(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1信号の値は、前記パワー半導体素子の状態が前記正常状態又は前記予報状態であるときと、前記パワー半導体素子の状態が前記異常温度状態又は前記異常電流状態であるときとで異なり、
前記第2信号の値は、前記パワー半導体素子の状態が前記正常状態又は前記異常温度状態であるときと、前記パワー半導体素子の状態が前記予報状態又は前記異常電流状態であるときとで異なる
請求項3記載の制御回路。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(第1の実施形態)
以下、第1の実施形態について説明する。
図1は、本実施形態に係るパワーモジュールを示すブロック図である。
図2は、本実施形態におけるパワー半導体素子の状態を示す図である。
【0009】
図1に示すように、本実施形態に係るパワーモジュール1は、外部制御機構としてのマイクロコンピュータ101と、駆動させる負荷としてのモータ102との間に接続されている。例えば、マイクロコンピュータ101、パワーモジュール1及びモータ102は、1つのアクチュエータを構成している。このアクチュエータは、例えば、自動車のワイパーを駆動するアクチュエータである。
【0010】
パワーモジュール1においては、駆動素子部10と制御回路20が設けられている。駆動素子部10及び制御回路20は、例えば1つのパッケージ内に配置されている。なお、駆動素子部10及び制御回路20は、別々のパッケージ内に設けられていてもよい。駆動素子部10は、モータ102に電力を供給するスイッチ手段である。制御回路20は駆動素子部10を制御する回路である。
【0011】
駆動素子部10においては、パワー半導体素子11及びダイオード12が設けられている。ダイオード12はパワー半導体素子11の近傍に配置されており、例えば、同一チップ内に配置されている。
【0012】
パワー半導体素子11は、電源電位と接地電位との間で、モータ102と直列に接続されている。パワー半導体素子11は、例えば、IGBT又はMOSFET等のゲート電位に基づいて流れる電流の大きさが制御される素子である。パワー半導体素子11のゲートには、ゲート線11aが接続されている。パワー半導体素子11の例えばソースからは、電流検出線11bが分岐している。電流検出線11bには、パワー半導体素子11のドレイン電流の一部、例えば、数万分の一程度の電流が流れる。電流検出線11bに流れる電流CSを測定することにより、パワー半導体素子11に流れる電流量を検出することができる。
【0013】
ダイオード12のアノードには、制御回路20から温度検出線12aを介して一定電流が供給される。ダイオード12のカソードは、定電位、例えば接地電位に接続されている。ダイオード12のアノード−カソード間の電圧は温度依存性を持つため、ダイオード12の温度が上昇すると、ダイオード12のアノード−カソード間電圧が低下する。従って、温度検出線12aの電位を測定することにより、パワー半導体素子11の温度TSを検出することができる。
【0014】
制御回路20においては、ゲート駆動回路21、温度検出回路22、電流検出回路23、状態判別回路24、及び、イネーブル制御回路25が設けられている。また、制御回路20には、オープンドレイントランジスタN1及びN2が設けられている。
【0015】
更に、制御回路20には、外部との間で信号を入出力する複数の端子が設けられている。具体的には、ゲート線11aが接続され後述する制御信号VOUTを出力する駆動用出力端子、電流検出線11bが接続され電流CSが入力される電流測定用端子、温度検出線12aが接続され温度TSを示す電位が入力される温度測定用端子、マイクロコンピュータ101からドライバ入力信号VINが入力される駆動用入力端子、後述する信号DIAG1を出力するDIAG1出力端子、信号DIAG2を出力するDIAG2出力端子、マイクロコンピュータ101からイネーブル信号ENが入力されるイネーブル入力端子が設けられている。
【0016】
ゲート駆動回路21は、マイクロコンピュータ101から入力されるドライバ入力信号VINに基づいて制御信号VOUTを生成し、ゲート線11aを介してパワー半導体素子11のゲートに印加する。これにより、パワー半導体素子11のドレイン電流が制御される。
【0017】
温度検出回路22は、温度検出線12aを介してダイオード12に一定の電流を流すと共に、温度検出線12aの電位を測定する。温度検出線12aの電位が表す温度TSは、パワー半導体素子11の温度に相当する。換言すれば、温度検出線12aの電位は温度TSを表す信号である。温度検出回路22は、温度TSを予報温度値T1及び異常温度値T2と比較して、予報温度信号TW及び異常温度信号TEを出力する。
【0018】
異常温度値T2は、パワー半導体素子11の状態が異常であると判断される温度であり、温度TSが異常温度値T2を超えると、パワー半導体素子11を停止させる。予報温度値T1は、パワー半導体素子11を停止させるには及ばないが、注意を必要とする温度である。従って、異常温度値T2は予報温度値T1よりも高い。
【0019】
予報温度信号TWは、温度TSが予報温度値T1以上であるか否かを表す2値信号であり、異常温度信号TEは、温度TSが異常温度値T2以上であるか否かを表す2値信号である。温度TSが予報温度値T1未満であるときは、温度検出回路22は予報温度信号TWの値を「L」(ロー)とし、温度TSが予報温度値T1以上であるときは、温度検出回路22は予報温度信号TWの値を「H」(ハイ)とする。また、温度TSが異常温度値T2未満であるときは、温度検出回路22は異常温度信号TEの値を「L」とし、温度TSが異常温度値T2以上であるときは、温度検出回路22は異常温度信号TEの値を「H」とする。
【0020】
但し、予報温度値T1及び異常温度値T2は、温度TSが低温側から近づく場合と高温側から近づく場合とで値が異なり、低温側から近づく場合の値は高温側から近づく場合の値よりも高い。すなわち、予報温度値(検出)T1_1は予報温度値(解除)T1_2よりも高く、異常温度値(検出)T2_1は異常温度値(解除)T2_2よりも高い。
