(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
[実施の形態]
<保護具1の概要>
図1は、本発明の実施の形態に係る保護具の使用状態の概要の一例を示す。
【0016】
本実施形態に係る保護具1は、人5が4足歩行運動する場合に膝に装着し、膝に対する痛み等のダメージを低減、防止する。具体的に、
図1に示すように、両方の膝6それぞれに保護具1が装着される。また、両方の手7には手用保護具2が装着される。両手及び両膝に保護具を装着せずに4足歩行運動を実施すると、掌及び膝に圧力が加わって痛みを感じるだけでなく、地面や床等と掌及び膝とが接触し、掌及び膝に傷を負う場合がある。そのため、4足歩行運動の日常化の観点から、掌及び膝を保護する保護具を用いることが要求される。
【0017】
特に4足歩行運動においては、前後に進む運動だけでなく、円や8の字を描くように4足歩行する運動(つまり、曲がって進む運動)もある。曲がって進む運動を実行する場合、保護具1には前後方向だけでなく左右方向にも力が加わる。また、この場合において保護具1には、脚を軸にして保護具1が回転する方向の力も加わる。そのため、保護具1に加わる前後左右(及び上下)の力に対して保護具1が膝6からずれないようにすることが要求される。本実施形態に係る保護具1は、後述するように、膝6に複数の方向から接触し、膝6に加わる力に対し、当該力とは反対方向の力を作用させる構造、及び当該力に追随する方向へ力を作用させる構造を有している(例えば、前方向の力に対しては前に追随する方向の力が作用し、後方向の力に対しては後ろに追随する方向の力が作用する構造を有する。また、右方向の力に対しては左方向の力が作用し、左方向の力に対しては右方向の力が作用する構造を有する。)。すなわち、保護具1は、膝に装着された場合、膝の位置からずれるような力が加わる領域に点、線、及び/又は面で接触する領域を設けることで、膝からのずれや脱げに対抗できる。これにより、本実施形態に係る保護具1は、4足歩行運動によって膝からずれることや脱げることがなく、装着者は安心して4足歩行運動を実行できる。なお、手用保護具2においても同様である。
【0018】
本実施形態に係る保護具1及び/又は手用保護具2を用いることで、装着者は掌及び膝に痛みを感じることなく4足歩行運動を実施できる。そして、保護具1及び/又は手用保護具2は、床に接触させて前後方向や左右方向に力が加わっても膝や掌からずれることがないので、装着者は安心して4足歩行運動を実行できる。
【0019】
なお、4足歩行運動は、畳2畳程度の場所があれば実施できるので、装着者は、時と場所とを選ばずに好きな時及び好きな場所で一人でも実施できる。そして、4足歩行運動は、実施することで全身がすぐに温まり、全身の筋肉(特に肩甲骨や股関節回りの筋肉)がほぐされ強化されるので、高齢者や要介護者等のリハビリテーションのみならず、様々なスポーツ選手の怪我の予防にまで応用することもできる。すなわち、4足歩行運動は人体の各部位を安全に鍛えることができるので、全ての人、幅広い身体状況の人々に効果的であり、リハビリテーションや日常的な運動、及びスポーツ選手の訓練等に用いることができる。更に4足歩行運動は、腰痛、肩こり、及び/又はダイエット等に効果があることが期待されるところ、本実施形態に係る保護具1及び/又は手用保護具2を用いることで、4足歩行運動を容易に日常化することができる。
【0020】
また、4足歩行運動においては、脊椎に直接付着する筋肉(脊柱起立筋群、広背筋、及び腸腰筋)が同時に使用され、かつ、上半身と下半身とが連動して動く率(連動率)も高い(特に、2足歩行では連動が十分ではない広背筋(上半身)と大殿筋(下半身)との連動率が非常に高い。)。そのため、4足歩行運動により筋膜ラインが強化され、全身の筋力を強化することだけでなく、関節の可動域を拡げる効果や全身のゆがみを矯正できる効果、更には、全身の血管、リンパ管、神経、経絡等の隅々まで刺激する効果が期待できる。更には、装着者の脊髄反射も上半身と下半身との連動を鍛えることによって強化され、また、装着者は環境変化への柔軟で素早い反応(例えば、受け身等の躓きによる転倒への対応)ができるようになる。そして、日本においては「転倒」による死者数が約1万人にも達している。ここで、「転倒」により命を落とさなかったとしても、高齢者は骨折や骨折に基づく入院をきっかけとして寝たきり等の要介護者になる場合があり、「転倒」は高齢化社会の大きな課題である。これに対し、4足歩行運動は転倒予防対策として有効なエクササイズであり、これからの時代に非常に有用であると考えられる。なお、四肢を動かす運動としては、水泳、ダンス、ボルダリング等も挙げられるが、これらの運動は上半身と下半身との連動率が4足歩行運動より低い。この点からも4足歩行運動が有用であるといえる。
【0021】
<保護具1の詳細>
図2は、本実施形態に係る保護具の斜視図の一例を示す。また、
図3は、本実施形態に係る保護具の六面図の一例を示す。
【0022】
本実施形態に係る保護具1は、4足歩行運動に用いることが可能な膝の保護具である。
図2に示すように保護具1は、アウトソール部10と、インソール部11と、サイドウォール部12と、第1のバンド紐13と、第2のバンド紐14と、パッド部15と、バンド部16とを備える。また、パッド部15は、第1パッド領域150と第2パッド領域152とを有する。バンド部16は第1のバンド紐13に回動部17により接続される。更に、第1のバンド紐13は2つの部分バンド紐からなり、2つの部分バンド紐は互いに第1のバックル135で固定可能である。同様に第2のバンド紐14も2つの部分バンド紐からなり、2つの部分バンド紐は互いに第2のバックル145で固定可能である。
【0023】
(アウトソール部10)
アウトソール部10は、平面視にて長手方向(
図3(e)のL)と幅方向(
