特許第6953154号(P6953154)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6953154成形品の製造方法、成形品、カートリッジ及び画像形成装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6953154
(24)【登録日】2021年10月1日
(45)【発行日】2021年10月27日
(54)【発明の名称】成形品の製造方法、成形品、カートリッジ及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/14 20060101AFI20211018BHJP
   B29C 45/26 20060101ALI20211018BHJP
   G03G 21/16 20060101ALI20211018BHJP
   G03G 21/18 20060101ALI20211018BHJP
【FI】
   B29C45/14
   B29C45/26
   G03G21/16 147
   G03G21/18
【請求項の数】20
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2017-55124(P2017-55124)
(22)【出願日】2017年3月21日
(65)【公開番号】特開2018-154104(P2018-154104A)
(43)【公開日】2018年10月4日
【審査請求日】2020年3月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003133
【氏名又は名称】特許業務法人近島国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宇田川 正晃
(72)【発明者】
【氏名】土井 遥平
(72)【発明者】
【氏名】小林 大吾
【審査官】 坂口 岳志
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−300393(JP,A)
【文献】 特開昭63−059509(JP,A)
【文献】 特開平07−016843(JP,A)
【文献】 特開2001−158026(JP,A)
【文献】 特開2014−035805(JP,A)
【文献】 特開2002−036283(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/00−45/24
B29C 33/00−33/76
G03G 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
形品に対応したキャビティが形成される成形型を用意し、
記成形型前記キャビティの一部となる溝部インサート部材を配置し、
前記溝部に前記インサート部材が配置された状態で前記キャビティに溶融樹脂を充填する、成形品の製造方法であって、
前記溝部の壁面は、第1面と、前記第1面に隣接し、前記第1面に対して傾斜した第2面とを有し、
前記インサート部材を配置する際に、前記インサート部材を前記第2面に当接させながら前記第2面に沿って移動させた後、前記インサート部材を前記第1面に当接させながら前記第1面に沿って移動させる、
ことを特徴とする成形品の製造方法。
【請求項2】
前記インサート部材は、第1部分と前記第1部分に連結された第2部分とを有し、
前記インサート部材を前記第2面に当接させながら前記第2面に沿って移動させるとき、前記第2部分前記第面に当接させながら前記第2面に沿って移動させ、
前記インサート部材を前記第1面に当接させながら前記第1面に沿って移動させるとき、前記第1部分を前記第2面に対向させつつ、前記第2部分前記第面に当接させながら前記第1面に沿って移動させることを特徴とする請求項1に記載の成形品の製造方法。
【請求項3】
前記第1面に前記インサート部材を当接させた状態で、前記溝部のうちの前記インサート部材に対して前記第1面とは反対側の空間に前記溶融樹脂を充填することを特徴とする請求項1又は2に記載の成形品の製造方法。
【請求項4】
前記インサート部材が片持ち支持された状態で前記キャビティに前記溶融樹脂を充填することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の成形品の製造方法。
【請求項5】
前記インサート部材が前記第1面に沿って移動するとき、前記インサート部材は、前記第1面に押し付けられた状態で当接することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の成形品の製造方法。
【請求項6】
前記インサート部材を前記溝部に配置するときに、前記インサート部材が変形することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の成形品の製造方法。
【請求項7】
前記第2面の前記第1面に対する傾斜角度は、30度以下であることを特徴とする請求項5又は6に記載の成形品の製造方法。
【請求項8】
前記成形型は、胴体部及び前記胴体部から延びるアーム部を有する成形品の前記胴体部に対応した第1壁面と、前記アーム部に対応した第2壁面と、を有し、前記インサート部材は、前記第1壁面および前記第2壁面に対向し、前記第1面および前記第2面は前記第1壁面に設けられていることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の成形品の製造方法。
【請求項9】
前記第1壁面と前記第2壁面とが並ぶ方向が、前記第1面と前記第2面とが並ぶ方向に交差することを特徴とする請求項に記載の成形品の製造方法。
【請求項10】
第1及び第2成形型を含む複数の成形型を有すると共に、これら複数の成形型の間に、胴体部及び前記胴体部から延びるアーム部を有する成形品に対応したキャビティが形成されるインサート成形型を用意し、前記第1成形型は、前記キャビティの一部となる溝部を規定する壁面の内、前記胴体部に対応した部分に設けられた案内面を備え、
基部及び前記基部に連結された凸部を有するインサート部材を、前記案内面により前記凸部を案内しつつ、前記第1成形型の溝部に設置し、
前記複数の成形型を型締めして、前記インサート部材が配置された状態で前記キャビティを形成し、
前記キャビティに溶融樹脂を充填する成形品の製造方法であって、
