特許第6952671号(P6952671)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6952671
(24)【登録日】2021年9月30日
(45)【発行日】2021年10月20日
(54)【発明の名称】コネクタを有する流体閉鎖移送システム
(51)【国際特許分類】
   A61J 1/20 20060101AFI20211011BHJP
【FI】
   A61J1/20 314C
【請求項の数】17
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2018-213114(P2018-213114)
(22)【出願日】2018年11月13日
(62)【分割の表示】特願2016-528134(P2016-528134)の分割
【原出願日】2014年11月4日
(65)【公開番号】特開2019-18110(P2019-18110A)
(43)【公開日】2019年2月7日
【審査請求日】2018年12月13日
(31)【優先権主張番号】61/900,623
(32)【優先日】2013年11月6日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514221366
【氏名又は名称】ベクトン ディキンソン アンド カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ローリー サンダース
(72)【発明者】
【氏名】マシュー ザチェック
【審査官】 胡谷 佳津志
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2009/133755(WO,A1)
【文献】 特表平04−506555(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0249479(US,A1)
【文献】 国際公開第2011/052481(WO,A1)
【文献】 特表2010−512948(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0019487(US,A1)
【文献】 特表2010−524626(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61J 1/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
システムであって、
第1の端部と第2の端部とを有する注射器アダプタであって、前記注射器アダプタの前記第1の端部は第1の容器に接続されるように構成され、前記注射器アダプタの前記第2の端部は開放位置および閉鎖位置を有する係止部材を備える、注射器アダプタと、
第1の端部と第2の端部とを有するバイアルアダプタであって、前記バイアルアダプタの前記第2の端部は第2の容器に接続されるように構成され、前記バイアルアダプタの前記第1の端部は係止表面を有し、前記注射器アダプタは前記係止部材が前記開放位置にあるときに前記バイアルアダプタと嵌合するように構成され、前記注射器アダプタは前記係止部材が前記閉鎖位置にあり、前記係止表面に隣接する位置にあるときに前記バイアルアダプタに係止されるように構成され、前記係止部材は、径方向外向きに延在する少なくとも1つの突出部と、一対の軸方向に延在する出部と、を備え、前記一対の軸方向に延在する出部は、前記係止部材が前記開放位置にあるときに前記注射器アダプタの外面と接触する一方、前記係止部材が前記閉鎖位置にあるときに前記注射器アダプタの外面と非接触となり、前記注射器アダプタは前記係止部材の前記径方向外向きに延在する少なくとも1つの突出部と係合して前記係止部材を前記注射器アダプタに保持するように構成された少なくとも1つの対応する突出部を有する、バイアルアダプタとを備えることを特徴とするシステム。
【請求項2】
第1の端部および第2の端部を有し、通路を画成する、患者コネクタをさらに備え、前記患者コネクタの前記第1の端部は前記注射器アダプタの前記係止部材と係合するように構成された係止表面を備え、前記患者コネクタの前記第2の端部は患者IVラインに固定されるように構成されたことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記注射器アダプタは、本体部および前記本体部内に位置決めされたシール装置を備え、前記シール装置は少なくとも1つの膜を有し、前記注射器アダプタの前記本体部内で移動するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記バイアルアダプタは、均圧化装置およびスパイクを備えることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記注射器アダプタの前記本体部は、前記係止部材を受け入れる前記注射器アダプタの縦軸に相対的に横方向に延在する開口部を画成し、前記係止部材は前記開放位置と前記閉鎖位置との間で前記注射器アダプタの前記本体部に相対的に移動するように構成されることを特徴とする請求項3に記載のシステム。
