フレームとの左右両端部を締結するボルトが折れたり、またボルトが折れずとも可撓性のある比較的に柔らかい樹脂で構成されている背凭れ本体側のねじ山が崩れてねじが効かなくなることがある。このため、可撓性のある背凭れ本体の幅方向端部において上方向にずり上がるように変形して剛性のある支持フレームとの間に隙間が発生することが懸念される。この隙間の発生は指挟みなどの事故の原因ともなり得るので、応力分散できる連結構造が望まれている。
【0005】
また、ボルトの折れを防ぐためには、ボルト本数を増やし尚且つボルト周囲の構造物強度即ち被締結物の構造強度の強化なども必要となることから、コスト高を招く問題がある。しかも、被締結物の構造強度の強化、即ち背凭れ本体自体に剛性を持たせたのでは樹脂の撓み量が少なくなり、背もたれの変形が不十分なものとなり、着座者の身体にフィットさせるという要望を満足させられないという問題を有している。
【0006】
本発明は、背凭れ本体と背凭れ支持フレームとの間の連結構造を安定的で且つ応力集中の起き難い椅子の背凭れ取付構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる目的を達成するために請求項1記載の椅子の背凭れ取付構造は、背凭れ本体と背凭れ本体と比較して剛性を有する背凭れ支持フレームとを相互に連結して背凭れを構成する椅子の背凭れ取付構造において、背凭れ支持フレームと背凭れ本体との合わせ面の中央部分をねじ締結とする一方、左右両端部の合わせ面では背凭れ支持フレームの上部と背凭れ本体の下部のいずれか一方に設けた係合部と他方に設けた被係合部とで少なくとも背凭れ本体が上方向に移動するのに対し係合部と被係合部とが係合して相互に連結される連結部を構成して非ねじ締結構造とするようにしている。
【0008】
ここで、連結部は背凭れ本体あるいは背凭れ支持フレームのいずれか一方に設けられている爪部材と、他方に設けられている爪部材が嵌合する孔または凹部とから成る爪嵌合構造であることが好ましい。
【0009】
さらには、連結部は爪部材あるいは孔または凹部のいずれか一方の弾性変形を利用して上下方向に変位可能とすることが好ましい。
【0010】
また、連結部材の爪部材は背凭れ支持フレームあるいは背凭れ本体のいずれか一方に一体成形され、孔または凹部は背凭れ支持フレームあるいは背凭れ本体のいずれか他方に一体成形されることが好ましい。
【0011】
また、請求項5記載の椅子の背凭れ取付構造は、背凭れ支持フレームが、背凭れ本体の左右両端部を支持する左右一対の背支桿部と、左右の背支桿部の間に跨がり背凭れ本体の底面を受け支える背凭れ本体取付座とを備えるU字形の背凭れ本体支持部を有し、背凭れ本体が、背支桿部の頂部の端面と当接する背支桿部受面と、背支桿部の内側面と接する側面と、背凭れ本体取付座と接する底面とを有し、背凭れ支持フレームと背凭れ本体との合わせ目がU字形を成すことを特徴としている。
【0012】
また、請求項6記載の椅子の背凭れ取付構造は、背凭れ本体の下部両隅部の前殻部の背後には、背支桿部の背凭れ本体取付座よりも上側の接合領域を受け入れる空所が形成され、この空所に背凭れ支持フレームの背支桿部の接合領域が収められ、背凭れ本体の前殻部の背後を背支桿部の接合領域で受け支えることで後方向への強度が補強されることを特徴としている。
【0013】
また、請求項7記載の椅子の背凭れ取付構造は、背凭れ本体及び前記背凭れ支持フレームの双方が合成樹脂製であることを特徴とする請求項1から6のいずれか1つに記載の椅子の背凭れ取付構造。
【0014】
さらに、請求項8記載の椅子は、請求項1から7のいずれか1つに記載の椅子の背凭れ取付構造によって背凭れ本体と背凭れ支持フレームとが連結されて成る背凭れが、回転脚のガススプリングに支持されたメインフレームに揺動可能に支持されているシンクロフレームに固定され、ロッキング可能とされているものである。
【発明の効果】
【0015】