【0021】
電流検出回路23には、パワー半導体素子11から電流検出線11bを介して電流CSが入力される。電流CSは、パワー半導体素子11のドレイン電流と相関し、例えば、比例する。換言すれば、電流検出線11bを流れる電流CSは、パワー半導体素子11のドレイン電流を表す信号である。電流検出回路23は、電流CSの大きさを予報電流値C1及び異常電流値C2と比較して、予報電流信号CW及び異常電流信号CEを出力する。
【0022】
異常電流値C2は、パワー半導体素子11の状態が異常であると判断される電流であり、電流CSが異常電流値C2を超えると、パワー半導体素子11を停止させる。予報電流値C1は、パワー半導体素子11を停止させるには及ばないが、注意を必要とする電流である。従って、異常電流値C2は予報電流値C1よりも大きい。
【0023】
予報電流信号CWは、電流CSが予報電流値C1以上であるか否かを表す信号であり、異常電流信号CEは、電流CSが異常電流値C2以上であるか否かを表す信号である。電流CSが予報電流値C1未満であるときは、電流検出回路23は予報電流信号CWの値を「L」とし、電流CSが予報電流値C1以上であるときは、電流検出回路23は予報電流信号CWの値を「H」とする。また、電流CSが異常電流値C2未満であるときは、電流検出回路23は異常電流信号CEの値を「L」とし、電流CSが異常電流値C2以上であるときは、電流検出回路23は異常電流信号CEの値を「H」とする。予報電流値C1及び異常電流値C2の値は、それぞれ1水準である。
【0024】
図1及び
図2に示すように、状態判別回路24は、温度検出回路22から予報温度信号TW及び異常温度信号TEが入力され、電流検出回路23から予報電流信号CW及び異常電流信号CEが入力されることにより、パワー半導体素子11の状態が、以下の状態1〜4のいずれの状態であるかを判別する。状態を判別する手順については後述するが、判別の結果のみを概略的に説明すると以下のようになる。
【0025】
「状態1」は、温度検出線12aの電位が表す温度TSが予報温度値T1未満であり、且つ、電流検出線11bに流れる電流CSが予報電流値C1未満である状態である。状態1においては、パワー半導体素子11の駆動を継続する。以下、状態1を「正常状態」ともいう。
【0026】
「状態2」は、温度TSが予報温度値T1以上異常温度値T2未満である「予報温度状態」か、温度TSが予報温度値T1未満であり、且つ、電流CSが予報電流値C1以上異常電流値C2未満である「予報電流状態」である。なお、温度TSが予報温度値T1以上異常温度値T2未満であり、且つ、電流CSが予報電流値C1以上異常電流値C2未満である状態は、上記「予報温度状態」に含まれる。状態2においてもパワー半導体素子11の駆動を継続するが、マイクロコンピュータ101に状態2であることを通知し、マイクロコンピュータ101に判断材料を提供することができる。以下、状態2を「予報状態」ともいう。
【0027】
「状態3」は、温度TSが異常温度値T2以上である状態である。状態3のときは、パワー半導体素子11の駆動を停止する。以下、状態3を「異常温度状態」ともいう。
【0028】
「状態4」は、電流CSが異常電流値C2以上である状態である。状態4のときも、パワー半導体素子11の駆動を停止する。以下、状態4を「異常電流状態」ともいう。
【0029】
なお、後述するように、本実施形態においては、温度TSが異常温度値T2以上であり、且つ、電流CSが異常電流値C2以上である場合は、状態3に分類される。また、温度TSが予報温度値T1以上異常温度値T2未満であり、且つ、電流CSが異常電流値C2以上である場合は、状態2に分類される。但し、パワー半導体素子11に大電流が流れると、必然的に温度が上昇するため、いずれ、状態3となり、パワー半導体素子11は駆動を停止する。
【0030】
状態判別回路24は、判別した状態を、オープンドレイントランジスタN1及びN2を介して、信号DIAG1及び信号DIAG2として出力する。信号DIAG1及び信号DIAG2は、それぞれ、値が「L」又は「H」をとる2値信号である。オープンドレイントランジスタN1のソースは接地電位に接続されており、ゲートは入力端子であって状態判別回路24に接続されており、ドレインが出力端子となる。ドレインは抵抗R1を介して電源電位にプルアップされている。
【0031】
このため、状態判別回路24からオープンドレイントランジスタN1のゲートに対して出力される信号が「L」であると、オープンドレイントランジスタN1はオフ状態となり、ドレインが抵抗R1を介して電源電位にプルアップされて、信号DIAG1の値は「H」となる。一方、状態判別回路24から出力される信号が「H」であると、オープンドレイントランジスタN1はオン状態となり、ドレインが接地電位にプルダウンされて、信号DIAG1の値は「L」となる。オープンドレイントランジスタN2、抵抗R2及び信号DIAG2の関係も同様である。
【0032】
信号DIAG1は正常/異常を区別する信号であり、正常状態及び予報状態のときは値を「H」とし、異常状態のときは値「L」を保持(ラッチ)する。信号DIAG2は異常の内容を区別する信号であり、正常状態及び異常温度状態のときは値を「H」とし、予報状態及び異常電流状態のときは値を「L」とする。異常電流状態のときは、信号DIAG2の値は「L」でラッチするが、異常温度状態のときは、信号DIAG2の値はラッチせず、温度の検出結果をリアルタイムに出力する。このように、信号DIAG1及び信号DIAG2は、それぞれ、「H」又は「L」の値をとる1ビットの信号である。従って、状態判別回路24は、2つの端子を介して、判別した状態を合計2ビットの信号で出力する。
【0033】
具体的には、
図2に示すように、状態判別回路24は、「状態1」(正常状態)のときは、信号DIAG1の値を「H」とし、信号DIAG2の値を「H」とする。「状態2」(予報状態)のときは、信号DIAG1の値を「H」とし、信号DIAG2の値を「L」とする。「状態3」(異常温度状態)のときは、信号DIAG1の値を「L」とし、信号DIAG2の値を「H」とする。このとき、信号DIAG1の値は「L」でラッチする。「状態4」(異常電流状態)のときは、信号DIAG1の値を「L」でラッチし、信号DIAG2の値も「L」でラッチする。