【請求項6】
前記係止部材は、前記係止部材を前記閉鎖位置の方へ付勢するように構成されている付勢部材を備えることを特徴とする請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記係止部材は、前記注射器アダプタが前記バイアルアダプタと嵌合したときに、前記バイアルアダプタの前記第1の端部と接触し、前記係止部材を前記閉鎖位置から前記開放位置に移動するように構成されている引き込み表面を備えることを特徴とする請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記係止部材の前記付勢部材は、片持ち梁バネを備え、前記注射器アダプタの前記本体部は前記係止部材の前記片持ち梁バネと係合するように構成されたカム表面を画成することを特徴とする請求項6に記載のシステム。
【請求項9】
前記片持ち梁バネは軸方向に延在し、前記カム表面は前記注射器アダプタの前記本体部から径方向外向きに延在することを特徴とする請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記係止部材の前記径方向外向きに延在する少なくとも1つの突出部は、前記係止部材の対向する側に位置決めされた一対の径方向外向きに延在する突出部を備え、前記注射器アダプタの前記少なくとも1つの対応する突出部は、前記係止部材の前記一対の突出部と係合するように構成された一対の対応する突出部を備えることを特徴とする請求項3に記載のシステム。
【請求項11】
前記係止部材は、環状であり、前記注射器アダプタの前記本体部によって画成された開口部内に受け入れられ、前記注射器アダプタの前記開口部は前記注射器アダプタの縦軸に相対的に横方向に延在することを特徴とする請求項3に記載のシステム。
【請求項12】
前記係止部材は、前記係止部材を前記閉鎖位置から前記開放位置に移動させるように前記注射器アダプタの使用者の手で係合されるように構成されているボタンを備えることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項13】
前記シール装置は、膜を有する膜担体を備え、前記バイアルアダプタの前記第1の端部は前記膜担体の前記膜と係合するように構成された膜を有することを特徴とする請求項3に記載のシステム。
【請求項14】
前記膜担体は、付勢部材を介して前記注射器アダプタの前記第2の端部の方へ付勢されることを特徴とする請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
前記注射器アダプタの前記第1の端部は、注射器に固定されるように構成されたメスルアーコネクタを備えることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項16】
前記係止部材の前記一対の軸方向に延在する出部は、前記ボタンに近接して位置決めされていることを特徴とする請求項12に記載のシステム。
【請求項17】
前記一対の軸方向に延在する突出部は、前記係止部材が前記開放位置にあるときに前記係止部材の側方移動を防止するために、前記注射器アダプタの前記外面と接触する湾曲部をさらに備えることを特徴とする請求項16に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般的に、流体の閉鎖移送(closed transfer of fluids)のためのシステムに関するものである。より具体的には、本開示は、カニューレをバイアルと係合するとき、カニューレを介してバイアルチャンバーからバレルチャンバーに物質を移送するとき、およびバイアルからカニューレを係脱するときに、漏れ防止封止および均圧化を行うシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
医療従事者が癌治療薬などの危険薬物の再構成、輸送、および投与を行うことは、医療従事者をそれらの薬剤への曝露の危険にさらし、医療環境において危険を引き起こす主要な原因となり得る。例えば、癌患者を治療する看護師には、化学療法の薬剤およびその毒作用にさらされる危険がある。意図しない化学療法に対する曝露は、神経系に影響を及ぼし、生殖器官を損ない、将来血液癌を発症する危険性を増大させ得る。医療従事者が有毒薬物にさらされる危険性を低減するために、それらの薬物の閉鎖移送が重要になる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
