(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記斜送手段は、前記幅方向において前記当接面に近づく程、前記シート搬送方向の上流に向かうように前記幅方向に対して傾斜した軸線を中心に回転可能なローラ部材を有する、
ことを特徴とする、請求項1乃至6のいずれか1項に記載のシート搬送装置。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら、本開示に係る画像形成装置について説明する。画像形成装置は、プリンタ、複写機、ファクシミリ、及び複合機を含み、外部PCから入力された画像情報や原稿から読取った画像情報に基づいて、記録媒体として用いられるシートに画像を形成する。
【0011】
(画像形成装置の概要)
本開示に係るシート搬送装置は、
図1に示す電子写真方式のフルカラーレーザープリンタである画像形成装置1の一部を構成している。画像形成装置1は、一般事務用途以外の印刷に対応可能なPOD機であり、記録媒体として用紙及び封筒等の紙、光沢紙、オーバーヘッドプロジェクタ用シート(OHT)等のプラスチックフィルム、並びに布等の様々なシートを用いることができる。画像形成装置1の装置本体1Aには、シートSを収納する給送カセット51と、給送カセット51から給送されたシートSに画像を形成する画像形成エンジン10と、が収容されている。画像形成手段の一例である画像形成エンジン10は、イエロー、マゼンタ、シアン、及びブラックのトナー像を形成する4つの画像形成部PY,PM,PC,PKと、中間転写体である中間転写ベルト506と、を備えたタンデム型中間転写方式である。画像形成部PY〜PKは、それぞれ感光体である感光ドラム1Y,1M,1C,1Kを有する電子写真ユニットである。
【0012】
画像形成部PY〜PKは、現像に用いるトナーの色が異なる以外は同様に構成されるため、イエローの画像形成部PYを例に画像形成部の構成及びトナー像の形成プロセス(画像形成動作)について説明する。画像形成部PYは、感光ドラム1Yの他に、露光装置511、現像装置510、及びドラムクリーナ509を有する。感光ドラム1Yは、外周部に感光層を有するドラム状の感光体であり、中間転写ベルト506の回転方向(矢印R2)に沿った方向(矢印R1)に回転する。感光ドラム1Yの表面は、帯電ローラ等の帯電手段から電荷を供給されることで帯電する。露光装置511は、画像情報に応じて変調されたレーザ光を発し、反射装置512を含む光学系によって感光ドラム1Yを走査することで、感光ドラム1Yの表面に静電潜像を描き込む。現像装置510は、トナーを含む現像剤を収容し、感光ドラム1Yにトナーを供給することで静電潜像をトナー像に現像する。感光ドラム1Yに形成されたトナー像は、一次転写装置である一次転写ローラ507と中間転写ベルト506との間のニップ部である一次転写部において中間転写ベルト506に一次転写される。転写後に感光ドラム1Yに残留した残トナーは、ドラムクリーナ509によって除去される。
【0013】
中間転写ベルト506は、駆動ローラ504、従動ローラ505、二次転写内ローラ503、及び一次転写ローラ507に巻き掛けられ、駆動ローラ504により図中時計回り方向(矢印R2)に回転駆動される。上述の画像形成動作は各画像形成部PY〜PKにおいて並行して進められ、4色のトナー像が互いに重なるように多重転写されることで、中間転写ベルト506にフルカラーのトナー像が形成される。このトナー像は、中間転写ベルト506に担持されて二次転写部に搬送される。二次転写部は、転写手段としての二次転写ローラ56と二次転写内ローラ503の間のニップ部として構成され、二次転写ローラ56にトナーの帯電極性とは逆極性のバイアス電圧が印加されることでトナー像がシートSに二次転写される。転写後に中間転写ベルト506に残留した残トナーは、ベルトクリーナによって除去される。
【0014】
トナー像を転写されたシートSは、定着前搬送部57により定着ユニット58へと受け渡される。定着ユニット58は、シートSを挟持して搬送する定着ローラ対と、ハロゲンヒータ等の熱源とを有し、シートSに担持されたトナー像に圧力及び熱を加える。これにより、トナー粒子が溶融・固着して、シートSに定着した定着画像が得られる。
【0015】
次に、給送カセット51に収容されたシートSを給送し、画像が形成されたシートSを機体外部に排出するシート搬送系の構成及び動作について説明する。シート搬送系は、大まかにシート給送部54、レジストレーション部50、分岐搬送部59、反転搬送部501、及び両面搬送部502を含む。
【0016】
