特許第6952911号(P6952911)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許69529112−(αヒドロキシペンチル)安息香酸の有機アミンエステル誘導体薬物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6952911
(24)【登録日】2021年9月30日
(45)【発行日】2021年10月27日
(54)【発明の名称】2−(αヒドロキシペンチル)安息香酸の有機アミンエステル誘導体薬物
(51)【国際特許分類】
   C07C 219/14 20060101AFI20211018BHJP
   C07C 213/06 20060101ALI20211018BHJP
   C07D 295/088 20060101ALI20211018BHJP
   A61P 25/16 20060101ALI20211018BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20211018BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20211018BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20211018BHJP
   A61K 31/4453 20060101ALI20211018BHJP
【FI】
   C07C219/14CSP
   C07C213/06
   C07D295/088
   A61P25/16
   A61P25/28
   A61P9/10
   A61P9/00
   A61K31/4453
【請求項の数】10
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2020-551412(P2020-551412)
(86)(22)【出願日】2019年4月28日
(65)【公表番号】特表2021-512138(P2021-512138A)
(43)【公表日】2021年5月13日
(86)【国際出願番号】CN2019084830
(87)【国際公開番号】WO2019218864
(87)【国際公開日】20191121
【審査請求日】2020年9月18日
(31)【優先権主張番号】201810474269.1
(32)【優先日】2018年5月17日
(33)【優先権主張国】CN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】521113427
【氏名又は名称】重▲慶▼▲藥▼友制▲藥▼有限▲責▼任公司
【氏名又は名称原語表記】YAOPHARMA CO.,LTD
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲張▼ 凌
(72)【発明者】
【氏名】▲張▼ 志▲榮▼
(72)【発明者】
【氏名】李 建波
【審査官】 小森 潔
(56)【参考文献】
【文献】 中国特許出願公開第106928155(CN,A)
【文献】 中国特許出願公開第106800537(CN,A)
【文献】 中国特許出願公開第102225940(CN,A)
【文献】 Bioorganic and Medicinal Chemistry Letters,2015年,Vol.25,No.17,p3535−3540,doi: 10.1016/j.bmcl.2015.06.090
【文献】 Acta Pharmacologica Sinica,2015年,Vol.36,No.8,p917−927,doi: 10.1038/aps.2015.31
【文献】 Journal of Medicinal Chemistry,2013年,Vol.56,No.7,p3078−3089,doi: 10.1021/jm4001693
【文献】 Neurotoxicity Research,2014年,Vol.26,No.1,p16−31,doi: 10.1007/s12640-013-9444-x
【文献】 Chinese Journal of Natural Medicines,2016年,Vol.14,No.12,p946−953,doi: 10.1016/S1875-5364(17)30021-3
【文献】 Organic and Biomolecular Chemistry,2014年,Vol.12,No.31,p5995−6004,doi: 10.1039/c4ob00830h
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
C07D
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記構造の化合物であるか、又は下記構造を有する化合物が無機酸又は有機酸と形成する薬学的に許容される塩である、ことを特徴とする2−(αヒドロキシペンチル)安息香酸の有機アミンエステル誘導体。
【化1】
【請求項2】
下記構造の化合物であるか、又は下記構造を有する化合物が無機酸又は有機酸と形成する薬学的に許容される塩である、ことを特徴とする2−(αヒドロキシペンチル)安息香酸の有機アミンエステル誘導体。
【化2】
【請求項3】
前記無機酸は、塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸のうちの任意の1種を含み、
前記有機酸は、酢酸、トリフルオロ酢酸、乳酸、ピルビン酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、フマル酸、酒石酸、マレイン酸、クエン酸、アスコルビン酸、シュウ酸、カンファン酸、グルコン酸、グルクロン酸、パモ酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、スルファミン酸、p−トルエンスルホン酸のうちの任意の1種を含む、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の2−(αヒドロキシペンチル)安息香酸の有機アミンエステル誘導体。
【請求項4】
