【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 集会名 nano tech 2016 第15回 国際ナノテクノロジー総合展・技術会議 開催日 2016年1月27日から2016年1月29日
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の中空シリカ粒子の製造方法について詳細に説明する。
【0016】
本発明のシリカ系中空粒子は、アスペクト比が1.5以下の粒子が、粒子全体の95%以上を占め、粒子径の変動係数が20〜60%である。上記特徴を有するシリカ系中空粒子は、粒子径の変動係数が特定の範囲であり、アスペクト比が1.5以下の粒子が特定の範囲の割合を占めるので、粒子径が均一とならず、凝集が抑制されている。また、粒子径の変動係数が特定の範囲であり、アスペクト比が1.5以下の粒子が特定の範囲の割合を占めるので、様々な物品に充填された場合、均一に充填され易い。また、本発明のコアシェル粒子も、粒子径の変動係数が特定の範囲であり、アスペクト比が1.5以下の粒子が特定の範囲の割合を占めるので、粒子径が均一とならず、凝集が抑制されている。また、本発明の製造方法によれば、工程1により特定の溶媒を用いてポリスチレン粒子を調整することにより、工程2により形成されるコアシェル粒子の粒子径の変動係数が特定の範囲となり、アスペクト比が1.5以下の粒子が特定の範囲の割合を占めるようになり、コアシェル粒子の凝集が抑制される。このため、当該コアシェル粒子のコアである上記ポリスチレン粒子を熱分解して除去する工程3により、凝集が抑制されており、且つ、粒子径の変動係数が特定の範囲であり、アスペクト比が1.5以下の粒子が特定の範囲の割合を占めるため、様々な物品に充填された場合に、均一に充填され易いシリカ系中空粒子を容易に製造することができる。
【0017】
1.シリカ系中空粒子
本発明のシリカ系中空粒子は、粒子径のアスペクト比1.5以下の粒子が全体の95%以上を占め、変動係数が20〜60%である。
【0018】
シリカ系中空粒子を形成するシリカ系化合物としてはシリカを含有していれば特に限定されず、シリカのみで形成されていてもよい。
【0019】
上記シリカ系化合物がシリカ以外の化合物を含有する場合は、シリカ系中空粒子はシリカ及び金属酸化物を含んでいることが好ましい。金属酸化物としては、金属アルコキシドを形成することができる金属の酸化物が挙げられ、具体的には、アルミニウム、チタン、ジルコニウム等の酸化物が挙げられる。アルミニウムの酸化物を用いると、シリカ系シェルの表面電荷(ゼータ電位等)を調整することができる。また、チタン、ジルコニウムの酸化物を用いると、シリカ系シェルの屈折率を調整することができる。
【0020】
本発明のシリカ系中空粒子の粒子径の変動係数は、20〜60%である。20〜50%が好ましく、20〜40%がより好ましい。シリカ系中空粒子の粒子径の変動係数が上記範囲であることにより、シリカ系中空粒子の凝集が抑制でき、且つ、様々な物品に充填された場合、均一に充填され易くなる。
【0021】
本明細書において、上記シリカ系中空粒子及び後述するコアシェル粒子の変動係数は、TEM(透過型電子顕微鏡:JEM−2010、日本電子株式会社製)を用いて、加速電圧200kVの条件で粒子の写真を撮影し、任意に選んだ100個の粒子短径を測長して平均値を求め、下記式に基づいて算出した値である。
(変動係数)=[(粒子短径の標準偏差)÷(粒子短径の平均値)]×100
【0022】
本発明のシリカ系中空粒子は、アスペクト比が1.5以下の粒子が粒子全体の95%を占める。アスペクト比が1.5以下の粒子が粒子全体の95%未満であると、シリカ系中空粒子の凝集が抑制できず、様々な物品に充填された場合、均一に充填され難い。アスペクト比が1.5以下の粒子は、97%以上が好ましく、99%がより好ましい。
【0023】
本明細書において、上記シリカ系中空粒子のうちアスペクト比が1.5以下の粒子の粒子全体に占める割合、及び、後述するコアシェル粒子のうちアスペクト比が1.5以下の粒子の粒子全体に占める割合は、以下の方法により測定される。すなわち、TEM(透過型電子顕微鏡:JEM−2010、日本電子株式会社製)を用いて、倍率20万倍、加速電圧200kVの条件で粒子の写真を撮影し、任意に選んだ100個のそれぞれの粒子の粒子長径及び粒子短径を測長して、下記式に基づいてそれぞれの粒子のアスペクト比を求める。次いで、粒子100個中アスペクト比が1.5以下の粒子の数を数え、当該数を、アスペクト比が1.5以下の粒子の粒子全体に占める割合(%)とする。
(アスペクト比)=(粒子長径)÷(粒子短径)
【0024】
シリカ系中空粒子の平均粒子径は、30〜150nmが好ましく、35〜120nmがより好ましく、35〜100nmが更に好ましい。平均粒子径が上記範囲であることにより、シリカ系中空粒子の凝集をより抑制することができ、且つ、様々な物品に充填された場合に、より均一に充填され易くなる。
【0025】
本明細書において、上記平均粒子径は、TEM(透過型電子顕微鏡:JEM−2010、日本電子株式会社製)を用いて加速電圧200kVの条件で測定される値である。
【0026】
シリカ系中空粒子を形成する膜(シェル)の膜厚は、2〜40nmが好ましく、2〜20nmがより好ましい。膜の厚みが上記範囲であることにより、シリカ系中空粒子の空孔率を高くしつつ、シェル強度を維持することができる。なお、本明細書において、上記膜の厚みは、TEM(透過型電子顕微鏡:JEM−2010、日本電子社製)により200kVの条件で粒子の写真を撮影し、任意に選んだ100個の粒子のシェル厚みを測長した平均値である。