給送カセット51は装置本体1Aに対して引抜き可能に装着され、昇降可能な昇降プレート52に積載されたシートSは、給送ユニット53によって1枚ずつ給送される。シート給送手段である給送ユニット53としては、吸引ファンによってベルト部材にシートSを吸着して搬送するベルト方式(
図1参照)や、ローラ又はパッドを用いた摩擦分離方式が挙げられる。給送ユニット53から送り出されたシートSは、搬送ローラ対54bによって給送パス54aに沿って搬送され、レジストレーション部50に受け渡される。
【0017】
レジストレーション部50は、プレレジ搬送部20、斜行補正部30、及びレジストレーションローラ対(以下、レジローラとする)7を備え、シートSの斜行を補正してシートSを二次転写部に向けて搬送する。このとき、レジローラ7は、レジストレーションセンサ8の検知信号に基づいて、画像形成部PY〜PKによる画像形成動作の進行度に合わせたタイミングでシートSを二次転写部に送り込む。二次転写部においてトナー像を転写され、定着ユニット58によって画像の定着が行われたシートSは、シートSの搬送経路を切換可能な切換部材を有する分岐搬送部59に搬送される。シートSに対する画像形成が完了している場合には、シートSは排出ローラ対によって装置本体1Aの外方に配置された排出トレイ500に排出される。シートSの裏面に画像を形成する場合、シートSは反転搬送部501を介して両面搬送部502に受け渡される。反転搬送部501は、正転及び逆転可能な反転ローラ対を有し、シートSをスイッチバックさせて両面搬送部502に受け渡す。両面搬送部502は、給送パス54aに合流する再搬送パス54cを介してシートSをプレレジ搬送部20へ向けて搬送する。そして、シートSは裏面に画像を形成された後、排出トレイ500へと排出される。
【0018】
なお、上記構成は画像形成装置の一例であり、例えば、電子写真方式に代えてインクジェット方式の画像形成手段を備えた画像形成装置であってもよい。また、画像形成装置は、画像形成手段を備えた装置本体の他にオプションフィーダやシート処理装置等の付属機器を備えるものがあるが、以下で説明するシート搬送装置の構成はこのような付属機器におけるシートの搬送に用いてもよい。
【0019】
(レジストレーション部)
以下、斜行補正部30を含むレジストレーション部50の構成について説明する。
図2に示すように、シート搬送装置の一例であるレジストレーション部50は、プレレジ搬送部20と、プレレジ搬送部20の下流に配置された斜行補正部30と、斜行補正部30の下流に配置されたレジローラ7と、を備える。
【0020】
プレレジ搬送部20は、少なくとも1組の搬送ローラ対21を有し、各搬送ローラ対21はシート搬送方向DxにシートSを送り出す。プレレジ搬送部20は、シートSをセンター基準方式で、即ちシート搬送方向Dxに直交する幅方向Dyに関してシートSの中心がシート搬送路の中央位置(以下、搬送中心とする)L0に揃うようにシートSを搬送する。搬送中心L0の位置は、図示した構成例の場合、搬送ローラ対21がシートSを挟持可能な領域、つまりローラ同士の接触領域の幅方向Dyにおける中央位置である。
【0021】
最下流の搬送ローラ対21の近傍かつ搬送中心L0の近傍には、シートSを検知するための検知手段として、プレレジセンサSaが配置されている。プレレジセンサSaは、例えば発光部及び受光部を有する反射型の光電センサを用いることができ、その場合は検知位置に到達したシートSによって発光部が発した光が反射され、受光部が反射光を検出することでシートSの通過タイミングが検知される。
【0022】
斜行補正部30は、基準部材300と及び斜送ユニット32を備えたサイドレジストレーション方式のシート整合装置である。即ち、斜行補正部30は、シート搬送方向に沿って延びる基準面301を有する基準部材300にシートSの側端、つまりシート搬送方向Dxに直交する幅方向Dyの端部を当接させる。これにより、シートSの側端が基準面301に倣うようにして、シートSの斜行が補正される。ただし、シート搬送方向Dxとは、斜行補正部30によってシートSが基準部材に向かって幅寄せされる前のシートの搬送方向であり、本実施形態ではプレレジ搬送部20の搬送ローラ対21によるシートSの搬送方向を指すものとする。
【0023】
基準部材300は、シート搬送方向Dxに延びる基準面301を有し、幅方向Dyに関してシート搬送路のいずれか一方に配置される。基準面301は、シート搬送方向に沿って延び、シートの側端に当接可能な当接面に相当する。斜送ユニット32は、幅方向に関して、搬送中心L0に対して基準部材300と同じ側に配置されている。斜送ユニット32は、少なくとも1つの斜送ローラ321,322,323を有し、図示した例では3つ配置されている。
【0024】