下記構造4を有する化合物を下記構造5を有するエステル化試薬とエステル化反応させるステップとを含む、ことを特徴とする請求項1に記載の2−(αヒドロキシペンチル)安息香酸の有機アミンエステル誘導体の製造方法。
【化3】
【請求項5】
下記構造4を有する化合物を下記構造6を有するエステル化試薬とエステル化反応させるステップとを含む、ことを特徴とする請求項2に記載の2−(αヒドロキシペンチル)安息香酸の有機アミンエステル誘導体の製造方法。
【化4】
【請求項6】
前記DB−1又はDB−2に無機酸又は有機酸を加えて反応させ、化合物が無機酸又は有機酸と形成する薬学的に許容される塩を取得する、塩を製造するステップをさらに含む、ことを特徴とする請求項4又は5に記載の製造方法。
【請求項7】
前記無機酸は、塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸のうちの任意の1種を含み、
前記有機酸は、酢酸、トリフルオロ酢酸、乳酸、ピルビン酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、フマル酸、酒石酸、マレイン酸、クエン酸、アスコルビン酸、シュウ酸、カンファン酸、グルコン酸、グルクロン酸、パモ酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、スルファミン酸、p−トルエンスルホン酸のうちの任意の1種を含む、ことを特徴とする請求項に記載の製造方法。
【請求項8】
固体、半固体及び液体のうちのいずれか1種である、請求項1〜のいずれか1項に記載の2−(αヒドロキシペンチル)安息香酸の有機アミンエステル誘導体を含有する医薬組成物。
【請求項9】
前記固体の医薬組成物は、一般的な錠剤、分散性錠剤、徐放性錠剤、ソフトカプセル剤、ハードカプセル剤、顆粒剤、散剤又は座薬のうちの任意の1種を含み、
前記半固体の医薬組成物は、軟膏剤、糊剤、ゲル剤のうちの任意の1種を含み、
前記液体の医薬組成物は、注射剤、滴剤、溶液剤、乳剤、懸濁剤のうちの任意の1種を含む、ことを特徴とする請求項に記載の医薬組成物
【請求項10】
心脳虚血性疾患、心脳動脈閉塞疾患予防及び/又は治療の為の又は抗パーキンソン病又は抗認知症の為の、請求項に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬分野に関し、より具体的には、高い溶解度、低い吸湿性を有し、製剤の製造プロセスがシンプルであり、高いバイオアベイラビリティを有し、脳内蓄積濃度を向上させる2−(αヒドロキシペンチル)安息香酸の有機アミンエステル誘導体薬物、及び心脳虚血性疾患、心脳動脈閉塞疾患を予防/治療する薬物及び抗パーキンソン病・抗認知症薬の製造における応用に関する。
【背景技術】
【0002】
化学名が3−ブチルイソベンゾフラン−1(3H)−オン(dl−3−n−butylphthalide、NBP、1)のブチルフタリドは、天然食用植物のセロリの種子から抽出されたものであり、中国で開発された、独立した知的財産を持つ虚血性脳卒中を予防・治療する新薬であり、商品名が恩必普であり、薬力学的研究によれば、dl−NBPは虚血性脳卒中による脳損傷の複数の病理学的ピロセスに作用し、強い抗脳虚血作用を有する。軽度、中度の急性虚血性脳卒中等の心血管疾患の治療に用いることが2002年に中国国家食品薬品監督管理局で認められた。近年の実験研究によれば、NBPは虚血による脳損傷に抵抗できることに加えて、神経変性疾患等の他の神経系の損傷に対しても保護作用を示す。しかし、NBPの水溶性が低く、室温で薄黄色の油状液体であり、液体医薬品の製剤化が固体医薬品よりも複雑であることを考慮すると、現在、ブチルフタリドに用いられる剤型はブチルフタリドソフトカプセル及びブチルフタリド・塩化ナトリウム注射液であり、ソフトカプセルは、生産コストが高く且つプロセスが複雑であり、経口バイオアベイラビリティが低く、半減期が短く、ブチルフタリドの臨床的効果から、アスパラギン酸アミノ基転移酵素、アラニンアミノ基転移酵素がわずかに高くなる現象が認められる。腹部の不快感、吐き気、発疹や精神症状などの有害反応がたまたま発生し、それによって、その応用及び治療効果が制限されてしまう。
【0003】
プロドラッグは、もともと生物学的活性を有するが、一定の欠陥がある薬物分子を化学構造的に修飾することで、1つ又は複数の修飾的担体基を連結することにより、生体外で生物学的活性がないか、又は生物学的活性が低下した化合物になり、生体内、特に作用箇所では酵素又は非酵素の作用下で、プロドラッグは、修飾基を除去されて、原薬に回復し、薬効を発揮する。プロドラッグは多くの活性薬物の欠陥の改善、例えば薬物の脂質−水分配係数を増加させ、薬物の標的性及び安定性を向上させ、薬物の毒性や副作用を低減させるなどに寄与する。
【0004】
中国特許CN1243541Cは、抗血小板凝集が顕著であり、微小循環を改善し、心、脳虚血、心脳動脈閉塞に対して薬物活性を有する新規薬物2−(αヒドロキシペンチル)ベンゾエートを開示し、そのカリウム塩である2−(αヒドロキシペンチル)安息香酸カリウム(dl−PHPB)はブチルフタリドプロドラッグとして、水溶性が大幅に向上する。大量の研究によれば、dl−PHPBは生体内でブチルフタリドに急速に変換可能であり、その治療効果が等量のブチルフタリドに相当するか、又はそれよりも強く、中国特許CN104086399Bは、脳血管疾患を治療する5−ブロモ−2−(αヒドロキシペンチル)安息香酸ナトリウム塩を開示し、動物モデルを研究した結果、該化合物は、脳虚血再灌流障害に対して保護作用を有し、運動機能障害を改善し、脳梗塞の体積を減少させ、脳浮腫を軽減させることができ、虚血後に投与すると効果的である。そして、ブチルフタリド誘導体のプロドラッグとしての該化合物は、水溶性が大幅に向上する。
【0005】
