特許第6953332号(P6953332)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6953332
(24)【登録日】2021年10月1日
(45)【発行日】2021年10月27日
(54)【発明の名称】移植式導線
(51)【国際特許分類】
   A61N 1/36 20060101AFI20211018BHJP
【FI】
   A61N1/36
【請求項の数】20
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2018-42014(P2018-42014)
(22)【出願日】2018年3月8日
(62)【分割の表示】特願2014-503961(P2014-503961)の分割
【原出願日】2012年4月4日
(65)【公開番号】特開2018-110892(P2018-110892A)
(43)【公開日】2018年7月19日
【審査請求日】2018年4月9日
(31)【優先権主張番号】61/471,496
(32)【優先日】2011年4月4日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】521277590
【氏名又は名称】スティムウェイブ テクノロジーズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【弁理士】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【弁理士】
【氏名又は名称】那須 威夫
(74)【代理人】
【識別番号】100196612
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 慎也
(72)【発明者】
【氏名】ラーソン パトリック
(72)【発明者】
【氏名】アンドレセン チャッド
(72)【発明者】
【氏名】ペリーマン ローラ タイラー
【審査官】 安田 昌司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−055912(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0243208(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0265543(US,A1)
【文献】 特開2008−023353(JP,A)
【文献】 特表2009−523402(JP,A)
【文献】 特開2008−161667(JP,A)
【文献】 特表2002−524124(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/057046(WO,A2)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0125269(US,A1)
【文献】 国際公開第2010/104569(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N 1/00−1/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者内の神経組織を調整するための移植式神経刺激装置であって、該移植式神経刺激装置が、
誘導針か注射針を通して患者の体内に挿入されるように形状が定められ且つ構成されたエンクロージャであって、該エンクロージャは前記移植式神経刺激装置の縦方向の長さを覆う大きさである、エンクロージャと、
前記エンクロージャ内に収容され且つ1つ以上の電気パルスを神経組織に適用するように構成された1つ以上の電極と、
前記エンクロージャ内に収納された第1のアンテナであって、前記移植式神経刺激装置から物理的に分離された第2のアンテナから、非誘導カップリングを介して、無線により、電気エネルギーを含む入力信号を受信するように構成された、前記第1のアンテナと、
前記第1のアンテナ及び前記電極に結合された回路であって、前記第2のアンテナから無線により非誘導的に受信された前記入力信号に含まれる前記電気エネルギーを使用して、神経組織の調整のための好適な電気パルスを発生し、且つ前記電気パルスを前記1つ以上の電極に供給するように構成された、前記回路とを含む、
前記移植式神経刺激装置。
【請求項2】
前記移植式神経刺激装置は、ゲージ14以下の直径を有する前記誘導針又は前記注射針の中に納まるようにまとめられる、請求項1に記載の移植式神経刺激装置。
【請求項3】
前記エンクロージャは、該エンクロージャが前記誘導針又は前記注射針の中へ挿入されるときナビゲーション探り針を収容するように構成される内腔を含む、請求項2に記載の移植式神経刺激装置。
【請求項4】
前記エンクロージャは、少なくとも1つの外周内腔を更に含む、請求項3に記載の移植式神経刺激装置。
【請求項5】
前記内腔は単独内腔延長細管内に位置し、前記少なくとも1つの外周内腔は延長細管内に位置る、請求項4に記載の移植式神経刺激装置。
【請求項6】
前記エンクロージャは、複数のアンテナ連結接点を囲み、該アンテナ連結接点は前記第1のアンテナ及び前記回路に電気的に結合される、請求項5に記載の移植式神経刺激装置。
【請求項7】
前記アンテナ連結接点は、前記エンクロージャ内の前記電極に近接して位置する2〜8のアンテナ連結ペアを含む、請求項6に記載の移植式神経刺激装置。
【請求項8】
前記アンテナ連結接点は、導線によって前記第1のアンテナ及び前記回路に接続され、該導線の各々はそれぞれの外周内腔内に囲まれる、請求項6に記載の移植式神経刺激装置。
【請求項9】
前記エンクロージャは、患者の硬膜外腔へ挿入するための大きさ及び形状である、請求項3に記載の移植式神経刺激装置。
【請求項10】
前記エンクロージャは、前記移植式神経刺激装置が前記患者の内側に移植された後、前記神経組織上の側臥位を確保するように構成された凹形の形状を有する、請求項9に記載の移植式神経刺激装置。
【請求項11】
前記側臥位は、前記患者の脊髄の背部面に関する、請求項10に記載の移植式神経刺激装置。
【請求項12】
前記エンクロージャは、丸みを帯びた遠位端又は尖った遠位端を含む、請求項3に記載の移植式神経刺激装置。
【請求項13】
前記電極は、前記神経組織に対して実質的に垂直方向の前記1つ以上の電気パルスに関連する電流を方向付けるように方向に関して構成される、請求項1に記載の移植式神経刺激装置。
【請求項14】
前記1以上の電極は、電極の円筒又は半円筒アレイを含む、請求項1に記載の移植式神経刺激装置。
【請求項15】
前記回路は、1以上のダイオード、1以上の抵抗器、及び1以上のコンデンサを含む、請求項1に記載の移植式神経刺激装置。