前記基部は、屈曲部と、前記インサート部材を支持する支持部と、前記屈曲部と前記支持部とを連結する連結部と、前記連結部とは反対側に前記屈曲部から延びる平板部とを有し、
前記凸部は、前記平板部に設けられており、
前記平板部は、前記屈曲部から延びる第1延出部と、前記第1延出部に対して交差する方向に延びる第2延出部とを有しており、
前記凸部は、前記第1延出部の延長上に設けられていることを特徴とする成形品の製造方法。
【請求項11】
第1金属部、及び第1樹脂部を有する胴体部と、前記第1金属部から延びる第2金属部、及び前記第1樹脂部から延びる第2樹脂部を有し、前記胴体部から延びるアーム部と、を備える成形品であって、前記第1金属部は、第1部分と、前記第1部分から延びる第2部分と、を有し、
前記第2部分は、外部に露出した露出部を有し、
前記第1樹脂部は、前記第1部分のうちの前記露出部に隣接する部分を被覆する第3部分と、前記第1部分を前記第3部分とは反対側から被覆し、かつ、前記第2部分を前記露出部とは反対側から被覆する第4部分と、を有し、
前記第3部分は、前記露出部に隣接するテーパ面を有することを特徴とする成形品。
【請求項12】
前記第1金属部は、第5部分と、前記第5部分に接続された第1屈曲部と、前記第1屈曲部から第1方向に延びる第1延出部と、前記第1延出部から前記第1方向に交差する第2方向に延びる第2延出部と、前記第2延出部と前記第2金属部とを接続する第2屈曲部と、を有し、前記第2部分と前記第3部分とが前記第1方向において隣接することを特徴とする請求項11に記載の成形品。
【請求項13】
第1金属部、及び第1樹脂部を有する胴体部と、
前記第1金属部から延びる第2金属部、及び第2樹脂部を有し、前記胴体部から延びるアーム部と、を備え、
前記第1金属部は、基部と、前記基部から延びる凸部と、を有し、
前記基部は、屈曲部と、前記屈曲部から前記アーム部の側に延びる平板部と、を有し、
前記凸部は、前記平板部に設けられていることを特徴とする成形品。
【請求項14】
前記平板部は、前記屈曲部から延びる第1延出部と、前記第1延出部に対して交差する方向に延びる第2延出部とを有しており、
前記凸部は、前記第1延出部の延長上に設けられていることを特徴とする請求項13に記載の成形品。
【請求項15】
第1金属部、及び第1樹脂部を有する胴体部と、
前記第1金属部から延びる第2金属部、及び第2樹脂部を有し、前記胴体部から延びるアーム部と、を備え、
前記第1金属部は、基部と、前記基部から延びる凸部と、を有し、
前記胴体部は、円筒形状であり、
前記アーム部は、前記胴体部の内周面から延びていることを特徴とする成形品。
【請求項16】
前記胴体部は、前記凸部の一部が外部に露出した露出部を備えていることを特徴とする請求項13乃至15のいずれか1項に記載の成形品。
【請求項17】
駆動軸からの回転力を受ける伝達部材であって、
前記伝達部材が、請求項11乃至16のいずれか1項に記載の成形品であり、
前記胴体部が前記駆動軸を取り囲み、前記アーム部が前記駆動軸の溝部に係合されることを特徴とする伝達部材。
【請求項18】
モータと、前記モータの回転力が伝達される伝達部材と、を備える装置であって、
前記伝達部材が、請求項11乃至16のいずれか1項に記載の成形品であることを特徴とする装置。
【請求項19】
感光ドラムと、前記感光ドラムの長手方向の端部に取り付けられ、前記感光ドラムに回転力を伝達する伝達部材と、を備え、
前記伝達部材は、
第1金属部、及び第1樹脂部を有する胴体部と、
前記第1金属部から延びる第2金属部、及び第2樹脂部を有し、前記胴体部から延びるアーム部と、を備え、前記第1金属部は、基部と、前記基部から延びる凸部と、を有する成形品であることを特徴とする画像形成装置用のカートリッジ。
【請求項20】
画像形成装置本体と、
前記画像形成装置本体に装着される請求項19に記載のカートリッジと、を備えた画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インサート成形に関する。
【背景技術】
【0002】
成形品の剛性やクリープ強度を向上させるために、金属部材等のインサート部材を成形型内のキャビティに設置し、溶融樹脂をインサート部材の周囲に射出して、インサート部材を樹脂部材で被覆するインサート成形が知られている。
【0003】
インサート部材は、成形品の形状に倣って曲げ加工などを施した複雑な形状となることが多い。この種のインサート部材は、プレス加工等により塑性変形され、曲げ角度の加工ばらつきを有することとなる。加工ばらつきのあるインサート部材を成形型に確実に設置するには、正確な位置決め機能を有する高価なロボットや人手が必要になり、採算性や生産性が低いものであった。これに対し、特許文献1には、端子に当て板を押し当てながら挿入孔へ導くことで、生産性を向上させることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−15389号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1の方法では、加工ばらつきのあるインサート部材を成形型に設置するために、成形型とは別に当て板を射出成形機に組み込む必要があった。この当て板は、成形型の型締めを行うときには、成形型で挟み込まない位置に移動させ、インサート部材を成形型の溝部に設置するときには成形型の溝部の近傍の位置に移動させなければならず、当て板を駆動する機構が必要であった。よって、当て板のために射出成形機が大型化したり複雑化したりするなどの問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、簡単な構成で成形品の生産性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、成形品に対応したキャビティが形成される成形型を用意し、前記成形型の前記キャビティの一部となる溝部にインサート部材を配置し、前記溝部に前記インサート部材が配置された状態で前記キャビティに溶融樹脂を充填する、成形品の製造方法であって、前記溝部の壁面は、第1面と、前記第1面に隣接し、前記第1面に対して傾斜した第2面とを有し、前記インサート部材を配置する際に、前記インサート部材前記第2面に当接させながら前記第2面に沿って移動させた後、前記インサート部材を前記第1面に当接させながら前記第1面に沿って移動させる、ことを特徴とする成形品の製造方法である
