(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6952904
(24)【登録日】2021年9月30日
(45)【発行日】2021年10月27日
(54)【発明の名称】内側および外側の絶縁空所を備えた速度センサ
(51)【国際特許分類】
G01P 3/487 20060101AFI20211018BHJP
G01D 5/245 20060101ALI20211018BHJP
B60T 8/171 20060101ALI20211018BHJP
G01P 1/02 20060101ALI20211018BHJP
G01B 7/30 20060101ALI20211018BHJP
G01R 33/02 20060101ALI20211018BHJP
G01R 33/07 20060101ALI20211018BHJP
【FI】
G01P3/487 C
G01D5/245 110M
G01D5/245 H
G01P3/487 F
B60T8/171 A
G01P1/02
G01B7/30 H
G01R33/02 U
G01R33/07
【請求項の数】17
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2020-538679(P2020-538679)
(86)(22)【出願日】2019年1月8日
(65)【公表番号】特表2021-510420(P2021-510420A)
(43)【公表日】2021年4月22日
(86)【国際出願番号】EP2019050285
(87)【国際公開番号】WO2019137888
(87)【国際公開日】20190718
【審査請求日】2020年8月5日
(31)【優先権主張番号】102018000221.8
(32)【優先日】2018年1月12日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】597007363
【氏名又は名称】クノル−ブレムゼ ジステーメ フューア ヌッツファールツォイゲ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Knorr−Bremse Systeme fuer Nutzfahrzeuge GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】アンドレ クルフティンガー
(72)【発明者】
【氏名】クラウス レヒナー
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル ブレッシング
(72)【発明者】
【氏名】ギュンター クライン
【審査官】
森 雅之
(56)【参考文献】
【文献】
特開2003−065835(JP,A)
【文献】
特許第3786687(JP,B2)
【文献】
独国特許発明第102004016430(DE,B3)
【文献】
独国実用新案第202010009785(DE,U1)
【文献】
独国特許出願公開第19744673(DE,A1)
【文献】
英国特許出願公告第2361284(GB,A)
【文献】
米国特許出願公開第2004/0126562(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01P
G01D
G01B
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
速度センサ(100)に対し相対的に運動する物体の速度を測定するための速度センサ(100)であって、当該速度センサ(100)は速度センサハウジング(111)を備え、前記速度センサハウジング(111)は、位置固定された受容部内に摺動および/または摩擦および/または形状による結合によって装着されるようになっており、前記速度センサハウジング(111)は、プラスチックから成る射出成形部品(107)を収容し、前記射出成形部品(107)内に速度センサ素子(104、105)の少なくとも一部分がインサート成形されている、速度センサ(100)において、
a)前記射出成形部品(107)は、前記速度センサハウジング(111)の壁部の内面(112)と向き合った前記射出成形部品(107)の外周面(113)に、少なくとも1つの外側空所(116)を有しており、1つの外側空所(116)の境界面と、前記速度センサハウジング(111)の前記壁部の前記内面(112)との間に、それぞれ1つの外側空室が形成され、かつ
