特許第6953412号(P6953412)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6953412
(24)【登録日】2021年10月1日
(45)【発行日】2021年10月27日
(54)【発明の名称】車両および隊列走行車両群
(51)【国際特許分類】
   B60T 17/22 20060101AFI20211018BHJP
   B60T 1/06 20060101ALI20211018BHJP
   F16D 65/16 20060101ALI20211018BHJP
   B60T 7/12 20060101ALI20211018BHJP
   F16D 125/04 20120101ALN20211018BHJP
   F16D 125/06 20120101ALN20211018BHJP
   F16D 127/04 20120101ALN20211018BHJP
   F16D 129/04 20120101ALN20211018BHJP
   F16D 129/08 20120101ALN20211018BHJP
【FI】
   B60T17/22 Z
   B60T1/06 A
   F16D65/16
   B60T7/12 C
   F16D125:04
   F16D125:06
   F16D127:04
   F16D129:04
   F16D129:08
【請求項の数】7
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2018-537319(P2018-537319)
(86)(22)【出願日】2017年8月29日
(86)【国際出願番号】JP2017031038
(87)【国際公開番号】WO2018043520
(87)【国際公開日】20180308
【審査請求日】2020年8月27日
(31)【優先権主張番号】特願2016-168033(P2016-168033)
(32)【優先日】2016年8月30日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】510063502
【氏名又は名称】ナブテスコオートモーティブ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100082991
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 泰和
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100208188
【弁理士】
【氏名又は名称】榎並 薫
(72)【発明者】
【氏名】長谷部 裕樹
【審査官】 星名 真幸
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−113384(JP,A)
【文献】 特開2007−233965(JP,A)
【文献】 特開2007−196714(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60T 1/00−8/1769
B60T 8/32−8/96
B60T 15/00−17/22
F16D 49/00−71/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両を自動で制御する自動運転と、人が操作して車両を運転する通常運転と、の両方が可能である車両であって、
車両を制動するブレーキ手段と、
前記車両を自動制御する自動運転制御手段と、
前記車両の異常を検出する異常検出手段と、
前記異常検出手段が異常を検出した際に、前記ブレーキ手段を駆動して前記車両を制動する非常ブレーキ制御手段と、を備え、
前記異常検出手段が検出した異常が前記自動運転制御手段の異常である場合、前記非常ブレーキ制御手段による前記ブレーキ手段の駆動を解除することができ
前記異常検出手段が検出した異常が前記通常運転に必要な部位の異常である場合、前記非常ブレーキ制御手段による前記ブレーキ手段の駆動を解除することはできない、車両。
【請求項2】
前記車両に乗車した人を検出する人検出手段をさらに備え、
前記人検出手段が人を検出した場合にのみ、前記非常ブレーキ制御手段による前記ブレーキ手段の駆動を解除することができる、請求項1に記載の車両。
【請求項3】
前記自動運転のモードと前記通常運転のモードとが切替可能であり、
前記自動運転のモードから前記通常運転のモードに切り替わった後、前記非常ブレーキ制御手段によるブレーキ手段の駆動を解除することができ
前記非常ブレーキ制御手段による前記ブレーキ手段の駆動は、前記自動運転のモード中に解除されない、請求項1又は2に記載の車両。
【請求項4】
前記非常ブレーキ制御手段によって前記ブレーキ手段が駆動された状態を解除する解除手段を、さらに備え、
前記ブレーキ手段は、管路と、前記管路内の流体圧により動作するシューと、を有した流体圧ブレーキであり、
前記解除手段は、前記管路を管路外に開放する開放機構を含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の車両。
【請求項5】
前記開放機構は、前記管路に螺合した留め具を含む、請求項4に記載の車両。
【請求項6】
前記開放機構は、前記管路に設けられた弁を含む、請求項4に記載の車両。
【請求項7】
先頭車両と、
前記先頭車両を追従する後続車両と、を備え、