また、本発明の一形態は、第1及び第2成形型を含む複数の成形型を有すると共に、これら複数の成形型の間に、胴体部及び前記胴体部から延びるアーム部を有する成形品に対応したキャビティが形成されるインサート成形型を用意し、前記第1成形型は、前記キャビティの一部となる溝部を規定する壁面の内、前記胴体部に対応した部分に設けられた案内面を備え、基部及び前記基部に連結された凸部を有するインサート部材を、前記案内面により前記凸部を案内しつつ、前記第1成形型の溝部に設置し、前記複数の成形型を型締めして、前記インサート部材が配置された状態で前記キャビティを形成し、前記キャビティに溶融樹脂を充填する成形品の製造方法であって、前記基部は、屈曲部と、前記インサート部材を支持する支持部と、前記屈曲部と前記支持部とを連結する連結部と、前記連結部とは反対側に前記屈曲部から延びる平板部とを有し、前記凸部は、前記平板部に設けられており、前記平板部は、前記屈曲部から延びる第1延出部と、前記第1延出部に対して交差する方向に延びる第2延出部とを有しており、前記凸部は、前記第1延出部の延長上に設けられていることを特徴とする成形品の製造方法である。
更に、本発明の一形態は、第1金属部、及び第1樹脂部を有する胴体部と、前記第1金属部から延びる第2金属部、及び前記第1樹脂部から延びる第2樹脂部を有し、前記胴体部から延びるアーム部と、を備える成形品であって、前記第1金属部は、第1部分と、前記第1部分から延びる第2部分と、を有し、前記第2部分は、外部に露出した露出部を有し、前記第1樹脂部は、前記第1部分のうちの前記露出部に隣接する部分を被覆する第3部分と、前記第1部分を前記第3部分とは反対側から被覆し、かつ、前記第2部分を前記露出部とは反対側から被覆する第4部分と、を有し、前記第3部分は、前記露出部に隣接するテーパ面を有することを特徴とする成形品である。
また、本発明の一形態は、第1金属部、及び第1樹脂部を有する胴体部と、前記第1金属部から延びる第2金属部、及び第2樹脂部を有し、前記胴体部から延びるアーム部と、を備え、前記第1金属部は、基部と、前記基部から延びる凸部と、を有し、前記基部は、屈曲部と、前記屈曲部から前記アーム部の側に延びる平板部と、を有し、前記凸部は、前記平板部に設けられていることを特徴とする成形品である。
更に、本発明の一形態は、第1金属部、及び第1樹脂部を有する胴体部と、前記第1金属部から延びる第2金属部、及び第2樹脂部を有し、前記胴体部から延びるアーム部と、を備え、前記第1金属部は、基部と、前記基部から延びる凸部と、を有し、前記胴体部は、円筒形状であり、前記アーム部は、前記胴体部の内周面から延びていることを特徴とする成形品である。
また、本発明の一形態は、感光ドラムと、前記感光ドラムの長手方向の端部に取り付けられ、前記感光ドラムに回転力を伝達する伝達部材と、を備え、前記伝達部材は、第1金属部、及び第1樹脂部を有する胴体部と、前記第1金属部から延びる第2金属部、及び第2樹脂部を有し、前記胴体部から延びるアーム部と、を備え、前記第1金属部は、基部と、前記基部から延びる凸部と、を有する成形品であることを特徴とする画像形成装置用のカートリッジである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、簡単な構成で成形品の生産性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1実施形態に係る画像形成装置の概略構成を示す説明図である。
図2】第1実施形態に係る画像形成装置本体に装着されるカートリッジの斜視図である。
図3】第1実施形態における成形品の一例である伝達部材を示す斜視図である。
図4】第1実施形態における伝達部材を製造する製造装置を示す説明図である。
図5】第1実施形態におけるプレス加工後のフープ材の一部を示す部分斜視図である。
図6】第1実施形態に係るインサート成形による伝達部材の製造工程を説明するためのフローチャートである。
図7】(a)は第1実施形態における金型を型締めした状態を示す射出成形機の模式図である。(b)はキャビティに溶融樹脂を射出している状態を示す射出成形機の模式図である。
図8】(a)は第1実施形態における金型に金属部材を設置した状態を示す斜視図である。(b)は(a)のVIIIB−VIIIB線に沿う金型及び金属部材の断面図である。
図9】(a)〜(c)は第1実施形態に係る伝達部材の製造方法の第1工程を説明するための模式図である。
図10】第2実施形態に係る成形品の一例である伝達部材の斜視図である。
図11】(a)は第2実施形態におけるプレス加工後のフープ材を示す斜視図である。(b)は金型の溝部に金属部材が設置された状態を示す模式図である。
図12】第2実施形態における成形加工後のフープ材を示す斜視図である。
図13】(a)は第3実施形態に係る成形品の一例である伝達部材の斜視図である。(b)は伝達部材の断面図である。
図14】第3実施形態に係る伝達部材における金属部材の斜視図である。
図15】(a)は、第3実施形態における伝達部材の平面図である。(b)は伝達部材の断面図である。
図16】(a)及び(b)は第3実施形態における伝達部材を駆動軸に取り付ける際の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態に係る画像形成装置の概略構成を示す説明図である。画像形成装置10は、電子写真方式を採用するフルカラープリンタである。画像形成装置10は、画像形成部11と、シートSを搬送する搬送部12とを備える。画像形成部11は、複数(本実施形態では4個)のカートリッジ20を中間転写ベルト27の走行方向に並べた、所謂タンデム型の構成を有する。各カートリッジ20は、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックのトナー像をそれぞれ形成する画像形成装置用のプロセスカートリッジである。
【0011】
画像形成装置本体1には、複数のカートリッジ20が着脱可能に装着される。ここで、各カートリッジ20の構成は同様であるため、以下、図1中の左端のカートリッジ20について説明し、他のカートリッジについては、符号及び説明を省略する。
【0012】
カートリッジ20は、感光ドラム21、帯電ローラ22、現像装置23、ドラムクリーナ24を備えている。感光ドラム21は、画像形成装置本体1に配置された不図示のドラムモータによって、所定のプロセススピードで回転駆動される。感光ドラム21の表面は、帯電ローラ22により均一に帯電される。帯電された感光ドラム21の表面には、スキャナユニット25により、画像情報に基づいてレーザービームが照射されることで静電潜像が形成される。感光ドラム21上の静電潜像は、現像装置23によりトナーを付着させてトナー像として現像される。感光ドラム21上のトナー像は、一次転写ローラ26と感光ドラム21との間に一次転写バイアスが印加されることで、中間転写ベルト27に一次転写される。転写後に感光ドラム21に残った転写残トナーは、ドラムクリーナ24により除去される。