b)前記射出成形部品(107)の内部に、内側空室を成す少なくとも1つの内側空所(119)が形成されており、
前記外側空室および前記内側空室は、熱伝導、熱放射および対流を低減するべく、空気で満たされているかまたは真空となるように排気されている、
ことを特徴とする、速度センサ(100)。
【請求項2】
前記速度センサハウジング(111)は、少なくとも部分的に円筒状のスリーブ形状であり、前記射出成形部品(107)は、少なくとも部分的に円筒状の中実体として形成されている、
請求項1記載の速度センサ。
【請求項3】
少なくとも1つの前記速度センサ素子(104、105)は、能動型センサ素子または受動型センサ素子である、
請求項1または2記載の速度センサ。
【請求項4】
前記内側空所(119)および/または前記外側空所(116)は、前記射出成形部品(107)に部分的にしか進入しておらず、完全には進入していない、
請求項1から3までのいずれか1項記載の速度センサ。
【請求項5】
前記速度センサハウジング(111)はクランプスリーブとして構成されている、
請求項1から4までのいずれか1項記載の速度センサ。
【請求項6】
前記速度センサハウジング(111)は鋼板から製造されている
請求項1から5までのいずれか1項記載の速度センサ。
【請求項7】
前記速度センサハウジング(111)と前記射出成形部品(107)との間に、少なくとも1つのシール部材(118)が配置されており、前記シール部材(118)は、少なくとも1つの前記外側空室を周囲から密閉している、
請求項1から6までのいずれか1項記載の速度センサ。
【請求項8】
当該速度センサは回転数センサであり、前記運動する物体は回転する物体である、
請求項1から7までのいずれか1項記載の速度センサ。
【請求項9】
前記回転する物体は、当該速度センサ(100)の永久磁石(102)を備えたロータ(101)を駆動し、前記永久磁石(102)は前記ロータ(101)の周囲に、前記永久磁石(102)の磁極が交互に並ぶように配置されている、
請求項8記載の速度センサ。
【請求項10】
前記回転する物体は、当該速度センサ(100)の歯および間隙(102’)を備えたロータ(101)を駆動し、前記歯および前記間隙(102’)は前記ロータ(101)の周囲に、前記歯および前記間隙(102’)が交互に並ぶように配置されている、
請求項8記載の速度センサ。
【請求項11】
前記速度センサ素子(104、105)は、磁界の変化を探査するためにホール素子と半導体チップとを含み、または前記速度センサ素子(104、105)は、磁石を用いて磁界の変化を検出するために用いられる、
請求項8から10までのいずれか1項記載の速度センサ。
【請求項12】
a)前記速度センサハウジング(111)はカップ状に形成されており、前記回転する物体と向き合った前記速度センサハウジング(111)の終端部に、速度センサハウジング底部(115)を有しており、
b)前記射出成形部品(107)の周面の、前記回転する物体と向き合った終端部側の端面に、端面側外側空所(116)が形成されており、前記端面側外側空所(116)の底面に、前記速度センサ素子(104、105)の少なくとも一部分が配置されており、
c)前記端面側外側空所(116)の前記底面と、前記速度センサハウジング底部(115)との間に、端面側外側空室が形成される、
請求項8から11までのいずれか1項記載の速度センサ。
【請求項13】
強磁性材料から成る結合部材(120)が設けられており、前記結合部材(120)は、前記速度センサ素子(104、105)から前記射出成形部品(107)の前記端面側外側空所(116)内に至るまで、軸線方向で延在している、
請求項12記載の速度センサ。
【請求項14】
前記結合部材(120)は、冷却フィン(121)を、かつ/または前記磁界を集束させるために少なくとも一方の端部にテーパ部(122)を有する、
請求項13記載の速度センサ。
【請求項15】
請求項1から14までのいずれか1項記載の少なくとも1つの速度センサ(100)を含む運転者支援システム。
【請求項16】
請求項15記載の運転者支援システムを備えた自動車。
【請求項17】
アンチロックブレーキシステム(ABS)、トラクションコントロールシステム(TCS)、横滑り防止装置(ESP)、アダプティブクルーズコントロール(ACC)、または車両追従制御システムとして構成される、請求項15記載の運転者支援システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、速度センサに対し相対的に運動する物体の速度を測定するための、請求項1の上概念記載の速度センサに関する。この速度センサは速度センサハウジングを備え、この速度センサハウジングは、位置固定された受容部内に摩擦および/または形状による結合によって装着するために設けられており、この場合、速度センサハウジングは、プラスチックから成る射出成形部品を収容し、この射出成形部品内に速度センサ素子の少なくとも一部分がインサート成形されている。