しかしながら、2−(αヒドロキシペンチル)安息香酸及びその誘導体のカリウム塩、ナトリウム塩は、吸湿性が高く、安定性が低く(閉環しやすい)、製剤の製造中には環境、pH値が厳格に要求され、それにより、生産コストを大幅に増加させてしまう。現在、これらの欠点を解消できる2−(αヒドロキシペンチル)安息香酸誘導体はなく、従って、高い溶解度、低い吸湿性を有し、固体製剤を製造しやすく、生産コストを低下させ、原薬よりも著しく高いバイオアベイラビリティを有し、生体内で急速に分解して原薬になり、脳内蓄積濃度を向上できる2−(αヒドロキシペンチル)安息香酸誘導体の開発が非常に必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来技術の不備に鑑みて、本発明は、新規な、脳部疾患を治療する一般式Iの構造が新規な2−(αヒドロキシペンチル)安息香酸である有機アミンエステル誘導体、その製造方法及び用途を提供することを目的とする。本発明では、進歩性のある研究を行ったところ、本発明の2−(αヒドロキシペンチル)安息香酸の有機アミンエステル誘導体は、溶液中の薬物の溶解度を大幅に向上させ、低い吸湿性を有するとともに、原薬ブチルフタリドよりも著しく高い経口バイオアベイラビリティを有し、ブチルフタリドの脳内蓄積濃度を大幅に向上させ、その脳内蓄積時間を延ばし、良好なドラッガブル、及び優れた臨床応用価値があることを見出した。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の目的は、新規な、脳部疾患を治療する一般式Iの構造が2−(αヒドロキシペンチル)安息香酸である有機アミンエステル誘導体及びその製造方法を提供することである。
【0008】
上記目的を達成させるために、本発明は、以下の技術案を用いる。
本発明は、一般式Iの有機アミンエステル誘導体薬物又はその薬学的に許容される塩を提供し、
【化1】
は水素原子又はアシル又はアシルオキシを含有するC1〜C10のアルキルを表し、Xは
【化2】
であり、Rは、C1〜C10アルキレン、又はC3〜C7シクロアルキレンであり、、Rはそれぞれ独立して、水素原子、C1〜C10アルキル、C3〜C7シクロアルキルから選ばれ、又はXは
【化3】
であり、ここにおいてn=0〜10であり、R5は1〜2個のN原子を含有する5〜15員複素環又は置換複素環である。
【0009】
さらに、本発明は、前記2−(αヒドロキシペンチル)安息香酸の有機アミンエステル誘導体又はその薬学的に許容される塩において、Xは
【化4】
であり、Rは、C1〜C10アルキレン、又はC3〜C7シクロアルキレンであり、、Rはそれぞれ独立して、水素原子、C1〜C10アルキル、C3〜C7シクロアルキルから選ばれ、又はXは
【化5】
であり、ここにおいてn=2であり、R
【化6】
から選ばれる、ことを特徴とする前記2−(αヒドロキシペンチル)安息香酸の有機アミンエステル誘導体又はその薬学的に許容される塩を提供する。
【0010】
またさらに、本発明は、前記2−(αヒドロキシペンチル)安息香酸の有機アミンエステル誘導体薬物の製造方法において、まずブチルフタリドを開環させ、次に塩化アセチルと反応させ、最後にX−OHとアシル化させてエステルとし、反応式は以下のとおりであり、
【化7】
(式中、Xは
【化8】
であり、Rは、C1〜C10アルキレン、又はC3〜C7シクロアルキレンであり、、Rはそれぞれ独立して、水素原子、C1〜C10アルキル、C3〜C7シクロアルキルから選ばれ、又はXは
【化9】
であり、ここにおいてn=2であり、

【化10】
から選ばれる。)
またさらに、ブチルフタリドをアルカリ性条件において開環させ、次に酸性化、アセチル化を順次に行い、それぞれN,N−ジメチルエタノールアミン及び1−(2−ヒドロキシエチル)ピペリジンと縮合してエステルとし、化合物DB−1及びDB−2を得ることを特徴とする前記2−(αヒドロキシペンチル)安息香酸の有機アミンエステル誘導体薬物の製造方法を提供する。
【0011】
化合物DB−1及びDB−2の構造式は以下のとおりである。
【化11】
【0012】
以下、化合物DB−1及びDB−2の合成方法について簡単に説明する。
(1)2−(1−アセトキシペンチル)安息香酸(4)の合成
ブチルフタリド(1)をメタノールに溶解させ、適量の水酸化ナトリウム溶液を加え、加熱しながら1h反応させる。減圧下でメタノールを蒸発除去し、蒸留水を加えて希釈し、希塩酸で酸性化し、水層をエチルエーテルで抽出し、エーテル層を合わせて、それぞれトリエチルアミン、4−ジメチルアミノピリジン(DMAP)を加え、塩化アセチルを滴下し、撹拌しながら5h反応させる。水を加えて抽出し、有機層を分離し、濃縮させてワックス状固体を得て、ノルマルヘキサンを再結晶させ、白色針状結晶を得る。
【化12】
【0013】
(2)化合物DB−1の合成
化合物(4)を秤取し、塩化メチレン、HATU、化合物(5)を加え、一晩撹拌しながら反応させ、水で3回抽出し、カラムに通して純化し、白色固体を得て、無水エタノールHCl液を加えて塩を形成し、エチルエーテルを加えて白色沈殿を形成し、濾過して乾燥させ、化合物DB−1塩酸塩生成物を得る。
【化13】
【0014】
(3)化合物DB−2の合成
化合物4を秤取し、塩化メチレン、HATU、化合物6を加え、一晩撹拌しながら反応させ、水で3回抽出し、カラムに通して純化し、白色固体を得て、無水エタノールHCl液を加えて塩を形成し、エチルエーテルを加えて白色沈殿を形成し、濾過して乾燥させ、化合物DB−2塩酸塩生成物を得る。
【化14】
【0015】
その中でも、化合物5、6は一般的な化学工業原料であり、市販品として入手できる。
【0016】
本発明の第2の目的は、本発明の前記2−(αヒドロキシペンチル)安息香酸の有機アミンエステル誘導体又はその薬学的に許容される塩、及び脳部疾患を予防又は治療する薬物の製造におけるその製剤の応用である。前記脳部疾患は、心脳虚血性疾患、心脳動脈閉塞疾患、パーキンソン病や認知症を含む。
【0017】
本発明の前記2−(αヒドロキシペンチル)安息香酸の有機アミンエステル誘導体又はその薬学的に許容される塩のドラッガブルの改善を研究するために、上記化合物に対して生体外の物理化学的性質の観察及び生体内分布の事前実験を行う。実験結果から明らかなように、溶液への治療用薬物の溶解度を大幅に向上させ、低い吸湿性を有するとともに、原薬ブチルフタリドよりも著しく高い経口バイオアベイラビリティを有し、ブチルフタリドの脳内蓄積濃度を大幅に向上させ、その脳内蓄積時間を延ばし、それによって、生産プロセスを簡略化させ、生産コストを低下させ、治療効果を向上又は投与量を低減させ、毒性や副作用を低減させ、さらに製品の有効性及び安全性を向上させる。
【0018】