請求項1記載の椅子の背凭れ取付構造によれば、背凭れ支持フレームと背凭れ本体との合わせ面の幅方向中央をボルトで締結する一方、幅方向両端を非ねじ締結の連結部で上下方向に係合しているので、背凭れ本体と背凭れ支持フレームとの間の連結構造を安定的で尚且つ応力集中の起き難い構造とすることができる。即ち、背凭れの左右方向に偏った力が加わって背凭れがねじれる力がかかった場合にも、背凭れ支持フレームと背凭れ本体との合わせ面の幅方向両端を非ねじ締結構造の連結部で上下方向に係合させているだけなので、係合関係にずれが生ずることで応力が分散され、連結部の破損や外れの問題が生じる恐れがない。しかも、可撓性のある背凭れ本体に上方向にずり上がるような変形が生じたとしても、非ねじ締結構造の連結部で背凭れ本体のずり上がりを阻止するので、剛性のある支持フレームとの間に隙間が発生する懸念はなくなる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明にかかる椅子の背凭れ取付構造の一実施形態を示す斜視図である。
【
図2】同背凭れ取付構造の連結部を正面側から拡大して示す斜視図である。
【
図3】同背凭れ取付構造の連結部を拡大して示す背面図であり、背凭れ本体側を半透明化して図示している。
【
図4】同背凭れ取付構造を分解して示す斜視図である。
【
図5】同背凭れ取付構造の背凭れ本体を示す背面図である。
【
図6】同背凭れ取付構造の背凭れ本体の下部を下から見て示す斜視図である。
【
図7】同背凭れ取付構造の背凭れ支持フレームを下から見て示す斜視図である。
【
図8】本発明にかかる椅子の背凭れ取付構造の他の実施形態を示す斜視図である。
【
図9】同背凭れ取付構造の連結部を拡大して示す正面から見て示す斜視図であり、背凭れ本体側を半透明化して図示している。
【
図10】同背凭れ取付構造を分解して示す斜視図である。
【
図11】同背凭れ取付構造の背凭れ支持フレームの背支桿部の拡大斜視図である。
【
図12】同背凭れ取付構造の背凭れ支持フレームの背支桿部の平面図である。
【
図13】同背凭れ取付構造の背凭れ本体の連結部を構成する一方の要素である筒部を下から見て示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の構成を図面に示す実施形態に基づいて詳細に説明する。尚、本明細書において、上下(高さ)、前後(奥行き)、左右(幅)の各方向は特に断りがない限り、椅子に着座した着座者を基準に定め、互いに直交する奥行き方向(Y軸)、幅方向(X軸)並びに高さ方向(Z軸)の3軸方向は座面をXY平面とすることを基準に定め、奥行き方向は椅子の前後方向と一致するものとして定義されている(
図1参照)。また、本明細書においては、背凭れ取付構造について主に説明をし、その他の椅子の構成については説明を省略する。
【0018】
図1〜
図7に、本発明の椅子の背凭れ取付構造の実施形態の一例を示す。この実施形態にかかる椅子の背凭れ取付構造は、例えば図示していない回転脚椅子のガススプリングに支持されたメインフレームに揺動可能に支持されているシンクロフレームに固定される背凭れ支持フレーム2と背凭れ本体3との間の締結構造であり、幅方向中央をボルト25で締結する一方、幅方向両端を非ねじ締結の連結部20で上下方向に係合させるようにしたものである。
【0019】
背凭れ1は、本実施形態の場合、例えば
図1及び
図4に示すように、背凭れ本体3と比較して剛体の背凭れ支持フレーム2と背凭れ本体3とで骨格が構成され、図示していないウレタンマットを前面側に宛がって図示していない上張地でくるむことで構成される。尚、背凭れ支持フレーム2と背凭れ本体3とはほぼ上下方向に突き合わされる、ほぼ水平面の合わせ面が設定されている。
【0020】
背凭れ支持フレーム2は、例えば、
図4及び
図7に示すように、背凭れ本体3の左右両端部を支持する左右一対の背支桿部4と、背支桿部4の下端において左右の背支桿部4を互いに連結してそれらの間に跨がるシンクロフレーム取付座(以下、フレーム取付座5と呼ぶ)と、背支桿部4の中程において左右の背支桿部4を互いに連結してそれらの間に跨がる背凭れ本体取付座(以下、背本体取付座6と呼ぶ)とを備え、背本体取付座6と背支桿部4の先端側例えば背本体取付座6よりも上側の接合領域16とで背凭れ本体3と連結される一方、フレーム取付座5を図示していないシンクロフレームに取り付けることでメインフレーム側に固定される。即ち、背凭れ支持フレーム2は、左右一対の背支桿部4と背本体取付座6とを備えるU字形の背凭れ本体支持部を構成し、背凭れ本体3は、背支桿部の頂部の端面と当接する背支桿部受面12と、背支桿部4の内側面と接する側面14と、背本体取付座6と接する底面15とでU字形の合わせ面が形成され、背凭れ支持フレーム2と背凭れ本体3との合わせ目がU字形を成すようにして連結・支持されている。
