(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6952804
(24)【登録日】2021年9月30日
(45)【発行日】2021年10月20日
(54)【発明の名称】電子部品およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
H02K 11/33 20160101AFI20211011BHJP
B60R 16/02 20060101ALI20211011BHJP
【FI】
H02K11/33
B60R16/02 610D
【請求項の数】12
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2019-567656(P2019-567656)
(86)(22)【出願日】2018年5月30日
(65)【公表番号】特表2020-522975(P2020-522975A)
(43)【公表日】2020年7月30日
(86)【国際出願番号】EP2018064244
(87)【国際公開番号】WO2018224376
(87)【国際公開日】20181213
【審査請求日】2019年12月6日
(31)【優先権主張番号】102017209519.9
(32)【優先日】2017年6月7日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】519136009
【氏名又は名称】シー・ピー・ティー ツヴァイ ゲー・エム・ベー・ハー
【氏名又は名称原語表記】CPT Zwei GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ウーヴェ シュテファン
(72)【発明者】
【氏名】マークス ウルヘル
【審査官】
三澤 哲也
(56)【参考文献】
【文献】
特開2014−230363(JP,A)
【文献】
特開2004−266946(JP,A)
【文献】
国際公開第2015/119224(WO,A1)
【文献】
特開平07−245898(JP,A)
【文献】
特開2005−253138(JP,A)
【文献】
特開2010−161860(JP,A)
【文献】
特開2002−010609(JP,A)
【文献】
特開2006−014478(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2002/0030415(US,A1)
【文献】
韓国公開特許第10−2007−0020259(KR,A)
【文献】
米国特許出願公開第2016/0211727(US,A1)
【文献】
特開2008−160988(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 11/33
B60R 16/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気部品(10)であって、
電気コンポーネント(14)と、接触ストリップ(18)を有する電子制御装置(16)とを備え、
前記制御装置(16)と前記電気コンポーネント(14)とが少なくとも一部領域でプラスチック(32)によって射出成形されており、該プラスチック(32)は、前記電気コンポーネント(14)と前記制御装置(16)とを機械的に接続し、ソケット(21)を前記接触ストリップ(18)の周りに形成し、
前記接触ストリップ(18)は、プラスチック製の基体(22)を有し、
前記プラスチック(32)は、前記基体(22)に結合されている、電気部品(10)。
【請求項2】
前記接触ストリップ(18)は、金属製のくし状の部材である、請求項1記載の電気部品(10)。
【請求項3】
前記プラスチック(32)は、前記電子制御装置を完全に封入する、請求項1または2記載の電気部品(10)。
【請求項4】
前記電気コンポーネント(14)は、電気モーターとして構成されている、請求項1から3までのいずれか1項記載の電気部品(10)。
【請求項5】
前記ソケット(21)は、バスシステム用のソケット(21)として構成されている、請求項1から4までのいずれか1項記載の電気部品(10)。
【請求項6】
前記プラスチックは、熱硬化性樹脂である、請求項1から5までのいずれか1項記載の電気部品(10)。
【請求項7】
電気部品(10)を製造する方法であって、
接触ストリップ(18)と電気コンポーネント(14)とが電子制御装置(16)と共に事前に取り付けられ、該電子制御装置(16)と一緒に射出成形工具に挿入され、少なくとも一部領域でプラスチック(32)によって射出成形され、
前記プラスチック(32)は、前記電気コンポーネント(14)を前記電子制御装置(16)に機械的に接続し、ソケット(21)を前記接触ストリップ(18)の周りに形成し、
前記接触ストリップ(18)は、前記電子制御装置(16)に接続される前に、プラスチック製の基体(22)によって部分的に射出成形され、
前記プラスチック(32)は、前記プラスチック(32)による射出成形の際、前記基体(22)に結合される、方法。
【請求項8】
前記接触ストリップ(18)として、前記電子制御装置(16)にガルバニック接続される金属製のくし状の部材が使用される、請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記制御装置(16)は、前記プラスチック(32)が前記制御装置(16)を完全に封入するように射出成形される、請求項7または8記載の方法。
【請求項10】
前記電気コンポーネント(14)として、電気モーターが使用される、請求項7から9までのいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
前記ソケット(21)は、バスシステム用のソケット(21)として成形される、請求項7から10までのいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
