【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の目的は、新規な、脳部疾患を治療する一般式Iの構造が2−(αヒドロキシペンチル)安息香酸である有機アミンエステル誘導体及びその製造方法を提供することである。
【0008】
上記目的を達成させるために、本発明は、以下の技術案を用いる。
本発明は、一般式Iの有機アミンエステル誘導体薬物又はその薬学的に許容される塩を提供し、
【化1】
R
1は水素原子又はアシル又はアシルオキシを含有するC1〜C10のアルキルを表し、Xは
【化2】
であり、R
2は、C1〜C10アルキレン、又はC3〜C7シクロアルキレンであり、R
3、R
4はそれぞれ独立して、水素原子、C1〜C10アルキル、C3〜C7シクロアルキルから選ばれ、又はXは
【化3】
であり、ここにおいてn=0〜10であり、R5は1〜2個のN原子を含有する5〜15員複素環又は置換複素環である。
【0009】
さらに、本発明は、前記2−(αヒドロキシペンチル)安息香酸の有機アミンエステル誘導体又はその薬学的に許容される塩において、Xは
【化4】
であり、R
2は、C1〜C10アルキレン、又はC3〜C7シクロアルキレンであり、R
3、R
4はそれぞれ独立して、水素原子、C1〜C10アルキル、C3〜C7シクロアルキルから選ばれ、又はXは
【化5】
であり、ここにおいてn=2であり、R
6は
【化6】
から選ばれる、ことを特徴とする前記2−(αヒドロキシペンチル)安息香酸の有機アミンエステル誘導体又はその薬学的に許容される塩を提供する。
【0010】
またさらに、本発明は、前記2−(αヒドロキシペンチル)安息香酸の有機アミンエステル誘導体薬物の製造方法において、まずブチルフタリドを開環させ、次に塩化アセチルと反応させ、最後にX−OHとアシル化させてエステルとし、反応式は以下のとおりであり、
【化7】
(式中、Xは
【化8】
であり、R
2は、C1〜C10アルキレン、又はC3〜C7シクロアルキレンであり、R
3、R
4はそれぞれ独立して、水素原子、C1〜C10アルキル、C3〜C7シクロアルキルから選ばれ、又はXは
【化9】
であり、ここにおいてn=2であり、
R
6は
【化10】
から選ばれる。)
またさらに、ブチルフタリドをアルカリ性条件において開環させ、次に酸性化、アセチル化を順次に行い、それぞれN,N−ジメチルエタノールアミン及び1−(2−ヒドロキシエチル)ピペリジンと縮合してエステルとし、化合物DB−1及びDB−2を得ることを特徴とする前記2−(αヒドロキシペンチル)安息香酸の有機アミンエステル誘導体薬物の製造方法を提供する。
【0011】
化合物DB−1及びDB−2の構造式は以下のとおりである。
【化11】
【0012】
以下、化合物DB−1及びDB−2の合成方法について簡単に説明する。
(1)2−(1−アセトキシペンチル)安息香酸(4)の合成
ブチルフタリド(1)をメタノールに溶解させ、適量の水酸化ナトリウム溶液を加え、加熱しながら1h反応させる。減圧下でメタノールを蒸発除去し、蒸留水を加えて希釈し、希塩酸で酸性化し、水層をエチルエーテルで抽出し、エーテル層を合わせて、それぞれトリエチルアミン、4−ジメチルアミノピリジン(DMAP)を加え、塩化アセチルを滴下し、撹拌しながら5h反応させる。水を加えて抽出し、有機層を分離し、濃縮させてワックス状固体を得て、ノルマルヘキサンを再結晶させ、白色針状結晶を得る。
【化12】
【0013】
(2)化合物DB−1の合成
化合物(4)を秤取し、塩化メチレン、HATU、化合物(5)を加え、一晩撹拌しながら反応させ、水で3回抽出し、カラムに通して純化し、白色固体を得て、無水エタノールHCl液を加えて塩を形成し、エチルエーテルを加えて白色沈殿を形成し、濾過して乾燥させ、化合物DB−1塩酸塩生成物を得る。
【化13】
【0014】
(3)化合物DB−2の合成
化合物4を秤取し、塩化メチレン、HATU、化合物6を加え、一晩撹拌しながら反応させ、水で3回抽出し、カラムに通して純化し、白色固体を得て、無水エタノールHCl液を加えて塩を形成し、エチルエーテルを加えて白色沈殿を形成し、濾過して乾燥させ、化合物DB−2塩酸塩生成物を得る。
【化14】
【0015】
その中でも、化合物5、6は一般的な化学工業原料であり、市販品として入手できる。
【0016】