【0021】
他方、背凭れ本体3の下部両隅部の前殻部13の背後には、背支桿部4の接合領域16を受け入れる空所19が形成されている。この空所19は、例えば背凭れ本体3の前殻部13の背後のリブ構造と周壁とを内側にずらすことで形成されている。例えば、背支桿部4の頂面4aと接する背支桿部受面12と、背支桿部4の内側の湾曲面に沿った形状の側面14と、底面15とで背凭れ支持フレーム2に対するU字形の合わせ面が形成されている。そして、側面14並びに背支桿部受面12から前殻部13を側方へはみ出させた構造とすることにより空所19が形成されている。背凭れ本体3は周壁部とリブ構造とによってある程度の剛性が保たれているが、下部両側部の前殻部13の背部の空所19には、周壁部とリブ構造とがないので他の領域よりも剛性が劣り弾力性が増すこととなる。しかしながら、空所19に背凭れ支持フレーム2の背支桿部4の接合領域16が収められ前殻部13の背後を受け支えることで後方向への強度が補強される。即ち、空所19に背凭れ支持フレーム2の背支桿部4の接合領域16が収められ、背凭れ本体3の前殻部13の背後を背支桿部4の接合領域16で受け支えることで後方向への強度が補強されるようにされている。
【0022】
背凭れ支持フレーム2は、支持構造物としての剛性を有するものであり、例えば強度に優れるガラス繊維強化樹脂例えばガラス繊維入りナイロンや、ポリアセタール(POM),ポリプロピレン(PP),ナイロン等のポリアミド系樹脂、あるいは樹脂以外の材料例えば鉄やアルミ合金,ステンレススティール等によって一体成形されている。また、背凭れ本体3は、例えばナイロン樹脂、ポリプロピレン樹脂のような可撓性に富む合成樹脂を素材とした射出成形法によってシェル構造に成形されている。
【0023】
背凭れ本体3と背凭れ支持フレーム2とは、例えばU字形の合わせ面の中央附近即ち背本体取付座6の中央付近では2箇所のボルト25で連結され、合わせ面の両端即ち背凭れ本体3の左右両側部と背凭れ支持フレーム2の背支桿部4の上部とは連結部20によって非ねじ締結で連結されている。そして、背凭れ本体3はU字形の合わせ面全域で背凭れ支持フレーム2に支持されている。つまり、背凭れ本体3と背凭れ支持フレーム2とは、合わせ面の両端においては少なくとも背凭れ本体が上方向にずり上がろうとするのを阻止する連結部20で連結され、応力の分散を図って応力集中するのを回避する連結構造とされている。ここで、連結部20は背凭れ本体3の左右両側部に少なくとも各々一箇所ずつ備えられている。尚、図中の符号24はボルト通し孔である。
【0024】
連結部20は、背凭れ支持フレーム2の上部と背凭れ本体3の下部の左右両端部のいずれか一方に設けた係合部例えば爪部材9と他方に設けた被係合部例えば孔または凹部(以下、総称して孔10と呼ぶ)とで少なくとも背凭れ本体3が上方向に移動するのに対し爪部材9と孔10とが係合して相互に連結される非ねじ締結構造を構成している。
【0025】
本実施形態の場合、爪部材9は背凭れ本体3の連結部20の一方の要素を構成する前殻部13の背後に宛がわれる背支桿部4の接合領域16に形成されている。爪部材9は例えば正面視U字形、側面視三角形を成すものであり、面積の広い底辺部分が返りとなって背凭れ本体3の孔10の縁に当接すると共に、底辺から上端にかけては斜面となって上端附近では前後方向への突出量がほぼ0となる楔状を成している。この爪形状は剛性の高いものとなることから、係合力に優れる。したがって、爪部材9が孔10に嵌まり込むと、その後は引っ掛かって抜け難い構造となる。
【0026】
他方、連結部20の構成要素たる孔10は、背後が空所19となった前殻部13に形成され、背凭れ本体3とは合成樹脂によって一体成形された合成樹脂製シェルとして構成されている。しかも、正面視U字形の爪部材9と矩形状の孔10との嵌合により、位置決めされるとともに左右方向へのずれも少なくなる。