【0034】
更に、状態判別回路24は、パワー半導体素子11の状態が「状態3」又は「状態4」のときは、ゲート駆動回路21に対して出力する出力停止信号SDの値を「H」とし、パワー半導体素子11を停止させる。状態判別回路24は、リセット信号RESETが入力されると、出力停止信号SDの値を「L」とする。更にまた、状態判別回路24は、イネーブル制御回路25に対して温度モニタ信号TMを出力し、イネーブル制御回路25からリセット信号RESETが入力される。温度モニタ信号TMの値は、例えば、予報温度信号TWの値と同じとする。
【0035】
イネーブル制御回路25は、マイクロコンピュータ101からイネーブル信号ENが入力され、状態判別回路24から温度モニタ信号TMが入力されると共に、状態判別回路24に対してリセット信号RESETを出力する。イネーブル制御回路25は、温度モニタ信号TMの値が「L」であるとき、すなわち、温度TSが予報温度値T1未満のときは、イネーブル信号ENが入力されるとリセット信号RESETを出力する。リセット信号RESETは、状態判別回路24にラッチを解除させ、出力停止信号SDの値を「L」に戻させる信号である。ゲート駆動回路21は、出力停止信号SDの値が「L」であると制御信号VOUTを出力し、出力停止信号SDの値が「H」であると制御信号VOUTを出力しない。一方、イネーブル制御回路25は、温度モニタ信号TMの値が「H」であるとき、すなわち、温度TSが予報温度値T1以上のときは、イネーブル信号ENが入力されても、リセット信号RESETを出力しない。
【0036】
マイクロコンピュータ101は、ドライバ入力信号VINを制御回路20のゲート駆動回路21に対して出力することにより、パワー半導体素子11を制御する。また、制御回路20の状態判別回路24から信号DIAG1及び信号DIAG2が入力されることにより、パワー半導体素子11の状態を判断し、所定のプログラム又はマスターコンピュータからの指令に従って、イネーブル信号ENを出力する。また、マイクロコンピュータ101は、パワー半導体素子11の状態を記憶し、ある状態となった回数を計測し、積算する。そして、必要に応じて、ユーザーにメッセージを発信する。
【0037】
次に、本実施形態に係るパワーモジュール1の動作について説明する。
図3は、本実施形態に係るパワーモジュールの過熱時の動作を示すタイミングチャートである。
図4は、本実施形態に係るパワーモジュールの過電流時の動作を示すタイミングチャートである。
図5は、本実施形態における状態判別回路及びイネーブル制御回路の動作を示すフローチャートである。
【0038】
(初期状態)
初期状態において、信号DIAG1の値は「H」であり、信号DIAG2の値は「H」であり、出力停止信号SDの値は「L」である。一方、マイクロコンピュータ101はイネーブル信号ENの値を「L」とする。
【0039】
(正常動作時)
先ず、正常動作時について説明する。
図1及び
図3に示すように、マイクロコンピュータ101がドライバ入力信号VINを出力すると、ゲート駆動回路21がパワー半導体素子11のゲートに対して制御信号VOUTを出力する。これにより、パワー半導体素子11のドレイン電流が制御され、モータ102の動作が制御される。
【0040】
このとき、パワー半導体素子11から電流検出線11bを介して、電流CSが電流検出回路23に入力される。また、温度検出回路22が、温度検出線12aを介してダイオード12に一定の電流を流すと共に、温度検出線12aの電位を測定する。パワー半導体素子11の動作に伴って温度が変動すると、ダイオード12の電圧が変動し、温度検出線12aの電位が変動する。例えば、パワー半導体素子11の温度が上昇し、ダイオード12の温度が上昇すると、ダイオード12の電圧が減少し、温度検出線12aの電位が低下する。
【0041】
正常動作時には、温度TSは予報温度値T1未満であるため、温度検出回路22から状態判別回路24に対して出力される予報温度信号TW及び異常温度信号TEの値はいずれも「L」である。状態判別回路24からイネーブル制御回路25に出力される温度モニタ信号TMの値も「L」である。また、電流CSは予報電流値C1未満であるため、電流検出回路23から状態判別回路24に対して出力される予報電流信号CW及び異常電流信号CEの値はいずれも「L」である。
【0042】
このため、
図5のステップS1からステップS2に進み、更に、ステップS5に進む。ステップS5に示すように、イネーブル制御回路25はイネーブル信号ENの入力を有効とし、ステップS8に進む。
【0043】
この段階では、イネーブル信号ENは入力されていないため、すなわち、値が「L」であるため、ステップS8からステップS9に進む。また、異常電流信号CEの値は「L」であるため、ステップS9からステップS10に進む。予報電流信号CWの値も「L」であるため、ステップS10からステップS13に進む。
【0044】
この結果、ステップS13に示すように、状態判別回路24はパワー半導体素子11の状態を「状態1」(正常状態)と判定する。そして、ステップS21に示すように、信号DIAG2の値を「H」のまま維持し、ステップS1に戻る。従って、
図2に示すように、信号DIAG1の値は「H」、信号DIAG2の値も「H」となる。正常動作時においては、上述のステップS1→S2→S5→S8→S9→S10→S13→S21→S1の動作を繰り返す。これにより、パワー半導体素子11の動作は継続される。
【0045】
(温度が予報温度値を超えた場合)
次に、温度TSが予報温度値(検出)T1_1を超えた場合の動作について説明する。
図3に示すように、時刻t11において、温度TSが予報温度値(検出)T1_1を超えたとする。この場合、予報温度信号TWの値は「H」となるため、