【請求項16】
前記回路は、荷電平衡回路及び分離回路を含む、請求項15に記載の移植式神経刺激装置。
【請求項17】
前記回路は、0.5mmより小さい半径に十分に曲げられる、請求項15に記載の移植式神経刺激装置。
【請求項18】
前記回路は、前記電極に対して近接して配置される、請求項15に記載の移植式神経刺激装置。
【請求項19】
前記第1のアンテナは、導電性トレースを含む、請求項1に記載の移植式神経刺激装置。
【請求項20】
前記第1のアンテナは、導線を含む、請求項1に記載の移植式神経刺激装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2011年6月18日に出願された米国仮61/471、496号の利益を主張するものであり、(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)に対する優先権を主張する。
本説明は、移植式神経刺激装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
神経障害性症状の治療には、種々の体内での電気的な刺激技術が使用されるが、その中には、1本以上の移植式有線導線に接続された電池式の皮下移植式パルス発生器(IPG)が含まれる。これらの導線は機械的に除去しなければならない他、導線拡張管のショック、感染、IPGと拡張管からの不快な刺激等、多くの欠点がある。多種の脊髄電気刺激(SCS)が、鎮痛治療法に導線を用いている。多くの場合、これらの導線の構造は、円筒状の経皮導線ヘラ状導線を構造因子として含んでいる。円筒状の経皮導線は典型的には、直径1.3mm内であり、試験的移植期間中の効果性を高めるために、多数の環状の電極を抱合しており、多くの場合、恒久的に埋込まれることとなる。ヘラ状導線は、しかしながら、表面がより広い電極が指向的に興奮神経束の抑制に向けられ、椎弓切開術外科手術を必要とする。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
移植式神経刺激装置無線導線を提供する実施態様もある。無線導線には、以下を内包する:エンクロージャ;エンクロージャの筐体; a)1以上の電気パルスを神経組織に送るよう設定された1個以上の電極; b)電気放射カップリングを介して電気エネルギーを含む入力信号を第二のアンテナから受診するように設定された第一のアンテナ(第二のアンテナは、移植式神経刺激装置導線からは物理的に分離されている); c)第一のアンテナに電気的に接続された1以上のサーキット:サーキットは入力信号に含まれる電気エネルギーを使って神経組織の刺激に適した1以上の電気パルスを発生させ、それを1個以上の電極に送る。その電極内ではエンクロージャが対象者の体内に誘導針か注射針を通して挿入されるよう形成・配置されている。
実施態様には1以上の特性が含まれる。例えば、エンクロージャの一部は、導線が対象者の体内に挿入された後、神経組織に直接接触しない電極を残す。エンクロージャの形状は半円筒状であり、電極には、実質上、神経組織に垂直の方向の1以上の電気パスルに関連した電流路を向ける、少なくとも一個の指向性電極を含む。電極には、半円筒状の電極列を含む。電極は、白金、白金イリジウム、電化ガリウム、電化チタン、酸化イリジウム、またはそれらの合金製であり、各々、縦方向の長さ1.0から6.0mm、幅0.4から3.0mmである。2から16個の電極の間隔は、1mmから6mmであり、その総合表面積は、0.8mm2から60.00mm2である。
【0004】
導線は、長さ1.3mmから2.0mm、幅2.0mmから4.0mmのヘラ状導線でもよい。導線は対象者の体内に挿入された後に、神経組織上の側臥位を確実に保つため、中くぼ(凹)型の形状にすることが出来る。側臥位は、対象者の脊髄背面を考慮の上、位置づけられる。例えば、導線の横面は中くぼ(凹)型で1.0mmから1.5mmであり、と中くぼ(凹)型の先端は0.2mmから0.3mmである。
【0005】
導線は、対象者の硬膜外腔へ、注射針、例えば、14ゲージ以下のサイズのチューヒー針を通して挿入することが出来る。導線は脊柱関連の神経組織の治療の為に挿入されることもある。
【0006】
エンクロージャは更に、エンクロージャ挿入中にナビゲーション探り針を操作するための内腔を備えることができる。エンクロージャは更に、遠位端を有することもある。遠位端は、丸みを帯びた長さ0.5mmから2.0mmのものであるか、先端の尖った長さ2.0と6.0mmのものでもよい。エンクロージャの外部は、生物的適合性のポリマーで塗膜される。そのポリマーは少なくとも:ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、パレリン、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、またはポリカーボネイトの一つを含む。エンクロージャ外側は更に、シリコンエラストマーで塗膜される。エンクロージャはまた、アンテナ連結接点を内蔵することもできる。アンテナ接点はアンテナとサーキットを電気的に接続し、アンテナと周辺組織の組織を連結すべく設定される。アンテナ連結接点には、2から8本のアンテナ連結ペアが含まれる。アンテナ連結接点は、エンクロージャ内の電極に相対的に基部に設置されることもある。各々のアンテナ連結接点は、縦方向の長さは1.0mmから6.0mm、幅は1.0mmから2.5mmである。それぞれのアンテナ連結接点の間隔は30mmから80mmである。少なくともアンテナのうちの一本は、サーキットの一つを利用した誘電性トレースとして形成することも出来る。アンテナの少なくとも一本は、誘電性ワイヤとして、サーキットの一つに接続するよう設定することが出来る。サーキットはフレキシブル回路でもよい。フレキシブル回路は、半径0.5mm以下に折り曲げることが出来る。フレキシブル回路は、エンクロージャ内の電極に相対的に基部に設置できる。また、フレキシブル回路には、波型調整サーキットを含むことが出来る。
【0007】
神経痛治療方法を提供する実施態様もある。そのような方法としては、以下を収納するエンクロージャ含む、移植式神経刺激装置導線を提供する方法がある:1以上の電極;電気放射カップリングを介して、電気エネルギーを含む入力信号を受信する、移植式神経刺激装置導線から物理的に分離された第二のアンテナ;第一のアンテナに電気接続された1個以上のフレキシブル回路であり、そのフレキシブル回路は、入力信号に含まれる電気エネルギーを用いて、電極に印加するに適した1以上の電気パルス発生させ;1以上の電気パルスを1個以上の電極へ送瑠葉に設定され、神経刺激装置導線誘導針か針を通して対象者の体内へ移植される。