前記後続車両は、請求項1〜6のいずれか一項に記載の車両である、隊列走行車両群。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動運転と通常運転との両方が可能である車両であって、非常ブレーキ制御手段を備えた車両に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、例えば複数の車両が隊列を組んで走行する際に先導車両に自動で追随可能な車両等、車両を自動で制御する自動運転が可能な車両が知られている。このような車両は、例えば特許第3237451号公報に開示されているように、他の車両と車車間通信を行うための通信機器や車両外部の状況を検出するセンサ、さらには、ECU(Electronic Control Unit:電子制御ユニット)を搭載しており、自動運転の際には、ECUが、通信機器やセンサ等から得た情報を基に当該車両の操舵や制動を行っている。
【0003】
ところで、車両が自動運転により走行中に、車両に異常が生じる等、当該車両の走行を継続することが望ましくない事態が生じることがあり得る。このような非常事態が発生した場合、車両は速やかに走行を停止する必要がある。そして、当該車両の点検および/または修理が済むまでは、当該車両の走行は再開されるべきではない。しかし、一方で、このような非常事態が生じて走行を停止した車両の点検および/または修理を行うには、当該車両を交通の邪魔にならない場所あるいは修理工場まで搬送する必要がある。この際、当該車両を搬送するための他の車両等を準備することは、時間と手間が非常にかかる。
【0004】
本発明は、このような点を考慮してなされたものであり、自動運転中に異常が生じた場合に速やかに走行を停止可能な車両であって、走行を停止後の当該車両の搬送の問題が低減された車両を提供することを目的とする。
【0005】
本発明による車両は、
車両を自動で制御する自動運転と、人が操作して車両を運転する通常運転と、の両方が可能である車両であって、
車両を制動するブレーキ手段と、
前記車両を自動制御する自動運転制御手段と、
前記車両の異常を検出する異常検出手段と、
前記異常検出手段が異常を検出した際に、前記ブレーキ手段を駆動して前記車両を制動する非常ブレーキ制御手段と、を備え、
前記異常検出手段が検出した異常が前記自動運転制御手段の異常である場合、前記非常ブレーキ制御手段による前記ブレーキ手段の駆動を解除することができる。
【0006】
好ましくは、車両は、前記車両に乗車した人を検出する人検出手段をさらに備えてよく、前記人検出手段が人を検出した後、前記非常ブレーキ制御手段による前記ブレーキ手段の駆動を解除することができてもよい。
【0007】
また、好ましくは、車両は、前記自動運転のモードと前記通常運転のモードとが切替可能であってよく、前記自動運転のモードから前記通常運転のモードに切り替わった後、前記非常ブレーキ制御手段によるブレーキ手段の駆動を解除することができてもよい。
【0008】
また、好ましくは、車両は、前記非常ブレーキ制御手段によって前記ブレーキ手段が駆動された状態を解除する解除手段を、さらに備えてよく、前記ブレーキ手段は、管路と、前記管路内の流体圧により動作するシューと、を有した流体圧ブレーキであり、前記解除手段は、前記管路を管路外に開放する開放機構を含んでもよい。
【0009】
例えば、前記開放機構は、前記管路に螺合した留め具を含んでもよい。
【0010】
あるいは、前記開放機構は、前記管路に設けられた弁を含んでもよい。
【0011】
本発明による隊列走行車両群は、
先頭車両と、
前記先頭車両を追従する後続車両と、を備え、
前記後続車両は、上述の車両である。
【0012】
本発明によれば、車両が自動運転により無人で走行中であったとしても、車両に異常が発生した場合、車両の走行を速やかに停止することが可能である。また、異常が発生した車両の移動に他の車両等の準備を要する機会が削減される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施の形態を説明する図であって、車両の全体的な構成を示すブロック図である。
図2】本発明の一実施の形態を説明する図であって、隊列走行車両群を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の一実施の形態について説明する。
【0015】
図1は、本発明による車両の一実施の形態を説明するための図である。図1は、車両の全体的な構成を示すブロック図である。
【0016】
本実施の形態の車両10は、車両10を自動で制御する自動運転と、人が操作して車両を運転する通常運転と、の両方が可能な車両である。具体的には、車両10は、図1に示すように、一対の前輪20aおよび一対の後輪20bを含む車輪20と、エンジンやモータを含む動力部30と、エンジン出力を制御するアクセル制御手段35(アクセルアクチュエータ)と、前輪20aおよび/または後輪20bの向きを変えて車両10の進行方向を変えるための操舵手段40と、各車輪20に設けられたブレーキ手段50と、ブレーキ手段を駆動して車両10を制動するブレーキ手段制御手段60と、を含んでいる。また、車両10は、各車輪20の回転速度を検出して車両10の走行速度に関する速度情報を取得する速度センサ70を有している。
【0017】
アクセル制御手段35は、通常運転の際に、人が所望の加速度に関する加速度情報を入力する手段である。アクセル制御手段35は、本実施の形態では、アクセルペダル35aと、アクセルペダル35aの踏角を検知し、当該踏角に応じた加速度を決定する踏角検知センサ35bと、を含んでいる。
