(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の管端保護キャップを実施するための形態を、図面に示す実施例1に基づいて説明する。
【0011】
(実施例1)
まず、実施例1における管端保護キャップの構成を図面に基づいて説明する。
実施例1の管端保護キャップ10は、
図1に示すように、パイプ100の管端部101に装着され、パイプ100の管端部101を傷や変形から保護したり、開放した先端102からのごみ等の異物の侵入を防止したり、管端部101に軍手の繊維くず等が付着することを防止したりする。
【0012】
ここで、パイプ100の管端部101は、先端102から軸方向に所定の距離を隔てた位置に、径方向外側に突出したフランジ103を有しており、いわゆるクイックスプールと呼ばれ、クイックコネクタに嵌合可能になっている。
【0013】
管端保護キャップ10は、キャップ本体11と、抜け止め部12と、位置規制部13と、指掛け部14と、を有しており、低密度ポリエチレンによって一体成型されている。
【0014】
キャップ本体11は、一端に開放した開放端11aを有し、他端に閉鎖した閉鎖端11bを有する中空な円筒状を呈し、軸方向の中間部に縮径部11cが形成されている。
縮径部11cは、開放端11aから閉鎖端11bに向かって、キャップ本体11の内径寸法及び外径寸法を縮小する領域であり、この縮径部11cでは、キャップ本体11の内周面11d及び外周面11eがテーパ状に傾斜している。
【0015】
そして、開放端11aから縮径部11cまでの大径領域15aの内径寸法R1は、パイプ100のフランジ103の外径寸法R2より僅かに大きく設定されている。一方、閉鎖端11bから縮径部11cまでの小径領域15bの内径寸法R3は、パイプ100の先端102からフランジ103までの部分での外径寸法R4より僅かに大きく設定されている。
【0016】
抜け止め部12は、キャップ本体11の内周面11dから径方向内側に向かって突出した複数(実施例1では三個)の抜け止め突起12aによって構成されている。各抜け止め突起12aは、半球形状を呈し、キャップ本体11の周方向に沿って、等間隔(120°ごと)に並んでいる(
図3A参照)。また、この抜け止め部12は、大径領域15aに形成され、ここでは、
図2に示すように、大径領域15aの軸方向の中央位置よりも開放端11aに近い位置に形成されている。
【0017】
そして、各抜け止め突起12aの突出高さは、キャップ本体11にパイプ100を差し込んだときにフランジ103が干渉する高さに設定されている。つまり、各抜け止め突起12aの先端をつなぎ、各抜け止め突起12aの先端に内接する円O1の内径寸法R5(抜け止め部12が形成された位置でのキャップ本体11の内径寸法)は、フランジ103の外径寸法R2よりも小さい。一方、各抜け止め突起12a及びキャップ本体11は、軸方向の力が作用したときに変形が可能な柔軟性を有している。そのため、キャップ本体11とパイプ100との間の軸方向の相対移動に伴って、キャップ本体11に対してパイプ100を差し込んだり引き抜いたりするときには、フランジ103が各抜け止め突起12aを乗り越えることができる。
【0018】
すなわち、キャップ本体11やパイプ100に軸方向の外力が作用していないときには、円O1の内径寸法R5は、フランジ103を挿通させない大きさである。一方、キャップ本体11又はパイプ100に軸方向の外力が作用したときには、キャップ本体11及び抜け止め突起12aが変形し、円O1の径寸法R5が、フランジ103の外径寸法R2よりも大きくなって、フランジ103を挿通可能にする。
【0019】
この結果、抜け止め部12は、パイプ100の差し込み動作及び引き抜き動作によってフランジ103が乗り越え、パイプ100にキャップ本体11を装着した状態でフランジ103に干渉する。
【0020】
位置規制部13は、キャップ本体11の内周面11dから径方向内側に向かって突出した複数(実施例1では三個)の位置規制突起13aによって構成されている。各位置規制突起13aは、半球形状を呈し、キャップ本体11の周方向に沿って、等間隔(120°ごと)に並んでいる(
図3B参照)。また、各位置規制突起13aの位置は、
図3Aに示すように、抜け止め突起12aの位置に対して、キャップ本体11の周方向に沿ってずれている。
【0021】
さらに、この位置規制部13は、大径領域15aに形成され、抜け止め部12よりも閉鎖端11b側に位置している。つまり、位置規制部13は、抜け止め部12と縮径部11cとの間に形成されている。なお、