図5のステップS2からステップS4に進み、イネーブル制御回路25はイネーブル信号ENの入力を無効とする。これにより、マイクロコンピュータ101からイネーブル信号ENが入力されても、イネーブル制御回路25が状態判別回路24に対してリセット信号RESETを出力することはない。
【0046】
次に、ステップS7に示すように、状態判別回路24はパワー半導体素子11の温度状態を「予報温度状態」と判定し、従って、パワー半導体素子11の状態を「状態2」(予報状態)と判定する。これにより、
図3及び
図5のステップS17に示すように、信号DIAG2の値を「H」から「L」に変化させる。この結果、
図2に示すように、信号DIAG1の値は「H」、信号DIAG2の値は「L」となる。その後、ステップS1に戻る。このように、予報温度状態においては、上述のステップS1→S2→S4→S7→S17→S1の動作を繰り返す。パワー半導体素子11の動作は継続される。
【0047】
(温度が異常温度値を超えた場合)
次に、温度TSが異常温度値(検出)T2_1を超えた場合の動作について説明する。
図3に示すように、時刻t12において、温度TSが異常温度値(検出)T2_1を超えたとする。この場合、異常温度信号TEの値は「H」となるため、
図5のステップS1からステップS3に進み、イネーブル制御回路25はイネーブル信号ENの入力を無効とする。また、ステップS6に示すように、状態判別回路24はパワー半導体素子11の状態を「状態3」(異常温度状態)と判定する。
【0048】
そして、ステップS16に示すように、信号DIAG2の値を「H」のまま維持し、ステップS22に示すように、信号DIAG1の値を「H」から「L」に変化させる。このとき、信号DIAG1の値は「L」にラッチ(保持)され、ラッチがリセット信号RESETにより解除されるまでは、「L」のままである。この結果、
図2に示すように、信号DIAG1の値は「L」にラッチされ、信号DIAG2の値は「H」となる。次に、ステップS24に示すように、状態判別回路24は出力停止信号SDの値を「H」とし、ゲート駆動回路21を停止させる。この状態もラッチされる。
【0049】
これにより、ドライバ入力信号VINが入力されても、制御信号VOUTの値は「L」に維持され、パワー半導体素子11の駆動が停止する。この結果、モータ102に電力が供給されなくなり、モータ102も停止する。その後、ステップS1に戻る。このように、「状態3」(異常温度状態)においては、上述のステップS1→S3→S6→S16→S22→S24→S1の動作を繰り返す。パワー半導体素子11の動作は停止した状態で固定される。
【0050】
(温度が異常温度値未満まで低下した場合)
パワー半導体素子11が停止すると、パワー半導体素子11がそれ以上加熱されなくなり、温度TSが低下する。時刻t13において温度TSが異常温度値(解除)T2_2未満になると、異常温度信号TEの値が「H」から「L」に変化するため、ステップS1からステップS2に進む。この時点では、温度TSは未だ予報温度値(解除)T1_2以上であるため、予報温度信号TWの値は「H」のままであり、ステップS2からステップS4に進む。そして、上述の「予報温度状態」の動作、すなわち、ステップS1→S2→S4→S7→S17→S1の動作を繰り返す。これにより、ステップS17において、信号DIAG2の値は「H」から「L」に切り替わるが、信号DIAG1の値はラッチされているため、「L」のままである。
【0051】
(温度が予報温度値未満まで低下した場合)
パワー半導体素子11の温度が更に低下し、時刻t14において温度TSが予報温度値(解除)T1_2未満になると、予報温度信号TWの値が「L」に切り替わる。これにより、
図5のステップS2からステップS5に進み、イネーブル制御回路25がイネーブル信号ENの入力を有効にする。
【0052】
その後、時刻t15にマイクロコンピュータ101からイネーブル信号ENがイネーブル制御回路25に入力されるものとする。これにより、ステップS8からステップS14に進み、初期化する。すなわち、ステップS18に示すように、イネーブル制御回路25がリセット信号RESETを状態判別回路24に対して出力し、ラッチを解除する。これにより、ステップS23に示すように、状態判別回路24が信号DIAG1の値を「H」に戻し、ステップS25に示すように、出力停止信号SDの値を「L」にして、ゲート駆動回路21の出力停止を解除する。
【0053】
その後、マイクロコンピュータ101がイネーブル信号ENの出力を停止すると、ステップS8からステップS9→S10→S13に進み、「状態1」(正常状態)と判定し、ステップS21において、信号DIAG2の値を「H」に戻す。そして、上述のステップS1→S2→S5→S8→S9→S10→S13→S21→S1の動作を繰り返す。
【0054】
信号DIAG1の値及び信号DIAG2の値がいずれも「H」になることにより、マイクロコンピュータ101が「状態1」(正常状態)となったことを認識する。そして、時刻t16において、ドライバ入力信号VINの出力を開始する。この結果、パワー半導体素子11が動作を再開する。
【0055】
なお、一旦「状態3」(異常温度状態)となった後、どのようなタイミングでイネーブル信号EN及びドライバ入力信号VINを出力するかは、マイクロコンピュータ101が判断する。
図3に示す例では、温度TSが予報温度値(解除)T1_2まで低下した時刻t14よりも後に、イネーブル信号ENを出力したが、温度TSが予報温度値(解除)T1_2よりも高い時期、すなわち、時刻t14よりも前にイネーブル信号ENを出力してもよい。但し、この場合も、温度TSが予報温度値(解除)T1_2未満まで下がり、イネーブル制御回路25がイネーブル信号ENの入力を有効にした後でないと、初期化は実行されず、ゲート駆動回路21は出力を再開しない。
【0056】
(電流が予報電流値を超えた場合)
次に、電流CSが予報電流値C1を超えた場合の動作について説明する。
図4及び
図2に示すように、初期状態においては、パワー半導体素子11は「状態1」(正常状態)であるとする。
【0057】
時刻t21において、電流CSが予報電流値C1を超えたとする。この場合、予報電流信号CWの値が「H」となる。これにより、