【0008】
実施態様には、以下の1項目以上の特徴が含まれる。例えば、エンクロージャの一部は導線が対象者の体内に挿入された後、神経組織に直接接触しない電極を残す。電極は、実質上、神経組織に垂直の方向の1以上の電気パスルに関連した電流路を向ける、少なくとも一個の指向性電極を含む。注射針には14ゲージ以下のチューヒー針を使用することも出来る。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、誘導針を介して硬膜外腔に移植された2本の無線ヘラ状導線を示す。
図2図2は、誘導針を介して人体内に移植された無線ヘラ状導線を示す。
図3図3は、脊髄の硬膜に接触する位置の無線ヘラ状導線を示す。
図4A図4Aは、誘導針の例を示す。
図4B図4Bは、図4Aで示された誘導針の横断面図である。
図5A図5Aは、誘導針のもう一つの例である。
図5B図5Bは、図5Aで示された誘導針の横断面図である。
図6A図6Aは、無線ヘラ状導線の先端チップを示す。
図6B図6Bは、3本の無線ヘラ状導線の実施態様における遠位末端の横断面図を示す。
図7A図7Aは、背部の無線ヘラ状導線の実施態様を示す。
図7B図7Bは、腹側の無線ヘラ状導線の実施態様を示す。
図7C図7Cは、もう一つの無線ヘラ状導線の無線ヘラ状導線の腹側を示す。
図8図8は、針を使って硬膜外腔に収納された円筒状と半円筒状無線導線の実施態様を示す。
図9図9は、針を使って硬膜外腔に移植された円筒状、もしくは半円筒状の無線導線の例を示す。
図10図10は、脊柱内の硬膜横に装着された円筒状、または半円筒状の無線導線を示す。
図11A図11Aは、硬膜横に装着された半円筒状導線の横断面図を示す。
図11B図11Bは、硬膜横に装着された円筒状導線の横断面図を示す。
図11C図11Cは、硬膜横に装着されたパドル状導線の横断面図を示す。
図12A図12Aは、無線半円筒状導線実施態様の透視図を示す。
図12B図12Bは、無線半円筒状導線実施態様の側面像を示す。
図13A図13Aは、無線導線の2実施態様を含む電子的構成要素を示す。
図13B図13Bは、無線導線の2実施態様を含む電子的構成要素を示す。
図13C図13Cは、無線導線の2実施態様を含む電子的構成要素を示す。
図14A-B】図14A及び図14Bは各々、円筒状無線導線または半円筒状無線導線の横断面図を示す。
図14C図14Cは、半円筒状無線導線の遠位末端方向に向かう横断面図を示す。
図15図15は、円筒状無線導線の実施態様を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
脊髄刺激は神経障害性、特に慢性腰痛症、神経根疾患、手足の欠陥不全、アンギーナその他の症状の治療に利用できる。種々の実施例中でも、神経刺激システムは、受動的移植型刺激装置に動力供給するケーブルや誘電性接続なしにターゲットである神経組織に電気刺激を送ることが出来る。これは、痛治療その他多くの物理療法に利用できる。対象となる神経組織には、例えば、脊髄視床路、後角、後根神経節、背根、脊髄後柱線維細胞、脊髄や脳幹の末端神経束を含む脊柱のみならず、全ての脳神経、腹部、胸郭、咽喉、三叉神経節神経、大脳皮質神経束、脳深部、知覚神経、運動神経を含む。
神経刺激システムには、1本以上の誘電性アンテナ(例えば、双極子アンテナかパッチアンテナ)を収納するエンクロージャ、周波電気エネルギー整流のための内在電気回路、組織神経刺激のための1個以上の電極パッドを含む移植式導線が含まれる。神経刺激システムは、外部のエネルギー源から送られたマイクロ波を受信することが出来る。移植式導線は、直径1.3mm以下である。電気回路の特定実施例でのアンテナとパッドは、本文書中に参照として加えられた特許出願PCT/US2012/023029で説明されている。
【0011】
種々の実施態様においては、移植式導線へは無線で電力が供給され(よって、有線接続を要しない)、体外の電源からパルス指示を受信するのに必要な電気回路を含んでいる。例えば、種々の実施態様が、電気放射カップリングを通してRFG電力を受信するための内蔵双極子(若しくはその他の)アンテナ構造を採用している。これにより、移植式パルス発生器(IPG)に物理的な接続されたり、誘導性コイルを使用すること無しに、神経束を刺激できる電流を発生させるような導線が可能となる。誘導性連結を通してRF電力を受信し、その電力をIPG機器の再充電のために転送するための誘導性コイルを採択した設計に比べると、IPG充電機器は特に大きさが100mm X 70mmにもなるので、その点においても本方法は有利である。
更に、電気放射カップリングのメカニズム(例えば、双極子アンテナ)は、無線導線の形状要素の改善と、直径を最小30マイクロンにまでミニチュア化するために利用することが出来る。例えば、図7-15で説明される無線導線実施例では、直径は1.3mm以下で、最小では500マイクロンでありながらも、有線脊髄刺激導線と同機能を提供することができる。
電気放射カップリングはまた、誘導コイル技術に比べて、その効率性を損なうこと無しに、より深部へのエネルギー送受信を可能とする。これにより、その効率性が外部の送信コイル移植された受信コイルの距離に大きく左右される誘導性連結を採用した移植機器に比べ、より有利な点を提供することができる。
種々の実施態様はまた、移植の容易さ、交差接続、延長ワイヤの排除、長期治療管理のための移植式パルス発生器の必要性の点においても、明らかに有利である。種々の実施例は、移植式パルス発生器を必要としないため、既存の移植式神経調整システムに比べて総費用が低価であり、これにより患者の神経調整セラピーへのより広範な採用と、医療制度全体の費用の削減へとつながるかもしれない。
【0012】
図1は、拡張幅誘導針を通して硬膜外腔に挿入された2本の無線ヘラ状導線200を示す(下記にて、より詳細にわたり説明する)。導線200は、導線200を操作するハンドルを備えた延長細管201を使って前進していき、硬膜外腔へと導かれる。誘導針202は、注入口100を腰部脊柱103上に有する(図2に示す)。誘導針202の取除後、無線ヘラ状導線200は、注入口100から皮下に係止される。その後、延長細管201は移植された状態で残り、皮膚から無線ヘラ状導線200へと繋がる。
【0013】
細管201に導線200を所定位置に設置するための探り針(「注射導線ワイヤ」や「ガイドワイヤ」、「ナビゲーションワイヤ」や「操縦ワイヤ」と呼ばれることもある)のための内腔が含まれている実施態様もある。金属製の探り針は、無線ヘラ状導線200の移植中における操作のしやすさという強みを発揮する。無線ヘラ状導線200が無事に配置された後、金属製探り針を除去する。後ほど図7Cで説明するように、この内腔、またはその他の細管201内の内腔は、電気回路の収納部として用いることも出来る。
