特許第6953314号(P6953314)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ テクノロジ アバンセ エ メンブラン アンデュストリエレの特許一覧

特許6953314被処理流動媒体用3次元フローネットワークを有する分離エレメント
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6953314
(24)【登録日】2021年10月1日
(45)【発行日】2021年10月27日
(54)【発明の名称】被処理流動媒体用3次元フローネットワークを有する分離エレメント
(51)【国際特許分類】
   B01D 69/10 20060101AFI20211018BHJP
   B01D 24/00 20060101ALI20211018BHJP
   B01D 29/00 20060101ALI20211018BHJP
   B01D 69/12 20060101ALI20211018BHJP
   B01D 69/00 20060101ALI20211018BHJP
   B01D 71/02 20060101ALI20211018BHJP
   B01D 71/06 20060101ALI20211018BHJP
【FI】
   B01D69/10
   B01D29/00 Z
   B01D69/12
   B01D69/00
   B01D71/02
   B01D71/06
【請求項の数】18
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2017-561808(P2017-561808)
(86)(22)【出願日】2016年5月25日
(65)【公表番号】特表2018-520848(P2018-520848A)
(43)【公表日】2018年8月2日
(86)【国際出願番号】FR2016051233
(87)【国際公開番号】WO2016193573
(87)【国際公開日】20161208
【審査請求日】2019年5月10日
(31)【優先権主張番号】1554908
(32)【優先日】2015年5月29日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】512226871
【氏名又は名称】テクノロジ アバンセ エ メンブラン アンデュストリエレ
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】レコシュ, フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】アンクティーユ, ジェローム
【審査官】 岡田 三恵
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−232163(JP,A)
【文献】 特開2001−062266(JP,A)
【文献】 米国特許第05853582(US,A)
【文献】 英国特許出願公開第02223690(GB,A)
【文献】 国際公開第2013/147271(WO,A1)
【文献】 特開昭63−031517(JP,A)
【文献】 特開2010−000435(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 69/10
B01D 24/00
B01D 69/12
B01D 69/00
B01D 71/02
B01D 71/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理流動媒体を濾過液と保持液とに分離するためのタンジェンシャルフロー分離エレメントであって、
単一材料で作製された一体成形硬質多孔質基材(2)を有し、上記多孔質基材は、第一にその周縁において、上記多孔質基材の一方にある被処理流動媒体用入口(4)と上記多孔質基材の他方にある保持液用出口(5)との間に連続する周壁(2)を有し、第二に内部に、上記被処理流動媒体を流すための空スペース(3)からなる開放構造体を画定している少なくとも1層の分離層(6)で覆われた表面を少なくとも1つ有することにより、上記分離層及び上記多孔質基材を透過した濾過液を上記多孔質基材の周縁で回収でき、
被処理流動媒体を流すための開放構造体は、第一に多孔質基材の流入端部で入口(4)を形成する1つ以上の開口を介して開放され、第二に多孔質基材の流出端部で出口(5)を形成する1つ以上の開口を介して開放されるように多孔質基材(2)中に配置され、
上記被処理流動媒体を通過させるための上記空スペース(3)は、上記分離層(6)で覆われた上記基材の表面により画定されるものであるが、上記多孔質基材内に少なくとも被処理流動媒体用第一のフローネットワーク(R1)を形成するように上記多孔質基材中に配置され、上記フローネットワークは、上記多孔質基材の上記入口(4)と上記出口(5)との間に、相互接続した少なくとも2つの被処理流動媒体用フロー回路(R1、R1、・・・)を有することを特徴とする分離エレメント。
【請求項2】
上記被処理流動媒体を通過させるための上記空スペース(3)は、上記多孔質基材内に少なくとも被処理流動媒体用第二のフローネットワーク(R2)を形成するように上記多孔質基材中に配置され、上記フローネットワークは、上記多孔質基材の上記入口(4)と上記出口(5)との間に、相互接続していてもよい1つ以上の被処理流動媒体用フロー回路(R2、R2、・・・)を有することを特徴とする請求項1に記載の分離エレメント。
【請求項3】
濾過液を回収するための少なくとも1つの空スペース(RF)が、上記多孔質基材(2)中に配置され、上記多孔質基材の上記周壁(2)を通して開放されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の分離エレメント。
【請求項4】
各開放構造体は、上記被処理流動媒体とずっと接触しながら、上記多孔質基材の上記入口(4)と上記出口(5)との間の単一の連続性表面により境界が定められており、
空スペースは、被処理流動媒体保持域が形成されないように配置され、
開放構造体は、上記周壁によって画定される空間内に3次元構造体を画定していることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の分離エレメント。
【請求項5】
上記3次元構造体を構成する材料は同一であり、3次元構造体は、一定である多孔質組織を有することを特徴とする請求項4に記載の分離エレメント。
【請求項6】