【0002】
本発明は、請求項16記載の、少なくとも1つの速度センサを含む運転者支援システム、特にアンチロックブレーキシステム(ABS)、トラクションコントロールシステム(TCS)、横滑り防止装置(ESP)、アダプティブクルーズコントロール(ACC)、または車両追従制御システムにも関する。
【0003】
とりわけ本発明は、運転者支援システムを備えた請求項17記載の自動車にも関する。
【0004】
この種の速度センサは、たとえば歯車など運動する機械部材において、それらの部材の速度もしくは回転数を特定し、接続された電気導体を介して相応の信号を後続処理のために電子装置へ供給するために、設けられている。かかる速度センサの代表としてたとえば車輪回転数センサを挙げることができ、このセンサは、自動車の車輪の回転数をアンチロックブレーキシステムの枠内で捕捉する。
【0005】
受動型の速度センサと能動型の速度センサとが知られている。能動型の速度センサは、内部で増幅または信号成形を行う構成要素を含み電流供給部により駆動される測定センサ素子である。センサ信号は、センサ内に組み込まれた自身の電子装置により直接、矩形波信号を送出することができる。これに対し受動型の速度センサは、受動素子(インダクタンス、キャパシタンスおよび抵抗を有する誘導コイルなど)しか含まないセンサである。信号はたいていのケースにおいてアナログ電圧として送出され、通常、回転数に相応する周波数の正弦波電圧に従って変化する。
【0006】
よって、アンチロックブレーキシステムにおける回転数センサは、「受動型」の場合もあるし、または「能動型」の場合もある。したがって持続的に接続された電流供給部が設けられていない回転数センサ(「受動的な」誘導コイル)は、「受動型」と称される。「能動的な」電子ユニットが持続的に電流供給部に接続されていて、たとえば「ホール効果」の動作原理を用いた回転数センサは、「能動型」と称される。
【0007】
上位概念記載の速度センサは、独国特許発明第4331969号明細書から公知である。
【0008】
この場合、かかる速度センサを使用したときに起こり得るのは、周囲から(たとえばブレーキディスクの近くに組み込まれた場合)、もしくは運動する物体から、比較的大きな熱エネルギーが速度センサに伝達されることであり、このことはとりわけ、組み込まれた評価電子装置をセンサ素子が含む上述の能動型の速度センサの場合に不都合である。過熱によって、かかる速度センサは誤測定を引き起こす可能性があり、または故障する可能性がある。
【0009】
よって、本発明の基礎とする課題は、上述の形式の速度センサを、いっそう高められた機能安全性を有するように、さらに発展させることである。さらに、少なくとも1つのかかる速度センサを備えた車両支援システムも、かかる車両支援システムを備えた車両も、提供できるようにしたい。
【0010】
この課題は、請求項1、16および17の特徴によって解決される。
【0011】
発明の開示
本発明は、速度センサに対し相対的に運動する物体の速度を測定するための速度センサに関するものであり、この速度センサは速度センサハウジングを備え、この速度センサハウジングは、位置固定された受容部内に摩擦および/または形状による結合によって装着するために設けられており、この場合、速度センサハウジングは、プラスチックから成る射出成形部品を収容し、この射出成形部品内に速度センサ素子の少なくとも一部分がインサート成形されている。
【0012】
したがって速度センサ素子の少なくとも一部分または少なくとも1つの部品は、プラスチックから成る射出成形部品の1次成形において1つの作業工程で射出成形部品内にインサート成形される。その際に電気ケーブルを射出成形部品から突出させることができ、速度センサ素子により捕捉された速度信号をたとえば電子装置へ後続処理のために転送する目的で、これらの電気ケーブルは、速度センサ素子の少なくとも一部分と電気的に接続されている。
【0013】
速度センサ素子を、上述の受動型または能動型の速度センサ素子とすることができる。
【0014】
本発明によれば、以下のように構成されている。すなわち、
