特許第6953330号(P6953330)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6953330
(24)【登録日】2021年10月1日
(45)【発行日】2021年10月27日
(54)【発明の名称】冷蔵庫
(51)【国際特許分類】
   F25D 21/08 20060101AFI20211018BHJP
   F25D 21/02 20060101ALI20211018BHJP
   F25D 11/00 20060101ALI20211018BHJP
【FI】
   F25D21/08 A
   F25D21/02 Z
   F25D11/00 101B
【請求項の数】6
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2018-39931(P2018-39931)
(22)【出願日】2018年3月6日
(65)【公開番号】特開2019-152412(P2019-152412A)
(43)【公開日】2019年9月12日
【審査請求日】2020年9月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】阿部 慎一
(72)【発明者】
【氏名】小野 紘平
(72)【発明者】
【氏名】田頭 修平
【審査官】 森山 拓哉
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭49−150063(JP,U)
【文献】 特開平01−137184(JP,A)
【文献】 特開平07−294100(JP,A)
【文献】 特開平01−225883(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第03006868(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25D 21/08
F25D 11/00
F25D 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却器と、
前記冷却器に付着した霜を除去する除霜ヒータと、
前記冷却器の冷却能力が除霜を必要とするレベルにまで低下したか否かを判定する除霜要否判定部と、
前記冷却能力が除霜を必要とするレベルにまで低下したと判定されると、前記除霜ヒータを動作させることによる庫内の上昇温度を前記庫内の上限温度から減じた所定温度を設定し、庫内温度が当該所定温度以下に冷却されると前記除霜ヒータを動作させる除霜制御部と、を備えていることを特徴とする冷蔵庫。
【請求項2】
前記除霜要否判定部は、前記冷却器によって冷却される前記庫内温度の時間に対する変化を表す冷却曲線の傾きに基づいて、目標時間以内に目標冷却温度まで冷却することが可能であるか否かを判定することにより、前記冷却器の冷却能力が除霜を必要とするレベルにまで低下したか否かを判定することを特徴とする請求項1に記載の冷蔵庫。
【請求項3】
前記冷却器からの冷媒を圧縮する圧縮機をさらに備え、
前記除霜要否判定部は、
前記冷却器に着霜のある状態で目標温度に冷却されるまで前記圧縮機を運転することにより生じた余剰消費電力量を算出する余剰電力量算出部と、
前記余剰消費電力量が除霜ヒータの消費電力量を超えるか否かを判定することにより、前記冷却器の冷却能力が除霜を必要とするレベルにまで低下したか否かを判定する電力量比較部とを有することを特徴とする請求項1に記載の冷蔵庫。
【請求項4】
前記余剰電力量算出部は、除霜直後の冷却の後に行われる1回の冷却において運転される前記圧縮機の消費電力量を基準電力量とし、当該基準電力量を超える電力量を前記余剰消費電力量として算出することを特徴とする請求項3に記載の冷蔵庫。
【請求項5】
前記余剰電力量算出部は、前記冷却器の除霜直後の冷却において運転される前記圧縮機の消費電力量を基準電力量とし、当該基準電力量を超える電力量を前記余剰消費電力量として算出することを特徴とする請求項3に記載の冷蔵庫。
【請求項6】
前記冷却器からの冷媒を圧縮する圧縮機と、
周囲温度を検出する周囲温度検出器と、
庫内温度を検出する庫内温度検出器と、
前記圧縮機の回転数を検出する回転数検出器と、
前記圧縮機の運転時間を計測する運転時間計測部と、をさらに備え、
前記除霜要否判定部は、複数の異なる前記運転時間の範囲のそれぞれに対する、複数の異なる前記回転数の範囲ごとに除霜の要否についての除霜要否情報が設定され、複数の異なる前記周囲温度の範囲ごとに設けられたテーブルを参照し、検出された前記回転数と計測された前記運転時間とが、それぞれ当てはまる前記運転時間の範囲と前記回転数の範囲とに対応する除霜要否情報に基づいて、前記冷却器の冷却能力が除霜を必要とするレベルにまで低下したか否かを判定することを特徴とする請求項1に記載の冷蔵庫。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、除霜を行う冷蔵庫に関する。
【背景技術】
【0002】
冷蔵庫は、稼働するにしたがって冷却器に霜が付着することにより、冷却能力が低下する。
【0003】
特許文献1には、圧縮機の積算運転時間が一定時間に達すると除霜を行うことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−14261号公報(2009年1月22日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
除霜は、ヒータによって冷却器を加熱することによって霜を溶かすので、大きい電力を消費する。このため、除霜を多く行うほど冷蔵庫の年間電気代が高くなる。したがって、年間電気代を抑えるためには、できるだけ除霜の回数を少なくすることが求められる。
【0006】
ところで、例えば留守中のように長時間にわたってドアの開閉がない状態や、冷蔵庫の周囲温度や湿度が低い状態では、冷蔵庫内の湿度が低く保たれる。このような場合には、圧縮機の積算運転時間が一定時間に達しても、冷却能力が大幅に低下するまでに霜が付かないことがある。
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載された冷蔵庫は、このような冷却器に付着した霜の量が少ない状態でも、圧縮機の積算運転時間が一定時間に達すると除霜を行う。このため、当該冷蔵庫では、除霜の回数をより少なくすることができず、除霜による消費電力を低減することが困難であった。
