(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6952790
(24)【登録日】2021年9月30日
(45)【発行日】2021年10月20日
(54)【発明の名称】特にDCシステムにおける過電圧保護のための切断および切り替え装置
(51)【国際特許分類】
H02H 7/00 20060101AFI20211011BHJP
【FI】
H02H7/00 A
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2019-555610(P2019-555610)
(86)(22)【出願日】2018年3月19日
(65)【公表番号】特表2020-517222(P2020-517222A)
(43)【公表日】2020年6月11日
(86)【国際出願番号】EP2018056784
(87)【国際公開番号】WO2018188897
(87)【国際公開日】20181018
【審査請求日】2020年4月17日
(31)【優先権主張番号】102017107871.1
(32)【優先日】2017年4月11日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】507059923
【氏名又は名称】デーン エスエー プルス ツェオー カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リー、ホンチュン
(72)【発明者】
【氏名】シュイ、ニエンション
(72)【発明者】
【氏名】チェン、ウェイエ
【審査官】
高野 誠治
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2009/056587(WO,A1)
【文献】
特開2014−155340(JP,A)
【文献】
特開昭50−041039(JP,A)
【文献】
中国実用新案第2794007(CN,Y)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02H 7/00
H02H 7/10 − 7/20
H02H 9/00 − 9/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのアレスタ素子を有し、熱遮断点(1)をさらに有しており、前記熱遮断点(1)は、機械的に付勢された可動導体要素(2)を備え、前記可動導体要素(2)は、遮断の事象において第1の位置から第2の位置へと移動し、前記第2の位置に達したときにヒューズ(4)への電気的な切り替わりが生じ、前記熱遮断点(1)は、前記可動導体要素(2)と固定接点要素とによって形成され、前記可動導体要素(2)は、熱によって解除される手段によって前記固定接点要素に取り付けられている、特にDCシステムにおける過電圧保護のための切断および切り替え装置であって、
相互接続経路に関する前記アレスタ素子(5)の完全な電気的遮断が、前記可動導体要素(2)が前記第2の位置を過ぎて第3の位置に達したときに初めてもたらされ、
前記ヒューズ(4)は、前記第2の位置において前記アレスタ素子(5)に直列に配置され、前記可動導体要素(2)は、前記第2の位置に関してワイパまたは摺動コンタクトとして設計され、前記第2の位置は、バイパス端点(3)によって実現されており、
前記ヒューズ(4)の第1極が、前記アレスタ素子(5)の端子(6)に接続され、
前記ヒューズ(4)の第2極が、前記バイパス端点(3)に接続され、あるいは前記バイパス端点(3)の一体の一部分であり、
前記可動導体要素(2)は、前記第2の位置に達したときに前記バイパス端点(3)に直接接触し、したがって前記ヒューズ(4)の前記第2極に一時的に接触する、ことを特徴とする切断および切り替え装置。
【請求項2】
前記アレスタ素子は、バリスタ(5)である、ことを特徴とする請求項1に記載の切断および切り替え装置。
【請求項3】
前記熱遮断点(1)が開かれたときに形成される電気アーク(7)が、遅くとも前記可動導体要素(2)が前記第2の位置に達するときに消える、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の切断および切り替え装置。
【請求項4】
