(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【技術分野】
【0001】
本発明は、支持材料を使用した熱溶解積層法による三次元の目標対象物の製造方法、ならびに複数層の支持材料および複数層の印刷材料を有する成形品に関する。
【0002】
高速プロトタイピング分野での方法である、熱溶解積層法(fused deposition modeling:FDM)、また熱溶融積層法(fused filament fabrication:FFF)では、三次元(3D)の対象物は可溶性プラスチックから一層ずつ組み立てられる。典型的には、3Dプリンターがこの目的に使用される。対象物は一層ずつ印刷される。第一に、溶融物質の点状のパターンが表面上にプロットされる。典型的にはフィラメント状で使用される溶融印刷材料は、通常、ノズルによる押し出し、続く所望の位置での冷却による材料の硬化によってプロットされる。典型的には、第一に、従来の2D印刷法におけるように、ラインごとに適用される層を適用することによって第一層がここで適用される。続いて、次の層が類似の方法で適用される。
【0003】
3D印刷によって実現される成形品(即ち目標対象物)には、例えばアンダーカット、オーバーハングおよび任意の所望の自由な形状の表面などの形状を有していてもよい。これらの形状的に重大な構造は、組み立て材料(印刷材料とも呼ばれる)の印刷によって容易に実現することができないが、いわゆる支持材料と呼ばれるものの使用を必要とする。印刷材料が目標対象を形成する役割を果たす一方で、支持材料は、機械的な強化(即ち、自立の表面および構造の安定化)のために支持構造の形成を通じて構成部品の成形部品としての役割を果たす。支持材料は、実際の三次元対象物の構築で同様に印刷され、印刷後には再び取り除かれなければならない。ここでは当然、支持材料は3D対象物から、それを破損することなく分離可能である必要がある。原則として、この目的のためには2つの既知の方法として、支持材料の機械的除去および溶解がある。
【0004】
機械的除去は場合により器具を用いて注意を要する機械的破砕によって達成される。
【0005】
支持材料の溶解はより穏やかな方法である。支持材料を溶解させるために好適な溶媒を使用しなければならない。このように、届きづらい支持材料の部品の部分でさえも取り除くことが可能である。支持材料の機械的剥離と比較して、より鋭利かつより微細な端を有する滑らかな対象物が得られる。支持材料は、剥離では溶媒を用いることによって完全に除去することができる。支持材料の除去はより単純な様式で、より短い時間内で行うことができる。面倒な機械的剥離の操作は不適切である。また、第一に3D対象物を印刷材料および支持材料を使用して製造し、次に支持材料を溶媒中の目標対象物から取り除くことができる、自動化された方法を実行することも可能である。
【0006】
しかしながら、溶解による除去に好適な支持材料を探索することは無数の量の既知の材料を鑑みると困難であり、その理由としては、印刷される材料として、同様に溶媒により印刷材料から剥離される材料としての適合性に関する様々な要件を充足しなければならないためである。支持材料は印刷材料に類似する高い溶融温度を有するべきである。溶融温度に違いがありすぎる場合は、既に印刷された低い溶融温度を有する方の材料はさもなければ部分的に再度溶解するだろう。その結果、支持材料を取り除く印刷対象物中の印刷材料に対する支持材料の接着が強すぎることがある。また印刷材料の特性にも悪影響を及ぼすことがある。2つの材料の収縮は同程度でなければならない。
【0007】
支持材料の剥離については、第一に、剥離される支持材料が想定されている溶媒中に良好な溶解性を有していることが重要である。溶媒の残留物がない除去は最適な結果に結びつく。支持材料は少なくとも使用される印刷材料からの剥離が可能である程度には部分的に溶解可能である必要があるが、使用される印刷材料自体は溶媒による損傷(attack)をうけてはならない。印刷された印刷材料の状態、特に存在する形状および表面特性は保護されるべきである。支持材料が溶解または剥離したが、印刷材料は部分的に同時に溶解、または膨張したか、ヘイズの増加または例えば白色縞の形成を通じて変色を経た場合、印刷材料、支持材料および溶媒の組み合わせが不適切である。
【0008】