上記開放構造体(3)は、非反復性幾何学形状の3次元構造体を画定していることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の分離エレメント。
【請求項7】
上記開放構造体(3)は、メッシュ(12)を形成する上記多孔質基材の容積単位に彫られた少なくとも1つのパターン(11)を繰り返して形成される3次元構造体を画定しており、上記メッシュ内では、形態学的に事前に画定されたスペースが上記被処理媒体を流すために空にされており、上記繰り返しは、第一に3次元空間の少なくとも1次元における上記パターン(11)の完全又は部分的な並置により行い、第二に上記容積単位の上記空スペース間の上記被処理流動媒体のフロー連続性と上記濾過液を排出するための多孔質材連続性とが得られるように行うことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の分離エレメント。
【請求項8】
上記開放構造体(3)は、少なくとも1つのパターン(11)をその形状も寸法も変えることなく繰り返して形成される3次元構造体を画定していることを特徴とする請求項7に記載の分離エレメント。
【請求項9】
上記開放構造体(3)は、少なくとも1方向に同型的に徐々に変化する寸法及び/又は少なくとも1方向に等尺的に徐々に変化する外形を有する少なくとも1つのパターン(11)を繰り返して形成される3次元構造体を画定していることを特徴とする請求項7に記載の分離エレメント。
【請求項10】
パターン(11)及びそれに関連するメッシュ(12)は、以下の対称性:
中心対称性;
直線に対する直交対称性;
平面に対する鏡面対称性;
回転対称性;及び
相似対称性
の1つ以上を有してもよいことを特徴とする請求項7〜9のいずれか1項に記載の分離エレメント。
【請求項11】
上記パターン(11)の繰り返しは、上記基材の外部対称性に関する対称性を有することを特徴とする請求項8〜10のいずれか1項に記載の分離エレメント。
【請求項12】
上記多孔質基材(2)は、有機又は無機材料で作製されることを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載の分離エレメント。
【請求項13】
多孔質基材(2)と、上記3次元構造体の壁に連続的に堆積された少なくとも1層の分離層(6)とを有し、各層は、酸化物、窒化物、炭化物及び他のセラミック材料並びにそれらの混合物から選択されるセラミックで形成されることを特徴とする請求項1〜12のいずれか1項に記載の分離エレメント。
【請求項14】
多孔質基材(2)と、上記3次元構造体の壁に連続的に堆積された少なくとも1層の分離層(6)とを有し、各層は、酸化物、窒化物、炭化物及び他のセラミック材料並びにそれらの混合物から選択されるセラミックと、別のセラミック材料との混合物で形成されることを特徴とする請求項1〜12のいずれか1項に記載の分離エレメント。
【請求項15】
多孔質基材(2)と、上記3次元構造体の壁に連続的に堆積された少なくとも1層の分離層(6)とを有し、各層は、酸化チタン、アルミナ、ジルコニア及びそれらの混合物、窒化チタン、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、炭化ケイ素並びに炭化チタンから選択されるセラミックで形成されることを特徴とする請求項1〜12のいずれか1項に記載の分離エレメント。
【請求項16】
多孔質基材(2)と、上記3次元構造体の壁に連続的に堆積された少なくとも1層の分離層(6)とを有し、各層は、酸化チタン、アルミナ、ジルコニア及びそれらの混合物、窒化チタン、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、炭化ケイ素並びに炭化チタンから選択されるセラミックと、別のセラミック材料との混合物で形成されることを特徴とする請求項1〜12のいずれか1項に記載の分離エレメント。
【請求項17】
多孔質基材(2)と、上記3次元構造体の壁に連続的に堆積された少なくとも1層の分離層(6)とを有し、各層は、所望の分離に適合したポリマーで形成され、上記ポリマーのコロジオンから堆積されることを特徴とする請求項1〜12のいずれか1項に記載の分離エレメント。
【請求項18】
上記多孔質基材(2)は、平均孔径が1μm〜100μmの範囲であることを特徴とする請求項1〜17のいずれか1項に記載の分離エレメント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被処理流動媒体を濾過液と保持液とに分離するための分離エレメント(一般的に濾過膜と呼ばれる)の技術分野に関する。
【0002】
より詳細には、本発明は、分離エレメントの濾過面の面積を増大できる多孔質基材の新規形状に関する。
【背景技術】
【0003】
膜を使用した分離法は多くの分野で用いられている。具体的には、環境分野では飲料水の製造や工場排水の処理に用いられており、化学、石油化学、製薬及び農業食品産業やバイオテクノロジー分野においても用いられている。
【0004】
膜は選択的バリアを構成し、移送力の影響下で被処理媒体中の特定の成分を透過させたり遮断したりできる。成分が透過するか遮断されるかは、膜の孔径に対するそれらの大きさ次第であり、この場合、膜はフィルターとして機能する。このような技術は、孔径に応じて「精密濾過」、「限外濾過」又は「ナノ濾過」と呼ばれる。
【0005】
様々な構造及び組織を有する膜が存在する。膜は、一般的に、膜に機械的強度を付与すると共に形状を与えて膜の濾過面を決定する多孔質基材で構成される。このような基材上に、「分離層」、「濾過層」又は「活性層」と呼ばれる分離を確保する厚さ数マイクロメートルの層が1層以上堆積される。分離の際、濾過された流体は分離層を通って移動した後、基材の多孔質組織で広がって、多孔質基材の外面へと向かう。被処理流体のうち、このように分離層及び多孔質基材を透過した部分は、「透過液」又は「濾過液」と呼ばれ、膜を取り囲む回収チャンバで回収される。残りの部分は、「保持液」と呼ばれ、通常、循環ループによって膜の上流側の被処理流体中に再注入される。
【0006】
従来の基材は、まず所望の形状に従って押出成形した後、得られるセラミックが所望の開放型相互接続多孔質組織を保持しつつも必要な強度を確保するのに充分な温度及び時間で焼結される。この方法では必然的に直線状流路が1本以上形成されることとなり、その後、流路内に分離層を堆積させて焼結する。従来、基材の形状は管状であり、基材の中心軸と平行に配置された直線状流路を1本以上有する。特許文献1では、流路の内面は平滑であり、凹凸は存在しない。一方、特許文献2では、流路は星形の外形を有する。特許文献3では、流路は螺旋状である。
