特許第6952801号(P6952801)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6952801優れた外観を備えるポリプロピレン組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6952801
(24)【登録日】2021年9月30日
(45)【発行日】2021年10月20日
(54)【発明の名称】優れた外観を備えるポリプロピレン組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 23/12 20060101AFI20211011BHJP
   C08L 23/08 20060101ALI20211011BHJP
   C08F 8/00 20060101ALI20211011BHJP
【FI】
   C08L23/12
   C08L23/08
   C08F8/00
【請求項の数】16
【全頁数】35
(21)【出願番号】特願2019-566765(P2019-566765)
(86)(22)【出願日】2018年6月21日
(65)【公表番号】特表2020-525559(P2020-525559A)
(43)【公表日】2020年8月27日
(86)【国際出願番号】EP2018066547
(87)【国際公開番号】WO2019002078
(87)【国際公開日】20190103
【審査請求日】2020年1月27日
(31)【優先権主張番号】17177842.6
(32)【優先日】2017年6月26日
(33)【優先権主張国】EP
(31)【優先権主張番号】18159755.0
(32)【優先日】2018年3月2日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】511114678
【氏名又は名称】ボレアリス エージー
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(72)【発明者】
【氏名】ルンマーシュトルファー トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ミレヴァ ダニエラ
(72)【発明者】
【氏名】グレシュテンベルガー ゲオルク
【審査官】 松元 洋
(56)【参考文献】
【文献】 特表2016−501972(JP,A)
【文献】 特表2004−520455(JP,A)
【文献】 特開2011−195706(JP,A)
【文献】 特開2012−214733(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00 − 101/16
C08F 8/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
変性ポリプロピレン組成物(mPP)を含む異相ポリプロピレン組成物(HC)であって、前記変性ポリプロピレン組成物(mPP)は過酸化物(PO)及び架橋剤(CA)を用いたポリプロピレン組成物(PP)の化学的な修飾により得られ、前記ポリプロピレン組成物(PP)は、
i)プロピレンポリマー(PP1)と、
ii)エチレン及び少なくとも1種のC4〜C20のα−オレフィンのコポリマーであるプラストマー(PL)と、
を含み、
前記異相ポリプロピレン組成物(HC)は0.6〜2.6の範囲の比XCS/XHUを有し、XCSは前記異相ポリプロピレン組成物(HC)の冷キシレン可溶部含有量[単位:重量%]であり、XHUは前記異相ポリプロピレン組成物(HC)の熱キシレン不溶部含有量[単位:重量%]であり、
前記変性ポリプロピレン組成物(mPP)中の前記プロピレンポリマー(PP1)及び前記プラストマー(PL)の重量比[w(PP1)/w(PL)]は1.0超〜3.0であり、式中w(PP1)は、前記変性ポリプロピレン組成物(mPP)内の前記プロピレンポリマー(PP1)の全量(単位:重量%)であり、w(PL)は、前記変性ポリプロピレン組成物(mPP)内の前記プラストマー(PL)の全量(単位:重量%)である異相ポリプロピレン組成物(HC)。
【請求項2】
11.0〜25.0重量%の範囲の熱キシレン不溶部含有量(XHU)を有する請求項1に記載の異相ポリプロピレン組成物(HC)。
【請求項3】
29.0重量%以下の、ISO 16152に従って求められる冷キシレン可溶部含有量(XCS)を有する請求項1又は請求項2に記載の異相ポリプロピレン組成物(HC)。
【請求項4】
少なくとも10.0g/10分の、ISO 1133に従って求められるメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg)を有する請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の異相ポリプロピレン組成物(HC)。
【請求項5】
前記変性ポリプロピレン組成物(mPP)中の前記プロピレンポリマー(PP1)及び前記プラストマー(PL)の重量比[w(PP1)/w(PL)]が1.1〜1.8である請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の異相ポリプロピレン組成物(HC)。
【請求項6】
前記ポリプロピレン組成物(PP)が、前記ポリプロピレン組成物(PP)の全量に対して、
i)少なくとも10.0重量%の前記プロピレンポリマー(PP1)、及び
ii)少なくとも5.0重量%の前記プラストマー(PL)、
を含む請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の異相ポリプロピレン組成物(HC)。
【請求項7】
前記プロピレンポリマー(PP1)が、
i)プロピレンホモポリマー(H−PP1)である、かつ/又は
ii)35.0g/10分以下の、ISO 1133に従って求められるメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg)を有する
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の異相ポリプロピレン組成物(HC)。
【請求項8】
前記プロピレンポリマー(PP1)が、
i)5.0〜20.0g/10分の範囲の、ISO 1133に従って求められるメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg)を有する第1ポリプロピレン画分(PP1a)、及び
ii)30.0〜65.0g/10分の範囲の、ISO 1133に従って求められるメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg)を有する第2ポリプロピレン画分(PP1b)
を有する請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の異相ポリプロピレン組成物(HC)。
【請求項9】
前記プラストマー(PL)がエチレン及び1−ブテン又は1−オクテンのコポリマーである請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の異相ポリプロピレン組成物(HC)。
【請求項10】
前記プラストマー(PL)が、
(a)30g/10分未満の、ISO 1133に従って求められるメルトフローレートMFR(190℃、2.16kg)、
(b)前記プラストマー(PL)の総重量に対して、8.0〜35.0モル%の範囲のコモノマー含有量、及び
(c)0.880g/cm未満の密度
を有する請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の異相ポリプロピレン組成物(HC)。
【請求項11】
前記過酸化物(PO)が、アルキルペルオキシド又はアリールペルオキシドである請求項1から請求項10のいずれか一項に記載の異相ポリプロピレン組成物(HC)。
【請求項12】
前記架橋剤が式(I)の化合物であり、
【化1】
式中、M2+は二価の金属イオンであり、Rは水素又はメチルである請求項1から請求項11のいずれか一項に記載の異相ポリプロピレン組成物(HC)。
【請求項13】
請求項1から請求項12のいずれか一項に記載の異相ポリプロピレン組成物(HC)を含む物
【請求項14】
ポリプロピレン組成物(PP)の虎皮模様を低減するための、過酸化物(PO)及び架橋剤(CA)を含む組成物の使用であって、請求項1から請求項12のいずれか一項に記載の異相ポリプロピレン組成物(HC)が得られる使用。
【請求項15】
10以下のMSE値の場合に前記虎皮模様の低減が成し遂げられる請求項14に記載の使用。
ここでMSE値とは、試験片を一方の側から投光照明で照らし、該光の上方向に反射した部分を2枚のミラーを介してCCDセンサーへと屈折させることで作り出されたグレー値画像を列ごとに解析し、記録された該グレー値の偏差から算出した平均二乗誤差の値をいう。
【請求項16】
請求項1から請求項12のいずれか一項に記載の異相組成物(HC)の調製方法であって、前記プロピレンポリマー(PP1)、前記プラストマー(PL)及び任意にプロピレンホモポリマー(H−PP)を含む前記ポリプロピレン組成物(PP)が押出機の中で、前記過酸化物(PO)及び前記架橋剤(CA)の存在下で押し出される方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変性ポリプロピレン組成物(mPP)を含む異相ポリプロピレン組成物(HC)、上記異相ポリプロピレン組成物(HC)の調製方法、及び上記異相ポリプロピレン組成物(HC)を含む物品に関する。本発明はさらに、ポリプロピレン組成物(PP)の虎皮模様(虎縞模様)を低減するための、過酸化物(PO)及び架橋剤(CA)を含む組成物の使用に関する。
【0002】
射出成形された部品の良好な外観は、多くの、見えてかつ塗装されない自動車用途にとって基本的な必要条件である。これに関して、とりわけフローマーク形成は、多くの場合にそのような部品の視覚的な印象を損ねるため、加工中にフローマークが現れることを回避するために多くの試みがなされてきた。
【0003】
自動車外装用配合物におけるフローマーク形成を低減するための1つのアプローチは溶融混錬の間の過酸化物の使用に基づき、非常に厳しい加工条件下であっても優れた外観をもたらす。しかしながら、この向上した外観は、引張特性及び衝撃強度の低下を伴うことが多い。とりわけ衝撃強度の低下は欠点である。というのも、良好な衝撃性能は多くの要求が厳しい自動車用途にとって必須だからである。
【0004】
従って、衝撃性能が高いレベルに留まったままで、フローマークが現れることなく射出成形部品の調製に適用できるポリプロピレン組成物に対するニーズが当該技術分野にある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
それゆえ、射出成形後のフローマークの量の減少及び高衝撃強度を示すポリプロピレン組成物を提供することが本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の知見は、過酸化物及び架橋剤を用いて処理された異相系が射出成形後の優れた外観及び衝撃性能を特徴とするということである。
【0007】
従って、本発明は、変性ポリプロピレン組成物(mPP)を含む異相ポリプロピレン組成物(HC)であって、上記変性ポリプロピレン組成物(mPP)は過酸化物(PO)及び架橋剤(CA)を用いたポリプロピレン組成物(PP)の処理により得られ、上記ポリプロピレン組成物(PP)は、
i)プロピレンポリマー(PP1)と、
ii)エチレン及び少なくとも1種のC4〜C20のα−オレフィンのコポリマーであるプラストマー(PL)と、
を含み、
上記異相ポリプロピレン組成物(HC)は0.6〜2.6の範囲の比XCS/XHUを有し、XCSは当該異相ポリプロピレン組成物(HC)の冷キシレン可溶部含有量[単位:重量%]であり、XHUは当該異相ポリプロピレン組成物(HC)の熱キシレン不溶部含有量[単位:重量%]であり、
上記変性ポリプロピレン組成物(mPP)中の上記プロピレンポリマー(PP1)及び上記プラストマー(PL)の重量比[w(PP1)/w(PL)]は1.0超であり、式中w(PP1)は、上記変性ポリプロピレン組成物(mPP)内の上記プロピレンポリマー(PP1)の全量(単位:重量%)であり、w(PL)は、上記変性ポリプロピレン組成物(mPP)内の上記プラストマー(PL)の全量(単位:重量%)である異相ポリプロピレン組成物(HC)に関する。
【0008】
本発明の1つの実施形態によれば、当該異相ポリプロピレン組成物(HC)は、11.0〜25.0重量%の範囲の熱キシレン不溶部含有量(XHU)を有する。
【0009】
本発明の別の実施形態によれば、当該異相ポリプロピレン組成物(HC)は、29.0重量%以下の、ISO 16152に従って求められる冷キシレン可溶部含有量(XCS)を有する。
【0010】
当該異相ポリプロピレン組成物(HC)が、少なくとも10.0g/10分の、ISO 1133に従って求められるメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg)を有することがとりわけ好ましい。
【0011】
本発明の1つの実施形態によれば、上記変性ポリプロピレン組成物(mPP)中のプロピレンポリマー(PP1)及びプラストマー(PL)の重量比[w(PP1)/w(PL)]は1.0超、より好ましくは1.0超〜3.0、さらにより好ましくは1.1〜1.8、なおより好ましくは1.1〜1.4、例えば1.1〜1.2である。