従って、本発明は2−(αヒドロキシペンチル)安息香酸の有機アミンエステル誘導体を提案し、前記2−(αヒドロキシペンチル)安息香酸の有機アミンエステル誘導体は下記一般式Iを有する化合物であるか、又は前記一般式Iを有する化合物が無機酸又は有機酸と形成する薬学的に許容される塩である。
【化15】
(前記一般式Iにおいて、Rは水素原子又はC1〜C10のアルキルを含み、前記C1〜C10のアルキルはアシル又はアシルオキシを含有し、
Xで表わされる置換基は
【化16】
であり、ここにおいてRは、C1〜C10アルキレン、又はC3〜C7シクロアルキレンであり、、Rはそれぞれ独立して、水素原子、C1〜C10アルキル、C3〜C7シクロアルキルから選ばれ、又は、
Xで表わされる置換基は
【化17】
であり、ここにおいてnは[0,10]の範囲から選ばれる整数であり、Rは1つ又は2つの窒素原子を含有する5〜15員複素環又は置換複素環を含む。)
【0019】
一実施例では、前記2−(αヒドロキシペンチル)安息香酸の有機アミンエステル誘導体は、下記一般式IIを有する化合物であるか、又は前記一般式IIを有する化合物が無機酸又は有機酸と形成する薬学的に許容される塩である、ことを特徴とする。
【化18】
(前記Rはアシルを含有するエチルであり、
前記Xで表わされる置換基は
【化19】
であり、ここにおいてRは、C1〜C10アルキレン、又はC3〜C7シクロアルキレンであり、、Rはそれぞれ独立して、水素原子、C1〜C10アルキル、C3〜C7シクロアルキルから選ばれ、又は、
前記Xで表わされる置換基は
【化20】
であり、ここにおいてn=2であり、Rは、
【化21】
のうちの任意の1種を含む。)
【0020】
一実施例では、前記2−(αヒドロキシペンチル)安息香酸の有機アミンエステル誘導体は下記構造の化合物であるか、又は下記構造を有する化合物が無機酸又は有機酸と形成する薬学的に許容される塩である。
【化22】
(前記Rはアシルを含有するエチルであり、
前記Xで表わされる置換基は
【化23】
であり、ここにおいて前記Rエチレン基、前記Rはメチル、前記Rはメチルである。)
【0021】
一実施例では、前記2−(αヒドロキシペンチル)安息香酸の有機アミンエステル誘導体は下記構造の化合物であるか、又は下記構造を有する化合物が無機酸又は有機酸と形成する薬学的に許容される塩である。
【化24】
(前記Rはアシルを含有するエチルであり、
前記Xで表わされる置換基は
【化25】
であり、ここにおいてn=2であり、R
【化26】
である。)
【0022】
一実施例では、前記無機酸は、塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸のうちの任意の1種を含み、
前記有機酸は、酢酸、トリフルオロ酢酸、乳酸、ピルビン酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、フマル酸、酒石酸、マレイン酸、クエン酸、アスコルビン酸、シュウ酸、カンファン酸、グルコン酸、グルクロン酸、パモ酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、スルファミン酸、p−トルエンスルホン酸のうちの任意の1種を含む。
【0023】
本発明の実施例は、下記構造1を有する化合物2−(αヒドロキシペンチル)安息香酸を下記一般式IIIを有するアシル化試薬とアシル化反応させ、下記一般式IVを有する中間化合物を取得するステップと、
前記中間化合物を下記一般式Vを有するエステル化試薬とエステル化反応させ、前記一般式Iを有する前記化合物を取得するステップとを含む、前述した2−(αヒドロキシペンチル)安息香酸の有機アミンエステル誘導体の製造方法をさらに提案する。
【化27】
(前記アシル化試薬では、一般式IIIのRは水素原子又はC1〜C10のアルキルを含み、前記C1〜C10のアルキルはアシル又はアシルオキシを含有し、
前記エステル化試薬では、一般式VのXで表わされる置換基は
【化28】
であり、ここにおいてRは、C1〜C10アルキレン、又はC3〜C7シクロアルキレンであり、、Rはそれぞれ独立して、水素原子、C1〜C10アルキル、C3〜C7シクロアルキルから選ばれ、又は、
Xで表わされる置換基は
【化29】
であり、ここにおいてnは[0,10]の範囲から選ばれる整数であり、Rは1つ又は2つの窒素原子を含有する5〜15員複素環又は置換複素環を含む。)
【0024】
一実施例では、前記アシル化試薬では、一般式IIIのRはアセチルであり、
前記エステル化試薬では、一般式VのXで表わされる置換基は
【化30】
であり、ここにおいてRは、C1〜C10アルキレン、又はC3〜C7シクロアルキレンであり、、Rはそれぞれ独立して、水素原子、C1〜C10アルキル、C3〜C7シクロアルキルから選ばれ、又は、
前記Xで表わされる置換基は
【化31】
であり、ここにおいてn=2であり、Rは、
【化32】
のうちの任意の1種を含む。
【0025】
一実施例では、前記エステル化試薬はN,N−ジメチルエタノールアミンであり、すなわち前記エステル化試薬では、一般式VのXで表わされる置換基は
【化33】
であり、ここにおいて前記Rエチレン基、前記Rはメチル、前記Rはメチルであり、
前記中間化合物を下記一般式Vを有するエステル化試薬とエステル化反応させ、前記一般式Iを有する前記化合物を取得する前記ステップは、
前記中間化合物を前記N,N−ジメチルエタノールアミンとエステル化反応させ、下記構造を有する化合物を取得するステップを含む。
【化34】
【0026】
一実施例では、前記エステル化試薬は1−(2−ヒドロキシエチル)ピペリジンであり、すなわち前記エステル化試薬では、一般式VのXで表わされる置換基は
【化35】
であり、ここにおいてn=2であり、R
【化36】
であり、
前記中間化合物を下記一般式Vを有するエステル化試薬とエステル化反応させ、前記一般式Iを有する前記化合物を取得する前記ステップは、
前記中間化合物を前記1−(2−ヒドロキシエチル)ピペリジンとエステル化反応させ、下記構造を有する化合物を取得するステップを含む。
【化37】
【0027】
一実施例では、前記方法は、
得られた前記一般式Iを有する化合物に無機酸又は有機酸を加えて反応させ、前記一般式Iを有する前記化合物が無機酸又は有機酸と形成する薬学的に許容される塩を取得する、塩製造ステップをさらに含む。
