特許第6952705号(P6952705)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6952705耐ケーキング剤としての脱水されたNA2−IMP
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6952705
(24)【登録日】2021年9月30日
(45)【発行日】2021年10月20日
(54)【発明の名称】耐ケーキング剤としての脱水されたNA2−IMP
(51)【国際特許分類】
   A23L 27/23 20160101AFI20211011BHJP
   A23L 23/10 20160101ALI20211011BHJP
   A23L 23/00 20160101ALI20211011BHJP
   C07H 19/20 20060101ALN20211011BHJP
【FI】
   A23L27/23 Z
   A23L23/10
   A23L23/00
   !C07H19/20
【請求項の数】13
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2018-546579(P2018-546579)
(86)(22)【出願日】2017年3月16日
(65)【公表番号】特表2019-518710(P2019-518710A)
(43)【公表日】2019年7月4日
(86)【国際出願番号】EP2017056239
(87)【国際公開番号】WO2017174322
(87)【国際公開日】20171012
【審査請求日】2020年2月26日
(31)【優先権主張番号】16164489.3
(32)【優先日】2016年4月8日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】590002013
【氏名又は名称】ソシエテ・デ・プロデュイ・ネスレ・エス・アー
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100140453
【弁理士】
【氏名又は名称】戸津 洋介
(74)【代理人】
【識別番号】100200540
【弁理士】
【氏名又は名称】望月 祐子
(72)【発明者】
【氏名】フォーニー, ローラン
(72)【発明者】
【氏名】エヌジー, ユン ティン シェリリン
(72)【発明者】
【氏名】ウルマー, ヘルゲ
【審査官】 前田 憲彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−175669(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/000824(WO,A1)
【文献】 JAERI-Review,2004年,2004-016,P.36-37
【文献】 Chemical Communications,1968年,(16),P.995-996
【文献】 薬学雑誌,87(12),1967年,P.1436-1441
【文献】 REGISTRY(STN)[online],2009.11.10[検索日2020.11.20], CAS登録番号1192013-78-7
【文献】 REGISTRY(STN)[online],2008.12.04[検索日2020.11.20], CAS登録番号1079922-59-0
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 27/00
A23L 23/00
C07H 19/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
イノシン−5’−一リン酸二ナトリウム(Na−5’−IMP)×(n・HO)塩(式中、nは0.0〜6.5から選択される)を含む、耐ケーキング剤
【請求項2】
前記塩が結晶形態である、請求項1に記載の耐ケーキング剤
【請求項3】
イノシン−5’−一リン酸二ナトリウム(Na−5’−IMP)×(n・HO)(式中、nは0.0〜6.5から選択される)と、吸湿性材料と、を含む組成物。
【請求項4】
前記組成物が、前記イノシン−5’−一リン酸二ナトリウム塩を少なくとも2重量%含む、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記塩が結晶形態である、請求項3又は4に記載の組成物。