図2は、誘導針202を介して、典型的にはL1とL2脊椎の間の腰部に設置される無線ヘラ状導線200を示す。例えば、誘導針202は、皮膚105と脊椎103の合間の小さな切開口を通して挿入することが出来る。他の特定の実施態様では、複数の無線ヘラ状導線200、無線円筒状導線400(後に図8から15に関連して説明する)と無線半円筒状導線300(下記にて図8から15との関連で説明する)誘導針202の同じチャンネルから挿入することが出来る。その後、下の図3との関連で説明される通り、脊髄に刺激を与える無線パドル状導線200、円筒状導線400か、半円筒状導線300は移植さされ、脊柱102の硬膜104に接して設置される。
【0014】
特定の実施態様では、無線パドル状導線200、円筒状導線400か半円筒状導線300は、脊柱の硬膜外腔内、脊柱の硬膜付近か上、脊柱にごく近い組織内、後角、後根神経節、背根、脊髄後柱線維細胞、及び脊髄や脳幹の末端神経束背部の知覚に位置する神経組織内に装着されるべく適合される。
特定の実施態様では、例えば疼痛、アンギナ、末梢血管疾患、消化器疾患といった種々の症状の治療のために、脊柱を離れた神経を確実に刺激するべく、無線パドル状導線200、円筒状導線400か半円筒状導線300装着のために適合される。その他の実施態様では、無線パドル状導線200は、脊柱から広がる神経束を介して、その他の症状を治療するために適合することができる。「脊髄組織」と「脊柱から広がる神経束」とは、一般には、脊柱レベルC1からL5の範囲の神経束、後角、後根神経節、背根、脊髄後柱線維細胞、及び脊髄や脳幹の末端神経束背部の知覚に位置する神経組織を指す事が多い。
【0015】
図3は、脊髄に刺激を与えるために人体内に移植された後の脊髄の硬膜104に設置された無線ヘラ状導線200を示す。皮膚105の小さな切開口は、係止機構106の設置の後、縫合糸か消毒済ストリップで縫合される。ここで示される無線パドル状導線は、後ほど図11Cとの関係において説明するように、電流路を硬膜に対し概して垂直方向に制限する電極を備えてもよい。これは、ターゲットとなる特定の組織に正確に狙いをつけ、効果的な刺激のための電荷を削減するために好ましい方向である。
図4A椎弓切開術や骨組織の除去の必要なしに脊椎を通り抜けることができる誘導針214の例を示す。誘導針214には、医療スタッフが移植プロセス中に使うハンドル212が付いている。各ハンドルの幅は約8mmから約15mmであり、長さは約10mmから約18mm、厚さは約2.5mmから約6mmである。誘導針214は、例えば、同じ誘導針チャンネルを通って1本づつ相次いで設置された2本の無線ヘラ状導線200を収納する、内部流路215を有する。例示されるように、例・無線ヘラ状導線200の先端は平坦でも良い。
【0016】
図4Bは、図4Aで示された誘導針の横断面図である。この横断面図はまた、側面像としても知られる。
【0017】
図5Aは、椎弓切開術や骨組織の除去の必要なしに脊椎を通り抜けることができる誘導針214の別例を示す。誘導針214は、医療スタッフが挿入処置中に使用するためのハンドル212を備えている。誘導針214には、例えば順に重ねられた2本のスリムファクター無線ヘラ状導線220を収納した内部流路を装備することも出来る。2本のスリムファクター無線ヘラ状導線220は、内部流路217内に垂直に重ねてもよい。例示されるように、無線ヘラ状導線220の例では、小柄な患者の狭い硬膜外腔を通ってパドル状導線を指し向けるための尖ったチップ219を用いている。無線ヘラ状導線220の例はまた、電極列が脊柱に平行に配置するのを助ける平坦な先端か、若しくは、電極列の平行配置と、硬膜外腔を通るパドル状導線の進行を助ける丸まった先端でもよい。
図5Bは、図5Aで示された誘導針の横断面図である。この横断面図はまた、側面像としても知られる。
【0018】
図6Aは、無線ヘラ状導線200の先端部を示す。無線ヘラ状導線200は、例えば、4個の電極203と電極の間のスペーサーを含む。無線ヘラ状導線200は2から16個の電極203は、導線の先端部に位置する(表示なし)。遠位端は、高さ約1.3mmから約2.0mm、幅は約2.0mmから約4.0mmである。電極203の遠位端から基部先端までの縦方向の長さは約1.0mmから約6.0mm、幅は約0.4mmから約3.0mmである。導線200の総電極表面積は約0.8mm2と約60.0mm2である。電極203どうしの間隔は、末端から基部まで約1mmから約6mmである。
ここで説明される種々の導線は、プログラマーによって陰極か陽極に指定されるところの1から16個の電極を含む。例えば、電極203は、対象組織と連結される複数の陰極と少なくとも一つの陽極を備えることが出来る。電極列はパルス幅最高1ミリ秒で、最高振幅0からのレンジの電気刺激波型パルスを受信できる。電極の両極性は、A−δ、並びに一次若しくは二次かC線維求心性神経を含む周辺神経組織を抑止・刺激する、陰極から陽極への種々の体積伝導配分を産することができる。電極のインビーダンスを最小化するために、電極には、白金、白金イリジウム、電化ガリウム、電化チタン、酸化イリジウム等の伝導性耐蝕生物適合性素材を使用することが望ましい。
【0019】
ここで説明される、周辺組織に連接される電極203以外の無線導線実施態様の残り部分は、周辺身体組織から、部分的または全体的に誘電率の低い生体適合性誘電性の外部塗布膜によって絶縁されている。素材は、移行や線維瘢痕組織の発生のリスク緩和の為に使われる組織のそれに厳密に相似している。そのような線維瘢痕組織は、電極−組織間のインピ-ダンスを増加させることが出来る。もし、電極−組織インピーダンスを低く保つことができれば、ターゲットである組織に刺激を到達させるために消費されるエネルギーを削減できる。
【0020】
特定の実施態様では、無線ヘラ状導線200の遠心端は、丸みを帯びたチップ211である。丸みを帯びたチップ211は、非誘電性チップでもよい。丸みを帯びたチップ211の長さは0.5mmから2.0mmで、ナビゲーション導線が硬膜外腔が通り抜けられるよう、滑らかな仕上がりになっている。
【0021】
特定の実施態様では、無線ヘラ状導線200の遠心端は、長さ2.0mmから約6.0mmの、非誘電性の尖ったチップ219を用いることが出来る。尖ったチップ219は、無線パドル状200展開時の際の操作性を向上させることができる。
【0022】