a)射出成形部品は、速度センサハウジングの壁部の内面と向き合った射出成形部品の外周面に、少なくとも1つの外側空所を有しており、この場合、1つの外側空所の境界面と、速度センサハウジングの壁部の内面との間に、それぞれ1つの外側空室が形成され、かつ/または
b)射出成形部品の内部に、内側空室を成す少なくとも1つの内側空所が形成されている。
【0015】
特に、互いに離間され互いに分離された複数の外側空所が、射出成形部品の外周面内に、または外周面のところに設けられており、かつ/または互いに離間され互いに分離された複数の内側空所が射出成形部品の内部に設けられている。
【0016】
外側空所の境界面とは、外側空室と向き合い、たとえば外側空所の底面を含む外側空所の面のことであると理解されたい。特に、少なくとも1つの空の外側空所を除き、射出成形部品の外周面は滑らかに形成されており、たとえば円筒状である。
【0017】
内側空室または外側空室は、この場合には特に、たとえばシールリングのようなさらなる構成要素を収容するために用いられるのではなく、絶縁室を形成している。
【0018】
かかる内側空室または外側空室によって、デュワー瓶のように、起こり得る3つの熱伝達プロセスすなわち熱伝導、熱放射および対流が低減される。熱伝導は、内側空室内または外側空室内の空気もしくは真空の影響を受ける。なぜならば空気もしくは真空は低い熱伝導率を有するからである。同様に内側空室内または外側空室内の空気もしくは真空によって、放射による熱輸送も低減される。内側空室または外側空室の好ましい排気によって、対流による熱輸送が妨げられる。
【0019】
この場合、自明のとおり、複数のかかる空の内側空所または外側空所もしくは内側空室または外側空室を、射出成形部品の外周面に、もしくは射出成形部品の内部に、形成することができ、このことによって、速度センサの受容部との(直接的な)接触により過熱する可能性がある速度センサハウジングの壁部および射出成形部品からの熱伝達、もしくは射出成形部品内部の熱伝導が、有利な手法で妨げられる。これによって、射出成形部品に、つまりは速度センサ素子の少なくとも一部分に作用する熱負荷が減少し、このことで速度センサ素子の機能安全性が高められる。さらに射出成形部品内部に形成された空室によって、射出成形部品内部の熱伝導が、ひいてはそこにインサート成形された速度センサの少なくとも1つの部品への熱伝導が阻まれる。
【0020】
従属請求項に記載された構成により、本発明の第1の態様の有利な発展形態および改善を実現することができる。
【0021】
1つの好ましい実施形態によれば、少なくとも1つの内側空室または外側空室は、排気または部分的に排気されている。上述のように、このようにすることによって、速度センサハウジングの壁部と射出成形部品との間の熱伝達プロセスもしくは射出成形部品内部の熱伝達プロセスが、さらに低減されるようになる。
【0022】
特に速度センサハウジングを、少なくとも部分的に円筒状のスリーブ形状とすることができ、射出成形部品を少なくとも部分的に円筒状の中実体として、特に重なり合った領域内に形成することができ、この領域内に少なくとも1つの空室が形成されている。
【0023】
内側空所または外側空所は、射出成形部品に部分的にしか進入することができず、完全に進入することはできない。ただし別の選択肢として、少なくとも1つの内側空所または外側空所が射出成形部品に完全に進入することも考えられる。
【0024】
特に好ましくは、速度センサハウジングはクランプスリーブとして構成されている。これはたとえば以下のことを意味する。すなわち、速度センサハウジングは外側に向かって弾性的に突出した部材を有しており、これらの部材は受容部への装着時に変形し、それによって受容部たとえば孔の内表面と、速度センサハウジングの弾性的に突出した部材の外表面との間において、摩擦による結合が達成される。このようにすれば、上述の摩擦による結合だけで、さらに任意選択的に付加的に形状による結合と共働させて、速度センサを受容部内に保持することができる。
【0025】
特に、速度センサハウジングを鋼板から製造することができる。
【0026】
特に好ましくは、速度センサハウジングと射出成形部品との間に、少なくとも1つのシール部材を配置することができ、このシール部材は、少なくとも1つの外側空室を周囲から密閉する。したがって少なくとも1つのシール部材によって、少なくとも1つのたとえば排気された外側空室が周囲からの空気で満たされるのが妨げられる。
【0027】