【請求項6】
前記組成物が、前記吸湿性材料を少なくとも10重量%含む、請求項3〜5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記吸湿性材料が、結晶性フルクトース、結晶性食卓塩、結晶性リンゴ酸、酵母エキス粉末、醤油粉末、脱水された植物粉末、脱水された肉粉末、脱水された植物加水分解物、脱水された肉加水分解物、又はそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項3〜6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記組成物が脱水されている、請求項3〜7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記組成物が食品グレードである、請求項3〜8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
前記組成物が、食品シーズニング、食品調味料、スープ濃縮物、又はソース濃縮物である、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
粉末、粒状製品、又は錠剤の形態である、請求項3〜10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
組成物のケーキングを低減するためのイノシン−5’−一リン酸二ナトリウム(Na−5’−IMP)×(n・HO)(式中、nは0.0〜6.5から選択される)の使用であって、前記組成物が、少なくとも1種類の吸湿性材料を含む、使用。
【請求項13】
少なくとも1種類の吸湿性材料を含む組成物のケーキングを低減するための方法であって、前記方法は、イノシン−5’−一リン酸二ナトリウム(Na−5’−IMP)×(n・HO)(ただし式中、nは0.0〜6.5から選択される)を前記組成物に添加する工程を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉末の分野、特に食品粉末に関するものであり、並びに脱水された又は部分的に脱水されたイノシン一リン酸二ナトリウム(dehydrated disodium inosine monophosphate)塩を含む組成物を使用することによりかかる粉末のケーキングを回避することに関する。
【0002】
粉末、特に食品粉末の混合、保管、取り扱い、及びパッケージング中に生じる、かかる粉末のケーキングは、工業界において一般的な問題である。ケーキングやダマ形成(lumping)は、食品粉末が、保管及び加工中に、流動せず又は自由流動性の粉末としてなめらかに流動し続けずに、ダマ(lumps)又は凝集塊を形成するものとして認識されている。乾燥又は脱水された粉末の経時的なケーキングは多くの場合望ましくなく、より低い製品品質、製品均一性、再水和性及び分散性の悪さ、感覚受容の質の低下、及び保存可能期間の短縮につながる。
【0003】
原料、中間体、又は最終製品のいずれであっても、多くの食品粉末は、明らかな操作性上の問題及び品質問題につながるケーキングに感受性である。例えば、ケーキングの生じた粉末は、例えば、パッケージングを目的とした自動化産業設備へと、又は消費者が投与する最終的なパッケージング材料から自動化産業設備へと適切に充填されない。このケーキングのリスクは、例えば、トマト粉末、生物加水分解物、又は玉ねぎ粉末などの感受性の高い非結晶質の調理用粉末、並びに一部の結晶質粉末に特に当てはまる。
【0004】
食品グレードの耐ケーキング剤の乾式混合は、食品粉末のケーキングを回避するに当たって一般的な選択肢である。従来技術で知られている耐ケーキング剤の例としては、小麦粉、天然デンプン、カルシウムの炭酸塩、リン酸塩(リン酸三カルシウム)、二酸化ケイ素、ケイ酸カルシウム等が挙げられる。しかし、これらの剤のすべての効果が非常に高いわけでも、及び/又は消費者により好意的に認識されているわけでもない。更に、例えば、小麦粉又はデンプンを使用する場合などに、最終的な食品製品の感覚刺激性及び/又は質感特性に影響する何らかのその他の官能性を更に有し得ることから、これらの既知の耐ケーキング剤のすべてがすべての食品粉末に適用可能なわけではない。
【0005】