【0027】
本発明のシリカ系中空粒子は、実質的に会合していないことが好ましい。シリカ系中空粒子が会合していない状態であると、様々な物品に充填された場合、より均一に充填され易くなる。なお、本明細書において、シリカ系中空粒子が会合している状態とは、複数のシリカ系中空粒子の中空部同士が接合して、一つの中空部を形成している状態を示しており、シリカ系中空粒子が実質的に会合していないとは、シリカ系中空粒子の中空部が接合していない状態をいう。また、本発明のシリカ系中空粒子が会合していないことは、上記TEMを用いて撮影されたシリカ系中空粒子の写真を観察することにより確認することができる。
【0028】
本発明のシリカ系中空粒子は、上述のように凝集が抑制されており、粒度分布が大きく、アスペクト比が小さいため、様々な物品に充填された場合、均一に充填され易くなっている。このため、高機能材料として適しており、特に、反射防止フィルム材料、絶縁膜材料又は断熱材材料として好適に用いることができる。
【0029】
2.コアシェル粒子
本発明のコアシェル粒子は、分散剤を含むポリスチレン粒子をコアとし、上記ポリスチレン粒子を被覆するシリカ系シェルを有しており、アスペクト比が1.5以下の粒子が粒子全体の95%以上を占め、粒子径の変動係数が20〜60%である。上記コアシェル粒子は凝集が抑制されており、粒度分布が大きく、アスペクト比が小さくなっており、ポリスチレン粒子を熱分解することにより、上記本発明の中空シリカ粒子を容易に製造することができる。
【0030】
上記ポリスチレン粒子を被覆するシリカ系シェルは、上述のシリカ系中空粒子を形成するシリカ系化合物と同一である。また、シリカ系シェルの厚みは、上述のシリカ系中空粒子を形成する膜(シェル)の膜厚と同一である。
【0031】
ポリスチレン粒子の平均粒子径は20〜150nmが好ましく、25〜120nmがより好ましく、25〜100nmが更に好ましい。ポリスチレン粒子の平均粒子径を上記範囲とすることにより、シリカ系中空粒子の平均粒子径を適切な範囲とすることができる。
【0032】
上記ポリスチレン粒子は分散剤を含む。ポリスチレン粒子が分散剤を含むことにより、ポリスチレン粒子の表面に分散剤が存在することとなり、ポリスチレン粒子の凝集をより抑制することができる。分散剤としては、ポリスチレン粒子を製造することができれば特に限定されず、公知の分散剤を用いることができる。上記分散剤としては、例えば、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、コラーゲン、多糖類(アラビアガム)等が挙げられ、中でも、ポリスチレン粒子の凝集を抑制し、後述する工程2で形成されるコアシェル粒子の凝集を抑制することができる点で、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルセルロースが好ましい。上記分散剤は、1種単独で、又は2種以上を混合して用いることができる。
【0033】
ポリスチレン粒子中の分散剤の含有量は特に限定されないが、上記ポリスチレン粒子100質量%に対して0.01〜100質量%が好ましく、0.05〜100質量%がより好ましい。分散剤の含有量が上記範囲であることにより、ポリスチレン粒子の凝集をより抑制することができる。
【0034】
本発明のコアシェル粒子の粒子径の変動係数は、20〜60%である。20〜50%が好ましく、20〜40%がより好ましい。コアシェル粒子の粒子径の変動係数が上記範囲であることにより、コアシェル粒子のコアであるポリスチレン粒子を熱分解することにより得られるシリカ系中空粒子の粒子径の変動係数を、上述の範囲とすることができ、当該シリカ系中空粒子の凝集が抑制され、且つ、シリカ系中空粒子が様々な物品に充填された場合、均一に充填され易くなる。
【0035】
本発明のコアシェル粒子は、アスペクト比が1.5以下の粒子が粒子全体の95%を占める。アスペクト比が1.5以下の粒子が粒子全体の95%未満であると、コアシェル粒子のコアであるポリスチレン粒子を熱分解することにより得られるシリカ系中空粒子の凝集が抑制できず、様々な物品に充填された場合、均一に充填され難い。アスペクト比が1.5以下の粒子は、97%以上が好ましく、99%がより好ましい。
【0036】
コアシェル粒子の平均粒子径は、30〜150nmが好ましく、35〜120nmがより好ましく、35〜100nmが更に好ましい。平均粒子径が上記範囲であることにより、シリカ系中空粒子の凝集をより抑制することができ、且つ、様々な物品に充填された場合に、より均一に充填され易くなる。
【0037】
コアシェル粒子を形成する膜(シェル)の膜厚は、2〜40nmが好ましく、2〜20nmがより好ましい。膜の厚みが上記範囲であることにより、シリカ系中空粒子の空孔率を高くしつつ、シェル強度を維持することができる。
【0038】
本発明のコアシェル粒子は、実質的に会合していないことが好ましい。コアシェル粒子が会合していない状態であると、コアシェル粒子のコアであるポリスチレン粒子を熱分解することにより得られるシリカ系中空粒子が様々な物品に充填された場合、より均一に充填され易くなる。なお、本明細書において、コアシェル粒子が会合している状態とは、複数のコアシェル粒子のコアであるポリスチレン粒子が接合して、一つの二次粒子を形成している状態を示しており、コアシェル粒子が実質的に会合していないとは、コアシェル粒子のコアであるポリスチレン粒子が接合していない状態をいう。また、本発明のコアシェル粒子が会合していないことは、上記TEMを用いて撮影されたコアシェル粒子の写真を観察することにより確認することができる。