斜送ローラ321〜323は、いずれも幅方向Dyに対して傾斜した軸線を中心に回転するローラ部材である。即ち、各斜送ローラ321〜323は、シートSに対する接触部における接線方向が、シート搬送方向Dxに対してαの角度で傾斜した方向となるように、互いに平行に配置されている。従って、斜送ユニット32は、シートSに当接して回転することにより、シート搬送方向Dxの下流に向かう程、幅方向Dyにおいて基準部材300の基準面301に近付くように傾斜した方向の搬送力をシートSに付与する斜送手段として機能する。
【0025】
レジローラ7は、シートSを挟持した状態で幅方向Dyにスライド可能であり、側端が基準部材300の基準面301に当接していたシートSを二次転写部において転写される画像の位置に合わせて幅方向Dyに移動させる。なお、基準部材300及び斜送ユニット32も幅方向Dyに移動可能であり、搬送されるシートSの幅に合わせて予め位置決めされる。また、シートとシートに形成する画像との位置調整を行う方法はこれに限らず、例えば基準部材300及びレジローラ7の幅方向位置を固定し、画像形成部PY〜PKが形成するトナー像の主走査方向位置を調整する構成としてもよい。
【0026】
レジローラ7の上流側の近傍かつ搬送中心L0の近傍には、シートSを検知可能な検知手段として、レジ前センサSbが配置されている。レジ前センサSbは、プレレジセンサSaと同様、反射型光電センサ等の既知のセンサを用いることができる。
【0027】
プレレジ搬送部20の各搬送ローラ対21及びレジローラ7は、いずれもシートをシート搬送方向に搬送可能なシート搬送手段の一例である。この内、搬送ローラ対21は、第1斜送手段及び第2斜送手段にシートを受け渡す第1搬送手段に相当し、レジローラ7は第1斜送手段及び第2斜送手段によって斜送されたシートを受け取って搬送する第2搬送手段に相当する。
【0028】
(プレレジ搬送部)
以下、プレレジ搬送部20及び斜行補正部の構成について説明し、その後、レジストレーション部50によるシート搬送動作について説明する。まず、プレレジ搬送部20の構成について、
図3及び
図4を用いて詳しく説明する。
図3(a)、(b)はプレレジ搬送部20の断面構成を示す概略図であり、
図4は搬送ローラ対21の駆動構成を示す斜視図である。
【0029】
図3(a)、(b)に示すように、プレレジ搬送部20の各搬送ローラ対21は、駆動力が入力される駆動ローラ23と、駆動ローラ23に従動回転する従動ローラ24とで構成される。少なくとも一部の搬送ローラ対21は、ニップ部にシートSを挟持可能な加圧状態(
図3(a))と、ニップ部が開放された離間状態(
図3(b))とに切換可能である。なお、全ての搬送ローラ対21を加圧状態と離間状態とに切換可能とするかどうかは、画像形成装置がサポートするシートSの最大サイズに応じて決定すればよい。即ち、斜送ユニット32による幅寄せ動作が開始された場合に、シートの後端部がニップ部を通過していない全ての搬送ローラ対21を離間可能な構成であればよい。これにより、搬送ローラ対21がシートSの幅寄せを妨げることを防ぐと共に、シートSに対する摩擦やストレスによってシートSのダメージが生じることを避けることが可能となる。
【0030】
プレレジ搬送部20には、搬送ローラ対21の加圧状態と離間状態とを切換可能な切換手段として、偏芯コロ103を有するカム機構100が設けられている。偏芯コロ103は、駆動源としてのプレレジ加圧モータMrによってギヤ105,106を介して回転駆動され、外周部のカム面に当接するアーム部材101を揺動させる。アーム部材101は、揺動軸102を中心にステー部材18に対して揺動可能に支持され、揺動軸102の一方側で偏芯コロ103に当接し、他方側で従動ローラ24の回転軸である従動軸26を支持している。アーム部材101の揺動により、従動ローラ24はガイド部材201,202によって形成されるシート搬送路に出没する。従って、ステッピングモータであるプレレジ加圧モータMrを介して偏芯コロ103の回転角を制御することにより、従動ローラ24が駆動ローラ23から離間する離間状態と従動ローラ24が駆動ローラ23に圧接する加圧状態とを切換可能な構成である。
【0031】
図4に示すように、各駆動ローラ23は、駆動ローラ軸25にゴムローラ23aが取付けられて構成され、ベルト伝動機構152を介して駆動源であるプレレジ駆動モータMpに接続されている。各プレレジ駆動モータMpはステッピングモータであり、駆動の開始及び停止のタイミング及び駆動ローラ23の駆動速度(ゴムローラ23aの周速)を変更可能である。
【0032】
(斜行補正部)
続いて、斜行補正部30の構成について、
図5〜
図7を用いて詳しく説明する。
図5(a)は斜行補正部30を上方から視た概略図であり、