いくつかの薬物は、それらが投与される前に溶解されるか、または希釈されなければならず、これは溶剤を一方の容器から粉末または液体形態で薬物を収容している封止バイアルに針を用いて移送することを伴う。薬物は、バイアルの内部と周囲の外気との間に圧力差が存在する場合に、バイアルから針を引き抜くときおよび針がバイアルの内側にある間に、気体の形態で、またはエアロゾル化により、大気中に不用意に放出されることがあり得る。
【課題を解決するための手段】
【0004】
一態様において、流体の閉鎖移送のためのシステムなどの、システムは、第1の端部および第2の端部を有する注射器アダプタを備え、注射器アダプタの第1の端部は第1の容器に接続されるように構成され、注射器アダプタの第2の端部は開放位置および閉鎖位置を有する係止部材を備える。システムは、また、第1の端部および第2の端部を有するバイアルアダプタも備え、バイアルアダプタの第2の端部は第2の容器に接続されるように構成され、バイアルアダプタの第1の端部は係止表面を有する。注射器アダプタは、係止部材が開放位置にあるときにバイアルアダプタと嵌合するように構成され、係止部材が閉鎖位置にあり、係止表面に隣接する位置にあるときにバイアルアダプタに係止されるように構成される。係止部材は、径方向外向きに延在する少なくとも1つの突出部を備える。注射器アダプタは、係止部材の少なくとも1つの突出部と係合して係止部材を注射器アダプタに保持するように構成された少なくとも1つの対応する突出部を有する。
【0005】
システムは、第1の端部および第2の端部を有し、通路を画成する、患者コネクタも備え、患者コネクタの第1の端部は注射器アダプタの係止部材と係合するように構成された係止表面を備え、患者コネクタの第2の端部は患者IVラインに固定されるように構成される。注射器アダプタは、本体部および本体部内に位置決めされたシール装置を備えることができ、シール装置は少なくとも1つの膜を有し、注射器アダプタの本体部内で移動するように構成される。バイアルアダプタは、均圧化装置およびスパイクを備え得る。注射器アダプタの本体部は、係止部材を受け入れる注射器アダプタの縦軸に相対的に横方向に延在する開口部を画成し、係止部材は開放位置と閉鎖位置との間で注射器アダプタの本体部に相対的に移動するように構成される。係止部材は、係止部材を閉鎖位置の方へ付勢するように構成されている付勢部材を備え得る。係止部材は、注射器アダプタがバイアルアダプタと嵌合したときに、バイアルアダプタの第2の端部と接触し、係止部材を閉鎖位置から開放位置に移動するように構成されている引き込み表面を備え得る。
【0006】
係止部材の付勢部材は、片持ち梁バネを備えることができ、注射器アダプタの本体部は係止部材の片持ち梁バネと係合するように構成されたカム表面を画成する。片持ち梁バネは軸方向に延在するものとしてよく、カム表面は注射器アダプタの本体部から径方向外向きに延在する。係止部材の少なくとも1つの突出部は、係止部材の対向する側に位置決めされた一対の突出部を備えることができ、注射器アダプタの少なくとも1つの対応する突出部は、係止部材の一対の突出部と係合するように構成された一対の対応する突出部を備えることができる。係止部材は、環状であり、注射器アダプタの本体部によって画成された開口部内に受け入れられるものとしてよく、注射器アダプタの開口部は注射器アダプタの縦軸に相対的に横方向に延在する。係止部材は、係止部材を閉鎖位置から開放位置に移動させるように注射器アダプタの使用者の手で係合されるように構成されているボタンを備え得る。シール装置は、膜を有する膜担体を備えることができ、バイアルアダプタの第1の端部は膜担体の膜と係合するように構成された膜を有する。膜担体は、付勢部材を介して注射器アダプタの第2の端部の方へ付勢され得る。注射器アダプタの第1の端部は、注射器に固定されるように構成されたメスルアーコネクタを備え得る。
【図面の簡単な説明】
【0007】
添付図面と併せてなされる本開示の態様の以下の説明を参照することによって、本開示の上述のおよび他の特徴および利点、ならびにそれらを実現する方式はより明らかになり、本開示それ自体がより深く理解されるであろう。
図1】本発明の一態様によるシステムの斜視図である。
図2】本発明の一態様による図1のシステムの分解斜視図である。
図3】本発明の一態様による図1のシステムの注射器アダプタの斜視図である。
図4】本発明の一態様による図3の注射器アダプタの正面図である。
図5】本発明の一態様による図3の注射器アダプタの左側面図である。
図6】本発明の一態様による図3の注射器アダプタの後面図である。
図7】本発明の一態様による図3の注射器アダプタの上面図である。
図8】本発明の一態様による図3の注射器アダプタの右側面図である。
図9】本発明の一態様による図3の注射器アダプタの底面図である。