【0012】
本発明の1つの実施形態によれば、上記ポリプロピレン組成物(PP)は、そのポリプロピレン組成物(PP)の全量に対して、
i)少なくとも10.0重量%、より好ましくは20.0〜80.0重量%、さらにより好ましくは30.0〜70.0重量%、なおより好ましくは45.0〜65重量%、例えば55.0〜62.0重量%の上記プロピレンポリマー(PP1)、及び
ii)少なくとも5.0重量%、より好ましくは10.0〜70.0重量%、さらにより好ましくは20.0〜60.0重量%、なおより好ましくは35.0〜55.0重量%、例えば38.0〜42.0重量%の上記プラストマー(PL)
を含む。
【0013】
本発明の別の実施形態によれば、上記プロピレンポリマー(PP1)は、
i)プロピレンホモポリマー(H−PP1)である、かつ/又は
ii)35.0g/10分以下の、ISO 1133に従って求められるメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg)を有する。
【0014】
上記プロピレンポリマー(PP1)が、
i)5.0〜20.0g/10分の範囲の、ISO 1133に従って求められるメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg)を有する第1ポリプロピレン画分(PP1a)、及び
ii)30.0〜65.0g/10分の範囲の、ISO 1133に従って求められるメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg)を有する第2ポリプロピレン画分(PP1b)
を有することがとりわけ好ましい。
【0015】
本発明のさらに別の実施形態によれば、上記プラストマー(PL)はエチレン及び1−ブテン又は1−オクテンのコポリマーである。
【0016】
上記プラストマー(PL)が、
(a)30g/10分未満の、ISO 1133に従って求められるメルトフローレートMFR(190℃、2.16kg)、
(b)上記プラストマー(PL)の総重量に対して、8.0〜35.0モル%の範囲のコモノマー含有量、及び
(c)0.880g/cm未満の密度
を有することがとりわけ好ましい。
【0017】
本発明の1つの実施形態によれば、上記過酸化物(PO)は、アルキルペルオキシド又はアリールペルオキシド、好ましくは2,5−ジメチル−2,5−ジ−(tert−ブチルペルオキシ)ヘキサンである。
【0018】
本発明の別の実施形態によれば、上記架橋剤は式(I)の化合物であり、
【化1】
式中、M2+は二価の金属イオンであり、Rは水素又はメチルである。
【0019】
本発明はさらに、上記の異相ポリプロピレン組成物(HC)を含む物品、好ましくは成形品に関する。
【0020】
本発明は、ポリプロピレン組成物(PP)の虎皮模様を低減するための、過酸化物(PO)及び架橋剤(CA)を含む組成物の使用であって、上記の異相ポリプロピレン組成物(HC)が得られる使用にも関する。
【0021】
10以下のMSE値の場合に上記虎皮模様の低減が成し遂げられることが好ましい。
【0022】
本発明は、上記の異相組成物(HC)の調製方法であって、上記プロピレンポリマー(PP1)、上記プラストマー(PL)及び任意に上記プロピレンホモポリマー(H−PP)を含む上記ポリプロピレン組成物(PP)が押出機の中で、上記過酸化物(PO)及び上記架橋剤(CA)の存在下で押し出される方法にも関する。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下では、本発明がより詳細に記載される。
【0024】
異相ポリプロピレン組成物(HC)
本発明に係る異相ポリプロピレン組成物(HC)は、変性ポリプロピレン組成物(mPP)を含む。上記変性ポリプロピレン組成物(mPP)は、ポリプロピレン組成物(PP)を過酸化物(PO)及び架橋剤(CA)で処理することにより得られる。上記ポリプロピレン組成物(PP)は、プロピレンポリマー(PP1)及びプラストマー(PL)を含む。
【0025】
本発明の異相ポリプロピレン組成物(HC)は、上記変性ポリプロピレン組成物(mPP)を含む必要がある。加えて、当該組成物は、α核形成剤(NU)、無機充填剤(F)及び添加剤(AD)を含んでもよい。従って、変性ポリプロピレン組成物(mPP)が、当該異相ポリプロピレン組成物(HC)の少なくとも80重量%、より好ましくは少なくとも85重量%、さらにより好ましくは少なくとも90重量%、例えば少なくとも95重量%を構成することが好ましい。1つの特定の実施形態では、当該異相ポリプロピレン組成物(HC)は、上記変性ポリプロピレン組成物(mPP)及び上記任意のα核形成剤(NU)、無機充填剤(F)及び/又は添加剤(AD)からなる。
【0026】
上記のように、変性ポリプロピレン組成物(mPP)は、過酸化物(PO)及び架橋剤(CA)を用いたポリプロピレン組成物(PP)の処理により得られる。好ましい過酸化物(PO)及び架橋剤(CA)は、このあと「変性ポリプロピレン組成物(mPP)」の節で列挙される。
【0027】
過酸化物(PO)は、好ましくはマスターバッチの形態で導入される。つまり、過酸化物(PO)は、ポリマー担体材料と予め混合される。このポリマー担体材料は異相ポリプロピレン組成物(HC)の特性の向上には寄与しない。好ましくは、このポリマー担体材料はポリエチレン又はポリプロピレンであり、後者が好ましい。通常、このポリマー担体材料はプロピレンポリマー(PP1)及びプラストマー(PL)とは異なる。好ましくは、このポリマー担体材料は、プロピレンポリマー(PP1)よりも低いメルトフローレートを有するプロピレンホモポリマーである。上記ポリマー担体材料の量は、異相ポリプロピレン組成物(HC)の総重量に対して、好ましくは1〜15重量%の範囲、より好ましくは2〜12重量%の範囲にある。
【0028】
このように、異相ポリプロピレン組成物(HC)は、好ましくは、
(a)異相ポリプロピレン組成物(HC)の総重量に対して85〜99重量%、より好ましくは90〜98重量%、さらにより好ましくは95〜97重量%、例えば48〜61重量%の変性ポリプロピレン組成物(mPP)、及び
(b)異相ポリプロピレン組成物(HC)の総重量に対して1〜15重量%、より好ましくは2〜12重量%の範囲、さらにより好ましくは3〜10重量%の範囲、例えば5〜9重量%の範囲の過酸化物(PO)のポリマー担体材料
を含む。
【0029】
架橋剤(CA)も、好ましくはマスターバッチの形態で導入される。つまり、この架橋剤は、ポリマー担体材料と予め混合される。このポリマー担体材料は異相ポリプロピレン組成物(HC)の特性の向上には寄与しない。好ましくは、このポリマー担体材料はポリエチレン又はポリプロピレンであり、後者が好ましい。通常、このポリマー担体材料はプロピレンポリマー(PP1)及びプラストマー(PL)とは異なる。好ましくは、このポリマー担体材料は、プロピレンポリマー(PP1)よりも低いメルトフローレートを有するプロピレンホモポリマーである。上記ポリマー担体材料の量は、異相ポリプロピレン組成物(HC)の総重量に対して、好ましくは1〜15重量%の範囲、より好ましくは2〜12重量%の範囲にある。
【0030】
従って、異相ポリプロピレン組成物(HC)は、好ましくは、
(a)異相ポリプロピレン組成物(HC)の総重量に対して85〜99重量%、より好ましくは90〜98重量%、さらにより好ましくは95〜97重量%、例えば48〜61重量%の変性ポリプロピレン組成物(mPP)、
(b)異相ポリプロピレン組成物(HC)の総重量に対して1〜15重量%、より好ましくは2〜12重量%の範囲、さらにより好ましくは3〜10重量%の範囲、例えば5〜9重量%の範囲の過酸化物(PO)のポリマー担体材料、及び
(c)異相ポリプロピレン組成物(HC)の総重量に対して1〜15重量%、より好ましくは2〜12重量%の範囲、さらにより好ましくは3〜10重量%の範囲、例えば5〜9重量%の範囲の架橋剤(CA)のポリマー担体材料
を含む。
【0031】
上で触れたように、異相ポリプロピレン組成物(HC)は、加えてα核形成剤(NU)、無機充填剤(F)及び/又は添加剤(AD)を含んでもよい。本発明によれば、α核形成剤(NU)も充填剤(F)も添加剤(AD)ではない。さらに、本発明によれば、充填剤(F)はα核形成剤(NU)ではない。従って、異相ポリプロピレン組成物(HC)が、異相ポリプロピレン組成物(HC)の総重量に対して5.0重量%以下、好ましくは1.0×10−5〜4.0重量%、より好ましくは2.0×10−5〜2.0重量%のα核形成剤(NU)、異相ポリプロピレン組成物(HC)の総重量に対して30.0重量%以下、より好ましくは20.0重量%以下、さらにより好ましくは15重量%以下の無機充填剤(F)、及び/又は異相ポリプロピレン組成物(HC)の総重量に対して8.0重量%以下、好ましくは0.1〜6.0重量%、より好ましくは0.5〜4.0重量%の添加剤(AD)を含有することが好ましい。α核形成剤(NU)、無機充填剤(F)及び添加剤(AD)は以降でより詳細に記載される。
【0032】
従って、異相ポリプロピレン組成物(HC)は、好ましくは、
(a)異相ポリプロピレン組成物(HC)の総重量に対して85〜99重量%、より好ましくは90〜98重量%、さらにより好ましくは95〜97重量%、例えば48〜61重量%の変性ポリプロピレン組成物(mPP)、
(b)異相ポリプロピレン組成物(HC)の総重量に対して1〜15重量%、より好ましくは2〜12重量%の範囲、さらにより好ましくは3〜10重量%の範囲、例えば5〜9重量%の範囲の過酸化物(PO)のポリマー担体材料、
(c)異相ポリプロピレン組成物(HC)の総重量に対して1〜15重量%、より好ましくは2〜12重量%の範囲、さらにより好ましくは3〜10重量%の範囲、例えば5〜9重量%の範囲の架橋剤(CA)のポリマー担体材料、
(d)異相ポリプロピレン組成物(HC)の総重量に対して5.0重量%以下、好ましくは1.0×10−5〜4.0重量%、より好ましくは2.0×10−5〜2.0重量%のα核形成剤(NU)、
(e)異相ポリプロピレン組成物(HC)の総重量に対して30.0重量%以下、より好ましくは20.0重量%以下、さらにより好ましくは15重量%以下の無機充填剤(F)、及び
(f)異相ポリプロピレン組成物(HC)の総重量に対して8.0重量%以下、好ましくは0.1〜6.0重量%、より好ましくは0.5〜4.0重量%の添加剤(AD)
を含み、より好ましくはこれらからなる。
【0033】
本発明に係る異相ポリプロピレン組成物(HC)が、少なくとも10.0g/10分、より好ましくは10.0〜30.0g/10分の範囲、さらにより好ましくは10.0〜20g/10分の範囲、例えば10.0〜15.0g/10分の範囲の、ISO 1133に従って求められるメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg)を有することが好ましい。
【0034】
異相ポリプロピレン組成物(HC)は0.6〜2.6の範囲、より好ましくは0.8〜1.8の範囲、さらにより好ましくは0.9〜1.7の範囲、例えば1.0〜1.5の範囲の比XCS/XHUを有し、XCSは異相ポリプロピレン組成物(HC)の冷キシレン可溶部含有量[単位:重量%]であり、XHUは異相ポリプロピレン組成物(HC)の熱キシレン不溶部含有量[単位:重量%]である。
【0035】
好ましくは、異相ポリプロピレン組成物(HC)は、11.0〜25.0重量%の範囲、より好ましくは12.0〜22.0重量%の範囲、さらにより好ましくは15.0〜20.0重量%の範囲、例えば17.0〜20.0重量%の範囲の熱キシレン不溶部含有量(XHU)を有する。
【0036】
これまでの段落に加えて、又はこれまでの段落とは別に、当該異相ポリプロピレン組成物(HC)が29.0重量%以下、より好ましくは15.0〜28.0重量%の範囲、さらにより好ましくは18.0〜25重量%の範囲、例えば19.0〜23.0重量%の範囲の、ISO 16152に従って求められる冷キシレン可溶部含有量(XCS)を有することが好ましい。
【0037】
異相ポリプロピレン組成物(HC)が少なくとも1.63、より好ましくは少なくとも1.70、さらにより好ましくは少なくとも1.85、例えば1.85〜2.5の範囲の比IV(XCS)/IV(XCI)を有することがとりわけ好ましく、IV(XCS)はキシレン可溶部XCSのDIN ISO 1628/1(デカリン中135℃)に従って求めた固有粘度IVであり、IV(XCI)はキシレン不溶部XCIのDIN ISO 1628/1(デカリン中135℃)に従って求めた固有粘度IVである。
【0038】
さらに、異相ポリプロピレン組成物(HC)の冷キシレン可溶部XCSのDIN ISO 1628/1(デカリン中135℃)に従って求めた固有粘度IVが、2.0dl/g未満、より好ましくは1.7dl/g未満、さらにより好ましくは1.5dl/g未満であることが好ましい。
【0039】
加えて、異相ポリプロピレン組成物(HC)のキシレン不溶部XCIのDIN ISO 1628/1(デカリン中135℃)に従って求めた固有粘度IVが、1.5dl/g未満、より好ましくは1.0dl/g未満、さらにより好ましくは0.8dl/g未満であることが好ましい。
【0040】
好ましくは、本発明の異相ポリプロピレン組成物(HC)は、かなり高い衝撃強度を特徴とする。従って、異相ポリプロピレン組成物(HC)が、少なくとも20.0kJ/m、より好ましくは少なくとも30.0kJ/m、さらにより好ましくは少なくとも50.0kJ/m、例えば50.0〜100.0kJ/mの範囲の、ISO 179/1eAに従って23℃で求められるノッチ付きシャルピー衝撃強さを有することが好ましい。