【0027】
ここで、本実施形態の爪部材9は背支桿部4と一体成形された剛性の高い構造を成しているが、背凭れ本体3の側の連結部20を構成する孔10が設けられている前殻部13にはリブ構造や周壁部が設けられていないことで弾力性を発揮する。したがって、背凭れ本体3側の凹部11,17に角部8及び突起7をそれぞれ嵌合させながら爪部材9を前殻部13の孔10に嵌入させる際に、前殻部13が弾性変形することにより嵌め込まれる。また、連結解除する際には、背凭れ本体の下部両側の前殻部13を前方へ引っ張って弾性変形させながら背凭れ本体3を引き上げることによって行われる。依って、背凭れ本体3と背凭れ支持フレーム2との連結・解除作業が極めて容易である。
【0028】
本実施形態の場合、爪部材9は、例えば角部8と空所19に配置される背支桿部4の接合領域16との間に跨がるように形成されている。他方、孔10も、凹部11と空所19とに跨がって形成されている。しかしながら、爪部材9と孔10との位置関係は図示のものに特に限られるものでは無く、可撓性のある背凭れ本体3の幅方向端部において上方向にずり上がるように変形して剛性のある背凭れ支持フレーム2との間に隙間が発生することが懸念される部位に適宜設けるようにしても良い。また、本実施形態では、背凭れ本体3の側に孔10を、背凭れ支持フレーム2の背支桿部4に爪部材9を受けるようにしているが、これに特に限られるものでは無く、背凭れ本体3の側に爪部材9を、背凭れ支持フレーム2の背支桿部4の側に孔10若しくは凹部を受けるようにしても良い。
【0029】
他方、背凭れ本体3と背凭れ支持フレーム2とは、合わせ面に形成された凹凸の嵌合によって前後方向並びに左右方向に位置決めされると共にがたつき無く固定されるように設けられている。例えば、
図3に示すように、背支桿部4の先端の内側面には、背凭れ本体3の合わせ面の凹部11に差し込まれる雄部材である角部8が設けられている。この角部8は、例えば
図7に示すように、内側(背凭れの中心側)に向かって上方向への突出量が大きくなる三角形状を成し、対応する背凭れ本体3の三角形状の凹部11に差し込まれたときに楔効果を発揮して背凭れ本体3と背凭れ支持フレーム2とを密着させるように働く。三角突起から成る角部8が背凭れ本体3側の側面14の凹部11に嵌まり込むことで背凭れ本体3の両側端部における前後方向並びに左右方向への動きが阻止される。
【0030】
また、背凭れ支持フレーム2の背本体取付座6には、背本体取付座6から上方向へ向けて突出する突起片7が形成されている。背凭れ本体3の底面15には上方向へ向けて凹む凹部17が形成されている。この突起7並びに凹部17は、本実施形態の場合には複数例えば3つ横に並べて設けられ、そのうちの両端の突起並びに凹部の外側にはガイド用のテーパ面が形成され、背凭れ本体3の凹部17に突起7を嵌合させるときに背凭れ本体3と背凭れ支持フレーム2との位置合わせを自動的に行えるように構成されている。
【0031】
また、背凭れ本体3の底面15の凹部17の間には、背凭れ本体3と背凭れ支持フレーム2とをねじ締結するためのねじ孔18が設けられ、合わせ面の中央付近で背凭れ本体3と背凭れ支持フレーム2とがねじ締結されるように設けられている。尚、ねじ孔18は、例えば背凭れ本体3を射出成形する際にナットをインサート成形することにより設けても良い。
【0032】
以上のように構成された本実施形態の椅子の背凭れ取付構造によれば、背支桿部4は背凭れ本体3の下部両側の前殻13の背部の空所19に差し込まれ、角部8を背凭れ本体3側の合わせ面・側面14の凹部11に嵌入させると共に背支桿部4の頂面4aを背凭れ本体3の背支桿部受面12に宛がうことにより背凭れ本体3の両側部が下支えられる。また、背凭れ本体3は、その底面15が背凭れ支持フレーム2の背本体取付座6と接すると共に突起7と凹部17との嵌合でも支持される。これにより、背凭れ本体3は背凭れ支持フレーム2に対して前後方向並びに左右方向にがたつかないように固定されて支持される。
【0033】