図10】本発明の一態様による図6における線10−10に沿った注射器アダプタの断面図である。
図11】本発明の一態様による図5における線11−11に沿った注射器アダプタの断面図である。
図12】本発明の一態様による図3の注射器アダプタの拡大斜視図である。
図13】本発明の一態様による図3の注射器アダプタの係止部材の上面斜視図である。
図14】本発明の一態様による図13に示されている係止部材の底面斜視図である。
図15】本発明の一態様による図1のシステムのバイアルアダプタの正面斜視図である。
図16】本発明の一態様による図15のバイアルアダプタの正面図である。
図17】本発明の一態様による図15のバイアルアダプタの底面斜視図である。
図18】本発明の一態様による図15のバイアルアダプタの上面斜視図である。
図19】本発明の一態様による図16における線19−19に沿ったバイアルアダプタの断面図である。
図20】本発明の一態様による図1のシステムの患者コネクタの正面斜視図である。
図21】本発明の一態様による図20における線21−21に沿って切り取られた患者コネクタの断面図である。
図22】本発明の一態様による図15のバイアルアダプタに接続される前の図3の注射器アダプタの断面図である。
図23】本発明の一態様による図15のバイアルアダプタに接続されるプロセスにおける図3の注射器アダプタの断面図である。
図24】本発明の一態様による図15のバイアルアダプタに接続され係止された図3の注射器アダプタの断面図である。
図25】本発明の第2の態様によるシステムの斜視図である。
図26】本発明の一態様による図25のシステムのバイアルアダプタの断面図である。
図27】本発明の一態様による図25のシステムの注射器アダプタの断面図である。
図28】本発明のさらなる態様による注射器アダプタの断面図である。
図29】本発明のさらに別の態様によるバイアルアダプタの正面図である。
【0008】
対応する参照文字は、いくつかの図面全体を通して対応部分を指し示している。本明細書で述べられている例示は、本開示の例示的な態様を示しており、そのような例示は、いかなる形でも本開示の範囲を制限するものと解釈されるべきでない。
【発明を実施するための形態】
【0009】
次の説明は、本発明を実施するために企図されている説明された態様を当業者が製作し使用することができるように用意されたものである。しかし、様々な修正形態、等価形態、変更形態、および代替形態は、当業者に直ちにわかるであろう。このような修正形態、変更形態、等価形態、および代替形態はすべてどれも、本発明の精神および範囲内にあることが意図されている。
【0010】
これ以降の説明のために、「上」、「下」、「右」、「左」、「垂直」、「水平」、「頂部」、「底部」、「横」、「縦」という語、およびこれらの派生語は、図面中で向き付けられているとおりに本発明に関係するものとする。しかしながら、本発明は、明示的に反対のことが指定されていない限り、様々な代替的変更形態を想定することができると理解されるべきである。また、添付図面に示され、以下の明細において説明されている特定のデバイスは、単に本発明の例示的な態様であると理解されるべきである。したがって、本明細書で開示されている態様に関係する特定の寸法および他の物理的特性は、制限としてみなされるべきでない。
【0011】
次の説明では、「遠位」は、バイアルなどの、容器と接触するように適合されているシステムの端部へ一般的に向かう方向を指し、「近位」は、遠位の方向とは反対の方向、すなわち、容器と接触するように適合されたシステムの端部から遠ざかる方向を指す。本開示の目的のために、上述の指示は、本開示によるシステムの構成要素の説明において使用される。
【0012】
図1および2を参照すると、流体の閉鎖移送のためのシステム10の一態様は、注射器アダプタ12、バイアルアダプタ14、および患者コネクタ16を備えている。システム10は、バイアルなどの、第1の容器18から注射器、IVバッグ、または患者IVラインなどの、第2の容器(図示せず)への流体の移送時に実質的に漏れを防止する封止を実現する。システム10の漏れ防止封止は、システム10の使用時に空気と液体の両方の漏れを実質的に防止する。図示されていないけれども、システムは、IVバッグアダプタ、さらには輸液ラインおよびエクステンションセットなどの、閉鎖システム移送デバイス内で典型的に利用される他の構成要素をさらに備えることができる。
【0013】