【0013】
このような工程が各カートリッジ20で実行されることで、各カートリッジ20の感光ドラム21上に形成された各色のトナー像が、中間転写ベルト27上に重ねて転写され、中間転写ベルト27上にフルカラーのトナー像が形成される。中間転写ベルト27上のトナー像は、中間転写ベルト27と二次転写ローラ28とで構成される二次転写部により、搬送部12により搬送されたシートSに二次転写される。転写後に中間転写ベルト27に残ったトナーは、ベルトクリーナ29により除去される。
【0014】
搬送部12は、複数の搬送ローラで構成されており、カセット13に収容されたシートSをピックアップして、画像形成部11の二次転写部に搬送する。二次転写部へのシートSの搬送は、レジストレーションローラ対14により中間転写ベルト27上のトナー像とタイミング合わせて行われる。二次転写部でトナー像が転写されたシートSは、定着装置30で加熱及び加圧されることでトナー像が定着される。トナー像が定着されたシートSは、排出トレイ31に排出される。
【0015】
図2は、第1実施形態に係る画像形成装置本体1に装着されるカートリッジ20の斜視図である。感光ドラム21は、長手方向(±Z方向)に延びる例えばアルミニウムの円筒部材と、円筒部材の表面に形成された感光層とを有する。感光ドラム21の長手方向の端部には、画像形成装置本体1の不図示のドラムモータの回転力が伝達される伝達部材100が取り付けられている。伝達部材100は、ユーザがカートリッジ20を画像形成装置本体1に着脱することにより、画像形成装置本体1側の駆動軸2に係合又は係合解除するように構成されている。例えば、カートリッジ20を画像形成装置本体1に装着する場合には、図2中、伝達部材100と駆動軸2とを同軸に揃えながら、+Z方向に移動させて伝達部材100を駆動軸2に係合させる。また、カートリッジ20を画像形成装置本体1から取り外す場合には、図2中、カートリッジ20を−Z方向に移動させて伝達部材100を駆動軸2から係合解除させる。
【0016】
図3は、第1実施形態における成形品の一例である伝達部材100を示す斜視図である。伝達部材100は、円筒形状の胴体部101と、胴体部101の内周面103及び外周面104のうち、内周面103から延びるアーム部102とを有する。カートリッジ20が画像形成装置本体1に装着されたときには伝達部材100のアーム部102が画像形成装置本体1の駆動軸2の不図示の溝部に係合される。また、カートリッジ20が画像形成装置本体1から取り外されたときには伝達部材100のアーム部102が画像形成装置本体1の駆動軸2の不図示の溝部に対して係合解除される。胴体部101の肉厚は、例えば1.5mm程度である。アーム部102の肉厚は、例えば0.9mm程度である。
【0017】
第1実施形態における伝達部材100は、インサート成形により製造される。伝達部材100は、アーム部102の剛性及びクリープ強度を確保するため、補強としてインサート部材の一例である金属部材120と、金属部材120と一体の樹脂部材140とで構成された成形品である。金属部材120は、例えばステンレス等の金属板をプレス加工等に加工することにより形成されている。樹脂部材140は、熱可塑性樹脂であり、例えばPOM等のプラスチック材料である。
【0018】
金属部材120は、胴体部101の構成要素であり第1金属部である金属部121と、アーム部102の構成要素であり、金属部121から延びる第2金属部である金属部122とを有している。樹脂部材140は、胴体部101の構成要素であり、金属部121と一体の第1樹脂部である樹脂部141と、アーム部102の構成要素であり、金属部122と一体の第2樹脂部である樹脂部142とを有している。このように、金属部材120は、胴体部101とアーム部102とに跨って配置されている。金属部122は、アーム部102の形状に倣った形状となっている。
【0019】
図4は、第1実施形態における伝達部材100を製造する製造装置を示す説明図である。図4に示す製造装置50は、フープ成形を行う装置であり、アンコイラ60、プレス機70、射出成形機80、及び切断機90を有する。
【0020】
アンコイラ60は、ロール状に巻き取られた金属板であるフープ材41を繰り出す機能を有している。アンコイラ60より繰り出されたプレス加工前のフープ材41は、プレス機70に供給される。
【0021】
プレス機70は、プレス順送金型71を有しており、不図示の材料フィーダーによりプレス加工前のフープ材41をプレス順送金型71に供給する。プレス順送金型71でプレス加工を行い、不図示の繰出装置によりプレス加工後のフープ材42を順次繰り出す。フープ材42は、射出成形機80に供給される。
【0022】
図5は、プレス加工後のフープ材42の一部を示す部分斜視図である。図5に示すように、プレス加工後のフープ材42は、伝達部材100の構成要素となるインサート部材である金属部材120と、金属部材120を片持ち状態で支持する支持部150とを含んでいる。即ち、金属部材120と支持部150とは、金属板で一体化されている。なお、金属部材120と支持部150とは、射出成形後の工程において切断機90(図4)により、図5の破線Lに沿って切断される。なお、支持部150の一部が伝達部材100に残るように切断してもよい。
【0023】
射出成形機80は、図4に示すように、複数の成形型として金型81,82を有するインサート成形型800を備えている。第1成形型である金型81は、可動側の成形型であり、第2成形型である金型82は、固定側の成形型である。また、射出成形機80は、不図示の金型温調機を有している。金型81,82は、不図示の流路を有しており、不図示の金型温調機から供給される液体等の流体が不図示の流路を通過することにより一定温度に保温されている。
【0024】
図6は、第1実施形態に係るインサート成形による伝達部材100の製造工程を説明するためのフローチャートである。型開きされている金型81,82の間にフープ材42を搬送して、フープ材42の金属部材120を、型開きされている金型81,82のうちの一方、第1実施形態では金型81に設置する(S1:第1工程、設置工程)。