【0018】
操舵手段40は、車両10の進行方向の所望の変更に対応して舵角情報を入力する舵角入力手段41を含んでいる。舵角入力手段41は、本実施の形態では、ステアリング・ホイールであるが、これに限られない。また、本実施の形態の操舵手段40は、舵角入力手段41によって入力された舵角情報を検出し、舵角情報に基づいて前輪20aおよび/または後輪20bの角度Rを変更する操舵アクチュエータ42を含んでいる。操舵アクチュエータ42は、前輪20aおよび/または後輪20bに接続されたロッド21上に配設されており、当該ロッド21を操作することにより前輪20aおよび/または後輪20bの角度Rを変更することができるようになっている。ここで、前輪20aおよび/または後輪20bの角度Rとは、車両10を平面視で見た場合に、車両10の前後方向に拡がる車両10の中心断面に平行な平面P1と、前輪20aおよび/または後輪20bの回転軸に垂直な面P2とがなす角度のことである。
【0019】
ブレーキ手段50は、各車輪20に設けられており、各車輪20の回転を摩擦抵抗により低減するものである。ブレーキ手段50は、本実施の形態においては、流体圧により駆動して車両10を制動する流体圧ブレーキであるが、これに限られない。
【0020】
各ブレーキ手段50は、ブレーキチャンバ51と、シュー52と、一方の端部がブレーキチャンバ51に接続され、他方の端部がブレーキ手段制御手段60に接続されたチャンバ駆動管路53と、を含んでいる。ブレーキチャンバ51は、チャンバ駆動管路53内の流体圧によって駆動して、対応するシュー52を対応する車輪20に対して押しつけるようになっている。
【0021】
ブレーキ手段制御手段60は、流体タンク61と、流体タンク61とブレーキ手段50のチャンバ駆動管路53とに接続されてチャンバ駆動管路53内の流体圧を制御する流体圧制御手段62と、を含んでいる。
【0022】
流体タンク61は、エンジンで駆動される図示しないコンプレッサにより圧縮流体、例えば圧縮空気、を蓄えるものであり、この流体タンク61内の流体圧は、所定圧に保持されている。
【0023】
流体圧制御手段62は、流体タンク61からチャンバ駆動管路53に入力される流体圧の大きさを制御するものである。流体圧制御手段62は、制動力入力手段64と、チャンバ駆動管路53に入力される流体圧を制御してブレーキ手段50を制御する通常ブレーキ制御手段65および自動ブレーキ制御手段66と、車両10の通常運転を支援する通常運転支援手段67aおよび車両10の自動運転を制御する自動運転制御手段67bと、車両10の運転モードを通常運転モードと自動運転モードとの間の切り替える運転モード切替手段67cと、車両10の異常を検出する異常検出手段68と、異常検出手段68が異常を検出した際に、チャンバ駆動管路53に流体圧を入力してブレーキ手段50を駆動させる非常ブレーキ制御手段69と、を含んでいる。なお、流体圧制御手段62は、ブレーキの制御に関連する構成を纏めたものとしている。ただし、流体圧制御手段62に区分され得る通常運転支援手段67a、自動運転制御手段67b及び運転モード切替手段67cは、ブレーキ以外の制御、例えば操舵や動力の制御に関連する構成を纏めた区分にも含まれ得る。
【0024】
制動力入力手段64は、人が操作して車両10を運転する通常運転の際に、人が所望の制動力に関する制動力情報を入力する手段である。制動力入力手段64は、本実施の形態では、ブレーキペダル64aと当該ブレーキペダル64aの踏角を検出する踏角検出センサ64bとを含む。
【0025】
通常ブレーキ制御手段65は、制動力入力手段64や通常運転支援手段67aによって入力される情報に基づいて、流体タンク61からチャンバ駆動管路53に入力される流体圧の大きさを制御するものである。通常ブレーキ制御手段65は、一方の端部が流体タンク61に接続され、他方の端部がチャンバ駆動管路53に接続された第1流体管路65aと、第1流体管路65a上に配置され、開閉動作を行うことにより第1流体管路65aを介して流体タンク61とチャンバ駆動管路53とを連通あるいは断絶させる第1調整弁65bと、第1調整弁65bの開閉を制御する第1調整弁制御手段65cと、を含んでいる。
【0026】
第1調整弁65bは、通常、第1調整弁制御手段65cからの入力が無い限り、閉鎖されている。第1調整弁65bとしては、ソレノイドバルブ等、公知の調整弁が採用可能である。第1調整弁制御手段65cは、制動力入力手段64や通常運転支援手段67aによって入力される情報に基づいて、第1調整弁65bの開閉量を決定し、決定した開閉量の分だけ第1調整弁65bを開放するようになっている。
【0027】
自動ブレーキ制御手段66は、自動運転制御手段67bによって入力される情報に基づいて、流体タンク61からチャンバ駆動管路53に入力される流体圧の大きさを制御するものである。自動ブレーキ制御手段66は、一方の端部が流体タンク61に接続され、他方の端部がチャンバ駆動管路53に接続された第2流体管路66aと、第2流体管路66a上に配置され、開閉動作を行うことにより第2流体管路66aを介して流体タンク61とチャンバ駆動管路53とを連通あるいは断絶させる第2調整弁66bと、第2調整弁66bの開閉を制御する第2調整弁制御手段66cと、を含んでいる。
【0028】