したがって、着座者が背凭れ本体3に偏って凭れかかることにより、背凭れ本体3が捻れるように後方へ撓む結果、背凭れ本体3の左右方向の端部が上へずり上がるように変形しようとするが、背凭れ支持フレーム2の背支桿部4の前面の爪部材9に背凭れ本体3の孔10の下縁が引っ掛かり背凭れ本体3のずり上がりを防ぐ。これにより、背凭れ支持フレーム2と背凭れ本体3との間の連結部20において上下方向の隙間が発生するのを防いで指挟みなどの問題を未然に防ぐことができる。
【0034】
また、
図8〜
図13に他の実施形態を示す。この実施形態にかかる椅子の背凭れ取付構造は、連結部20を筒部22とこれに嵌合する突起部21とによって構成するものとし、嵌合領域に設けた爪部材9と孔10との係合で突起部21と筒部22とが嵌合した後に抜け外れないように機能する非ねじ締結構造を構成している。
【0035】
本実施形態の場合、例えば
図13に示すように筒部22が背凭れ本体3の左右両側部下端に背凭れ本体3と一体となって形成され、例えば
図11に示すように突起部21が背凭れ支持フレーム2の背支桿部4の先端(上端)に背凭れ支持フレーム2と一体となって形成されている。突起部21の根元の周囲の背支桿部4の端面4aは背凭れ本体3の筒部22の開口部周辺の端面22aと当接することにより、背凭れ本体3を受け支えるように設けられている。また、背支桿部4の背本体取付座6よりも上の湾曲した内側の側面が背凭れ本体3の側面14と、背本体取付座6が背凭れ本体3の底面15とそれぞれ当接し、これらを受け支えるように設けられている。即ち、背本体取付座6と背本体取付座6よりも上側の背支桿部4の内側の側面と背支桿部4の頂面4aとで背凭れ本体3に対するU字形の合わせ目が形成されている。また、背本体取付座6の突起片7と背凭れ本体3の底面15の凹部17とは互いに嵌合されて前後及び左右方向の位置決めと固定が図られると共に、背凭れ本体3と背凭れ支持フレーム2の合わせ面の中央附近がボルト25で締結されている。そして、背凭れ本体3はU字形の合わせ目全域で背凭れ支持フレーム2に支持されている。
【0036】
爪部材9は、本実施形態の場合、背凭れ支持フレーム2の背支桿部4の略長方形の突起部21に、U字形の切欠き26が入れられることで前後方向に弾性変形可能に形成されている。爪部材9は、自由端(下端)の前面側に周囲の突起部21よりも前方に突出した直角三角形状の突起27を有している。これにより、背凭れ本体3の筒部22の孔23に挿入されるときには、突起27の部分が背凭れ本体3の筒部22の内面に当接して切り欠き26内に押し込まれるように弾性変形し、背凭れ本体3の孔10に達したときに弾性力で復元して突起27の部分が孔10に嵌入されることによって上下方向に係合するように設けられている。したがって、背凭れ本体3と背凭れ支持フレーム2との左右端部における連結は、突起部21と筒部22とを嵌合させるだけで完了する。その後、フレーム取付座5の中央附近に開けたボルト通し孔24からボルト25を通して背凭れ本体3側の雌ねじ18に螺合させることにより固定することで背凭れ本体3と背凭れ支持フレーム2とを一体化する。また、連結解除は、フレーム取付座5の中央を連結するボルト25を外してから、背凭れ左右端部の連結部20の孔10内に工具を差し込んで突起27を押し込み爪部材9と孔10の縁との間の係合を解除した状態にすれば、背凭れ本体3を引き上げることによって行われる。依って、背凭れ本体3と背凭れ支持フレーム2との連結・解除作業が極めて容易である。
【0037】
突起部21と筒部22の孔23の輪郭形状は、例えば
図9に示すように、互いにがたつき無く収容されるように相似形を成すことが好ましい。本実施形態の場合、突起部21は、
図12に示すように長方形と三角形とを横に並べて連続させたような横断面形状とされている。他方、筒部22の孔23も同様に、孔の奥に向かうに従って長方形と三角形とを横に並べて連続させたような輪郭形状(孔23を区画する内周面形状)を成すように形成されている。三角形状の孔と三角形状の凸部との嵌合により位置決めされるとともに左右方向へのずれも少なくなる。勿論、突起部21の横断面形状と筒部22の孔23の形状とは、
図12に示すように長方形と三角形とを横に並べて連続させたような横断面形状に特に限られるものではなく、互いにフィットするように嵌合可能であって爪部材9と孔10とを形成できる形状であればどのような形状でも実施可能である。