【0041】
これまでの段落に加えて、又はこれまでの段落とは別に、異相ポリプロピレン組成物(HC)が500MPa超、より好ましくは500〜1000MPaの範囲、さらにより好ましくは600〜800MPaの範囲の、ISO 178に従って求められる曲げ弾性率を有することが好ましい。
【0042】
変性ポリプロピレン組成物(mPP)
上記のように、異相ポリプロピレン組成物(HC)は、過酸化物(PO)及び架橋剤(CA)を用いたポリプロピレン組成物(PP)の処理により得られる変性ポリプロピレン組成物(mPP)を含む。
【0043】
上記変性ポリプロピレン組成物(mPP)は、プロピレンポリマー(PP1)及びプラストマー(PL)を含む必要がある。好ましい実施形態では、プロピレンポリマー(PP1)及びプラストマー(PL)は合わせて、変性ポリプロピレン組成物(mPP)の少なくとも80重量%、より好ましくは少なくとも85重量%、さらにより好ましくは少なくとも90重量%、例えば少なくとも95重量%を構成する。1つの特定の実施形態では、変性ポリプロピレン組成物(mPP)は、プロピレンポリマー(PP1)及びプラストマー(PL)からなる。
【0044】
過酸化物(PO)のポリマー担体材料、架橋剤(CA)のポリマー担体材料、α核形成剤(NU)及び添加剤(AD)は、変性ポリプロピレン組成物(mPP)の一部とは考えないが、最終の異相ポリプロピレン組成物(HC)の一部であると考えられる。
【0045】
変性ポリプロピレン組成物(mPP)中のプロピレンポリマー(PP1)及びプラストマー(PL)の重量比[w(PP1)/w(PL)]は1.0超、より好ましくは1.0超〜3.0、さらにより好ましくは1.1〜1.8、なおより好ましくは1.1〜1.4、例えば1.1〜1.2であり、式中w(PP1)は、変性ポリプロピレン組成物(mPP)内のプロピレンポリマー(PP1)の全量(単位:重量%)であり、w(PL)は、変性ポリプロピレン組成物(mPP)内のプラストマー(PL)の全量(単位:重量%)である。
【0046】
これまでの段落に加えて、又はこれまでの段落とは別に、変性ポリプロピレン組成物(mPP)は、変性ポリプロピレン組成物(mPP)の総重量に対して少なくとも10.0重量%、より好ましくは20.0〜80.0重量%、さらにより好ましくは30.0〜70.0重量%、なおより好ましくは45.0〜65重量%、例えば55.0〜62.0重量%のプロピレンポリマー(PP1)、及び少なくとも5.0重量%、より好ましくは10.0〜70.0重量%、さらにより好ましくは20.0〜60.0重量%、なおより好ましくは35.0〜55.0重量%、例えば38.0〜42.0重量%のプラストマー(PL)を含むことが好ましい。
【0047】
語句「変性」から理解できるように、このポリプロピレン組成物(mPP)は、過酸化物(PO)及び架橋剤(CA)の使用により化学的に処理された組成物、すなわちポリプロピレン組成物(PP)である。本発明の場合、変性ポリプロピレン組成物(mPP)は、個々のポリマー鎖の部分架橋、個々の鎖のグラフト化、又はポリマー組成物の分散相及びマトリクスの間の粘度比を変えることによる好適な分散相モルホロジーの発達のいずれかに起因して化学的に修飾されたポリプロピレン組成物(PP)である。過酸化物及び架橋剤の添加によって引き起こされる熱キシレン不溶部含有量(XHU)の増加に伴う冷キシレン可溶部含有量(XCS)の減少は、この系の高分子レベルの変化に対する根拠として働くことができる。
【0048】
上で触れたように、変性ポリプロピレン組成物(mPP)を得るためには、ポリプロピレン組成物(PP)が過酸化物(PO)及び架橋剤(CA)で処理される必要がある。
【0049】
変性ポリプロピレン組成物(mPP)と同様に、ポリプロピレン組成物(PP)も、プロピレンポリマー(PP1)及びプラストマー(PL)を含む必要がある。好ましい実施形態では、プロピレンポリマー(PP1)及びプラストマー(PL)は合わせて、ポリプロピレン組成物(PP)の少なくとも80重量%、より好ましくは少なくとも85重量%、さらにより好ましくは少なくとも90重量%、例えば少なくとも95重量%を構成する。1つの特定の実施形態では、ポリプロピレン組成物(PP)は、プロピレンポリマー(PP1)及びプラストマー(PL)からなる。
【0050】
好ましくは、ポリプロピレン組成物(PP)は、ポリプロピレン組成物(PP)の全量に対して、少なくとも10.0重量%、より好ましくは20.0〜80.0重量%、さらにより好ましくは30.0〜70.0重量%、なおより好ましくは45.0〜65重量%、例えば55.0〜62.0重量%のプロピレンポリマー(PP1)、及び少なくとも5.0重量%、より好ましくは10.0〜70.0重量%、さらにより好ましくは20.0〜60.0重量%、なおより好ましくは35.0〜55.0重量%、例えば38.0〜42.0重量%のプラストマー(PL)を含む。
【0051】
好ましくは、ポリプロピレン組成物(PP)は、プロピレンポリマー(PP1)である結晶性マトリクス及びプラストマー(PL)である分散相を含む異相系である。従って、プロピレンポリマー(PP1)は、好ましくは(半)結晶性プロピレンポリマー(PP1)であり、プラストマー(PL)はエラストマーポリマーであり、このプラストマー(PL)は(半)結晶性プロピレンポリマー(PP1)に(微)分散している。換言すれば、(半)結晶性プロピレンポリマー(PP1)はマトリクスを構成し、プラストマー(PL)がそのマトリクスの中に、すなわち(半)結晶性プロピレンポリマー(PP1)の中に混在物を形成する。このように、マトリクスは(微)分散した、マトリクスの一部ではない混在物を含有し、この混在物がプラストマー(PL)を含有する。本発明に係る用語「混在物」は、好ましくは、上記マトリクス及び上記混在物がポリプロピレン組成物(PP)内に異なる相を形成することを示すものとし、上記混在物は、例えば高分解能顕微鏡法、例えば電子顕微鏡観察又は原子間力顕微鏡法によって見ることができるし、又はそれらは動的機械温度分析(DMTA)によって把握することができる。具体的には、DMTAにおいて、多相構造の存在は、少なくとも2つの区別可能なガラス転移温度の存在によって特定できる。
【0052】
変性ポリプロピレン組成物(mPP)は、9.0g/10分超、より好ましくは9.0〜30g/10分の範囲、さらにより好ましくは10.0〜25.0g/10分の範囲、例えば10.0〜15.0g/10分の範囲の、ISO 1133に従って求められるメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg)を有することが好ましい。
【0053】
さらに、変性ポリプロピレン組成物(mPP)の冷キシレン可溶部XCSのDIN ISO 1628/1(デカリン中135℃)に従って求めた固有粘度IVが2.0dl/g未満、より好ましくは1.7dl/g未満、さらにより好ましくは1.5dl/g未満であることが好ましい。
【0054】
加えて、変性ポリプロピレン組成物(mPP)のキシレン不溶部XCIのDIN ISO 1628/1(デカリン中135℃)に従って求めた固有粘度IVが1.5dl/g未満、より好ましくは1.0dl/g未満、さらにより好ましくは0.8dl/g未満であることが好ましい。
【0055】
変性ポリプロピレン組成物(mPP)の比IV(XCS)/IV(XCI)が、少なくとも1.63、より好ましくは少なくとも1.70、さらにより好ましくは少なくとも1.90であることがとりわけ好ましく、IV(XCS)はキシレン可溶部XCSのDIN ISO 1628/1(デカリン中135℃)に従って求めた固有粘度IVであり、IV(XCI)はキシレン不溶部XCIのDIN ISO 1628/1(デカリン中135℃)に従って求めた固有粘度IVである。
【0056】
ポリプロピレン組成物(PP)中のプロピレンポリマー(PP1)及びプラストマー(PL)の個々の特性は、下記の情報から把握することができる。
【0057】
ポリプロピレン組成物(PP)の変性のための過酸化物(PO)は、好ましくは、熱分解性フリーラジカル形成剤である。より好ましくは、過酸化物(PO)、すなわち熱分解性フリーラジカル形成剤は、アシルペルオキシド、アルキルペルオキシド、ヒドロペルオキシド、ペルエステル(過酸エステル)及びペルオキシカーボネートからなる群から選択される。
【0058】
以下の列挙された過酸化物は特に好ましい。
アシルペルオキシド:ベンゾイルペルオキシド、4−クロロベンゾイルペルオキシド、3−メトキシベンゾイルペルオキシド及び/若しくはメチルベンゾイルペルオキシド。
アルキルペルオキシド:アリル−t−ブチルペルオキシド、2,2−ビス(t−ブチルペルオキシブタン)、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(tert−ブチルペルオキシ)ヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、4,4−ビス(t−ブチルペルオキシ)吉草酸n−ブチル、ジイソプロピルアミノメチル−t−アミルペルオキシド、ジメチルアミノメチル−t−アミルペルオキシド、ジエチルアミノメチル−t−ブチルペルオキシド、ジメチルアミノメチル−t−ブチルペルオキシド、1,1−ジ−(t−アミルペルオキシ)シクロヘキサン、t−アミルペルオキシド、t−ブチルクミルペルオキシド、t−ブチルペルオキシド及び/若しくは1−ヒドロキシブチル−n−ブチルペルオキシド。
ペルエステル及びペルオキシカーボネート:ブチルペルアセテート、クミルペルアセテート、クミルペルプロピオネート、シクロヘキシルペルアセテート、ジ−t−ブチルペルアジペート、ジ−t−ブチルペルアゼレート、ジ−t−ブチルペルグルタレート、ジ−t−ブチルペルタレート(perthalate)、ジ−t−ブチルペルセバケート、4−ニトロクミルペルプロピオネート、1−フェニルエチルペルベンゾエート、フェニルエチルニトロ−ペルベンゾエート、t−ブチルビシクロ−(2,2,1)ヘプタンペルカルボキシレート、t−ブチル−4−カルボメトキシペルブチレート、t−ブチルシクロブタンペルカルボキシレート、t−ブチルシクロヘキシルペルオキシカルボキシレート、t−ブチルシクロペンチルペルカルボキシレート、t−ブチルシクロプロパンペルカルボキシレート、t−ブチルジメチルペルシンナメート、t−ブチル−2−(2,2−ジフェニルビニル)ペルベンゾエート、t−ブチル−4−メトキシペルベンゾエート、t−ブチルペルベンゾエート、t−ブチルカルボキシシクロヘキサン、t−ブチルペルナフトエート、t−ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート、t−ブチルペルトルエート、t−ブチル−1−フェニルシクロプロピルペルカルボキシレート、t−ブチル−2−プロピルペルペンテン−2−オエート、t−ブチル−1−メチルシクロプロピルペルカルボキシレート、t−ブチル−4−ニトロフェニルペルアセテート、t−ブチルニトロフェニルペルオキシカルバメート、t−ブチル−N−スクシンイミドペルカルボキシレート、t−ブチルペルクロトネート、t−ブチルペルマレエート、t−ブチルペルメタクリレート、t−ブチルペルオクタノエート、t−ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート、t−ブチルペルイソブチレート、t−ブチルペルアクリレート及び/若しくはt−ブチルペルプロピオネート、又はこれら上記のフリーラジカル形成剤の混合物。
【0059】
好ましい実施形態では、過酸化物(PO)は、アルキルペルオキシドである。過酸化物(PO)が2,5−ジメチル−2,5−ジ−(tert−ブチルペルオキシ)ヘキサンであることがとりわけ好ましい。
【0060】
ポリプロピレン組成物(PP)の変性のための架橋剤(CA)は、好ましくは、少なくとも2つの架橋に好適な基を有する化合物である。従って、架橋剤(CA)は、好ましくは、少なくとも2つのエチレン性不飽和官能基を含む化合物である。好適な架橋剤(CA)についての限定を意図しない例は、N,N’−メチレンビスアクリルアミド、N,N’−メチレンビスメタクリルアミド、エチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、シクロヘキサンジオールジビニルエーテル、トリアリルアミン及び/又はテトラアリルアンモニウム塩、テトラアリルオキシエタン、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル、ジビニルベンゼン、トリアリルイソシアヌレート、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、エトキシル化ビスフェノール−A−ジアクリレート、エトキシル化ビスフェノール−A−ジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、シクロペンタジエンジアクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート及び/又はトリス(2−ヒドロキシ)イソシアヌレートトリメチルアクリレート、トリアリルテレフタレート、ジアリルマレエート、ジアリルフマレート、トリビニルトリメリテート、ジビニルアジペート、ジアリルスクシネートである。
【0061】
架橋剤(CA)が式(I)の化合物であることがとりわけ好ましい。
【化2】
式中、M2+は二価の金属イオンであり、Rは水素又はメチルである。