図5(b)は基準部材300をシート搬送方向Dxから視た断面構成を示す模式図である。
図6(a)は斜送ユニットの加圧構成を示す斜視図であり、
図6(b)はその側面図である。
図7(a)、(b)は、斜送ユニットの加圧状態及び解除状態を表す模式図である。
【0033】
図5(a)に示すように、斜送ローラ321〜323は、ユニバーサルジョイント32cを用いて、上記の角度αに合わせて傾斜した状態で回転軸線を固定されている。各斜送ローラ321〜323は、ユニバーサルジョイント32c、ベルト32a及びプーリ32bを含む伝動機構を介して駆動手段である斜送駆動モータMsに連結されている。斜送駆動モータMsはステッピングモータであり、駆動速度や駆動開始・停止のタイミングを制御可能である。
【0034】
図5(b)に示すように、基準部材300は、シートSの側端が突き当たる基準面301、シートSの上面に対向する上ガイド面302、及びシートSの下面に対向する下ガイド面303からなる凹形状の断面を有する。基準部材300は、アルミのダイキャストで構成され、基準面301を切削加工により高精度化し、さらに基準面301にPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)無電解ニッケル加工処理を施したものを好適に用いることができる。こうすることで、平面性が高く、かつすべり性の高い(シートSに対する摩擦抵抗の小さい)基準面301が得られ、シートSの斜行補正の精度向上を図ることができる。
【0035】
図6及び
図7に示すように、斜行補正部30には、斜送ローラ320とこれに対向する従動ローラ330とのニップ部(挟持部)にシートSを挟持して搬送可能な加圧状態と、加圧状態が解除される解除状態とを切換可能な加圧機構33が配置される。なお、解除状態とは、ニップ部が開放されている状態に限らず、加圧状態に比べて弱い力でローラ同士が接触している場合を含むものとする。また、斜送ユニットの加圧状態とは少なくとも1つの斜送ローラが加圧状態であることを指し、斜送ユニットの解除状態とは全ての斜送ローラが解除状態であることを指すものとする。
【0036】
なお、斜行補正部30には、
図6及び
図7に示す斜送ローラ320が斜送ローラ321〜323のいずれかに置換えられた状態で、複数組の従動ローラ330及び加圧機構33が配置されている。言い換えると、加圧状態と解除状態を切換可能な切換手段としての加圧機構33が、斜送ローラ321〜323のそれぞれに対応して設けられている。また、斜送ユニット32に斜送ローラが追加される場合には、追加される斜送ローラの各々に加圧機構33が配置される。
【0037】
図6(a)、(b)に示すように、加圧機構33はアーム部材332、リンク部材333、加圧ギヤ334、加圧バネ335、及び斜送加圧モータMkを含む。従動ローラ330は、アーム部材332によって従動軸331を中心に回転可能に支持され、アーム部材332の揺動によって斜送ローラ320に対して接近又は離間する方向に移動可能である。本実施形態における従動ローラ330は、幅方向に延びる軸線を中心にシート搬送方向に沿って回転するが、対応する斜送ローラと平行な軸線上に配置する構成としてもよい。アーム部材332は、加圧バネ335及びリンク部材333を介して加圧ギヤ334に連結される。加圧ギヤ334は、駆動源である斜送加圧モータMkの出力軸に連結されている。
【0038】
図7(a)に示すように、加圧状態においては、加圧ギヤ334が図中反時計回り方向に回動し、加圧バネ335に引っ張られたアーム部材332が揺動軸332aを中心に反時計回り方向に揺動する。これにより、従動ローラ330が斜送ローラ320に圧接した状態となる。一方、
図7(b)に示すように、解除状態においては、加圧ギヤ334が図中時計回り方向に回動してリンク部材333を押圧し、リンク部材333がアーム部材332を時計回り方向に揺動させる。これにより、従動ローラ330が斜送ローラ320から離間するか、少なくとも斜送ローラ320に対する当接圧が加圧状態に比べて小さい状態となる。
【0039】
斜送加圧モータMkはステッピングモータであり、加圧ギヤ334の回転角を制御することにより、加圧状態における加圧バネ335の伸び量を変更可能である。即ち、本実施形態に係る加圧機構33は、加圧状態・解除状態の変更、及び加圧状態における加圧力の変更のいずれをも行うことが可能な変更手段として作用する。
【0040】
レジストレーション部50の制御構成について説明する。
図8のブロック図に示すように、レジストレーション部50の動作は、画像形成装置に搭載されるコントローラ600によって制御されている。制御手段の一例であるコントローラ600は、中央処理装置(CPU)601と、記憶手段である書換え可能メモリ(RAM)602及び読取り専用メモリ(ROM)603と、外部機器又はネットワークに対するインターフェース(I/O)604を備える。