例えば、特許第2000233922号は、食塩などの本質的に塩化ナトリウムからなる塩類、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、及び塩化カリウムから選択される、水分を約0.1重量%含有する含水量の低い1種以上の吸湿性無機粉末に、0.1〜5重量%の焼きミョウバンを混合することによる、吸湿性の無機粉末のケーキングの予防方法を記載している。焼きミョウバンは、空気等の大気中の水分を吸収し、吸湿性無機粉末を常に乾燥状態に維持する。
【0006】
米国特許第2238149号は、ケーキング傾向を実質的に低減させるのに十分な量の実質的に無水のクエン酸カルシウムを十分に混ぜ合わせることにより、吸湿性の粉状化合物がケーキングする傾向を低減させる、プロセスを記載する。クエン酸カルシウムは、結晶質クエン酸に少量の酸化カルシウムを添加することにより産生される。
【0007】
そのため、食品粉末に使用され得る化合物に対して、保管、混合、取り扱い及び/又は加工中のケーキングを低減又は更には防止する代替案及び/又は更に良好な解決策を見出すことは、当該技術分野及び食品産業において望ましい。
【0008】
[発明の概要]
本発明の目的は、従来技術を改良し、改善された解決策又は少なくとも一つの代替的な解決策を提供して、上記の少なくともいくつかの不都合を克服することである。
【0009】
特に、本発明の目的は、粉末中、特に吸湿性材料を含む食品粉末中での優れた耐ケーキング性を有しており、ヒトが消費するのに安全である新しい化合物を提供することである。
【0010】
本発明の更なる目的は、消費するのに安全であり、可溶化された形態の化合物がほとんどの消費者によく認識されかつ受け入れられる、新しい耐ケーキング化合物を当該技術分野に提供することである。
【0011】
本発明の目的は、独立請求項の主題によって達成される。従属請求項は、本発明の着想を更に展開するものである。
【0012】
したがって、本発明は、第一の態様ではイノシン−5’−一リン酸二ナトリウム(Na−5’−IMP)×(n・HO)塩を提供し、式中、nは0.0〜7.0から選択され、好ましくは0.5〜6.5から選択される。
【0013】
第二の態様では、本発明は、かかるイノシン−5’−一リン酸二ナトリウム塩を含む組成物に関する。
【0014】
本発明の第三の態様は、組成物のケーキングを低減するためのかかるイノシン−5’−一リン酸二ナトリウム塩の使用に関し、かかる組成物は、少なくとも1種類の吸湿性材料を含む。
【0015】
本発明の更なる態様は、組成物のケーキングを低減するための方法に関し、かかる組成物は、少なくとも1種類の吸湿性材料を含む。一つの方法は、脱水された又は部分的に脱水されたイノシン−5’−一リン酸二ナトリウム塩をかかる組成物に添加する工程を含む。別の方法は、最初に、イノシン−5’−一リン酸二ナトリウム塩をかかる組成物に添加した後、組成物を少なくとも70℃の温度で少なくとも3分間脱水させることを含む。
【0016】
イノシン−5’−一リン酸二ナトリウム塩と、少なくとも1種類の吸湿性材料とを含む組成物のケーキングを低減するためのなおも更なる方法は、相対湿度2%以下の雰囲気下でイノシン−5’−一リン酸二ナトリウム塩を脱水する又は部分的に脱水する工程を含む、方法に関する。
【0017】
本発明者らは、脱水されていない形態でうまみ(umami-ness)に関する風味増強剤として食品粉末に一般的に添加される原料であるイノシン一リン酸二ナトリウム(Na−5’−IMP)を含む組成物を脱水することにより、耐ケーキング剤を添加する必要がなくなり得ることを見出した。したがって、驚くべきことに、脱水された又は部分的に脱水されたイノシン一リン酸二ナトリウムを使用することで、慣例的に使用されるその他の耐ケーキング剤を代替し、食品粉末のケーキングを効果的に回避することができる。
【0018】
イノシン酸二ナトリウム(E361)としても知られるイノシン−5’一リン酸二ナトリウムは、通常はイノシン一リン酸分子毎に7.5個の水分子を有する水和された結晶状態で、すなわち、C1011PNa・7.5HO(分子量527.25)として市販されている。使用される量及び技術に応じて、水を放出する臨界温度超の温度に数分間から数時間加熱することで、イノシン−5’−一リン酸二ナトリウムを部分的に又は完全に脱水することができる。例えば、オーブン内での乾燥、タンブラー、又はダブルジャケットミキサー(double jacketed mixer)、減圧乾燥機、又は流動層乾燥システムなどのいくつかの技術をかかる脱水に使用できる。あるいは、イノシン−5’一リン酸二ナトリウムに、水分をあまり含有しない又は含有しない気体(例えば、窒素など)を、ある期間にわたって室温超の温度にてフラッシングすることで、部分的に又は完全に脱水することもできる。