【0062】
好ましくは、M2+は、Zn2+、Mg2+、Ca2+、Sr2+、Ba2+、Ni2+、Co2+及びHg2+からなる群から選択される。M2+がZn2+であることがとりわけ好ましい。
【0063】
さらに、Rが水素であることが好ましい。
【0064】
従って、架橋剤(CA)がアクリル酸亜鉛であることがとりわけ好ましい。
【0065】
本発明の方法の第1実施形態では、上記変性ポリプロピレン組成物(mPP)は、プロピレンポリマー(PP1)及びプラストマー(PL)を含むポリプロピレン組成物(PP)を押出機の中で、過酸化物(PO)及び架橋剤(CA)の存在下で押し出すことにより得られる。
【0066】
任意に、上記変性ポリプロピレン組成物(mPP)は、その後、無機充填剤(F)と(溶融)混合(ブレンド)され、最終の異相ポリプロピレン組成物(HC)が得られる。
【0067】
当該方法の第2実施形態では、プロピレンポリマー(PP1)及びプラストマー(PL)を含むポリプロピレン組成物(PP)及び任意に無機充填剤(F)は押出機の中で、過酸化物(PO)及び架橋剤(CA)の存在下で押し出され、異相ポリプロピレン組成物(HC)が得られる。
【0068】
この変性は、特に、ポリプロピレン組成物(PP)、又はポリプロピレン組成物(PP)及び任意に無機充填剤(F)の混合物を二軸押出機、例えば、好ましくは温度プロファイル80/200/210/220/220/230/230/220/225/220℃及び300rpmのスクリュー回転数を用いるPrism TSE24 40Dに投入することにより行うことができる。過酸化物(PO)、例えば2,5−ジメチル−2,5−ジ−(tert−ブチルペルオキシ)ヘキサン、架橋剤(CA)、例えばアクリル酸亜鉛、及びポリプロピレンからなる粉末形態のマスターバッチがその押出機に直接加えられ、この混合物に対して0.001〜1.0重量%の過酸化物(PO)及び0.05〜3.0重量%の架橋剤(CA)の濃度が達成される。このポリマー溶融混合物は、その押出機を通され、次に強い脱揮にかけられ、吐出され、ペレットにされ、これにより変性ポリプロピレン組成物(mPP)又は最終の異相ポリプロピレン組成物(HC)が得られる。
【0069】
プロピレンポリマー(PP1)及びプラストマー(PL)の特性は、過酸化物(PO)及び架橋剤(CA)の使用に起因して変わりうる。これは、プロピレンポリマー(PP1)及びプラストマー(PL)の固有粘度及びメルトフローレートに特に当てはまる。ある場合には、プロピレンポリマー(PP1)のメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg)は、過酸化物(PO)の使用に起因して高まる可能性がある。
【0070】
以下では、プロピレンポリマー(PP1)及びプラストマー(PL)がより詳細に記載される。
【0071】
プロピレンポリマー(PP1)
プロピレンポリマー(PP1)はプロピレンコポリマー又はプロピレンホモポリマーであってよく、後者が好ましい。
【0072】
プロピレンポリマー(PP1)がプロピレンコポリマーである場合、プロピレンポリマー(PP1)は、プロピレンと共重合可能なモノマー、例えばエチレン及び/又はC〜Cのα−オレフィン、特にエチレン及び/又はC〜Cのα−オレフィン、例えば1−ブテン及び/又は1−ヘキセン等のコモノマーを含む。好ましくは、本発明に係るプロピレンポリマー(PP1)は、エチレン、1−ブテン及び1−ヘキセンからなる群からのプロピレンと共重合可能なモノマーを含み、とりわけこれらからなる。より具体的には、本発明のプロピレンポリマー(PP1)は、プロピレンとは別に、エチレン及び/又は1−ブテンから誘導できる単位を含む。好ましい実施形態では、プロピレンポリマー(PP1)は、エチレン及びプロピレンから誘導できる単位のみを含む。
【0073】
プロピレンポリマー(PP1)のコモノマー含有量は、0.0〜5.0モル%の範囲、なおより好ましくは0.0〜3.0モル%の範囲、さらにより好ましくは0.0〜1.0モル%の範囲にある。
【0074】
プロピレンポリマー(PP1)がプロピレンホモポリマー(H−PP1)であることがとりわけ好ましい。
【0075】
本発明によれば、表現「プロピレンホモポリマー」は、実質的に、すなわち少なくとも99.0重量%、より好ましくは少なくとも99.5重量%、さらにより好ましくは少なくとも99.8重量%、例えば少なくとも99.9重量%のプロピレン単位からなるポリプロピレンに関する。別の実施形態では、プロピレン単位だけが検出可能であり、すなわちプロピレンだけが重合したものである。
【0076】
プロピレンポリマー(PP1)が適度なメルトフローレートを特徴とすることが好ましい。従って、プロピレンポリマー(PP1)が、35.0g/10分以下、より好ましくは5.0〜30.0g/10分の範囲、さらにより好ましくは15.0〜25.0g/10分の範囲、例えば18.0〜23.0g/10分の範囲の、ISO 1133に従って求められるメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg)を有することが好ましい。
【0077】
好ましくは、プロピレンポリマー(PP1)はアイソタクチックである。従って、プロピレンポリマー(PP1)がかなり高いペンタッド濃度(mmmm%)、すなわち94.1%超、より好ましくは94.4%超、例えば94.4〜98.5%超、さらにより好ましくは少なくとも94.7%、例えば94.7〜97.5%の範囲の高いペンタッド濃度(mmmm%)を有することが好ましい。
【0078】
プロピレンポリマー(PP1)のさらなる特徴は、ポリマー鎖内の少量のプロピレンの誤挿入(misinsertion)であり、これは、プロピレンポリマー(PP1)がZiegler−Natta触媒の存在下で製造されることを示唆する。従って、プロピレンポリマー(PP1)は、好ましくは、13C−NMR分光法により求めた2,1エリスロ位置欠陥は少量である、すなわち0.4mol%以下、より好ましくは0.2mol%以下、例えば0.1mol%以下であることを特徴とする。とりわけ好ましい実施形態では、2,1エリスロ位置欠陥は検出可能ではない。
【0079】
プロピレンポリマー(PP1)が、かなり低い冷キシレン可溶部(XCS)含有量、すなわち3.1重量%未満の冷キシレン可溶部(XCS)を特徴とすることが好ましく、従って、プロピレンポリマー(PP1)は、好ましくは、1.0〜3.0重量%の範囲、より好ましくは2.0〜2.8重量%の範囲、さらにより好ましくは2.2〜2.6重量%の範囲の冷キシレン可溶部含有量(XCS)を有する。
【0080】
さらに、プロピレンポリマー(PP1)は、好ましくは結晶性プロピレンホモポリマーである。用語「結晶性」は、プロピレンポリマー(PP1)がかなり高い融解温度を有することを示唆する。従って、本発明全体にわたって、プロピレンポリマー(PP1)は、特段の記載がない限り、結晶性であると考えられる。それゆえ、プロピレンポリマー(PP1)は、好ましくは、少なくとも160℃、より好ましくは少なくとも161℃、さらにより好ましくは少なくとも163℃、例えば163℃〜167℃の範囲の、示差走査熱量測定(DSC)により測定される融解温度Tmを有する。
【0081】
さらに、プロピレンポリマー(PP1)が、110℃以上、より好ましくは110〜132℃の範囲、より好ましくは114〜130℃の範囲の、示差走査熱量測定(DSC)により測定される結晶化温度Tcを有することが好ましい。
【0082】
プロピレンポリマー(PP1)は、好ましくは、高剛性を特徴とする。従って、プロピレンポリマー(PP1)は、好ましくは、かなり高い曲げ弾性率を有する。従って、プロピレンポリマー(PP1)が、少なくとも1,500MPa、より好ましくは1,800〜3,000MPaの範囲、さらにより好ましくは2,000〜2,500MPaの範囲のISO 178に従う曲げ弾性率を有することが好ましい。
【0083】
好ましくは、プロピレンポリマー(PP1)は、以降に規定されるZiegler−Natta触媒の存在下でプロピレンを重合することにより得られる。より好ましくは、本発明に係るプロピレンポリマー(PP1)は、Ziegler−Natta触媒を使用して、以降に詳細に規定されるプロセスにより得られる。
【0084】
プロピレンポリマー(PP1)は、2つの画分(フラクション)、つまり第1ポリプロピレン画分(PP1a)及び第2ポリプロピレン画分(PP1b)を含むことができ、より好ましくはそれら2つの画分からなることができる。好ましくは、第1ポリプロピレン画分(PP1a)と第2ポリプロピレン画分(PP1b)との間の重量比[(PP1a):(PP1b)]は、70:30〜40:60、より好ましくは65:35〜45:55である。
【0085】
第1ポリプロピレン画分(PP1a)及び第2ポリプロピレン画分(PP1b)は、メルトフローレートが異なってもよい。特に、第1ポリプロピレン画分(PP1a)のメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg)が第2ポリプロピレン画分(PP1b)のメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg)よりも低いことが好ましい。
【0086】
好ましくは、第1ポリプロピレン画分(PP1a)は、5.0〜20.0g/10分の範囲、より好ましくは7.0〜15.0g/10分の範囲、さらにより好ましくは8.0〜12.0g/10分の範囲の、ISO 1133に従って求められるメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg)を有する。
【0087】
さらに、第2ポリプロピレン画分(PP1b)が、30.0〜65.0g/10分の範囲、より好ましくは40.0〜60.0g/10分の範囲、より好ましくは45.0〜55.0g/10分の範囲の、ISO 1133に従って求められるメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg)を有することが好ましい。
【0088】
本発明のプロピレンポリマー(PP1)は、さらなる成分を含んでもよい。しかしながら、本発明のプロピレンポリマー(PP1)は、ポリマー成分として、本発明で規定されるプロピレンポリマー(PP1)のみを含むことが好ましい。従って、プロピレンポリマー(PP1)の量は、全プロピレンポリマー(PP1)に対して100.0重量%にならなくてもよい。このように、100.0重量%になるまでの残部は、当該技術分野で公知のさらなる添加剤によって埋められてもよい。しかしながら、この残部は、全プロピレンポリマー(PP1)のうちの5.0重量%以下、例えば3.0重量%以下になろう。例えば、本発明のプロピレンポリマー(PP1)は、酸化防止剤、安定剤、無機充填剤、着色料、核形成剤及び帯電防止剤からなる群から選択される少量の添加剤をさらに含んでもよい。一般に、それらは、重合で得られる粉末生成物の造粒の間に組み込まれる。従って、プロピレンポリマー(PP1)は、全プロピレンポリマー(PP1)の少なくとも95.0重量%、より好ましくは少なくとも97.0重量%を構成する。
【0089】
プロピレンポリマー(PP1)がα核形成剤を含む場合、β核形成剤を含まないことが好ましい。このα核形成剤は、好ましくは
(i)モノカルボン酸及びポリカルボン酸の塩、例えば安息香酸ナトリウム又はtert−ブチル安息香酸アルミニウム、並びに
(ii)ジベンジリデンソルビトール(例えば1,3:2,4 ジベンジリデンソルビトール)及びC−C−アルキル置換ジベンジリデンソルビトール誘導体、例えばメチルジベンジリデンソルビトール、エチルジベンジリデンソルビトール又はジメチルジベンジリデンソルビトール(例えば1,3:2,4 ジ(メチルベンジリデン)ソルビトール)、又は置換ノニトール−誘導体、例えば1,2,3,−トリデオキシ−4,6:5,7−ビス−O−[(4−プロピルフェニル)メチレン]−ノニトール、並びに
(iii)リン酸のジエステルの塩、例えばリン酸2,2’−メチレンビス(4、6,−ジ−tert−ブチルフェニル)ナトリウム又はリン酸ヒドロキシ−ビス[2,2’−メチレン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)]アルミニウム、並びに
(iv)ビニルシクロアルカンポリマー及びビニルアルカンポリマー(以降でより詳細に論じられる)、並びに
(v)これらの混合物
からなる群から選択される。
【0090】
このような添加剤は、一般に市販されており、例えばHans Zweifelの「Plastic Additives Handbook」、871〜873頁、第5版、2001年に記載されている。
【0091】
好ましくは、プロピレンポリマー(PP1)は、5.0重量%以下のα核形成剤を含有する。好ましい実施形態では、プロピレンホモポリマーは、500ppm以下、より好ましくは0.025〜200ppm、より好ましくは0.1〜200ppm、さらにより好ましくは0.3〜200ppm、最も好ましくは0.3〜100ppmのα核形成剤、特にジベンジリデンソルビトール(例えば1,3:2,4 ジベンジリデンソルビトール)、ジベンジリデンソルビトール誘導体、好ましくはジメチルジベンジリデンソルビトール(例えば1,3:2,4 ジ(メチルベンジリデン)ソルビトール)、又は置換ノニトール−誘導体、例えば1,2,3,−トリデオキシ−4,6:5,7−ビス−O−[(4−プロピルフェニル)メチレン]−ノニトール、リン酸2,2’−メチレンビス(4、6,−ジ−tert−ブチルフェニル)ナトリウム、ビニルシクロアルカンポリマー、ビニルアルカンポリマー、及びこれらの混合物からなる群から選択されるα核形成剤を含有する。