【0039】
3.ポリスチレン粒子
本発明のポリスチレン粒子は、アスペクト比が1.5以下の粒子が全体の95%以上を占め、粒子径の変動係数が20〜60%であり、分散剤を含むポリスチレン粒子である。上記ポリスチレン粒子は、粒子径の変動係数及びアスペクト比が上記範囲となっており、分散剤を含むので、後述する本発明のコアシェル粒子の製造方法、及びシリカ系中空粒子の製造方法の工程1で調整され、工程2に用いられることにより、凝集が抑制されており、粒度分布が大きく、アスペクト比が小さいコアシェル粒子を製造することができ、当該コアシェル粒子を工程3に用いることにより、様々な物品に充填された場合、均一に充填され易い本発明の中空シリカ粒子を容易に製造することができる。
【0040】
上記ポリスチレン粒子は、上述のコアシェル粒子を形成するポリスチレン粒子と同一である。また、ポリスチレン粒子の平均粒子径、ゼータ電位は、上述のコアシェル粒子を形成するポリスチレン粒子と同一である。
【0041】
本発明のポリスチレン粒子の粒子径の変動係数は、20〜60%である。25〜55%が好ましく、30〜50%がより好ましい。ポリスチレン粒子の平均粒子径が上記範囲であることにより、コアシェル粒子の粒子径の変動係数を上述の範囲とすることができ、且つ、コアシェル粒子のコアであるポリスチレン粒子を熱分解することにより得られるシリカ系中空粒子の粒子径の変動係数を、上述の範囲とすることができ、当該シリカ系中空粒子の凝集が抑制され、且つ、シリカ系中空粒子が様々な物品に充填された場合、均一に充填され易くなる。
【0042】
本明細書において、上記ポリスチレン粒子の変動係数は、SEM(走査型電子顕微鏡:JSM−6700F、日本電子株式会社製)を用いて、加速電圧5kVの条件で粒子の写真を撮影し、任意に選んだ100個の粒子短径を測長して平均値を求め、下記式に基づいて算出した値である。
(変動係数)=[(粒子短径の標準偏差)÷(粒子短径の平均値)]×100
【0043】
本発明のポリスチレン粒子は、アスペクト比が1.5以下の粒子が粒子全体の95%を占める。アスペクト比が1.5以下の粒子が粒子全体の95%未満であると、コアシェル粒子のコアであるポリスチレン粒子を熱分解することにより得られるシリカ系中空粒子の凝集が抑制できず、様々な物品に充填された場合、均一に充填され難い。アスペクト比が1.5以下の粒子は、97%以上が好ましく、99%がより好ましい。
【0044】
本明細書において、上記ポリスチレン粒子のうちアスペクト比が1.5以下の粒子の粒子全体に占める割合は、以下の方法により測定される。すなわち、SEM(走査型電子顕微鏡:JSM−6700F、日本電子株式会社製)を用いて、倍率10万倍、加速電圧5kVの条件で粒子の写真を撮影し、任意に選んだ100個のそれぞれの粒子の粒子長径及び粒子短径を測長して、下記式に基づいてそれぞれの粒子のアスペクト比を求める。次いで、粒子100個中アスペクト比が1.5以下の粒子の数を数え、当該数を、アスペクト比が1.5以下の粒子の粒子全体に占める割合(%)とする。
(アスペクト比)=(粒子長径)÷(粒子短径)
【0045】
本明細書において、上記ポリスチレン粒子のアスペクト比の平均値は、SEM(走査型電子顕微鏡:JSM−6700F、日本電子株式会社製)を用いて、倍率10万倍、加速電圧5kVの条件で粒子の写真を撮影し、任意に選んだ100個の粒子の粒子長径及び粒子短径を測長してそれぞれの平均値を求め、下記式に基づいて算出した値である。
(アスペクト比の平均値)=(粒子長径の平均値)÷(粒子短径の平均値)
【0046】
本発明のポリスチレン粒子は、実質的に会合していないことが好ましい。ポリスチレン粒子が会合していない状態であると、ポリスチレン粒子を用いて形成したコアシェル粒子及びシリカ系中空粒子の会合が抑制されて、得られたシリカ系中空粒子が様々な物品に充填された場合、より均一に充填され易くなる。なお、本明細書において、ポリスチレン粒子が会合している状態とは、複数のポリスチレン粒子が接合して、一つの二次粒子を形成している状態を示しており、ポリスチレン粒子が実質的に会合していないとは、ポリスチレン粒子が接合していない状態をいう。なお、本発明のポリスチレン粒子が会合していないことは、上記SEMを用いて撮影されたポリスチレン粒子の写真を観察することにより確認することができる。
【0047】
4.シリカ系中空粒子の製造方法
本発明のシリカ系中空粒子の製造方法は、
(1)スチレンモノマーと、分散剤と、混合溶媒とを含む溶液中で、前記スチレンモノマーの重合反応を行い、ポリスチレン粒子を調製する工程であって、前記混合溶媒は、水とアセトンとの混合溶媒である工程1、
(2)溶媒に、(i)前記ポリスチレン粒子と、(ii)アルコキシシラン、又は、アルコキシシラン及び金属アルコキシドと、(iii)塩基性触媒とを添加撹拌して溶液を調製することにより、前記溶液中で、前記ポリスチレン粒子をコアとし、前記ポリスチレン粒子を被覆するシリカ系シェルを有するコアシェル粒子を形成する工程2、及び
(3)前記コアシェル粒子のコアである、前記ポリスチレン粒子を熱分解することにより、前記ポリスチレン粒子を除去する工程3を含む。