【0019】
脱水されたイノシン−5’一リン酸二ナトリウム(Na−5’−IMP)を含む組成物が単純乾燥により部分的に脱水される場合、あるいはイノシン一リン酸二ナトリウムが予め脱水された又は部分的に脱水された形態で提供される場合、それらは、相対湿度が低い場合であってさえ環境から非常に迅速に水分を再吸収する傾向を有することになる。したがって、本発明者らは、イノシン一リン酸二ナトリウムを含む組成物を、脱水された形態でその他の食品粉末と組み合わせた場合に、その組成物がそれらの食品原料から非常に迅速に水分を吸収し、ケーキングを防ぐ傾向があることを見出した。本発明に記載のプロセスは、脱水された又は部分的に脱水されたNa−5’−IMP粉末を含む組成物と組み合わせる食品粉末が、保管温度未満のガラス転移温度を有する場合に、特に有効であった。
【0020】
注目すべきことに、この効果はその他の脱水された化合物では観察されなかった。例えば、グルタミン酸ナトリウム(MSG)一水和物(別の食品風味増強剤)は、脱水時に、それ自体がケーキングを生じ、容易に水分を再吸収しない。そのため、それが、耐ケーキング剤として使用しようにもその能力を有しない。逆に、無水デキストロースは相対湿度85%超の水分しか再吸収しない。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】トマト粉末のみ、又はトマト粉末と、完全に水和された及び部分的に脱水されたIMPとの組み合わせの、25℃(A)及び40℃(B)で2時間保管した後の自由流動能の測定。1)トマト粉末のみ;2)トマト粉末と、水和されたNa−IMPとの組み合わせ;並びに3)トマト粉末と、脱水されたNa−IMP。
図2】醤油粉末(SSP)のみ、又はSSPと、90℃で30秒間及び1〜15分間の乾燥で完全に水和された及び部分的に脱水されたNa−IMPとの組み合わせの、25℃(A)及び40℃(B)で2時間保管した後の自由流動能の測定。
図3】記載の比で、Na−IMPを含むフレーバーミックスと、市販の乾燥トマト粉末との、60℃で180分間保管した後の混合物。ケーキングを生じているかを示すため、試験管を上下反転させた。
【0022】
[発明の詳細な説明]
第一の態様では、本発明は、イノシン−5’−一リン酸二ナトリウム(Na−5’−IMP)×(n・HO)塩に関し、式中、nは0.0〜7.0から選択される。好ましくは、nは0.5〜6.5から選択される。nは、6.0よりも小さく、又は更には5.0よりも小さくなるようにも選択され得る。有利に、nは0.7を上回るように選択される。本明細書で以下の実施例の節に提供するエビデンスのとおり、対応する塩類の含水量がn=7.0以下である場合、部分的に脱水されたNa−5’−IMPの耐ケーキング性は、予め求めることができる。次に、nの含水量が6.5以下であるNa−5’−IMP塩類では、顕著な耐ケーキング結果が検出される。好ましくは、この塩の含水量は、n=6.0以下、より好ましくは5.5以下、更により好ましくは5.0、又は更には4.5以下である。nが4.0、3.5、又は3.0以下の場合には優れた結果が得られ得る。塩中に捕捉されたすべての水分子を除去しようとした場合、Na−5’−IMP塩を乾燥させるのには非常に時間がかかり、かつ費用がかかり得る。したがって、有利なことに、Na−5’−IMP塩は、n=0.5、0.7、0.8、1.2の量の、又はかかる量以上の水をなおも含有する。
【0023】
好ましい実施態様において、本発明の脱水された又は部分的に脱水されたイノシン−5’−一リン酸二ナトリウム塩は、結晶形態である。
【0024】
第二の態様において、本発明は、上記のとおり脱水された又は部分的に脱水されたイノシン−5’−一リン酸二ナトリウム塩を含む組成物に関する。
【0025】
好ましい実施形態において、本発明のかかる組成物は、脱水された又は部分的に脱水されたイノシン−5’−一リン酸二ナトリウム塩を少なくとも2重量%、好ましくは少なくとも2.5重量%、より好ましくは少なくとも5重量%含む。本発明の一実施形態において、組成物は、脱水された又は部分的に脱水されたイノシン−5’−一リン酸二ナトリウム塩を少なくとも7.5重量%、少なくとも10重量%、又は少なくとも20重量%含む。重量%は、組成物の乾燥原料又は乾燥した原料の重量%に関する。