本発明の第2の目的は、本発明の前記2−(αヒドロキシペンチル)安息香酸の有機アミンエステル誘導体又はその薬学的に許容される塩、及び脳部疾患を予防又は治療する薬物の製造におけるその製剤の応用である。前記脳部疾患は、心脳虚血性疾患、心脳動脈閉塞疾患、パーキンソン病や認知症を含む。
【0017】
本発明の前記2−(αヒドロキシペンチル)安息香酸の有機アミンエステル誘導体又はその薬学的に許容される塩のドラッガブルの改善を研究するために、上記化合物に対して生体外の物理化学的性質の観察及び生体内分布の事前実験を行う。実験結果から明らかなように、溶液への治療用薬物の溶解度を大幅に向上させ、低い吸湿性を有するとともに、原薬ブチルフタリドよりも著しく高い経口バイオアベイラビリティを有し、ブチルフタリドの脳内蓄積濃度を大幅に向上させ、その脳内蓄積時間を延ばし、それによって、生産プロセスを簡略化させ、生産コストを低下させ、治療効果を向上又は投与量を低減させ、毒性や副作用を低減させ、さらに製品の有効性及び安全性を向上させる。
【0018】
従って、本発明は2−(αヒドロキシペンチル)安息香酸の有機アミンエステル誘導体を提案し、前記2−(αヒドロキシペンチル)安息香酸の有機アミンエステル誘導体は下記一般式Iを有する化合物であるか、又は前記一般式Iを有する化合物が無機酸又は有機酸と形成する薬学的に許容される塩である。
【化15】
(前記一般式Iにおいて、R
1は水素原子又はC1〜C10のアルキルを含み、前記C1〜C10のアルキルはアシル又はアシルオキシを含有し、
Xで表わされる置換基は
【化16】
であり、ここにおいてR
2は、C1〜C10アルキレン、又はC3〜C7シクロアルキレンであり、R
3、R
4はそれぞれ独立して、水素原子、C1〜C10アルキル、C3〜C7シクロアルキルから選ばれ、又は、
Xで表わされる置換基は
【化17】
であり、ここにおいてnは[0,10]の範囲から選ばれる整数であり、R
5は1つ又は2つの窒素原子を含有する5〜15員複素環又は置換複素環を含む。)
【0019】
一実施例では、前記2−(αヒドロキシペンチル)安息香酸の有機アミンエステル誘導体は、下記一般式IIを有する化合物であるか、又は前記一般式IIを有する化合物が無機酸又は有機酸と形成する薬学的に許容される塩である、ことを特徴とする。
【化18】
(前記R
1はアシルを含有するエチルであり、
前記Xで表わされる置換基は
【化19】
であり、ここにおいてR
2は、C1〜C10アルキレン、又はC3〜C7シクロアルキレンであり、R
3、R
4はそれぞれ独立して、水素原子、C1〜C10アルキル、C3〜C7シクロアルキルから選ばれ、又は、
前記Xで表わされる置換基は
【化20】
であり、ここにおいてn=2であり、R
5は、
【化21】
のうちの任意の1種を含む。)
【0020】
一実施例では、前記2−(αヒドロキシペンチル)安息香酸の有機アミンエステル誘導体は下記構造の化合物であるか、又は下記構造を有する化合物が無機酸又は有機酸と形成する薬学的に許容される塩である。
【化22】
(前記R
1はアシルを含有するエチルであり、
前記Xで表わされる置換基は
【化23】
であり、ここにおいて前記R
2は
エチレン基、前記R
3はメチル、前記R
4はメチルである。)
【0021】
一実施例では、前記2−(αヒドロキシペンチル)安息香酸の有機アミンエステル誘導体は下記構造の化合物であるか、又は下記構造を有する化合物が無機酸又は有機酸と形成する薬学的に許容される塩である。
【化24】
(前記R
1はアシルを含有するエチルであり、
前記Xで表わされる置換基は
【化25】
であり、ここにおいてn=2であり、R
5は
【化26】
である。)
【0022】
一実施例では、前記無機酸は、塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸のうちの任意の1種を含み、
前記有機酸は、酢酸、トリフルオロ酢酸、乳酸、ピルビン酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、フマル酸、酒石酸、マレイン酸、クエン酸、アスコルビン酸、シュウ酸、カンファン酸、グルコン酸、グルクロン酸、パモ酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、スルファミン酸、p−トルエンスルホン酸のうちの任意の1種を含む。
【0023】
本発明の実施例は、下記構造1を有する化合物2−(αヒドロキシペンチル)安息香酸を下記一般式IIIを有するアシル化試薬とアシル化反応させ、下記一般式IVを有する中間化合物を取得するステップと、