図3〜14を参照すると、注射器アダプタ12の一態様は、第1の端部24および第2の端部26を有し、内部空間28を画成する、本体部22を備えている。注射器アダプタ12の本体部22の第1の端部24は、通路32を画成する、メスルアーコネクタなどの注射器アタッチメント30を備える。メスルアーコネクタは、注射器(図示せず)の対応するオスルアーコネクタと接続するように示されているけれども、他の好適な接続装置も、注射器、容器、または他の任意の医療デバイスに接続するために利用され得る。遠位端36を有するカニューレ34は、注射器アタッチメント30に固定され、注射器アタッチメント30の通路32と流体的に連通している。注射器アダプタ12は、注射器アダプタ12の本体部22内に位置決めされたシール装置38をさらに備える。シール装置38は、第1の膜42と第1の膜42から間隔をあけて並ぶ第2の膜44とを受け入れる膜担体40を備える。シール装置38は、膜担体40および注射器アタッチメント30(または本体部)と係合し、膜担体40を注射器アダプタ12の第2の端部26の方へ付勢するように構成されている、圧縮バネなどの付勢部材46をさらに備える。注射器アダプタ12の本体部22は、使用者による注射器アダプタ12の把持を増強するための構造を備え得る。特に、注射器アダプタ12の本体部22は、使用者が注射器アダプタ12を把持するのをしやすくする、注射器アダプタ12の本体部22の周囲に延在する複数の環状溝48を備える。注射器アダプタ12の本体部22は、縦方向に、および本体部22の周囲に、延在する注射器アダプタ12の第1の端部24に隣接する複数の陥凹部分も備える。注射器アダプタ12の本体部22を使用者が把持するのを補助するために追加の、または代替的な把持構造および表面が用意され得る。
【0014】
以下でより詳しく説明されているように、使用時に対応する膜が第2の膜44と係合した後、膜担体40は注射器アダプタ12の第1の端部24の方へ移動してカニューレ34の遠位端36が第2の膜44に孔をあけ、注射器アダプタ12を注射器アダプタ12に固定されている対応するデバイスと流体的に連通させるように構成される。第2の膜44が、対応する膜から係脱した後、膜担体40は、付勢されてそれの元の位置に戻され、それによって、カニューレ34の遠位端36を第1の膜42と第2の膜44との間に位置決めする。図10において、膜担体40は、注射器アダプタ12の第1の端部24の方へ移動された後にカニューレ34の遠位端36が第2の膜44に孔をあけるように図示されている。しかしながら、膜担体40は、バイアルアダプタ14または患者コネクタ16との係合の後にのみ図10に示されている位置に来る。
【0015】
そのような装置は、カニューレ34の遠位端36をシールドし、うっかり針が突き刺さるのを防ぎ、また注射器アダプタ12を使用しているときの流体の移送時に任意の流体の漏れも防ぐ。付勢部材46は、圧縮バネとして示されているけれども、膜担体40を注射器アダプタ12の第2の端部26の方へ付勢するために、他の好適な任意の付勢装置も利用することができる。さらに、シール装置38は、第1の膜42および第2の膜44ならびに膜担体40を備えるけれども、使用時にカニューレ34を封止し、シールドするために他の好適な任意の装置が利用され得る。
【0016】
再び図3〜14を参照すると、注射器アダプタ12の第2の端部26は、注射器アダプタ12の本体部22内の横開口部54内に受け入れられる係止部材52を備える第1の接続接合部50を具備する。係止部材52は、閉鎖位置と開放位置との間で移動するように構成される。係止部材52は、中央開口部56を画成し、注射器アダプタ12の使用者または操作者の手によって係合されるように構成されたボタン58を備える。係止部材52は、注射器アダプタ12の縦方向に延在する片持ち梁バネ60をさらに備える。係止部材52は、注射器アダプタ12の本体部22から径方向外向きに延在するカム表面62と係合するように構成される。特に、係止部材52は、閉鎖位置に備えられるように構成され、係止部材52の中央開口部56に隣接する係止部材52の一部は、係止部材52に印加されないときに注射器アダプタ12の内部空間28内に位置決めされる。以下でより詳しく説明されているように、係止部材52が、係止部材52の中央開口部56が注射器アダプタ12の内部空間28と位置合わせされるか、または物体が内部空間28内に挿入されることに対する干渉または障壁を形成しないときに、片持ち梁バネ60は、カム表面62と係合し、係止部材52を閉鎖位置の方へ付勢して戻す付勢力を発生する。したがって、係止部材52が、開放位置に移動されるときに、係止部材52は、係止部材52に作用する外力が解放されるときの閉鎖位置に付勢されて戻る。係止部材52は、片持ち梁バネ60とともに示されているけれども、限定はしないが、圧縮バネ、引っ張りコイルバネ、エラストマー材料などを含む、他の好適な任意の付勢部材が備えられ得る。
【0017】
図11を参照すると、係止部材52は、係止部材52から径方向外向きに延在する一対の突出部64をさらに備える。一対の突出部64は、注射器アダプタ12の本体部22上に備えられた対応する突出部66と係合して係止部材52を注射器アダプタ12の本体部22に保持するように構成される。言い換えれば、係止部材52の突出部64は、注射器アダプタ12の本体部22の突出部66と係合することで、係止部材52が注射器アダプタ12の本体部22の横開口部54から切断され取り外されるのを防ぐように構成されている。