図2に示すように、抜け止め部12と位置規制部13との間の長さは、少なくともフランジ103の厚み以上に設定されている。
また、閉鎖端11bから位置規制部13までの長さL1は、パイプ100の先端102からフランジ103までの長さL2よりも長く設定されている。
【0022】
そして、各位置規制突起13aの突出高さは、キャップ本体11にパイプ100を差し込んだときにフランジ103が干渉する高さに設定されている。つまり、各位置規制突起13aの先端をつなぎ、各位置規制突起13aの先端に内接する円O2の内径寸法R6(位置規制部13が形成された位置でのキャップ本体11の内径寸法)は、フランジ103の外径寸法R2よりも小さい。なお、この実施例1では、抜け止め突起12aと同じ突出高さに設定されている。
【0023】
指掛け部14は、キャップ本体11の外周面11eから径方向外側に向かって突出した円環状部材であり、開放端11aの方に向いた指掛け段差面14aと、閉鎖端11bの方に向いた指当て段差面14bと、を有している。この指掛け部14は、キャップ本体11の開放端11aから、軸方向に所定の距離を隔てた位置に形成され、ここでは、閉鎖端11bと縮径部11cとの間の小径領域15bに形成されている。
【0024】
なお、この実施例1では、
図2に示すように、指掛け部14が小径領域15bの軸方向の中央位置よりも閉鎖端11bに近い位置に形成されている。そして、作業者の指先が、縮径部11cと指掛け部14の指掛け段差面14aとの間に入り込むことを可能にしている。
【0025】
次に、実施例1の管端保護キャップ10の作用を、「管端部保護作用」、「キャップ取り外し作用」に分け、
図4A〜
図4Eに基づいて説明する。
【0026】
[管端部保護作用]
実施例1の管端保護キャップ10を用いてパイプ100の管端部101をゴミや傷等から保護するには、まず、
図4Aに示すように、パイプ100の先端102にキャップ本体11の開放端11aを対向させる。そして、パイプ100及びキャップ本体11を軸方向に沿って相対的に近づくように移動させ、開放端11aからパイプ100の先端102を差し込む。
【0027】
ここで、キャップ本体11では、開放端11aから縮径部11cまでの大径領域15aの内径寸法R1が、パイプ100のフランジ103の外径寸法R2より僅かに大きく設定されている。つまり、大径領域15aの内径寸法R1は、パイプ100の先端102からフランジ103までの部分での外径寸法R4よりも十分に大きくなっている。これにより、開放端11aからパイプ100の先端102を容易に差し込むことができる。
【0028】
そして、パイプ100を差し込んでいくと、
図4Bに示すように、キャップ本体11の内周面11dから突出した抜け止め突起12aに、フランジ103の周縁部が対向する。ここで、抜け止め突起12aは、キャップ本体11の内径寸法R5をフランジ103の外径寸法R2よりも小さくするので、フランジ103は抜け止め突起12aに干渉する。一方、この抜け止め突起12a及びこの抜け止め突起12aが形成された位置のキャップ本体11は、軸方向の力が作用したときに変形可能である。そのため、フランジ103が抜け止め突起12aに干渉した状態でパイプ100をキャップ本体11内に押し込むと、
図4Cに示すように、キャップ本体11及び抜け止め突起12aが変形し、キャップ本体11が一時的に拡径されて、フランジ103が抜け止め突起12aを乗り越える。
【0029】
なお、パイプ100をキャップ本体11内に押し込む際、指掛け部14の指当て段差面14bに指先を押し当てることで、この指先は、キャップ本体11に対して滑りにくくなり、キャップ本体11を容易に装着できる。
【0030】
一方、フランジ103が抜け止め突起12aを乗り越えると、
図4Dに示すように、キャップ本体11及び抜け止め突起12aは変形前の形状に復帰する。これにより、キャップ本体11の内径寸法R5がフランジ103の外径寸法R2よりも小さくなり、パイプ100がキャップ本体11から抜け出る方向に移動すると、抜け止め突起12aがフランジ103に干渉する。そのため、キャップ本体11がパイプ100の管端部101から脱落することを防止できる。この結果、パイプ100の管端部101をキャップ本体11で常時覆うことができ、ゴミの付着や傷つき等から管端部101の保護を図ることができる。
【0031】