【0048】
<工程1>
工程1は、(1)スチレンモノマーと、分散剤と、混合溶媒とを含む溶液中で、上記スチレンモノマーの重合反応を行い、ポリスチレン粒子を調製する工程であって、上記混合溶媒は、水とアセトンとの混合溶媒である工程である。
【0049】
(スチレンモノマー)
上記スチレンモノマーとしては、ポリスチレン粒子を製造することができれば特に限定されないが、アルキル(メタ)アクリレート等の疎水性モノマーに由来する構成単位、その他の共重合可能なモノマー構成単位を含んでいるものが好ましい。その好適例としてば、炭素数3〜22のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートスチレン、2−メチルスチレン等が挙げられる。
【0050】
工程1において用いられるスチレンモノマーの溶液中の濃度は特に限定されないが、上記溶液100質量%に対して0.1〜20質量%であることが好ましく、0.2〜10質量%であることがより好ましい。上記濃度に設定することにより、得られるポリスチレン粒子の平均粒子径、及び最終生成物である中空シリカ粒子の平均粒子径を30〜150nm程度に制御することができる。
【0051】
(分散剤)
上記分散剤としては、ポリスチレン粒子を製造することができれば特に限定されず、公知の分散剤を用いることができる。上記分散剤としては、例えば、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド等が挙げられ、中でも、ポリスチレン粒子の凝集を抑制し、後述する工程2で形成されるコアシェル粒子の凝集を抑制することができる点で、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルセルロースが好ましい。上記分散剤は、1種単独で、又は2種以上を混合して用いることができる。
【0052】
工程1において用いられる分散剤の溶液中の濃度は特に限定されないが、上記溶液100質量%に対して0.01〜10質量%が好ましく、0.05〜5質量%がより好ましい。上記濃度に設定することにより、ポリスチレン粒子の凝集をより抑制することができ、後述する工程2で形成されるコアシェル粒子の凝集をより抑制することができる。
【0053】
(混合溶媒)
工程1で用いられる混合溶媒は、水とアセトンとの混合溶媒である。このような混合溶媒を用いることで、コアであるポリスチレン粒子の粒子径の変動係数が小さくなり過ぎず、且つ、アスペクト比が大きくなり過ぎず、後述する工程2で形成されるコアシェル粒子の粒子径の変動係数及びアスペクト比を特定の範囲に調整することができる。
【0054】
混合溶媒中の水とアセトンとの質量比は特に限定されず、90:10〜20:80が好ましく、80:20〜40:60がより好ましい。水とアセトンとの質量比を上記範囲とすることにより、後述する工程2で形成されるコアシェル粒子の粒子径の変動係数及びアスペクト比を、上記特定の範囲に調整し易くなる。
【0055】
(カチオン性重合開始剤)
工程1において、上記溶液は、カチオン性重合開始剤を含むことが好ましい。カチオン性重合開始剤は、ポリスチレン粒子を得ることができれば特に限定されず公知の無機過酸化物、有機系開始剤、レドックス剤等を使用することができる。中でも、有機酸化物やアゾ化合物等のラジカル重合開始剤を用いることがより好ましい。有機酸化物は、一般式RO−ORで示され、また、アゾ化合物は、一般式A−CN=CN−Aで示される。具体的には、過酸化ベンゾイルや2,2’−アゾビス(イソブチルアミジン)ジヒドロクロライド(AIBA)、4,4’−アゾビス−4−シアノバレリックアシッド、アゾビスイソブチロニトニル(AIBN)、2,2’−アゾビス(2-メチルプロピオアミド)ジヒドロクロライド(AAPH)であり、好ましくは2,2’−アゾビス(イソブチルアミジン)ジヒドロクロライド(AIBA)、2,2’−アゾビス(2-メチルプロピオアミド)ジヒドロクロライド(AAPH)である。中でも、2,2’−アゾビス(イソブチルアミジン)ジヒドロクロライド(AIBA)、4,4’−アゾビス−4−シアノバレリックアシッドがより好ましく、2,2’−アゾビス(イソブチルアミジン)ジヒドロクロライド(AIBA)が更に好ましい。
【0056】
上記工程1において用いられるカチオン性重合開始剤の溶液中の濃度は特に限定されないが、溶液を100質量%として、0.01〜1質量%であることが好ましい。上記濃度に設定することにより、得られるポリスチレン粒子の平均粒子径、及び最終生成物である中空シリカ粒子の平均粒子径を30〜150nm程度に制御することができる。
【0057】
(重合反応)
工程1では、上記スチレンモノマー、分散剤、及び混合溶媒を含む溶液中で、上記スチレンモノマーの重合反応が行われる。重合反応は、上記溶液を混合撹拌することにより行うことができる。
【0058】
工程1の溶液の重合反応の際の温度は特に限定されないが、40℃以上、上記溶媒の沸点以下であることが好ましく、また、50〜90℃であることがより好ましい。上記反応温度が低過ぎると、反応速度が遅くなるおそれがあり、高過ぎると、溶媒が蒸発してしまい、重合反応を継続できなくなるおそれがある。
【0059】
上記重合反応の反応時間は特に限定されないが1〜720分であることが好ましく、10〜600分であることがより好ましい。上記反応時間が短過ぎると、反応が不十分となるおそれがある。