【0018】
図14を参照すると、係止部材52は、係止部材52の底部の凹形の陥凹部である引き込み表面68をさらに備えている。以下で説明されているように、引き込み表面68は、対応する接続接合部と係合して係止部材52を閉鎖位置から開放位置に遷移させるように構成される。
【0019】
図15〜19を参照すると、バイアルアダプタ14は、第1の端部82および第2の端部84を有する本体部80を備えている。第1の端部82は、注射器アダプタ12の第1の接続接合部50と嵌合して係止するように構成された第2の接続接合部90を備える。第2の端部84は、バイアルまたは容器18に孔をあけるように構成されたスパイク部材92を備える。スパイク部材92は、流体流路94および通気流路96を画成する。流体流路94は、第2の接続接合部90を貫通して延在する通路98と流体的に連通している。通気流路96は、バルーン型またはベローズ型均圧化装置などの均圧化装置102と流体的に連通するが、好適な任意の均圧化装置102も利用され得る。均圧化装置102は、流体移送時にバイアル18内の圧力を維持し、バイアル18が加圧されるか、または真空にされるのを防ぐように構成される。バイアルアダプタ14の第2の端部84は、バイアルアダプタ14をバイアル18または他の容器に固定するためのバイアルアタッチメント104も備える。
【0020】
なおも図15〜19を参照すると、第2の接続接合部90は、係止表面108を画成する一般的に円筒形の形状の本体部106を備えている。第2の接続接合部90は、引き込み表面110をさらに備える。第2の接続接合部90の引き込み表面110は、第2の接続接合部90の本体部106から径方向外向きに突出し、本体部106と引き込み表面110との間の丸みのある変わり目を画成する。引き込み表面110は、第2の接続接合部90の端部の中間に位置決めされるが、他の好適な任意の位置も利用され得る。係止表面108は、引き込み表面110に相対的に陥凹しており、第1の接続接合部50の係止部材52を受け入れるように構成されたリング形状の陥凹部である。係止表面108は、90度の角度で画成されるけれども、他の好適な形状および角度も利用され得る。第2の接続接合部90は、第2の接続接合部90の通路98を閉鎖する膜112を受け入れる。第2の接続接合部90は、第1の接続接合部50の係止部材52が開放位置にあるときに注射器アダプタ12の内部空間28内に受け入れられ、係止部材52が閉鎖位置にあるときに注射器アダプタ12の内部空間28内での移動を制約されるように構成される。第2の接続接合部90の引き込み表面110は、第1の接続接合部50の係止部材52と係合して、係止部材52をさらに移動させ、片持ち梁バネ60をさらに付勢するように構成される。第2の接続接合部90が、第1の接続接合部50に完全に嵌合されたときに、第1の接続接合部50の係止部材52は、閉鎖位置にあり、係止表面108内に受け入れられて、第2の接続接合部90に相対的な縦方向および横方向の移動をしないように第1の接続接合部50を係止するが、それでもそれに相対的な回転移動を許容する、ように構成される。
【0021】
図20〜21を参照すると、患者コネクタ16は、第1の端部122および第2の端部124を有し、その中を貫通して延在する通路126を画成する本体部120を備えている。患者コネクタ16の第1の端部122は、バイアルアダプタ14の第2の接続接合部と同じである第2の接続接合部90も備える。したがって、患者コネクタ16の第2の接続接合部90は、上で説明されているバイアルアダプタ14の第2の接続接合部90の同じ特徴を備え、同じようにして第1の接続接合部50と連携する。患者コネクタ16の第2の端部124は、オスルアーコネクタなどのIVラインアタッチメント128を備えるけれども、他の好適な任意の接続装置も利用され得る。
【0022】
図22〜24を参照すると、第1の接続接合部50を第2の接続接合部90と嵌合させるプロセスが図示されている。第1の接続接合部50を備える注射器アダプタ12は、第2の接続接合部90を備えるバイアルアダプタ14に取り付けられているように示されているけれども、第1の接続接合部50と第2の接続接合部90との接続は、第1の接続接合部50および第2の接続接合部90を組み込んだデバイスに関係なく類似している。図22に示されているように、注射器アダプタ12の内部空間28は、バイアルアダプタ14の第2の接続接合部90と位置合わせされる。特に、注射器アダプタ12の縦軸は、バイアルアダプタ14の縦軸と位置合わせされ、第1の接続接合部50の係止部材52は、閉鎖位置にある。