FDM法中で使用される印刷材料は、典型的には成形可能なワックスおよび熱可塑性物、例えばポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリラクチド(PLA)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)、グリコール変性ポリエチレンテレフタレート(PETG)、あるいは熱可塑性エラストマーである。
【0009】
印刷材料として、低い溶融温度、例えばPLA(150〜190℃)、から中程度の溶融温度、例えばABS(210〜240℃)、を有する熱可塑性物については、好適な可溶性支持材料は既に同定されていて、例えば、高衝撃ポリスチレン(high-impact polystyrene:HIPS)またはポリビニルアルコール(polyvinyl alcohol:PVA)である。一般に、選択されたフィラメントの加工温度はその溶融温度よりはるかに高くなければならない。PLAについては、例えば180〜210℃のノズル温度が望ましい。
【0010】
FDM印刷におけるより高い溶融温度または加工温度を有しているポリマーについて、例えば熱可塑性ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリアミド(PA)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、あるいはポリカーボネート/ポリブチレンテレフタレートブレンド物(PC/PBT)について、現在では同定された好適な支持材料はほんのわずかであり、これらにはさらなる様々な不利な点がある。低い溶融温度を有する印刷材料に好適な支持材料は、高い溶融温度を有する印刷材料には適さず、その理由としては既に印刷された支持材料が印刷材料を印刷することで再び溶融するためである。
【0011】
より高い溶融温度または加工温度を有しているポリマーは既に3D印刷で支持材料として使用されていて、例えばStratasysからUltemという名称で入手可能である、例えばポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルスルホン(PES)などやポリエーテルイミドがあるが、これらの材料は機械的に除去しなければならない。
【0012】
さらに、可溶性の支持材料も知られている。
【0013】
例えば、US2013/317164A1は支持材料として無水マレイン酸コポリマーを記載している。この支持材料はアルカリ性水溶液において可溶性である。しかしながら、その加工温度のために、ここに記載された支持材料はABSで印刷するためにしか適していない。一般に、印刷材料および支持材料の加工温度は、互いに著しい差異があるべきでなく、または2つの材料は少なくとも良好な熱安定性を有するべきである。
【0014】
US2015/028523A1には、168℃のHDT−Aおよび220℃の溶融温度を有する支持材料としてのポリグリコール酸が記載されている。この支持材料は、174℃のHDT−A、185℃のガラス転移温度Tg、および420℃の溶融温度を有する印刷材料としてポリスルホンと組み合わせて印刷される。しかしながら、300〜330℃より高い温度は既に支持材料を破壊していると記載されている。さらに、アルカリ性水溶液での支持材料の除去が必要である。
【0015】
WO2015/175682A1から知られている、高い熱安定性の別の支持材料は、カルボン酸官能性コポリマーであるが、これも同様にアルカリ性水溶液中にのみ溶解させることができる。
【0016】
さらに、既知の水溶性支持材料として、3D Systemsからのポリビニルアルコール(Tg=85℃)があり、それは製造会社によればナイロンおよびPLAにしか親和性がない。しかしながら、水溶性材料の場合に水/水分(water/moisture)を吸収する傾向が高いことは不利であり、その理由としては水分を除去して、かつ印刷の前に十分な乾燥をしてそのような材料を保管する必要があるためである。
【0017】
先行技術から知られた可溶性の支持材料は、典型的には高温で長期にわたり不安定であり、および/またはアルカリ性水溶液中での除去を必要とし、これは、原則として印刷材料として好適な多くのポリマーを損傷する。
【0018】