【0028】
一実施例では、前記無機酸は、塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸のうちの任意の1種を含み、
前記有機酸は、酢酸、トリフルオロ酢酸、乳酸、ピルビン酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、フマル酸、酒石酸、マレイン酸、クエン酸、アスコルビン酸、シュウ酸、カンファン酸、グルコン酸、グルクロン酸、パモ酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、スルファミン酸、p−トルエンスルホン酸のうちの任意の1種を含む。
【0029】
本発明の実施例は、固体試薬、半固体試薬及び液体試薬のうちの任意の1種を含む、前述した2−(αヒドロキシペンチル)安息香酸の有機アミンエステル誘導体で製造される薬学的に許容される試薬をさらに提案する。
【0030】
一実施例では、前記固体試薬は、一般的な錠剤、分散性錠剤、徐放性錠剤、ソフトカプセル剤、ハードカプセル剤、顆粒剤、散剤又は座薬のうちの任意の1種を含み、
前記半固体試薬は、軟膏剤、糊剤、ゲル剤のうちの任意の1種を含み、
前記液体試薬は、注射剤、滴剤、溶液剤、乳剤、懸濁剤のうちの任意の1種を含む。
【0031】
一実施例では、前記製剤は、心脳虚血性疾患、心脳動脈閉塞疾患を予防/治療する薬物、及び抗パーキンソン病・抗認知症薬の製造に応用される。
【発明の効果】
【0032】
従来技術に比べて、本発明の技術的効果は、突出した実質的な特徴及び顕著な進歩を有し、具体的には、以下のとおりである。
1)発明者は、革新的に2−(αヒドロキシペンチル)安息香酸を有機アミン構造で修飾する。有機アミンは、ドラッガブルを著しく改善できる適切な修飾基である。まず有機アミンは、薬物が連結し得る機能基を有し、また、2−(αヒドロキシペンチル)安息香酸の有機アミン誘導体は生体内で分解可能であり、2−(αヒドロキシペンチル)安息香酸を放出し、ブチルフタリドに転化して薬物作用を発揮し、さらに、連結方法がシンプルであり、容易に量産でき、生産コストが低く、応用の将来性が期待でき、さらに、有機アミン誘導体には顕著な毒性や副作用がない。
2)原薬ブチルフタリドに比べて、2−(αヒドロキシペンチル)安息香酸の有機アミンエステル誘導体又はその薬学的に許容される塩は、生体外で高い溶解度、低い吸湿性を有し、ドラッガブルが大幅に改善される。
3)原薬ブチルフタリドに比べて、2−(αヒドロキシペンチル)安息香酸の有機アミンエステル誘導体又はその薬学的に許容される塩は、生体内で高いバイオアベイラビリティ、高い脳内蓄積濃度、及び優れた治療効果を有し、心脳虚血性疾患、心脳動脈閉塞疾患を予防/治療する薬物、及び抗パーキンソン病・抗認知症薬の製造において応用の将来性がより期待できる。
【0033】
本発明に開示される試験は、本発明の研究開発における多数の実験の例示的な実験に過ぎず、本発明の化合物のドラッガブル及びその安全性、有効性を説明することのみを目的とする。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1図1はさまざまなpH緩衝溶液及び純水でのNBP、DB−1又はDB−2の溶解度を示し、単位はmg/mlである。
図2図2はNBP、DB−1又はDB−2の平均薬物血中濃度−時間曲線を示し、n=5である。
図3図3は各投与時刻でのNBP、DB−1又はDB−2の組織における分布状況を示し、n=5である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、具体的な実施形態を説明することによって本発明を更に説明するが、これは本発明を制限するものではなく、当業者であれば、本発明の要旨に基づいて、様々な補正や改良を行うことができ、本発明の要旨から逸脱しない限り、いずれも本発明の範囲内に属する。
【0036】
実施例1 2−(1−アセトキシペンチル)安息香酸(化合物4)の合成
1.24g(6.5mmol)のブチルフタリドを10mLのメタノールに溶解させ、2mol・L−1水酸化ナトリウム溶液を10mL加え、0.5h還流させた。減圧下でメタノールを蒸発除去し、10mLの蒸留水を加えて希釈し、−5℃に冷却し、激しく撹拌しながら、pHが2〜3になるまで0.6mol L−1の希塩酸で酸性化し、水層をエチルエーテルで抽出し(50mL×3)、このエチルエーテル溶液を200mLの塩化メチレンで希釈し、2.7mL(19.6mmol)のトリエチルアミン、0.5gの4−ジメチルアミノピリジン(DMAP)をそれぞれ加え、−5℃で1.5mL(19.6mmol)の塩化アセチルを滴下し、滴下完了後、−5℃で撹拌しながら5h反応させた。10mLの水を加え、室温で0.5h撹拌し、有機層を分離し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。濾過して濃縮させてワックス状固体を得て、ノルマルヘキサンで再結晶させ、白色針状結晶を得た。
【0037】
実施例2 化合物DB−1の合成
0.5gの2−(1−アセトキシペンチル)安息香酸を秤取し、50mlの塩化メチレン、0.9gのHATU、0.6mlのN,N−ジメチルエタノールアミンを加え、一晩撹拌しながら反応させ、水で3回抽出し、塩化メチレン/メタノール=80:1のカラムに通して純化し、白色固体を得て、無水エタノールHCl液を加えて塩を形成し、エチルエーテルを加えて白色沈殿を形成し、濾過して、乾燥させ、塩酸塩生成物、すなわち化合物DB−1塩酸塩を得た。
1H NMR (400 MHz, D2O) δ 7.88 (dd, J = 7.8, 1.3 Hz, 1H), 7.65 - 7.52 (m, 2H), 7.39 (ddd, J= 8.0, 7.0, 1.7 Hz, 1H), 6.30 (dd, J = 8.4, 4.8 Hz, 1H), 4.70 - 4.55 (m, 2H), 3.60 (t, J = 5.0 Hz, 2H), 2.94 (s, 6H), 2.04 (s, 3H), 1.79 (dddd, J= 18.7, 14.2, 11.1, 5.7 Hz, 2H), 1.38 - 1.21 (m, 4H), 0.79 (t, J = 7.1 Hz, 3H).