【0041】
CPU601は、ユーザインタフェースである操作部412を介して入力された情報や、上述のプレレジセンサSa及びレジ前センサSbからAD変換部605を介して入力される検知信号に基づいて制御を行う。CPU601は、ROM603等に格納されたプログラムを読出して実行し、ドライバ606,607,608,609を介してレジストレーション部50のアクチュエータであるモータ群(Ms,Mp,Mr,Mk)を駆動制御する。これにより、下記の制御方法の各工程を実行可能に構成されている。なお、斜送加圧モータMkは、斜送ローラに対応する数(n)で配置され、CPU601は各斜送ローラに対する従動ローラの加圧の有無及び加圧力の大きさを独立に制御可能である。
【0042】
(レジストレーション部の制御方法)
以下、レジストレーション部50におけるシート搬送動作の制御方法と、シート搬送動作におけるシートの挙動について、
図2、
図10及び
図11を適宜参照しながら
図9のフローチャートに沿って説明する。なお、以下のフローチャートの実行中、各斜送ローラは継続的に回転駆動されているものとする。
【0043】
操作部412を介して画像形成の対象であるシートの坪量、サイズ、枚数等の情報が入力された状態で画像形成ジョブが開始(S101)されると、斜送ユニット32の各斜送ローラ321〜323の斜送圧が決定される(S102)。ただし、斜送圧とは、各斜送ローラに対する従動ローラ330の加圧力、即ち斜送ローラ及び従動ローラによるシートの挟持圧であり、ROM603等に予め格納されたテーブルに基づいて、各斜送ローラ321〜323について決定される。斜送圧の大きさは、シートの種類に関わらす安定して搬送可能となるように、シートの坪量に応じて坪量の大きいシート程大きな値に設定されている。そして、決定された斜送圧に基づいて、斜送ローラ321〜323の加圧が開始されて加圧状態となる(S103)。
【0044】
その後、画像形成部PY〜PKによる画像形成動作が開始(S104)されると、画像形成動作の開始タイミングを基準に、給送開始のディレイ時間がカウント(S105)された後、給送カセット51からシートが給送される(S106、
図2(a))。そして、プレレジ搬送部20に受け渡されたシートがプレレジセンサSaによって検知(S107)されると、停止ディレイ時間がカウント(S108)された後に、プレレジ駆動モータMpが停止される(S109)。なお、給送開始から所定時間経過してもプレレジセンサSaがシートを検知しない場合、シート詰まりを表す画面が操作部に表示され(S124)、ジョブの実行が終了する。
【0045】
この後、画像形成動作の進捗に合わせてリスタートのディレイ時間がカウント(S110)され、プレレジ駆動モータMpの駆動が再開される(S111)。プレレジ駆動モータMpの駆動再開タイミングが画像形成動作に合わせて調節されることから、シートがプレレジセンサSaに到達するまでの時間のばらつきが吸収される。その後、プレレジ搬送部20の搬送ローラ対21の加圧を解除するディレイ時間がカウント(S112)され、従動ローラ24が駆動ローラ23から離間して搬送ローラ対21が離間状態となる(S113)。これにより、シートを基準部材300に突き当てて斜行を補正する突き当て整合動作が開始される。
図9に示すフローにおける突き当て整合動作は、搬送ローラ対21の加圧解除から、斜送ユニット32が解除状態となるまでの期間(S113〜S120)である。
【0046】
搬送ローラ対21の加圧が解除されると、
図2(b)に示すように、シートは斜送ユニット32から受ける搬送力によって、基準部材300に近付くようにシート搬送方向に対して斜めに移動を開始する。即ち、シートSは、シート搬送方向Dxに対して傾斜した斜送ローラ321〜323の接線方向に沿って斜送され、基準部材300の基準面301に向かって幅寄せされる。そして、シートSは基準部材300にさらに近づいて基準面301に側端が当接する。これにより、補正前の状態でシートSの側端がシート搬送方向Dxに対して傾斜(
図2(a)の角度β)していた場合には、側端が基準面301に倣うようにしてシートSの斜行が補正される。なお、実際のシートの移動方向は、シートの慣性やシートに対する搬送抵抗等の影響により斜送ローラのスリップが生じることから、斜送ローラの接線方向とは必ずしも一致しない。
【0047】