【0060】
上記重合反応により、ポリスチレン粒子が調製される。ポリスチレン粒子の平均粒子径は20〜150nmが好ましく、25〜120nmがより好ましく、25〜100nmが更に好ましい。ポリスチレン粒子の平均粒子径を上記範囲とすることにより、工程2により形成されるコアシェル粒子の平均粒子径、及び工程3により製造されるシリカ系中空粒子の平均粒子径を適切な範囲とすることができる。
【0061】
以上説明した工程1により、ポリスチレン粒子が調製される。
【0062】
<工程2>
工程2は、(2)溶媒に、(i)前記ポリスチレン粒子と、(ii)アルコキシシラン、又は、アルコキシシラン及び金属アルコキシドと、(iii)塩基性触媒とを添加撹拌して溶液を調製することにより、前記溶液中で、前記ポリスチレン粒子をコアとし、前記ポリスチレン粒子を被覆するシリカ系シェルを有するコアシェル粒子を形成する工程である。
【0063】
(溶媒)
工程2で用いられる溶媒としては、水を用いることが好ましい。水を用いることにより、安価で、且つ安全にコアシェル粒子を形成することができる。
【0064】
上記溶媒としては、また、親水性溶媒を用いることができる。親水性溶媒としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、酢酸エチル等のエステル類を例示することができる。これらの中でも、アルコール類を用いることが好ましく、メタノール、エタノール、イソプロパノールを用いることがより好ましい。上記溶媒としては、また、ケイ素化合物の加水分解により生成するアルコールと同種のアルコールを用いることがさらに好ましい。ケイ素化合物の加水分解により生成するアルコールと同種のアルコールを用いることにより、溶媒の回収、再利用を容易に行なうことができる。
【0065】
上記溶媒は一種を単独で使用することもでき、二種以上の溶媒を混合して使用することもできる。
【0066】
上記溶媒として、水及び親水性溶媒を混合して用いてもよい。親水性溶媒:水の質量比は限定されないが、90:10〜10:90が好ましく、50:50〜10:90がより好ましい。上記質量比を上述の範囲とすることにより、得られる中空シリカ粒子の平均粒子径を、30〜150nm程度に制御し易い。
【0067】
上記溶媒としては、また、疎水性溶媒を用いることができる。疎水性溶媒としては、100℃で100g当たり約1g未満の水溶性を有する有機炭化水素系溶媒が挙げられる。このような疎水性溶媒としては、炭素数6〜10の直鎖状又は分岐状又は環状のアルカン、例えば、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、イソオクタンを用いることができる。その中でもオクタンがより好ましい。
【0068】
(ポリスチレン粒子)
工程2で用いられるポリスチレン粒子は、上記工程1により調製されたポリスチレン粒子を用いればよい。
【0069】
上記溶液中のポリスチレン粒子の濃度は、0.01〜50質量%であることが好ましく、0.01〜20質量%であることがより好ましい。
【0070】
(アルコキシシラン)
工程2で用いられるアルコキシシランとしては特に限定されず、例えば、一般式(1)
Si(OR
1)
4 (1)
で示されるテトラアルコキシシラン又はその誘導体が挙げられる。上記一般式(1)において、R
1は同一又は異なって、アルキル基であり、好ましくは炭素数1〜8の低級アルキル基であり、より好ましくは炭素数1〜4の低級アルキル基であり、更に好ましくは、炭素数1〜3の低級アルキル基である。具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、イソブチル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等を例示でき、緻密なシリカ系シェルを得ることができる点で、R
1がメチル基であるテトラメトキシシラン(TMOS)がより好ましい。また、上記炭素数が大き過ぎると、シリカが生成し難いおそれがある。なお、上記緻密なシリカ系シェルとは、シロキサン結合がより完全に形成され、残存するシラノール基が少ないシリカ系シェルである。
【0071】
工程2で用いられるアルコキシシランとしては、また、一般式(2)
Si(OR
1)
3R
2 (2)
で示されるトリアルコキシシラン又はそのこれらの誘導体が挙げられる。上記一般式(2)において、R
1は上記一般式(1)のR
1と同じであり、R
2は水素、又は上記R
1として説明したアルキル基と同一のアルキル基である。
【0072】
上記アルコキシシランの誘導体としては、上記アルコキシシランを部分的に加水分解して得られる低縮合体が挙げられる。
【0073】
上記アルコキシシランは、単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。中でも、コアシェル粒子の段階で凝集を防ぐことができ、シランカップリング剤等での表面改質が容易になる点で、トリアルコキシシラン及びテトラアルコキシシランを含むことが好ましい。
【0074】
上記溶液中のアルコキシシランの濃度は、0.01〜50質量%であることが好ましく、0.01〜20質量%であることがより好ましい。
【0075】
(金属アルコキシド)