【0092】
本発明に係るプロピレンポリマー(PP1)は、好ましくは
(a)IUPACの4〜6族の遷移金属の化合物(TC)、2族金属化合物(MC)及び内部ドナー(ID)を含むZiegler−Natta触媒、
(b)任意に、共触媒(Co)、並びに
(c)任意に、外部ドナー(ED)
の存在下で製造される。
【0093】
好ましくは、プロピレンポリマー(PP1)は、少なくとも2つの反応器(R1)及び(R2)を備える以降でさらに論じられる逐次重合プロセスで製造され、第1反応器(R1)では、第1ポリプロピレン画分(PP1a)が製造され、その後第2反応器(R2)に移され、第2反応器(R2)で、第2ポリプロピレン画分(PP1b)が第1ポリプロピレン画分(PP1a)の存在下で製造される。
【0094】
プロピレンホモポリマー及びZiegler−Natta触媒の調製方法はさらに、以降で詳述される。
【0095】
すでに上で示したように、プロピレンポリマー(PP1)は、好ましくは、逐次重合プロセスで製造される。
【0096】
用語「逐次重合系」は、プロピレンポリマー(PP1)が直列に接続された少なくとも2つの反応器で製造されるということを示す。従って、本重合系は、少なくとも第1重合反応器(R1)及び第2重合反応器(R2)、並びに任意に第3重合反応器(R3)を備える。用語「重合反応器」は、主重合が起こることを示すものとする。このように、プロセスが2つの重合反応器からなる場合には、この定義は、系全体が、例えば前重合(予備重合)反応器での前重合(予備重合)工程を含むという選択肢を排除しない。用語「…からなる」は、主たる重合の反応器を考慮した閉鎖語句(closing formulation)にすぎない。
【0097】
好ましくは、上記2つの重合反応器(R1)及び(R2)のうちの少なくとも1つは気相反応器(GPR)である。さらにより好ましくは、第2重合反応器(R2)及び任意の第3重合反応器(R3)は気相反応器(GPR)であり、すなわち第1気相反応器(GPR1)及び第2気相反応器(GPR2)である。本発明に係る気相反応器(GPR)は、好ましくは、流動層反応器、高速流動層反応器又は固定層反応器又はこれらのいずれかの組み合わせである。
【0098】
従って、第1重合反応器(R1)は、好ましくはスラリー反応器(SR)であり、バルク又はスラリーで稼働する、いずれの連続又は単純撹拌式のバッチタンク反応器又はループ反応器であることができる。バルクは、少なくとも60%(重量/重量)のモノマーを含む反応媒質中での重合を意味する。本発明によれば、上記スラリー反応器(SR)は、好ましくは(バルク)ループ反応器(LR)である。従って、ループ反応器(LR)内のポリマースラリー中のプロピレンポリマー(PP1)の第1画分(第1F)、すなわち第1ポリプロピレン画分(PP1a)の平均濃度は、通常は、ループ反応器(LR)内のポリマースラリーの総重量に対して15重量%〜55重量%である。本発明の1つの好ましい実施形態では、ループ反応器(LR)内のポリマースラリー中の第1ポリプロピレン画分(PP1a)の平均濃度は、ループ反応器(LR)内のポリマースラリーの総重量に対して20重量%〜55重量%、より好ましくは25重量%〜52重量%である。
【0099】
好ましくは、第1重合反応器(R1)のプロピレンホモポリマー、すなわち第1ポリプロピレン画分(PP1a)、より好ましくは、第1ポリプロピレン画分(PP1a)を含有するループ反応器(LR)のポリマースラリーは、段階間の洗い流し工程なしに、直接、第2重合反応器(R2)へ、すなわち(第1)気相反応器(GPR1)へと供給される。この種の直接供給は、欧州特許出願公開第887379A号明細書、欧州特許出願公開第887380A号明細書、欧州特許出願公開第887381A号明細書及び欧州特許出願公開第991684A号明細書に記載されている。「直接供給」は、第1重合反応器(R1)、すなわちループ反応器(LR)の内容物、第1ポリプロピレン画分(PP1a)を含むポリマースラリーが次の段階の気相反応器に直接導かれるプロセスを意味する。
【0100】
あるいは、第1重合反応器(R1)のプロピレンホモポリマー、すなわち第1ポリプロピレン画分(PP1a)、より好ましくは第1ポリプロピレン画分(PP1a)を含有するループ反応器(LR)のポリマースラリーは、第2重合反応器(R2)へ、すなわち気相反応器(GPR)へ供給される前に、洗い流し工程に導かれても、又はさらなる濃縮工程を経由してもよい。従って、この「間接供給」は、第1重合反応器(R1)、ループ反応器(LR)の内容物、すなわちポリマースラリーが、反応媒質分離部を経由して第2重合反応器(R2)へ、(第1)気相反応器(GPR1)へ供給されるプロセスを指し、反応媒質はガスとして上記分離部から分離される。
【0101】
より具体的には、第2重合反応器(R2)は、そして後続の反応器があればその反応器、例えば第3重合反応器(R3)は、好ましくは気相反応器(GPR)である。このような気相反応器(GPR)は、任意の機械混合式反応器又は流動層反応器であってよい。好ましくは、この気相反応器(GPR)は、少なくとも0.2m/secのガス速度を有する機械撹拌式流動層反応器を含む。このように、上記気相反応器は、好ましくは機械式撹拌機構を有する流動層型反応器であることが認識される。
【0102】
このように、好ましい実施形態では、第1重合反応器(R1)はスラリー反応器(SR)、例えばループ反応器(LR)であるのに対し、第2重合反応器(R2)及び任意の後続の反応器があればその反応器、例えば第3重合反応器(R3)、は気相反応器(GPR)である。従って、本発明の方法のために、少なくとも2つ、好ましくは2つの重合反応器(R1)及び(R2)又は3つの重合反応器(R1)、(R2)及び(R3)、つまり直列に接続されたスラリー反応器(SR)、例えばループ反応器(LR)及び(第1)気相反応器(GPR1)及び任意に第2気相反応器(GPR2)が使用される。必要に応じて、スラリー反応器(SR)の前に、前重合反応器が置かれる。
【0103】
Ziegler−Natta触媒は、第1重合反応器(R1)に供給され、第1重合反応器(R1)で得られたポリマー(スラリー)と共に後続の反応器へと移される。当該プロセスが前重合工程も含む場合、このZiegler−Natta触媒のすべてが前重合反応器で供給されることが好ましい。その後、このZiegler−Natta触媒を含有する前重合生成物は第1重合反応器(R1)へと移される。
【0104】
好ましい多段階プロセスは、Borealis A/S(ボレアリス)、デンマークによって開発されたもの(BORSTAR(登録商標)技術として公知)等の「ループ−気相」プロセスであり、例えば欧州特許出願公開第0887379号明細書、国際公開第92/12182号パンフレット、国際公開第2004/000899号パンフレット、国際公開第2004/111095号パンフレット、国際公開第99/24478号パンフレット、国際公開第99/24479号パンフレット又は国際公開第00/68315号パンフレット等の特許文献に記載されている。
【0105】
さらに好適なスラリー−気相プロセスは、Basell(ベーセル)のSpheripol(登録商標)プロセスである。
【0106】
とりわけ良好な結果は、反応器中の温度が注意深く選ばれる場合に、成し遂げられる。
【0107】
従って、第1重合反応器(R1)中の稼働温度が62〜85℃の範囲、より好ましくは65〜82℃の範囲、さらにより好ましくは67〜80℃の範囲にあることが好ましい。
【0108】
これまでの段落とは別に、又はこれまでの段落に加えて、第2重合反応器(R2)及び任意の第3反応器(R3)中の稼働温度が62〜95℃の範囲、より好ましくは67〜92℃の範囲にあることが好ましい。
【0109】
好ましくは、第2重合反応器(R2)中の稼働温度は、第1重合反応器(R1)中の稼働温度に等しいか又はそれよりも高い。従って、
(a)第1重合反応器(R1)中の稼働温度が、62〜85℃の範囲、より好ましくは65〜82℃の範囲、さらにより好ましくは67〜80℃の範囲、例えば70〜80℃の範囲にあり、
かつ
(b)第2重合反応器(R2)中の稼働温度が、75〜95℃の範囲、より好ましくは78〜92℃の範囲、さらにより好ましくは78〜88℃の範囲にあり、
ただし、第2重合反応器(R2)中の稼働温度が第1重合反応器(R1)中の稼働温度に等しいか又はそれよりも高いことが好ましい。
【0110】
通常は、第1重合反応器(R1)中、好ましくはループ反応器(LR)中の圧力は、20〜80bar(2〜8MPa)、好ましくは30〜70bar(3〜7MPa)、例えば35〜65bar(3.5〜6.5MPa)の範囲にあり、他方で第2重合反応器(R2)中、すなわち(第1)気相反応器(GPR1)中、及び任意に後続の反応器があればそれら反応器の中、例えば第3重合反応器(R3)中、例えば第2気相反応器(GPR2)中の圧力は、5〜50bar(0.5〜5MPa)、好ましくは15〜40bar(1.5〜4MPa)の範囲にある。
【0111】
好ましくは、分子量、すなわちメルトフローレートMFRを制御するために水素が各重合反応器において添加される。
【0112】
好ましくは、平均滞留時間は、重合反応器(R1)及び(R2)においてはかなり長い。一般に、平均滞留時間(τ)は、反応器からの容積流出量(Q)に対する反応容積(V)の比(すなわちV/Q)、すなわちτ=V/Q[タウ=V/Q]として定義される。ループ反応器の場合には、反応容積(V)は反応器の容積に等しい。
【0113】
上で触れたように、上記プロピレンホモポリマーの調製は、上記少なくとも2つの重合反応器(R1、R3及び任意のR3)の中でのプロピレンホモポリマーの(主)重合に加えて、その(主)重合の前に、第1重合反応器(R1)の上流の前重合反応器(PR)の中での前重合を含むことができる。
【0114】
前重合反応器(PR)中で、ポリプロピレン(Pre−PP)が製造される。この前重合は、Ziegler−Natta触媒の存在下で行われる。この実施形態によれば、Ziegler−Natta触媒、共触媒(Co)及び外部ドナー(ED)がすべてこの前重合工程に導入される。しかしながら、これは、例えばあとの段階でさらなる共触媒(Co)及び/又は外部ドナー(ED)が重合プロセスで、例えば第1反応器(R1)で添加されるという選択肢を排除しないものとする。1つの実施形態では、前重合が適用される場合、Ziegler−Natta触媒、共触媒(Co)及び外部ドナー(ED)は、前重合反応器(PR)でのみ添加される。
【0115】
この前重合反応は、通常、0〜60℃、好ましくは15〜50℃、より好ましくは20〜35℃の温度で行われる。
【0116】
好ましい実施形態では、前重合は液体プロピレン中でバルクスラリー重合として行われ、すなわち液相は、主にプロピレンを含み、任意に不活性な成分がこれに溶解している。さらに、本発明によれば、上で触れたように、前重合中にエチレン供給が採用される。
【0117】
他の成分も上記前重合段階に加えることが可能である。このように、当該技術分野で公知のとおり、ポリプロピレン(Pre−PP)の分子量を制御するために、水素が前重合段階に加えられてもよい。さらに、粒子が互いに又は反応器の壁に接着するのを防止するために、帯電防止添加剤が使用されてもよい。
【0118】
前重合条件及び反応パラメータの精密な制御は当該技術分野の技術の範囲内である。
【0119】
前重合における上記のプロセス条件に起因して、好ましくは、Ziegler−Natta触媒及び前重合反応器(PR)で製造されるポリプロピレン(Pre−PP)の混合物(MI)が得られる。好ましくは、Ziegler−Natta触媒はポリプロピレン(Pre−PP)中に(微)分散している。換言すれば、前重合反応器(PR)に導入されたZiegler−Natta触媒粒子はより小さい断片(フラグメント)へと分かれ、これが成長するポリプロピレン(Pre−PP)の中に均等に分散される。導入されるZiegler−Natta触媒粒子のサイズ及び得られる断片のサイズは、本発明にとって本質的な関連性はなく、当業者の知識の範囲内にある。
【0120】
前重合が使用されない場合には、プロピレン及びZiegler−Natta触媒等の上記他の原料は、直接第1重合反応器(R1)に導入される。
【0121】
従って、上記プロピレンホモポリマーは、好ましくは、以下の工程を備えるプロセスで、上記の条件下で製造される。
(a)第1重合反応器(R1)中で、すなわちループ反応器(LR)中で、プロピレンが重合され、プロピレンポリマー(PP1)の第1ポリプロピレン画分(PP1a)が得られ、
(b)上記第1ポリプロピレン画分(PP1a)を第2重合反応器(R2)に移し、
(c)その第2重合反応器(R2)中で、第1ポリプロピレン画分(PP1a)の存在下でプロピレンが重合され、プロピレンホモポリマーの第2ポリプロピレン画分(PP1b)が得られ、上記第1ポリプロピレン画分(PP1a)及び上記第2ポリプロピレン画分(PP1b)がプロピレンポリマー(PP1)を形成する。
【0122】
上記の前重合は、工程(a)の前に成し遂げることができる。
【0123】
本発明によれば、プロピレンポリマー(PP1)は、低級アルコール及びフタル酸エステルのエステル交換生成物を含有するZiegler−Natta触媒前駆体を成分(i)として含む触媒系の存在下で、上記の多段階重合プロセスにより得られる。
【0124】