1つの発展形態によれば、速度センサを回転数センサとすることができ、運動する物体を回転する物体とすることができ、この場合、回転する物体はたとえば永久磁石または強磁性の歯を備えたロータを駆動するものであり、これらの永久磁石または強磁性の歯は、それらの磁極もしくは歯と間隙とが交互に隣接するように、ロータの周囲に配置されている。
【0028】
この場合、永久磁石を備えたロータは特に、速度センサの1つの構成部分を成している。それというのもこの場合、速度センサの測定原理は以下のことに基づくからである。すなわちロータの回転によって磁界にパルス状の変化が生成され、この変化によって、速度センサの静止部分の出力端子に交流電圧信号が引き起こされる。このケースでは速度センサはたとえば速度センサ素子として、磁界の変化を探査するための、ホール素子と半導体チップとを含む。これに加え信号は半導体チップによって増幅され、相応のインタフェースのためにコンディショニングされる。このインタフェースをたとえば、プロトコルを有する電流インタフェースとすることができる。
【0029】
特に、速度センサハウジングをカップ状に形成することができ、回転する物体と向き合った速度センサハウジングの終端部に、速度センサハウジング底部を有することができる。さらに射出成形部品の周面の、回転する物体と向き合った終端部側の端面に、端面側外側空所を形成することができ、この端面側外側空所の底面に、速度センサ素子の少なくとも一部分が配置されており、その際、端面側外側空所の底面と、速度センサハウジング底部との間に、端面側外側空室が形成される。このようにした場合、速度センサ素子の少なくとも一部分が、この端面側外側空室によって、回転する物体に対し特に効果的に熱絶縁されている。
【0030】
しかしながら、速度センサ素子が回転する物体からさらに離れれば離れるほど、この速度センサ素子によってセンシング可能な信号が減衰することになる。このような技術的な矛盾は、有利には強磁性で伝導性の結合部材を設けることによって解決される。強磁性材料から成る結合部材はたとえば、速度センサ素子から射出成形部品の端面側外側空所内に至るまで、軸線方向で延在している。
【0031】
1つの有利な実施形態において、この結合部材に冷却フィンを装備することができ、これらの冷却フィンによって、速度センサ素子への熱流束が低減される。さらなる有利な特性として、結合部材は少なくとも一方の終端部にテーパ部を有しており、このテーパ部は、速度センサ素子において電界を集中させるために用いられる。
【0032】
ただし速度センサ素子は、ここで単に例示的に言及したホール素子に限定されるものではない。特に、測定原理が磁気抵抗効果に基づく任意の能動型または受動型の速度センサ素子が考えられ、この場合、外部磁界の印加によって材料の電気抵抗の変化が生じる(MRセンサ)。
【0033】
本発明は、上述の速度センサが設けられた自動車の運転者支援システム、たとえばアンチロックブレーキシステム(ABS)、トラクションコントロールシステム(TCS)、横滑り防止装置(ESP)、アダプティブクルーズコントロール(ACC)、または少なくとも部分的に自律走行するための車両追従制御装置にも関し、さらにかかる運転者支援システムを備えた自動車にも関する。
【図面の簡単な説明】
【0034】
次に、本発明の1つの実施例を図面に示し、以下の記載で詳しく説明する。
【
図1A】本発明による速度センサの1つの好ましい実施形態を示す断面図である。
【
図1B】本発明による速度センサの1つの好ましい実施形態を、磁束を導くための結合部材と共に示す断面図である。
【
図1C】磁束を導くための
図1Bによる結合部材の1つの好ましい実施形態を示す断面図である。
【
図2】本発明による速度センサのさらなる実施形態を示す断面図である。
【
図3】
図1による速度センサを部分的に分解して示す斜視図である。
【0035】
実施例の説明
図1Aには、ここではたとえば車輪回転数センサとして構成された、自動車の車輪の車輪回転数を測定するための速度センサ100の1つの好ましい実施形態が示されている。速度センサ100は、ここではたとえばアンチロックブレーキシステム(ABS)において使用される。
【0036】