第2調整弁66bは、通常、第2調整弁制御手段66cからの入力が無い限り、閉鎖されている。第2調整弁66bとしては、ソレノイドバルブ等、公知の調整弁が採用可能である。第2調整弁制御手段66cは、自動運転制御手段67bから入力される情報に基づいて、第2調整弁66bの開閉量を決定し、決定した開閉量の分だけ第2調整弁66bを開放するようになっている。
【0029】
通常運転支援手段67aは、車両10の各部から取得される種々の情報に基づいて、車両10の通常運転の支援を行うものである。ここで通常運転支援手段67aが車両10の各部から取得される種々の情報とは、例えば、操舵アクチュエータ42から取得される舵角情報および車輪20の角度Rに関する情報、アクセル制御手段35から取得される加速度情報、動力部30から取得されるエンジンの出力情報、第1調整弁制御手段65cから取得される第1調整弁65bの開閉量情報やブレーキペダル64aの踏角情報、および、速度センサ70から取得される速度情報等である。
【0030】
また、本実施の形態の通常運転支援手段67aは、図示しない各種センサによって取得される種々の情報に基づいて、車両10の通常運転の支援または自動運転の制御を行うものである。ここで各種センサによって取得される種々の情報とは、例えば、車両10の車載荷重に関する情報や、先行する車両との車間距離に関する情報、先行する車両の加速度情報、車両10の進行方向における障害物の有無に関する情報、車両10が走行する車線を区画する白線等と車両10との距離に関する情報、車両10が走行する路面状況に関する情報等である。
【0031】
自動運転制御手段67bは、車両10の各部から取得される種々の情報に基づいて、車両10の自動運転の制御を行うものである。ここで自動運転制御手段67bが車両10の各部から取得される種々の情報とは、例えば、操舵アクチュエータ42から取得される舵角情報および車輪20の角度Rに関する情報、第2調整弁制御手段66cから取得される第2調整弁66bの開閉量情報、動力部30から取得されるエンジン出力情報、および、速度センサ70から取得される車両10の速度情報等である。
【0032】
また、本実施の形態の自動運転制御手段67bは、図示しない各種センサによって取得される種々の情報に基づいて、車両10の自動運転の制御を行うものである。ここで各種センサによって取得される種々の情報とは、例えば、車両10の車載荷重に関する情報や、先行する車両との車間距離に関する情報、先行する車両の加速度情報、車両10の進行方向における障害物の有無に関する情報、車両10が走行する車線を区画する白線等と車両10との距離に関する情報、車両10が走行する路面状況に関する情報等である。
【0033】
また、本実施の形態の自動運転制御手段67bは、車両10が他の車両と共に隊列走行を行う場合、当該他の車両と車車間通信を行うための車車間通信機器から受け取った隊列形成に必要な種々の情報に基づいて、車両10の自動運転の制御を行うものである。ここで隊列形成に必要な種々の情報とは、例えば、隊列を形成する車両のうち先行する車両との車間距離や加速度に関する情報、各車両の位置情報等である。
【0034】
さらに、本実施の形態の自動運転制御手段67bは、図示しない記憶装置に格納された種々の情報に基づいて、車両10の自動運転の制御を行うものである。ここで記憶装置に格納された種々の情報とは、例えば、予め設定された運行計画に関する情報等である。
【0035】
運転モード切替手段67cは、車両10の運転モードに関する情報を入力する手段である。入力された情報が通常運転モードを示す場合には、通常運転支援手段67aを起動させるよう通常運転支援手段67aに起動信号を送り、入力された情報が自動運転モードを示す場合には、自動運転制御手段67bを起動させるよう自動運転制御手段67bに起動信号を送るものである。
【0036】
ところで、車両10が自動運転により走行中に車両10に異常が生じた場合、車両10の走行を継続することは望ましくない。この場合、車両10の走行を速やかに停止する必要がある。
【0037】
このような事情を考慮して、本発明の車両10は、車両10の異常を検出する異常検出手段68と、異常検出手段68が異常を検出した際に、ブレーキ手段50を駆動して車両10を制動する非常ブレーキ制御手段69と、を備えている。
【0038】
異常検出手段68は、車両10に所定の異常が発生した場合に、当該異常を検出し、非常ブレーキ制御手段69を作動させるよう、非常ブレーキ制御手段69に起動信号を送るものである。ここで、車両10の所定の異常とは、例えば、操舵手段40の故障や、自動ブレーキ手段66の故障、自動運転制御手段67bの故障、エンジンやモータを含む動力部30の故障、速度センサ70の故障、その他各種センサの故障、流体タンク61の流体漏れ、車輪20のパンク、通信機器の故障あるいは通信障害の発生等である。
【0039】
また、本実施の形態の異常検出手段68は、速度センサ70から速度情報を受け取り、車両10の走行速度が所定値以下の場合、例えば20km/h以下の場合にのみ、非常ブレーキ制御手段69に起動信号を送るようになっている。そして、異常検出手段68は、車両10の異常が検出された場合であっても車両10の走行速度が所定値よりも高い場合は、非常ブレーキ制御手段69に起動信号を送らず、図示しないアンチロック・ブレーキ・システム(ABS)を作動させるようになっている。ただし、この例に限られず、異常検出手段68は、車両10の走行速度を考慮することなく、非常ブレーキ制御手段69に起動信号を送るようにしてもよい。
【0040】