図3(e)のW)とを有し、底面100と底面100に対向する主面102とを有する。底面100は、床や地面等との接触面積を確保する観点から面状である。そして、アウトソール部10の形状は、保護具1を装着した装着者が前後左右に移動した場合に床や地面を捉えやすく、躓きにくい形状であれば特に限定はない。一例として、アウトソール部10は、平面視にて略四角形状、略長方形状、若しくは略台形状等であってよい。また、底面100は、保護具1の床や地面等に対する摩擦力、推進力、ブレーキ力等を発揮させる観点から、凸部110と凹部111とを含んで形成されることが好ましい。なお、底面100は、凸部110と凹部111との代わりに、若しくは共に1以上の溝部を含んでいてもよい。
【0024】
アウトソール部10は、例えば、ポリ塩化ビニル系樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合体系樹脂(EVA樹脂)、熱可塑性ポリウレタン系樹脂等の合成樹脂から構成できる。なお、アウトソール部10は、複数の層を有して構成されてもよい。また、アウトソール部10の厚さは、膝に加わる圧力を軽減して膝を保護し、膝の外傷を防止することができる限り、特に限定はない。
【0025】
アウトソール部10は、装着者の膝上方の大腿部下方部分から膝下方の下腿部上方部分までの間に配置される。そして、アウトソール部10は膝に加わる圧力を低減し、膝に対する外傷を防止すると共に、面状の底面100が床や地面等に接触するので膝と床等との角度を一定に保つことができると共に保護具1の安定性を向上できる。
【0026】
(インソール部11)
インソール部11は、平面視にて長手方向と幅方向とを有し、主面102に接して交換可能に設けられる。インソール部11は、アウトソール部10の形状に応じた形状を有し、例えば、略四角形状、略長方形状、若しくは略台形状等であってよい。また、インソール部11は、力が加わった際に変形可能であってよい。
【0027】
インソール部11は、例えば、ポリエステル、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリウレタン(PU)、高耐久性ウレタン(粉砕ウレタン結合材)等の合成樹脂から構成できる。なお、インソール部11は、複数の層を有して構成されてもよい。
【0028】
インソール部11は、装着者の膝に接し、膝に対する衝撃を吸収し、痛みを軽減する。また、インソール部11は圧力が加わると変形し、装着者の膝及び下腿部上方に密着する。そして、インソール部11は交換可能であるので、装着者の汗を吸収した場合に新たなインソール部11に交換することができ、保護具1を清潔に保つことができる。
【0029】
(サイドウォール部12)
サイドウォール部12は、アウトソール部10の一対の長手方向の縁部付近それぞれから、アウトソール部10の主面102の法線方向に沿った方向であって主面102側に延びて設けられる。アウトソール部10が平面視にて略四角形状、略長方形状、若しくは略台形状の形状を有する場合、一対のサイドウォール部12は、アウトソール部10の一対の長辺の縁部近傍から底面100の反対側表面(つまり、主面102)の方向に向けて延びて設けられる。ここで、サイドウォール部12のアウトソール部10の主面102に対する角度は、装着者の膝横部分(膝の両側面)を適切に押さえ、保護具1に水平方向に加わる力を受け止めて保護具1の安定性を向上させる観点から、75°以上が好ましく、80°以上がより好ましく、105°以下が好ましく、100°以下がより好ましく、90°であることが最も好ましい。
【0030】
サイドウォール部12は、アウトソール部10と同様の材料から構成できる。
【0031】
サイドウォール部12は、装着者の脚の周囲において膝と膝裏との間の少なくとも一部及び/又は膝下の下腿部上方に接触することで保護具1を膝に固定する。これにより、サイドウォール部12は、保護具1に加わる左右方向(水平方向)の力に抗って(つまり、加わる力と反対方向の力が作用して)、装着者の脚を中心に保護具1が回転してずれることを防止する。つまり、サイドウォール部12は、装着者が4足歩行運動において横方向への移動をした場合等(例えば、円を描く回転運動や八の字運動をした場合等)、保護具1の横方向(アウトソール部10の幅方向)に加わる力に対して保護具1が膝からずれることを防止する。
【0032】
(第1のバンド紐13)
第1のバンド紐13は、サイドウォール部12の外側において、アウトソール部10の長手方向の一方の縁部近傍から他方の縁部近傍に向けて設けられる。アウトソール部10が平面視にて略四角形状、略長方形状、若しくは略台形状の形状を有する場合、第1のバンド紐13は、アウトソール部10の一方の長辺から他方の長辺に向けて設けられる。すなわち、第1のバンド紐13は、装着者の膝裏上方近傍から膝裏下方近傍までの間において、アウトソール部10の長手方向の一方の縁部側から他方の縁部側に向けて装着者の脚の裏側表面の少なくとも一部に沿って配置され、保護具1を装着者の膝に固定する。例えば、第1のバンド紐13は、アウトソール部10前方若しくは前方端部近傍であって長手方向の一方の端部近傍に一方の端部が固定され、長手方向の他方の端部近傍に他方の端部が固定される。
【0033】
また、第1のバンド紐13は、アウトソール部10の長手方向の一方の縁部近傍に固定される第1部分バンド紐130と、他方の縁部近傍に固定される第2部分バンド紐132とを含み、第1部分バンド紐130と第2部分バンド紐132とが第1のバンド紐13の長さを調整可能な第1のバックル135で固定可能に設けられる。第1のバックル135により第1のバンド紐13の長さを調整できるので、保護具1の装着時に毎回、適切な密着度合いで保護具1を装着できる。
【0034】
第1のバンド紐13は、ゴムバンドやテープバンドであってよく、例えば、ポリプロピレン等の合成樹脂から構成できる。
【0035】
(第2のバンド紐14)