【0007】
基材の内容積はその外形寸法により規定及び制限されること、及び、濾過面の面積は流路数に比例することから、そのような形状の基材を用いて作製した濾過膜の濾過面の面積は頭打ちになり、その結果、流量の点で性能が制限されることが分かっている。
【0008】
濾過エレメントを使用したタンジェンシャル分離は全て選択的移動の原理に基づいており、その有効性は、膜(活性層)の選択性及び濾過エレメント全体(基材+活性層)の透過性(流束)に依存する。
【0009】
上述した選択的移動の有効性に加えて、濾過エレメントの性能は関与する濾過面の面積に正比例する。
【0010】
膜の緻密性は、S/V比(Sは膜の交換面の面積であり、Vは分離エレメントの容積である)を用いて特徴付けることができる。
緻密性=S/V=濾過面の面積/濾過エレメントの容積
【0011】
歴史的にみて年代順では、単流路型円筒管状分離エレメントが最初に市場に登場し、その後に多流路型管状分離エレメントが登場した。
【0012】
濾過面の総面積が増大することに加えて、多流路型分離エレメントの利点の1つとして、分離エレメントに脆弱性のリスクを伴うことなく、水力直径が小さい流路を得られることが挙げられるが、最初の多流路型分離エレメントの流路はもっぱら円形の横断面のものであった。
【0013】
その後の世代は、より良好に管の内容積を占有し、緻密性を高め、且つ、乱流の可能性を増大させるために、円形流路を断念した。
【0014】
このように、例えば、外径25ミリメートル(mm)、長さ1178mmの膜は、水力直径が6mmの円形流路を7本有する場合、面積が0.155平方メートル(m)の濾過面を形成し、同様に水力直径が6mmの非円形流路を8本有する場合、面積が0.195mの基材面を形成する。
【0015】
これら2つの膜の緻密性を算出すると以下の結果となる。
【0016】
【数1】
【0017】
これら2つの例から、水力直径が一定であり、且つ、各分離エレメントの形状及び外形寸法が同一である場合、円形断面の流路から非円形断面の流路に変わることで、緻密性の値が25%増加することが分かる。
【0018】
図1の表に、このように押出成形管状基材を用いて作製された3つの主なグループの膜とそれぞれの緻密性S/Vを示す。当業者には通常認識されるように、流路間の壁厚は、押出成形工程自体の物理的パラメータ、主に、押出ペースト中に分散した材料粒子の寸法や、ダイを通過させるのに必要な圧力をかけたペーストの可塑性等によって小さな厚みに制限される。
【0019】
したがって、押出成形された分離エレメント内の流路の寸法は、機械的強度に関して考慮すべき事項や多孔質基材の細孔での濾過液の流束だけでなく、セラミックペーストとダイとの間に引き裂き及び/又は亀裂のリスクをもたらす摩擦力によっても制限される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【特許文献1】欧州特許第0778073号明細書
【特許文献2】英国特許第2223690号明細書
【特許文献3】国際公開第96/28241号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
したがって、押出成形された分離エレメントの緻密性は上限に近づいているため、本発明は、新規分離エレメントによって従来の解決策の問題点を改善することを提案する。該新規分離エレメントでは、第一に、被処理流体の内部流のために確保されたスペースが、相互接続した3次元構造体を形成して、上記S/V比で表される緻密性を増大させるのに適した表面を該分離エレメント内に提供しており、第二に、骨格形成構造エレメントの厚みを数十分の一ミリメートルほどにできる。
【課題を解決するための手段】
【0022】
上記目的を達成するため、上記分離エレメントは、被処理流動媒体を濾過液と保持液とに分離するための一体成形分離エレメントである。この分離エレメントは、単一材料で作製された一体成形硬質多孔質基材を有し、上記多孔質基材は、第一にその周縁において、上記多孔質基材の一方にある被処理流動媒体用入口と上記多孔質基材の他方にある保持液用出口との間に連続する周壁を有し、第二に内部に、上記被処理流動媒体を流すための空スペースからなる開放構造体を画定している少なくとも1層の分離層で覆われた表面を少なくとも1つ有することにより、上記分離層及び上記多孔質基材を透過した濾過液を上記多孔質基材の周縁で回収できる。
【0023】
本発明によれば、上記被処理流動媒体を通過させるための上記空スペースは、上記分離層で覆われた上記基材の表面により画定されるものであるが、上記多孔質基材内に少なくとも被処理流動媒体用第一のフローネットワークを形成するように上記多孔質基材中に配置され、上記フローネットワークは、上記多孔質基材の上記入口と上記出口との間に相互接続した少なくとも2つの被処理流動媒体用フロー回路を有する。
【0024】
本発明において、新規分離エレメントは、第一に所定のエレメント内で形状及び寸法を変更可能な空スペース間を連通し、第二にこのように形成されたフロー回路の数を増加させることによって、このように設計した新規分離エレメントの濾過面の総面積を、緻密性の値が2000平方メートル/立方メートル(m/m)以上になるまで増大させるよう調節された内部形状を有する。
【0025】
本発明の分離エレメントは、更に以下に示す他の特徴を1つ及び/又は複数併用する。
【0026】
・上記流動媒体を通過させるための上記空スペースは、上記多孔質基材内に少なくとも第二のネットワークを形成するように上記多孔質基材中に配置され、上記フローネットワークは、上記多孔質基材の上記入口と上記出口との間に相互接続していてもよい1つ以上の流動媒体用フロー回路を有する。
【0027】
・濾過液を回収するための少なくとも1つの空スペースが、上記多孔質基材中に配置され、上記多孔質基材の上記周壁を通して開放されている。
【0028】
・各開放構造体は、出口のないスペースを作ることなく上記流動媒体とずっと接触しながら、上記多孔質基材の上記入口と上記出口との間の単一の連続性表面により境界が定められており、上記多孔質基材の上記周壁から延在する3次元構造体を画定している。
【0029】
・上記3次元構造体は、上記周壁に至るまで材料及び多孔質組織の同一性及び連続性を有する。
【0030】
・上記開放構造体は、非反復性幾何学形状の3次元構造体を画定している。
【0031】