前記中間化合物を下記一般式Vを有するエステル化試薬とエステル化反応させ、前記一般式Iを有する前記化合物を取得するステップとを含む、前述した2−(αヒドロキシペンチル)安息香酸の有機アミンエステル誘導体の製造方法をさらに提案する。
【化27】
(前記アシル化試薬では、一般式IIIのR
1は水素原子又はC1〜C10のアルキルを含み、前記C1〜C10のアルキルはアシル又はアシルオキシを含有し、
前記エステル化試薬では、一般式VのXで表わされる置換基は
【化28】
であり、ここにおいてR
2は、C1〜C10アルキレン、又はC3〜C7シクロアルキレンであり、R
3、R
4はそれぞれ独立して、水素原子、C1〜C10アルキル、C3〜C7シクロアルキルから選ばれ、又は、
Xで表わされる置換基は
【化29】
であり、ここにおいてnは[0,10]の範囲から選ばれる整数であり、R
5は1つ又は2つの窒素原子を含有する5〜15員複素環又は置換複素環を含む。)
【0024】
一実施例では、前記アシル化試薬では、一般式IIIのR
1はアセチルであり、
前記エステル化試薬では、一般式VのXで表わされる置換基は
【化30】
であり、ここにおいてR
2は、C1〜C10アルキレン、又はC3〜C7シクロアルキレンであり、R
3、R
4はそれぞれ独立して、水素原子、C1〜C10アルキル、C3〜C7シクロアルキルから選ばれ、又は、
前記Xで表わされる置換基は
【化31】
であり、ここにおいてn=2であり、R
5は、
【化32】
のうちの任意の1種を含む。
【0025】
一実施例では、前記エステル化試薬はN,N−ジメチルエタノールアミンであり、すなわち前記エステル化試薬では、一般式VのXで表わされる置換基は
【化33】
であり、ここにおいて前記R
2は
エチレン基、前記R
3はメチル、前記R
4はメチルであり、
前記中間化合物を下記一般式Vを有するエステル化試薬とエステル化反応させ、前記一般式Iを有する前記化合物を取得する前記ステップは、
前記中間化合物を前記N,N−ジメチルエタノールアミンとエステル化反応させ、下記構造を有する化合物を取得するステップを含む。
【化34】
【0026】
一実施例では、前記エステル化試薬は1−(2−ヒドロキシエチル)ピペリジンであり、すなわち前記エステル化試薬では、一般式VのXで表わされる置換基は
【化35】
であり、ここにおいてn=2であり、R
5は
【化36】
であり、
前記中間化合物を下記一般式Vを有するエステル化試薬とエステル化反応させ、前記一般式Iを有する前記化合物を取得する前記ステップは、
前記中間化合物を前記1−(2−ヒドロキシエチル)ピペリジンとエステル化反応させ、下記構造を有する化合物を取得するステップを含む。
【化37】
【0027】
一実施例では、前記方法は、
得られた前記一般式Iを有する化合物に無機酸又は有機酸を加えて反応させ、前記一般式Iを有する前記化合物が無機酸又は有機酸と形成する薬学的に許容される塩を取得する、塩製造ステップをさらに含む。
【0028】
一実施例では、前記無機酸は、塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸のうちの任意の1種を含み、
前記有機酸は、酢酸、トリフルオロ酢酸、乳酸、ピルビン酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、フマル酸、酒石酸、マレイン酸、クエン酸、アスコルビン酸、シュウ酸、カンファン酸、グルコン酸、グルクロン酸、パモ酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、スルファミン酸、p−トルエンスルホン酸のうちの任意の1種を含む。
【0029】
本発明の実施例は、固体試薬、半固体試薬及び液体試薬のうちの任意の1種を含む、前述した2−(αヒドロキシペンチル)安息香酸の有機アミンエステル誘導体で製造される薬学的に許容される試薬をさらに提案する。
【0030】
一実施例では、前記固体試薬は、一般的な錠剤、分散性錠剤、徐放性錠剤、ソフトカプセル剤、ハードカプセル剤、顆粒剤、散剤又は座薬のうちの任意の1種を含み、
前記半固体試薬は、軟膏剤、糊剤、ゲル剤のうちの任意の1種を含み、
前記液体試薬は、注射剤、滴剤、溶液剤、乳剤、懸濁剤のうちの任意の1種を含む。
【0031】
一実施例では、前記製剤は、心脳虚血性疾患、心脳動脈閉塞疾患を予防/治療する薬物、及び抗パーキンソン病・抗認知症薬の製造に応用される。