【0026】
好ましくは、組成物が吸湿性材料を更に含む。一実施形態では、本発明の組成物は、吸湿性材料を少なくとも10重量%、好ましくは少なくとも15重量%、より好ましくは少なくとも20重量%含む。組成物は、吸湿性材料を少なくとも30重量%又は少なくとも40重量%含むことができる。組成物は、吸湿性材料も少なくとも50重量%、少なくとも60重量%、又は少なくとも70重量%含み得る。吸湿性材料は、結晶質及び/又は非晶質の材料から構成されてもよい。好ましくは、吸湿性材料が、結晶性フルクトース、結晶性食卓塩、結晶性リンゴ酸、酵母エキス粉末、醤油粉末、脱水された植物粉末、脱水された肉粉末、脱水された植物加水分解物、脱水された肉加水分解物、又はそれらの組み合わせからなる群から選択されることが好ましい。
【0027】
一実施形態において、本発明の組成物は脱水される。脱水された組成物とは、組成物が実質的に無水で乾燥していることを意味する。この組成物は、乾燥材料及び/又は、組み合わせる前又は組み合わせている間に乾燥された湿潤材料のいずれかから組み合わせられる。
【0028】
好ましい一実施形態において、本発明の組成物は食品グレードである。食品グレードは、かかる組成物が、ヒト及び/又は動物が消費するのに安全なものであることを意味する。
【0029】
本発明の組成物が、好ましくは、食品シーズニング(food seasoning)、食品調味料(food condiment)、スープ濃縮物、又はソース濃縮物である。好ましくは、これらの食品製品は、脱水された形態である。
【0030】
一実施形態において、本発明の組成物は、粉末、粒状製品、又は錠剤の形態である。特に、及び好ましくは、本発明の組成物は、粉末、粒状製品、又は錠剤の形態の食品調味料、スープ濃縮物又はソース濃縮物である。
【0031】
本発明の更なる態様は、組成物のケーキングを低減するための脱水された又は部分的に脱水されたイノシン−5’−一リン酸ナトリウム塩の使用に関し、かかる組成物は、少なくとも1種類の吸湿性材料を含む。
【0032】
更に、本発明は、少なくとも1種類の吸湿性材料を含む組成物のケーキングを低減するための方法にも関し、かかる方法は、上記の脱水された又は部分的に脱水されたイノシン−5’−一リン酸二ナトリウム塩をかかる組成物に添加する工程を含む。
【0033】
本発明は、少なくとも1種類の吸湿性材料を含む組成物のケーキングを低減するための方法にも関し、かかる方法は、最初に、イノシン−5’−一リン酸二ナトリウム塩をかかる組成物に添加した後、かかる組成物を少なくとも70℃の温度で少なくとも3分間脱水する工程を含む。組成物に最初に添加されるイノシン−5’−一リン酸二ナトリウム塩は、脱水された、部分的に脱水された、又は脱水されていない通常のNa−5’−IMP塩であってもよい。組成物は、好ましくは、少なくとも70℃、少なくとも80℃、又は少なくとも85℃の温度で、5分間、10分間、15分間、又は30分間以上脱水される。これにより、Na−5’−IMP塩の良好な脱水が得られ、ひいては、かかる塩の優れた耐ケーキング性が得られる。
【0034】
イノシン−5’−一リン酸二ナトリウム塩と、少なくとも1種類の吸湿性材料とを含む組成物のケーキングを低減するためのなおも更なる方法は、相対湿度2%以下の雰囲気下でイノシン−5’−一リン酸二ナトリウム塩を脱水する又は部分的に脱水する工程を含む。好ましくは、大気の相対湿度は1.5%未満であり、更により好ましくは大気の相対湿度はほぼ0%である。最も好ましくは、大気は乾燥窒素ガスである。この方法の脱水工程は、室温以上で行うことができる。好ましくは、脱水工程は、少なくとも1時間、好ましくは少なくとも2時間、より好ましくは少なくとも4時間にわたる。イノシン−5’−一リン酸二ナトリウム塩は、組成物に添加される前又は組成物に添加された後のいずれかで脱水又は部分脱水され得る。
【0035】
当業者であれば、本明細者に開示される本発明のすべての特徴を自由に組み合わせることができることを理解するであろう。特に、本発明の製品について記載された特徴を本発明の使用及び方法と組み合わせてもよく、逆もまた同様である。更に、本発明の異なる実施形態について記載された特徴を組み合わせてもよい。本発明の更なる利点及び特徴は、図面及び実施例から明らかである。
【0036】