・上記開放構造体は、メッシュを形成する上記多孔質基材の容積単位に彫られた少なくとも1つのパターンを繰り返して形成される3次元構造体を画定しており、上記メッシュ内では、形態学的に事前に画定されたスペースが上記被処理媒体を流すために空にされており、上記繰り返しは、第一に3次元空間の少なくとも1次元における上記パターンの完全又は部分的な並置により行い、第二に上記容積単位の上記空スペース間の上記流動媒体のフロー連続性と上記濾過液を排出するための多孔質材連続性とが得られるように行う。
【0032】
・上記開放構造体は、少なくとも1つのパターンをその形状も寸法も変えることなく繰り返して形成される3次元構造体を画定している。
【0033】
・上記開放構造体は、少なくとも1方向に同型的に徐々に変化する寸法及び/又は少なくとも1方向に等尺的に徐々に変化する外形を有する少なくとも1つのパターンを繰り返して形成される3次元構造体を画定している。
【0034】
・パターン及びその関連するメッシュは、以下の対称性:
中心対称性;
直線に対する直交対称性;
平面に対する鏡面対称性;
回転対称性;及び
相似対称性
の1つ以上を有してもよい。
【0035】
・上記パターンの繰り返しは、上記基材の外部対称性に関する対称性を有する。
【0036】
・上記多孔質基材は、有機又は無機材料で作製される。
【0037】
・多孔質基材と、上記3次元構造体の壁に連続的に堆積された少なくとも1層の分離層とを有し、各層は、酸化物、窒化物、炭化物及び他のセラミック材料並びにそれらの混合物から、特に、別のセラミック材料と混合されていてもよい酸化チタン、アルミナ、ジルコニア及びそれらの混合物、窒化チタン、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、炭化ケイ素並びに炭化チタンから選択されるセラミックで形成される。
【0038】
・多孔質基材と、上記3次元構造体の壁に連続的に堆積された少なくとも1層の分離層とを有し、各層は、所望の分離に適合したポリマーで形成され、上記ポリマーのコロジオンから堆積される。
【0039】
・上記多孔質基材は、平均孔径が1マイクロメートル(μm)〜100μmの範囲である。
【0040】
添付の図面を参照して以下の説明を読めば本発明がより理解できる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1】先行技術における各種分離エレメントの緻密性の値S/Vを示す表である。
図2A】本発明に係る分離エレメントの第一の実施形態の断面立面図である。
図2B図2Aに示す分離エレメントを下から見た図である。
図2C図2Aに示す分離エレメントのC−C線断面図である。
図2D図2Aに示す分離エレメントを上から見た図である。
図3A】中心対称性を有する十字パターンを形成する空スペースを有する基本立方体メッシュを表す。
図3B図3Aに示すパターンを交互配置して形成した2つの回路の交互配置を示す透視図である。
図3C図3Aに示すパターンを交互配置して形成した2つの回路の交互配置を示す平面図である。
図3D】立方体対称を有するパターンと四面体対称を有するパターンとを組み合わせて得られた二重回路を有する構造の他の実施形態を表す。
図4-1】パターンが彫られた立方体メッシュの中心に対して中心対称性を有する十字形パターンを繰り返して形成された開放構造体の実施形態を表す。
図4-2】パターンが彫られた立方体メッシュの中心に対して中心対称性を有する十字形パターンを繰り返して形成された開放構造体の実施形態を表す。
図5】基本立方体メッシュ中のパターンの他の2つの実施形態を表す。
図6-1】空間の3方向に同型的に徐々に変化する寸法のパターンを繰り返すことによって3次元構造体を画定する開放構造体が形成された異なる実施形態の多孔質基材を表す。
図6-2】空間の3方向に同型的に徐々に変化する寸法のパターンを繰り返すことによって3次元構造体を画定する開放構造体が形成された異なる実施形態の多孔質基材を表す。
図7】開放構造体が非反復性幾何学形状の3次元構造体を画定している多孔質基材の実施形態の縦断面及び横断面を表す。
図8図8Aは、濾過液用フローネットワークを形成することを目的とした本発明に係る分離エレメントの実施形態の断面立面図である。図8Bは、図8Aに示す分離エレメントを下から見た図である。図8Cは、図8Aに示す分離エレメントのC−C線断面図である。図8Dは、図2に示す分離エレメントを上から見た図である。
図9-1】図9は、本発明に係る分離エレメントの別の実施形態の縦断面図である。図9Aは、図9の矢印A−Aに沿って見た端面図である。
図9-2】図9B〜9Iは、それぞれ図9の矢印B〜Iに沿って見た断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
予め、本発明において使用するいくつかの用語の定義を示す。
【0043】
「平均孔径」とは、容積分布のd50値であって、全細孔容積の50%が、このd50値より小さい孔径を有する細孔が占める容積と一致する値を意味する。容積分布は、細孔の容積頻度を孔径の関数として表す曲線(解析関数)である。d50値は、頻度曲線下の面積を二等分する中央値に相当し、平均孔径が4ナノメートル(nm)以上の場合は水銀圧入法により得られ、平均孔径が4nm未満の場合はN等のガス吸着法により得られる。これら2つの方法は、平均孔径を測定するために本発明において参考として用いられる。
【0044】
具体的には
・水銀圧入法による測定方法には規格番号ISO15901−1:2005、
・ガス吸着法による測定方法には規格番号ISO15901−2:2006及びISO15901−3:2007
に記載された方法を使用できる。
【0045】
本発明は、被処理流動媒体を濾過液と保持液とに分離するためのタンジェンシャルフロー分離エレメントを提供する。該エレメントは、被処理流動媒体を流すための互いに相互接続した複数の回路を多孔質基材内に画定するよう選択された形状を有するモノリシック多孔質基材を有する。上記モノリシック基材は、接合させたり外部から供給したりせずに、全体が均一で連続している1つのもののみからなると規定されるが、従来の押出方法では作製できず、仏国特許出願公開第3006606号明細書等に記載されるような積層造形技術等によって作製できる。
【0046】
本発明は、タンジェンシャル濾過によって流動媒体を分離するための分離エレメント(一般的に濾過膜と呼ばれる)を提供することを目的とする。通常、図2A〜2Dに示すように、上記分離エレメント1は、単一材料で作製された一体成形硬質多孔質基材2を有する。この分離エレメントにおいて、基材2を構成する本体は多孔質組織を有する。該多孔質組織は、水銀圧入ポロシメトリーで測定した細孔分布から推定される平均孔径によって特徴付けられる。