図5のステップS10からステップS12に進み、状態判別回路24は、パワー半導体素子11が「予報電流状態」、すなわち、「状態2」(予報状態)であると判定し、ステップS15に示すように、ワンパルスを発生させた上で、ステップS20に示すように、信号DIAG2の値を「L」とする。信号DIAG2の値はワンパルスの間、「L」に固定される。この結果、
図2に示すように、信号DIAG1の値は「H」、信号DIAG2の値は「L」となる。
【0058】
なお、マイクロコンピュータ101がドライバ入力信号VINの値を「L」とすると、電流CSがゼロになり、予報電流信号CWの値は「L」に戻る。このため、ドライバ入力信号VINによっては、予報電流信号CWの値が「H」である期間が極めて短くなる場合がある。一方、信号DIAG2の値はワンパルス期間を通じて「L」を維持し、時刻t22において「H」に戻る。これにより、電流CSが予報電流値C1を超えている時間が短かったとしても、信号DIAG2の値は少なくともワンパルス期間を通じて「L」に維持されるため、マイクロコンピュータ101が「状態2」となったことを確実に読み取ることができる。この目的のためには、ワンパルスは例えば100μsec以上であることが好ましい。そして、電流CSが再び予報電流値C1を超えると、信号DIAG2の値は「L」なる。このように、ドライバ入力信号VINが断続的に変化すると、状態判別回路24の判定は「状態1」と「状態2」を往復するが、パワー半導体素子11の動作は継続される。
【0059】
(電流が異常電流値を超えた場合)
次に、電流CSが異常電流値C2を超えた場合の動作について説明する。
時刻t23において、電流CSが予報電流値C1を超えており、信号DIAG2の値が「L」であるとする。その後、時刻t24において、電流CSが異常電流値C2を超えたとする。これにより、異常電流信号CEの値は「H」となる。この場合、
図5のステップS9からステップS11に進み、状態判別回路24は、パワー半導体素子11が「状態4」(異常電流状態)であると判定する。
【0060】
そして、ステップS19に示すように、信号DIAG2の値を「L」にラッチする。次に、ステップS22に示すように、信号DIAG1の値を「L」にラッチする。この結果、
図2に示すように、信号DIAG1の値は「L」にラッチされ、信号DIAG2の値も「L」にラッチされる。次に、ステップS24に示すように、状態判別回路24が出力停止信号SDの値を「H」でラッチし、ゲート駆動回路21を停止させる。これにより、パワー半導体素子11が停止し、モータ102も停止する。その後、ステップS1に戻る。
【0061】
このとき、パワー半導体素子11が停止するため、電流CSはゼロとなる。従って、異常電流信号CEの値は「L」に戻るが、信号DIAG1の値及び信号DIAG2の値はラッチされているため、「L」のままである。従って、マイクロコンピュータ101からイネーブル信号ENが入力されるまで、状態判別回路24は「状態4」(異常電流温度状態)を維持し、パワー半導体素子11を停止状態とする。
【0062】
(異常電流状態からの回復)
その後、マイクロコンピュータ101が所定の判断を行い、時刻t25において、イネーブル信号ENを「H」とする。これにより、ステップS8からステップS14に進み、「初期化」を行うと判断し、ステップS18に示すように、イネーブル制御回路25がリセット信号RESETの値を「H」としてラッチを解除し、ステップS23に示すように、状態判別回路24が信号DIAG1の値を「H」とし、ステップS25に示すように、状態判別回路24が出力停止信号SDの値を「L」とする。これにより、出力停止が解除され、ゲート駆動回路21が制御信号VOUTを出力可能な状態となる。
【0063】
このとき、電流CSが正常、すなわち、予報電流値C1未満であれば、ステップS10からステップS12に進み、「状態1」(正常状態)と判定する。そして、時刻t26において、ドライバ入力信号VINが入力されると、ゲート駆動回路21が制御信号VOUTを出力し、パワー半導体素子11の動作を再開する。
【0064】
一方、例えば、モータ102が短絡して固着してしまった場合等においては、パワー半導体素子11を再起動した途端に電流CSは異常電流値C2を超える。この場合は、再び、上述のステップS9→S11→S19→S22→S24の動作を行い、「状態4」(異常電流温度状態)と判定してパワー半導体素子11を停止させる。マイクロコンピュータ101は、例えば、「状態4」と判定された回数をカウントし、所定の回数を超えた場合は、短絡等の不具合が発生しているものと判断して、以後、パワー半導体素子11を動作させない。
【0065】
次に、本実施形態の効果について説明する。
本実施形態においては、状態判別回路24が、パワー半導体素子11の状態が4つの状態のうちのいずれの状態であるかを、マイクロコンピュータ101等の外部制御機構に対して出力することができる。これにより、マイクロコンピュータ101は、パワー半導体素子11が「正常状態」(状態1)であるか、異常状態(状態3及び状態4)であるかを識別するだけでなく、「予報状態」(状態2)であることを識別することができる。
【0066】
これにより、パワー半導体素子11が異常状態となり停止を余儀なくされる前に、マイクロコンピュータ101が適切な予防処置をとることができる。例えば、パワー半導体素子11が「予報状態」(状態2)である場合は、パワー半導体素子11の出力を調節することにより、パワー半導体素子11の温度又は電流が増大することを抑制することができる。この結果、異常状態になることを回避又は遅延させたり、パワー半導体素子11が突然停止することによる影響を軽減することができる。
【0067】
また、本実施形態においては、異常状態が「異常温度状態」(状態3)であるか「異常電流状態」(状態4)であるかを識別することができる。これにより、マイクロコンピュータ101は、パワー半導体素子11の再起動が必要か否か、及び、再起動の繰り返しが許容されるか否かを判断し、異常の内容に合わせた再起動処置をとることができる。
【0068】