実施例1:脱水された塩の耐ケーキング性についてのスクリーニング
市販の標準的な乾燥トマト粉末と混合する前に、脱水した又は部分的に脱水したときの耐ケーキング活性について、食品調理に一般的に使用される様々な食品グレードの塩類を試験した。実験条件は下記のとおりとした。
i)塩類を90℃のオーブン内に2時間置き、部分的又は完全に脱水した;
ii)次に、塩類を市販の乾燥トマト粉末と1:2の比で混合した。上記のとおり脱水された塩類を、同じ実験条件下で脱水されていない塩類と比較するために、同時に試験した。
iii)次に、混合物をすぐに試験管に入れ(試験管毎に4g)、密封し、25℃及び40℃でそれぞれ2時間保管した;
iv)次に、試験管を上下反転させてケーキングの発生を視覚的に評価した。
【0037】
粉末ミックスが自由流動性を保持しており、試験管を上下反転させた際に容易に落下した場合にはケーキングは生じていない。粉末混合物がもはや自由流動性なものではなく、試験管を上下反転させた際に、凝集したまま(すなわち、ケーキングしており)試験管の底部に残っている場合には、ケーキングが観察された。
【0038】
結果は以下のとおりに要約できる:
部分的に脱水させた後、CaCl・2HO及びNa−IMP・7.5HOは、試験したすべてのその他の塩類と比較して最良の耐ケーキング結果を示した。炭酸カルシウム、グルタミン酸ナトリウム(MSG)、MgCl・6HO、クエン酸、及びD−マルトースなどといった、試験したその他の塩類が脱水工程後に示した耐ケーキング活性は非常に弱く示したか、あるいは耐ケーキング活性を全く示さなかった。
【0039】
無水CaCl塩及びNa−IMP塩の更なる解析により、無水CaClは、相対湿度0〜約22%の範囲の再吸収のみ有効であり、その範囲でかかる塩類は液体化を開始することが明らかとなった。しかしながら、無水Na−IMP塩は、相対湿度0〜95%超で有効である。結果として、例えば、CaCl又はその他の既知の吸湿性塩類と比較したとき、天然の食品グレードの耐ケーキング剤としての塩の有用性について述べると、無水Na−IMP塩の吸水力は非常に広範囲であり、したがって、より有効でありかつ汎用なものである。例えば無水デキストロースは、相対湿度約85%超でのみ水分を再吸収することが知られている。
【0040】
実施例2:耐ケーキング剤としてのNa−IMP
Na−IMP・7.5HOを、90℃のオーブン内に2時間置き、部分的に脱水した(表1を参照されたい)。次にトマト粉末を、異なる形態のIMP、すなわち、陰性対照として完全に水和したもの(7.5HO)及び部分的に脱水したもの(0.78HO)と66:33の比で乾式混合した。乾式混合物(試験管毎に約4グラム)を25℃又は40℃で2時間保管した。試験管を上下反転させることにより、ケーキングの発生を視覚的に評価した(図1参照)。また、保管試験の前後の混合物の水分活性も測定した。25℃でのAw0.21(完全に水和されたIMPと混合)からAw0.08(部分的に脱水されたIMP)まで、並びに40℃で保管したときの、Aw0.21(完全に水和されたIMPと混合)からAw0.09(部分的に脱水されたIMP)までの水分活性の低下から見て取れるとおり、IMPを部分的に脱水すると、IMPがトマト粉末から水分を引き付けることが観察された。結果として、粉末は自由流動性を保ち、試験管内を落下し得る。
【0041】
【表1】
【0042】
実施例3:NaClの耐ケーキング性について試験
無水NaClを50:50の比でトマト粉末と乾式混合した。乾式混合物を次に試験管中で50℃にて保管した。この試験管を上下反転させてケーキングの発生を視覚的に評価した。トマト粉末/NaCl混合物は試験管内を自由に落下しなかったことから、NaClなどの無水結晶はケーキングを防止しないことが観察された(この結果は非掲載)。
【0043】
実施例4:リボヌクレオチドの混合物の耐ケーキング性について試験