第2のバンド紐14は、サイドウォール部12の外側において、アウトソール部10の長手方向の一方の縁部近傍から他方の縁部近傍に向けて第1のバンド紐13とは離間して設けられる。第1のバンド紐13が設けられる位置を保護具1の前方とした場合、第2のバンド紐14は、第1のバンド紐13よりも保護具1の後方に離れて設けられる。アウトソール部10が平面視にて略四角形状、略長方形状、若しくは略台形状の形状を有する場合、第2のバンド紐14は、アウトソール部10の一方の長辺から他方の長辺に向けて、第1のバンド紐13から離間して設けられる。すなわち、第2のバンド紐14は、第1のバンド紐13より装着者の下腿部側において、アウトソール部10の一方の縁部側から他方の縁部側にむけて装着者の脚の裏側表面の少なくとも一部に沿って配置されると共に第1のバンド紐13と離間した状態を維持されて設けられる。そして、第2のバンド紐14は、保護具1を装着者の膝に固定する。例えば、第2のバンド紐14は、アウトソール部10後方若しくは後ろ側端部近傍であって長手方向の一方の端部近傍に一方の端部が固定され、長手方向の他方の端部近傍に他方の端部が固定される。
【0036】
また、第2のバンド紐14は、アウトソール部10の長手方向の一方の縁部近傍に固定される第3部分バンド紐140と、他方の縁部近傍に固定される第4部分バンド紐142とを含み、第3部分バンド紐140と第4部分バンド紐142とが第2のバンド紐14の長さを調整可能な第2のバックル145で固定可能に設けられる。第2のバックル145により第2のバンド紐14の長さを調整できるので、保護具1の装着時に毎回、適切な密着度合いで装着できる。
【0037】
第2のバンド紐14は、ゴムバンドやテープバンドであってよく、例えば、ポリプロピレン等の合成樹脂から構成できる。
【0038】
(パッド部15)
パッド部15は、平面視にて長手方向と幅方向とを有し、アウトソール部10の主面102側において主面102から離れた位置で主面102に対向して設けられる。パッド部15の形状に限定はないが、例えば、平面視にて略四角形状若しくは略長方形状を有して構成できる。そして、パッド部15は、第1のバンド紐13と第2のバンド紐14との離間状態を維持する。例えば、パッド部15は、第1のバンド紐13を通す第1の孔と第2のバンド紐14を通す第2の孔とを有して構成でき、第1の孔と第2の孔とは所定距離だけ離間して設けられる。また、第1のバンド紐13及び第2のバンド紐14を互いに離れた状態にしてパッド部15に縫い付けること等により固定してもよい。また、パッド部15は、主面102に対向する第1パッド領域150と主面102から離れる方向(つまり、アウトソール部10から離れる方向)に向けて傾斜する第2パッド領域152とを含む。第2パッド領域152は、第1パッド領域150に対する傾斜角度を変化可能に設けることができる。
【0039】
パッド部15は、例えば、ポリエステル、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリウレタン(PU)、高耐久性ウレタン(粉砕ウレタン結合材)等の合成樹脂から構成できる。
【0040】
パッド部15は、装着者の膝裏上方の大腿部裏側下方から膝裏を介し、膝裏下方の下腿部裏側上方若しくはふくらはぎ上方の一部までの間で膝裏や脚に密着し、保護具1を膝に固定する。すなわち、第1パッド領域150は、膝裏から膝裏下方の下腿部裏側上方若しくはふくらはぎ上方の一部までの間で脚に密着し、第2パッド領域152は、膝裏から膝裏上方の大腿部裏側下方までの間で脚に密着することで保護具1を膝に固定する。
【0041】
(バンド部16)
バンド部16は、第1のバンド紐13と少なくとも一部において交差し、アウトソール部10の一方の長辺側から他方の長辺側に向けて設けられる。また、バンド部16は、アウトソール部10、サイドウォール部12、若しくは第1のバンド紐13に対して変位可能に設けられる。つまり、バンド部16は、保護具1の平面視にて略U字形状を有し、バンド部16とアウトソール部10若しくは第1のバンド紐13との接続部分を中心に変位可能に設けられる。なお、本実施形態及びその変形例において「変位」とは、例えば、バンド部16の端部等が他の構成要素に接続された所定の個所を中心に回動可能であることや、第1のバンド紐13及び/又はサイドウォール部12の所定部分を基準位置とした場合に、バンド部16の位置(例えば、少なくともバンド部16の両端を除く領域)の当該基準位置に対する配置や距離等が変化することをいうものとする。具体的に、バンド部16は、サイドウォール部12若しくは第1のバンド紐13に接続される。なお、4足歩行運動に応じてアウトソール部10に対するバンド部16の位置を可変にする観点から、バンド部16はサイドウォール部12に固定せず、第1のバンド紐13に固定させることが好ましい。
【0042】
例えば、バンド部16の一方の端部は、保護具1の側面に位置する第1部分バンド紐130に接続される。この場合において、当該一方の端部は、第1のバンド紐13に対して回動可能になるように回動部17により第1部分バンド紐130に接続される。また、バンド部16の他方の端部は、保護具1の側面に位置する第2部分バンド紐132に接続される。この場合において、当該他方の端部は、第1のバンド紐13に対して回動可能になるように回動部17により第2部分バンド紐132に接続される。ここで、回動部17の高さ方向の位置(保護具1の側面視において底面100を基準面とし主面102に向かう方向を高さ方向とした場合の位置)は、アウトソール部10から所定距離だけ離れていることが好ましい。これにより、バンド部16は、一方のサイドウォール部12から他方のサイドウォール部12に向けて設けられ、少なくとも一部が第1のバンド紐13と交差して設けられる(つまり、バンド部16の端部は第1のバンド紐13に重なっており、この重なり部分においてバンド部16と第1のバンド紐13とは交差する。なお、バンド部16の端部は、第1のバンド紐13から第2のバンド紐14側にはみ出していてもよい。)。
【0043】
バンド部16は、アウトソール部10と同様の材料から構成できる。
【0044】