例えば、パワー半導体素子11が「異常温度状態」(状態3)である場合は、パワー半導体素子11の温度が予報温度値(解除)T1_2未満に低下するまで温度TSを監視し続け、その間、パワー半導体素子11を停止させておく。パワー半導体素子11が「異常電流状態」(状態4)である場合は、一旦パワー半導体素子11を停止させた後、直ちに再起動させる。そして、正常に動作するようであれば、そのまま駆動させ、繰り返し「異常電流状態」(状態4)になる場合には、パワー半導体素子11の動作を停止させる。
【0069】
例えば、モータ102が自動車のワイパーを動かすモータである場合に、積雪や凍結によりワイパーが物理的に拘束されると、パワー半導体素子11に負荷がかかり、異常温度状態となる場合がある。この場合、上述の如く、制御回路20はパワー半導体素子11を一旦停止させるが、停止させたままであると、フロントウインドウの透明度が低下し、自動車の運転が困難になる。このため、適当なタイミングでモータ102を駆動させ、ワイパーの作動を試みることが好ましい。
【0070】
一方、パワー半導体素子11及びモータ102を含む回路が短絡している場合には、パワー半導体素子11を再起動させても、その都度、大電流が流れるだけである。このような場合に、パワー半導体素子11を何度も再起動させると、モータ電流が増加し、パワー半導体素子11の寿命を縮めるだけでなく、発煙又は発火といった重大な状況を引き起こす可能性がある。このため、再起動は少ない回数に留め、ユーザーに修理の必要性を通知することが好ましい。
【0071】
このように、本実施形態によれば、状況に応じた処置が可能となり、パワーモジュール1を含むシステム全体に及ぼす影響を抑制しつつ、パワー半導体素子11を保護することができる。このように、本実施形態によれば、異常の内容を判別可能な制御回路20及びパワーモジュール1を実現することができる。
【0072】
更に、本実施形態においては、「状態3」(異常温度状態)においては、信号DIAG2の値をラッチせず、リアルタイムに温度を測定する。これにより、実際の状況を正確に検出することが可能となる。一方、「状態4」(異常電流状態)においては、信号DIAG2の値をラッチして、停止直前における電流CSの情報を保持する。これは、パワー半導体素子11を停止させると、電流CSはゼロとなるため、リアルタイムに電流を測定すると「状態4」の判定を維持できないからである。
【0073】
更にまた、本実施形態においては、制御回路20からマイクロコンピュータ101に対して、2ビットの信号により4つの状態が伝達される。このため、マイクロコンピュータ101が状態を認識するための所要時間を短くすることができ、高速な応答が可能となる。仮に、パルス幅を異ならせることにより情報を伝達するデジタル信号により、パワー半導体素子11の状態を伝達しようとすると、マイクロコンピュータ101は所定の期間、このデジタル信号をサンプリングする必要があるため、複雑な受信手段を設ける必要があると共に、情報の読み取りに時間がかかる。これに対して、本実施形態によれば、値が「H」又は「L」の2値信号が2本の配線を介して伝達されるだけであるため、単純な手段で瞬時に情報を読み取ることができる。
【0074】
(第1の実施形態の変形例)
次に、第1の実施形態の変形例について説明する。
図6は、本変形例に係るパワーモジュールを示すブロック図である。
【0075】
図6に示すように、本変形例においては、1つのマイクロコンピュータ101に2つのパワーモジュール1a及び1bが接続されている。パワーモジュール1a及び1bの構成は、それぞれ、前述の第1の実施形態に係るパワーモジュール1の構成と同様である。すなわち、パワーモジュール1aには、駆動素子部10a及び制御回路20aが設けられており、パワーモジュール1bには、駆動素子部10b及び制御回路20bが設けられている。駆動素子部10a及び10bは、例えば、1つのモータ102を駆動する。例えば、駆動素子部10aがモータ102を正回転させ、駆動素子部10bがモータ102を逆回転させる。
【0076】
マイクロコンピュータ101には、2つの出力端子OUT1及びOUT3と、3つの入力端子IN1、IN2、IN3が設けられている。出力端子OUT1は制御回路20aに対してドライバ入力信号VINを出力する。出力端子OUT3は制御回路20bに対してドライバ入力信号VINを出力する。一方、制御回路20aの信号DIAG1、及び、制御回路20bの信号DIAG1は、入力端子IN1に入力される。すなわち、各制御回路の信号DIAG1はマイクロコンピュータ101の共通の入力端子に入力される。制御回路20aの信号DIAG2は、入力端子IN2に入力される。制御回路20bの信号DIAG2は、入力端子IN3に入力される。すなわち、各制御回路の信号DIAG2はマイクロコンピュータ101の相互に異なる入力端子に入力される。入力端子IN1〜IN3に接続される各配線と、マイクロコンピュータ101の電源電位との間には、それぞれ、抵抗R1〜R3が接続されている。
【0077】
次に、本変形例に係るパワーモジュールの動作について説明する。
図7は、本変形例におけるパワー半導体素子の状態を示す図である。
図1に示すように、信号DIAG1はオープンドレイントランジスタN1のドレインに接続されているため、オープンドレイントランジスタN1がオン状態になると、信号DIAG1は接地電位となる。このため、
図6に示すように、制御回路20a及び20bのうち、いずれか一方の信号DIAG1の値が「L」になると、入力端子IN1の電位は「L」となる。
図7に示すように、本変形例においては、マイクロコンピュータ101は、以下の規則に従って、パワー半導体素子11の状態を判断する。
【0078】
「状態1」は、信号DIAG1の値が「H」であり、パワーモジュール1a及び1bのどちらについても、信号DIAG2の値が「H」である場合である。この場合は、パワーモジュール1a及び1bはどちらも「正常状態」である。
【0079】
「状態2」は、信号DIAG1の値が「H」であり、パワーモジュール1a及び1bのうち少なくとも一方について、信号DIAG2の値が「L」である場合である。この場合は、信号DIAG2の値を「L」としたパワーモジュールが、「予報状態」である。