【0008】
本発明は、前記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、除霜による消費電力を低減することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る冷蔵庫は、冷却器と、前記冷却器に付着した霜を除去する除霜ヒータと、前記冷却器の冷却能力が除霜を必要とするレベルにまで低下したか否かを判定する除霜要否判定部と、前記冷却能力が除霜を必要とするレベルにまで低下したと判定されると、前記除霜ヒータを動作させることによる庫内の上昇温度を前記庫内の上限温度から減じた所定温度を設定し、庫内温度が当該所定温度以下に冷却されると前記除霜ヒータを動作させる除霜制御部と、を備えている。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一態様によれば、除霜による消費電力を低減することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態1〜3に係る冷蔵庫の側面断面図である。
図2】本発明の実施形態1〜3に係る冷蔵庫の正面断面図である。
図3】本発明の実施形態1に係る冷蔵庫のシステム構成を示すブロック図である。
図4図3に示す冷蔵庫による除霜制御を示す庫内温度の変化を示す図である。
図5】本発明の実施形態2に係る冷蔵庫のシステム構成を示すブロック図である。
図6図5に示す冷蔵庫による除霜制御を示す図である。
図7図5に示す冷蔵庫による他の除霜制御を示す図である。
図8】本発明の実施形態3に係る冷蔵庫のシステム構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
〔冷蔵庫〕
本発明の実施形態1〜3に共通する冷蔵庫100(100A〜100C)の構成について、図1および図2に基づいて説明する。図1は、実施形態1〜3に係る冷蔵庫100の側面断面図である。図2は、冷蔵庫100の正面断面図である。
【0013】
(冷蔵庫100の構成)
図1に示すように、冷蔵庫100は本体1を備えている。本体1は、断熱材を充填した断熱箱体で形成されており、前面が開放されている。本体1の上部には冷蔵室2が設けられ、本体1の下部に冷凍室3が設けられる。冷蔵室2の前面には、冷蔵室扉2aが開閉可能に設けられている。冷凍室3の前面には、冷凍室扉3aが開閉可能に設けられている。
【0014】
冷凍室3の後背側には、背面壁3bが配置されている。背面壁3bと本体1の背面との間に冷気通路4が形成されている。また、冷凍室3の後背側には、冷気通路4の側方に、戻り通路6が形成されている。冷蔵室2の後背側には、背面壁2bが配置されている。背面壁2bと本体1の背面との間に冷気通路5が形成されている。
【0015】
冷気通路4は、戻り口4aおよび吐出口4bで冷凍室3内に開口している。冷気通路4には、ドレンパン7、冷却器14、送風ファン15および除霜ヒータ16が配置されている。
【0016】
送風ファン15は、冷却器14の上方に配置されており、冷却器14で生じた冷気を冷気通路4,5内に送り込む。除霜ヒータ16は、冷却器14に付着した霜を加熱することによって除去するヒータである。ドレンパン7は、霜が溶けることで生じたドレン水を回収するために設けられている。
【0017】
本体1の後背側の下部には、凹状に形成された機械室1aが設けられている。機械室1aには、蒸発皿8および圧縮機12が配置されている。蒸発皿8は、機械室1aの上端面と圧縮機12との間に配置されている。蒸発皿8は、ドレンパン7から排出されたドレン水を貯留するために設けられている。蒸発皿8に貯留されたドレン水は、圧縮機12の熱によって蒸発する。
【0018】
冷気通路5は、複数の吐出口5aで冷蔵室2内に開口している。戻り通路6の上端部は、冷蔵室2の下端部にまで伸びており、戻り口6aで開口している。また、戻り通路6の下端部は、冷気通路4における冷却器14の上流側と連通している。
【0019】
冷蔵室2内には、冷蔵室温度センサ9(庫内温度検出器)が設けられている。冷蔵室温度センサ9は、背面壁2bの上方に取り付けられている。冷蔵室温度センサ9は、冷蔵室2内の温度を検出するセンサである。
【0020】
なお、冷凍室3にも温度センサが設けられていてもよいが、冷凍室3の温度は冷蔵室2の温度から概ね把握できる。また、冷凍室3の温度は冷蔵室2の温度に比べて厳密に制御する必要がなく、少なくとも所定の上限温度以下を維持していればよい。したがって、冷蔵庫100内の温度に基づいて圧縮機12の運転を制御するには、少なくとも冷蔵室温度センサ9が設けられていればよい。
【0021】
本体1の上端面には、冷蔵庫100の周囲温度(外気温)を検知する周囲温度センサ10(周囲温度検出器)が設けられている。
【0022】
〔実施形態1〕
本発明の実施形態1について、図1図4に基づいて説明すれば、以下の通りである。
【0023】
(冷蔵庫100Aの構成)
図3は、本実施形態に係る冷蔵庫100Aのシステム構成を示すブロック図である。
【0024】
図1および図2に示すように、本実施形態に係る冷蔵庫100Aは、基本的に、上述したように構成されている。また、図3に示すように、冷蔵庫100Aは、冷凍サイクル部11と、制御部21とを備えている。
【0025】
冷凍サイクル部11は、冷凍サイクルを実現する部分である。冷凍サイクル部11は、圧縮機12と、凝縮器13と、冷却器14と、送風ファン15とを含んでいる。また、冷凍サイクル部11は、除霜を行うことで冷凍サイクルを通常の状態に戻すという観点から、除霜ヒータ16を含んでいる。さらに、冷凍サイクル部11は、圧縮機駆動回路17と、ファン駆動回路18と、ヒータ駆動回路19とを含んでいる。
【0026】
冷凍サイクル部11において、圧縮機12は、冷却器14で気体となった冷媒を吸い込んで圧縮することにより、冷媒を高温かつ高圧の気体に変える。凝縮器13は、圧縮機12から送られてきた高温かつ高圧の気体冷媒を凝縮することで放熱して、常温かつ高圧の液体冷媒に変える。凝縮器13からの常温かつ高圧の液体冷媒は、図示しないキャピラリーチューブを通過させることで、蒸発(気化)しやすいように圧力が下げられて冷却器14に送られる。冷却器14では、低温かつ低圧の冷媒が周辺の空気から熱を奪って蒸発(気化)する。これにより、冷却器14の周囲が冷却される。その冷気は、送風ファン15により冷蔵室2および冷凍室3に送り込まれる。