工程2では、アルコシシシラン及び金属アルコキシドを混合して用いてもよい。金属アルコキシドとしては特に限定されず、公知のものを用いることができる。このような金属アルコキシドとしては、アルミニウムアルコキシド、チタンアルコキシド、ジルコニウムアルコキシド等が挙げられる。アルミニウムアルコキシドを用いると、シリカ系シェルの表面電荷(ゼータ電位等)を調整することができる。また、チタンアルコキシド、ジルコニウムアルコキシドを用いると、シリカ系シェルの屈折率を調整することができる。
【0076】
上記溶液中の金属アルコキシドの濃度は、0.01〜50質量%であることが好ましく、0.01〜20質量%であることがより好ましい。
【0077】
工程2では、アルコキシシランと金属アルコキシドとを別々に添加して溶液を調製してもよく、アルコキシシランと金属アルコキシドとを混合し、加水分解してから溶液中に添加してもよい。アルコキシシランと金属アルコキシドとを混合し、加水分解してから溶液中に添加することにより、下記式(3)
Si−O−M (3)
で示される結合を有し、式(3)中Mで示される金属が均一に含まれるシリカ系シェルを形成することができる。
【0078】
なお、上記式(3)中、Mは金属を示し、好ましくはアルミニウム、チタン、ジルコニウムを示す。
【0079】
上記アルコキシシランと金属アルコキシドとを混合し、加水分解してから溶液中に添加する方法としては、例えば、特開2005−41722号公報に記載された方法が挙げられる。
【0080】
(塩基性触媒)
工程2で用いられる塩基性触媒としては特に限定されず、公知の塩基性触媒を用いることができるが、特に金属不純物の混入を回避するという点で金属成分を含まない有機系塩基触媒、及び金属成分を含まない無機系触媒が好適である。上記有機系塩基触媒としては、例えばエチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、尿素、エタノールアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)、テトラメチルグアニジン、塩基性アミノ酸等の含窒素有機系塩基触媒が挙げられる。また、上記無機系塩基触媒としては、アンモニア水が挙げられる。工程2を行う際の温度範囲で揮散しない点で、揮発性の低い有機系塩基触媒が好ましい。揮散する塩基の場合、連続的に添加して溶液のpHを維持してもよい。また、価格が安価であり経済的に優れる点で、アンモニア水が好ましい。
【0081】
上記塩基性触媒は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0082】
上記溶液中の塩基性触媒の濃度は、0.1〜5質量%であることが好ましく、0.5〜3質量%であることがより好ましい。
【0083】
工程2では、上記溶媒に、(i)ポリスチレン粒子と、(ii)アルコキシシラン、又は、アルコキシシラン及び金属アルコキシドと、(iii)塩基性触媒とを添加撹拌して溶液を調製することにより、溶液中で、ポリスチレン粒子をコアとし、ポリスチレン粒子を被覆するシリカ系シェルを有するコアシェル粒子を形成することができる。
【0084】
上記工程2における溶液の温度は特に限定されないが、5〜200℃が好ましく、5〜150℃がより好ましい。上記温度が低過ぎると、反応速度が遅くなるおそれがあり、高過ぎると、溶媒が蒸発してしまうおそれがある。
【0085】
上記工程2における撹拌時間は特に限定されないが1〜1200分であることが好ましく、1〜600分であることがより好ましい。上記撹拌時間が短過ぎると、反応が不十分となるおそれがある。
【0086】
以上説明した工程2により、上記ポリスチレン粒子をコアとし、上記ポリスチレン粒子を被覆するシリカ系シェルを有するコアシェル粒子を形成することができる。
【0087】
<工程3>
工程3は、上記コアシェル粒子のコアである、上記ポリスチレン粒子を熱分解することにより、上記ポリスチレン粒子を除去する工程である。上記コアシェル粒子の内部は、コアとしてポリスチレン粒子が充填されている状態であるので、これを除去することによりシェル内を中空とし、高機能性材料として使用し得るシリカ系中空粒子を製造することができる。
【0088】
工程3において、ポリスチレン粒子は、熱分解により除去される。上記熱分解としては、特に限定されないが、例えば、焼成が挙げられる。焼成による場合、焼成温度が低すぎるとシリカ系中空粒子内にポリスチレン粒子および他の有機成分が残存する可能性があり、また焼成温度が高すぎるとシェルが破壊されるおそれがある。このため、焼成によるポリスチレン粒子の除去方法としては、例えば、超音波霧化器、二流体ノズル等を用いて、工程2により調製した溶液を電気炉内に噴霧し、電気炉内で好ましくは350〜1500℃、より好ましくは400〜1200℃、更に好ましくは600〜1000℃の高温度領域で焼成する方法が挙げられる。この方法によりポリスチレン粒子を除去するのに十分な時間をかけて焼成することによって、シェルを殆ど破壊することなく、コアシェル粒子からポリスチレン粒子を除去することができる。
【0089】
工程2により調製した溶液を電気炉内に噴霧して焼成することにより、ポリスチレン粒子の除去を行う場合には、電気炉の高温度領域の手前に、150〜250℃程度の温度範囲の低温度領域を設け、噴霧された溶液が当該低温度領域を通過してから、高温度領域に噴霧されるようにすることが好ましい。噴霧された溶液が低温度領域を通過することにより、溶液中の溶媒が徐々に蒸発するので、これにより噴霧液の液滴内でのシリカ系中空粒子の形成が促進される。上記低温度領域を設けない場合、シリカ系中空粒子の形成が不十分となり、シリカ系中空粒子の形状が、いびつになるおそれがある。