図6Bは、三種の無線ヘラ状導線実施態様における遠心端の横断面図である。例えば、特定の実施態様では、無線ヘラ状導線200に、スリムファクター無線ヘラ状導線220を用いてもよい。図6Bで示されるとおり、スリムファクター無線ヘラ状導線220は、通常の無線ヘラ状導線221より薄い。例えば、スリムファクター無線ヘラ状導線の高さを約1.0mmから約1.3mmにすることで、誘導針214を介して複数のスリムファクター無線ヘラ状導線を同時または継時的に移植することを可能にする。例えば、特定の実施態様では、無線パドル状導線200は、約1.0mmから1.5mmの中くぼ(凹)型の側面と、中くぼ(凹)型の約0.2mmx約0.3mmの先端を備えるスリムファクター中くぼ(凹)型の無線ヘラ状導線207である。中くぼ(凹)型の側面は、スリムファクター中くぼ(凹)型の無線ヘラ状導線207の高さを、中くぼ(凹)型の先端は、の尖ったスリムファクター中くぼ(凹)型の無線ヘラ状導線207の中くぼ(凹)型の角の寸法を参照することもある。スリムファクター中くぼ(凹)型の無線ヘラ状導線は、背部の脊柱から可能な限り近くに設置することもある。
【0023】
特定の実施態様では、少なくとも一本の無線導線が最初の無線導線に並行、若しくは派生する形で付け加えられる。無線導線が経時的に作動される実施態様もあり、また無線導線が同時に作動されるものもある。
図7Aと7Bは各々、背部と腹側の無線ヘラ状導線200実装例を示す。例えば、電極203と2から8本のアンテナ連結接点222は、無線ヘラ状導線200の、異なった側に据えてもよい。図6Aに関連して説明した通り、2から16個の電極203は、遠心端上の位置、無線導線200の電気絶縁素材205に埋め込むことが出来る。
例えば、アンテナ208アンテナ連結接点222を介して組織に連結され、無線ヘラ状導線200の腹側に位置する。アンテナは例えば、双端子アンテナでもよい。単独の双端子アンテナも有する実施態様もあるが、任意の長さの複数のアンテナを有する実施態様もある。例えば、幾つかの実施態様は2から10本の双端子アンテナを有し、他の実施態様では10本以上の双端子アンテナ、また、その他の実施態様は20本以上の双端子アンテナを有するといった具合である。幾つかの実施態様では、双端子アンテナの長さは、約100マイクロンから約10cmの範囲であり、アンテナが厚さが約20マイクロンから約3mm以内のリニア双端子構造から成る実施態様もある。アンテナ208は、真っ直ぐな双極子アンテナの替りに折り畳まれた双極子アンテナでもよい。
【0024】
アンテナ208は、RFエネルギーを外部アンテナから受信するよう設定されている。RF波型伝播エネルギーは、放射領域と無効領域の2領域に分けられる。放射領域は2D2/λ内であり、その放射電力はアンテナからの距離によって異なる。短い双端子アンテナの反応構成要素は、約λ/2πである。生体組織内に据えられたアンテナの誘導フィールドは、身体ジオメトリ、組織性状と露光条件の機能である。体組織のような損失媒質内におけるRF波型の効率性は、伝搬のため減衰する。損失性問題に関して小型アンテナの電力効率を上げるため、双端子アンテナ構造は損失を最小化すべく、例えば、約800MHzから5.8GHzかそれ以上の、高周波で最適化される。
【0025】
アンテナ連結接点222は、特定の実施態様では、遠位端から基部先端までのと縦方向の長さは約1.0mmから約6.0mm、幅は約1.0mmから約2.5mmである。アンテナ連結接点222の間隔は約30mmから約80mmである。アンテナ連結接点222は、体内のアンテナ208と体外に位置するアンテナ(表示無し)の間の放射性連結の効率を向上させる。アンテナ連結接点は、白金、白金イリジウム、電化ガリウム、電化チタン、酸化イリジウム等の耐蝕素材で作られる。
アンテナ連結接点222は導線210によってアンテナ208と波型調整サーキット209に接続される。波型調整電気回路209には、例えば、ダイオード、抵抗器、コンデンサといった電気的構成要素等が含まれることがある。波型調整電気回路209に入ってくるエネルギーを、神経組織の励起のための電極に刺激波型を提供するのに使用できる。約800MHzから約5.8GHzの周波数移植されたアンテナ208によって受信される実施態様もある。電極203から組織にリリースされた刺激波型は、例えば、典型的には約5Hzから約1000Hzの低周波で波型を供給するために整流される。
【0026】
波型調整電気回路209は、移植されたアンテナ208。によって受信される波型信号を調整すべく設計される。波型調整電気回路209はまた、電極の腐食を防ぐための荷電平衡マイクロエレクトロニクスを有することがある。電極から回帰して電気回路に流れるエネルギーの反射を最小化するため、波型調整電気回路209は、高周波信号を遮蔽する分離回路を備えていることもある。
【0027】
図7Cは、移植されたアンテナ208が無線ヘラ状導線200遠心端205から分離されている無線ヘラ状導線200の実施態様別例の腹側を示す。実施態様の中には、移植されたアンテナ208が無線ヘラ状導線200の遠心端205から離れて、導線体内にある延長細管201中の内腔の内部に据えられているものもある。移植されたアンテナ208が、アンテナ連結接点304の一本の延長線である実施態様もある。また、実施態様の中にはでは、アンテナ連結接点304は、電極203は基部に位置する。アンテナ208は更に、シールド配線210を介して波型調整電気回路209に接続されることもある。波型調整電気回路209は、直接に(腹側に位置する)電極203に繋げてもよい。
【0028】
ここで説明される無線導線は、複数の層を有する場合もある。このような層には、瘢痕組織形成を最低限に抑える生体適合性合成物で、電極に近接して包み込む素材を含むことが出来る。加えて、層にはポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、パレリン、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、またはポリカーボネイト等のポリマーを含む。含まれるかもしれない、もう一つの層には、アンテナ208の外部アンテナ(表示なし)との最適な連結を可能とするため、アンテナ208上に相対浸透率と誘電性が低い素材を包含する。なお、もう一つの層は、無線導線が周辺組織に移動するのを防ぐ手助けとなるシリコンエラストマーのコーティングで構成することも出来る。
【0029】