【0027】
圧縮機駆動回路17は、圧縮機12のモータを駆動するインバータを含んでいる。インバータは、商用交流を一旦直流に変換してから、可変周波数(あるいは可変電圧)の交流に変換することにより、モータ(圧縮機12)の回転数を目標通りに制御することができる。ファン駆動回路18は、送風ファン15のモータを駆動する回路である。圧縮機駆動回路17およびファン駆動回路18は、後述する運転制御部25によって制御される。
【0028】
ヒータ駆動回路19は、除霜ヒータ16を駆動する回路である。ヒータ駆動回路19は、後述する除霜制御部24によって制御される。
【0029】
制御部21は、冷凍サイクル部11の動作を制御する部分であり、例えば、マイクロコンピュータによって構成されている。制御部21は、メモリ22、冷却可否判定部23(除霜要否判定部)と、除霜制御部24と、運転制御部25とを含んでいる。
【0030】
メモリ22は、冷却可否判定部23および除霜制御部24が参照する参照データを記憶している。参照データとしては、上昇温度データと、冷却パターンデータとが用意されている。
【0031】
上昇温度データは、除霜ヒータ16が冷却器14を加熱することによって除霜を行う除霜期間に、庫内(特に冷蔵室温度センサ9が設けられた冷蔵室2)で上昇する温度のデータである。上昇温度データは、除霜の模擬試験で得られた上昇温度のデータ、過去に冷蔵室温度センサ9から取得した除霜前後の検出温度によって得られたデータなどが用いられる。
【0032】
冷却パターンデータは、冷却器14によって冷却される庫内の温度の時間に対する変化を表す冷却曲線のデータである。冷却過程における庫内の温度は、指数関数的減衰に則って低下していくことがわかっている。また、冷却器14の着霜の程度に応じて時定数が変わる。このため、冷却器14の冷却能力に応じて冷却曲線の形状が異なる。メモリ22は、冷却器14の着霜の程度に応じて異なる冷却器14の冷却能力に対応した多数の冷却パターンデータを記憶している。なお、除霜の模擬試験などで得られたデータから、冷却器14の着霜の程度と時定数との相関が定まっている場合は、冷却器14の着霜の程度に応じた時定数をメモリ22に記憶させてもよい。
【0033】
冷却可否判定部23は、メモリ22に記憶されている冷却パターンデータに基づいて冷却器14の冷却能力を特定し、特定した冷却能力で目標冷却時間(目標時間)内に目標冷却温度に達するまでの冷却を行うことができるか否かを判定する。冷却可否判定部23は、特定した冷却能力で目標冷却時間内に目標冷却温度に達するまでの冷却を行うことができない、すなわち冷却能力が除霜を必要とするレベルにまで低下したと判定することで、除霜が必要であると判定する。
【0034】
具体的には、冷却可否判定部23は、庫内温度(冷蔵室2の温度)についての冷却曲線の傾きを、冷蔵室2において所定の時間間隔で実測した2つの温度の差から特定し、当該温度でこの傾きを有する冷却パターンデータをメモリ22から読み出して取得する。冷却可否判定部23は、早期に冷却可否の判定を行うために、冷却の初期段階で上記の冷却パターンデータを取得することが好ましい。
【0035】
なお、目標冷却時間は、固定値であってもよいが、設定可能であってもよい。
【0036】
除霜制御部24は、除霜が必要であるという冷却可否判定部23の判定により、除霜ヒータ16の駆動を制御する。除霜制御部24は、庫内温度が、除霜に伴う庫内の温度上昇によって収蔵物に冷却不足等の影響を及ぼさない上限庫内温度(庫内の上限温度)を超えないような所定温度を設定し、当該所定温度に達した時点で除霜ヒータ16を動作させる。具体的には、除霜制御部24は、メモリ22に記憶されている上昇温度データに基づく除霜期間の上昇温度を上限庫内温度から減じることにより、所定温度を設定する。
【0037】
除霜制御部24は、除霜期間において圧縮機12の運転を停止する指示を運転制御部25に与える。
【0038】
運転制御部25は、冷凍サイクル部11の運転を制御する部分である。運転制御部25は、冷蔵室温度センサ9の測定温度が所定の上限値に達したときに冷却を行い、測定温度が所定の下限値に達したときに冷却を停止するという動作を繰り返して行うように、圧縮機12および送風ファン15の動作を制御する。運転制御部25は、この制御を行うために、冷却時に圧縮機駆動回路17およびファン駆動回路18に駆動指示を与え、冷却停止時に圧縮機駆動回路17およびファン駆動回路18に停止指示を与える。また、運転制御部25は、冷却時に圧縮機駆動回路17に回転数の情報も与える。圧縮機駆動回路17は、圧縮機12のモータを回転数の情報に基づく駆動周波数で駆動する。これにより、圧縮機12の回転数を可変に制御することができる。
【0039】
運転制御部25は、除霜制御部24からの運転停止指示を受けて、除霜期間における冷凍サイクル部11の運転制御を停止する。運転制御部25は、除霜制御部24からの運転停止指示が解除されると、冷凍サイクル部11の運転制御を再開する。
【0040】
(冷蔵庫100Aの除霜動作)
冷蔵庫100Aによる除霜動作について説明する。図4は、冷蔵庫100Aによる除霜制御を示す庫内温度の変化を示す図である。
【0041】
図4に示すように、冷却可否判定部23は、冷凍サイクル部11が運転停止状態から運転を再開したときから始まる所定の冷却可否判定期間において、冷却器14の冷却能力で目標冷却時間内に目標冷却温度に達するまでの冷却が可能であるか否かを判定する。冷却器14が着霜のない通常の冷却能力を有している状態では、図4に破線にて示す冷却パターンP1のように、庫内温度が目標冷却時間よりも十分早く目標冷却温度にまで低下する。この場合、を冷却曲線の傾きに基づいてメモリ22から取得した冷却パターンP1の冷却パターンデータから、冷却器14の冷却能力が除霜を必要とするレベルにまで低下していない、すなわち除霜が不要であると判定する。
【0042】
これにより、除霜制御部24は運転停止指示を運転制御部25に出力しない。したがって、運転制御部25は通常の運転制御処理を実行する。
【0043】
これに対し、着霜によって冷却器14の冷却能力が低下している状態では、図4に一点鎖線にて示す冷却パターンP2のように、庫内温度が目標冷却時間を超えても目標冷却温度にまで低下しない。この場合、冷却可否判定部23は、冷却曲線の傾きに基づいてメモリ22から取得した冷却パターンP2の冷却パターンデータから、冷却器14の冷却能力が除霜を必要とするレベルにまで低下している、すなわち除霜が必要であると判定する。