【0090】
上記工程を経て得られるシリカ系中空粒子の平均粒子径は、30〜150nmが好ましく、35〜120nmがより好ましく、35〜100nmが更に好ましい。得られるシリカ系中空粒子の平均粒子径が上記範囲であることにより、シリカ系中空粒子の凝集をより抑制することができ、且つ、様々な物品に充填された場合に、より均一に充填され易くなる。
【0091】
上記工程を経て得られるシリカ系中空粒子は、アスペクト比が1.5以下の粒子が粒子全体の95%を占めることが好ましく、97%以上がより好ましく、99%が更に好ましい。得られるシリカ系中空粒子のアスペクト比が1.5以下の粒子が上記割合であることにより、シリカ系中空粒子の凝集を抑制することができ、且つ、様々な物品に充填された場合に、均一に充填され易くなる。
【0092】
上記工程を経て得られるシリカ系中空粒子のアスペクト比は、1.0〜1.6が好ましく、1.0〜1.4がより好ましく、1.0〜1.2が更に好ましい。得られるシリカ系中空粒子のアスペクト比が上記範囲であることにより、シリカ系中空粒子の凝集をより抑制することができ、且つ、様々な物品に充填された場合に、より均一に充填され易くなる。
【0093】
上記工程を経て得られるシリカ系中空粒子の粒子径の変動係数は、20〜60%が好ましく、20〜50%がより好ましく、20〜40%が更に好ましい。得られるシリカ系中空粒子の粒子径の変動係数が上記範囲であることにより、シリカ系中空粒子の凝集を抑制することができ、且つ、様々な物品に充填された場合に、均一に充填され易くなる。
【0094】
以上説明した工程3により、上記コアシェル粒子のコアである、上記ポリスチレン粒子が熱分解されて、上記ポリスチレン粒子を除去することができる。
【0095】
5.コアシェル粒子の製造方法
本発明のコアシェル粒子の製造方法は、
(1)スチレンモノマーと、分散剤と、混合溶媒とを含む溶液中で、前記スチレンモノマーの重合反応を行い、ポリスチレン粒子を調製する工程であって、前記混合溶媒は、水とアセトンとの混合溶媒である工程1、
(2)溶媒に、(i)前記ポリスチレン粒子と、(ii)アルコキシシラン、又は、アルコキシシラン及び金属アルコキシドと、(iii)塩基性触媒とを添加撹拌して溶液を調製することにより、前記溶液中で、前記ポリスチレン粒子をコアとし、前記ポリスチレン粒子を被覆するシリカ系シェルを有するコアシェル粒子を形成する工程2を含む製造方法である。
【0096】
上記工程1及び工程2は、上記シリカ系中空粒子の製造方法において説明した工程1及び2と同一である。本発明のコアシェル粒子の製造方法により製造されたコアシェル粒子は、当該コアシェル粒子のコアであるポリスチレン粒子を熱分解することによりポリスチレン粒子を除去することができるので、上述のシリカ系中空粒子の製造方法の工程3において用いられるコアシェル粒子として好適である。
【0097】
6.ポリスチレン粒子の製造方法
本発明のポリスチレン粒子の製造方法は、
(1)スチレンモノマーと、分散剤と、混合溶媒とを含む溶液中で、前記スチレンモノマーの重合反応を行い、ポリスチレン粒子を調製する工程であって、前記混合溶媒は、水とアセトンとの混合溶媒である工程1を含む製造方法である。
【0098】
上記工程1は、上記シリカ系中空粒子の製造方法に及びコアシェル粒子の製造方法において説明した工程1と同一である。本発明のポリスチレン粒子の製造方法により製造されたポリスチレン粒子は、粒子径の変動係数及びアスペクト比が1.5以下の粒子の割合が上記範囲となっており、分散剤を含むので、上記コアシェル粒子の製造方法、及び上記シリカ系中空粒子の製造方法の工程1で調整され、工程2に用いられることにより、凝集が抑制されており、粒度分布が大きく、アスペクト比が小さいコアシェル粒子を製造することができ、当該コアシェル粒子を工程3に用いることにより、様々な物品に充填された場合、均一に充填され易い本発明の中空シリカ粒子を容易に製造することができる。
【実施例】
【0099】
以下に実施例を示して本発明を具体的に説明する。但し、本発明は実施例に限定されない。
【0100】
実施例1
表1の製造条件により、表2の配合でポリスチレン粒子及びコアシェル粒子を調製し、シリカ系中空粒子を製造した。具体的には、以下の通りである。
【0101】
(工程1:ポリスチレン粒子の製造)
表2の配合及び条件でポリスチレン粒子を製造した。スチレンモノマー(アルドリッチ社製)、超純水とアセトンとの混合溶媒、カチオン性重合開始剤として、2,2’−アゾビス(イソブチルアミジン)ジヒドロクロライド(AIBA)(シグマ−アルドリッチ社製)、分散剤としてPVP(ポリビニルピロリドン)を用い、バッチ式の反応系により合成した。
【0102】
具体的には、先ず、1Lの四ツ口フラスコ、撹拌羽、マントルヒーター、冷却装置を備える反応装置を用意した。
【0103】
次いで、超純水382.5g、アセトン467.5g、及び、分散剤としてPVP(東京化成工業株式会社製 K90 分子量630,000)を四ツ口フラスコに注入し、窒素雰囲気中で250rpmの撹拌条件で撹拌しながら環流し、温度が変化しなくなるまで10分間加温した。このときの温度は63℃であった。次いで、スチレンモノマーを添加し、温度が変化しなくなるまで5分間加温してスチレンモノマーを均一に分散させて、溶液を調製した。溶液の温度は63℃であった。なお、スチレンモノマーは、予め0.1M−NaOHで洗浄して安定剤を除去したものを使用した。