バンド部16は、アウトソール部10の一方の縁部側の第1のバンド紐13の所定位置から装着者の膝側の脚の表面(膝上の大腿部表面)に沿って他方の縁部側の第1のバンド紐13の所定位置に接続され、第1のバンド紐13に対して変位可能に接続されることにより、脚が上や上前方向に動くときに保護具1を脚と共に上や上前方向に追随させる作用(すなわち、膝と保護具が離れないようにする作用)を発生させる。つまり、バンド部16は、装着者の膝の上に引っ掛かり、保護具1が脱げることを防止する。また、バンド部16は第1のバンド紐13に対して変位可能であるので、バンド部16のアウトソール部10に対する角度を独立して変更できる。これにより、装着者の膝のサイズにフィットさせ、よりタイトに(強く)保護具1を装着できる。
【0045】
以下、保護具1の各構成要素が装着者の膝及び膝周辺に及ぼす機能の詳細を説明する。
【0046】
<保護具1が装着者の膝を複数の領域から押さえる旨の説明>
図4は、本実施形態に係る保護具の所定の領域が装着者の膝及び脚に及ぼす影響の概要を示す。
【0047】
まず、4足歩行運動に用いる保護具1に要求される機能としては以下の3点が挙げられる。
(1)装着者の前進時に保護具1が膝から抜けないようにする(つまり、保護具1が膝からずれ落ち、後ろに脱げないようにする)。
(2)装着者の後進時に保護具1が前方向に膝から抜けないようにする。
(3)保護具1に横方向(水平方向)の力が加わった際に装着者の脚を軸に保護具1が回転しないようにすることで保護具1が横に脱げないようにし(スライドする力に耐えるようにし)、水平方向の力に耐えるようにする。
【0048】
保護具1においては、上記(1)については主としてバンド部16が、上記(2)については主としてパッド部15が、上記(3)については主としてサイドウォール部12が機能を発揮する。すなわち、装着者が保護具1を膝に装着した場合、保護具1の各構成要素により形成される複数の領域が装着者の膝回りを中心とする脚に接触することで、装着者が4足歩行で前後進や横方向に移動したとしても保護具1が膝からずれることや脱げること、膝周りで回転することを防止する。
【0049】
具体的に
図4に示すように、保護具1が装着者の膝に装着された場合、バンド部16が膝の上方の大腿部50下方に接触し、第2パッド領域152が大腿部50の後ろ側(背面側)に接触し、第1パッド領域150が脚の後ろ側の下腿部52上方部分(ふくらはぎ上方部分)に接触し、アウトソール部10の底面100の反対側表面(つまり、主面102)側が膝及び脚の下腿部52上方部分に接触する。これにより、バンド部16が大腿部50に接触する領域30、第2パッド領域152が大腿部50の後ろ側に接触する領域32、アウトソール部10の主面102若しくはインソール部11が膝及び/又は下腿部52の上方に接触する領域34、及び第1パッド領域150が下腿部52の裏側上方に接触する領域36の少なくとも4つの領域が生じる。更に、保護具1においては、一対のサイドウォール部12が装着者の膝両側面に接触する(
図3においては図示しない。)。これら6つの領域が装着者の膝を含む脚の所定の部分に一体的に面で接触して押さえることで保護具1が装着者の膝に固定され、4足歩行時に保護具1が膝からずれることや脱げることを防止できる。また、少なくとも領域30及び領域32は他の領域に対する角度(若しくは、他の領域からの距離)が変化可能に設けられているので、保護具1を膝により密着しやすくできる。
【0050】
例えば、保護具1に前方向の力が加わった場合は、バンド部16が、加わった力と同一方向に保護具1を追随させる。また、保護具1に後方向の力が加わった場合は、パッド部15が、加わった力と同一方向に保護具1を追随させる。これにより、保護具1は、膝を中心に所定の位置を維持できるので、保護具1が膝から抜けることを防止できる。具体的に、バンド部16は、膝上の大腿部50の下方の領域30に接触する。そして、保護具1に前方への力が加わった場合(つまり、装着者が前進するときに脚を前方に持ち上げた場合)、バンド部16に前方への力が伝わり、バンド部16が当該力と同一の方向、つまり、前方への力を保護具1に伝え、保護具1を前方に追随させる。これにより、保護具1と地面との摩擦によって生じる力(すなわち、保護具1がその場に留まろうとする力)に負けず、スムーズに同一方向に保護具1及び脚が移動するので、保護具1が膝から後方や下方へ抜けることを防止する。また、パッド部15が膝裏部分上方から膝下の下腿部52上方に接触する。そして、保護具1に後方への力が加わった場合(つまり、装着者が後進する時に脚を後方に持ち上げた場合)、保護具1のパッド部15(特に、第2パッド領域152)に後方への力が伝わり、パッド部15が当該力と同一の方向、つまり、後方への力を保護具1に伝え、保護具1を後方に追随させる。これにより、保護具1と地面との摩擦によって生じる力(すなわち、保護具1がその場に留まろうとする力)に負けずスムーズに同一方向に保護具1及び脚が移動するので、保護具1が膝から前方に抜けることを防止できる。すなわち、バンド部16とパッド部15とにより、保護具1に加わる前後方向の力による保護具1のずれを防止することができる。
【0051】
また、第1のバンド紐13とバンド部16とは、保護具1の側面視にてV字部分を構成する。
図4に一点鎖線で示すように、保護具1の側面視において、バンド部16と第1部分バンド紐130とでV字が構成される(
図4の「V」)。これにより、複数方向から加わる力に対して対抗し、保護具1を膝に固定できる。すなわち、係るV字を構成することで、屈曲した膝関節の前部分の上下の2つの領域(領域30、及び膝とアウトソール部10の主面102とが接触する領域)と膝裏近傍部分(一対の回動部17の間の第1のバンド紐13の領域)との合計3つの領域を固定できるため、膝の屈曲によるずれを防止できる。
【0052】
