(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6952731
(24)【登録日】2021年9月30日
(45)【発行日】2021年10月20日
(54)【発明の名称】建設機械
(51)【国際特許分類】
E02F 9/16 20060101AFI20211011BHJP
B60H 1/00 20060101ALI20211011BHJP
B62D 21/18 20060101ALI20211011BHJP
【FI】
E02F9/16 C
B60H1/00 102R
B62D21/18 E
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2019-37178(P2019-37178)
(22)【出願日】2019年3月1日
(65)【公開番号】特開2020-139356(P2020-139356A)
(43)【公開日】2020年9月3日
【審査請求日】2021年1月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006781
【氏名又は名称】ヤンマーパワーテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】特許業務法人 佐野特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石川 喜久
【審査官】
湯本 照基
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−245893(JP,A)
【文献】
特開2010−280280(JP,A)
【文献】
特開2009−255920(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2003/0234559(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/16
B60H 1/00
B62D 21/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
操縦部を覆うキャビンと、前記キャビンが搭載されるフレームと、前記キャビンの内部を空調する空調装置と、を備え、
前記フレームは、前記キャビンが設置されるキャビン設置部を有し、
前記キャビン設置部は、互いに連通する第1開口部と第2開口部とを有する箱型構造体を含み、前記空調装置の空調空気の排出口が前記第1開口部又は前記第2開口部に連通している、建設機械。
【請求項2】
前記空調装置は、前記キャビン内に配置され、
前記第1開口部と前記第2開口部は、前記キャビン側に開口しており、
前記キャビンの床部は、前記第1開口部と対向する第3開口部と、前記第2開口部に対向する第4開口部と、を備える、請求項1に記載の建設機械。
【請求項3】
前記キャビンは、前記空調装置の空調空気の排出口から延設され、前記第3開口部を通って前記第1開口部に接続される第1ダクトと、前記第2開口部から延設され、前記第4開口部を通って空調吹き出し口に至る第2ダクトと、を備える、請求項2に記載の建設機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設機械に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、車両用空調装置において、空調ケーシングに接続されるダクトの長さを短くしながら、ダクトの接続作業性を向上させる技術として、空調ケーシングを車両前後方向と略平行となるように、運転室内に設置されたシートの側面側に搭載する技術が記載されている。この構成によれば、空調ケーシング自体がダクトの一部を兼ねることとなり、空調ケーシングに接続されるダクトの長さを従来に比べて短くすることができる。
【0003】
下記特許文献2には、空調装置のダクトの配設レイアウトの自由度を大きくする技術として、熱交換器が組み込まれる空調装置の本体ユニットを、運転室の床下に配設する一方、該本体ユニットから延出するダクトを、運転室の床下を這わせてから運転室内に引き出す技術が記載されている。
【0004】
しかしながら、特許文献1では、空調ケーシングに接続されるダクトが、シートの側面側に配索されるため、この側面側の窓を大きくした運転室においては、車両側部下側の視界を確保する妨げになるという問題がある。また、特許文献2では、空調装置の本体ユニットを床下に配置することから、油圧ホースや制御弁などを配置するためのスペースを床下に確保しにくいという問題に加え、本体ユニットのメンテナンスがしづらいという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−267033号公報
【特許文献2】特開2003−326949号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、運転室内に配置する空調装置用のダクトを短くすることができ、かつ運転室の床下に油圧ホースや制御弁などを配置するスペースを確保できる建設機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の建設機械は、操縦部を覆うキャビンと、前記キャビンが搭載されるフレームと、前記キャビンの内部を空調する空調装置と、を備え、
前記フレームは、前記キャビンが設置されるキャビン設置部を有し、
前記キャビン設置部は、互いに連通する第1開口部と第2開口部とを有する箱型構造体を含み、前記空調装置の空調空気の排出口が前記第1開口部又は前記第2開口部に連通している。
【0008】