【0038】
実施例3 化合物DB−2の合成
0.5gの2−(1−アセトキシペンチル)安息香酸を秤取し、50mlの塩化メチレン、0.9gのHATU、0.8mlの1−(2−ヒドロキシエチル)ピペリジンを加え、一晩撹拌しながら反応させ、水で3回抽出し、塩化メチレン/メタノール=80:1のカラムに通して純化し、白色固体を得て、無水エタノールHCl液を加えて塩を形成し、エチルエーテルを加えて白色沈殿を形成し、濾過して、乾燥させ、塩酸塩生成物、すなわち化合物DB−2塩酸塩を得た。
【0039】
実施例4 ブチルフタリド(NBP)、DB−1塩酸塩又はDB−2塩酸塩の、pH1.0、4.5、6.8の溶液及び水における溶解度に対する観察
1.実験方法
調製されたpH1.0のHCl溶液、pH4.5の酢酸塩緩衝液、pH6.8のリン酸塩緩衝液、5mlの超純水をストッパー付きの目盛付き試験管に加え、供試品(ブチルフタリド(NBP)、DB−1塩酸塩又はDB−2塩酸塩)を少量で秤取してバッチで加え、加えるごとに激しく30秒振とうし(超音波禁止)、随時に溶解状況を観察し、濁った不溶性粒子又は液滴が見えるまで供試品を加え、最後に状況に応じて所定量の供試品を加えた。37℃の水浴に入れて一夜振とうし、過飽和溶液とし、遠心又は濾過し(吸着に注意)、100μLをHPLCに入れて各供試薬物の濃度を測定した。
【0040】
2.実験結果及び分析
さまざまなpH緩衝溶液及び純水でのブチルフタリド(NBP)、DB−1塩酸塩又はDB−2塩酸塩の溶解度の測定結果は、図1に示した。ブチルフタリド(NBP)は、単なるフタリド類であり、常温で油状液体であるので、純水での溶解度が非常に低く、その見掛溶解度が0.0734±0.0123mg/mlであり、難溶性薬物であった。pHによるフタリド構造への影響がそれほど大きくないことから、ブチルフタリド(NBP)のさまざまなpH値の緩衝食塩水での溶解度と、純水での溶解度には有意差がなく、その値が非常に低かった。DB−1塩酸塩の、純水における見掛溶解度が20.017±2.978mg/mlであり、DB−2塩酸塩の、純水における見掛溶解度が11.653±1.894mg/mlであり、これらはいずれも可溶性薬物であった。DB−1塩酸塩又はDB−2塩酸塩は、いずれも有機アミン構造を有するものであるため、pHによるその溶解度への影響が大きく、pH1.0のHCl溶液では溶解度が最も大きく、pHの増加に伴って、溶解度が徐々に低下した。DB−2塩酸塩における有機アミンが環状構造であるため、DB−1塩酸塩に比べて、DB−2塩酸塩の溶解度がある程度低下した。有機アミン構造で修飾した後、DB−1塩酸塩又はDB−2塩酸塩の純水における溶解度が大幅に向上し、後続の研究のために基礎を築き、また、DB−1塩酸塩又はDB−2塩酸塩のドラッガブルの研究に対してより多くの可能性を提供した。
【0041】
実施例5 2−(αヒドロキシペンチル)安息香酸ナトリウム塩(NBP)、DB−1塩酸塩及びDB−2塩酸塩の吸湿性の観察
1.実験方法
2−(αヒドロキシペンチル)安息香酸ナトリウム塩、DB−1及びDB−2のサンプルを3つ正確に秤取し、それぞれのサンプルを0.2gとして秤量瓶に入れ、それぞれのサンプル及び秤量瓶の合計質量を秤量して記録した。次に25℃、かつ相対湿度75%の恒湿密閉環境でそれぞれ6h、12h、24h、48h、96h、120h放置した後、それらの質量を秤量し、吸湿による重量増加パーセントを算出した。吸湿による重量増加パーセントを以下の式により算出した。吸湿による重量増加パーセント(%)=(希釈後のサンプル質量−希釈前のサンプル質量)/希釈前のサンプル質量*100%。
【0042】
2.実験結果及び分析
2−(αヒドロキシペンチル)安息香酸ナトリウム塩(NBP)、DB−1塩酸塩及びDB−2塩酸塩の吸湿による重量増加パーセントの測定結果は表1に示した。2−(αヒドロキシペンチル)安息香酸ナトリウム塩(NBP)は、25℃、かつ相対湿度75%の恒湿密閉環境では、吸湿性が高く、120h経過後、その吸湿による重量増加パーセントが2.49±0.25%であった。一方、120h経過後、DB−1塩酸塩及びDB−2塩酸塩の吸湿による重量増加パーセントはそれぞれ1.03±0.07%及び0.76±0.06%であり、このことから、吸湿性が大幅に改善された。薬物の製造・貯蔵には、吸湿性は、非常に重要な性質であり、薬物の安定性に直接影響を与え、ひいては、薬物の作用効果にも影響を与えた。2−(αヒドロキシペンチル)安息香酸ナトリウム塩(NBP)に比べて、DB−1塩酸塩又はDB−2塩酸塩は、吸湿性が大幅に改善し、後続の研究のために基礎を築き、DB−1塩酸塩又はDB−2塩酸塩のドラッガブル研究にも、より多くの可能性を提供した。下記表1は、2−(αヒドロキシペンチル)安息香酸ナトリウム塩(NBP)、DB−1及びDB−2の吸湿による重量増加パーセントの測定結果(%)を示した。