【0044】
除霜制御部24は、冷却可否判定部23による除霜が必要であるとの判定結果を受けて、メモリ22から読み出した上昇温度データに基づく上昇温度を上限庫内温度から減じて所定温度を除霜開始温度として設定する。除霜制御部24は、冷却パターンP2または冷蔵室温度センサ9の測定温度に基づいて所定温度に達したことを認識すると、所定の除霜期間で除霜を行うようにヒータ駆動回路19に駆動指令を与えるとともに、運転制御部25に除霜期間の運転停止指令を与える。
【0045】
除霜制御部24の指令により除霜ヒータ16が動作すると、図4に実線にて示すように、庫内温度は、除霜期間において上昇していくが、除霜期間の終わりに上限庫内温度を超えないようにできる。
【0046】
除霜制御部24は、除霜期間が終わると、ヒータ駆動回路19に停止指令を与えるとともに、運転制御部25への運転停止指令の出力を停止する。除霜制御部24の指令により、除霜ヒータ16が動作を停止するとともに、運転制御部25が冷凍サイクル部11の制御処理を再開する。これにより、図4に実線にて示すように、庫内温度が上限庫内温度から低下していく。この状態では、冷却器14の冷却能力が除霜によって着霜のない元の状態に戻っているので、庫内温度が短い時間で目標冷却温度に達する。
【0047】
(冷蔵庫100Aによる効果)
以上のように、本実施形態に係る冷蔵庫100は、冷却可否判定部23と、除霜制御部24とを備えている。冷却可否判定部23は、冷却器14によって冷却される庫内温度の時間に対する変化を表す冷却曲線の傾きに基づいて目標時間以内に目標冷却温度まで冷却が可能であるか否かを判定する。冷却可否判定部23は、目標時間以内に目標冷却温度まで冷却することが可能でないという判定により除霜が必要であると判定する。除霜制御部24は、除霜が必要であるという判定に基づいて、除霜ヒータ16を動作させることによる庫内の上昇温度を上限庫内温度から減じた所定温度を設定し、庫内温度が所定温度にまで冷却されると、除霜ヒータ16を動作させる。
【0048】
冷却器14への着霜は、冷蔵室扉2aおよび冷凍室扉3aの開閉状況、冷蔵庫100Aの周囲温度などの要因で進行の度合いが異なる。このため、冷却器14の冷却能力も、着霜の度合いによって異なってくる。そこで、上記の構成のように、冷蔵庫100Aの周囲温度、冷蔵室扉2aおよび冷凍室扉3aの開閉状況などに応じて変わる冷却器14の冷却能力を除霜の要否を判定する要素として用いる。これにより、冷却器の冷却能力が低下していないのに除霜が行われることを回避することができる。それゆえ、冷却能力に余裕がある状態では、できるだけ除霜の開始を遅らせることで、除霜の間隔(周期)を広げて、除霜回数を削減することができる。したがって、除霜による消費電力を低減することが可能になる。
【0049】
また、冷却可否判定部23は、冷却器14の冷却能力に応じて異なる冷却曲線の傾きに基づいて除霜が必要であるか否かを判定する。これにより、冷却能力に余裕があるか否かをより正確に判定することができる。
【0050】
また、所定温度は、除霜による上昇温度が加算されても上限庫内温度を超えないように設定される。これにより、除霜時の温度上昇による影響が収蔵物に及ばないようにすることができる。また、最小限の冷却を行うことにより除霜を開始するので、除霜までの冷却時間を短くすることができる。
【0051】
なお、除霜制御部24は、庫内温度が所定温度にまで冷却されると除霜ヒータ16を動作させるが、除霜ヒータ16の動作を開始させる(除霜を開始する)ときの庫内温度(除霜開始温度)は、所定温度に限らない。例えば、除霜開始温度は、所定温度より低くてもよい。これにより、除霜開始温度が所定温度に設定される場合と同様、除霜によって庫内温度が上限庫内温度を超えないようにして、除霜時の温度上昇によって収蔵物に影響が及ばないようにすることができる。このことから、除霜開始温度は所定温度以下であればよい。
【0052】
ただし、冷却パターンP2のような冷却能力が低下している状態では、所定温度より低い温度に冷却しようとすると、温度低下により長い時間を要する。したがって、除霜開始を遅らせない観点から、除霜開始温度は、所定時間であることが最も好ましく、所定温度からの低下幅が小さい範囲であることが好ましい。
【0053】
なお、上述した除霜制御例では、冷却曲線の傾きに基づいて除霜の要否を判定しているが、これ以外の判定手法を採用してもよい。例えば、着霜が進行することによって冷却曲線の傾きが緩やかになることに着目して、傾きの比率に基づいて除霜の要否を判定してもよい。具体的には、冷却器14に着霜のない状態の冷却曲線の傾きを基準とし、基準の傾きに対する比較対象となる冷却曲線の傾きの比率が一定値以下になると、冷却器14の冷却能力が除霜を必要とするレベルにまで低下していると判定する。
【0054】
〔実施形態2〕
本発明の実施形態1について、図1図2図5図7に基づいて説明すれば、以下の通りである。なお、本実施形態において、実施形態1における構成要素と同等の機能を有する構成要素については、同一の符号を付記して、その説明を省略する。
【0055】
(冷蔵庫100Bの構成)
図5は、本実施形態に係る冷蔵庫100Bのシステム構成を示すブロック図である。
【0056】
図1および図2に示すように、本実施形態に係る冷蔵庫100Bは、基本的に、上述したように構成されている。また、図5に示すように、冷蔵庫100Bは、冷凍サイクル部11と、制御部31と、運転時間計測部36とを備えている。
【0057】
運転時間計測部36は、圧縮機12の運転時間(ON時間)を計測する。運転時間計測部36は、圧縮機駆動回路17が動作している時間を圧縮機12の運転時間として計測する。
【0058】
制御部31は、冷凍サイクル部11の動作を制御する部分であり、例えば、マイクロコンピュータによって構成されている。制御部31は、運転制御部25と、メモリ32と、余剰電力量算出部33(除霜要否判定部)と、電力量比較部34と、除霜制御部35とを含んでいる。
【0059】
メモリ32は、余剰電力量算出部33および電力量比較部34が参照する参照データを記憶している。参照データとしては、圧縮機消費電力量データと、ヒータ消費電力量データとが用意されている。
【0060】