プロピレンポリマー(PP1)を調製するために本発明に従って使用される触媒前駆体は、
a)噴霧結晶化した(spray crystallized)又はエマルションから固化した(emulsion solidified)MgCl及びC−Cアルコールの付加体をTiClと反応させる工程と、
b)段階a)の生成物を式(I)のフタル酸ジアルキルと、上記C〜Cのアルコール及び上記式(I)のフタル酸ジアルキルとの間のエステル交換反応が起こり内部ドナーが形成される条件下で反応させる工程であって、
【化3】
上記式(I)中、R1’及びR2’は独立に少なくともCアルキルである工程と、
c)段階b)の生成物を洗浄する工程、又は
d)任意に工程c)の生成物をさらなるTiClと反応させる工程と
により調製される。
【0125】
上記触媒前駆体は、例えば特許出願、国際公開第87/07620号パンフレット、国際公開第92/19653号パンフレット、国際公開第92/19658号パンフレット及び欧州特許出願公開第0491566号明細書に規定されるようにして製造される。これらの文献の内容は、参照により本明細書に援用される。
【0126】
最初に、式MgCl*nROH(式中、Rはメチル又はエチルであり、nは1〜6である)のMgCl及びC−Cアルコールの付加体が形成される。好ましくはエタノールがアルコールとして使用される。
【0127】
この付加体は、まず溶融され、次いで噴霧結晶化され又はエマルションから固化され、そして触媒担体として使用される。
【0128】
次の工程で、噴霧結晶化され又はエマルションから固化された上記式MgCl*nROH(式中、Rはメチル又はエチル、好ましくはエチルであり、nは1〜6である)の付加体はTiClと接触し、チタン化(titanized)担体を形成し、このあとに、
上記チタン化担体に、
(i)R1’及びR2’が独立に少なくともC−アルキル、例えば少なくともC−アルキルである式(I)のフタル酸ジアルキル、
又は、好ましくは
(ii)R1’及びR2’が同じであり、かつ少なくともC−アルキル、例えば少なくともC−アルキルである式(I)のフタル酸ジアルキル、
又は、より好ましくは
(iii)フタル酸プロピルヘキシル(PrHP)、フタル酸ジオクチル(DOP)、フタル酸ジ−iso−デシル(DIDP)、及びフタル酸ジトリデシル(DTDP)からなる群から選択される式(I)のフタル酸ジアルキル、なおより好ましくは、フタル酸ジオクチル(DOP)、例えばフタル酸ジ−iso−オクチル又はフタル酸ジエチルヘキシル、特にフタル酸ジエチルヘキシルである式(I)のフタル酸ジアルキル
を加え、第1生成物を形成する工程と、
上記第1生成物を好適なエステル交換反応条件、すなわち100℃超、好ましくは100〜150℃、より好ましくは130〜150℃の温度に供し、その結果、上記メタノール又はエタノールが、上記式(I)のフタル酸ジアルキルの上記エステル基とエステル交換され、好ましくは少なくとも80モル%、より好ましくは90モル%、最も好ましくは95モル%の、式(II)のフタル酸ジアルキルが形成され、
【化4】
式中、R及びRはメチル又はエチル、好ましくはエチルであり、
この式(II)のフタル酸ジアルキルが内部ドナーである工程と、
上記エステル交換反応生成物を触媒前駆体組成物(成分(i))として回収する工程と
が続く。
【0129】
式MgCl*nROH(式中、Rはメチル又はエチルであり、nは1〜6である)の付加体は、好ましい実施形態では融解され、次いでその融液は、好ましくはガスによって、冷却された溶媒又は冷却されたガスの中へと注入され、これにより上記付加体は、例えば国際公開第87/07620号パンフレットに記載されているような形態学的に有利な形態へと結晶化される。
【0130】
この結晶化された付加体は、好ましくは触媒担体として使用され、国際公開第92/19658号パンフレット及び国際公開第92/19653号パンフレットに記載されているような本発明で有用な触媒前駆体へと反応される。
【0131】
触媒残渣は抽出により除去されるため、上記チタン化担体及び上記内部ドナーの付加体が得られ、この内部ドナーにおいては、エステルアルコールに由来する基が変わっている。
【0132】
十分なチタンが担体上に留まる場合には、チタンは、上記触媒前駆体の活性要素として作用することになる。
【0133】
十分なチタンが担体上に留まっていない場合には、十分なチタン濃度、従って活性を確実にするために、上記の処理の後に上記チタン化が繰り返される。
【0134】
好ましくは、本発明に従って使用される触媒前駆体は、2.5重量%以下、好ましくは2.2%重量%以下、より好ましくは2.0重量%以下のチタンを含有する。そのドナー含有量は、好ましくは4〜12重量%、より好ましくは6〜10重量%である。
【0135】
より好ましくは、本発明に従って使用される触媒前駆体は、アルコールとしてのエタノール及び式(I)のフタル酸ジアルキルとしてのフタル酸ジオクチル(DOP)を使用し、フタル酸ジエチル(DEP)を内部ドナー化合物として得ることにより製造される。
【0136】
さらにより好ましくは、本発明に従って使用される触媒は、実施例の節に記載される触媒であり、とりわけ式(I)のフタル酸ジアルキルとしてのフタル酸ジオクチルを使用するものである。
【0137】
本発明に係るプロピレンポリマー(PP1)の製造のために、使用される触媒系は、好ましくは、上記特別のZiegler−Natta触媒前駆体に加えて、有機金属共触媒を成分(ii)として含む。
【0138】
従って、上記共触媒をトリアルキルアルミニウム、例えばトリエチルアルミニウム(TEA)、ジアルキルアルミニウムクロリド及びアルキルアルミニウムセスキクロリドからなる群から選択することが好ましい。
【0139】
使用される触媒系の成分(iii)は、式(IIIa)又は式(IIIb)によって表される外部ドナーである。式(IIIa)は
Si(OCH (IIIa)
によって規定され、上記式(IIIa)中、Rは、炭素原子数3〜12の分枝状のアルキル基、好ましくは炭素原子数3〜6の分枝状のアルキル基、又は炭素原子数4〜12のシクロアルキル、好ましくは炭素原子数5〜8のシクロアルキルを表す。
【0140】
がiso−プロピル、iso−ブチル、iso−ペンチル、tert−ブチル、tert−アミル、ネオペンチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、メチルシクロペンチル及びシクロヘプチルからなる群から選択されることが特に好ましい。
【0141】
式(IIIb)は、
Si(OCHCH(NR) (IIIb)
によって規定され、上記式(IIIb)中、R及びRは同じであってもよいし異なっていてもよく、炭素原子数1〜12の炭化水素基を表す。
【0142】
及びRは、独立に、炭素原子数1〜12の直鎖状脂肪族炭化水素基、炭素原子数1〜12の分枝状脂肪族炭化水素基及び炭素原子数1〜12の環状脂肪族炭化水素基からなる群から選択される。R及びRが独立にメチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル、オクチル、デカニル、iso−プロピル、iso−ブチル、iso−ペンチル、tert−ブチル、tert−アミル、ネオペンチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、メチルシクロペンチル及びシクロヘプチルからなる群から選択されることが特に好ましい。
【0143】
より好ましくは、R及びRはともに同じであり、なおより好ましくはR及びRはともにエチル基である。
【0144】
より好ましくは、上記外部ドナーは、式(IIIa)のもの、例えばジシクロペンチルジメトキシシラン[Si(OCH(シクロペンチル)]、ジイソプロピルジメトキシシラン[Si(OCH(CH(CH]である。
【0145】
最も好ましくは、外部ドナーはジシクロペンチルジメトキシシラン[Si(OCH(シクロペンチル)](ドナーD)である。
【0146】
さらなる実施形態では、上記Ziegler−Natta触媒前駆体は、上記特別のZiegler−Natta触媒前駆体(成分(i))、外部ドナー(成分(iii))及び任意に共触媒(成分(iii))を含む触媒系の存在下で、下記式を有するビニル化合物を重合することにより改質することができる。
CH=CH−CHR
上記式中、R及びRは一緒に5員若しくは6員の飽和環、不飽和環若しくは芳香環を形成するか、又は独立に炭素原子数1〜4のアルキル基を表し、この改質触媒は本発明に係るプロピレンポリマー(PP1)の調製のために使用される。重合したビニル化合物はα核形成剤として作用することができる。
【0147】
触媒の改質に関しては、国際公開第99/24478号パンフレット、国際公開第99/24479号パンフレット、特に国際公開第00/68315号パンフレットが参照され、これらは、触媒の改質に関する反応条件に関して、及び重合反応に関して参照により本明細書に援用したものとする。
【0148】
プラストマー(PL)
プラストマー(PL)は、いずれのエラストマーポリオレフィンであってよいが、ただしプラストマー(PL)は、本明細書中に規定されるエラストマーエチレン/プロピレンコポリマー(EPR)とは化学的に異なる。より好ましくは、プラストマー(PL)は、超低密度ポリオレフィン、より好ましくはシングルサイト触媒反応、好ましくはメタロセン触媒反応を使用して重合された超低密度ポリオレフィンである。典型的には、プラストマー(PL)はエチレンコポリマーである。
【0149】
上で触れたように、プラストマー(PL)の特性は、過酸化物(PO)及び架橋剤(CA)の使用に起因して変化する。つまり、この節で規定される特性は、プラストマー(PL)が過酸化物(PO)で処理された後で、異なってもよい。特に密度及びメルトフローレートMFR2(190℃、2.16kg)が影響を受ける。しかしながら、コモノマー含有量は影響を受けない。
【0150】
好ましい実施形態では、プラストマー(PL)は、0.880g/cm未満の密度を有する。より好ましくは、プラストマー(PL)の密度は、0.870g/cm以下、さらにより好ましくは0.845〜0.865g/cmの範囲、例えば0.855〜0.862g/cmの範囲にある。
【0151】
好ましくは、このプラストマー(PL)は、30g/10分未満、より好ましくは0.1〜15g/10分、さらにより好ましくは0.1〜10g/10分、例えば0.1〜5.0g/10分の範囲の、ISO 1133に従って求められるメルトフローレートMFR(190℃、2.16kg)を有する。
【0152】
好ましくは、プラストマー(PL)は、エチレン及びC4〜C20のα−オレフィンに由来する単位を含む。
【0153】
プラストマー(PL)は、(i)エチレン及び(ii)少なくとも別のC4〜C20のα−オレフィン、例えばC4〜C10のα−オレフィンから誘導できる単位、より好ましくは(i)エチレン並びに(ii)1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン及び1−オクテンからなる群から選択される少なくとも別のα−オレフィンから誘導できる単位を含み、好ましくはこれらの単位からなる。プラストマー(PL)は、(i)エチレン及び(ii)1−ブテン又は1−オクテンから誘導できる単位を少なくとも含むことがとりわけ好ましい。
【0154】
とりわけ好ましい実施形態では、プラストマー(PL)は、(i)エチレン及び(ii)1−ブテン又は1−オクテンから誘導できる単位からなる。
【0155】
プラストマー(PL)のコモノマー含有量、例えばC4〜C20のα−オレフィン含有量は、8〜30モル%の範囲、より好ましくは10〜25モル%の範囲、さらにより好ましくは11〜23モル%の範囲、例えば12〜20モル%の範囲にある。
【0156】
1つの好ましい実施形態では、エラストマー(E)は少なくとも1種のメタロセン触媒を用いて調製される。エラストマー(E)は、複数のメタロセン触媒を用いて調製されてもよく、又は異なるメタロセン触媒を用いて調製された複数のエラストマーのブレンド(混合物)であってもよい。いくつかの実施形態では、エラストマー(E)は、実質的に直鎖状エチレンポリマー(SLEP)である。SLEP及び他のメタロセン触媒によるエラストマー(E)は当該技術分野で、例えば米国特許第5,272,236号明細書から公知である。これらの樹脂は、例えばBorealis(ボレアリス)から入手できるQueo(商標)プラストマー、Dow Chemical Co.(ダウケミカル)から入手できるENGAGE(商標)プラストマー樹脂、又はExxon(エクソン)製のEXACT(商標)ポリマー、又はMitsui(三井)製のTAFMER(商標)ポリマーとして市販もされている。
【0157】
無機充填剤(F)
本発明に係る組成物のさらなる任意の必要条件は、無機充填剤(F)の存在である。
【0158】
好ましくは、この無機充填剤(F)は鉱物充填剤である。無機充填剤(F)はフィロ珪酸塩鉱物、マイカ又は珪灰石(ウラストナイト)であることが認識される。さらにより好ましくは、この無機充填剤(F)は、マイカ、珪灰石、カオリナイト、スメクタイト、モンモリロナイト及びタルクからなる群から選択される。最も好ましい無機充填剤(F)はタルクである。
【0159】
充填剤(F)が、0.8〜20μmの範囲のメジアン粒径(D50)及び10〜20μmの範囲のトップカット(top cut)粒径(D95)、好ましくは5.0〜8.0μmの範囲のメジアン粒径(D50)及び12〜17μmの範囲のトップカット粒径(D95)、より好ましくは5.5〜7.8μmの範囲のメジアン粒径(D50)及び13〜16.5μmのトップカット粒径(D95)を有することが認識される。