【0025】
図7(a)は、金型81,82を型締めした状態を示す射出成形機80の模式図である。図7(a)に示すように、金型81,82を型締めすることにより、金型81,82の間に、金属部材120が配置されたキャビティRAを形成する(S2:第2工程、型締め工程)。キャビティRAは、金型81,82を型締めすることにより金型81,82間に形成される空間であり、成形しようとする伝達部材100の形状に対応した形状となっている。キャビティRAは、胴体部101を成形するための第1空間である空間R1と、空間R1に連通し、アーム部102を成形するための第2空間である空間R2とを含んでいる。金型81,82を型締めすることにより、金属部材120を片持ち状態で支持した支持部150が金型81,82に挟まれて固定される。金属部材120は、金型81,82に挟まれて固定された支持部150に片持ち支持された状態で、空間R1と空間R2とに跨って配置される。
【0026】
図7(b)は、キャビティRAに溶融樹脂Mを射出している状態を示す射出成形機80の模式図である。図7(b)に示すように、可塑化シリンダ83から溶融樹脂Mを射出し、スプルー84及びゲート86を通じて溶融樹脂MをキャビティRAに充填する(S3:第3工程、射出工程)。ゲート86は、キャビティRAの空間R1につながっており、射出された溶融樹脂Mは、空間R1を通じて空間R2に流動する。なお、ゲート86の位置及び数は、金属部材120の裏表面に対して充填バランスが揃うように考慮して定めればよい。
【0027】
金型81,82のキャビティRA内で溶融樹脂Mを冷却固化させた後、金型81,82を型開きして、不図示のエジェクタピンにより成形品を取り出す(S4:第4工程、型開き工程)。以上のように、射出成形機80により伝達部材100のインサート成形が行われる。
【0028】
最後に、樹脂部材140でモールドされた金属部材120が支持部150につながった状態の成形加工後のフープ材43を不図示の繰出装置により射出成形機80から排出して、切断機90に搬送する。切断機90は、切断型91を有しており、切断型91によってフープ材43から伝達部材100を切り離す。これにより、図3に示す成形品である伝達部材100が得られる。
【0029】
ここで、インサート部材である金属部材120は、図5に示すように、支持部150から延出方向に延びて形成されたアーム状の本体部120Aを有する。本体部120Aは、プレス加工により複数の屈曲部126,128,130で折り曲げられている。本体部120Aの延出方向の基端120Bが支持部150に連結された固定端であり、本体部120Aの延出方向の先端120Cが自由端である。そして、本体部120Aの基端120Bから先端120Cに向かって順に、屈曲部126、屈曲部128、屈曲部130が配置されていることになる。これら複数の屈曲部126,128,130は折り曲げ加工により形成されるため、金属部材120、つまり屈曲部126,128,130には、加工ばらつきが生じる。特に、第1実施形態では、金属部材120、つまり本体部120Aが、支持部150に片持ち状態で支持される。そのため、屈曲部126の加工ばらつきにより、金属部材120、つまり本体部120Aの延出方向の先端120Cの位置のばらつきが大きくなる傾向にある。
【0030】
なお、支持部150に最も近い屈曲部126と、屈曲部126の次に支持部150に近い屈曲部128は、成形品である伝達部材100の胴体部101、即ち金属部121の構成要素である。屈曲部130は、胴体部101から延びるアーム部102、即ち金属部122の構成要素である。即ち、金属部121及び金属部122の各々は、少なくとも1つの屈曲部を有することになる。
【0031】
第1実施形態では、上述したステップS1の第1工程において、加工ばらつきのある金属部材120が金型81に容易に設置できるように構成したものである。以下、金属部材120及び金型81について詳細に説明する。
【0032】
まず、金属部材120について説明する。金属部材120は、本体部120Aから突出する凸部124を有する。ここで、金属部材120は、上述したように、胴体部101の構成要素となる金属部121と、アーム部102の構成要素となる金属部122とで構成されている。胴体部101の構成要素となる金属部121は、本体部120Aの一部である基部123を有している。よって、金属部121は、基部123に連結された凸部124を有している。つまり、凸部124は、胴体部101の構成要素となる。凸部124は、基部123から突出して配置されている。
【0033】
基部123は、屈曲部126,128、連結部125、及び平板部127を有する。連結部125は、支持部150と屈曲部126との間に配置され、支持部150と屈曲部126とを連結する平板状の金属板である。平板部127は、連結部125とは反対側に屈曲部126から延びる平板状の金属板であり、屈曲部126と屈曲部128との間に配置されている。凸部124は、屈曲部126と屈曲部128との間の平板部127に突出して設けられた平板状の金属板である。凸部124は、平板部127の端から平板部127に対して水平に突出している。凸部124は、幅を例えば2mm程度とし、平板部127からの突出量を例えば2mm程度としている。
【0034】
平板部127は、L字のクランク形状に形成された平板状の金属板であり、屈曲部126から延びる第1延出部である延出部127Aと、延出部127Aに対して交差する方向に延びる第2延出部である延出部127Bとを有している。即ち、延出部127Bは、延出部127Aに対して水平に延びる金属板である。第1実施形態では、凸部124は、延出部127Aの延長上に設けられている。なお、金属部122は、屈曲部128の側から金属部材120の先端側に向かって順に配置された、ストレート部129、屈曲部130及びストレート部131を有している。
【0035】
次に、金型81について説明する。図8(a)は、金型81に金属部材120を設置した状態を示す斜視図、図8(b)は、図8(a)のVIIIB−VIIIB線に沿う金型81及び金属部材120の断面図である。金型81は、金型82と共に形成するキャビティRAの一部である溝部RA1を有する。換言すると、金型81は、溝部RA1を規定する壁面810を有する。溝部RA1は、胴体部101の一部及びアーム部102の一部に対応した形状の空間である。なお、図示は省略するが、金型82も溝部を有しており、金型81,82を型締めしたときに、金型81の溝部RA1と、金型82の不図示の溝部とでキャビティRAが形成される。