非常ブレーキ制御手段69は、異常検出手段68から受け取った起動信号に基づいて、流体タンク61とチャンバ駆動管路53とを連通させて、チャンバ駆動管路53に流体圧を入力するものである。以下、図1を参照して、本実施の形態の非常ブレーキ制御手段69について、より詳細に説明する。
【0041】
非常ブレーキ制御手段69は、一方の端部が流体タンク61に接続され、他方の端部がチャンバ駆動管路53に接続された第3流体管路69aと、第3流体管路69a上に配置され、開動作を行うことにより第3流体管路69aを介して流体タンク61とチャンバ駆動管路53とを連通させる第3調整弁69bと、第3調整弁69bを開放する第3調整弁制御手段69cと、を含んでいる。
【0042】
第3調整弁69bは、通常、第3調整弁制御手段69cからの入力が無い限り、閉鎖されている。第3調整弁69bとしては、ソレノイドバルブ等、公知の調整弁が採用可能である。第3調整弁制御手段69cは、異常検出手段68から起動信号を受け取ると、第3調整弁69bを開放するようになっている。なお、非常ブレーキ制御手段69は、流体タンク61とは別個の流体タンクに接続されていてもよく、この場合、別個の流体タンクは、流体タンク61と同様に構成されていてよい。
【0043】
ところで、非常ブレーキ制御手段69が作動して走行を停止した車両10は、交通の妨げにならない場所、もしくは、修理工場まで搬送される必要がある。しかしながら、このような場合に、常に車両10を搬送するための他の車両等を用意することは、時間と手間がかかる。
【0044】
このような事情を考慮して、本発明の車両10は、異常検出手段68が検出した異常が自動運転制御手段67bの異常である場合、非常ブレーキ制御手段69によるブレーキ手段50の駆動を解除することができるようになっている。換言すれば、通常運転に必要な部位に異常が発生している場合には、非常ブレーキ制御手段69によるブレーキ手段50の駆動を解除することはできないようになっている。
【0045】
ここで、通常運転に必要な部位の異常とは、本実施の形態では、操舵手段40の故障、動力部30の故障、アクセル制御手段35の故障、速度センサ70の故障、流体タンク61の流体漏れ、車輪20がパンクしている場合等を例示することができる。
【0046】
具体的には、車両10は、非常ブレーキ制御手段69によるブレーキ手段50の駆動を解除する解除手段69dを、さらに備えている。本実施の形態では、解除手段69dは、第3流体管路69aおよびチャンバ駆動管路53を第3流体管路69a外およびチャンバ駆動管路53外に開放する開放機構69eを備えている。
【0047】
開放機構69eとしては、種々の機構が採用可能である。例えば、開放機構69eは、第3流体管路69aまたはチャンバ駆動管路53に螺合した留め具を含んでいる。そして、開放機構69eは、留め具を緩める、あるいは外すことによって開放状態とされ、第3流体管路69aおよびチャンバ駆動管路53を第3流体管路69a外およびチャンバ駆動管路53外に開放することができるようになっている。一方で、開放機構69eは、留め具を締めることによって閉鎖状態とされ、第3流体管路69aおよびチャンバ駆動管路53を第3流体管路69a外およびチャンバ駆動管路53外から閉鎖することができるようになっている。
【0048】
あるいは、開放機構69eは、第3流体管路69aまたはチャンバ駆動管路53に設けられた弁を含んでいる。そして、開放機構69eは、弁を開放することによって開放状態とされ、第3流体管路69aおよびチャンバ駆動管路53を第3流体管路69a外およびチャンバ駆動管路53外に開放することができるようになっている。一方で、開放機構69eは、弁を閉鎖することによって閉鎖状態とされ、第3流体管路69aおよびチャンバ駆動管路53を第3流体管路69a外およびチャンバ駆動管路53外から閉鎖することができるようになっている。
【0049】
開放機構69eは、通常、閉鎖状態となっている。また、開放機構69eは、解除手段69dからの入力が無い限りロックが掛けられており、操作して開放状態とされることができないようになっている。
【0050】
なお、本実施の形態の解除手段69dは、第3調整弁69bに作動信号を送って、第3調整弁69bを閉鎖することができるようになっている。第3調整弁69bを閉鎖した後、解除手段69dを再び閉鎖することで、車輪20が制動されていない状態に復旧することができる。
【0051】
ここで、上述のように、解除手段69dによって非常ブレーキ制御手段69によるブレーキ手段50の駆動を解除されるのは、異常検出手段68が検出した異常が自動運転制御手段67bの異常である場合である。したがって、解除手段69dによって非常ブレーキ制御手段69によるブレーキ手段50の駆動が解除される前に、車両10の運転モードが通常運転モードに切り替えられていることが好ましい。このような事情を考慮して、解除手段69dは、車両10の運転モードが通常運転モードであるか自動運転モードであるかを検出することができるようになっている。
【0052】
なお、異常の発生した車両10は、人が乗車していない状態で、非常ブレーキ制御手段69によるブレーキ手段50の駆動が解除されるべきではない。このような事情を考慮して、本実施の形態の車両10は、車両10に乗車した人を検出する人検出手段69fをさらに備え、人検出手段69fが人を検出した場合にのみ、非常ブレーキ制御手段69によるブレーキ手段50の駆動を解除することができるようになっている。
【0053】