なお、この実施例1では、抜け止め部12を、キャップ本体11の周方向に並んだ三個の抜け止め突起12aによって構成している。そのため、抜け止め部を、キャップ本体11の全周にわたって環状に設けた場合と比べて、キャップ本体11を変形しやすくできる。そして、フランジ103が抜け止め部12の乗り越えるときに要する力を小さくして、キャップ本体11の着脱を容易に行うことができる。
【0032】
また、この実施例1では、キャップ本体11の内周面11dから突出してフランジ103に干渉する位置規制部13が、抜け止め部12よりも閉鎖端11bに近い位置に形成されている。すなわち、
図4Eに示すように、フランジ103が抜け止め突起12aを乗り越えた後、さらにパイプ100をキャップ本体11に差し込んでいくと、フランジ103は位置規制部13を構成する位置規制突起13aに干渉する。これにより、パイプ100とキャップ本体11との軸方向の相対的な移動が規制される。
【0033】
しかも、ここでは、閉鎖端11bから位置規制部13までの長さL1が、パイプ100の先端102からフランジ103までの長さL2よりも長く設定されている。そのため、フランジ103が位置規制突起13aに干渉して、パイプ100とキャップ本体11との相対的な軸方向移動が規制されたことで、パイプ100の先端102が閉鎖端11bに接触することが防止される。これにより、パイプ100の先端102に傷がついたり、キャップ本体11の閉鎖端11bが抜けてしまったりすることを防止できる。
【0034】
また、この実施例1では、抜け止め部12を構成する三個の抜け止め突起12aと、位置規制部13を構成する三個の位置規制突起13aとが、キャップ本体11の周方向に沿ってずれて形成されている。これにより、管端保護キャップ10を樹脂(低密度ポリエチレン)によって一体成型する際、金型を外すときにキャップ本体11に無理な負荷が掛からないようにできる。
【0035】
さらに、この実施例1では、キャップ本体11の軸方向の中間部に縮径部11cが形成され、この縮径部11cにより、キャップ本体11の内径寸法が、開放端11aから閉鎖端11bに向かって、フランジ103の外径寸法R2よりも縮小している。
【0036】
そのため、パイプ100のうち、フランジ103よりも先端102側の部分と、キャップ本体11の内周面11dとの隙間を小さくして、フランジ103よりも先端102側の部分にゴミ等が付着することを防止できる。これにより、パイプ100の先端102の保護性能をさらに向上させることができる。
【0037】
[キャップ取り外し作用]
パイプ100の管端部101を図示しないクイックコネクタに嵌合させるときには、実施例1の管端保護キャップ10を取り外す必要がある。ここで、キャップ本体11の外周面11eからは、指掛け部14が径方向外側に向かって突出している。そのため、管端保護キャップ10を取り外す作業者は、この指掛け部14の指掛け段差面14aに指先を掛けることで、キャップ本体11を強く掴むことなく軸方向に引っ張ることができる。これにより、パイプ100からキャップ本体11を容易に取り外すことができる。
【0038】
また、この指掛け部14は、開放端11aから軸方向に所定の距離を隔てた位置に形成されている。そのため、作業者は、指先を指掛け段差面14aに掛けた際、指先がキャップ本体11の外周面11eに対向し、パイプ100に接触することない。これにより、キャップ本体11からパイプ100の管端部101を引き抜いたときにも、作業者の指先が管端部101に接触することがなく、指先に付いている繊維くず(例えば、作業者が装着した軍手の繊維等)や油分等の異物が管端部101に付着することを防止できる。
【0039】
さらに、この実施例1では、キャップ本体11の外周面11eに形成された指掛け部14が、縮径部11cから閉鎖端11bまでの間に形成されている。これに対し、キャップ本体11は、縮径部11cによって外径寸法が縮小している。そのため、作業者が指掛け段差面14aに指先を掛けたとき、指先が縮径部11cと指掛け部14との間に入り込む。これにより、指掛け部14だけでなく、縮径部11cによっても指先の滑りを抑制でき、作業者は安定してキャップ本体11を引っ張ることができる。そのため、キャップ本体11の取り外しをさらに容易に行うことができる。
【0040】
次に、効果を説明する。
実施例1の管端保護キャップ10にあっては、下記に列挙する効果が得られる。
【0041】
(1) 先端102から軸方向に所定の距離を隔てた位置に径方向外側に突出したフランジ103が形成されたパイプ100の管端部101に装着する管端保護キャップ10であって、