【0038】
また、突起部21は正面視でほぼ長方形を成し、左右方向外側の上端隅部が切り落とされた斜面部を備えることが好ましい。同時に、筒部22の孔23にも、突起部21の斜面部に対応する傾斜した斜面部を孔の奥側に備えることが好ましい。この場合、突起部21並びに孔23の斜面部がガイド用のテーパ面として機能し、筒部22に突起部21を嵌合させるときに背凭れ本体3と背凭れ支持フレーム2との位置合わせを自動的に行える。尚、連結部20は、撓み易く、応力も分散して壊れにくくなる形状であれば良く、必ずしも図示の突起部21と筒部22の形状に限られるものでもない。
【0039】
なお、上述の形態は本発明の好適な形態の一例ではあるがこれに限定されるものではなく本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。例えば、上述の実施形態では、連結部20は、背凭れ支持フレーム2に設けられた爪部材9と背凭れ本体3に空けられた孔10とを前後方向に嵌合させて上下方向に連結する爪嵌合とされていたが、これに特に限られず、撓み易く、応力を1点集中させない構造換言すれば応力を分散させて壊れ難くする連結構造であれば他の連結構造でも良い。
【0040】
また、上述した実施形態では、背凭れ支持フレーム2の背支桿部4と一体成形された爪部材9並びに背凭れ本体3の前殻部13の孔10を連結部20として利用する例を挙げて主に説明したが、これに特に限られるものではない。即ち、背凭れ本体3と背凭れ支持フレーム2とを相互に連結する連結部20は、背凭れ支持フレーム2あるいは背凭れ本体3と一体である、別体であるは問われない。例えば、爪部材9は、必ずしも背凭れ支持フレーム2と一体に成形しなければならない理由はなく、別部品として別体に成形したものを背凭れ支持フレーム2に取り付けるようにしても良い。また、本実施形態においては、連結部20を構成する孔10を区画する前殻部13と背凭れ本体3とは同一材料で一体成形されているが、これに特に限られるものではなく、場合によっては別体で成形された背凭れ本体3と連結部20の一方とを接着剤や高周波溶着などで接合して一体化しても良い。また、連結部20の材質には伸縮性は必要なく撓み性があれば良いことから、本実施形態のようなナイロン樹脂やポリプロピレン樹脂のような可撓性に富む合成樹脂によって構成される場合に限られない。
【0041】
本発明の椅子の背凭れ取付構造は、椅子全般に適用可能であり、特にオフィス等で使用される回転脚椅子への適用、中でもロッキング椅子への適用において好ましいが、固定椅子であると、回転椅子であるとを問わないし、ロッキング椅子にも非ロッキング椅子にも適用することができることは言うまでもない。
【0042】
また、背凭れ本体3の構造は必要に応じて任意に変更できる。例えば、上述の実施形態において、背凭れ本体3は、合成樹脂製シェルのような単一の部材に構成されて軟質発泡ウレタン等の軟質発泡樹脂製の薄いクッション(図示省略)が表面に張られ、さらにクッションの表面を布製の上張地で覆う構造としているが、これに特に限られるものではなく、場合によっては背凭れ本体を枠状に形成してメッシュ張地を張り渡した構造の背凭れ本体あるいは更にその上から上張地を覆った構造としても良い。この場合、環状フレームは背凭れ本体として背凭れ支持フレームに相互に連結されることから、例えば環状フレームの縦辺の下部に背支桿部4の突起部21を嵌合させる筒部22と爪部材9を嵌合させる孔10とが設けられるようにしても良い。
【0043】
さらに、上述の実施形態では、凭れ本体3はU字形の合わせ目全域で背凭れ支持フレーム2に支持されているが、これに特に限られず、U字形の合わせ目の一部分例えば幅方向中央を締結するボルト25と幅方向両端を非ねじ締結する連結部20との3点とその周辺でのみ上下方向への連結ないし係合が成される部分的な支持とすることも可能である。
【符号の説明】
【0044】
2 背凭れ支持フレーム
3 背凭れ本体
4 背支桿部
9 連結部の一方を構成する係合部である爪部材
10 連結部の他方を構成する被係合部である孔
13 孔を区画する前殻部
20 連結部
21 連結部の係合部である爪部材を備える突起部
22 連結部の被係合部である孔を備える筒部