本実施の形態の人検出手段69fは、運転席に設けられ当該運転席に座っている人を検出する着座センサであるが、これに限られない。例えば、ハンドルに設けられ当該ハンドルが人によって握られていることを検出するハンドル把持センサ、図示しないシートベルト機構に設けられ当該シートベルト機構が操作されたことを検出するシートベルト操作センサ、運転席の座席シート上の人を検出可能なカメラ、あるいは、人が操作可能なスイッチであって操作されることにより車両10に人が乗車したことを示す乗車確認スイッチであってもよい。あるいは、ブレーキペダル64aが踏み込まれていることを検出可能な踏角検出センサ64bが、人検出手段69fとして用いられてもよい。
【0054】
次に、本実施の形態の車両10の作用について説明する。
【0055】
まず、車両10の運転モードが通常運転モードである場合について説明する。
【0056】
車両10が通常運転モードの場合、車両10の運転モードは、運転モード切替手段67cによって通常運転モードに設定されている。この場合、運転モード切替手段67cから通常運転支援手段67aに入力される起動信号によって、通常運転支援手段67aが起動された状態となっている。
【0057】
このような状態において、アクセルペダル35aが踏み込まれると、踏角検出センサ35bがアクセルペダル35aの踏角を検出し、当該踏角に対応する加速度を決定する。踏角検出センサ35bは、決定した加速度に関する加速度情報を動力部30に送る。加速度情報を受け取った動力部30は、エンジン出力が当該加速度情報に対応するエンジン出力となるよう、エンジン出力の制御を開始する。
【0058】
同時に、アクセルペダル35aの踏角に対応する加速度を決定した踏角検出センサ35bは、通常運転支援手段67aにも加速度情報を送る。通常運転支援手段67aは、車両10の各種センサ等から受け取った情報等に基づいて加速度情報を補正し、補正後の加速度情報を動力部30に送る。動力部30は、最終的に、補正後の加速度情報に対応するエンジン出力となるよう、エンジン出力を制御する。
【0059】
また、車両10の運転モードが通常運転モードに設定されている状態において、舵角入力手段41によって、操舵アクチュエータ42に所望の舵角に関する舵角情報の入力が行われると、操舵アクチュエータ42は、当該舵角情報に基づいてロッド21の操作を開始する。
【0060】
同時に、舵角情報を受け取った操舵アクチュエータ42は、通常運転支援手段67aにも当該舵角情報を送る。通常運転支援手段67aは、車両10の各種センサ等から受け取った情報等に基づいて舵角情報を補正し、補正後の舵角情報を操舵アクチュエータ42に送る。操舵アクチュエータ42は、最終的に、補正後の舵角情報に基づいてロッド21の操作を行う。
【0061】
また、車両10の運転モードが通常運転モードに設定されている状態において、ブレーキペダル64aが踏まれると、踏角検出センサ64bがブレーキペダル64aの踏角を検知し、踏角検出センサ64bは、当該踏角に関する踏角情報を、第1調整弁制御手段65cに送る。第1調整弁制御手段65cは、当該踏角に基づいて第1調整弁65bの開閉量を決定し、当該開閉量の分だけ第1調整弁65bの開放を開始する。
【0062】
同時に、決定した開閉量に関する開閉量情報を通常運転支援手段67aに送る。通常運転支援手段67aは、車両10の各種センサ等から受け取った情報等に基づいて開閉量情報を補正し、補正後の開閉量情報を第1調整弁制御手段65cに送る。第1調整弁制御手段65cは、最終的に補正後の開閉量情報に示された開閉量の分だけ、第1調整弁65bを開放する。
【0063】
第1調整弁65bが開放されることにより、流体タンク61とチャンバ駆動管路53とが第1流体管路65aを介して連通し、チャンバ駆動管路53に第1調整弁65bの開閉量に対応する速さで流体圧力が入力される。チャンバ駆動管路53に流体圧力が入力されると、当該圧力に対応してブレーキチャンバ51が駆動されて、シュー52が対応する車輪20に押しつけられる。この結果、車両10が減速を開始する。
【0064】
次に、車両10の運転モードが自動運転モードである場合について説明する。
【0065】
車両10が自動運転モードの場合、車両10の運転モードは、運転モード切替手段67cによって自動運転モードに設定されている。この場合、運転モード切替手段67cから自動運転支援手段67bに入力される起動信号によって、自動運転支援手段67bが起動された状態となっている。
【0066】
このような状態においては、自動運転支援手段67bは、車両10の各種センサ等から受け取った情報に基づいて、車両10の加速度を決定し、決定した加速度に関する加速度情報を動力部30に入力する。加速度情報を受け取った動力部30は、エンジン出力が当該加速度情報に対応するエンジン出力となるよう、エンジン出力を制御する。
【0067】
また、車両10の運転モードが自動運転モードに設定されている状態においては、自動運転支援手段67bは、車両10の各種センサ等から受け取った情報に基づいて、車両10の舵角を決定する。そして、自動運転支援手段67bは、決定した舵角に関する舵角情報を操舵アクチュエータ42に送る。舵角情報を受け取った操舵アクチュエータ42は、当該舵角情報に基づいてロッド21の操作を行う。
【0068】
また、車両10の運転モードが自動運転モードに設定されている状態においては、自動運転支援手段67bは、車両10の各種センサ等から受け取った情報に基づいて、車両10の制動力、すなわち、第2調整弁66bの開閉量を決定する。そして、自動運転支援手段67bは、決定した開閉量に関する開閉量情報を第2調整弁制御手段66cに送る。開閉量情報を受け取った第2調整弁制御手段66cは、当該開閉量情報が示す開閉量の分だけ、第2調整弁66bを開放する。