【0104】
次いで、溶液に、重合開始剤として予め超純水に溶解させた5質量%AIBA水溶液を添加して、重合反応を開始した。窒素雰囲気下、63℃で10時間重合反応を行った後、室温まで冷却して、溶液中にポリスチレン粒子を製造した。
【0105】
(工程2:コアシェル粒子の製造)
表2の配合及び条件でコアシェル粒子を製造した。具体的には、先ず、1Lの四ツ口フラスコ、撹拌羽、ウォーターバスを備える反応装置を用意した。フラスコ内に、上記工程1で製造したポリスチレン粒子が分散した溶液を入れ、溶媒としてメタノールを添加し、25%アンモニア水溶液を添加して、B液を調製した。TMOS及びメタノールを混合して、A液を調製した。B液を30℃に保ちながら、A液を3回に分けて30分間隔で添加した。250rpmで1時間撹拌して、溶液中でポリスチレン粒子をコアとし、ポリスチレン粒子を被覆するシリカ系シェルを有するコアシェル粒子を形成した。
【0106】
工程2により得られたコアシェル粒子が分散した溶液をホットプレート上で150℃の温度で乾燥することによりコアシェル粒子の粉末を得た。
【0107】
(工程3:シリカ系中空粒子の製造)
工程2で得られたコアシェル粒子を、700℃の温度で熱処理することにより、ポリスチレン粒子を除去してシリカ系中空粒子を製造した。
【0108】
実施例2、3、比較例1〜4
製造条件を表1及び2の製造条件とし、表2の配合でポリスチレン粒子及びコアシェル粒子を調製した以外は実施例1と同様にして、シリカ系中空粒子を製造した。
【0109】
実施例及び比較例において、工程1〜3で得られたポリスチレン粒子、コアシェル粒子及びシリカ系中空粒子の特性を、以下の方法により測定した。
【0110】
(平均粒子径)
シリカ系中空粒子及びコアシェル粒子
TEM(透過型電子顕微鏡:JEM−2010、日本電子社製)を用いて加速電圧200kVの条件で粒子の写真を撮影し、任意に選んだ100個の粒子短径を測長して平均値を算出し、平均粒子径とした。
ポリスチレン粒子
SEM(走査型電子顕微鏡:JSM−6700F、日本電子株式会社製)を用いて加速電圧5kVの条件で粒子の写真を撮影し、任意に選んだ100個の粒子短径を測長して平均値を算出し、平均粒子径とした。
【0111】
(粒子径の変動係数)
シリカ系中空粒子及びコアシェル粒子
TEM(透過型電子顕微鏡:JEM−2010、日本電子社製)を用いて加速電圧200kVの条件で粒子の写真を撮影し、任意に選んだ100個の粒子短径を測長して平均値を求め、下記式に基づいて算出した。
(変動係数)=[(粒子短径の標準偏差)÷(粒子短径の平均値)]×100
ポリスチレン粒子
SEM(走査型電子顕微鏡:JSM−6700F、日本電子株式会社製)を用いて、加速電圧5kVの条件で粒子の写真を撮影し、任意に選んだ100個の粒子短径を測長して平均値を求め、下記式に基づいて算出した。
(変動係数)=[(粒子短径の標準偏差)÷(粒子短径の平均値)]×100
【0112】
(アスペクト比が1.5以下の粒子の粒子全体に占める割合)
シリカ系中空粒子及びコアシェル粒子
TEM(透過型電子顕微鏡:JEM−2010、日本電子株式会社製)を用いて、倍率20万倍、加速電圧200kVの条件で粒子の写真を撮影し、任意に選んだ100個のそれぞれの粒子の粒子長径及び粒子短径を測長して、下記式に基づいてそれぞれの粒子のアスペクト比を求めた。次いで、粒子100個中アスペクト比が1.5以下の粒子の数を数え、当該数を、アスペクト比が1.5以下の粒子の粒子全体に占める割合とした。
(アスペクト比)=(粒子長径)÷(粒子短径)
ポリスチレン粒子
SEM(走査型電子顕微鏡:JSM−6700F、日本電子株式会社製)を用いて、倍率10万倍、加速電圧5kVの条件で粒子の写真を撮影し、任意に選んだ100個のそれぞれの粒子の粒子長径及び粒子短径を測長して、下記式に基づいてそれぞれの粒子のアスペクト比を求める。次いで、粒子100個中アスペクト比が1.5以下の粒子の数を数え、当該数を、アスペクト比が1.5以下の粒子の粒子全体に占める割合とする。
(アスペクト比)=(粒子長径)÷(粒子短径)
【0113】
【表1】
【0114】
比較例1〜3では、TEM写真において明確に形状を判別できる粒子の数が少ないため、粒子径の変動係数、アスペクト比が1.5以下の粒子の割合、平均粒子径を測定できなかった。
【0115】
【表2】
【0116】
(結果)
実施例1〜3及び比較例1〜4で得られたシリカ系中空粒子をTEMを用いて解析した。
図1〜3に、実施例1〜3で得られたシリカ系中空粒子のTEM像を示す。これらのシリカ系中空粒子は凝集が抑制されていることが分かった。また、実施例1〜3では、アスペクト比が1.5以下の粒子が粒子全体の95%以上を占め、粒子径の変動係数が20〜60%であることから、様々な物品に充填された場合、均一に充填され易いことが分かった。
【0117】
図4は、比較例1のシリカ系中空粒子のTEM像を示す図である。
図4から、比較例1では、工程1で分散剤を添加していないため、シリカ系中空粒子が凝集していることが分かった。
【0118】
比較例2〜4では、工程1において水とメタノールとの混合溶媒を用いており、ポリスチレン粒子の変動係数が小さくなっており、これによりコアシェル粒子及びシリカ系中空粒子の変動係数も小さくなっており、様々な物品に充填された場合、均一に充填され難いことが分かった。