少なくとも1つのアレスタ素子を有し、熱遮断点(1)をさらに有しており、前記熱遮断点(1)は、機械的に付勢された可動導体要素(2)を備え、前記可動導体要素(2)は、遮断の事象において第1の位置から第2の位置へと移動し、前記第2の位置に達したときにヒューズ(4)への電気的な切り替わりが生じ、前記熱遮断点(1)は、前記可動導体要素(2)と固定接点要素とによって形成され、前記可動導体要素(2)は、熱によって解除される手段によって前記固定接点要素に取り付けられている、特にDCシステムにおける過電圧保護のための切断および切り替え装置であって、
相互接続経路に関する前記アレスタ素子(5)の完全な電気的遮断が、前記可動導体要素(2)が前記第2の位置を過ぎて第3の位置に達したときに初めてもたらされ、
前記ヒューズ(4)は、前記第2の位置において前記アレスタ素子(5)に直列に配置され、前記可動導体要素(2)は、前記第2の位置に関してワイパまたは摺動コンタクトとして設計され、前記第2の位置は、バイパス端点(3)によって実現されており、
前記ヒューズ(4)の第1極が、前記アレスタ素子(5)の端子(6)に接続され、
前記ヒューズ(4)の第2極が、前記バイパス端点(3)に接続され、あるいは前記バイパス端点(3)の一体の一部分であり、
前記可動導体要素(2)は、前記第2の位置に達したときに前記バイパス端点(3)に接触しないが、前記ヒューズ(4)の応答を生じさせる電気アーク(8)を前記可動導体要素(2)とバイパス端点(3)の間に生じさせる、ことを特徴とする切断および切り替え装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つのアレスタ素子と、アレスタ素子の電気相互接続経路に組み込まれた熱遮断点とを備えており、熱遮断点は、遮断の事象において第1の位置から第2の位置へと移動する可動な機械的に付勢された導体要素を備え、第2の位置に達したときに安全装置への電気的な切り替わりが生じ、熱遮断点は、可動導体要素と固定接点要素とによって形成され、可動導体要素は、熱によって解除される手段によって固定接点要素に取り付けられている、特にDCシステムにおける過電圧保護のための請求項1に記載の切断および切り替え装置に関する。
【背景技術】
【0002】
欧州特許出願公開第0860927号から、バリスタを介して電流を監視し、所定のしきい値を超えたときに電気機械接点を介してバイパスの短絡をバリスタ経路へと切り替える電気機械装置がすでに知られている。
【0003】
独国特許第3734214号が、スイッチング素子が切り替え接点の役割を果たす熱によって作動する切断装置を開示している。切り替え接点は、はんだ付け点を介して既知のやり方でバリスタ回路を閉じる。スイッチング素子がトリガされると、内部または外部の故障表示あるいは単に対応する外部接続を介した短絡のいずれかとして相互接続されることができるさらなる接点が閉じられる。
【0004】
独国特許出願公開第4124321号が、バリスタの故障後に、接続された冗長バリスタも損傷した場合について、追加の安全装置の可能性を示す。この点で、冗長バリスタは、横方向の電流経路のスイッチを開き、あるいは縦方向の電流経路のスイッチを開くことによって、電圧源から切り離される。この場合、保護対象のシステムの幹線からの切断および過電圧保護が、同時に実行される。
【0005】
特に太陽光発電プラントにおいて、そこに存在する動作電流は、供給源の特性ゆえに、短絡電流にほぼ等しい。バリスタの加熱時に、切断装置による古典的な切り離しは、このような直流電圧の用途においては好都合でなく、何故ならば、太陽光発電プラントのシステム電圧は最大1000ボルトであり、1000ボルトの直流電圧回路の遮断は、かなりの建設および/または機器の費用によらねば実現できないからである。
【0006】
独国特許出願公開第102007051854号によれば、導電性要素をスイッチングデバイスとして形成することもできる。短絡の事象においてスイッチングデバイスによって形成されるバイパスは、不断の電流を通すことができるようには構成されていない。故障電流が一定時間にわたって流れた後に、バイパスはオフになる。この点で、導電性要素を安全装置として形成することができる。熱切断装置の開放時に生じる電気アークは、接点要素によって誘導され、遅くとも短絡接点に到達するときに自然に消滅するように意図されている。短絡接点に到達するとすぐに、アークは消え、電流が例えば安全装置を含むローカルバイパスを介して流れる。