フレームのキャビン設置部が、互いに連通する2つの第1開口部と第2開口部とを有する箱型構造体を含むため、フレームを空調用ダクトとして活用でき、キャビン内に配置する空調用ダクトを短くすることができる。また、空調用ダクトがキャビンの床下に配置されないため、キャビンの床下に油圧ホースや制御弁などを配置するスペースを確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施形態に係る油圧ショベルの一例を示す斜視図
【
図2】本実施形態に係る油圧ショベルの一例を示す斜視図
【
図6】別実施形態に係る油圧ショベルの一部を示す斜視図
【
図7】別実施形態に係る油圧ショベルの一部を示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0011】
[建設機械の概要]
建設機械の一例としての油圧ショベル1の概略構造について説明する。
図1に示すように、油圧ショベル1は、下部走行体2と、上部旋回体3と、作業機4とを備える。
【0012】
下部走行体2は、不図示のエンジンからの動力を受けて駆動し、油圧ショベル1を走行させたり旋回させたりする。下部走行体2は、前後左右に4つの車輪21を備える。また、下部走行体2は、排土板としてのブレード22を備える。
【0013】
上部旋回体3は、その中央部で上下方向に延びる軸線回りに旋回動作可能に構成されている。上部旋回体3には、エンジン、旋回モータ、操縦部5などが配設されている。操縦部5には、操縦席51や各種操作レバー52などが装備されている。
【0014】
作業機4は、エンジンからの動力を受けて駆動し、操縦部5での操作に応じて土砂の掘削作業などを行う。作業機4は、ブーム41、アーム42、及びバケット43を備え、これらを独立して駆動することによって土砂等の掘削作業を可能としている。ブーム41は、基端部が上部旋回体3の前部に支持されて、伸縮自在に可動するブームシリンダ41aによって回動される。また、アーム42は、基端部がブーム41の先端部に支持されて、伸縮自在に可動するアームシリンダ42aによって回動される。そして、バケット43は、基端部がアーム42の先端部に支持されて、伸縮自在に可動するバケットシリンダ43aによって回動される。ブームシリンダ41a、アームシリンダ42a、及びバケットシリンダ43aは、油圧シリンダにより構成される。
【0015】
上部旋回体3においては、下部走行体2の上部に左右旋回可能に設けた旋回フレーム7上に、左前側に操縦部5を覆うキャビン6が配設され、キャビン6の右側方に作業機4とタンク部31が配置されている。タンク部31には、エンジン用の燃料タンクや油圧シリンダ用のオイルタンクが収容されている。また、旋回フレーム7上の後部にはエンジンが搭載され、エンジンの後方及び左右両側方は、ボンネット32によって覆われている。
【0016】
旋回フレーム7は、板状部材71と複数の棒状部材72で構成されている。板状部材71には、ブーム41の基端部が取り付けられるブーム取付部71aが設けられている。また、板状部材71には、スイベルジョイントを挿入するための開口部や旋回モータを取り付けるための開口部が形成される。さらに、板状部材71には、排水用、メンテナンス用のその他複数の開口部が形成される。複数の棒状部材72は、板状部材71の上部や周囲に配置され、旋回フレーム7の構造体および補強材として機能する。
【0017】
旋回フレーム7は、キャビン6が配置されるキャビン設置部7aを備えている。キャビン設置部7aは、平面視で矩形状をしており、旋回フレーム7の左前側に設けられている。キャビン設置部7aの四隅には、マウント取付部730が設けられている。マウント取付部730には、キャビン6を支持するマウント66が取り付けられる。
【0018】
キャビン設置部7aは、左右方向に延びる前フレーム72a及び後フレーム72bと、前後方向に延びる左フレーム72c及び右フレーム72dと、を備えている。前フレーム72a、後フレーム72b、左フレーム72c、右フレーム72dの上部に、キャビン6の底面の外周部が配置される。また、キャビン設置部7aは、前フレーム72aと後フレーム72bとの間に位置する補強用の中間フレーム72eを備えている。
【0019】
右フレーム72dは、角形の鋼管で構成され、前後端が閉塞された箱型となっている。右フレーム72dは、前フレーム72aと中間フレーム72eの間に配置され、前フレーム72aと中間フレーム72eにより前後端が閉塞されている。右フレーム72dの上面には、矩形状の第1開口部731と第2開口部732が形成されている。すなわち、第1開口部731と第2開口部732は、キャビン6側に開口している。第1開口部731と第2開口部732は、右フレーム72d内の中空部によって互いに連通している。これにより、後述のように右フレーム72dを空調用ダクトとして利用することができる。なお、右フレーム72dを空調用ダクトとして利用する場合、内部に断熱材を入れるなどして断熱構造とするのが好ましい。
【0020】
キャビン6は、左側の左側面部61と右側の右側面部(
図1では示されていない)と、左側面部61と右側面部の前端間に設けられた正面部62と、左側面部61と右側面部の後端間に設けられた背面部(
図1では示されていない)と、左側面部61と右側面部の上端間に設けられたルーフ63と、左側面部61と右側面部の下端間に設けられたフロアプレート64と、を備えている。左側面部61、右側面部、正面部62、及び背面部には、ドアや窓ガラスが設けられている。
【0021】
フロアプレート64は、キャビン6の床部を構成する。フロアプレート64の中央部には、操縦席51がシートマウントを介して取り付けられる。また、操縦席51の後方のフロアプレート64上には、キャビン6の内部を空調する空調装置8の本体ユニット80が配置されている。本体ユニット80は、コンプレッサ等を含む。