前記プラスチック(32)として熱硬化性樹脂が使用される、請求項7から11までのいずれか1項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気部品、特に自動車用の電気部品ならびにその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現代の自動車では、ますます多くの電気部品が使用されている。ここでは、特に、自動車のさらなるコンポーネント用のアクチュエータとして用いられる電気モーターが重要である。例えば、そのようなアクチュエータは自動車の変速機に取り付けられ、そこでは、これらのアクチュエータを、一方ではクラッチの操作に使用し、他方ではギアセレクタに使用することができる。この種の部品の駆動制御を容易にするために、そのような部品は、通常、電子制御装置に直接接続されている。これらの電子制御装置は、自動車のバスシステムを介して電気コンポーネントのための抽象的制御命令を受信し、この命令をコンポーネントの具体的な制御に置き換える。
【0003】
特に、アクチュエータが変速機の領域に取り付けられる場合、アクチュエータと電子制御装置とからなる組み合わせは、多くの場合、高い機械的負荷と熱的負荷とに耐える必要がある。それゆえ、電気コンポーネントと制御装置とが、通常、1つのハウジング内に取り付けられ、このハウジングが、電気コンポーネントと制御装置とを保護し、さらに外部に向けて電気的接触接続のためのソケットを提供している。このソケットを介して、制御装置は、制御信号を受信し、電気コンポーネントのために必要な動作電流を受け取ることができる。
【0004】
通常、この目的のために、プラスチック製、板金または鋳造アルミニウム製のハウジングが使用される。
【0005】
そのようなハウジング内へ、電気コンポーネント、電子制御ユニットならびに接触ソケットを取り付ける際に相当な作業量が発生し、これらの作業量は、製造コストを高め、さらに複雑さに起因する誤った取り付けや不良品につながる恐れもある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明の課題は、部品の特に簡単な取り付けを可能にする電気部品ならびにその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題は、請求項1の特徴を有する電気部品ならびに請求項8の特徴を有する方法によって解決される。
【0008】
そのような電気部品、特に、自動車用の電気部品は、電気コンポーネントと、接触ストリップを有する電子制御装置とを含む。ここでは、制御装置と電気コンポーネントとが、少なくとも一部領域でプラスチックによって射出成形されており、プラスチックは、電気部品と制御装置とを機械的に接続し、ソケットを接触ストリップの周りに形成することが想定されている。
【0009】
したがって、複数の作業ステップを伴う複雑な取り付けの代わりに、プラスチックによる射出成形によって、機械的に安定したハウジングを実現することができ、電気部品と電子制御装置との接続も実現することができる。同時に、射出成形の際には、接触ストリップの周りにソケットの所望の幾何形状が生じ、そのため、ソケット用の個々の部品の準備を省くことができる。これによっても、事前取り付けステップが不要になる。
【0010】
ソケット用の別個の部品を省くことができるため、水分や変速機流体などの媒体がハウジング内に侵入する原因になりかねない、ソケットとハウジングとの間の接触箇所も不要になる。これにより、特に厚みがあって、ひいては耐久性のある部品が得られる。
【0011】
総じて、特に迅速にかつ簡単に製造することができ、これによって製造コストも不良品も低減することが可能な電気部品が実現される。
【0012】
ここでは、好適には、接触ストリップは、金属製の接触コームである。この金属製の接触コームは、電子制御装置に特に簡単に取り付けることができる。この電子制御装置は、例えば、プリント基板として形成されてもよい。
【0013】
さらに、好適には、接触ストリップは、プラスチック製の基体を有する。
【0014】
これにより、接触ストリップに、付加的な機械的安定性が与えられ、そのため、射出成形の際の変形を回避することができる。このとき、基体が射出成形中に溶融し、これによって、射出成形のプラスチックと素材結合的に化合し、その結果、特に安定した電気部品が実現される。
【0015】
本発明のさらに好適な実施形態では、プラスチックは制御装置を完全に
封入する。したがって、電子制御装置の敏感な電子コンポーネントが、高い信頼性のもとで周辺環境の影響から保護される。
【0016】
さらに好適には、電気部品の電気コンポーネントは、電気モーターとして、特に自動車用の電気アクチュエータとして構成されている。
【0017】
これにより、特に、自動車の動作中に高い機械的負荷にさらされているコンポーネントが、特に簡単な方法で高い信頼性と安定性とを伴って構成され、これによって、動作負荷から保護される。
【0018】
さらに好適には、ソケットは、バスシステム用の、特にCANバスまたはLINバス用のソケットとして構成されている。
【0019】
これにより、アダプターなどを必要とせずに、この種の電気部品を標準化された方法で自動車のさらなるコンポーネントに接続できることが保証される。
【0020】
本発明のさらなる好適な実施形態では、プラスチックは熱硬化性樹脂である。そのようなプラスチックは、機械的にも熱的にも特に安定している。
【0021】
本発明はさらに、電気部品の製造方法に関し、この方法では接触ストリップと電気コンポーネントとが電子制御装置と共に事前に取り付けられ、電子制御装置と一緒に射出成形工具に挿入される。射出成形工具内では前述した部品は少なくとも一部領域でプラスチックによって射出成形され、プラスチックは、電気コンポーネントを電子制御装置に機械的に接続し、ソケットを接触ストリップの周りに形成する。