圧縮機消費電力量データは、冷却器14に着霜がない状態で運転される圧縮機12の消費電力量のデータである。その消費電力量は、圧縮機12の定格の消費電力と、冷却器14に着霜がない状態で目標冷却温度まで冷却したときの圧縮機12の運転時間との積であり、予め求められている。
【0061】
ヒータ消費電力量データは、除霜ヒータ16の除霜動作に必要な消費電力量のデータである。その消費電力量は、除霜ヒータ16の定格の消費電力と除霜期間の時間との積で予め求められる。除霜期間の時間としては、過去のデータの平均値、実験側に基づくプリセット値などを用いることができる。
【0062】
余剰電力量算出部33は、着霜によって冷却器14の冷却能力が低下したことに伴い、目標冷却温度まで冷却するために余剰に運転される圧縮機12の余剰消費電力量を算出する。具体的には、余剰電力量算出部33は、圧縮機12の実際の消費電力量を算出し、算出した消費電力量からメモリ32に記憶されている圧縮機消費電力量データの圧縮機消費電力量(基準電力量)を減じることにより、余剰消費電力を算出する。
【0063】
電力量比較部34は、余剰電力量算出部33によって算出された余剰電力量と、メモリ32に記憶されているヒータ消費電力量データのヒータ消費電力量とを比較する。電力量比較部34は、両消費電力量の比較の結果、余剰電力量がヒータ消費電力量を超えるか否かを判定する。電力量比較部34は、余剰電力量がヒータ消費電力量を超えると判定することで、冷却能力が除霜を必要とするレベルにまで低下している、すなわち除霜が必要であると判定する。また、電力量比較部34は、余剰電力量がヒータ消費電力量以下であると判定することで、除霜が不要であると判定する。
【0064】
除霜制御部35は、除霜が必要であるという電力量比較部34の判定により、除霜ヒータ16の駆動を制御する。除霜制御部35は、除霜が必要であると判定されたときの冷却が終了すると、除霜ヒータ16を動作させる。また、除霜制御部35は、除霜期間において圧縮機12の運転を停止する指示を運転制御部25に与える。
【0065】
(冷蔵庫100Bの除霜動作)
冷蔵庫100Bによる除霜動作について説明する。図6は、冷蔵庫100Bによる除霜制御を示す図である。
【0066】
余剰電力量算出部33は、運転時間計測部36から取得した運転時間と圧縮機12の定格消費電力とを乗算することにより、圧縮機12の実際の消費電力量を算出する。また、余剰電力量算出部33は、メモリ32から読み出した圧縮機消費電力量データの圧縮機消費電力量を、算出した消費電力量から減じることにより、余剰消費電力を算出する。
【0067】
図6に示すように、圧縮機12は、冷却器14に着霜がない状態では、通常の運転が可能であり、圧縮機12による余剰消費電力量は0である。圧縮機12が運転と運転停止とを繰り返していくうち、冷却器14に着霜が生じる。霜の量が増加すると、余剰消費電力量も霜の量に応じて増加する。
【0068】
電力量比較部34は、余剰電力量算出部33が余剰消費電力量を算出するごとに、余剰消費電力量とメモリ32から取得した除霜ヒータ16の消費電力量とを比較する。そして、電力量比較部34は、余剰消費電力量が除霜ヒータ16の消費電力量を超えたときに、除霜ヒータ16を動作(ON)させる。
【0069】
除霜ヒータ16が動作を停止(OFF)したときには、庫内温度が圧縮機ON時庫内温度を超えて上昇する場合がある。また、除霜時の加熱によって、冷却器14の温度は、通常冷却運転における圧縮機12の運転開始時に比べて高くなっている。このため、除霜が終了した直後に圧縮機12の運転が再開したときには、圧縮機12が無着霜時の通常運転時よりも長い時間運転される。その次の冷却においては、圧縮機12が冷却器14に無着霜時の通常運転に戻る。
【0070】
(冷蔵庫100Bによる効果)
以上のように、本実施形態に係る冷蔵庫100Bは、余剰電力量算出部33と、電力量比較部34とを備えている。余剰電力量算出部33は、冷却器14に着霜のある状態で目標温度(目標冷却温度)に冷却されるまで圧縮機12を運転することにより生じた余剰消費電力量を算出する。電力量比較部34は、余剰消費電力量が除霜ヒータ16の消費電力量を超えるか否かを判定することにより、前記冷却器の冷却能力が除霜を必要とするレベルにまで低下したか否かを判定する。
【0071】
上記の構成によれば、着霜が進行するほど圧縮機12の運転時間が長くなるので、伸びた運転時間に相当する圧縮機の消費電力量が余剰消費電力量として算出される。この余剰消費電力量が除霜ヒータ16の消費電力量以下である段階では、除霜による消費電力量の低減を見込めないので、除霜を行うことを控える。一方、余剰消費電力量が除霜ヒータ16の消費電力量を超えれば、除霜によって消費電力量の低減を図ることができる。
【0072】
(冷蔵庫100Bの他の除霜動作)
図6に示す除霜制御例では、余剰電力量算出部33が、冷却器14に着霜のない状態で、通常の、すなわち除霜直後の冷却ではない冷却、より好ましくは、除霜直後の冷却の後に行われる1回の冷却において運転される圧縮機12の消費電力量(通常運転時の消費電力量)を基準電力量とし、当該基準電力量を超える電力量を余剰消費電力量として算出している。しかしながら、基準電力量は、これに限らず、除霜直後の冷却時において圧縮機12が運転されるときの消費電力量を基準電力量としてもよい。
【0073】
次に、除霜直後に運転される圧縮機12の消費電力量を基準電力量とする除霜制御例について説明する。図7は、冷蔵庫100Bによる他の除霜制御を示す図である。
【0074】
本除霜制御例では、図7に示すように、除霜直後に運転される圧縮機12の消費電力量を基準電力量として余剰消費電力量を算出する。
【0075】
(除霜制御例による効果の比較)
図6に示す除霜制御例(第1制御例)で用いた基準電力量(第1基準電力量)は、図7に示す除霜制御例(第2制御例)で用いた基準電力量(第2基準電力量)よりも少ない。このため、第2基準電力量に対する余剰消費電力量は、第1基準電力量に対する余剰消費電力量よりも少なくなる。
【0076】
これにより、第2制御例では、第1制御例と比べて、除霜の開始時期を遅らせることができる。それゆえ、除霜の間隔を広げて、除霜回数を削減することができる。
【0077】
これに対し、第1制御例では、第2制御例と比べて、除霜の開始時期を早めることができる。それゆえ、冷却器14の着霜による圧縮機12の無駄な運転を早い段階で回避することができる。
【0078】