図23に示されているように、第1の接続接合部50および第2の接続接合部90は、互いの方へ移動され、第2の接続接合部90の一部は注射器アダプタ12の内部空間28内に受け入れられる。この位置で、第1の接続接合部50の係止部材52の引き込み表面68は、第2の接続接合部90と係合し、これは、係止部材52を閉鎖位置(図22に示されている)から開放位置(図23に示されている)に遷移させる。係止部材52が、閉鎖位置から開放位置に移動されるときに、片持ち梁バネ60は、注射器アダプタ12の本体部22のカム表面62と係合し、これは係止部材52を閉鎖位置に付勢して戻す付勢力を発生する。しかしながら、閉鎖位置に戻るそのような移動は、係止部材52と第2の接続接合部90の本体部106との係合によって防がれる。第1の接続接合部50の係止部材52が開放位置にある状態で、第2の接続接合部90は、注射器アダプタ12の内部空間28内でのその移動を継続し、注射器アダプタ12をバイアルアダプタ14に嵌合させるプロセスを継続し、第1の接続接合部50および第2の接続接合部90を係止係合部まで移動させることを許される。
【0023】
図23〜24を参照すると、第1の接続接合部50の係止部材52が、開放位置に移動された後、第2の接続接合部90の膜112は、注射器アダプタ12のシール装置38の第2の膜44と係合し、それによって、注射器アダプタ12とバイアルアダプタ14との間の流体移送時に液密シールを形成する。注射器アダプタ12の内部空間28内への第2の接続接合部90のさらなる挿入は、膜担体40を付勢部材46の付勢力に逆らって注射器アダプタ12の第1の端部24の方へ移動させ、カニューレ34に、注射器アダプタ12のシール装置38の第2の膜44および第2の接続接合部90の膜112に孔をあけさせ、それによって、バイアルアダプタ14を注射器アダプタ12と流体的に連通させる。第2の接続接合部90が、注射器アダプタ12の内部空間28内に所定の距離だけ挿入されたときに、第2の接続接合部90の引き込み表面110は、係止部材52と係合し、片持ち梁バネ60をさらに圧縮する。さらに移動する場合、第2の接続接合部90の係止表面108は、第1の接続接合部50の係止部材52と位置合わせされ、それにより、係止部材52は係止表面108内に受け入れられる。特に、係止部材52は、片持ち梁バネ60によって閉鎖位置の方へ付勢され、係止部材52が係止表面108に到達したときに、係止部材52は、係止部材52の一部が注射器アダプタ12の内部空間28内に位置決めされる閉鎖位置に自由に移動することができる。
【0024】
図24に示されている位置において、第1の接続接合部50は、第2の接続接合部90に関して完全に嵌合し、係止される。そのような位置では、第1の接続接合部50の係止部材52と第2の接続接合部90の係止表面108との間の係合によりバイアルアダプタ14から注射器アダプタ12が切断されることが防止される。第1の接続接合部50と第2の接続接合部90との間の係止係合は、互いに対して相対的な軸方向および横方向の移動を防ぐけれども、第1の接続接合部50および第2の接続接合部90は、互いに対して係止されたときに互いに対して相対的に自由に回転することができ、これはIVラインのもつれおよび/または他の偶発的な係脱または構成要素間の回転不足に付随するデバイスの故障を有利に防止する。特に、バイアルアダプタ14との接続で上で説明されているのと同じようにして注射器アダプタ12と嵌合し、係止される、患者コネクタ16は、典型的には、患者IVラインに取り付けられ、第2の接続接合部90に相対的な第1の接続接合部50の回転は、患者コネクタ16に接続されている患者IVラインのねじれを防ぐのを補助する。しかしながら、第1の接続接合部50および第2の接続接合部90は、望ましい場合にそのような相対的回転を防ぐためにキー付き表面装置を備え得る。
【0025】
再び図22〜24を参照すると、第1の接続接合部50を第2の接続接合部90から切断するために、第1の接続接合部50の係止部材52のボタン58は、使用者によって係合され、径方向内向きに押されて係止部材52を閉鎖位置から開放位置に遷移させる。次いで、第2の接続接合部90は、注射器アダプタ12の内部空間28から、第1の接続接合部50を第2の接続接合部90に接続するステップと逆の順序で取り外され得る。第2の接続接合部90が、最終的に、第1の接続接合部50から分離されるときに、係止部材52は、閉鎖位置に移動され、注射器アダプタ12のシール装置38の付勢部材46は、膜担体40をそれの元の位置に移動し、カニューレ34の遠位端36は第1の膜42と第2の膜44との間に位置決めされる。第1の接続接合部50および第2の接続接合部90は、各々引き込み表面68、110を備えるけれども、第1の接続接合部50および第2の接続接合部90のうちの一方のみが、引き込み表面68、110を備え得る。さらに、第1の接続接合部50および第2の接続接合部90のいずれも、引き込み表面68、110を備えられることはあり得ず、したがって第1の接続接合部50の係止部材52が手動で閉鎖位置から開放位置に移動され、第1の接続接合部50および第2の接続接合部90の嵌合を可能にすることを必要とする。より具体的には、第1の接続接合部50の係止部材52は、係止部材52のボタン58を係合し、係止部材52を径方向内向きに移動して係止部材52が開放位置に移動されるようにし、それによって、第1の接続接合部50と第2の接続接合部90との嵌合を可能にすることによって、閉鎖位置から開放位置に移動され得る。