【0036】
壁面810は、胴体部101に対応した部分である壁面811と、アーム部102に対応した部分である壁面812とを有する。壁面811は、円筒形状の胴体部101の内周面103を形成するための側壁面821と、胴体部101の外周面104を形成するための側壁面822と、を有する。側壁面821は、主面830と、案内面であるテーパ面831と、テーパ面831に隣接する当接面であるストレート面832と、を有する。テーパ面831及びストレート面832は、主面830に対して側壁面822側に突出している。テーパ面831は、主面830及びストレート面832に対して傾斜した面である。テーパ面831及びストレート面832の幅は、凸部124の幅と同程度、例えば2mm程度としている。
【0037】
テーパ面831の傾斜角度は、型耐久性や金属部材120の加工ばらつきによって生じる位置ずれ量などを考慮して設定すればよい。具体的には、テーパ面831の傾斜角度は、凸部124を効果的に案内することができる30度以下が好ましく、例えば20度程度がより好ましい。
【0038】
次に、ステップS1の第1工程である設置工程について詳細に説明する。図9(a)〜図9(c)は、第1実施形態に係る伝達部材100の製造方法の第1工程を説明するための模式図である。金型81に対して金属部材120をZ1方向に下降させて、金属部材120を金型81の溝部RA1に設置する。図9(a)は、金型81に対して金属部材120を下降させる前の状態を示している。図9(a)に示すように、Z1方向でテーパ面831と凸部124とを対向させている。図9(a)の状態から金属部材120をZ1方向に下降させると、図9(b)に示すように、金属部材120の延出方向の基端に近い部分に設けた凸部124が最初に溝部RA1に挿入されることになる。そして、金属部材120のZ1方向への移動を引き続き行うと、金属部材120の凸部124の先端が、金型81のテーパ面831に接触する。
【0039】
射出成形機80に搬送される、ステップS1の前の金属部材120の屈曲部126の屈曲角度θは、公差を考慮して90度以上93度以下であるのが好ましい。例えばプレス機70(図4)では、屈曲角度θを中央値91.5度として屈曲部126の曲げ加工を行えばよい。そして、プレス機70における曲げ加工のばらつきの公差が例えば±1度程度であれば、屈曲部126の屈曲角度θは、90度以上93度以下の範囲内に収まる。なお、屈曲部128の屈曲角度は、例えば75度程度、屈曲部130の屈曲角度は、例えば34度程度である。
【0040】
図9(b)の状態から金属部材120を更にZ1方向に下降させると、テーパ面831により凸部124がストレート面832に向かって案内される。このとき、金属部材120の基部123、より具体的には屈曲部126は、凸部124がテーパ面831に案内されながら変形する。つまり、屈曲部126における加工のばらつきがキャンセルされるように屈曲部126が変形する。なお、このとき連結部125も歪むことがある。金属部121の基部123、特に屈曲部126が、加工ばらつきをキャンセルするように変形することで、金属部材120、特に先端120C(図5)の位置のばらつきが小さくなり、金属部材120が溝部RA1において所定の位置に案内されることになる。
【0041】
そして、金属部材120を更にZ1方向に下降させると、図9(c)に示すように、凸部124の一部である面124Aがストレート面832に摺接して金属部材120の溝部RA1への設置が完了する。
【0042】
金属部材120の基部123、具体的には屈曲部126又は連結部125が変形しているとバネ力が生じ、金属部材120を溝部RA1に設置後は、凸部124の面124Aがストレート面832に押し付けられた状態で当接することになる。面124Aは、屈曲部126の優角側に配置されている面である。これにより、金属部材120を溝部RA1に設置後においても、溝部RA1内での金属部材120の位置ずれが防止される。
【0043】
この状態でステップS2において金型81,82の型締めが行われる。次いで、ステップS3において溶融樹脂Mを射出してキャビティRAに充填し、溶融樹脂Mを固化することにより、金属部材120が変形した状態で成形が完了し、成形品としての伝達部材100が得られる。ステップS3において、金属部材120は片持ち梁状に支持されているが、凸部124がストレート面832にばね力により付勢されて当接している。したがって、キャビティRAに充填される溶融樹脂Mの充填圧力が基部123に作用しても溝部RA1に対する金属部材120の位置ずれを防止することができる。
【0044】
このように成形された伝達部材100では、図3に示すように、胴体部101の内周面103において、凸部124の一部である面124Aの一部又は全部が露出している。この露出した部分を露出部151とする。そして、テーパ面831に対応した形状の、露出部151に隣接するテーパ面152が形成される。露出部151は、ストレート面832が凸部124と接触することにより樹脂が被覆されなかった部分であるため、ストレート面832に対応した形状となっている。そして、アーム部102は、金属部材120の金属部122に倣った形状の、基端側から先端側に向かって順に、ストレート部105、屈曲部106及びストレート部107を有する。
【0045】
以上、第1実施形態では、ステップS1において、凸部124がテーパ面831に沿ってストレート面832に案内されることで、金属部材120、特に金属部122の溝部RA1への設置不良を防止することができる。また、金属部122が溝部RA1内で片寄った状態で溝部RA1に設置されるのを防止することができる。そして、金型81のテーパ面831により、別途、案内部材を金型81の外部に設ける必要がなく、溝部RA1に金属部材120を容易に設置することができる。よって、金型81にテーパ面831やストレート面832を設ける簡単な構成で、所望の形状の伝達部材100を得ることができ、伝達部材100の製造の歩留り、つまり伝達部材100の生産性が向上する。
【0046】
また、テーパ面831に凸部124を接触させて溝部RA1に案内することで、基部123、具体的には屈曲部126を金属部材120の加工のばらつきをキャンセルするように変形させることができる。特に、金属部材120が支持部150に片持ち状態で支持されているので、アーム部102の構成要素となる金属部122を溝部RA1に位置決めした状態で容易に設置することができる。