また、バンド部16がサイドウォール部12に固定されず、第1のバンド紐13に固定されている場合(すなわち、バンド部16と第1のバンド紐13とのサイドウォール部12に対する位置関係が固定ではなく、変位可能な場合)、バンド部16は4足歩行運動に応じてアウトソール部10に対する位置を所定の範囲内で変化可能であることから、バンド部16が領域30からずれることを防止できる。すなわち、バンド部16が4足歩行中に下方に落ちることや外れることを防止できる。これにより、保護具1は膝からより脱げにくくなる。更に、パッド部15、第1のバンド紐13、第2のバンド紐14、及びアウトソール部10により略四角柱形状が形成されるので、保護具1が前後に回転運動することを防止できる。
【0053】
更に、バンド部16は、回動部17により第1のバンド紐13に対して角度を変化させることができる。これにより、装着者の膝のサイズに応じ、保護具1が膝からずれにくく脱げにくい位置にバンド部16の位置を調整できる。そして、回動部17によりバンド部16の角度を変化させることができることから、装着者が四つ這い状態から立ち上がったときにバンド部16がその立ち上がりに応じてその角度を変化させ、立ち上がり時にバンド部16が邪魔になることを防止できる。
【0054】
(第1のバンド紐13及び第2のバンド紐14によるずれ防止機能について)
第1のバンド紐13と第2のバンド紐14とはパッド部15により互いに所定距離だけ離間して設けられる。これにより装着者が保護具1を装着した場合、側面視において第1のバンド紐13と膝裏部分との第1の接触部、及び第2のバンド紐14と下腿部裏側(ふくらはぎ上部部分)との第2の接触部の2つの接触部を設けることができるので、保護具1のずれを十分に防止できる。すなわち、仮に保護具を脚に固定するバンド紐が1本の場合、保護具に前後方向の力が加わると、当該バンド紐と当該バンド紐が接触する接触部(例えば、膝裏)を中心としてバンド紐が回転することで、保護具全体も膝裏を中心に前後に回転運動を起こし、保護具が膝からずれて外れる場合がある。一方、保護具1においては、第1の接触部及び第2の接触部が存在しているので、バンド紐が1本の場合とは異なり、上記のような回転運動の中心軸となり得る箇所が1か所にならないことで保護具1が前後方向に回転し、ずれて外れることを防止できる。これにより、保護具1を床等に接触させて引きずったとしても、保護具1が膝からずれることや脱げることを防止できる。
【0055】
<保護具1に加わる力が分散される旨の説明>
図5は、本実施形態に係る保護具の複数の作用点及び複数の作用点により形成される多角形の概要の一例を示す。また、
図6は、本実施形態に係る保護具の各構成要素に加わる力の概要の一例を示す。
【0056】
保護具1の一の構成要素と他の構成要素との接続部分、並びに一の構成要素及び/又は他の構成要素が膝や脚に接触する部分がそれぞれ作用点となる。例えば、
図5に示すように第1のバンド紐13がアウトソール部10に固定されている部分400、バンド部16と装着者の脚(膝上の大腿部前部の部分)とが接触する部分402、第1のバンド紐13とバンド部16とを接続する回動部17の部分404、パッド部15に第1のバンド紐13が接続されている部分406、パッド部15に第2のバンド紐14が接続されている部分408、及び第2のバンド紐14がアウトソール部10に固定されている部分410が作用点となる。
【0057】
そして、保護具1においては、複数の作用点が保護具1の全体に分散しており、保護具1の側面視において複数の作用点を結んだ多角形が形成される(
図5の点線部分)。保護具1においては複数の作用点が適度に分散した多角形(作用点を結んだ多角形)が形成されるので、保護具1に加わる力を様々な方向に分散できる。これにより、保護具1に所定の方向から力が加わったとしても、当該力は保護具1の複数の作用点により複数の方向に分散されるので、保護具1が膝からずれることや脱げることを防止できる。そして、保護具1においては各構成要素によって多角形の形状が維持されるので(つまり、各構成要素の保護具1内における相対的な位置関係が維持されるので)、多角形の形状が変形しても元の形状への復元力が働くことで膝からの保護具1のずれを抑制できる。
【0058】
すなわち、
図6に示すように、バンド部16に加わる力は方向60及び方向60の反対側方向の方向60aに分散し、第2パッド領域152に加わる力は方向60b及び方向60bの略反対側方向の方向60cに分散する。また、サイドウォール部12に加わる力は方向60d等の方向に分散し、第1のバンド紐13に加わる力は方向60eや方向60f及びこれらの方向の反対方向の方向60gの方向に分散する。更に、回動部17に加わる力は方向60mに分散する。そして、アウトソール部10に加わる力は、方向60hや方向60hの反対側方向の方向60iの方向に分散し、第1パッド領域150に加わる力は方向60j等の方向に分散する。更に、第2のバンド紐14に加わる力は、方向60kや方向60l等の方向に分散する。このように、保護具1に加わる力は、保護具1を構成する複数の構成要素のそれぞれの配置に応じ、様々な方向に分散される。これにより、保護具1に様々な方向から力が加わったとしても、一部分(一方向)に力が偏ってかかることがないので、保護具1が膝からずれることや脱げることを防止できる。
【0059】
[実施の形態の効果]
本実施形態に係る保護具1は、床等の平面に対する接触面積が大きい平面状のアウトソール部10を備え、膝を中心とする脚に各構成要素(つまり、アウトソール部10、第1のバンド紐13、第2のバンド紐14、パッド部15、バンド部16等)が複数の方向から接触し、各構成要素により保護具1に加わる力を多数の方向に分散させる。したがって、保護具1は、従来のサポーターや保護具に比べ、密着性が高く膝からずれにくく、膝を平面に付けたときの安定性を高くできる。換言すれば、保護具1は、膝を包み込むように、かつ、膝に多方向から接触することで、膝に対する密着性を向上させることができる。これにより、保護具1によれば、4足歩行運動時に前後左右に移動しやすく、膝に加わる力を低減させて膝等がけがを負うことを防止でき、膝部分の捻挫等を防止できる。
【0060】