【0026】
図25〜27を参照すると、流体の閉鎖移送のためのシステム140の第2の態様が提示されている。システム140は、図1および2に示されているシステム10に類似しており、類似の要素には類似の参照番号が使用されている。径方向外向きに延在し、第2の接続接合部90の本体部の端部の中間に位置決めされた引き込み表面を用意するのではなく、図25〜27に示されているシステム140の第2の接続接合部90は、膜に隣接する第2の接続接合部90の第1の端部のところで引き込み表面を備える。図25〜27に示されている態様の引き込み表面は、接続接合部90の頂部のところでわずかな曲がりとして具現化され、係止部材52を閉鎖位置から開放位置に移動するのを補助する。さらに、注射器アダプタ12の本体部22は、把持構造物を含まない。
【0027】
図示されていないけれども、図1〜27に示されているシステムは、接続接合部が完全に係止されるか、または分離されたときに使用者にフィードバックを与える1または複数の指示装置を備え得る。特に、注射器アダプタ12の本体部22は、部品が係止位置にあるときに互いを覆い、部品が初期または係止解除位置にあるときに互いを覆わない内側および外側チューブとともに開口部を備え得る。あるいは、デバイスが係止位置または係止解除位置にあるときに注射器アダプタ12の本体部の開口部内に見える1つの色変更構成要素のみが備えられ得る。第1の接続接合部50および第2の接続接合部90は、第1の接続接合部50と第2の接続接合部90との間の接続の状態の指示を与えるために1または複数の触覚的または聴覚的インジケータも備え得る。指示装置は、使用者がシステムを操作するのを補助するための位置合わせ線、点、記号、単語、または他の好適なしるしとしても具現化され得る。さらに、注射器アダプタ12のシール装置38は、膜担体40ならびに第1の膜42および第2の膜44を備えるけれども、流体を封止し、送達するために好適な他の任意の装置が備えられ得る。
【0028】
図28を参照すると、係止部材52の片持ち梁バネ60および注射器アダプタ12の本体部22のカム表面62の位置は反転させてもよい。例えば、図28に示されているように、注射器アダプタ12の本体部22は、第1の接続接合部50の係止部材52上に用意されたカム表面146と接触するように構成されている、片持ち梁バネなどの付勢部材144とともに形成される。係止部材52は、システム10と接続して上で説明されているのと同様にして動作する。
【0029】
図29を参照すると、第2の接続接合部90のさらなる態様が図示されている。図29に示されている第2の接続接合部90は、図1〜28に示され、上で説明されている第2の接続接合部の態様に類似している。しかしながら、図29の第2の接続接合部90は、膜112または第2の接続接合部90の第1の端部に隣接して位置決めされた引き込み表面156を備える。引き込み表面156は、係止部材52を閉鎖位置から開放位置に移動するのを補助する。図29に示されている第2の接続接合部90は、バイアルアダプタと接続されて備えられているけれども、この態様は、任意の医療デバイスおよび流体の閉鎖移送のためのシステムの任意の構成要素と接続して利用され得る。
【0030】
本開示は、例示的な設計を有するものとして説明されているが、本開示は、本開示の精神および範囲内でさらに修正され得る。したがって、本出願は、それの一般原理を使用する本開示の変更、使用、または適合を対象とすることを意図されている。さらに、本出願は、本開示が関係する、また付属の請求項の制限の範囲内にある、当技術分野の知られている、または慣例となっている技術の範囲内に入るような本開示からの逸脱も対象とすることを意図されている。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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図17
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図20
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図29