したがって、提起された問題は、支持材料として、特に高い加工温度を有する印刷材料(例えば、370〜400℃の加工温度を有するPEEK)と共に使用することができるように、≧250℃、好ましくは≧300℃、特に≧330℃の特に高い加工温度でさえも安定であり、高い加熱ひずみ耐性を有する3D対象物をもたらし、かつ溶解により、好ましくはアルカリ性水溶液とは異なる溶媒で除去することができる支持材料を見出すことである。
【0019】
このたび、驚くべきことに、高い熱安定性のコポリカーボネートに基づく組成物が、3D印刷(FDM)での支持材料として、特に、高い溶融温度または加工温度、即ち≧250℃、好ましくは≧300℃、特に≧330℃を有する前述の印刷材料と組み合わせて、使用に好適であることが見出された。本発明によれば、「高い熱安定性」は、少なくとも150℃、好ましくは150℃超、さらに好ましくは少なくとも175℃、一層さらに好ましくは少なくとも180℃、より好ましくは200℃、好ましくは最大230℃のビカット温度(VST/B 120;ISO 306:2013)を有するコポリカーボネートを意味すると理解される。
【0020】
対応するコポリカーボネートは、例えばCovestro Deutschland AGからの「APECR(商標)」という名称で入手可能である。これは、式(1a)
【化1】
[式中、
R
1は、水素またはC
1〜C
4−アルキル基、好ましくは水素であり、
R
2は、C
1〜C
4−アルキル基、好ましくはメチル基であり、
nは、0、1、2または3、好ましくは3である]
の1つ以上のモノマー単位を含有しているコポリカーボネートである。
【0021】
別のコポリカーボネートは、下記に示される式(1b)、(1c)、(1d)および/または(1e)のうち1つ以上のモノマー単位を含有しているものである。
【0022】
しかしながら、コポリカーボネートは、好ましくは一般式(1a)のモノマー単位を含有している。
【0023】
したがって、本発明は、支持材料を使用する熱溶解積層法による三次元対象物の製造方法であって、使用される支持材料が、ISO 306:2013によって決定されたビカット温度(VST/B 120)で、少なくとも150℃、好ましくは150℃超、さらに好ましくは少なくとも175℃を有するコポリカーボネート、特に、一般式(1a)、(1b)、(1c)、(1d):
【化2】
[式中、
R
1は、水素またはC
1〜C
4−アルキル基、好ましくは水素であり、
R
2は、C
1〜C
4−アルキル基、好ましくはメチル基であり、
nは、0、1、2または3、好ましくは3であり、
R
3は、C
1〜C
4−アルキル基、アラルキル基、またはアリール基、好ましくはメチル基またはフェニル基、最も好ましくはメチル基である]、
の構造単位からなる群から選択される1つ以上のモノマー単位、
および/または
一般式(1e):
【化3】
[式中、
R
19は、水素、Cl、BrまたはC
1〜C
4−アルキル基、好ましくは水素またはメチル基、より好ましくは水素であり、
R
17およびR
18は、同一または異なっていて、各々独立して、アリール基、C
1−〜C
10−アルキル基、またはC
1−〜C
10−アルキルアリール基、好ましくは各々メチル基であり、かつここで
Xは、単結合、−CO−、−O−、C
1−〜C
6−アルキレン基、C
2−〜C
5−アルキリデン基、C
5−〜C
12−シクロアルキリデン基またはさらなるヘテロ原子含有芳香環に縮合していてもよいC
6−〜C
12−アリーレン基であり、ここで、Xは、好ましくは単結合、C
1−〜C
5−アルキレン基、C
2−〜C
5−アルキリデン基、C
5−〜C
12−シクロアルキリデン基、−O−または−CO−であり、さらに好ましくは、単結合、イソプロピリデン基、C
5−〜C
12−シクロアルキリデン基または−O−であり、最も好ましくはイソプロピリデン基であり、
nは、1〜500、好ましくは10〜400、より好ましくは10〜100、最も好ましくは20〜60の数であり、
mは、1〜10、好ましくは1〜6、より好ましくは2〜5の数であり、
pは、0または1、好ましくは1であり、かつ
n×mの値は、好ましくは12と400の間、さらに好ましくは15と200の間である]
のシロキサンの1つ以上のモノマー単位であって、
前記シロキサンが好ましくは3〜7のpK
A(25℃)を有する弱酸の有機塩または無機塩の存在下でポリカーボネートと反応するものである、モノマー単位、
を含有しているコポリカーボネートに基づく組成物であり、かつ