特に、従来の膝プロテクター等の保護具では、4足歩行運動時に膝関節の屈曲動作が繰り返された場合、保護具と地面との接触(特に、保護具を引きずる動き、保護具を地面にこする動き、及び/又は保護具と地面との間で摩擦が関連する動き)が繰り返されることにより保護具が様々な方向にズレやすかった。これは、従来の保護具においては膝をついて運動することを想定していないことに起因する。この点、従来の保護具においては本実施形態に係る保護具1のアウトソール部10に対応する部分に地面に対応した面状の領域を有していないことからも明らかである(従来の保護具では、多くの場合、膝表面に合わせた球面若しくは曲面を有する。そのため、接地する部分が「点」や「線」になることから脱げやすい。また、設置する部分が「点」や「線」であることから、重い体重を「引きずる」ことにより保護具が脱げてしまう。)。一方、本実施形態に係る保護具1は、4足歩行運動時に膝関節の屈曲動作が繰り返され、装着者の体重をのせて引きずる動作がなされたとしても、膝からずれたり脱げたりすることを防止できる。
【0061】
また、保護具1においては、アウトソール部10とインソール部11との多層構造を構成できるので、床等の地面(真下)からの衝撃を吸収、分散することができる。これにより、保護具1においては膝の痛みを軽減できる。更に保護具1においては、面状の底面100を有するアウトソール部10と主面102に対向するパッド部15とによって膝の床に対する角度を固定できるので、膝部分を捻じる可能性を低下できる。また、保護具1においては、靴を脱ぐことなく、第1のバンド紐13及び第2のバンド紐14を膝周辺に巻き、各バンド紐の長さを調節して第1のバックル135及び第2のバックル145で固定するだけで膝に簡単に装着できる。
【0062】
なお、保護具1は、4足歩行運動以外にも膝への衝撃予防やけが予防に用いることができる。例えば、保護具1を、体操、ダンス、アウトドアスポーツ、スケートボード、サバイバルゲーム等や、中腰作業が要求される掃除等の家事、ガーデニング、キャンプ、筋力トレーニング、建設・建築作業等、更には、自衛隊等による災害救助活動等の特殊活動やその訓練等に用いてもよい。
【0063】
[実施の形態の変形例1]
図7は、本実施形態に係る保護具の変形例の概要を示す。具体的に
図7(a)は、変形例1に係る保護具1aの側面上方から参照した場合の概要の一例を示し、
図7(b)は、変形例1に係る保護具1aの側面後方の上方から参照した場合の概要の一例を示す。保護具1aは、第1のバンド紐13、第2のバンド紐14、及びパッド部15の代わりにこれらの機能を併せて有する太バンド紐20を備える点を除き、保護具1と略同様の構成及び機能を備えるので、相違点を除き詳細な説明は省略する。
【0064】
変形例1に係る保護具1aは、アウトソール部10と、インソール部11と、サイドウォール部12と、バンド部16と、バンド部16を変位可能にサイドウォール部12に接続する回動部17と、装着者の膝裏近傍から下腿部上方までの間において、アウトソール部10の長手方向の一方の縁部側から他方の縁部側に向けて脚の裏側表面の少なくとも一部に沿って配置されるバンド紐としての所定の幅を有して構成される太バンド紐20を備える。太バンド紐20は、保護具1の第1のバンド紐13及び第2のバンド紐14より広い幅を有する。なお、バンド部16は、アウトソール部10の一方の縁部側の所定位置から膝側の脚の表面に沿って他方の縁部側の所定位置に接続され、アウトソール部10に対して変位可能に設けられる。具体的に保護具1aにおいてバンド部16は、アウトソール部10の一方の縁部側のサイドウォール部12の所定位置に回動部17により接続され、当該所定位置から膝側の脚の表面に沿って他方の縁部側のサイドウォール部12の所定位置に回動部17により接続される。
【0065】
太バンド紐20は、保護具1における第1のバンド紐13、第2のバンド紐14、及びパッド部15の機能を併せて有する。すなわち、保護具1aの先端側を前方、後端側を後方とした場合(
図7(a)の左側が前方である)、太バンド紐20の前方側端部付近の領域(第1端部領域)が第1のバンド紐13としての機能を有し、後方側端部付近の領域(第2端部領域)が第2のバンド紐14としての機能を有する。そして、太バンド紐20は所定の幅を有して構成されているので、第1端部領域と第2端部領域との間がパッド部15としての機能を発揮する。
【0066】
[実施の形態の変形例2及び変形例3]
図8は、本実施形態に係る保護具の変形例の概要を示す。具体的に
図8(a)は、変形例2に係る保護具1bの斜視図の概要の一例を示し、
図8(b)は、変形例3に係る保護具1cの斜視図の概要の一例を示す。保護具1b及び保護具1cは、第1のバンド紐13、第2のバンド紐14、及びパッド部15の代わりにこれらの機能を併せて有するカバー部22若しくはカバー部22aを備える点を除き、保護具1と略同様の構成及び機能を備えるので、相違点を除き詳細な説明は省略する。
【0067】
図8(a)に示すように、変形例2に係る保護具1bは、アウトソール部10と、インソール部11と、サイドウォール部12と、バンド部16と、バンド部16を変位可能にカバー部22に接続する回動部17と、装着者の膝裏近傍から下腿部上方までの間において、アウトソール部10の長手方向の一方の縁部側から他方の縁部側に向けて脚の裏側表面の少なくとも一部に沿って配置されるバンド紐としての所定の幅を有して構成されるカバー部22を備える。
【0068】
ここで、底面100から主面102に向かう方向を上方向とすると、カバー部22は、アウトソール部10の長手方向の一方の縁部から上方向に向かうにつれて幅が徐々に狭まる形状であって、保護具1の上面において平面状の天井部220を有し、天井部220からアウトソール部10の長手方向の他方の縁部に向かうにつれて幅が徐々に広まる形状を有して構成される。なお、バンド部16は、アウトソール部10の一方の縁部側の所定位置から膝側の脚の表面に沿って他方の縁部側の所定位置に接続され、アウトソール部10に対して変位可能に設けられる。そして、保護具1bにおいてバンド部16は、アウトソール部10の一方の縁部側のサイドウォール部12の所定位置に回動部17によりカバー部22の前方の縁(アウトソール部10の一方の縁側)と共に接続され、当該所定位置から膝側の脚の表面に沿って他方の縁部側のサイドウォール部12の所定位置に回動部17によりカバー部22の前方の縁(アウトソール部10の他方の縁側)と共に接続される。