【0080】
「状態3」は、信号DIAG1の値が「L」であり、パワーモジュール1a及び1bのどちらについても、信号DIAG2の値が「H」である場合である。この場合は、パワーモジュール1a及び1bのうち、少なくとも一方について、信号DIAG1の値が「L」である。すなわち、少なくとも一方のパワーモジュールが「異常温度状態」であり、動作を停止している。
【0081】
「状態4」は、信号DIAG1の値が「L」であり、パワーモジュール1a及び1bのうち少なくとも一方について、信号DIAG2の値が「L」である場合である。この場合は、信号DIAG2の値を「L」としたパワーモジュールが、「異常電流状態」であり、動作を停止している。
【0082】
次に、本変形例の効果について説明する。
本変形例によれば、信号DIAG1の入力端子を共通化することにより、信号DIAG1の入力端子をパワーモジュール毎に設ける場合と比較して、配線数を低減することができる。これにより、ポート数が少ないマイクロコンピュータを選択することが可能となり、コストを低減できると共に、配線が単純化されるため、メンテナンス性が向上する。
本変形例における上記以外の構成、動作及び効果は、前述の第1の実施形態と同様である。
【0083】
なお、本変形例においては、1つのマイクロコンピュータ101に2つのパワーモジュール1a及び1bを接続する例を示したが、これには限定されず、3つ以上のパワーモジュールを接続してもよい。この場合、例えば、信号DIAG1は共通の入力端子に入力させ、信号DIAG2は相互に異なる入力端子に入力させる。これにより、1つのマイクロコンピュータ101に接続するパワーモジュールの数をN個(Nは1以上の整数)とすると、信号DIAG1用の配線は1本、信号DIAG2用の配線はN本となり、状態伝達用の配線は、合計(N+1)本とすることができる。但し、構成によっては、信号DIAG2も共通化が可能であり、その場合は、配線数はより少なくなる。
【0084】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態について説明する。
図8は、本実施形態に係るパワーモジュールを示すブロック図である。
【0085】
図8に示すように、本実施形態に係るパワーモジュール2は、マイクロコンピュータ等の外部制御機器に接続されていない。また、パワーモジュール2には、前述の第1の実施形態に係るパワーモジュール1の構成に加えて、ANDゲート回路31及びパルス発生手段32が設けられている。パルス発生手段32は、例えば、マルチバイブレータである。
【0086】
ANDゲート回路31は、外部から入力信号VSWが入力されると共に、状態判別回路24から信号DIAG2が入力され、入力信号VSW及び信号DIAG2の論理積をドライバ入力信号VINとして出力する。すなわち、ドライバ入力信号VINの値は、入力信号VSWの値と信号DIAG2の値の双方が「H」であれば「H」であり、それ以外の場合は「L」である。
【0087】
パルス発生手段32は、信号DIAG1が入力され、信号DIAG1の値が「L」であるときに、イネーブル制御回路25に対して、イネーブル信号ENとしてパルス信号を出力する。信号DIAG1の値が「H」であるときは、パルス信号を出力せず、イネーブル信号ENの値を「L」に維持する。
【0088】
次に、本実施形態に係るパワーモジュールの動作について説明する。
図9は、本実施形態におけるパワー半導体素子の状態を示す図である。
図10は、本実施形態に係るパワーモジュールの動作を示すタイミングチャートである。
本実施形態における状態判別回路及びイネーブル制御回路の動作を示すフローチャートは、
図5と同様である。
【0089】
(初期状態)
本実施形態において、初期状態は第1の実施形態と同様であり、信号DIAG1の値は「H」であり、信号DIAG2の値は「H」であり、出力停止信号SDの値は「L」であり、イネーブル信号ENの値は「L」である。以下、
図8〜
図10、
図5を参照して説明する。
【0090】
(正常動作時)
ANDゲート回路31には、値が「H」である信号DIAG2が入力される。また、ANDゲート回路31には外部から入力信号VSWが入力される。このため、ANDゲート回路31は、入力信号VSWと同じ値のドライバ入力信号VINをゲート駆動回路21に対して出力する。これにより、パワー半導体素子11が駆動され、モータ102が駆動される。このとき、信号DIAG1の値は「H」であるため、パルス発生手段32はイネーブル信号ENを出力しない。但し、イネーブル制御回路25はイネーブル信号ENの入力を有効としている。
【0091】
正常動作時における上記以外の動作は、第1の実施形態と同様である。すなわち、状態判別回路24及びイネーブル制御回路25は、
図5のステップS1→S2→S5→S8→S9→S10→S13→S21→S1の動作を繰り返し、パワー半導体素子11の状態を「状態1」と判定し、パワー半導体素子11を継続して動作させる。
【0092】
(温度が予報温度値を超えた場合)
時刻t31において、温度TSが予報温度値(検出)T1_1を超えたとする。この場合、温度検出回路22が予報温度信号TWの値を「H」とし、状態判別回路24が温度モニタ信号TMの値を「H」とする。これにより、
図5のステップS2からステップS4に進み、イネーブル制御回路25はイネーブル信号ENの入力を無効とする。
【0093】
また、ステップS7に示すように、状態判別回路24はパワー半導体素子11の状態を「予報温度状態」と判定し、従って、「状態2」(予報状態)と判定する。これにより、
図9及び
図5のステップS17に示すように、信号DIAG2の値を「L」に変化させる。この結果、入力信号VSWの値に拘わらず、ドライバ入力信号VINの値は「L」となり、パワー半導体素子11が停止する。その後、ステップS1に戻る。このように、予報状態においては、前述の第1の実施形態と同様に、上述のステップS1→S2→S4→S7→S17→S1の動作を繰り返すが、第1の実施形態とは異なり、パワー半導体素子11は停止させる。本実施形態においては、温度TSが予報温度値以上である期間は、パワー半導体素子11を駆動しない。