【0047】
また、第1実施形態では、金属部材120の本体部120Aが複数の屈曲部126,128,130を有している。屈曲部126と屈曲部128との間の平板部127を、屈曲部126を変形させながら溝部RA1に設置することで、より効果的に金属部122を溝部RA1に位置決めすることができる。
【0048】
また、第1実施形態では、可動側の金型81がテーパ面831等の形状を有しているため、可動側の金型81に、より多くの離形抵抗を持たせることができる。これにより、固定側の金型82に成形品の食いつきが発生するのを防止でき、離型不良を防止することができる。
【0049】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態に係る成形品及び成形品の製造方法について説明する。図10は、第2実施形態に係る成形品の一例である伝達部材の斜視図である。伝達部材100Aは、第1実施形態と同様、インサート成形により製造される。したがって、第2実施形態では、第1実施形態と異なる点についてのみ説明する。図10に示すように、伝達部材100Aは、胴体部101の内周面103から延びる、第1実施形態と同様のアーム部102を、複数、第2実施形態では3つ有している。伝達部材100Aは、上記第1実施形態と同様、図2に示すカートリッジ20の感光ドラム21の長手方向(±Z方向)の端部に配置される。なお、伝達部材100Aにおいては、支持部150Aの一部が残っており、支持部150Aの一部が胴体部101の外周面104から突出しているが、外周面104に沿って支持部150Aを切断加工により除去してもよい。
【0050】
図11(a)は、プレス加工後のフープ材42Aを示す斜視図である。フープ材42Aは、等間隔に配置された3つの金属部材120を有する。フープ材42Aは、支持部本体150Bと、3つの金属部材120の各々に連結された支持片150Cを有している。つまり、支持部本体150B及び複数の支持片150Cからなる支持部150Aにより、複数の金属部材120を片持ち状態で支持している。
【0051】
図11(b)は、金型81Aの溝部RA1に金属部材120が設置された状態を示す模式図である。ここで、金属部材120を金型81Aの溝部RA1に設置する際には、金属部材120の凸部124と、テーパ面831との位置決めが重要である。特に、第2実施形態では、金属部材120が複数あり、金型81Aも複数のテーパ面831を有している。したがって、各金属部材120の凸部124を各テーパ面831に位置決めしなければならない。
【0052】
第2実施形態では、支持部本体150Bには、パイロット孔42Bが形成されている。パイロット孔42Bは、フープ材42Aの短手方向Y1に2つ形成され、フープ材42Aの長手方向X1に等間隔に複数形成されている。各パイロット孔42Bは、例えばφ4mm程度の貫通孔である。なお、パイロット孔42Bは、射出成形機80のみならず、図4のプレス機70及び切断機90においても位置決め用に利用される。
【0053】
金型81Aには、パイロットピン45が設定されており、パイロット孔42Bに挿入されることで、金型81Aの各テーパ面831に対する各金属部材120の凸部124の位置決めがなされる。
【0054】
具体的に説明すると、図6のステップS1の前に、フープ材42Aが金型81Aの上方に不図示の搬送装置等により搬送される。フープ材42Aの搬送完了後、図6のステップS1においてフープ材42Aを金型81Aに向けて下降させる。これにより、各金属部材120の凸部124が各テーパ面831に接触する前に、パイロットピン45がパイロット孔42Bに挿通されて、パイロットピン45により、フープ材42A、即ち各金属部材120が、所定の位置に位置決めされる。これにより、図6に示すステップS1において、より確実に凸部124をテーパ面831に接触させることができる。したがって、金属部材120の溝部RA1への設置不良が発生するのを防止することができる。
【0055】
各金属部材120を溝部RA1へ設置した後、型締めを行い、キャビティに溶融樹脂を充填する。溶融樹脂が固化した後、成形品の取り出しが行われる。図12は、成形加工後のフープ材43Aを示す斜視図である。図12に示すフープ材43Aから成形品である伝達部材100Aを、図4の切断機90により切り離すことで、図10に示す伝達部材100Aが得られる。
【0056】
[第3実施形態]
次に、第3実施形態に係る成形品の一例である伝達部材について説明する。図13(a)は、第3実施形態に係る成形品の一例である伝達部材100Eの斜視図である。図13(b)は、伝達部材100Eの半径方向DRに直交する軸線C0の方向に沿った伝達部材100Eの断面図である。図14は、第3実施形態に係る伝達部材における金属部材の斜視図である。図14において、樹脂部材の図示を省略している。図15(a)は、伝達部材100Eを−Z方向に見た平面図、図15(b)は、伝達部材100Eの半径方向DRに沿った伝達部材100Eの断面図である。伝達部材100Eは、上記第1及び第2実施形態と同様、図2に示すカートリッジ20の感光ドラム21の長手方向(±Z方向)の端部に配置される。伝達部材100Eは、第1及び第2実施形態と同様、インサート成形により製造される。なお、金型を用いた成形品の製造方法は、上記第1及び第2実施形態と同様であるため、製造方法及び金型の説明は省略する。
【0057】
伝達部材100Eは、図13(a)及び図13(b)に示すように、円筒形状の胴体部101Eを有する。なお、図13(a)に示す軸線C0は、円筒形状の胴体部101Eの中心を通る仮想線である。また、伝達部材100Eは、図15(a)及び図15(b)に示すように、胴体部101Eの内周面103Eから延びるアーム部102Eを複数有する。第3実施形態では、伝達部材100Eは、アーム部102Eを3つ有する。3つのアーム部102Eは、円周方向DCに等間隔(120度間隔)に配置されている。
【0058】
胴体部101Eの外周面104Eには、図13(a)及び図13(b)に示すように、感光ドラム21の内周面に圧入される圧入部108Eと、圧入部108Eに感光ドラム21の内周面を案内するガイド部109Eとが設けられている。ガイド部109Eは、圧入部108Eに対して−Z方向側に配置されている。
【0059】