【0047】
基材の多孔質組織は開放されており、相互接続した細孔のネットワークを形成しているため、濾過分離層で濾過された流体が多孔質基材を透過し、その周縁で回収することができる。通常は、基材の水透過率を測定することにより、基材の流体抵抗を規定できるが、同時に、多孔質組織が相互接続されていることを確認できる。具体的には、多孔質媒体において、非圧縮性粘性流体の定常流はダルシーの法則に従う。流体速度は、フランス規格番号NFX45−101(1996年12月)等に準拠して測定できる「透過率」として知られる特徴的なパラメータによれば、圧力勾配に比例し、流体の動的粘度に反比例する。
【0048】
通常、多孔質基材2は非金属無機材料で作製される。多孔質基材2は、酸化物、窒化物、炭化物及び他のセラミック材料並びにそれらの混合物から、特に、別のセラミック材料と混合されていてもよい酸化チタン、アルミナ、ジルコニア及びそれらの混合物、窒化チタン、窒化アルミニウム、窒化ホウ素並びに炭化ケイ素から選択されるセラミックで作製されることが好ましい。なお、多孔質基材は、有機材料又は純粋な金属である無機材料で作製することもできる。例えば、多孔質基材2は、アルミニウム、亜鉛、銅又はチタン等の純金属又はそれらの金属の複数種からなる合金又はステンレス鋼から作製されていてもよい。例えば、多孔質基材2は、平均孔径が1μm〜100μmの範囲であってもよい。
【0049】
使用する材料に関わらず、本発明は、基材が積層造形法により作製される仏国特許出願公開第3006606号明細書に記載される方法を採用する。
【0050】
多孔質基材2は、内部に、被処理流動媒体を流すための空スペースからなる少なくとも1つの開放構造体3を有する。上記空スペース3は、多孔質材が存在しない多孔質基材の領域に相当する。上記空スペース3は、多孔質基材がその周縁において、多孔質基材の一方にある流動媒体用入口4と多孔質基材の他方にある保持液用出口5との間に連続する周壁2を有するように多孔質基材2内に配置される。
【0051】
図2A〜2Dに示す実施形態において、多孔質基材2は円形断面の円筒状である。当然ながら、多孔質基材2の形状は単なる例示であり、多孔質基材2の形状としてはあらゆるものが考えられる。図示した本例示の場合、多孔質基材2は、多孔質基材の一方の端部に被処理流動媒体用入口4を有し、多孔質基材の反対側の端部に保持液用出口5を有する細長いエレメントである。したがって、多孔質基材内に配置される空スペース3からなる開放構造体は、第一に被処理流動媒体の入口4と連通し、第二に保持液用出口5と連通する。以下の説明に示すように、流動媒体は、1つ以上の異なる開口を介して多孔質基材の入口4に流入し、出口5から流出する。すなわち、流動媒体を流すための開放構造体3は、第一に多孔質基材の流入端部で入口4を形成する1つ以上の開口を介して開放され、第二に多孔質基材の流出端部で出口5を形成する1つ以上の開口を介して開放されるように多孔質基材2中に配置される。
【0052】
多孔質基材2の開放構造体3を画定している部分は、開放構造体3内を流れる被処理流動媒体と接触する少なくとも1層の分離層6で覆われた表面を有する。被処理流動媒体の一部は、分離層6及び多孔質基材2を透過し、その結果、この処理された流体(濾過液又は透過液という)は多孔質基材の周壁又は外面2から流出する。濾過液は、適当な手段によって多孔質基材の周縁面で回収される。
【0053】
開放構造体3の壁を覆う分離濾過層6は、被処理流動媒体を濾過させる。すなわち、多孔質材が存在しない開放構造体3は、入口4と出口5との間で分離濾過層6に囲まれている。定義上、分離濾過層の平均孔径は、多孔質基材2の平均孔径よりも小さい必要がある。分離層は、被処理流体と接触するタンジェンシャルフロー分離エレメントの表面を画定しており、その表面上を被処理流体が流れる。
【0054】
タンジェンシャルフロー分離エレメントの長さは、通常、1m〜1.5mである。タンジェンシャルフロー分離エレメントの断面積は、通常、0.8cm〜14cmである。分離濾過層の厚みは、典型的には1μm〜100μmの範囲である。当然ながら、分離機能を確保し、活性層として作用させるために、分離層の平均孔径は、基材の平均孔径よりも小さい。通常、分離濾過層の平均孔径は、基材の平均孔径の3分の1以下、好ましくは5分の1以下である。
【0055】
精密濾過、限外濾過及びナノ濾過用分離層の概念は当業者に周知である。一般的には以下のように認識されている。
・精密濾過用分離層の平均孔径は0.1μm〜2μmの範囲である。
・限外濾過用分離層の平均孔径は0.01μm〜0.1μmの範囲である。
・ナノ濾過用分離層の平均孔径は0.5μm〜10nmの範囲である。
【0056】
精密又は限外濾過層は、多孔質基材に直接堆積させることもでき(単層分離層)、更にはより小さい平均孔径の中間層を多孔質基材に直接堆積させてから、その中間層上に堆積させることもできる。例えば、分離層は、1種以上の金属酸化物、炭化物若しくは窒化物又は他のセラミックを主体としたものであってもよく、これらのみで構成されたものであってもよい。特に、分離層は、3次元構造体の壁に連続的に堆積された少なくとも1層の分離層で構成され、各層は、酸化物、窒化物、炭化物及び他のセラミック材料並びにそれらの混合物から、特に、別のセラミック材料と混合されていてもよい酸化チタン、アルミナ、ジルコニア及びそれらの混合物、窒化チタン、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、炭化ケイ素並びに炭化チタンから選択されるセラミックで形成される。また、分離層6は、3次元構造体の壁に連続的に堆積された少なくとも1層の分離層で構成され、各層は、所望の分離に適合したポリマーで形成され、上記ポリマーのコロジオンから堆積されるものであってもよい。
【0057】
本発明の本質的特徴によれば、被処理流動媒体を通過させるための空スペース3は、多孔質基材内に少なくとも第一のネットワークRを形成するように、より一般的には、多孔質基材の入口4と出口5との間に被処理流動媒体を流すための少なくとも2つの回路R1、R1、より一般的には互いに相互接続したN個の回路R1、R1、・・・、R1(Nは2以上)を有する少なくとも1つのネットワークR1を含むK個のネットワークR1、R2、・・・、RKを形成するように、多孔質基材2中に配置される。したがって、流動媒体は、多孔質基材の入口4及び出口5と連通し、且つ、多孔質基材の入口4と出口5との間で互いに連通する少なくとも2つのフロー回路R1、R1を有する第一のネットワークR1を流れる。当然ながら、これらのネットワーク及び回路を流れる被処理流動媒体の一部は分離層6及び基材2を透過するため、この処理分(透過液又は濾過液という)が基材の周縁面で回収される。