【0007】
しかしながら、切り替えの際に、切断装置の可動部がすでに過電圧アレスタを離れているが、例えば安全装置などのスイッチング装置にまだ接触していない不明確な過渡領域が存在する。この過渡領域において、対応する装置の動作にとって不都合となり得る電気アークが生じている。
【0008】
国際公開第2014/131564号が、過電圧保護のための一般的な切断および切り替え装置を示している。
【0009】
この切断および切り替え装置は、対応する導体要素の機械的移動の結果としての切断および切り替えプロセスにおいて、望ましくない電気アークが発生しないことを保証し、したがって、そのような装置の動作の安全性が向上する。相互接続経路に関するそれぞれのアレスタ素子の完全な電気的遮断は、可動導体要素が、そこでは切り替え位置と称されている第2の位置に到達したときにのみ生じる。この措置により、導体要素の移動経路において望ましくない電気アークが発生しないことが保証される。
【0010】
しかしながら、すでに知られている切断および切り替え装置は、必ずしもすべての状況下で充分に機能しないことが示されている。特に、経年劣化により、例えば金属酸化物バリスタなどの採用されたアレスタ素子が、低速な徐々に進行する加熱を被り、熱遮断点が最終的に解放される場合に、問題が生じる。
【0011】
そのような場合、明確な遮断機能が提供されない。
【発明の概要】
【0012】
本発明の課題の解決は、請求項1に記載の新規な切断および切り替え装置によって実行され、従属請求項は、少なくとも適切な構成およびさらなる発展を含む。
【0013】
本発明による切断および切り替え装置は、ミリアンペア範囲の寄生電流の場合において、アンペアまたはアンペア以上の範囲の寄生電流の場合とまったく同様の動作の安全性を提供する。
【0014】
この場合に、安全装置への切り替えプロセスは、熱アレスタ素子としてのバリスタがもはや完全には動作できず、例えば熱遮断点の解放につながる経年劣化による損傷を被る場合に、安全装置にスイッチオフ機能を渡すように機能する。
【0015】
可動導体要素が第3の位置に到達した後に、電源からの完全な切り離しおよび安全(フェイルセーフ)状態が存在する。
【0016】
本発明は、特にDCシステムにおいて好都合に適用可能であるが、基本的には、交流用途、すなわちACシステムにも適する。
【0017】
したがって、本発明は、少なくとも1つのアレスタ素子、特にバリスタを備え、さらに熱遮断点を備える過電圧保護のための切断および切り替え装置に基づく。熱遮断点は、アレスタ素子の電気相互接続経路に組み込まれ、熱遮断点は、可動導体要素を備える。機械的な付勢のもとで、この可動導体要素は、定められた距離をカバーすることができる。
【0018】
特に、機械的な付勢は、遮断の事象において、可動導体要素が最初に第1の位置から第2の位置へと移動する程度まで機能し、第2の位置に到達すると、安全装置への電気的な切り替わりが生じる。
【0019】
この場合に、熱遮断点は、可動導体要素と固定接点要素とによって形成され、可動導体要素は、例えばはんだなどの熱によって解除される手段によって固定接点要素に取り付けられる。
【0020】
本発明によれば、相互接続経路に関するアレスタ素子の完全な電気的遮断は、可動導体要素が第2の位置を超えて第3の位置に到達したときにのみ生じ、安全装置はアレスタ素子と直列に配置され、可動導体要素は、第2の位置に関してワイパまたは摺動コンタクトとして設計され、第2の位置はバイパス端点によって生成される。
【0021】
一実施態様において、可動導体部分は、第2の位置への到達時にバイパス端点に直接接触し、したがって安全装置の対応する極に一時的に接触する。
【0022】
本発明の一実施形態においては、可動導体部分が、第2の位置への到達時にバイパス端点に接触しない。
【0023】
むしろ、電気アークが形成され、これが安全装置の応答を生じさせる。ここでの接触は、発生した電気アークによって実質的に間接的に実現される。
【0024】
熱遮断点が開かれたときに最初に形成される電気アークは、遅くとも可動導体要素が第2の位置に達するときに消える。
【0025】