速度センサ100は、速度センサ100のロータ101と共働するホールIC104を含み、ロータ101は、自動車の車輪と同期して回転するようにそこに取り付けられている。ロータ101は、複数の永久磁石102を備えたリング103を有しており、それらの永久磁石102は、それらの磁極が交互に現れるようにロータ101の周囲に配置されており、したがってそれらの磁極は、ロータ101が回転したときにパルス状の磁束の変化を生成する。位置固定されたホールIC104はホール素子105を含み、さらにここには明示的には示されていないさらなる構成要素を含む。したがってホール素子105は、永久磁石102の磁気回路内に磁気的に結合されている。ホール素子105には、ここには示されていない電圧導体を介して電圧が供給され、さらにホール素子105は、同様に図示されていないアース導体を介してアースされる。ホール素子105およびホールIC104は、ここではたとえば1つの構造的なユニットを成しており、その際にホール素子105はロータ101と向き合っている。
【0037】
ホール素子105は、ロータ101の回転により生成される磁束の変化の結果として、交流電圧信号をその出力端子に生成し、この出力端子は、ここではホールIC104の評価電子装置と接続されており、次いで評価電子装置は出力信号を信号ケーブルに向けて供給し、その際にそこに印加される交流電圧信号の波形が標準化された信号波形に変換される。かかるホールIC104の測定原理は十分に知られており、したがってここではこれ以上は説明しない。ホールIC104およびホール素子105は、たとえばここでは1つの構造的なユニットを成しており、信号ケーブル106と共に完全に1つの射出成形部品107となるようにインサート成形されており、この射出成形部品107はここではたとえば円筒状の中実体を形成している。その際、ホール素子105とホールIC104とから成るモジュールは特に、ロータ101と向き合った射出成形部品107の終端部108に配置されている一方、信号ケーブル106の端子109は、射出成形部品107の他方の終端部110から突出しており、この場合、それらの端子109にケーブルが接続されていて、後続処理のために、ここには図示されていない外部のABSコントロール電子装置に向けて、車輪回転数信号が供給される。射出成形部品107を、射出に適した任意のプラスチック材料から射出成形により製造されたものとすることができる。
【0038】
プラスチックから成る射出成形部品107は、ここではたとえば部分的に速度センサハウジング111内に配置または収容されており、その際にここではたとえば、ロータ101とは反対側に向いた射出成形部品107の終端部110だけが、なお速度センサハウジング111から突出している。
【0039】
速度センサハウジング111は、ここではたとえばカップ状で円筒状に形成されており、たとえば鋼板の深絞り加工によって作られている。この場合、射出成形部品107の外径はたとえば、速度センサハウジング111の壁部の半径方向内周面112の内径よりも僅かに小さく、したがって速度センサハウジング111の壁部の半径方向内周面112は、射出成形部品の半径方向外周面113にほぼ接触している。
【0040】
この場合、速度センサ100は、その速度センサハウジング111の半径方向外周面114でもって、ここには図示されていない位置固定された受容部の円筒孔内に、たとえばクランプスリーブを用いてシフト可能に装着されており、この受容部は、該当する車輪が回転可能に支承されている自動車の走行機構と接続されている。
【0041】
さらにこの場合、ロータ101と対向していて、ホールIC104およびホール素子105が組み込まれている射出成形部品107の終端部108は、カップ状の速度センサハウジング111の速度センサハウジング底部115によって囲われており、もしくは取り囲まれている。このようにして速度センサハウジング底部115とロータ101との間に、内法のまたは有効な空隙116’が形成されている。
【0042】
射出成形部品107は、速度センサハウジング111の壁部の半径方向内周面112と向き合った、この射出成形部品107の半径方向外周面113に、ここではたとえば複数の互いに離間された半径方向外側空所116を有しており、この場合、これらの外側空所116各々の境界面と、速度センサハウジング111の壁部の半径方向内周面112との間に、それぞれ1つの空室が形成される。「空室」とは、そこにはたとえばシールなどさらなる構成要素は配置されていない、ということを意味する。ただし「空室」を、周囲圧力の空気で満たしておくことができ、または排気しておくことができ、または部分的に排気しておくこともできる。
【0043】
特に、ロータ101と向き合った射出成形部品107の周面の端面に、ここではたとえばディスク状であり、速度センサ100の中心軸線117と同軸の端面側外側空所116が形成されており、この外側空所16の孔内にホール素子105が、このホール素子105のセンサ面が端面側空所と向き合うように、またはその中に突入するように、配置されている。