【0069】
カバー部22は、保護具1における第1のバンド紐13、第2のバンド紐14、及びパッド部15の機能を併せて有する。すなわち、カバー部22の天井部220の前方側端部付近の領域(第1端部領域)が第1のバンド紐13としての機能を有し、後方側端部付近の領域(第2端部領域)が第2のバンド紐14としての機能を有する。そして、天井部220は所定の幅を有して構成されているので、第1端部領域と第2端部領域との間がパッド部15としての機能を発揮する。
【0070】
一方、
図8(b)に示すように変形例3に係る保護具1cは、保護具1bとはカバー部22aの形状が異なる点を除き、保護具1bと略同一の構成及び機能を有する。保護具1cのカバー部22aは、アウトソール部10側の端部に開口部200を有して構成される。これにより、保護具1cにおいては、カバー部22aが側面視にて前後2か所でアウトソール部10に接続されるので、この2か所の存在により、保護具1における第1のバンド紐13の機能と第2のバンド紐14の機能とをカバー部22aが発揮し、保護具1cが回転してずれたり脱げたりすることを防止できる。また、開口部200により、保護具1cにおいては通気性を向上させることができる。なお、カバー部22aは、開口部200の代わりに複数の穴を有していてもよい。
【0071】
[実施の形態の変形例4]
図9は、本実施形態に係る保護具の変形例の概要を示す。変形例4に係る保護具1dは、パッド部15を省略した点を除き、保護具1と略同様の構成及び機能を備えるので、相違点を除き詳細な説明は省略する。
【0072】
図9に示すように、変形例4に係る保護具1dは、アウトソール部10と、インソール部11と、サイドウォール部12と、第1のバンド紐13と、第2のバンド紐14と、バンド部16とを備える。また、保護具1dは、バンド部16を変位可能に第1のバンド紐13に接続する回動部17を備える。保護具1dにおいてバンド部16は、第1のバンド紐13に回動部17により接続される。なお、第2のバンド紐14の端部はアウトソール部10の底面100に近い位置に固定されている。
【0073】
保護具1dにおいては、バンド部16と第1のバンド紐13とが回動部17で接続されると共にこの接続した状態がサイドウォール部12に固定されている。そのため、第1のバンド紐13と第2のバンド紐14とが離間した状態が維持される。
【0074】
[実施の形態の変形例5]
図10は、本実施形態に係る保護具の変形例の概要を示す。変形例5に係る保護具1eは、パッド部15を省略し、サイドウォール部及び第2のバンド紐の形状が保護具1dと異なる点を除き、保護具1及び保護具1dと略同様の構成及び機能を備えるので、相違点を除き詳細な説明は省略する。
【0075】
図10に示すように、変形例5に係る保護具1eは、アウトソール部10と、インソール部11と、サイドウォール部12aと、第1のバンド紐13と、第2のバンド紐14aと、バンド部16とを備える。また、保護具1eは、バンド部16を変位可能に第1のバンド紐13に接続する回動部17を備える。保護具1dにおいてバンド部16は、第1のバンド紐13に回動部17により接続される。また、保護具1eにおいては、変形例4に係る保護具1dと異なり、サイドウォール部12aの後方のアウトソール部10からの高さがサイドウォール部12より高い。そして、保護具1eにおいては、保護具1dと異なり、第2のバンド紐14aはサイドウォール部12aの上側縁部に接続されている(
図10の接続部160)。なお、保護具1eの第2のバンド紐14aは、例えば、その中央付近にバックル(図示しない)を有していてよい。
【0076】
保護具1eにおいては、第2のバンド紐14aの長さが保護具1や保護具1dに比べて短い。これにより、第1のバンド紐13の装着者の脚に対する位置がずれたとしても、第1のバンド紐13と第2のバンド紐14aとが離間した状態が維持される。
【0077】
[実施の形態の変形例6]
図11は、本実施形態に係る保護具の変形例の概要を示す。
図11(a)は、変形例6に係る保護具1fの側面前方の上方から参照した場合の概要の一例を示し、
図11(b)は、変形例6に係る保護具1fの側面後方の上方から参照した場合の概要の一例を示す。変形例6に係る保護具1fは、バンド部16の代わりに前カバー部40を備え、回動部17を省略した点を除き、保護具1と略同様の構成及び機能を備えるので、相違点を除き詳細な説明は省略する。
【0078】
図10に示すように、変形例6に係る保護具1fは、アウトソール部10と、インソール部11と、サイドウォール部12と、第1のバンド紐13と、第2のバンド紐14と、前カバー部40とを備える。前カバー部40は、一の端部(前側下部の端部)がアウトソール部10の前方端部に接続され、装着者の膝回りを囲む形状を有し、パッド部15の第2パッド領域152に他の端部(後ろ側上部の端部)が接続される。つまり、前カバー部40は保護具1fの側面視にて略台形状を有し(前方が底辺、後方が上辺に対応する)、前方下部がアウトソール部10に接続され、後方が第2パッド領域152に接続される。前カバー部40の第2パッド領域152に接続される側には固定部42が設けられる。装着者は固定部42を外すことで、保護具1fを膝に装着できる。
【0079】
前カバー部40は、保護具1におけるバンド部16の機能を有する。バンド部16よりも幅広い領域が装着者の膝及び大腿部に接触する。これにより、前カバー部40に加わる力を面として分散することができる。
【0080】
[実施の形態の変形例7]
図12は、本実施形態に係る保護具の変形例の概要を示す。変形例7に係る保護具1gは、バンド部16aの端部の第1のバンド紐13に対する接続方法が保護具1と異なる点を除き、保護具1と略同様の構成及び機能を備えるので、相違点を除き詳細な説明は省略する。