【0043】
【表1】
【0044】
実施例6 DB−1又はDB−2を含む注射剤の製造
化合物DB−1又はDB−2 1gを精密に秤取し、適量の注射用水を加え、pHを6.5〜7.2に調整し、注射用水を加えて1000mlまで定容し、活性炭を加えて熱源を吸着し、0.22μmのマイクロポーラスろ過膜で濾過し、無菌アンプル瓶に無菌充填して、静脈注射可能な注射剤を製造した。
【0045】
実施例7 マウスの薬動学及び生体内分布の実験
1.動物の群分け及び投与計画
90匹の昆明マウス(雄性、20±2g)を、1群あたり30匹で3群にランダムに分けた。第1群はブチルフタリド群であり、6つのチーム(1チームあたり5匹)に分け、10mg/kgブチルフタリドで投与した。第2群はDB−1群であり、6つのチーム(1チームあたり5匹)に分け、ブチルフタリドと等モルでDB−1を投与した。第3群はDB−2群であり、6つのチーム(1チームあたり5匹)に分け、ブチルフタリドと等モルでDB−2を投与した。実験前に12h断食させ、水を自由に摂取させ、すべての群について、5min、15min、30min、1h、2h及び4hに、眼窩から採血してから殺した直後、マウスの心臓、肝臓、脾臓、肺、腎臓、及び脳を分離し、生理食塩水で洗浄してろ紙で水分を吸い取り、重量を測定して、所定の倍数の生理食塩水を加えてホモジェナイズし、−40℃冷蔵庫に入れて冷凍しておいた。全血を4500r/minで5min遠心し、血漿を吸引して−40℃の冷蔵庫に入れておいた。保存した組織ホモジェナイズを解凍した後、各組織ホモジェナイズを0.1mL取り、0.5mLのEPチューブに入れ、0.2mLのアセトニトリルタンパク質を加えて沈殿させた。5分間ボルテックス振とうを行い、10000rpmで10min遠心し、1μLの上清液をLC−MS/MSシステムに入れて各供試薬物の濃度を測定した。
【0046】
2.実験結果及び分析
2.1 マウスの薬物動態学の測定結果
2−(αヒドロキシペンチル)安息香酸ナトリウム塩(NBP)、DB−1塩酸塩及びDB−2塩酸塩の平均薬物血中濃度−時間曲線は図2に示した。結果から明らかなように、2−(αヒドロキシペンチル)安息香酸ナトリウム塩(NBP)は、マウス生体内で速く解消し、静脈投与してから5min後、その薬物血中濃度が12.243±1.847nmol/mlであり、投与時間が1hになると、0.547±0.289nmol/mlに急速に下がり、この解消過程は一次速度動態の特徴を示した。投与して0.083h、0.25h、及び0.5h後、DB−2塩酸塩の薬物血中濃度は最も低く、静脈投与してから5min後、その薬物血中濃度が6.294±1.203nmol/mlであり、投与時間が1hになると、1.452±0.657nmol/mlに急速に下がるが、その代謝速度が2−(αヒドロキシペンチル)安息香酸ナトリウム塩(NBP)より遅かった。測定過程に亘って、DB−1塩酸塩の薬物血中濃度はDB−2塩酸塩より高く、静脈投与してから5min後、その薬物血中濃度が8.684±1.482nmol/mlであり、投与時間が1hになると、2.981±0.534nmol/mlに急速に下がった。2−(αヒドロキシペンチル)安息香酸ナトリウム塩(NBP)に比べて、DB−1塩酸塩及びDB−2塩酸塩の生体内での解消レートが遅くなり、それは、DB−1塩酸塩及びDB−2塩酸塩の溶解度、脂質−水分配係数や解離係数などの物理化学的性質による影響によるが、生体内の代謝過程にも関わると考えられた。
【0047】
2.2 マウスの生体内分布実験の測定結果
各投与時刻での2−(αヒドロキシペンチル)安息香酸ナトリウム塩(NBP)、DB−1塩酸塩及びDB−2塩酸塩の組織における分布状況は図3に示した。結果から明らかなように、2−(αヒドロキシペンチル)安息香酸ナトリウム塩(NBP)は、血液脳関門を透過して脳部に入ることができ、腎臓での濃度が高く、それは、該薬物の一部が腎臓で代謝されるためであると考えられ、他の各組織では平均に分布している。2−(αヒドロキシペンチル)安息香酸ナトリウム塩(NBP)は、生体内で速く解消し、投与してから1h後、各組織での濃度が低く、4hになると、心臓、肺部及び脳部における含有量が低すぎるので、検出できず、それは、2−(αヒドロキシペンチル)安息香酸ナトリウム塩(NBP)の生体内の薬物動態学の実験結果と一致した。DB−1塩酸塩及びDB−2塩酸塩も血液脳関門を透過して脳部に入ることができ、各検出時刻に両者の脳部における含有量が2−(αヒドロキシペンチル)安息香酸ナトリウム塩(NBP)よりも著しく高く、このことから、DB−1塩酸塩及びDB−2塩酸塩は、脳標的薬として有望であることを示した。また、DB−1塩酸塩及びDB−2塩酸塩の、肺部における含有量も高く、その構造に修飾された有機アミンに関わる可能性があるが、腎臓における含有量が下がるため、腎臓でのDB−1塩酸塩及びDB−2塩酸塩の解消レートが2−(αヒドロキシペンチル)安息香酸ナトリウム塩(NBP)より低いことを推定した。DB−1塩酸塩に比べて、DB−2塩酸塩の脳内蓄積濃度が高く、それは、その側鎖の構造に関わった。