使用する印刷材料が、ポリエステル、ポリアミド、PC/ポリエステルブレンドおよび/またはポリアリールエーテルケトンであることを特徴とする、製造方法を提供する。
【0024】
式(1b)、(1c)、(1d)、および/または(1e)のモノマー単位を有するコポリカーボネートを使用する場合、支持材料を除去するために使用する溶媒は、単独または混合物としてのTHF(テトラヒドロフラン)である。これはコポリカーボネートが式(1a)のモノマー単位を含有し、ISO 306:2013によって決定されたビカット温度(VST/B120)が175℃未満である場合に適用可能である。
【0025】
式(1e)のモノマー単位を有するコポリカーボネートおよび特にその製造はWO2015/052106A2に記載されている。
【0026】
本発明によれば、ポリカーボネートおよびコポリカーボネートは特に芳香族ポリカーボネートまたはコポリカーボネートを意味すると理解される。
【0027】
本発明の文脈において
C1−〜C4−アルキルは、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチルであり、
C1−〜C6−アルキルはまた、例えばn−ペンチル、1−メチルブチル、2−メチルブチル、3−メチルブチル、ネオペンチル、1−エチルプロピル、シクロヘキシル、シクロペンチル、n−ヘキシル、1,1−ジメチルプロピル、1,2−ジメチルプロピル、1,2−ジメチルプロピル、1−メチルペンチル、2−メチルペンチル、3−メチルペンチル、4−メチルペンチル、1,1−ジメチルブチル、1,2−ジメチルブチル、1,3−ジメチルブチル、2,2−ジメチルブチル、2,3−ジメチルブチル、3,3−ジメチルブチル、1−エチルブチル、2−エチルブチル、1,1,2−トリメチルプロピル、1,2,2−トリメチルプロピル、1−エチル−1−メチルプロピル、1−エチル−2−メチルプロピルまたは1−エチル−2−メチルプロピルであり、
C1−〜C10−アルキルはまた、例えばn−ヘプチルおよびn−オクチル、ピナシル、アダマンチル、異性体のメンチル、n−ノニル、n−デシルであり、かつ
C1−〜C34−アルキルはまた、例えばn−ドデシル、n−トリデシル、n−テトラデシル、n−ヘキサデシルまたはn−オクタデシルである。対応するアルキル基、例えばアラルキル/アルキルアリール、アルキルフェニルまたはアルキルカルボニル基にも同様のことが当てはまる。対応するヒドロキシアルキル基またはアラルキル/アルキルアリール基中のアルキレン基は、例えば前述のアルキル基に対応するアルキレン基である。
【0028】
アリール基は、6〜34個の骨格炭素原子を有する炭環式芳香族基である。アラルキル基としても知られているアリールアルキル基の芳香族部分、およびより複雑な基(例えばアリールカルボニル基)のアリール成分にも同様のことが当てはまる。
【0029】
C6−〜C34−アリールの例は、フェニル、o−、p−、m−トリル、ナフチル、フェナントレニル(phenanthrenyl)、アントラセニルおよびフルオレニルである。
【0030】
アリールアルキルおよび
アラルキルは各々独立して、上で定義されたような直鎖状、環式状、分岐状または非分岐状のアルキル基であり、それは上で定義されたようなアリール基によって一置換、多置換、または完全置換(persubstituted)されていてもよい。
【0031】
上記のリストは例示であって、限定するものと見なすべきではない。
【0032】
本発明の文脈において「コポリカーボネートに基づく組成物」は、少なくとも50重量%のコポリカーボネート、好ましくは少なくとも60重量%、より好ましくは少なくとも75重量%、最も好ましくは少なくとも85重量%のコポリカーボネートを含有している組成物を意味すると理解される。またこれは追加の添加剤がないコポリカーボネートを意味するとも理解される。コポリカーボネートに基づく組成物中に存在していてもよい添加剤に関しては、印刷材料組成についての後の記載と同一のことが当てはまる。
【0033】
一般式(1a)のモノマー単位は一般式(1a’):
【化4】
[式中、
R
1は、水素またはC
1〜C
4−アルキル基、好ましくは水素であり、
R
2は、C
1〜C
4−アルキル基、好ましくはメチル基であり、
nは、0、1、2または3、好ましくは3である]
の1種以上の対応するジフェノールによって誘導される。
【0034】
式(1a’)のジフェノールおよびホモポリカーボネート中でのその使用は文献(DE3918406A1)に開示されている。