図8と9は、注射針301を用いて硬膜外腔内に移植される無線円筒状導線400、若しくは、無線半円筒状導線300の例を示す。円筒状無線導線はまた、円周導線と参照されることがあり、半円筒状無線導線は、半円周か半楕円形無線導線と参照されることもある。無線円筒状導線400もしくは無線半円筒状導線300は、注射針301を介して人体に注入できる。注射針301は、ゲージ14以下のチューヒー針(例えば、ゲージ22)である。代替手段としては、無線導線300と400は、誘導針202を介して注入される(例としては、図1を見よ)。誘導針202か注射針301は、外皮と皮膚105の小さな切開口を通って、脊椎103の間中に45度以下の角度で注入し、脊髄中心線の側面位置に、脊髄に対して垂直に脊柱102の硬膜104に直接装着してもよい。無線導線300や400は、皮膚の注入口100直下で終結する延長細管201を包合できる。無線導線は、誘導針または針挿入の角度に従い、硬膜外腔を上に向かって導かれる。無線導線が所定位置に設置された後、無線導線の垂直・水平的移動を止めるための皮下アンカーを使う。
【0030】
図10は、移植後の円筒状無線導線300若しくは半円筒状無線導線400の実施態様を示す。円筒状300若しくは半円筒状400無線導線は、脊髄の硬膜104に接して据えてもよく、皮膚105の小さな切開口は、係止機構106設置後、縫合糸か消毒済ストリップで縫合される。
図11A−11Cはそれぞれ脊髄101の硬膜104に関連して、移植成功後の無線半円筒状導線300、無線円筒状導線400と無線ヘラ状導線200の位置の横断面図を示す。
【0031】
図11Aは、脊髄101の硬膜104に相対的に設置された無線半円筒状導線300の位置を示す。無線半円筒状(半円周形や半楕円形と呼ばれることもある)導線300は、図12Aで示される様に真っ直ぐな、中くぼ(凹)型で半円筒状の形状の電極を有する。半円筒状電極は、エンクロージャの形状に一致させることも出来る。導線300のエンクロージャの半円筒状の形は、導線を機械的に脊柱102の輪郭に適合させる助けとなる。エンクロージャの形状はまた、硬膜104に向かって内側に電気体積伝導を狙う補助となり、靭帯、脊椎と皮膚(非興奮性組織)に向かっての外部へのエネルギー放出を避ける手助けをする。更に通常では、誘電フィールドは主にエンクロージャ内で最高点に達するし、電極の面は一方向を指しているので、電極によって発生した導電フィールドは、本質的に一方向指向性である。非興奮性組織に向かって放出する円筒状電極の270度以上からの不必要な放射を除くことにより(例えば、図14Bと15を見よ)、半円筒状無線導線300は、刺激に必要なエネルギー量を削減することができる。よって、半円筒状無線導線300の例の利点には、電極の形状によって限定された刺激エネルギーの配信指向性を含めてもよいだろう。
【0032】
図11Bは、移植成功後の、脊髄101の硬膜104に相対的な、無線円筒状導線400の位置を示す。ここで示されるように、無線円筒状導線400は、硬膜104に接して設置される。
【0033】
図11Cは、無事に移植された後の、脊髄101の硬膜104に相対的な、無線ヘラ状導線200の位置を示す。ここに示される通り、無線ヘラ状導線200は、硬膜104に接して設置される。無線パドル状導線200には、電流路を硬膜に対し概して垂直方向に制限する電極を備えてもよい。これは、ターゲットとなる特定の組織に正確に狙いをつけ、効果的な刺激のための電荷を削減するために好ましい方向である。
【0034】
図12Aと12Bはそれぞれ、無線半円筒状導線300移植の透視図と側面像を示す。半円筒状導線300は、特定の実施態様では、遠心端205に各々の直径が典型的には約0.8mmから約1.4mm、折り畳まれた際の中くぼ(凹)型の腹側面の半径が典型的には約0.6mmから約3.0mmの、2から16個の電極203備えることができる。電極203は、遠位端から基部までの縦方向の長さが約1.0mmから約6.0mmで、典型的な横幅は約0.4mmから約1.0mmである。典型的な無線導線300の総合表面積は、約0.8mm2から60.0mm2の間であり、典型的な電極接点の間隔は約1.0mmから約6.0mmである。導線体の先端部は、長さが約0.5mmから約2.0mmで、ナビゲーション導線が硬膜外腔を通り抜け易いよう滑らかに仕上げられた先端の尖った非誘電性チップでもよい。
無線半円筒状導線300は、図7Cとの関連で例示されるように、(図12と13との関連で説明した通り)移植されたアンテナ208とフレキシブル回路206にワイヤ接続された、2から8個のアンテナ連結接点304を含むことがある。アンテナ連結接点304は、電極203の基部である。アンテナ連結パッド304の遠位端から基部先端までの縦方向の長さは、約1mmから約6mmである。典型的なアンテナ連結接点304の間隔は、30mmから80mmである。図13Cとの関連で説明される小型アンテナ連結接点303を用いた実施態様もある。アンテナ連結接点303の直径は、約0.2mmから約0.6mmである。
【0035】
ここで説明される無線導線の実施態様では、既存の経皮導線よりも、硬膜方向により広い表面積を有することが可能である。この表面積の拡大により、組織−電極間のインピーダンス価を低減し、より強い電流の刺激を送る事が可能となる。
【0036】
図13A−13Cはそれぞれ、2つの異なった無線導線の実施態様、つまり、無線半円筒状導線300と無線円筒状導線400を含む電気的構成要素を示す。
【0037】
図13Aは、無線導線(例えば、無線半円筒状導線300か無線円筒状導線400)と延長細管201の例を示す。細管201には、電極203、移植されたアンテナ208、波型調整電気回路209とワイヤ210が収納されている。図7A−7Bとの関連で既に説明したように、波型調整電気回路209には、受信された組織刺激の波型平衡のためのRFエネルギーを整流するための構成要素を含めることが出来る。
【0038】
1個以上のフレキシブル回路206が、種々の電気的構成要素部分伝達のために使われることもある。例えば、フレキシブル回路206には、波型調整電気回路209と移植式アンテナ208を搭載出来る。フレキシブル回路にはまた、例えば、電気回路209から電極203を電気的に接続するような、ワイヤ21の一部を搭載してもよい。フレキシブル回路206は、約15mmから約90mmの長さで、幅は約0.7mmから約2.0mmである。
波型調整電気回路209を備えたフレキシブル回路206の総高は、約0.2mmから約0.4mmである。円筒状無線導線400内に設置されたフレキシブル回路206は、直径約0.5mmに折り畳まれる。図13Aで例示されるように、実施態様の中には、フレキシブル回路がアンテナ208としての役目を果たす誘電性トレースを内含するものもある。
図13Bは、細管201を含む、密封された無線導線(例:無線半円筒状導線300と無線円筒状導線400)の、もう1つの例である。細管201はアンテナ208と波型調整電気回路209を収納し、共に図13Aに関して説明したフレキシブル回路に相似したフレキシブル回路206上に形成することが出来る。少なくともワイヤ210の一部もまた、フレキシブル回路上に形成してもよい。ワイヤ210は、例えば、電気回路209を電極へ(図13Bには表示されていない)接続する。ワイヤ210はまた、アンテナ208を組織露出リングアンテナ連結接点304に接続する。組織露出リングアンテナ連結接点304は、外周直径が約0.8mmから約1.4mm、縦方向の長さ約0.5mmから約6.0mmのリング型である。