【0022】
これにより、既に本発明による電気部品に基づいて説明したように、部品の個々の構成要素の機械的結合を可能にすると同時に敏感な電子コンポーネントを保護し、その際に電気部品の電気的接触接続のためのソケットも同時に成形される、少ない製造ステップの特に簡単な製造方法が実現される。その結果、このソケットのための別個の部品を不要にすることができる。
【0023】
好適には、接触ストリップとして、電子制御装置にガルバニック接続される金属製の接触コームが使用される。ここでのガルバニック接続は、例えばはんだ付け、圧着、圧接などによって形成可能である。
【0024】
そのため、部品と外部コンポーネントとの間の特に安定した電気的接触接続が保証され、これは自動車内の厳しい動作条件の下でも安定的に維持される。
【0025】
本発明のさらなる好適な実施形態では、接触ストリップは、電子制御装置に接続される前に、プラスチック製、特に熱可塑性プラスチック製の基体によって部分的に射出成形される。
【0026】
これは、接触ストリップに付加的な機械的安定性を付与する。基体は、電子制御装置の射出成形の際にさらにこの射出成形ステップで使用されるプラスチックに接続することができ、これによって、機械的安定性が付加的に向上する。
【0027】
さらに好適には、制御装置は、プラスチックが制御装置を完全に
封入するように射出成形される。
【0028】
これにより、唯一の方法ステップで、高い信頼性のもとで周辺環境の影響から制御装置を保護できる完全なハウジングが実現される。
【0029】
さらに好適には、電気コンポーネントとして、電気モーター、特に自動車用の電気アクチュエータが使用される。
【0030】
特に、電気モーターなどのコンポーネントでは、電子制御装置の確実な
封入は特に有利である。なぜなら、電子制御装置は、特に高い負荷にさらされていることが多いからである。
【0031】
さらに好適には、ソケットは、バスシステム用、特にCANバスまたはLINバス用のソケットとして成形される。
【0032】
そのため、既に説明したように、電気部品のための標準化された接触接続が実現される。したがって、この電気部品は、多くの様々な自動車に問題なく使用することができる。
【0033】
さらに好適には、プラスチックとして熱硬化性樹脂が使用される。
【0034】
熱硬化性樹脂は、機械的および熱的に特に安定しており、そのため、電気部品は特に良好に保護される。
【0035】
以下では、本発明およびその実施形態を、図面に基づきより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】射出成形前の電気アクチュエータ、電子制御装置のプリント基板およびこのプリント基板のための接触ストリップからなる事前取り付けアセンブリを示した図
【
図2】
図1のアセンブリの部分的な射出成形によって得られる本発明による電気部品の実施例を示した図
【発明を実施するための形態】
【0037】
図2に示され全体が符号10で示される、統合化された制御装置を有するアクチュエータユニットを製造するために、まず、
図1に示され全体が符号12で示される事前取り付けアセンブリが最初に提供される。この目的のために、電気モーター14が電子制御装置のプリント基板16に装着される。このプリント基板16上には、さらに、後でソケット21用の電気的接触接続を形成する接触ストリップ18が取り付けられる。
【0038】
接触ストリップ18は、複数の電気接点20を有し、これらの電気接点20は、見易くする理由からすべてが示されているわけではなく、プラスチック製の基体22に保持されている。この基体22は、好適には、熱可塑性樹脂製の接触ストリップ18を電気接点20に射出成形することによって作成可能である。
【0039】
接触ストリップ18をプリント基板16に接続するために、例えばはんだ付け、圧着などの通常の接続法を使用することができる。さらに、プリント基板16上には、電子コンポーネント24も事前に取り付けられており、これらも同様に見易くする理由からすべてが示されているわけではないが、モーター14の制御のための機能を提供している。
【0040】
モーター14のハウジング26は、軸方向に突出するタブ28を有しており、これらのタブ28は、モーター14の出力側30とは反対側に配置されており、モーターとの接触領域においてプリント基板16を取り囲み、これによって、図示の事前取り付けアセンブリ12に保持される。
【0041】
事前取り付けアセンブリ12は、その後射出成形工具に挿入され、一部領域がプラスチック体32によって射出成形される。このプラスチック体32は、好適には、熱硬化性樹脂からなり、これはアクチュエータ14が動作中に受ける機械的要件に特に良好に耐えることができる。プラスチック体32は、プリント基板16を完全に
封入し、これによって、電子コンポーネント24ならびにプリント基板16の印刷された導体路が保護される。同時に、プラスチック体32は、モーター14のハウジング26のタブ28を取り囲み、これによって、プリント基板16とモーター14との間の堅固な機械的結合を実現する。
【0042】
プラスチック体32の射出成形の際には、同時に、接触ストリップ18の周りでソケット21のスリーブ34が成形される。そのため、別個のソケットの事前作成を省くことができる。その際、射出成形されたプラスチックは、接触ストリップ18の基体22に結合することができ、これによって、後で水分がプラスチック体32内部へ侵入する原因になりかねないギャップまたは隙間が残らない。
【0043】
これにより、例えば自動車の自動変速機のクラッチアクチュエータまたはギアセレクタとして使用することができる、特に安定的であると同時に製造が容易なアクチュエータユニット10が得られる。