【0058】
なお、流動媒体は少なくとも第二のネットワークR2を流れてもよく、該第二のネットワークは、1つのフロー回路R2又は互いに接続した一連のフロー回路R2、R2、R2、・・・を有する。これらのネットワークR1、R2、・・・、R2Kはそれぞれ、どのネットワークの回路に流れる被処理流動媒体も別のネットワークの回路には流れないという意味で他方に対して独立していると考えられる。
【0059】
第一のネットワークR1を介して多孔質基材2を透過する間、被処理流動媒体は、流動媒体を異なる進路へと複数(少なくとも2つ)に分割する少なくとも1つの分岐点又は少なくとも1つの分離点のいずれか、及び/又は、異なる通路から来た複数(少なくとも2つ)の被処理流動媒体を1つにまとめる少なくとも1つの接合点に遭遇する。したがって、ネットワークR1のフロー回路R1、R1は、多孔質基材内に形成された交差部又は相互接続部9を介して互いに連通する。
【0060】
当然ながら、ネットワークを構成する被処理流動媒体用フロー回路の数は、2〜N(Nは整数)の範囲であってもよい。同様に、フロー回路間の相互接続部9の数は、1〜Mの範囲であってもよい。これらの相互接続部は、フローネットワークを構成する各フロー回路間に配置される。なお、同様に、フロー回路は、多孔質基材と共通する領域又は多孔質基材から分離された領域において多孔質基材の入口4及び出口5と連通する。
【0061】
図2A〜2Dに示す実施形態において、多孔質基材2は、被処理流動媒体用第一のフローネットワークR1を有し、該第一のフローネットワークR1は、共通の入口4と、出口5を形成する2つの異なる開口とを有する2つの流動媒体用フロー回路R1、R1から構成される。これらの2つのフロー回路R1、R1は、入口4から、2つのフロー回路R1、R1が相互接続する相互接続部9までにわたる共通の部分を有する。相互接続部9からは、被処理流動媒体が出口5に至るまで2つに分離される。したがって、2つのフロー回路R1、R1は、2つの異なる開口を介して出口5へと開放される。
【0062】
当然ながら、図2A〜2Dに示す実施形態は、本発明の原則を説明するために示したものである。上述した通り、ネットワークを形成するフロー回路R1、R1、・・・、R1の数は任意であってもよい。同様に、フロー回路に形成される相互接続部9の数は任意であり、この数は各種フロー回路で同一又は異なっている。
【0063】
図2A〜2Dに示す実施形態において、多孔質基材2は、入口4及び出口5の両方と連通する単一の流動媒体用フロー回路R2を有する第二のネットワークR2を有する。この第二のネットワークR2の単一のフロー回路R2は、第一のネットワークR1のいずれのフロー回路とも連通していない。当然ながら、この第二のネットワークR2は、上述した通り、多孔質基材の入口と出口との間に複数の相互接続した流動媒体用フロー回路を有していてもよい。
【0064】
上記説明から、多孔質基材中に配置された流動媒体を通過させるための空スペース3が、ネットワークに相当する開放構造体を1つ以上画定していることが分かる。有利な特徴によれば、各開放構造体はそれぞれ、出口のないスペースを作ることなく被処理流動媒体とずっと接触しながら、多孔質基材の入口と出口との間の単一の連続性表面により境界が定められている。すなわち、空スペースは、被処理流動媒体が停滞し得る流動媒体保持域が形成されないように配置される。これは、流動媒体用入口及び出口が流体のフロー方向に対して同じ場所に位置するために、流動媒体が停滞するか又は出口のない回路の端部と入口/出口との間で後戻りするような出口のない回路部分等にも当てはまる。
【0065】
有利な特徴によれば、相互接続した回路のネットワークを構成するために配置される上記開放構造体は、多孔質基材の周壁2に至るまで3次元構造体を画定することが考えられる。
【0066】
本発明の特徴によれば、上記3次元構造体は、周壁2の外部に至るまで材料及び多孔質組織の同一性及び連続性を有する。すなわち、上記3次元構造体を構成する材料は同一であり、製造方法の精度内で一定である多孔質組織を有する。
【0067】
有利な実施形態の特徴によれば、3次元構造体は、メッシュ12を形成する多孔質基材の容積単位に彫られた少なくとも1つのパターン11を繰り返して形成され、上記メッシュ内では、形態学的に事前に画定されたスペース3が被処理媒体を流すために空にされている。パターン11は、第一に3次元空間の少なくとも1次元における該パターンの完全又は部分的な並置により繰り返され、第二に容積単位の空スペース3間の流動媒体のフロー連続性と濾過液を排出するための多孔質材連続性とが得られるように繰り返される。
【0068】
図3Aは、上記構造を形成するための空スペース3が中心対称性を有する十字パターン11を構成する基本立方体メッシュ12を表す。パターン11は平面において十字形であり、図示した例では、該パターンの各部分で正方形断面を有する。
【0069】
本発明において、上記パターン11に関連する上記メッシュ12を使用すれば、上記構造を2つの同一フロー回路を交互配置して形成する際に特に有利である。
【0070】
本構造を簡単に説明するために、対称的な十字パターン11を含む立方体メッシュ12を特徴付けることが提案される。パターンが彫られた立方体メッシュ12の辺をc、メッシュの境界と同一平面にあるパターンの正方形開口を特徴付ける寸法をa、正方形断面のネットワークの各部分の特徴的長さをLとすると、上記パターンの濾過表面積は以下の式で表される。
【0071】
【数2】
【0072】
メッシュの容積はVメッシュ=cであるため、このパターンを含むメッシュを積み重ねて並置して得られる分離エレメントの緻密性は以下の式で得られる。
【0073】
【数3】
【0074】
得られる回路が、相互接続した正方形断面流路の構成物だと仮定すると、流路の水力直径Dhはaに等しく、このような2つの回路から形成される本発明の上記構造の緻密性と、押出成形された分離エレメントの上記緻密性とを比較できるようになる。
【0075】
このようにして作製された分離エレメントは、aが3.47mm、cが7.94mmであり、2回路間の多孔質材の最小厚みeが0.5mmであり、固有の緻密性が以下である。
【0076】
【数4】
【0077】