【0022】
フロアプレート64の右端部には、略U字状に切り欠いた第3開口部641及び第4開口部642が形成されている。第3開口部641は、操縦席51の右側方に設けられ、第4開口部642は、操縦席51の右前方に設けられている。第3開口部641は、キャビン設置部7aの第1開口部731と対向する位置に形成され、第4開口部642は、キャビン設置部7aの第2開口部732に対向する位置に形成されている。
【0023】
キャビン6は、操縦席51の右側方に前後方向に沿って配置された第1ダクト81を備えている。第1ダクト81の基端部81aは、本体ユニット80の空調空気の排出口(図示していない)に接続されている。第1ダクト81は、前方へ向かって延びた後、第3開口部641を通って下方へ向かって延びている。第1ダクト81の先端部81bは、キャビン設置部7aの第1開口部731に接続される。
【0024】
キャビン6内の右前部には、乗員の足下から空気を吹き出す空調吹き出し口65(グリル)が設けられている。また、キャビン6は、キャビン設置部7aの第2開口部732から上方へ向かって延びる第2ダクト82を備えている。第2ダクト82は、第4開口部642を通って上方へ向かって延び、空調吹き出し口65に接続されている。
【0025】
以上のように、本実施形態の油圧ショベル1は、操縦部5を覆うキャビン6と、キャビン6が搭載される旋回フレーム7と、キャビン6の内部を空調する空調装置8と、を備え、旋回フレーム7は、キャビン6が設置されるキャビン設置部7aを有し、キャビン設置部7aは、互いに連通する第1開口部731と第2開口部732とを有する箱型の右フレーム72dを含み、空調装置8の空調空気の排出口が第1開口部731に連通している。
【0026】
旋回フレーム7のキャビン設置部7aが、互いに連通する2つの第1開口部731と第2開口部732を有する箱型の右フレーム72dを含むため、旋回フレーム7を空調用ダクトとして活用でき、キャビン6内に配置する空調用ダクトを短くすることができる。これにより、キャビン6内にその他の機器を設置するスペースを確保することができる。また、空調用ダクトがキャビン6の床下に配置されないため、キャビン6の床下に油圧ホースや制御弁などを配置するスペースを確保できる。
【0027】
また、本実施形態では、キャビン設置部7aの右前部の右フレーム72dを空調用ダクトとして利用することで、キャビン6内の前方下側に空調用ダクトを配置する必要がないため、キャビン6の前方下側の視界を確保することができる。
【0028】
本実施形態では、空調装置8は、キャビン6内に配置され、第1開口部731と第2開口部732は、キャビン6側に開口しており、キャビン6のフロアプレート64は、第1開口部731と対向する第3開口部641と、第2開口部732に対向する第4開口部642と、を備える。
【0029】
また、本実施形態では、キャビン6は、空調装置8の空調空気の排出口から延設され、第3開口部641を通って第1開口部731に接続される第1ダクト81と、第2開口部732から延設され、第4開口部642を通って空調吹き出し口65に至る第2ダクト82と、を備える。
【0030】
右フレーム72dの2つの開口部(第1開口部731及び第2開口部732)とキャビン6のフロアプレート64の2つの開口部(第3開口部641及び第4開口部642)が対向していることから、空調用ダクト(第1ダクト81及び第2ダクト82)を最短距離で設置することができる。
【0031】
[他の実施形態]
(1)前述の実施形態では、右フレーム72dを前フレーム72aと中間フレーム72eの間に配置しているが、
図6に示すように、右フレーム72dを前フレーム72aと後フレーム72bの間に配置し、第1開口部731を後フレーム72bの近傍に形成するようにしてもよい。これにより、第1ダクト81をさらに短くすることができる。
【0032】
(2)前述の実施形態では、空調装置8の本体ユニット80をキャビン6内に配置しているが、本体ユニット80をキャビン6の外側、例えばフロアプレート64の下方に配置するようにしてもよい。この場合、第1開口部731は、
図7に示す右フレーム72dの左側面や、右フレーム72dの下面などに適宜形成される。
【0033】
(3)前述の実施形態では、建設機械の一例として、ホイール式の油圧ショベル1を示しているが、建設機械としては、油圧ショベル1に限定されず、キャビンや空調装置を備えるホイルローダ等の他の車両でもよい。
【0034】
本発明は、上述した実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変更が可能である。
【符号の説明】
【0035】
1 油圧ショベル
2 下部走行体
21 車輪
22 ブレード
3 上部旋回体
31 タンク部
32 ボンネット
4 作業機
41 ブーム
41a ブームシリンダ
42 アーム
42a アームシリンダ
43 バケット
43a バケットシリンダ
5 操縦部
51 操縦席
52 操作レバー
6 キャビン
61 左側面部
62 正面部
63 ルーフ
64 フロアプレート
641 第3開口部
642 第4開口部
65 空調吹き出し口
66 マウント
7 旋回フレーム
71 板状部材
71a ブーム取付部
72 棒状部材
72a 前フレーム
72b 後フレーム
72c 左フレーム
72d 右フレーム
72e 中間フレーム
7a キャビン設置部
730 マウント取付部
731 第1開口部
732 第2開口部
8 空調装置
80 本体ユニット
81 第1ダクト
81a 第1ダクトの基端部
81b 第1ダクトの先端部
82 第2ダクト