【0039】
図13Cは、無線導線(例:無線半円筒状導線300と無線円筒状導線400)と延長細管201の別例を示す。延長細管201は、共に図13Aとの関連で説明したフレキシブル回路206上に形成されたものと類似した、アンテナ208と波型調整電気回路209を収納する。少なくとも、ワイヤ210の一部は、フレキシブル回路上に形成することも出来る。ワイヤ210は、例えば、電気回路209から電極へ接続する(図13Cでは表示されていない)。ワイヤ210はまた、アンテナ208を、組織露出小型アンテナ連結接点303に接続する。組織露出小型アンテナ連結接点303は、直径約0.2mmから約0.6mm、厚さ約0.2mmから約0.6mmの金属の誘電性円筒状片から作られることが出来る。組織露出小型アンテナ連結接点303は組織と接して、電気絶縁素材205内に埋め込むことも出来る。
【0040】
図14Aは、完全円筒状無線導線400や半円筒状無線導線300の、基部から遠位端位置における実施態様の横断面図である。ここで示されている実施態様は、中心内腔204を有する複数の内腔射出305と、複数の外側内腔306(例えば、1から10、またはそれ以上)である。複数内腔射出305は右のグラフで示されるように、1本の無線導線例えば、完全円筒状無線導線400か半円筒状無線導線300)上に、単独内腔射出307の近位に位置し、内腔306内部に収納された導線210と、(図1との関連で説明した通り)中心内腔204を通して収納された探り針の処理をガイドするバックボーンとしての役割を果たす。複数の内腔プラスティック射出305は、1から10、またはそれ以上の、各々の内周直径が約0.1mmから約0.6mmである外周内腔306から組成してもよい。複数の内腔プラスティック射出305の外周直径は、約0.8mmから約1.4mmである。特定の実施態様では、複数内腔射出305は、右のグラフで示される通り、射出305が単独内腔射出307の中に雄雌をつなげられるよう、最終的な外周直径が約0.6mmから0.9mmになるようアブレート(つまり、熱成形)される。ナビゲーション探り針が内周内腔204内に装着され、無線導線を硬膜外腔へと導く。内周内腔204は障害物のないクリアな通路を維持し、307射出305と307の間の相互接続地と、上記のアブレーション後に単独内腔射出と融合される。
【0041】
図14Bは、円筒状無線導線400や半円筒状無線導線300のその他の例の基部から遠位端までの位置での横断面図である。この実施態様での単独内腔射出307は、内周直径が約0.3mmから約1.4mmである。単独内腔射出307は、例えば、無線半円筒状導線300の外側の周りに巻かれ、外周直径の約0.8mmから約1.4mmに適合するよう熱成形される。単独内腔射出307は、フレキシブル回路206を内部に封入するに足る十分な空間を残している。内周内腔204は、単独内腔307内部の308が示す距離によって、フレキシブル回路206のための間隔スペースを提供するためにオフセットされる。内腔306横からの導線210は、フレキシブル回路206上に形成された端子に接続することも出来る。フレキシブル回路206と内周内腔204間の単独内腔射出307内の間隔スペースは、フレキシブル回路構成要素206と導線210を厳重に保護するため、生体適合性ポリマーで埋め戻してもよい。
【0042】
図14Cは、半円筒状無線導線300の先端部に向かっての横断面図である。半円筒状無線導線300では、複数の中くぼ(凹型)内腔射出309が、フレキシブル回路206と電極203から伸びた導線210を収納することもある。複数の内腔射出309の中くぼ形状は、半円筒状無線導線300が脊髄の曲線にしっかりと沿うことを可能とする。折り曲げた際の凹の後面側の半径は約0.6mmから約3.0mmである。複数の中くぼ型内腔射出309内には、1から10本、またはそれ以上の外周内腔306が内在され、導線と中央内腔204の探り針のための通路としての役割を果たす。内腔204と306の内部直径は、0.1mmから0.6mmである。外周内腔306の穴を開けるには、導線210と電極203を接続する通路作成中に、後部側からドリルすることもできる。
【0043】
図15は、完全円周型無線導線の例を示す。円筒状無線導線400は、その遠心端の直径が約0.8mmから1.4mmの2から16個の円筒状電極203を有し、for硬膜外麻酔脊髄刺激の適用に用いられる。電極203は、縦方向の長さは、遠位端から基部の先端までの長さが、約1.0mmから約6.0mmである。電極接点同士の間隔は、約1.0mmから約6.0mmである。円筒状無線導線体400の総電極表面積は約1.6mm2から約60.0mm2で、円筒状無線導線体400の遠位端は、長さ約0.5mmから約1.0mmの先端が丸みを帯びた非誘電性チップであり、硬膜外腔中を通るナビゲーション導線の為に滑らかな仕上げになっている。2から8個の組織露出リングアンテナ連結接点304を、電極203の基部にすることも出来る。組織露出環状アンテナ連結接点304は、遠位端基部先端に向かっての縦方向の長さは約1.0mmから約6.0mmである。組織露出環状アンテナ連結接点304の間隔は約30mmから約80mmである。特定の実施態様では、直径が約0.2mmから約0.6mmの小型組織露出アンテナ連結接点303を、図で示された組織露出小型アンテナ連結接点303の替りに使用していることもある。延長細管201は、図1、7C、8と9との関連で説明した通り、例えば、フレックス回路206を収納するエンクロージャを提供することが出来る。フレックス回路206は、図13Aから13Cとの関連で説明した通りである。細管201は中心内腔204を含むこともある。図14Aとの関連で説明した通り、探り針はガイドとなるべく、例えば、人体の内腔を介しての導線400の移植中に、中心内腔204を通して設置できる。
【0044】
種々の技術実施例が、重大な反応と瘢痕化を最小化できる位置である硬膜外腔、硬膜、くも膜や髄腔内スペース内の硬膜下の間への無線導線装着を可能にする。機器は、これらのどの位置へも、よりゲージの小さい針(例:ゲージ14から22の針か、除去可能な探り針によって適性な位置に誘導されたカニューレ)によって挿入できる。実施例の中には、一度適当な位置にセットされたら、その後は皮膚切開や、受信機、移植式パルス発生器の配置の必要がないものもある。無線神経変調方式の種々の実施例は、その小型サイズとエネルギー移転のための延長ワイヤーが無い事によって大変に優れており、軽微な外傷での装着と長期の効果的なセラピ−を可能として、その効果性と安全性に影響する組織の瘢痕化と組織反応を引き起こす可能性のより高い、より大型の移植式機器に取り代わるであろう。