このように、基準電力量を第1基準電力量に設定するか第2基準電力量するかに応じて、除霜の開始時期を遅らせたり早めたりすることができる。したがって、冷却器14が比較的着霜しやすい冷蔵庫100Bにおいては、できるだけ除霜の開始時期を早めるように、基準電力量を第1基準電力量に設定すればよい。一方、冷却器14が比較的着霜しにくい冷蔵庫100Bにおいては、できるだけ除霜の開始時期を遅らせるように、基準電力量を第2基準電力量に設定すればよい。
【0079】
〔実施形態3〕
本発明の実施形態3について図1図2および図8を用いて説明すれば、以下の通りである。なお、本実施形態において、実施形態1および2における構成要素と同等の機能を有する構成要素については、同一の符号を付記して、その説明を省略する。
【0080】
(冷蔵庫100Cの構成)
図8は、本実施形態に係る冷蔵庫100Cのシステム構成を示すブロック図である。
【0081】
図1および図2に示すように、本実施形態に係る冷蔵庫100Cは、基本的に、上述したように構成されている。また、図8に示すように、冷蔵庫100Cは、冷凍サイクル部11と、運転制御部25と、運転時間計測部36と、メモリ42と、除霜要否判定部43と、除霜制御部44と、回転数センサ45(回転数検出器)とを備えている。
【0082】
回転数センサ45は、圧縮機12のモータの回転数を検出するFGセンサなどのセンサである。例えば、DCモータには、FGセンサが取り付けられている。DCモータが有するロータの外周には、交互にN極とS極とが並ぶように着磁された360個のFG(Frequency Generator)歯が設けられている。FGセンサは、ロータが回転することで生じる磁界を検出するホール素子やMRセンサなどの磁気センサであり、回転数に応じたパルス状のFG信号を出力する。なお、圧縮機12が可変周波数の交流で駆動されるインバータ駆動である場合には、回転数センサ45の検出値として駆動信号を使用することもできる。
【0083】
制御部41は、冷凍サイクル部11の動作を制御する部分であり、例えば、マイクロコンピュータによって構成されている。制御部41は、運転制御部25と、メモリ42と、除霜要否判定部43と、除霜制御部44とを含んでいる。
【0084】
メモリ42は、除霜要否判定部43が参照するテーブル記憶している。
【0085】
テーブルは、圧縮機12の複数の異なる運転時間の範囲のそれぞれに対する、圧縮機12の複数の異なる回転数の範囲ごとに除霜の要否についての除霜要否情報が設定されている。また、テーブルは、例えば、表1〜表3に示すように、複数の異なる外気温(冷蔵庫100Cの周囲温度)の範囲ごとに用意されている。
【0086】
表1に示すテーブルは、外気温の範囲が低外気温(15℃以下)に対応している。表2に示すテーブルは、外気温の範囲が中外気温(15℃を超えかつ30℃以下)に対応している。表3に示すテーブルは、外気温の範囲が高外気温(30℃を超える)に対応している。
【0087】
表1〜表3に示す例では、運転時間の範囲として、30分以下の短時間と、30分を超えかつ90分以下の中時間と、90分を超える長時間とが定められている。また、表1〜表3に示す例では、回転数の範囲として、1500rpm以下の低回転と、1500rpmを超えかつ2500rpm以下の中回転と、2500rpmを超える高回転とが定められている。
【0088】
なお、各テーブルに示す外気温の範囲、運転時間の範囲および回転数の範囲は、それぞれ一例であって、これらに限定されるものではない。
【0089】
除霜要否判定情報としては、下記の除霜要否判定情報A〜Dが予め定められている。
(A)冷却器14の着霜が少ないので、除霜が不要である。
(B)冷却器14の着霜が多いために冷却能力が低下しているので、除霜が必要である。
(C)冷却器14の着霜が少ないが、冷却能力が不足しているので、回転数を上昇させる。
(D)冷却器14の着霜が多いために冷却能力に余裕がないので、直ぐに除霜が必要である。
【0090】
除霜要否判定情報Dは、冷却器14の冷却能力をさらに高めることができず、かつ高負荷の状態であるので、直ぐに除霜を開始することが好ましいことを意味している。除霜要否判定情報Dに基づけば、庫内温度の上がり過ぎを防止するため、できるだけ冷えた段階で早めに除霜を開始することが判定できる。例えば、圧縮機12が停止して直ぐに除霜を開始する。これに対し、除霜要否判定情報Bは、冷却器14の冷却能力にまだ少し余裕があるので、次の冷却において実施形態1で行うように、ある程度冷却を進めてから除霜を開始してもよい。
【0091】
除霜要否判定情報A〜Dの内容は、あくまでも一例であって上記の例に限定されず、圧縮機12の性能、冷却器14の性能などに応じて適宜定められる。
【0092】
【表1】
【0093】
【表2】
【0094】
【表3】
【0095】
除霜要否判定部43は、圧縮機12が冷却終了後に停止したときに、メモリ42に記憶されているテーブルから、周囲温度センサ10によって検出された外気温が当てはまる外気温の範囲に対応したテーブルを参照する。除霜要否判定部43は、参照するテーブルにおいて、回転数センサ45によって検出された回転数と、運転時間計測部36によって計測された運転時間とが、それぞれ当てはまる運転時間の範囲と回転数の範囲とに対応する除霜要否情報を取得する。除霜要否判定部43は、取得した除霜要否判定情報に基づいて、冷却器14の冷却能力が除霜を必要とするレベルにまで低下したか否か(除霜が必要であるか否か)を判定する。
【0096】
除霜制御部44は、除霜が必要であるという除霜要否判定部43の判定により、除霜ヒータ16の駆動を制御する。除霜制御部44は、除霜が必要であると判定されたときの冷却が終了すると、除霜ヒータ16を動作させる。除霜制御部44は、除霜期間において圧縮機12の運転を停止する指示を運転制御部25に与える。
【0097】
(冷蔵庫100Cの除霜動作)
冷蔵庫100Cの除霜制御例を表1〜表3を参照して説明する。
【0098】
〈低外気温時〉
表1に示すように、圧縮機12が短時間の運転で停止したときは、目標冷却温度まで速く冷えている。このため、圧縮機回転数が低回転数である場合、冷却器14の着霜がまだ少ない。この場合、除霜要否判定部43は、除霜要否判定情報Aを取得し、除霜が不要であると判定する。
【0099】
圧縮機回転数が中回転数であるときは、冷蔵室扉2aまたは冷凍室扉3aの開閉や庫内への熱負荷の投入などで庫内温度が上昇しているために、圧縮機12の回転数が上がっているが、冷却器14の冷却能力には余裕がある。この場合、除霜要否判定部43は、除霜要否判定情報Aを取得し、除霜が不要であると判定する。