圧入部108Eは、感光ドラム21の内側に圧入されることで、不図示のカップリング部材を感光ドラム21に固定する。具体的には、感光ドラム21の内周面と圧入部108Eの外周面とは締り嵌めの関係となるような寸法としている。なお、カシメにより締結力を高める構成や、感光ドラム21の内周面と圧入部108Eの外周面とを接着で固定する場合には、締り嵌めの関係でなくてもよい。
【0060】
また、胴体部101Eの外周面104Eには、感光ドラム21に圧入部108Eを圧入した際にストッパとなる鍔部110Eが設けられている。鍔部110Eは、圧入部108Eに対して+Z方向側に配置されている。
【0061】
アーム部102Eは、図15(a)に示すように、胴体部101Eの内周面103Eから延びるアーム本体116Eと、アーム本体116Eの先端に設けられた爪部117Eとを有する。アーム本体116Eが半径方向DRに弾性変形することで、爪部117Eが半径方向DRに移動可能である。
【0062】
第3実施形態では、胴体部101E及びアーム部102Eに跨って金属部材120Eが配置されている。金属部材120Eは樹脂部材140Eと一体形成されている。図14に示すように金属部材120Eは、アーム状の本体部120AEを有する。本体部120AEは、プレス加工により複数の屈曲部126E,128E,130E,132E,134Eで折り曲げられている。ここで、金属部材120Eは、胴体部101Eの構成要素であり第1金属部である金属部121Eと、アーム部102Eの構成要素であり、金属部121Eから延びる第2金属部である金属部122Eとで構成されている。図15(b)に示すように樹脂部材140Eは、胴体部101Eの構成要素であり、金属部121Eと一体の第1樹脂部である樹脂部141Eと、アーム部102Eの構成要素であり、金属部122Eと一体の第2樹脂部である樹脂部142Eとで構成されている。
【0063】
図14に示すように、インサート部材である金属部材120Eは、本体部120AEから突出する凸部124Eを有する。胴体部101Eの構成要素となる金属部121Eは、本体部120AEの一部である基部123Eを有している。よって、金属部121Eは、基部123Eに連結された凸部124Eを有している。つまり、凸部124Eは、胴体部101Eの構成要素となる。凸部124Eは、基部123Eから突出して配置されている。
【0064】
基部123Eは、屈曲部126E,128E,130E、連結部125E、及び平板部127Eを有する。連結部125Eは、支持部150Eと屈曲部126Eとの間に配置され、支持部150Eと屈曲部126Eとを連結する平板状の金属板である。平板部127Eは、連結部125Eとは反対側に屈曲部126Eから延びる平板状の金属板であり、屈曲部126Eと屈曲部128Eとの間に配置されている。凸部124Eは、屈曲部126Eと屈曲部128Eとの間の平板部127Eに突出して設けられた平板状の金属板である。凸部124Eは、平板部127Eの端から平板部127Eに対して水平に突出している。図13(b)に示すように、胴体部101Eの内周面103Eにおいて、凸部124Eの一部である面の一部又は全部が露出している。この露出した部分を露出部151Eとする。露出部151Eは、金型のストレート面が凸部124Eと接触することにより樹脂が被覆されなかった部分であるため、金型のストレート面に対応した形状となっている。
【0065】
図16(a)及び図16(b)は、伝達部材100Eを駆動軸2に取り付ける際の説明図である。駆動軸2の外周面2Aには、爪部117Eに対応して配置された3つの溝部2Bが設けられている。各溝部2Bは、±Z方向に延びている。各アーム部102Eの爪部117Eは、駆動軸2の溝部2Bに嵌る形状に形成され、溝部2Bに係合、即ち嵌合することによって駆動軸2からの回転力を受ける構成となっている。
【0066】
図2に示すカートリッジ20を画像形成装置本体1に装着するときには、ユーザが駆動軸2と図16(a)に示す伝達部材100Eとが同軸となるようにカートリッジ20を配置して、カートリッジ20を+Z方向に移動させる。これにより、図16(a)に示すように、各アーム部102Eのアーム本体116Eが半径方向DRの外側に弾性変形して、爪部117Eが駆動軸2の外周面2Aに当接する。この状態で駆動軸2が回転すると溝部2Bが爪部117Eに対向したときに、図16(b)に示すように、弾性変形していたアーム本体116Eが半径方向DRの内側に復元して爪部117Eが溝部2Bに嵌合する。なお、カートリッジ20を画像形成装置本体1から取り外すときには、ユーザが−Z方向にカートリッジ20を移動させることで伝達部材100Eが−Z方向に移動する。これにより各アーム部102Eのアーム本体116Eが半径方向DRの外側に弾性変形して爪部117Eが溝部2Bから係合解除される。
【0067】
以上、第3実施形態の伝達部材100Eによれば、金属部材120Eと樹脂部材140Eとが一体成形されているので、伝達部材100Eにおける各アーム部102Eの剛性及びクリープ強度を高めることができる。
【0068】
なお、本発明は、以上説明した実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想内で多くの変形が可能である。また、実施形態に記載された効果は、本発明から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、本発明による効果は、実施形態に記載されたものに限定されない。
【0069】
上述した実施形態では、胴体部が円筒形状の場合について説明したが、この形状に限定するものではない。例えば胴体部が平板形状であってもよい。
【0070】
また、上述した実施形態では、ステップS1において、可動型の成形型の溝部に金属部材を設置する場合について説明したが、これに限定するものではなく、固定側の成形型の不図示の溝部に金属部材を設置する場合についても本願発明は適用可能である。
【0071】
また、上述した実施形態では、成形型の数が2つの場合について説明したが、これに限定するものではなく、3つ以上の成形型でキャビティを形成する場合についても本願発明は適用可能である。
【符号の説明】
【0072】
10…画像形成装置、81…金型(成形型)、100…伝達部材(成形品)、101…胴体部、102…アーム部、103…内周面、120…金属部材、123…基部、124…凸部、821…側壁面(胴体部に対応した部分)、831…テーパ面(案内面)、832…ストレート面(当接面)、M…溶融樹脂、RA…キャビティ、RA1…溝部
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