【0160】
本発明によれば、充填剤(F)はα核形成剤(NU)及び添加剤(AD)の部類に属さない。
【0161】
充填剤(F)は、技術水準のものであり、市販の製品である。
【0162】
添加剤(AD)
変性ポリプロピレン組成物(mPP)及び任意の無機充填剤(F)に加えて、本発明の異相ポリプロピレン組成物(HC)は添加剤(AD)を含んでもよい。典型的な添加剤は、酸スカベンジャー、酸化防止剤、着色料、光安定剤、可塑剤、スリップ剤、擦り傷防止剤、分散剤、加工助剤、潤滑剤、顔料等である。上記のように、無機充填剤(F)は、添加剤(AD)とはみなされない。
【0163】
このような添加剤は市販されており、例えばHans Zweifelの「Plastic Additives Handbook」、第6版、2009年(1141〜1190頁)に記載されている。
【0164】
さらには、本発明に係る用語「添加剤(AD)」は、担体材料、特にポリマー担体材料も包含する。
【0165】
ポリマー担体材料
好ましくは、本発明の異相ポリプロピレン組成物(HC)は、変性ポリプロピレン組成物(mPP)とは異なる、すなわちプロピレンポリマー(PP1)及びプラストマー(PL)とは異なるさらなるポリマー(1種又は複数種)を、異相ポリプロピレン組成物(HC)の重量に対して15重量%を超える量、好ましくは10重量%を超える量、より好ましくは9重量%を超える量では含まない。さらなるポリマーが存在する場合、そのようなポリマーは、典型的には、過酸化物(PO)、架橋剤(CA)及び添加剤(AD)のためのポリマー担体材料である。添加剤(AD)のためのいずれの担体材料も、本発明で示されるポリマー化合物の量には算入されず、それぞれの添加剤の量に算入される。従って、本発明では、過酸化物(PO)のポリマー担体材料と添加剤(AD)とは区別される。上で触れたように、過酸化物(PO)のポリマー担体材料及び架橋剤(CA)のポリマー担体材料は別個に考えられるが、添加剤(AD)のポリマー担体材料は上記添加剤(AD)の一部とみなされる。
【0166】
添加剤(AD)のポリマー担体材料は、本発明の異相ポリプロピレン組成物(HC)中での均一分布を確保するための担体ポリマーである。このポリマー担体材料は、特定のポリマーに限定されない。このポリマー担体材料は、エチレンホモポリマー、エチレンとC〜Cのα−オレフィンコモノマー等のα−オレフィンコモノマーとから得られるエチレンコポリマー、プロピレンホモポリマー、並びに/又はプロピレンとエチレン及び/若しくはC〜Cのα−オレフィンコモノマー等のα−オレフィンコモノマーとから得られるプロピレンコポリマーであってもよい。
【0167】
物品
本発明の異相ポリプロピレン組成物(HC)は、好ましくは物品、より好ましくは成形品、なおより好ましくは射出成形品の製造のために使用される。さらにより好ましいのは、洗濯機又は食器洗浄機の部品、並びに自動車用物品、とりわけ自動車の内装品及び外装品、例えばバンパー、サイドトリム、ステップアシスト、車体パネル、スポイラー、ダッシュボード、内装トリム等の製造のための使用である。
【0168】
本発明は、本発明の異相ポリプロピレン組成物(HC)を含む物品、より好ましくは成形品、例えば射出成形品、好ましくは少なくとも60重量%、より好ましくは少なくとも80重量%、なおより好ましくは少なくとも95重量%の本発明の異相ポリプロピレン組成物(HC)を含む物品、より好ましくは成形品、例えば射出成形品、例えば本発明の異相ポリプロピレン組成物(HC)からなる物品、より好ましくは成形品、例えば射出成形品をも提供する。従って、本発明は、とりわけ、本発明の異相ポリプロピレン組成物(HC)を含む洗濯機又は食器洗浄機の部品、並びに自動車用物品、とりわけ自動車の内装品及び外装品、例えばバンパー、サイドトリム、ステップアシスト、車体パネル、スポイラー、ダッシュボード、内装トリム等、好ましくは少なくとも60重量%、より好ましくは少なくとも80重量%、なおより好ましくは少なくとも95重量%の本発明の異相ポリプロピレン組成物(HC)を含む洗濯機又は食器洗浄機の部品、並びに自動車用物品、とりわけ自動車の内装品及び外装品、例えばバンパー、サイドトリム、ステップアシスト、車体パネル、スポイラー、ダッシュボード、内装トリム等、例えば本発明の異相ポリプロピレン組成物(HC)からなる洗濯機又は食器洗浄機の部品、並びに自動車用物品、とりわけ自動車の内装品及び外装品、例えばバンパー、サイドトリム、ステップアシスト、車体パネル、スポイラー、ダッシュボード、内装トリム等に関する。
【0169】
使用
本発明は、ポリプロピレン組成物(PP)の虎皮模様を低減するための、過酸化物(PO)及び架橋剤(CA)を含む組成物の使用にも関し、異相ポリプロピレン組成物(HC)が得られ、この異相ポリプロピレン組成物(HC)は上記変性ポリプロピレン組成物(mPP)を含む。異相ポリプロピレン組成物(HC)、変性ポリプロピレン組成物(mPP)及びポリプロピレン組成物(PP)の規定に関しては、これまでに提供された情報が参照される。
【0170】
上記虎皮模様の低減は、好ましくは、異相ポリプロピレン組成物(HC)について10以下、より好ましくは1〜10の範囲、なおより好ましくは1〜5の範囲のMSE値の場合に成し遂げられる。
【0171】
本発明は、これより、以下に提供する実施例によってさらに詳細に説明される。
【実施例】
【0172】
1.定義/測定方法
以下の用語の定義及び測定方法は、特段の記載がない限り、本発明の上記の一般的記載及び以下の実施例について適用される。
【0173】
NMR分光法によるポリマー微細構造の定量
定量的核磁気共鳴(NMR)分光法を使用して、ポリマーのコモノマー含有量を定量した。定量的13C{H}NMRスペクトルは、H及び13Cについてそれぞれ400.15MHz及び100.62MHzで動作するBruker Advance III 400 NMR分光計を使用して、溶液状態で記録した。すべてのスペクトルを、125℃の13Cに最適化した10mm拡張温度プローブヘッドを使用し、すべての空圧について窒素ガスを使用して記録した。およそ200mgの物質を、溶媒中の緩和剤の65mM溶液(Singh,G.,Kothari,A.,Gupta,V.,Polymer Testing 28 5(2009),475)を与えるクロム(III)アセチルアセトナート(Cr(acac))と共に3mlの1,2−テトラクロロエタン−d(TCE−d)に溶解した。均一溶液を確保するために、ヒートブロック中での最初の試料調製のあと、そのNMRチューブを回転式オーブンの中で少なくとも1時間さらに加熱した。磁石の中へ挿入したあと、チューブを10Hzで回転させた。正確なエチレン含有量の定量のために必要である高分解能及び定量性を主な理由としてこの設定を選んだ。最適化した先端角(tip angle)、1sの繰り返し時間(recycle delay)及びバイレベルWALTZ16デカップリングスキーム(Zhou,Z.,Kuemmerle,R.,Qiu,X.,Redwine,D.,Cong,R.,Taha,A.,Baugh,D.;Winniford,B.,J.Mag.Reson. 187(2007)225;Busico,V.,Carbonniere,P.,Cipullo,R.,Pellecchia,R.,Severn,J.,Talarico,G.,Macromol.Rapid Commun. 2007,28,1128)を使用して、NOEを伴わない標準的なシングルパルス励起を採用した。1スペクトルあたり全部で6144(6k)の過渡信号を取得した。
【0174】
定量的13C{H}NMRスペクトルを、独自のコンピュータープログラムを使用して処理し、積分し、関連の定量的特性を積分値から求めた。すべての化学シフトは、溶媒の化学シフトを使用して、30.00ppmのエチレンブロック(EEE)の中央のメチレン基を間接的に基準とした。このアプローチにより、この構造単位が存在しない場合でも比較可能な基準設定が可能になった。エチレンの組み込みに対応する特徴的なシグナルを観察した(Cheng,H.N.,Macromolecules 17(1984),1950)。
【0175】
2,1エリスロ位置欠陥(L.Resconi,L.Cavallo,A.Fait,F.Piemontesi,Chem.Rev. 2000,100(4),1253、Cheng,H.N.,Macromolecules 1984,17,1950、及びW−J.Wang及びS.Zhu,Macromolecules 2000,33 1157に記載される)に対応する特徴的なシグナルを観察した場合には、決定した特性に対する位置欠陥の影響の補正が必要であった。他の種類の位置欠陥に対応する特徴的なシグナルは観察されなかった。
【0176】
コモノマー分率は、13C{H}スペクトルのスペクトル領域全体にわたる複数のシグナルの積分により、Wangらの方法(Wang,W−J.,Zhu,S.,Macromolecules 33(2000),1157)を使用して定量した。この方法を、そのロバスト性、及び必要な場合には位置欠陥の存在を考慮できることが理由で選んだ。積分領域は、直面するコモノマー含有量の全範囲にわたる適用性を高めるためにわずかに調整した。
【0177】
PPEPP配列中の孤立したエチレンのみが観察される系については、Wangらの方法を、存在しないことが既知の部位の非ゼロ積分の影響を低減するように改変した。このアプローチはそのような系に対するエチレン含有量の過大評価を低減し、これは、絶対的なエチレン含有量を求めるために使用される部位の数を
E=0.5(Sββ+Sβγ+Sβδ+0.5(Sαβ+Sαγ))
に減じることにより成し遂げられた。
【0178】
この部位の組の使用により、対応する積分方程式は、Wangらの論文(Wang,W−J.,Zhu,S.,Macromolecules 33(2000),1157)で使用されたのと同じ表記法を使用して、
E=0.5(I+I+0.5(I+I))
となる。絶対的プロピレン含有量のために使用した方程式は改変しなかった。
【0179】
モルパーセントでのコモノマー組み込みはモル分率から算出した。
E[モル%]=100×fE
重量パーセントでのコモノマー組み込みはモル分率から算出した。
E[重量%]=100×(fE×28.06)/((fE×28.06)+((1−fE)×42.08))
【0180】
トライアドレベルでのコモノマー配列分布は、Kakugoらの分析方法(Kakugo,M.,Naito,Y.,Mizunuma,K.,Miyatake,T. Macromolecules 15(1982)1150)を使用して決定した。この方法は、そのロバスト性、及びより広い範囲のコモノマー含有量へと適用性を高めるためにわずかに調整される積分領域が理由で選んだ。
【0181】
プロピレンポリマー(PP1)の第2ポリプロピレン画分(PP1b)、すなわち第2反応器(R2)中で製造されたポリマー画分のメルトフローレートMFR(230℃)の算出
【数1】
上記式中、
w(PP1a)は、第1プロピレンポリマー画分、すなわち第1反応器(R1)中で製造されたポリマーの重量分率[単位:重量%]であり、
w(PP1b)は、第1第2プロピレンポリマー画分、すなわち第2反応器(R2)中で製造されたポリマーの重量分率[単位:重量%]であり、
MFR(PP1a)は、第1プロピレンポリマー画分、すなわち第1反応器(R1)中で製造されたポリマーのメルトフローレートMFR(230℃)[単位:g/10分]であり、
MFR(PP1)は、第1及び第2のプロピレンポリマー画分、すなわち第1及び第2の反応器(R1+R2)中で製造されたポリマーのメルトフローレートMFR(230℃)[単位:g/10分]であり、
MFR(PP1b)は、第2プロピレンポリマー画分、すなわち第2反応器(R2)中で製造されたポリマーの算出したメルトフローレートMFR(230℃)[単位:g/10分]である。
【0182】
NMR分光法によるプラストマー中のコモノマー含有量の定量
定量的核磁気共鳴(NMR)分光法を使用して、ポリマーのコモノマー含有量を定量した。定量的13C{H}NMRスペクトルは、H及び13Cについてそれぞれ500.13MHz及び125.76MHzで動作するBruker Advance III 500 NMR分光計を使用して、溶融状態で記録した。すべてのスペクトルを、150℃の13Cに最適化した7mmマジック角回転(MAS)プローブヘッドを使用し、すべての空圧について窒素ガスを使用して記録した。およそ200mgの物質を外径7mmのジルコニアMASローターに詰め、4kHzで回転させた。迅速な同定及び正確な定量に必要な高感度[Klimke,K.,Parkinson,M.,Piel,C.,Kaminsky,W.,Spiess,H.W.,Wilhelm,M.,Macromol.Chem.Phys. 2006;207:382.;Parkinson,M.,Klimke,K.,Spiess,H.W.,Wilhelm,M.,Macromol.Chem.Phys. 2007;208:2128;Castignolles,P.,Graf,R.,Parkinson,M.,Wilhelm,M.,Gaborieau,M.,Polymer 50(2009)2373]を主な理由としてこの設定を選んだ。3sの短い繰り返し時間の過渡的NOE[Pollard,M.,Klimke,K.,Graf,R.,Spiess,H.W.,Wilhelm,M.,Sperber,O.,Piel,C.,Kaminsky,W.,Macromolecules 2004;37:813;Klimke,K.,Parkinson,M.,Piel,C.,Kaminsky,W.,Spiess,H.W.,Wilhelm,M.,Macromol.Chem.Phys. 2006;207:382]及びRS−HEPTデカップリングスキーム[Filip,X.,Tripon,C.,Filip,C.,J.Mag.Resn. 2005,176,239;Griffin,J.M.,Tripon,C.,Samoson,A.,Filip,C.、及びBrown,S.P.,Mag.Res. in Chem. 2007 45,S1,S198]を利用して、標準的なシングルパルス励起を採用した。1スペクトルあたり全部で1024(1k)の過渡信号を取得した。低コモノマー含有量に対するその高感度が理由でこの設定を選んだ。定量的13C{H}NMRスペクトルを、特注のスペクトル解析自動化プログラムを使用して処理し、積分し、定量的特性を求めた。すべての化学シフトは、30.00ppmのバルクメチレンシグナル(δ+)を内部標準としている[J.Randall,Macromol.Sci.,Rev.Macromol.Chem.Phys. 1989,C29,201]。