【0100】
なお、表1において、圧縮機回転数が高回転数である場合は、いずれの圧縮機運転時間においても、運転状態として非常に稀なケースであるので、除霜要否判定情報の割り当てをしていない。ただし、この場合は、圧縮機回転数が中回転数であるときと同様の判定としてもよい。
【0101】
圧縮機12が中時間または長時間の運転で停止したときは、回転数が低回転数であると、圧縮機12を停止できない状況が長く続くので、除霜が好ましい。回転数を中回転数にまで高めても、同様である。これらの場合、除霜要否判定部43は、除霜要否判定情報Bを取得し、除霜が必要であると判定する。なお、圧縮機回転数が高回転数である場合も同様に判定してもよい。
【0102】
〈中外気温時〉
表2に示すように、圧縮機12が短時間の運転で停止したときは、回転数に関わらず除霜は不要である。この場合、除霜要否判定部43は、除霜要否判定情報Aを取得し、除霜が不要であると判定する。
【0103】
圧縮機12が中時間の運転で停止したとき、低回転数時および中回転数時では、回転数を高めれば冷却能力を高めることができる。この場合、除霜要否判定部43は、除霜要否判定情報Cを取得し、除霜が不要であると判定する。圧縮機12が中時間の運転で停止したときでも、高回転数時には、回転数を高めることが困難になるので、除霜が直ちに必要となる。この場合、除霜要否判定部43は、除霜要否判定情報Dを取得し、除霜が必要であると判定する。
【0104】
〈高外気温時〉
表3に示すように、圧縮機12が短時間の運転で停止したとき、中回転数時および高回転数時では、着霜が少ないので、除霜は不要である。この場合、除霜要否判定部43は、除霜要否判定情報Aを取得し、除霜が不要であると判定する。
【0105】
圧縮機12が中時間の運転で停止したとき、中回転数時では、圧縮機12の運転時間が長引いているが、回転数を高めれば冷却能力を高めることができる。この場合、除霜要否判定部43は、除霜要否判定情報Cを取得し、除霜が不要であると判定する。また、高回転数時には、回転数を高めることが困難であるので、除霜が直ちに必要となる。この場合、除霜要否判定部43は、除霜要否判定情報Dを取得し、除霜が必要であると判定する。
【0106】
圧縮機12が長時間の運転で停止したとき、中回転数時には、回転数を高めることで冷却器14の冷却能力の向上を図る。この場合、除霜要否判定部43は、除霜要否判定情報Cを取得し、除霜が不要であると判定する。また、高回転数時には、回転数を高めることが困難であるので、除霜が直ちに必要となる。この場合、除霜要否判定部43は、除霜要否判定情報Dを取得し、除霜が必要であると判定する。圧縮機12が長時間の運転となったときには、中回転数時であっても除霜を直ちに行うように、除霜要否判定情報Dとしてもよい。
【0107】
なお、表3において、圧縮機回転数が低回転数である場合は、運転状態として非常に稀なケースであるので、除霜要否判定情報の割り当てをしていない。ただし、この場合は、圧縮機回転数が中回転数であるときと同様の判定としてもよい。
【0108】
(冷蔵庫100Cによる効果)
以上のように、本実施形態に係る冷蔵庫100Cは、除霜要否判定部43を備えている。除霜要否判定部43は、テーブルを参照して、外気温、圧縮機12の運転時間および圧縮機12の回転数に対応した除霜要否判定情報を取得し、除霜要否判定情報に基づいて除霜の要否を判定する。
【0109】
これにより、外気温度と圧縮機の運転状況とに基づいて冷却器の冷却能力を判定することができる。また、テーブルを参照することで、除霜要否判定情報を取得することができる。それゆえ、演算処理を行うことなく、除霜の要否を判定することができる。
【0110】
一般に、比較的安価な普及機の冷蔵庫は、多くのセンサが設けられておらず、かつ高性能の処理系を備えていないので、演算処理を行うことが困難である。これに対し、本実施形態によれば、そのような冷蔵庫にも上記の除霜制御が実施可能である。ただし、普及機の冷蔵庫でも、圧縮機運転時間の計測、圧縮機回転数の計測、外気温の計測程度は行うことができる機能を備えている。したがって、これらの3つの物理量の監視と、テーブルとを用いて除霜の要否を判定することが可能になる。
【0111】
また、除霜の要否に、普及機の冷蔵庫が備える既存の安価な制御回路を利用することができる。しかも、演算が不要になるので、新たな部品(高性能の演算回路等)の追加が不要となり、コストアップを回避できる。
【0112】
なお、冷蔵庫100Cは、メモリ42にテーブルを記憶しているが、テーブルを保持していなくてもよい。例えば、冷蔵庫100Cがインターネットに接続できる機能を備えていれば、除霜要否判定部43は、クラウドサーバなどに保存されたテーブルにアクセスして、除霜要否の判定を行ってもよい。
【0113】
〔ソフトウェアによる実現例〕
冷蔵庫100A〜100Cの制御ブロック(特に、制御部21,31,41の冷却可否判定部23、除霜制御部24、運転制御部25、余剰電力量算出部33、電力量比較部34、除霜要否判定部43および除霜制御部44)は、集積回路(ICチップ)等に形成された論理回路(ハードウェア)によって実現してもよいし、ソフトウェアによって実現してもよい。
【0114】
後者の場合、冷蔵庫100A〜100Cは、各機能を実現するソフトウェアであるプログラムの命令を実行するコンピュータを備えている。このコンピュータは、例えば少なくとも1つのプロセッサ(制御装置)を備えているとともに、上記プログラムを記憶したコンピュータ読み取り可能な少なくとも1つの記録媒体を備えている。そして、上記コンピュータにおいて、上記プロセッサが上記プログラムを上記記録媒体から読み取って実行することにより、本発明の目的が達成される。
【0115】
上記プロセッサとしては、例えばCPU(Central Processing Unit)を用いることができる。上記記録媒体としては、「一時的でない有形の媒体」、例えば、ROM(Read Only Memory)等の他、テープ、ディスク、カード、半導体メモリ、プログラマブルな論理回路などを用いることができる。また、上記プログラムを展開するRAM(Random Access Memory)などをさらに備えていてもよい。
【0116】