リボヌクレオチド(50%IMP及び50%GMP)を90℃のオーブン内に3時間置き、部分的に脱水した。その後、リンゴ酸結晶を、異なる形態の完全に水和された及び部分的に脱水されたリボヌクレオチドと50:50の比で乾式混合した。次に前述の実施例のように、乾式混合物を試験管中で25℃又は40℃にて2時間保管した。この試験管を上下反転させてケーキングの発生を視覚的に評価した。25℃でのAw0.665(完全に水和されたリボヌクレオチドと混合)からAw0.059(部分的に脱水されたリボヌクレオチド)まで、並びに40℃で保管したときの、Aw0.453(完全に水和されたリボヌクレオチドと混合)からAw0.01(部分的に脱水されたリボヌクレオチド)までの水分活性の低下から見て取れるとおり、この結果は、リボヌクレオチドを部分的に脱水すると、リボヌクレオチドが試験管内の環境(environment)から水分を引き付けることを示す。結果として、脱水されたリボヌクレオチドを加えた粉末及びリンゴ酸を加えた粉末は、自由流動性を保持し、試験管内を落下可能であったのに対し、水和された通常のリボヌクレオチドを加えた粉末及びリンゴ酸を加えた粉末は、試験管の底部でケーキングを生じ、もはや自由流動性でなかった。
【0044】
実施例5:リボヌクレオチドの混合物の耐ケーキング性について試験
リボヌクレオチド(50%IMP及び50%GMP)を90℃のオーブン内に3時間置き、部分的に脱水した。その後、非晶質醤油粉末(SSP)を、異なる形態の完全に水和された及び部分的に脱水されたリボヌクレオチド類と50:50の比で乾式混合した。次に前述の実施例で示されたように、乾式混合物を試験管中で25℃又は40℃にて保管した。この試験管を上下反転させてケーキングの発生を視覚的に評価した。25℃でのAw0.265(完全に水和されたリボヌクレオチドと混合)からAw0.03(部分的に脱水されたリボヌクレオチド)まで、並びに40℃で保管したときの、Aw0.235(完全に水和されたリボヌクレオチドと混合)からAw0.03(部分的に脱水されたリボヌクレオチド)までの水分活性の低下から見て取れるとおり、この結果は、リボヌクレオチドを部分的に脱水すると、リボヌクレオチドがSSPから水分を引き付けることを示す。結果として、脱水されたリボヌクレオチドを加えた粉末は、自由流動性を保持し、試験管内を落下可能であったのに対し、水和された通常のリボヌクレオチドを加えた粉末は、試験管の底部でケーキングを生じ、もはや自由流動性でなかった。
【0045】
実施例6:耐ケーキング剤としてのNa−IMP
Na−IMP・7.5HOを、表2に示すとおりの異なる時間にわたり90℃のオーブン内に置き、部分的に脱水した。次に醤油粉末(SSP)を、異なる形態のIMP、すなわち、以下の表中に示すとおり、陰性対照として完全に水和した(7.5HO)形態及び部分的に脱水した形態と50:50の比で乾式混合した。次に前述の実施例で示されたように、乾式混合物を試験管中で25℃又は40℃にて2時間保管した。この試験管を上下反転させてケーキングの発生を視覚的に評価した。水分活性の低下から見て取れるとおり、IMPを部分的に脱水すると、IMPがSSPから水分を引き付けることが見られる。この実験結果は表3に要約し、かつ図2に提示する。
【0046】
【表2】
【0047】
【表3】

対照:脱水されていないNa−IMP・7.5HOを添加したサンプル
【0048】
実施例7:Na−IMPを含むフレーバーミックス(flavor mix)
天然の発酵、再構成、及び濃縮により得られた、天然のNa−IMPを含むドライフレーバーミックスを、耐ケーキング性について試験した。フレーバーミックスには、約22.6重量%Na−IMP・7.5HO、41重量%NaCl、及び残部として主に単糖類、ペプチド類、及びアミノ酸などの非晶質香味物質を含めた。フレーバーミックスを、減圧乾燥機にて、85℃で6時間脱水した。乾燥直後、脱水されたフレーバーミックスと市販の乾燥トマト粉末とを混合した混合物を調製した。ここでかかる混合物には、それぞれ0、2、5、10、20、40、60、及び100重量%のフレーバーミックスと、残部にトマト粉末とを含ませた。次に、約4グラムの各混合物をガラス管に充填し、空気を通さないように密閉した。次にガラス管を60℃のオーブン内に180分間保管した後、そっと移動させ、ガラス管を上下反転させることにより混合物のケーキングについて手作業で評価した。結果を図3に示す。
【0049】
これらの結果から、脱水されたフレーバーミックスの存在は、10重量%以上のフレーバーミックスの量でトマト粉末のケーキングを顕著に防止するのに十分であると結論付けられる。10重量%のフレーバーミックスは、脱水されたNa−IMPを約2.26重量%含む。結果として、2.26重量%以上の、脱水されたNa−IMPは、吸湿性材料(すなわち乾燥トマト粉末)を少なくとも90重量%含む全組成物のケーキングを予防するのに十分であった。
図1A
図1B
図2
図3