【0094】
このように、温度TSが予報温度値(検出)T1_1に到達すると、パワー半導体素子11が停止するため、温度TSは低下し、通常は異常温度状態に至ることはない。なお、何らかの理由で温度TSが異常温度値以上まで上昇した場合、及び、異常温度値未満まで低下した場合の動作は、第1の実施形態と同様である。
【0095】
(温度が予報温度値未満まで低下した場合)
時刻t32において温度TSが予報温度値(解除)T1_2未満になると、予報温度信号TWの値及び温度モニタ信号TMの値が「L」に戻る。これにより、ステップS2からステップS5に進み、イネーブル制御回路25がイネーブル信号ENの入力を有効にする。また、ステップS13に示すように、状態判別回路24が「状態1」(正常状態)と判定し、ステップS21に示すように、信号DIAG2の値を「H」とする。これにより、ANDゲート回路31は、入力信号VSWと同じ値のドライバ入力信号VINを、ゲート駆動回路21に対して出力し、パワー半導体素子11の駆動を再開させる。
【0096】
その後、パワー半導体素子11の駆動に伴い、温度TSが再び予報温度値(検出)T1_1に到達すると、再び、「状態2」となる。
図10に示すように、時刻t32の後、温度TSは予報温度値(解除)T1_2と予報温度値(検出)T1_1の間で往復し、「状態1」と「状態2」を繰り返す。このようにして、温度TSを予報温度値(検出)T1_1未満に抑えることができる。
【0097】
(電流が異常電流値を超えた場合)
次に、電流CSが異常電流値C2を超えた場合の動作について説明する。
例えば、短絡等の突発的な不具合により、時刻t33において、電流CSが異常電流値C2を超えたとする。この場合は、ステップS9からステップS11を経てステップS19に進み、信号DIAG2の値が「L」にラッチされる。これにより、ドライバ入力信号VINの値が「L」に固定され、パワー半導体素子11は停止する。
【0098】
通常、パワー半導体素子11に大電流が流れると、温度TSは予報温度値T1_1を超える。又は、温度TSが予報温度値T1_1未満であっても、ステップS21において信号DIAG2の値が「H」になると、パワー半導体素子11が動作を再開して大電流が流れ、動作を停止する。このようにして、パワー半導体素子11に断続的に大電流が流れることにより、温度TSが上昇して、予報温度値T1_1を超える。従って、結局、温度モニタ信号TMの値は「H」となる。
【0099】
その後、ステップS19からステップS22に進み、信号DIAG1の値が「L」にラッチされる。これにより、パルス発生手段32がイネーブル信号ENとしてパルス信号を出力する。しかしながら、温度モニタ信号TMの値は「H」であるため、イネーブル制御回路25はリセット信号RESETを出力しない。従って、パワー半導体素子11は動作を再開しない。
【0100】
(回復動作)
その後、パワー半導体素子11が冷却され、時刻t34において温度TSが予報温度値(解除)T1_2未満になると、ステップS1→S2→S5→S8→S14と進み、初期化を行う。すなわち、ステップS18に示すように、イネーブル制御回路25がリセット信号RESETを出力することによりラッチが解除され、ステップS23に示すように、信号DIAG1の値が「H」となり、パルス発生手段32はイネーブル信号ENを停止する。また、ステップS25に示すように、状態判別回路24が出力停止信号SDを「L」とする。
【0101】
その後、ステップS1に戻り、ステップS2→S5→S8→S9に進み、電流CSが異常電流値C2未満であると、ステップS10に進み、電流CSが予報電流値C1未満であると、ステップS13に進み、「状態1」(正常状態)と判定した上で、ステップS21に進み、信号DIAG2の値を「H」とする。これにより、ANDゲート回路31がドライバ入力信号VINの出力を再開し、パワー半導体素子11の動作を再開させる。
【0102】
次に、本実施形態の効果について説明する。
本実施形態によれば、マイクロコンピュータ101等の外部制御機構がなくても、パワーモジュール2が「状態1」と「状態2」を繰り返すことにより、「状態3」(異常温度状態)を回避することができる。また、パワーモジュール2は「状態4」(異常電流状態)から自律的に再起動し、「状態1」(正常状態)に復帰することができる。これにより、マイクロコンピュータが設けられていない単純なアクチュエータ、例えば、自動車のパワーシートのように、運転者の操作をそのままモータに伝えるだけのアクチュエータにも、本実施形態を適用し、パワー半導体素子11の状態を適切に管理することができる。
本実施形態における上記以外の構成、動作及び効果は、前述の第1の実施形態と同様である。
【0103】
なお、本実施形態においては、温度モニタ信号TMの値を予報温度信号TWの値と一致させたが、これには限定されない。本実施形態においては、信号DIAG2とANDゲート回路31によりドライバ入力信号VINを制御しているため、温度モニタ信号TMの替わりに、予報電流信号CW、又は、異常電流信号CEを用いてもよく、実用上の要求に応じて適宜選択することができる。
【0104】
また、本実施形態においては、ANDゲート回路31及びパルス発生手段32を制御回路20の外部に設けているが、制御回路20内に設けてもよい。この場合も、同様な効果を得ることができる。更に、
図1及び
図9に示す例では、モータ102が駆動素子部10と接地電位(GND)との間に接続されている例を示したが、モータ102は駆動素子部10と電源電位との間に接続されていてもよい。また、駆動対象となる負荷はモータ102には限定されず、例えば、ソレノイドであってもよい。更に、駆動素子部10とモータ102との間に、チャージポンプ回路を設けてもよい。
【0105】
以上説明した実施形態によれば、異常の内容を判別可能な制御回路及びパワーモジュールを実現することができる。
【0106】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明及びその等価物の範囲に含まれる。