【0035】
特に好ましいのは式(1a”):
【化5】
を有する1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン(ビスフェノールTMC)である。
【0036】
一般式(1b)、(1c)、および/または(1d)のモノマー単位を有するコポリカーボネートは高い加熱ひずみ耐性および低い熱収縮性を有する。本発明に従い使用するコポリカーボネートの場合のビカット温度は、典型的には175℃と230℃の間である。
【0037】
一般式(1b)、(1c)、および/または(1d)のモノマー単位は、一般式(1b’)、(1c’)、および(1d’):
【化6】
[式中、
R
3は、C
1−〜C
4−アルキル基、アラルキル基、またはアリール基、好ましくはメチル基またはフェニル基、最も好ましくはメチル基である]
のうち1つ以上の対応するジフェノールによって誘導される。
【0038】
本発明に従い支持材料として使用されるコポリカーボネートは、式(1a)、(1b)、(1c)、(1d)、および/または(1e)のうち1つ以上のモノマー単位と同様に、式(2):
【化7】
[式中、
R
7およびR
8は、独立してH、C
1−〜C
18−アルキル基、C
1−〜C
18−アルコキシ基、ClまたはBrなどのハロゲンであり、あるいは各々置換されていてもよいアリール基またはアラルキル基であり、好ましくはHまたはC
1−〜C
12−アルキル基、より好ましくはHまたはC
1−〜C
8−アルキル基、最も好ましくはHまたはメチル基であり、かつ
Yは、単結合、−SO
2−、−CO−、−O−、−S−、C
1−〜C
6−アルキレン基、またはC
2−〜C
5−アルキリデン基、あるいはさらなるヘテロ原子含有芳香環に縮合していてもよいC
6−〜C
12−アリーレン基である]
の1つ以上のモノマー単位を有していてもよい。
【0039】
一般式(2)のモノマー単位は、一般式(2a):
【化8】
[式中、
R
7、R
8およびYは、各々既に式(2)で定義されたとおりである]
の1つ以上の対応するジフェノールによって誘導される。
【0040】
式(1a’)、(1b’)、(1c’)、および/または(1d’)のジフェノールに加えて使用してもよい式(2a)のジフェノールの例としては、ヒドロキノン、レゾルシノール、ジヒドロキシビフェニル、ビス(ヒドロキシフェニル)アルカン、ビス(ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(ヒドロキシフェニル)ケトン、ビス(ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(ヒドロキシフェニル)スルホキシド、α,α’−ビス(ヒドロキシフェニル)ジイソプロピルベンゼン、およびそれらの環アルキル化された化合物、またはその環ハロゲン化された化合物、ならびにα,ω−ビス(ヒドロキシフェニル)ポリシロキサンが挙げられる。
【0041】
式(2a)の好ましいジフェノールは、例えば4,4’−ジヒドロキシビフェニル(DOD)、4,4’−ジヒドロキシビフェニルエーテル(DODエーテル)、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)、2,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−メチルブタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、1,1−ビス[2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−プロピル]ベンゼン、1,3−ビス[2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−プロピル]ベンゼン(ビスフェノールM)、2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−クロロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、2,4−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−2−メチルブタン、2,2−ビス(3,5−ジクロロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパンおよび2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパンである。