開放端11aを一端に有し、閉鎖端11bを他端に有する円筒状のキャップ本体11と、
前記キャップ本体11の内周面11dに形成され、前記キャップ本体11の内径寸法R5を前記フランジ103の外径寸法R2よりも小さくすると共に、前記キャップ本体11と前記パイプ100との間の軸方向の相対移動に伴って前記フランジ103が乗り越え可能な抜け止め部12と、
前記開放端11aから軸方向に所定の距離を隔てた位置に、前記キャップ本体11の外周面11eから径方向外側に向かって突出した指掛け部14と、
を備えた構成とした。
これにより、パイプ100の管端部101に異物を付着させることなく、パイプ100から容易に取り外すことができる。
【0042】
(2) 前記キャップ本体11は、軸方向の中間部に、前記開放端11aから前記閉鎖端11bに向かって外径寸法を縮小させる縮径部11cを有し、
前記指掛け部14は、前記縮径部11cから前記閉鎖端11bまでの間に形成されている構成とした。
これにより、上記(1)の効果に加え、作業者の指先をさらに滑りにくくして、キャップ本体11の取り外しをさらに容易に行うことができる。
【0043】
(3) 前記キャップ本体11の内周面11dから突出して前記キャップ本体11の内径寸法R6を前記フランジ103の外径寸法R2よりも小さくする位置規制部13が、前記抜け止め部12よりも前記閉鎖端11bに近い位置に形成され、
前記閉鎖端11bから前記位置規制部13までの長さL1を、前記パイプ100の先端102から前記フランジ103までの長さL2よりも長く設定した構成とした。
これにより、上記(1)又は(2)の効果に加え、パイプ100の先端102が閉鎖端11bに接触することを規制して、パイプ100の先端102の傷つきや、閉鎖端11bの抜けを防止できる。
【0044】
(4) 前記抜け止め部12は、前記キャップ本体11の周方向に並んだ複数の抜け止め突起12aによって構成されている。
これにより、上記(1)〜(3)のいずれかの効果に加え、フランジ103の抜け止め部12の乗り越えを容易に行うことができる。
【0045】
以上、本発明の管端保護キャップを実施例1に基づき説明してきたが、具体的な構成については、この実施例に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加などは許容される。
【0046】
実施例1では、指掛け部14を小径領域15bの中間部に形成した例を示したが、指掛け部14は、キャップ本体11の開放端11aから軸方向に所定の距離を隔てた位置に形成されればよいので、これに限らない。例えば、大径領域15aに形成されてもよいし、閉鎖端11bの周縁に形成されてもよい。
【0047】
また、例えば、キャップ本体11の中間部から閉鎖端11bまでの外径寸法を拡径し、この外径寸法を拡径することで生じる段差面を指掛け部としてもよい。
【0048】
さらに、指掛け部14は、キャップ本体11の全周を取り囲む指掛け段差面14aや指当て段差面14bを有する例を示したが、指掛け部14は、キャップ本体11の周方向の一部に沿って延伸したものであってもよい。つまり、キャップ本体11の外周面11eから径方向外側に向けて形成され、周方向に並んだ複数の突起部によって指掛け部を構成してもよい。
【0049】
また、実施例1では、抜け止め部12を三個の抜け止め突起12aによって構成し、位置規制部13を三個の位置規制突起13aによって構成した例を示した。しかしながら、これに限らず、例えば抜け止め部12や位置規制部13を、キャップ本体11の周方向の全周に延伸した円環状の突起によって形成してもよい。また、抜け止め突起12aや位置規制突起13aの数は任意に設定できる。
【0050】
また、実施例1では、抜け止め突起12aと位置規制突起13aの突出高さを同じ高さに設定する例を示したが、これに限らない。位置規制突起13aは、フランジ103が乗り越える必要がないため、抜け止め突起12aよりも高くしてもよい。さらに、位置規制部13や縮径部11cについては、形成されていなくてもよい。
【0051】
また、実施例1では、管端保護キャップ10を低密度ポリエチレンによって形成した例を示したが、管端保護キャップ10の材質については、これに限定されない。例えば、熱可塑性エラストマーやポリプロピレン等、パイプ100への着脱時や成型時に必要な柔軟性を有する材質であれば用いることができる。なお、環境負荷の低い材質を用いることが好ましい。