【0045】
多くの実施法が説明したにもかかわらず、未だ多くの改良の余地があろう。よって他の実施法は、以下の特許申請範囲内である。
付記
〔1〕
移植式神経刺激装置無線導線は以下よりなる:
エンクロージャ、エンクロージャの筐体:
1以上の電気パルスを神経組織に送るよう設定された一個以上の電極;
以下のごとく設定された第一のアンテナ:
電気放射カップリングを通して電気エネルギーを含む入力シグナルを受信する第二のアンテナ、第二のアンテナは物理的に移植式神経刺激装置導線から分離されている;
第一のアンテナに電気的に接続する1個以上のサーキット、サーキットは以下のように設定される:
入力シグナルに含まれる電気エネルギーを用いて、神経組織への刺激に適した電気パルスを発生させ;
1以上の電気パルスを1個以上の電極に供給し、
その場所で、エンクロージャが形成され、誘導針か針を通しての対象者の体内への
挿入のために調整される。
〔2〕
エンクロージャの一部が、導線が対象者の体内に挿入された後、神経組織に直接接触しない電極を残す〔1〕に記載の導線。
〔3〕
エンクロージャの形状が半円筒状であり、実質上、神経組織に垂直の方向の1以上の電気パスルに関連した電流路を向ける、少なくとも一個の指向性電極を備えた〔1〕に記載の導線。
〔4〕
1個以上の電極が半円筒状に列をなす電極を含む〔3〕記載の導線。
〔5〕
神経組織が脊柱と関連がある〔1〕に記載の導線。
〔6〕
電極が白金、白金イリジウム、電化ガリウム、電化チタン、酸化イリジウムもしくはそれらの合金のうち、少なくともその一種で作られている〔1〕に記載の導線。
〔7〕
各々の縦方向の長さが1.0mmから6.0mmで幅が0.4mmから3.0mmの2から16の電極を含む〔1〕に記載の導線。
〔8〕
電極どうしの間隔が1mmから6mm離れ、その総合表面積が0.8mm2から60.00mm2であるところの〔6〕に記載の導線。
〔9〕
導線がパドル状導線であるところの〔1〕に記載の導線。
〔10〕
導線の高さが1.3mmから2.0mm、幅が2.0mmから4.0mmであるところの〔9〕に記載の導線。
〔11〕
導線が対象者の体内に挿入された後、神経組織に接した側臥位を確保するために中くぼ(凹)型の形状である〔8〕に記載の導線。
〔12〕
導線が中くぼの1.0mmと1.5mmの間の中くぼの側面と、0.2mmと0.3mmの間の中くぼの端部を有する〔11〕に記載の導線。
〔13〕
対象者の脊髄の背部面に関して測位であるところの〔11〕に記載の導線。
〔14〕
対象者体内の硬膜外腔に挿入される〔1〕に記載の導線。
〔15〕
針がチューヒー針であるところの〔1〕に記載の導線。
〔16〕
針が14ゲージ以下であるところの〔14〕に記載の導線。
〔17〕
エンクロージャがさらに挿入中に探り針をナビゲーション操作するための内腔を含む〔1〕に記載の導線。
〔18〕
更に遠位端を含む〔1〕に記載の導線。
〔19〕
遠位端が丸みを帯び、長さが0.5から2.0mmであるところの〔18〕に記載の導線。
〔20〕
遠位端が尖っており、長さが2.0から6.0mmであるところの〔18〕に記載の導線。
〔21〕
ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、パレリン、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、またはポリカーボネイトの少なくとも一種の生物的適合性ポリマーでコートされたエンクロージャを有する〔1〕に記載の導線。
〔22〕
エンクロージャが更にシリコンエラストマーで外部塗膜された〔1〕に記載の導線。
〔23〕
エンクロージャが更にアンテナ連結接点を収納し、アンテナ接点が電気的にアンテナに接続され、サーキットはアンテナを周辺組織と連結させるべく設定されたところの〔1〕に記載の導線。
〔24〕
アンテナ連結接点が2から8本のアンテナで連結されたペアを含むところの〔1〕に記載の導線。
〔25〕
アンテナ連接接点が電極と相対的にエンクロージャ内の基部に位置する〔1〕に記載の導線。
〔26〕
アンテナ連結接点がそれぞれ縦方向の長さが1.0mmから6.0mmで、幅が1.0mmから2.5mmであるところの〔1〕に記載の導線。
〔27〕
アンテナ連結接点の間が30mmから80mmであるところの〔26〕に記載の導線。
〔28〕
アンテナのうち少なくとも一本がサーキットの一つを用いた誘電性トレースとして構築されたところの〔1〕に記載の導線。
〔29〕
アンテナの少なくとも一本がサーキットの一つに接続される線状導体として加工されているところの〔1〕に記載の導線。
〔30〕
サーキットがフレキシブル回路であるところの〔1〕に記載の導線。
〔31〕
フレキシブル回路が半径0.5mm以下に曲げることの出来る〔1〕に記載の導線。
〔32〕
フレキシブル回路が電極と相対的にエンクロージャ内の基部に設置された〔1〕に記載の導線。
〔33〕
フレキシブル回路が波型調整サーキットを含む〔1〕に記載の導線。
〔34〕
以下から成る神経痛治療方法:
以下を収納するエンクロージャを含む移植式神経刺激装置導線の提供
1個以上の電極;
以下の如く設定された第一のアンテナ:
電気放射カップリングを介して、電気エネルギーを含む入力信号を受信する第二のアンテナ;
移植式神経刺激装置導線から物理的に分離された第二のアンテナ;
第一のアンテナに電気接続された1個以上のフレキシブル回路
以下の如く設定されたフレキシブル回路:
入力信号に含まれる電気エネルギーを用いて、電極に印加するに適した1以上の電気パルスを発生させ;1以上の電気パルスを1個以上の電極へ送り、
神経刺激装置導線誘導針か針を通して対象者の体内へ移植される。
〔35〕
エンクロージャの一部が、導線が対象者の体内に挿入された後、神経組織に直接接触しない電極を残す〔34〕に記載の方法。
〔36〕
実質上、神経組織に垂直の方向の1以上の電気パスルに関連した電流路を向ける、少なくとも一個の指向性電極を備えた〔1〕に記載の導線。
〔37〕
針がチューヒー針であるところの〔34〕に記載の方法。
〔38〕
針が14ゲージ以下であるところの〔37〕に記載の方法。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図6A
図6B
図7A
図7B
図7C
図8
図9
図10
図11A
図11B
図11C
図12A
図12B
図13A
図13B
図13C
図14A-B】
図14C
図15