本実施形態では、突き当て整合動作の開始後に、斜送ローラ321〜323の駆動速度を減速する処理(S114)が行われている。そして、プレレジセンサSaによってシートの前端、つまりシート搬送方向Dxの下流端が検知されたタイミングを基準に、斜送ローラ321〜323の駆動速度を加速するためのディレイ時間がカウントされる(S115)。このディレイ時間の長さは、シートの側端が基準部材300の基準面301に当接した後に、駆動速度の加速が実行されるように設定されている。そして、ディレイ時間の経過後に、斜送ユニット32の駆動速度を増加させる処理(S116)及び斜送ユニット32がシートを挟持する力を低減する処理(S117)が行われる。このような斜送ユニット32の加速処理及び減圧処理(S116,S117)については、後に詳しく説明する。
【0048】
レジ前センサSbがシートの前端を検知すると(S118)、斜送ローラ321〜323の加圧を解除するためのディレイ時間がカウント(S119)され、斜送ローラ321〜323の加圧が解除されて解除状態となる(S120、
図2(c))。このディレイ時間は、シートの前端がレジローラ7のニップ部に突入した後に斜送ローラ321〜323が解除状態となるように設定される。なお、所定時間内にレジ前センサSbがシートを検知しない場合、シート詰まりを表す画面が操作部に表示され(S124)、ジョブの実行が終了する。
【0049】
レジローラ7にシートが受け渡されると、
図2(d)に示すように、レジローラ7がシートを搬送しながら幅方向に移動する。これにより、幅方向Dyにおけるシートの中心位置が、画像形成部PY〜PKによって形成される画像の中心位置に合わせて位置決めされる(S121)。シートが二次転写部に送られると、画像形成すべきシートの残り枚数Kを管理するカウンタにより、Kの値がデクリメントされる(S122)。残り枚数Kが0でない場合、つまり画像形成すべきシートが残っている場合(S123:NO)、以上の動作(S103〜S122)が繰返される。このとき、プレレジ搬送部20では先行するシートSの後端が通過した搬送ローラ対21が順に加圧され(
図2(c)、(d)参照)、後続シートS2が挟持されることでシートが連続的に搬送され、二次転写部へと供給される。残り枚数Kが0である場合(S123:YES)、画像形成動作が完了したと判断されてジョブの実行が終了する。
【0050】
(シートの旋回抑制)
次に、斜送ローラの加速処理(S116)及び加速処理に伴う斜送ユニット32の減圧処理(S117)について詳しく説明する。一般に、シートの搬送速度が大きい程画像形成装置の生産性が高まるが、一方で、搬送速度が大きい程シートが基準部材に当接する際の衝撃が大きくなり、シートの座屈が生じる懸念が大きくなる。本実施形態では、シートが基準部材300に当接するまでは比較的遅い速度で斜送ユニット32の斜送ローラ321〜323を回転駆動し、当接後に斜送ローラ321〜323の駆動速度を増加させている。
【0051】
言い換えると、斜送手段が比較的小さい第1の速度(
図10のV1)で駆動されている第1状態でシートを当接面に当接させた後、斜送手段が比較的大きい第2の速度(V2)で駆動されている第2状態へと切換える制御が実行される。これにより、当接時にシートに加わる衝撃を低減すると共に、生産性を確保することができる。
【0052】
しかしながら、加速処理を行う場合、基準部材に当接することで斜行を補正されたシートの姿勢が再度乱されないように注意する必要がある。斜送ローラの加速によって質量mのシートが加速度aで加速する場合、シートには加速前の状態に比べてF=m×aの力(以下、加速力Fとする)が作用していることになる。このとき、
図11に示すように、加速力Fに起因してシートを旋回させようとするモーメントM(M=F×L、L:加速力Fによって生じるモーメントの腕の長さ)が生じ、シートの姿勢が乱される場合がある。
【0053】
この現象によるシートの挙動は、加速力Fの作用点及び加速力Fの方向と、モーメントの中心との関係によって定まる。加速力Fの作用点とは、斜送ローラとシートの接触位置であり、
図11では説明のため1つの斜送ローラ320を図示している。加速力Fの方向とは、シートとの接触位置における斜送ローラの回転方向である。モーメントの中心とは、シートに対する搬送抵抗をシートの第1面及び第2面について面積分した場合にそれが釣り合う位置であり、シートの見かけ上の重心位置である。シートに対する搬送抵抗が一様であるとした場合、モーメントの中心はシートの重心位置と一致する。実際には、搬送ローラ対と搬送ガイドとの間のシートに対する摩擦係数の差やシート搬送路の湾曲等の要因により、モーメントの中心はシートの重心位置に必ずしも一致しない。実験的には、例えば、1つだけ配置した斜送ローラの角度及び位置の条件を変更しつつ、シートを加速した場合のシートの旋回方向を観測することで、モーメントの中心を推定することができる。