また、上記プログラムは、該プログラムを伝送可能な任意の伝送媒体(通信ネットワークや放送波等)を介して上記コンピュータに供給されてもよい。なお、本発明の一態様は、上記プログラムが電子的な伝送によって具現化された、搬送波に埋め込まれたデータ信号の形態でも実現され得る。
【0117】
〔まとめ〕
本発明の態様1に係る冷蔵庫は、冷却器14と、前記冷却器14に付着した霜を除去する除霜ヒータ16と、前記冷却器14の冷却能力が除霜を必要とするレベルにまで低下したか否かを判定する除霜要否判定部(冷却可否判定部23,余剰電力量算出部33,電力量比較部34,除霜要否判定部43)と、前記冷却能力が除霜を必要とするレベルにまで低下したと判定されると、前記除霜ヒータ16を動作させることによる庫内の上昇温度を前記庫内の上限温度から減じた所定温度を設定し、庫内温度が当該所定温度以下に冷却されると前記除霜ヒータ16を動作させる除霜制御部24,35,44と、を備えている。
【0118】
上記の構成によれば、冷蔵庫の周囲温度、扉の開閉状況などに応じて変わる冷却器の冷却能力を除霜の要否を判定する要素として用いる。これにより、冷却器の冷却能力が低下していないのに除霜が行われることを回避することができる。それゆえ、冷却能力に余裕がある状態では、できるだけ除霜の開始を遅らせることができる。したがって、除霜による消費電力を低減することが可能になる。
【0119】
本発明の態様2に係る冷蔵庫は、上記態様1において、前記除霜要否判定部が、前記冷却器14によって冷却される前記庫内温度の時間に対する変化を表す冷却曲線の傾きに基づいて、目標時間以内に目標冷却温度まで冷却することが可能であるか否かを判定することにより、前記冷却器14の冷却能力が除霜を必要とするレベルにまで低下したか否かを判定してもよい。
【0120】
上記の構成によれば、冷却器の冷却能力に応じて異なる冷却曲線の傾きに基づいて除霜が必要であるか否かを判定する。これにより、冷却能力に余裕があるか否かをより正確に判定することができる。
【0121】
本発明の態様3に係る冷蔵庫は、上記態様1において、前記冷却器14からの冷媒を圧縮する圧縮機12をさらに備え、前記除霜要否判定部が、前記冷却器14に着霜のある状態で目標温度に冷却されるまで前記圧縮機12を運転することにより生じた余剰消費電力量を算出する余剰電力量算出部33と、前記余剰消費電力量が除霜ヒータ16の消費電力量を超えるか否かを判定することにより、前記冷却器14の冷却能力が除霜を必要とするレベルにまで低下したか否かを判定する電力量比較部34とを有していてもよい。
【0122】
上記の構成によれば、着霜が進行するほど圧縮機の運転時間が長くなるので、伸びた運転時間に相当する圧縮機の消費電力量が余剰消費電力量として算出される。この余剰消費電力量がヒータの消費電力量以下である段階では、除霜による消費電力量の改善を見込めないので、除霜を行うことを控える。一方、余剰消費電力量が除霜ヒータの消費電力量を超えれば、除霜によって消費電力量の改善を図ることができる。
【0123】
本発明の態様4に係る冷蔵庫は、上記態様3において、前記余剰電力量算出部33が、除霜直後の冷却の後に行われる1回の冷却において運転される前記圧縮機12の消費電力量を基準電力量とし、当該基準電力量を超える電力量を前記余剰消費電力量として算出してもよい。
【0124】
上記の構成によれば、除霜直後の冷却の後に行われる1回の冷却での圧縮機の消費電力量を基準電力量とする。これにより、基準電力量が少ない値に設定されるので、余剰消費電力量が早い段階で除霜ヒータの消費電力量を超える。それゆえ、除霜の開始時期を早めることができる。したがって、冷却器の着霜による圧縮機の無駄な運転を速い段階で回避することができる。
【0125】
本発明の態様5に係る冷蔵庫は、上記態様3において、前記余剰電力量算出部33が、前記冷却器14の除霜直後の冷却において運転される前記圧縮機12の消費電力量を基準電力量とし、当該基準電力量を超える電力量を前記余剰消費電力量として算出してもよい。
【0126】
除霜直後の冷却では、除霜によって上昇した庫内温度を冷却するため、通常の冷却よりも圧縮機の消費電力量が多くなる。上記の構成によれば、基準電力量が、多い値に設定されるので、余剰消費電力量が除霜ヒータの消費電力量を超えるのが遅くなる。それゆえ、除霜の開始時期を遅らせることができる。したがって、除霜の間隔を広げて、除霜回数を削減することができる。
【0127】
本発明の態様6に係る冷蔵庫は、上記態様1において、前記冷却器14からの冷媒を圧縮する圧縮機12と、周囲温度を検出する周囲温度検出器(周囲温度センサ10)と、庫内温度を検出する庫内温度検出器(冷蔵室温度センサ9)と、前記圧縮機12の回転数を検出する回転数検出器(回転数センサ45)と、前記圧縮機12の運転時間を計測する運転時間計測部36と、をさらに備え、前記除霜要否判定部が、複数の異なる前記運転時間の範囲のそれぞれに対する、複数の異なる前記回転数の範囲ごとに除霜の要否についての除霜要否情報が設定され、複数の異なる前記周囲温度の範囲ごとに設けられたテーブルを参照し、検出された前記回転数と計測された前記運転時間とが、それぞれ当てはまる前記運転時間の範囲と前記回転数の範囲とに対応する除霜要否情報に基づいて、前記冷却器14の冷却能力が除霜を必要とするレベルにまで低下したか否かを判定してもよい。
【0128】
上記の構成によれば、周囲温度および圧縮機の運転状況に基づいて冷却器の冷却能力を判定することができる。また、テーブルを参照することで除霜要否判定情報を取得することができる。それゆえ、高度な演算処理を行うことなく、除霜の要否を判定することができる。
【0129】
〔付記事項〕
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。さらに、各実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。
【符号の説明】
【0130】
9 冷蔵室温度センサ(庫内温度検出器)
10 周囲温度センサ(周囲温度検出器)
12 圧縮機
14 冷却器
16 除霜ヒータ
23 冷却可否判定部(除霜要否判定部)
33 余剰電力量算出部(除霜要否判定部)
34 電力量比較部
36 運転時間計測部
43 除霜要否判定部
45 回転数センサ(回転数検出器)
100,100A〜100C 冷蔵庫
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8