【0069】
第2調整弁66bが開放されることにより、流体タンク61とチャンバ駆動管路53とが第2流体管路66aを介して連通し、チャンバ駆動管路53に第2調整弁66bの開閉量に対応する速度で流体圧力が入力される。チャンバ駆動管路53に流体圧力が入力されると、当該圧力に対応してブレーキチャンバ51が駆動されて、シューが対応する車輪20に押しつけられる。この結果、車両10が減速を開始する。
【0070】
次に、車両10に異常が発生した場合の車両10の作用について説明する。
【0071】
車両10に異常が発生し、当該異常を異常検出手段68が検出すると、異常検出手段68は、速度センサ70から車両10の走行速度に関する速度情報を取得する。速度情報を取得した異常検出手段68は、車両10の走行速度が所定値以下である場合、第3調整弁制御手段69cに起動信号を送る。起動信号を受け取った第3調整弁制御手段69cは、第3調整弁69bを開放する。第3調整弁69bが開放されることにより、流体タンク61とチャンバ駆動管路53とが第3流体管路69aを介して連通し、チャンバ駆動管路53に流体圧力が入力される。チャンバ駆動管路53に流体圧力が入力されると、当該圧力に対応してブレーキチャンバ51が駆動されて、シュー52が対応する車輪20に押しつけられる。この結果、車両10が制動されて、車両10が走行を停止する。
【0072】
一方、速度センサ70から取得した速度情報が所定値より大きい走行速度を示す場合、異常検出手段68は、図示しないアンチロック・ブレーキ・システムを作動させる。そして、所定期間経過後に速度センサ70から再び速度情報を取得し、車両10の走行速度が所定値以下であるかどうかの判定を行う。走行速度が所定値より大きい場合は、アンチロック・ブレーキ・システムを作動させたままにし、再び所定期間経過後に速度センサ70から速度情報を取得する。そして、車両10の走行速度が所定値以下となったとき、異常検出手段68は、第3調整弁制御手段69cに起動信号を送る。起動信号を受け取った第3調整弁制御手段69cは、第3調整弁69bを開放する。
【0073】
非常ブレーキ制御手段69が作動して第3調整弁69bが開放されると、チャンバ駆動管路53には第3流体管路69aを介して流体タンク61から流体圧力が入力され続ける。したがって、ブレーキチャンバ51が駆動され続け、シュー52が対応する車輪20に押しつけられた状態が維持される。
【0074】
この状態において、まず、車両10に人が乗車しての運転席に着席すると、人検出手段69fにより、車両10に人が乗車していることが検出される。また、異常検出手段68が検出した異常が自動運転制御手段67bの異常であるかどうかの判定が、解除手段69dによって行われる。さらに、車両10に乗車した人が乗車運転モード切替手段67cによって車両10の運転モードを通常運転モードに切り替えると、解除手段69dにより、車両10の運転モードが通常運転モードであることが検出される。
【0075】
人検出手段69fにより車両10に人が乗車していることが検出され、異常検出手段68が検出した異常が自動運転制御手段67bの異常であり、且つ、運転モード切替手段67cによる運転モードの設定が通常運転モードであった場合、解除手段69dは第3調整弁69bを閉鎖し、開放機構69eに掛かっているロックを解除する。これにより、車両10の運転席にいる人は、開放機構69eを操作して開放状態とし、第3流体管路69aおよびチャンバ駆動管路53を第3流体管路69a外およびチャンバ駆動管路53外に開放することができるようになる。
【0076】
開放機構69eを操作して開放状態とすることにより第3流体管路69aおよびチャンバ駆動管路53が第3流体管路69a外およびチャンバ駆動管路53外に開放されると、チャンバ駆動管路53内の流体圧が低下し、非常ブレーキ制御手段69によってブレーキ手段50が駆動された状態が解除される。ブレーキ手段50が駆動された状態が解除された後、開放機構69eが操作されて閉鎖状態とされると、人は、通常運転により車両10を運転することが可能となる。
【0077】
以上に説明した一実施の形態において、車両10は、車両10を自動で制御する自動運転と、人が操作して車両を運転する通常運転と、の両方が可能である車両であり、車両10を制動するブレーキ手段50と、車両10を自動制御する自動運転制御手段67bと、車両10の異常を検出する異常検出手段68と、異常検出手段68が異常を検出した際に、ブレーキ手段50を駆動して車両10を制動する非常ブレーキ制御手段69と、を備えている。そして、異常検出手段68が検出した異常が自動運転制御手段67cの異常である場合、非常ブレーキ制御手段69によるブレーキ手段50の駆動を解除することができる。
【0078】
このような車両10によれば、異常検出手段68が車両10の異常を検出した場合、非常ブレーキ制御手段69がブレーキ手段50を駆動する。このため、車両10が自動運転により無人で走行中であったとしても、車両10に異常が発生した場合は、車両10の走行が速やかに停止され得る。その一方で、車両10は、異常検出手段68が検出した異常が自動運転制御手段67bの異常である場合には、非常ブレーキ制御手段69によるブレーキ手段50の駆動を解除することができる。このため、異常が発生した車両10であっても通常運転が可能な車両10については、当該車両10を通常運転で運転することにより移動させることが可能である。すなわち、異常が発生した車両10の移動に他の車両等の準備を要する機会が削減される。