【0054】
本実施形態において、斜送ユニット32の各斜送ローラ321〜323による斜送方向のシート搬送方向Dxに対する傾斜角度α(
図2(a)参照)は、シートSと基準部材300との衝突を低減するため、ある程度小さいことが好ましい。例えば、αを20度以下とすると好適であり、15度以下とするとより好ましい。また、基準面301に突き当てられたシートの撓み(ループ)を低減して突き当て整合動作の精度を高めるため、斜送ローラ321〜323は基準面301の付近(少なくとも、搬送中心L0より基準面301に近い位置)に配置すると好適である。このような配置の斜送ローラを用いる場合、
図11に示すように、斜送ローラの駆動速度を増加させた際に、加速力Fに起因してシートSを図中時計回り方向に回転させようとするモーメントMが生じる。
【0055】
このような知見から、本実施形態では、加速処理を行う際に、斜送ユニット32がシートSを挟持する力を弱めることで、シートSの旋回を抑制している。
図10に示すように、突き当て整合動作(S113)が開始されると、速度V0で駆動されていた斜送ローラ321〜323が、突き当てを行うための第1の速度V1まで減速される(S114)。このとき、各斜送ローラ321〜323の加圧力は、既に決定(S102)された斜送圧の値である第1当接圧P1に設定されている。その後、加速ディレイ時間の経過により、基準部材300にシートSが当接してシートSの斜行が補正されたと判断されると(S115)、斜送ローラ321〜323の加速処理(S116)及び減圧処理(S117)が実行される。即ち、各斜送ローラ321〜323の駆動速度が第1速度V1より大きい第2速度V2まで加速されると共に、各斜送ローラ321〜323の加圧力が第1当接圧P1より小さい第2当接圧P2へと変更される。
【0056】
言い換えると、斜送手段が第1の速度で駆動される第1状態でシートを当接面に当接させた後、斜送手段の駆動速度が第2の速度に加速された第2状態に切換えられる場合において、第2状態における斜送手段の加圧力が第1動作に比べて低く設定されている。これにより、シートが当接面に当接した後の第2状態において、斜送手段によって生じるモーメントMが低減される。また、斜送手段のシートを挟持する力が弱まることの結果として、挟持部においてシートが斜送手段に対して容易にスリップできるようになる。即ち、シート搬送方向Dxに対して傾斜して配置される斜送ローラ321〜323の周面に対して、シートがスリップしながらシート搬送方向Dxに移動することが容易になり、基準部材300によって斜行を補正されたシートの姿勢が維持され易くなる。
【0057】
このように、当接面に当接した後のシートの旋回が抑制されることから、当接面によって斜行を補正された状態のシートの姿勢が維持され、斜行補正の精度を高めることができる。また、シートの旋回が抑制されることで、例えばシートが基準部材300のシート搬送方向における端部に衝突してダメージを受ける可能性を低減することができる。
【0058】
斜送ユニット32がシートSを挟持する力を弱める方法としては、次の(1)〜(3)が挙げられる。
(1)3つある斜送ローラの加圧力をそれぞれ弱くする方法
(2)3つある斜送ローラのうちの1つ又は2つの加圧を解除する方法
(3)3つある斜送ローラのうちの1つ又は2つの加圧を解除し、残りの斜送ローラの加圧力をそれぞれ弱くする方法
【0059】
以上の(1)〜(3)の方法は、例えばシートの種類や環境条件等の状況に応じて適宜変更することが可能である。なお、(2)又は(3)の方法を実行する場合、下流側の斜送ローラを加圧状態としたままで、上流側の斜送ローラを解除状態とすると好適である。即ち、斜送手段が第1挟持部(例えば斜送ローラ321、
図2(c)参照)及びその下流の第2挟持部(例えば斜送ローラ322)を有する構成で、シートが当接面に当接した後に第2挟持部のみを解除状態とすると好適である。モーメントの中心はシートSの搬送に伴ってシート搬送方向Dxの下流に移動するため、上流側の斜送ローラを優先的に解除状態とすることで、下流側の斜送ローラを解除状態とする場合に比べてモーメントの腕の長さLを抑制することができるからである。同様の理由から、(1)又は(3)の方法において、斜送ローラの間で加圧力に差をつける場合には、下流側の斜送ローラの加圧力が上流側の斜送ローラに比べて大きくなるように設定すると好適である。
【0060】