【0183】
コモノマーの組み込みに対応する特徴的なシグナルを観察し[J.Randall,Macromol.Sci.,Rev.Macromol.Chem.Phys. 1989,C29,201]、すべてのコモノマー含有量をポリマー中に存在するすべての他のモノマーに対して算出した。
[さらなる情報について、Zhou,Z.,Kuemmerle,R.,Qiu,X.,Redwine,D.,Cong,R.,Taha,A.,Baugh,D.Winniford,B.,J.Mag.Reson. 187(2007)225及びBusico,V.,Carbonniere,P.,Cipullo,R.,Pellecchia,R.,Severn,J.,Talarico,G.,Macromol.Rapid Commun. 2007,28,1128を参照]
【0184】
プラストマー(PL)中のコモノマー含有量を、13C−NMRを用いて較正し、Nicolet Omnic FTIR ソフトウェアと共にNicolet Magna 550 IR分光計を使用するフーリエ変換赤外分光法(FTIR)に基づいて公知の様式で測定した。約250μmの厚さを有するフィルムを試料から圧縮成形した。同様のフィルムを、既知含有量のコモノマーを有する較正用試料から作製した。コモノマー含有量は、1430〜1100cm−1の波数範囲のスペクトルから決定した。吸光度は、いわゆる短ベースライン又は長ベースライン又はその両方を選択することにより、ピークの高さとして測定する。短ベースラインは、最低点を通って約1410〜1320cm−1に引き、長ベースラインは約1410〜1220cm−1間に引く。各ベースラインの種類に対して個々に較正を行う必要がある。また、未知試料のコモノマー含有量は、較正試料のコモノマー含有量の範囲内である必要がある。
【0185】
MFR(230℃)はISO 1133に従って求める(230℃、2.16kg荷重)。
【0186】
MFR(190℃)はISO 1133に従って求める(190℃、2.16kg荷重)。
【0187】
冷キシレン可溶部(XCS、重量%):冷キシレン可溶部(XCS)の含有量は、ISO 16152;第1版;2005−07−01に従って25℃で測定する。不溶のまま留まる部分は冷キシレン不溶部(XCI)である。
【0188】
熱キシレン不溶部(XHU、重量%):ゲル含有量は、熱キシレン不溶部(XHU)と同一であると仮定する。熱キシレン不溶部(XHU)は、1gの小さく切断したポリマー試料を、350mlキシレンを用いてソックスレー抽出器の中、沸点で5時間抽出することにより決定する。残っている固体量を90℃で乾燥し、不溶物量を決定するために秤量する。
【0189】
固有粘度は、DIN ISO 1628/1、1999年10月(デカリン中135℃)に従って求める。
【0190】
密度は、ISO 1183−187に従って求める。試料調製は、ISO 1872−2:2007に従い圧縮成形によって行う。
【0191】
曲げ試験:曲げ弾性率及び曲げ強度は、ISO 294−1:1996に従って調製した80×10×4mmの射出成形した試験片に対して、ISO 178に従って3点曲げで測定した。
【0192】
ノッチ付きシャルピー衝撃強さは、EN ISO 1873−2に記載される射出成形した試験片(80×10×4mm)を使用することにより、ISO 180/1Aに従って23℃で測定する。
【0193】
収縮:収縮を、中心にゲートを設けて射出成形した円板(直径180mm、厚さ3mm、355°の流れ角及び5°のカットアウトに対して測定した。2つの試験片を、2つの異なる保圧時間(それぞれ10秒及び20秒)を採用して成形した。ゲートでの溶融温度は260℃であり、金型内の平均フローフロント速度は100mm/sである。金型温度:40℃、背圧:600bar(60MPa)。
【0194】
この試験片を室温で96時間調節した後、流れ方向に対して半径方向及び接線方向の寸法変化を両方の板に対して測定する。両方の板からのそれぞれの値の平均を最終結果として報告する。
【0195】
フローマーク
フローマークを示す傾向を、後述する方法を用いて調べた。この方法は、国際公開第2010/149529号パンフレットに詳細に記載されており、この特許文献をその全体を本明細書に援用する。
【0196】
Sybille Frankらによって、PPS 25 Intern.Conf.Polym.Proc.Soc 2009又はProceedings of the SPIE,第6813巻,68130T−68130T−8頁(2008)に記載されている光学測定システムを、表面品質を解析するために使用した。
【0197】
この方法は2つの側面からなる。
1.画像の記録
この測定システムの基本原理は、閉鎖環境中で明確な光源(LED)を用いてプレートを照らし、CCDカメラシステムを用いて画像を記録することである。
概略的な設定は図1に与えられる。
2.画像解析
試験片を一方の側から投光照明で照らし、その光の上方向に反射した部分を2枚のミラーを介してCCDセンサーへと屈折させる。このように作り出されたグレー値画像を列ごとに解析する。記録されたグレー値の偏差から、平均二乗誤差(MSE)を算出し、これにより表面品質の定量が可能になる。すなわち、MSE値が大きいほど、表面欠陥が顕著である。
【0198】
一般に、1つ及び同じ材料に対しては、射出速度が高くなるほど、フローマークへの傾向が高くなる。
【0199】
この評価のために、粒VW K50及び1.4mmのフィルムゲートを用いて製造した440×148×2.8mmの板を使用し、これらの板は、それぞれ1.5秒、3秒及び6秒の異なる充填時間で製造した。
さらなる条件:
溶融温度:240℃
金型温度:30℃
動圧:10bar(1MPa)油圧
特定の充填時間でMSE値が小さいほど、フローマークへの傾向が小さい。
【0200】
ガラス転移温度Tg及び貯蔵弾性率G’(23℃)は、ISO 6721−7に従う動的機械分析によって求める。測定は、圧縮成形した試料(40×10×1mm)に対して、−100℃〜+150℃で、2℃/分の加熱速度及び1Hzの周波数を用い、ねじれモードで行う。
【0201】
2.実施例
PP1の調製
触媒の調製
最初に、0.1モルのMgCl×3EtOHを、反応器中で、大気圧中で、250mlのデカンに不活性条件下で懸濁させた。この溶液を−15℃の温度まで冷却し、温度を上記レベルに維持しながら、300mlの冷TiClを加えた。次に、このスラリーの温度を20℃までゆっくりと上昇させた。この温度で、0.02モルのフタル酸ジオクチル(DOP)をこのスラリーに加えた。フタル酸エステルの添加後、温度を90分間の間に135℃まで上げ、このスラリーを60分間静置した。次に、さらに300mlのTiClを加え、温度を135℃に120分間保った。このあと、この触媒を液体から濾過し、80℃で、300mlのヘプタンで6回洗浄した。次に、固体触媒成分を濾過し、乾燥した。触媒及びその調製のコンセプトは、例えば特許公報、欧州特許出願公開第491566号明細書、欧州特許出願公開第591224号明細書及び欧州特許出願公開第586390号明細書に一般的に記載されている。
【0202】
上記触媒をさらに改質した(触媒のVCH改質)。
【0203】
35mlの鉱油(Paraffinum Liquidum PL68)を125mlのステンレス鋼反応器に加え、続いて不活性条件下、室温で0.82gのトリエチルアルミニウム(TEAL)及び0.33gのジシクロペンチルジメトキシシラン(ドナーD)を加えた。10分後、5.0gの上記調製した触媒(Ti含有量1.4重量%)を加え、さらに20分後、5.0gのビニルシクロヘキサン(VCH)を加えた。温度を30分の間に60℃まで上昇させ、そこで20時間保った。最後に、温度を20℃まで下げ、この油/触媒混合物中の未反応のVCHの濃度を分析し、それが200重量ppmであることが判明した。
【0204】
【表1】
【0205】
PP1粉末を、0.4重量%のタルク(IMI製Talc HM 2)、0.1重量%のIrganox B 215 FF、及び0.07重量%のCrodaにより供給されるステアリン酸カルシウムを含む標準的な添加剤充填物を用いて二軸押出機中で安定化した。
【0206】
変性ポリプロピレン組成物(mPP)の調製
例CE1(比較)
60.0重量%のPP1及び40.0重量%のDow製のエチレン−ブテンコポリマーEngage HM 7487を同方向回転二軸押出機で溶融混合した。このポリマー溶融混合物を吐出し、ペレットにした。
【0207】
例CE2(比較)
58.0重量%のPP1及び40.0重量%のDow製のエチレン−ブテンコポリマーEngage HM 7487の混合物に、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(tert−ブチルペルオキシ)ヘキサン5重量%及びポリプロピレンのマスターバッチ2.0重量%を、温度プロファイル20/190/220/225/230/230/210/200℃及びスクリュー回転数300rpmの二軸押出機ZSK 18(スクリュー長さ40D)の主ホッパーに投入した。ポリマー溶融混合物を吐出し、ペレットにした。
【0208】
例CE3(比較)
57.0重量%のPP1及び40.0重量%のDow製のエチレン−ブテンコポリマーEngage HM 7487の混合物に、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(tert−ブチルペルオキシ)ヘキサン5重量%及びポリプロピレンのマスターバッチ3.0重量%を、温度プロファイル20/190/220/225/230/230/210/200℃及びスクリュー回転数300rpmの二軸押出機ZSK 18(スクリュー長さ40D)の主ホッパーに投入した。このポリマー溶融混合物を吐出し、ペレットにした。
【0209】
例CE4(比較)
56.0重量%のPP1及び40.0重量%のDow製のエチレン−ブテンコポリマーEngage HM 7487の混合物に、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(tert−ブチルペルオキシ)ヘキサン5重量%及びポリプロピレンのマスターバッチ4.0重量%を、温度プロファイル20/190/220/225/230/230/210/200℃及びスクリュー回転数300rpmの二軸押出機ZSK 18(スクリュー長さ40D)の主ホッパーに投入した。このポリマー溶融混合物を吐出し、ペレットにした。
【0210】
例IE4(本発明)
48.0重量%のPP1及び40.0重量%のDow製のエチレン−ブテンコポリマーEngage HM 7487の混合物に、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(tert−ブチルペルオキシ)ヘキサン5重量%及びポリプロピレンのマスターバッチ2.0重量%、2.0重量%のアクリル酸亜鉛(Total Cray Valley製Dymalink 633)及び8.0重量%のプロピレンホモポリマー(HC001)を、温度プロファイル20/190/220/225/230/230/210/200℃及びスクリュー回転数300rpmの二軸押出機ZSK 18(スクリュー長さ40D)の主ホッパーに投入した。このポリマー溶融混合物を吐出し、ペレットにした。
【0211】
【表2】
PP2は、スリップ剤及び粘着防止剤を含まず、ステアリン酸カルシウムを含まず、微粒子酸スカベンジャーとしての500ppmの沈降炭酸カルシウム(Socal U1S1、Solvay Chemicalsにより流通している)を含み、2.0g/10分のMFR(230℃/2.16kg)及び905kg/mの密度を有する汎用射出成形用ポリプロピレンホモポリマーである。
PLは、0.860g/cmの密度、2.0g/10分のメルトフローレートMFR(190℃、2.16kg)及び19.1モル%の1−ブテン含有量を有する市販のDow製のエチレン−ブテンコポリマーEngage HM 7487である。
POX PPは、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(tert−ブチルペルオキシ)ヘキサン5重量%及びポリプロピレンのマスターバッチである。
CAは、Total Cray Valley製のアクリル酸亜鉛Dymalink 633である。