これは、緻密性743.7m/mに相当し、水力直径Dh=3.47mmである23本の非円形直線状流路を有する外径25mm、長さ1178mmの押出成形された濾過エレメントと比較すると、約30%の緻密性の増加が見られる。
【0078】
【表1】
【0079】
図3B及び3Cに、図3Aに示すパターンを交互配置して形成した2つの回路の交互配置を示し、番号を付ける。
【0080】
水力直径Dh=1.60mmである61本の非円形直線状流路を有する外径20mm、長さ1178mmの押出成形された濾過エレメントと比較すると、同一の二重回路の構造を有する同構成物は、水力直径Dh=1.60mmの場合、28%の緻密性の増加を示す。
【0081】
【表2】
【0082】
水力直径Dh=6.00mmである8本の非円形直線状流路を有する外径25mm、長さ1178mmの押出成形された濾過エレメントと比較すると、同一の二重回路の構造を有する同構成物は、水力直径Dh=6.00mmの場合、36%の緻密性の増加を示す。
【0083】
【表3】
【0084】
図3Dは、立方体対称を有するパターン11と四面体対称を有するパターン11とを組み合わせて得られた二重回路を有する構造の他の実施形態を表す。相互接続した空隙で形成された第一の回路は、立方体の各面の縁及び対角線をたどったものであり、第二の回路は、同立方体の中心にある八面体の縁をたどったものである。
【0085】
このように2つのパターンを組み合わせると、単一ネットワークの構成物が得られ、その基本立方体メッシュには、正四面体パターンを有する一連の相互接続した空隙スペースが含まれることが分かる。
【0086】
上記パターンに順次回転を加えつつ3次元空間の3方向に積み重ねて、四面体の縁の空スペースを反復的且つ連続的に合致及び並置すると、例示及び比較のために例1と同じ押出分離エレメント及び同じ3つの水力直径を再び用いた場合、以下の新たな緻密性の値を得ることができる。
【0087】
【表4】
【0088】
上記構造を用いると、水力直径が6mm、3.47mm、1.6mmの場合、それぞれ66%、72%、123%の緻密性の増加が見られることが分かる。
【0089】
図4A〜4Dは、パターンが彫られた立方体メッシュ12の中心に対して中心対称性を有する十字形パターン11を繰り返して形成された開放構造体3の実施形態を表す。この例では、パターン11は平面において十字形であり、該パターンの各部分で円形断面を有する。流動媒体を流すために空にされたスペースに相当する図4Aに示すパターンは、3次元空間の1、2又は3次元に沿って同一にメッシュ及びパターンを積み重ねることで繰り返される。
【0090】
図5A及び5Bは、基本立方体メッシュ12中のパターン12の他の2つの実施形態を表す。図示された各パターン11は、図5Aに示すパターンが空スペースに相当するならば、図5Bに示すパターンが多孔質に相当し、逆もまた同様であるという意味で相補的である。各パターン11は、メッシュの各角に向かって延びる8つの円筒11bを介して、メッシュ12の3つの隣辺を占有する8つの1/4球11cに接続された中心球11aを含む。このメッシュ12を並置すると、円筒により相互接続された球からなる構造を得ることができる。
【0091】
多種多様の形状を有するパターン11の使用が考えられることは明らかである。例えば、パターン11及びそれに関連するメッシュは、以下から選択される対称性:
中心対称性;
直線に対する直交対称性;
平面に対する鏡面対称性;
回転対称性;及び
相似対称性
の1つ以上を有してもよい。
【0092】
なお、同様に、パターン11の繰り返しは、基材の外部対称性に関する対称性を有してもよい。このような状況では、多孔質基材は、対称性を有していてもいなくてもよい様々な外形であってもよい。
【0093】
上記例において、開放構造体3は、少なくとも1つのパターン11をその形状も寸法も変えることなく繰り返して形成される3次元構造体を画定している。
【0094】
当然ながら、少なくとも1方向に同型的に徐々に変化する寸法及び/又は少なくとも1方向に等尺的に徐々に変化する外形を有する少なくとも1つのパターン11を繰り返すことによって、3次元構造体を画定している開放構造体3を形成することも考えられる。
【0095】
図6A〜6Dは、空間の3方向に同型的に徐々に変化する寸法のパターン11を繰り返すことによって3次元構造体を画定している開放構造体3が形成された異なる実施形態の多孔質基材2を表す。この変形例において、図6Aに示すパターン11は、正方形メッシュ12中に彫られており、2つの隣辺上の2つの同一長方形11b間及び他の2つの隣辺上の2つの同一台形11c間にある中心正方形11aを有する。
【0096】
このパターン11をx及びyの両方向に並置し、さらに長方形11b、正方形11a及び台形11cに相当するスペースの寸法を段階的に調整しつつ同型的に徐々に変化させることによって、図6Bに示すような基材を得ることができる。当然ながら、周縁のパターン11は、流動媒体を長期間保持するスペースを生じ得る出口のないスペースを形成しないように適合させる。多孔質材の周縁に向かって徐々に増加が見られ、これにより濾過液が排出されやすくなる。このようなx及びy方向の並置そのものによって、第三の方向zに例えば8回、同一に積み重ねられたパターン(図6C)が形成され、その結果、多孔質基材12の入口4と出口5との間に連続的に延在する構造(図6D)を形成できる。
【0097】
上述した実施形態において、開放構造体3は反復性幾何学形状の3次元構造体を画定している。図7A及び7Bは、開放構造体3が非反復性幾何学形状の3次元構造体を画定している多孔質基材2の実施形態を表す。したがって、3次元構造体は、出口のない領域を作ることなく、基材12の入口4と出口5との間に、濾過液を多孔質材から排出させるための多孔質材連続性及び流動媒体を流すための空スペース連続性を当然ながら構築しつつ、反復せずに不規則に形成される。
【0098】
上記例では、空スペース3は、流動媒体が流れるように多孔質材中に形成される。図8A〜8Dは、多孔質基材の周壁2を通って排出される濾過液を回収するためのネットワークRFが設けられた多孔質基材2の実施形態を表す。当然ながら、上記濾過液用回収ネットワークRFは、流動媒体用フローネットワークR1、R2、・・・、RKから独立している。上記濾過液用回収ネットワークRFでは、該空スペースとフローネットワークとの間、並びに、該空スペースと基材の入口及び出口端部4及び5との間に多孔質基材を構成する多孔質材が残っている。上記濾過液用回収ネットワークRFは、多孔質基材の外側に濾過液を排出しやすいよう形成される。
【0099】