なお、突き当て整合動作を開始する際(S113)に斜送ローラ321〜323を減速させる必要があるかどうかは、プレレジ搬送部20におけるシートの搬送速度と第1速度V1との相対関係による。即ち、突き当て整合開始時における斜送ユニット32の駆動速度V0は、搬送ローラ対21の搬送速度に合わせて設定されており、例えばシート搬送方向Dxの成分が搬送ローラ対21の搬送速度と略等しくなるように設定される。これにより、搬送ローラ対21から斜送ユニット32へとシートが受け渡される際のショックを低減してシートの挙動を安定させることができる。そして、このように設定される斜送ユニット32の駆動速度V0が、基準部材300との衝突によるシートの座屈を十分に抑制可能な速度、即ち第1速度V1よりも大きいものである場合には、突き当て整合動作の開始時に減速が行われることになる。なお、搬送ローラ対21の搬送速度は、例えばシート給送部54(
図1参照)によるシート給送速度に合わせる等、画像形成装置1の全体におけるシートの処理速度を考慮して設定される。
【0061】
また、本実施形態では斜送ローラ321〜323の加速(S116)と減圧(S117)を同時に開始しているが(
図10参照)、シートの旋回を低減可能な限りで開始及び終了のタイミングをずらしてもよい。
【0062】
(長尺シート)
次に、長尺シートと本実施形態の関係について説明する。
図2(a)において斜送ローラ321〜323の角度αが比較的小さい場合、シートSはシート搬送方向に対して小さな傾斜角度に沿って移動し、基準部材300に向かって徐々に幅寄せされる。即ち、斜送ユニット32がシートSの幅寄せを開始してからシートSの側端が基準部材300の基準面301に当接するまでの、シート搬送方向におけるシートの移動距離が長くなる。しかしながら、少なくとも幅寄せを開始する位置でシートSに当接する可能性のある搬送ローラ対21を開放可能とする必要から、搬送ローラ対21を移動させる機械的構成やその制御構成の分、装置が大型化又は複雑化してしまう。
【0063】
特に、長尺シート、即ちA判及びB判等の広く用いられている規格に比べて長辺と短辺の比が大きいシートの場合、開放可能とする必要のある搬送ローラ対21の数が多くなる。例えば、
図1においてシート給送部54から斜行補正部30に至る長さの長尺シートSに対応する場合に、給送パス54aの搬送ローラ対54bを離間させる必要が生じることが考えられる。なお、搬送ローラ対を移動させるための構成の他にも、シートが斜送される区間では例えばシートの搬送抵抗を抑制するためにシート搬送路の湾曲を極力避ける等の対策が必要となり、装置の大型化・複雑化につながる。
【0064】
そこで、斜送ローラ321〜323の角度αを大きく設定することが考えられる。角度αが大きい程、幅寄せを開始する位置をシート搬送方向の下流側に設定できるため、上流側の搬送ローラ対21を離間させるための構成を省略可能となり、装置の小型化及び簡素化が可能となる。しかし、斜送ユニット32によって斜送されるシートSの幅方向Dyの移動速度が大きくなり、シートSの側端が基準部材300に対して強く突き当てられてしまい、シートSの座屈が生じる懸念がある。
【0065】
ここで、本実施形態では、突き当て整合動作の開始後に斜送ローラ321〜323の駆動速度が減速(S114)された状態で、シートが基準部材300に突き当てられる。このため、斜送ローラ321〜323による斜送方向のシート搬送方向Dxに対する角度α(
図2(a)参照)をある程度大きく設定しても(例えば10度以上に設定しても)シートの座屈を低減することができる。従って、長尺シートに対応する上で、シートの座屈を回避しつつ装置の大型化・複雑化を抑制することが可能となっている。
【0066】
(他の実施形態)
上記実施形態では、シートを斜送する斜送手段の一例として、3つの斜送ローラ321〜323を有する斜送ユニット32について説明したが、斜送ユニット32に代えて、又が追加で、他の斜送手段を有する構成であってもよい。例えば、幅方向に関して斜送ユニット32と異なる位置に、他の斜送ユニットを配置してもよい。
【0067】
また、上記実施形態では、シート搬送装置の例として、画像の転写が行われる転写部の上流に配置されるレジストレーション部について説明したが、本技術はサイドレジストレーション方式を採用する他のシート搬送装置にも適用可能である。例えば、画像形成装置の装置本体に連結されシート処理装置の内部においてシートの斜行を補正しながら搬送する装置や、両面搬送部502(
図1参照)においてシートの斜行を補正しながら搬送する装置として用いることができる。即ち、シート搬送装置とは、画像形成装置の装置本体に収容されるもの又は画像形成前のシート搬送に用いられるものに限らない。
【0068】
本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサーがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。