【0081】
保護具1gにおいては、第1のバンド紐13の一部分がサイドウォール部12に留め具18で固定される。例えば、第1のバンド紐13の両端部近傍それぞれの所定の部分とサイドウォール部12とが留め具18により固定される。一方、バンド部16aはバンド部16と略同一の形状を有するが、その両端部に穴部170を有する。この穴部170に第1のバンド紐13が通される。これにより、バンド部16aは、少なくとも両端部が第1のバンド紐13に沿って移動可能であり、かつ、サイドウォール部12に対し穴部170と第1のバンド紐13との接触部分を中心に回動可能に設けられる。これにより、第1のバンド紐13及びバンド部16aにより、サイドウォール部12を上に引き上げる力が作用する。
【0082】
以下、参考として手用保護具の例を示す。
【0083】
[参考例1]
図13は、手用保護具の概要の一例を示す。
図13(a)は手用保護具2の斜視図の一例を示し、
図13(b)は手用保護具2の底面の一例を示し、
図13(c)は手用保護具2の使用状態の一例を示す。
【0084】
手用保護具2は、4足歩行運動に用いることが可能な手用保護具である。手用保護具2は、アウトソール部70と、甲被部78と、バンド部80と、インソール部82とを備える。
【0085】
アウトソール部70は、平面視にて長手方向と幅方向とを有し、面状の底面72を有すると共に底面72に凹凸を含んで構成される。また、アウトソール部70は、手に加わる圧力を軽減し、掌を保護する厚さを有して構成される。
図13(b)に示すように底面72は、凸部74及び凹部76を有して構成される。なお、底面72は、凹凸と共に、若しくは代わりに溝部を有してもよい。また、甲被部78は、アウトソール部70の長手方向前方の端部近傍に、長手方向の一方の縁部近傍から他方の縁部近傍に向けて設けられる。甲被部78は、装着者の親指を除く他の指を通す開口を有して設けられる。アウトソール部70及び甲被部78は、保護具1のアウトソール部10と同様の材料を用いて構成できる。バンド部80は、甲被部78の縁部からアウトソール部70の長手方向後方の一方の縁部近傍に向けて設けられる。バンド部80は、ポリエステルやゴム等の材料を用いて構成できる。そして、インソール部82は、アウトソール部70の底面72の反対側表面に接して設けられる。インソール部82は、保護具1のインソール部11と同様の材料から構成できる。
【0086】
手用保護具2は、
図13(c)に示すように甲被部78とバンド部80との間に親指を通すようにして手に装着される。手用保護具2においては、装着者は開口により指をある程度自由に動かすこともできる。そして、装着者が4足歩行運動した場合、甲被部78及びバンド部80により手用保護具2が手にしっかりと固定され、手からずれて脱げることを防止する。また、アウトソール部70は保護具1のアウトソール部10と同様に底面72が面状であるため、床や地面等への接触面積を大きく確保でき、4足歩行運動をしやすくできる。すなわち、手用保護具2によれば、装着者が4足歩行運動をした場合に、手にしっかり固定されているので手からずれず、接触面積が大きいので安定性が高く、底面72の凹凸により進みやすく、アウトソール部70により掌を保護できると共に手に加わる力を軽減でき、手首を捻挫しにくいという効果を奏する。なお、インソール部82は交換可能に設けることができ、装着者の汗を吸収した場合には洗濯や交換が可能であるので手用保護具2を清潔に保つことができる。
【0087】
[参考例2]
図14は、手用保護具の概要の一例を示す。
図14(a)は手用保護具2aの斜視図の一例を示し、
図14(b)は手用保護具2の底面の一例を示す。また、
図14(c)は手用保護具2aの側面図の一例を示す。
【0088】
手用保護具2aは、4足歩行運動に用いることが可能な手用保護具であって、手袋90と、ソール部91と、テープ部92とを備える。そして、ソール部91は、ミッドソール部93とアウトソール部94とを有する。また、アウトソール部94は、底面95に凸部96と凹部97とを含む。
【0089】
ソール部91は、手袋90の掌側に設けられる。そして、テープ部92は手袋90の手の挿入口近傍であって手の甲側に設けられ、装着者が手に手用保護具2aをはめた場合にテープ部92により手用保護具2aを手に固定する。また、ソール部91は、掌側に設けられるミッドソール部93とミッドソール部93に接触して設けられ、ミッドソール部93側とは反対側表面に面状の底面95を有すると共に底面95に凸部96及び凹部97を含むアウトソール部94とを有して構成される。なお、底面95は、凹凸と共に、若しくは代わりに溝部を有してもよい。また、手袋90は、例えば、ポリウレタン等の合成樹脂から構成でき、ソール部91は、保護具1のアウトソール部10と同様の材料を用いて構成できる。
【0090】
手用保護具2aは手袋状であるので、手用保護具2に比べ、より手から脱げにくくすることができる。
【0091】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上記に記載した実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。更に、上記した実施形態の技術的要素は、単独で適用されてもよいし、複数の部分に分割されて適用されるようにすることもできる。
【解決手段】保護具1は、長手方向と幅方向とを有し、面状の底面100と主面102とを有するアウトソール部10と、アウトソール部10の長手方向の一方の縁部近傍から他方の縁部近傍に向けて設けられる第1のバンド紐13と、アウトソール部10の長手方向の一方の縁部近傍から他方の縁部近傍に向けて第1のバンド紐13とは離間して設けられる第2のバンド紐14と、アウトソール部10の主面102側において主面102に対向して設けられ、第1のバンド紐13と第2のバンド紐14との離間状態を維持するパッド部15と、アウトソール部10若しくは第1のバンド紐13に対して変位可能に設けられるバンド部16とを備える。