図9〜9Iは、管状タンジェンシャルフロー分離エレメント1の別の例を表す。タンジェンシャルフロー分離エレメント1は、直線状と言える構造となるように長手方向中心軸Aに沿って延在する細長い形状の多孔質基材2を有する。図9、9Iに示す多孔質基材2は、横断面が円形であり、したがって円筒形外面を有するが、横断面は任意であり、多角形であってもよい。
【0100】
多孔質基材2は、入口4と出口5との間に流れる被処理流動媒体用の単一のフローネットワーク3を内部に含むよう配置される。図示した例では、入口4は多孔質基材2の一方の端部に、出口5は多孔質基材2の他方の端部に位置する。多孔質基材2は、被処理流動媒体用フロー回路を形成するための空スペース又は通路3を有する。多孔質基材2は、その周縁全体において空スペース又は通路を取り囲む周壁2を有するよう配置される。多孔質基材2の外面2により画定される周壁2は、入口4と出口5との間に連続的に延在する。
【0101】
多孔質基材2は、その連続性周壁6から始まる3次元配置された構造体を有し、該構造体は、流動媒体を通過させるための空スペース3が該構造体間に残るように互いに接続され、それにより、多孔質基材の入口4と出口5との間に相互接続した一連の流動媒体用フロー回路R1、R2、・・・、RKを有するフローネットワークが形成される。
【0102】
上述した通り、3次元構造体は一体成形多孔質基材の一部をなす。すなわち、多孔質基材に与えられた形状そのものに由来するものであり、個々のエレメントがはめ込まれたものでは全くない。上記集合体は、あらゆる連結部も界面も結合部もない単一の多孔質ブロックを形成する。3次元構造体と周壁2との間で材料及び多孔質組織の同一性及び連続性を有する。したがって、3次元構造体は、機械的及び化学的に一様であり、周壁2と同じ強度を有する。
【0103】
図9〜9Iに示す実施形態では、空スペース3は、多孔質基材の入口4と出口5との間に相互接続した一連のフロー回路R1、R1、・・・を有する単一のネットワークR1を形成する。この例では、フロー回路は、多孔質基材の周囲に配置された7つの周縁流路a〜g、多孔質基材の中心に配置された中央流路h及び上記流路間の連絡又は相互接続通路9である空の通路又はスペース3からなる。
【0104】
図示した例では、流路a〜hは、多孔質基材の全長にわたって互いに平行に形成される。入口4とB−B断面との間では、流路a〜hは互いに独立している。B−B断面において、流路a〜hは図9Bに示すように相互接続される。より具体的には、空スペース又は相互接続部9は、第一に、隣接する周縁流路の隣接対間に、すなわちb−c、d−e及びf−g間に形成され、第二に、中央流路hと、別の周縁流路とは連通していない周縁流路、すなわち図示した例では流路aとの間に形成される。3次元構造体が配置されることで残るこれらの空スペース又は相互接続部9は流路間の連絡通路を構成し、図示した例では、該相互接続部9が流路に対して横方向に延在する。
【0105】
図示した例において、このような3次元構造体及び相互接続部の配置は、流路間で相互接続部9を円形に入れ替えながら一定のピッチで多孔質基材の各断面において繰り返される。したがって、被処理流動媒体のフロー方向に当該B−B断面の後に続く多孔質基材のC−C断面において(図9C)、流路a〜hは互いに相互接続されて、流路a−g、b−h、c−d及びe−g間に空スペース又は相互接続部9が形成される。同様に、被処理流動媒体のフロー方向に当該C−C断面の後に続く多孔質基材のD−D断面において(図9D)、流路a〜hは互いに相互接続されて、流路a−b、c−h、d−e及びf−g間に空スペース又は相互接続部9が形成される。
【0106】
図示した例において、流路a〜hは、入口と出口との間で相互接続部9によって7回相互接続されているため、入口4から流入する被処理流動媒体は各流路で出口5へと流れることができる。流路a〜h及び相互接続部9は共に、一連の互いに相互接続した回路R1、R2、・・・、RKを形成する。
【0107】
当然ながら、記載したものとは異なる数のフロー回路及び選択したものとは異なる相互接続部を用いて多孔質基材中にネットワークを形成することも予想される。同様に、多孔質基材中に互いに相互接続した流動媒体用フロー回路のネットワークを複数形成することが有利な場合があり、この場合、どのネットワークの回路も別のネットワークの回路から独立している。例えば、分離エレメント1は、連絡通路9を介して複数の断面において互いに接続した流路a、h、e及びdにより形成された互いに相互接続した回路の第一のネットワークと、連絡通路9を介して少なくとも1つの断面、通常は複数の断面において互いに接続した流路b及びcにより形成された互いに相互接続した回路の第二のネットワークと、連絡通路9を介して少なくとも1つの断面、通常は複数の断面において互いに接続した流路f及びgにより形成された互いに相互接続した回路の第三のネットワークとを有してもよい。これら3つのネットワークのそれぞれの回路は互いに独立である。すなわち、互いに連通していない。
【0108】
当然ながら、一定の又は不規則なピッチで繰り返された相互接続部9を介して互いに相互接続したフロー回路のネットワーク中の数は、より多くてもより少なくてもよい。同様に、フロー回路は、非常に異なる形状及び寸法を有していてもよい。図9〜9Iに示す実施形態において、互いに相互接続したフロー回路は、三角形断面の流路a〜gと、円形断面の中央流路hと、円形断面の相互接続部9とを有する。流路及び相互接続部9の断面が単に例示として示した断面と異なっていてもよいことは明らかである。
【0109】
上記説明から、タンジェンシャルフロー分離エレメント1は、フロー回路の水力直径を漸進的に又は連続的に変化させることが可能な流動媒体用フローネットワークの新規形状を有するということになる。この流動媒体用フローネットワークの新規形状を用いれば、流動媒体の移動方向に対して半径方向及び/又は長手方向の遮断を行って分離エレメントの性能を高めることもできる。
【0110】
本発明において、多孔質基材、更にはタンジェンシャルフロー分離エレメント全体は、仏国特許出願公開第3006606号明細書等に記載されるような積層造形技術等によって作製される。
【0111】
本発明の範囲を逸脱することなく様々な変更を加えることが可能であるため、本発明は記載及び図示した例に限定されない。
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図3A
図3B
図3C
図3D
図4-1】
図4-2】
図5
図6-1】
図6-2】
図7
図8
図9-1】
図9-2】