【0048】
2.3 標的性評価
各薬動態学パラメータをDAS3.2.5ソフトウェアで算出し、2−(αヒドロキシペンチル)安息香酸ナトリウム塩(NBP)、DB−1塩酸塩及びDB−2塩酸塩の脳標的性の定量的評価には、相対摂取率(Rebrain)、ピーク濃度比(Cebrain)、薬物標的化指数(Drug targeting index、DTIbrain)といった複数のパラメータを用い、計算式はそれぞれ以下のとおりであった。
【0049】
Re(brain, DB-1)=(AUCbrain)DB-1/(AUCbrain)NBP
Ce DB-1=(Cmax, brain)DB-1/(Cmax, brain)NBP
DTI DB-1=(AUCbrain/AUCplasma)DB-1/(AUCbrain/ AUCplasma)NBP
Re(brain, DB-2)=(AUCbrain)DB-2/(AUCbrain)NBP
Ce DB-2=(Cmax, brain)DB-2/(Cmax, brain)NBP
DTI DB-2=(AUCbrain/AUCplasma)DB-2/(AUCbrain/ AUCplasma)NBP
【0050】
Re(brain、DB−1)、Re(brain、DB−2)は、薬物に脳標的性を有するか否かを評価することに用いられ、1より大きいと、薬物は脳標的性を有することを示し、Reが大きければ大きいほど、脳標的性の効果が優れ、1以下であると、脳標的性がないことを示し、Ce DB−1、Ce DB−2の値は、薬物の脳での標的化分布の効果を示し、Ce値が大きければ大きいほど、脳での標的化分布の効果が優れ、DTIは、薬物標的化の有効性を評価する最適な指標であった。各パラメータの算出結果を表2に示した。DB−1については、脳の相対摂取率Reは3.64、ピーク濃度比Ceは2.93、薬物標的化指数DTIは12.45であった。DB−2については、脳の相対摂取率Reは4.27、ピーク濃度比Ceは3.19、薬物標的化指数DTIは18.08であった。この結果から分かるように、2−(αヒドロキシペンチル)安息香酸ナトリウム塩(NBP)は、有機アミンで修飾することにより、血漿における分布が減少し、脳における分布が著しく増加し、標的性が顕著であった(p<0.05)。下記表2は、2−(αヒドロキシペンチル)安息香酸ナトリウム塩(NBP)、DB−1及びDB−2の脳標的化パラメータの計算結果(%)を示した。
【0051】
【表2】
【0052】
3.結論
2−(αヒドロキシペンチル)安息香酸ナトリウム塩(NBP)、DB−1及びDB−2のマウスの生体内で薬物動態学及び生体内分布実験の研究結果から明らかなように、2−(αヒドロキシペンチル)安息香酸ナトリウム塩(NBP)を有機アミンで修飾することにより、DB−1及びDB−2化合物の、生体内における代謝動態学及び組織分布を変えることができ、DB−1及びDB−2化合物の脳における分布濃度を著しく増加させ、脳標的化薬物送達の目的を実現した。DB−1及びDB−2化合物の脳標的性は、DB−1塩酸塩及びDB−2塩酸塩の溶解度、脂質−水分配係数や解離係数などの物理化学的性質による影響による可能性があるが、生体内の代謝過程にも関わった。
【0053】
本明細書に記載の「一実施例」、「実施例」又は「1つ又は複数の実施例」とは、実施例を参照して説明する特定の特徴、構造又は特性が、本発明の少なくとも1つの実施例に含まれることを意味する。さらに、ここで、「一実施例では」という表現が表す例は、必ずしもすべてが同じ実施例を指すとは限らない。
【0054】
本明細書では、大量の詳細を説明した。しかしながら、本発明の実施例は、これらの詳細がなくても、実施することができる。いくつかの実例では、本明細書に対する理解が不明瞭にならないように、公知の方法、構造及び技術が詳細に示されていない。
【0055】
なお、以上の実施例は、本発明の技術案を説明するためのものに過ぎず、それを制限するものではなく、前述した実施例を参照しながら、本発明について詳細に説明したが、当業者であれば、前述した各実施例に記載の技術案を補正したり、技術的特徴の一部に対して等同置換を行ったりすることができ、これらの補正や置換により、対応する技術案の主旨が本発明の各実施例の技術案の精神及び範囲から逸脱することはない。
図1
図2
図3