【0044】
さらに、射出成形部品107の端面側外側空所116の底面と、速度センサハウジング底部115との間に、端面側外側空室を形成することができる。この場合にはホール素子105およびホールIC104は、この端面側外側空室によって、ロータ101に対し特に効果的に熱絶縁されている。
【0045】
さらにここではたとえば、周囲を延在するシールリングとして構成されたシール部材118が、速度センサハウジング111の壁部の半径方向内周面112と、射出成形部品107の半径方向外周面113との間に配置されており、したがって外側空室116が周囲に対し密閉されている。
【0046】
空の外側空所116に加えて、または空の外側空所116の代わりに、射出成形部品107の内部に空の内側空所119を形成することができ、このようにしてこれらの内側空所119により内側空室が形成される。これらの空の内側空所119は、この場合も互いに分離されており、もしくは互いに離間されている。
【0047】
図1Bには、ここでも射出成形部品107の端面側外側空所116と、速度センサハウジング底部115との間に形成されている端面側外側空室に起因して結果として生じる欠点を補う、さらなる実施形態が示されている。この欠点が生じる理由は、この外側空室は、有効な空隙116’を拡大させることになり、したがってホールIC104のホール素子105における信号を弱めてしまう可能性があるからである。信号が弱まってしまうのを補うために、ここでは強磁性材料から成る結合部材120が設けられており、この結合部材120は、ここでは軸線方向でたとえばホールIC104から射出成形部品107の端面側外側空所116の中まで延在している。この結合部材によって、その強磁性材料ゆえに磁束が強められ、ひいてはホールIC104の信号も強められる。
【0048】
結合部材120は、付加的に冷却フィン121と共に、磁界を集束させるために少なくとも一方の終端部に、
図1Cに示されているようにテーパ部122を有することができる。強磁性の磁極ホイールにおいて使用する目的で、ホール素子105にバイアスを加えるために、磁石123を追加することができる。さらに
図1Bには、112’によってセンサ先端の内周面が示されており、113’によってセンサ先端の外周面が示されている。
【0049】
図1Cには、ホールIC104のホール素子105内に磁束を集束させるためのテーパ状の終端部122と任意付加な熱分離部116とを有する結合部材120の移行部分が、拡大図で示されている。
【0050】
図2には、ここでも同様にたとえば車輪回転数センサとして構成された速度センサ100のさらなる実施形態が示されており、ここでは
図1Aの場合のように磁気的に符号化(コード化)されたロータ101またはリング103の代わりに、歯と間隙102’によって強磁性的に符号化されたロータ101が設けられている。ホール素子105に磁気的にバイアスを加えるために、たとえば付加的な永久磁石123が利用される。
【0051】
図3は、速度センサハウジング111が部分的に取り除かれた速度センサ100の部分破断図において、外側空所116に関する一例を示しており、この外側空所116は好ましくは、射出成形部品107に部分的にしか進入しておらず、したがって止まり穴のように境界面として底面も有する。
【0052】
このようにして形成された内側空室および外側空室は、この場合には特に、たとえばシールリングのようなさらなる構成要素を収容するために用いられるのではなく、それぞれ空の絶縁室を形成している。特に、内側空室および外側空室は真空排気されており、外側空室は、特にこの場合、シールリング118によって周囲から密閉されており、したがって空気が外部から外側空室内に侵入する可能性はない。
【符号の説明】
【0053】
100 速度センサ
101 ロータ
102 永久磁石
102’ 歯/間隙
103 リング
104 ホールIC
105 ホール素子
106 信号ケーブル
107 射出成形部品
108 終端部
109 端子
110 終端部
111 速度センサハウジング
112 半径方向内周面
112’ センサ先端の内周面
113 半径方向外周面
113’ センサ先端の外周面
114 半径方向外周面
115 速度センサハウジング底部
116 外側空所
116’ センサとロータとの間の空隙
117 中心軸線
118 シールリング
119 内側空所
120 磁束のための結合部材
212 熱エネルギー放出用の冷却フィン
122 磁束を集束させるための結合部材のテーパ部
123 永久磁石