【0079】
また、上述した一実施の形態において、車両10は、車両10に乗車した人を検出する人検出手段69fをさらに備えてよく、人検出手段69fが人を検出した後、非常ブレーキ制御手段69によるブレーキ手段50の駆動を解除することができる。
【0080】
この構成によれば、非常ブレーキ制御手段69によるブレーキ手段50の駆動は、車両10が無人の状態では解除されない。したがって、自動運転制御手段67bに異常が生じた車両10が人による点検を受けることなく自動走行を再開する、ということが防止される。
【0081】
また、上述した一実施の形態において、車両10は、自動運転のモードと通常運転のモードとが切替可能であり、自動運転のモードから通常運転のモードに切り替わった後、非常ブレーキ制御手段69によるブレーキ手段50の駆動を解除することができる。
【0082】
この構成によれば、非常ブレーキ制御手段69によるブレーキ手段50の駆動は、自動運転のモード中に解除されない。したがって、自動運転制御手段67bに異常が生じた車両が自動走行を再開する、ということが防止される。
【0083】
上述した一実施の形態において、車両10は、非常ブレーキ制御手段69によってブレーキ手段50が駆動された状態を解除する解除手段69dを、さらに備えている。また、ブレーキ手段50は、管路53と、管路53内の流体圧により動作するシュー52と、を有した流体圧ブレーキであり、解除手段69dは、管路53,69aを管路53,69a外に開放する開放機構69eを含んでいる。
【0084】
この構成によれば、非常ブレーキ制御手段69によるブレーキ手段50の駆動を解除することが容易である。ここで、開放機構69eは、管路53,69aに螺合した留め具を含んでもよいし、管路53,69aに設けられた弁を含んでもよい。
【0085】
次に、図2を参照して、本発明による隊列走行車両群の一実施の形態について説明する。
【0086】
図2は、本実施の形態による隊列走行車両群100を説明するための図である。図2によく示されているように、隊列走行車両群100は、上述の車両10を含んでいる。
【0087】
隊列走行車両群100の先頭を走行する先頭車両101は、通常運転(人が操作して車両を運転する運転)される車両であってもよいし、自動運転される車両であってもよい。もちろん、上述の車両10であってもよい。先頭車両101を追従する後続車両10は、上述の車両10である。なお、図2に示す隊列走行車両群100は後続車両10を一台含んでいるが、隊列走行車両群100は、複数の後続車両10を含んでよい。
【0088】
先頭車両101および後続車両10は、それぞれ、先頭車両101および後続車両10間で車間通信を行うための通信機器120を有しており、当該通信機器120によって得られた情報に基づいて、後続車両10は、あるいは、先頭車両101および後続車両10は、自動運転されるようになっている。
【0089】
次に、このような隊列走行車両群100の作用について説明する。
【0090】
まず、本実施の形態の隊列走行車両群100においては、先頭車両101には人が乗車しており、通常運転がなされている。一方、後続車両10には人が乗車しておらず、後続車両10は自動運転により運転されている。
【0091】
このような隊列走行車両群100の後続車両10において異常が発生し、当該車両10の異常検出手段68によって異常が検出されると、当該車両10の非常ブレーキ制御手段69によりブレーキ手段50が駆動される。これにより、異常の発生した失陥車両10は、速やかに走行を停止する。
【0092】
次に、先頭車両101を安全に停車させた先頭車両101のドライバまたは同乗者、あるいはその他の人が、失陥車両10に乗車し、失陥車両10の運転モードを運転モード切替手段67cによって通常運転にした後、解除手段69dを作動させて非常ブレーキ制御手段69によるブレーキ手段50の駆動を解除する。その後、失陥車両10に乗車した人は、失陥車両10を通常運転により運転し、交通の妨げにならない場所あるいは修理工場へ失陥車両10を搬送する。
【0093】
以上に説明した一実施の形態において、隊列走行車両群100は、通常運転又は自動運転される先頭車両101と、先頭車両101を追従する後続車両10と、を備え、後続車両10は、上述の車両10である。
【0094】
このような隊列走行車両群100では、先頭車両101からの制御によって自動運転される後続車両10として、上述の車両10が採用されている。したがって、後続車両10が自動運転で隊列走行中、異常検出手段68が当該後続車両10の異常を検出した場合、非常ブレーキ制御手段69がブレーキ手段50を駆動する。このため、後続車両10が自動運転により無人で走行中であったとしても、後続車両10に異常が発生した場合、当該後続車両10の走行が速やかに停止され得る。その一方で、隊列走行車両群100において後続車両10は、異常検出手段68が検出した異常が自動運転制御手段67bの異常である場合には、非常ブレーキ制御手段69によるブレーキ手段50の駆動を解除することができる。このため、異常が発生した後続車両10であっても通常運転が可能な後続車両10については、当該後続車両10を通常運転で運転することにより移動させることが可能である。すなわち、異常が発生した後続車両10の移動に他の車両等の準備を要する機会が削減される。
図1
図2