本発明のさらなる発展においては、第1の安全装置極が、アレスタ素子の端子に接続され、第2の安全装置極が、バイパス端点に接続され、あるいはこの端点の一体の一部分である。
【0026】
導体要素が第1の位置から第2の位置へと移動するとき、生じた一次電気アークは、実質的に放電要素を構成する。第2の位置に達すると、安全装置を充分な電流で応答させることができる。しかしながら、この場合に、直接的な電気接触を、第2の実質的に二次の電気アークによる間接的な接触によって行うことも可能である。
【0027】
第3の位置に達すると、所望の完全な遮断、すなわち電源からの切り離しが存在する。
【0028】
好ましくは、可動導体要素は、枢動運動を実行することができ、この枢動運動において第1の位置から第2の位置を経由して第3の位置に到達することができる。当然ながら、代案として、直線運動も可能である。
【0029】
アレスタ素子に直列に配置された安全装置は、熱遮断点によって形成されたオープナに実質的に並列に位置する。
【0030】
本発明を、典型的な実施形態に基づき、図面を参照して、以下でさらに詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1a-1d】安全装置が直列に接続された金属酸化物バリスタと、熱遮断点とを備える本発明による切断および切り替え装置の第1の実施形態を示しており、可動導体要素が、遮断の事象において、第1の位置(
図1a)から移動プロセス(
図1b)を通じて第2の位置(
図1c)に到り、その際にバイパス端点に直接接触し、その後に
図1dによる完全な切り離し位置に到達する。
【
図2a-2d】バイパス端点に直接接触することがなく、むしろ二次電気アーク(
図2cによる参照番号8)による間接的な接触が生じる実施形態を示しており、他の点では一連の動作は
図1に基づいて説明した一連の動作と同様である。
【
図3a-3c】本発明の実施形態を、第2の位置(
図3b)を経由して右側へと完全な切り離し(
図3c)に到る移動プロセスによるミリアンペア範囲の電流におけるアークの発生しない切り離し動作における主要な図として示している。
【
図4】熱アレスタ素子と可動導体要素とを有する単相過電圧保護装置のブロック図を示しており、
図4には遮断点が閉じている初期状態だけが示されているが、過電圧の場合に
図1〜
図3による機能と同様の機能が実現可能である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
図1〜
図4は、第一に、少なくとも1つのアレスタ素子5と熱遮断点1との直列接続を共通に有しており、熱遮断点1は、可動導体要素2を備えている。
【0033】
例えば金属酸化物バリスタであるアレスタ素子に、安全装置4が並列に接続されている。この点で、第1の安全装置極が、アレスタ素子5の端子6に接続され、第2の安全装置極が、バイパス端点3に接続され、あるいはこの端点3の一体の一部分である。
【0034】
図4は、アレスタ素子5の他に、L−Nアレスタ素子9をさらに備える構成を示している。アレスタ素子5、9のグループが、終点11においてガス放電アレスタ10につながり、ガス放電アレスタ10の他方の極は、PEにある。
【0035】
図1a〜
図1dによる描写において、熱遮断点1が応答し、可動導体要素2が動き始めると、一次電気アーク7が発生する。接点3へと向かい、すなわちバイパス端点へと到る可動導体要素2の実質的なワイピング動作が続くと、最終的にバイパス端点3に接触し、電流が安全装置4を通って流れ、安全装置4が溶融する。
【0036】
図1dによる位置に達すると、電源から完全に切り離される。
【0037】
直接接触することがない
図2a〜
図2dによる第2の位置に関連する接点の構成においては、可動導体要素2がアプローチするとき、第1の位置から第2の位置(
図2aから
図2b)への変化時に、やはり一次電気アーク7が生じる。固定のバイパス端点3において、二次電気アーク8が生じ、これが安全装置4の応答を引き起こすことができる。
【0038】
導体要素2の移動が進むにつれて、
図2dによる位置に到達し、したがって電源からの完全な切り離しが達成される。
【0039】
同様のプロセスが
図3a〜
図3cに従って生じるが、ここでは電流がミリアンペアの範囲でしか流れないため、電気アークは描かれていない。