【0042】
特に好ましいジフェノールは例えば2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)、4,4’−ジヒドロキシビフェニル(DOD)、4,4’−ジヒドロキシビフェニルエーテル(DODエーテル)、1,3−ビス[2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−プロピル]ベンゼン(ビスフェノールM)、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、2,2−ビス(3,5−ジクロロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、および2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパンである。
【0043】
非常に特に好ましいのは一般式(2b)の化合物である:
【化9】
[式中、
R
11は、H、直鎖状または分岐状のC
1−〜C
10−アルキル基、好ましくは直鎖状または分岐状のC
1−〜C
6−アルキル基、より好ましくは直鎖状または分岐状のC
1−〜C
4−アルキル基、最も好ましくはHまたはC
1−アルキル基(メチル基)であり、かつ
R
12は、直鎖状または分岐状のC
1−〜C
10−アルキル基、好ましくは直鎖状または分岐状のC
1−〜C
6−アルキル基、より好ましくは直鎖状または分岐状のC
1−〜C
4−アルキル基、最も好ましくはC
1−アルキル基(メチル基)である。]
【0044】
ここでは特にジフェノール(2c)が非常に好ましい。
【化10】
【0045】
一般式(2a)のジフェノールは、単独または互いに混合物中で使用してもよい。ジフェノールは文献から知られていて、または文献の方法によって調製可能である(例えば、H. J. Buysch et al., Ullmann's Encyclopedia of Industrial Chemistry, VCH, New York 1991, 第5版、第19巻、348頁を参照のこと)。
【0046】
コポリカーボネート中の式(1a)、(1b)、(1c)、および(1d) のモノマー単位の合計比率は、0.1〜88mol%、より好ましくは1〜86 mol%、一層より好ましくは 5〜84mol%、特に10〜82mol%(使用されるジフェノールの合計モルに基づき)である。
【0047】
好ましくは、成分Aのコポリカーボネートのジフェノキシド単位は、上記式(1a’)、さらに好ましくは(1a”)および(2a)、最も好ましくは(2c)の一般的構造を有するモノマーに由来する。
【0048】
本発明による組成物の別の好ましい実施態様では、成分Aのコポリカーボネートのジフェノキシド単位は、上記式(2a)および(1b’)、(1c’)、および/または(1d’)の一般的構造を有しているモノマーに由来する。
【0049】
好ましいコポリカーボネートは、17重量%〜62重量%のビスフェノールAおよび38重量%〜83重量%、さらに好ましくは50重量%〜70重量%の一般式(1b)、(1c)および/または(1d)のコモノマーから形成され、ビスフェノールAと一般式(1b)、(1c)および/または(1d)のコモノマーの量は合計すると100重量%となる。
【0050】
ポリカーボネート中の式(1a)のモノマー単位(好ましくはビスフェノールTMC)の割合は、好ましくは10〜95重量%、さらに好ましくは30重量%〜85重量%、より好ましくは30重量%〜67重量%である。30重量%以上のビスフェノールTMCの場合には、コポリカーボネートのビカット温度(VST/B 120;ISO 306:2013)は175℃より高い。ここで使用される式(2)のモノマーは好ましくはビスフェノールAであり、その割合は、好ましくは15重量%〜56重量%である。より好ましくは、コポリカーボネートはモノマービスフェノールTMCおよびビスフェノールAから形成される。
【0051】
本発明に従い支持材料として使用されるコポリカーボネートは、好ましくは150〜230℃、好ましくは155〜225℃、一層さらに好ましくは160℃〜220℃、より好ましくは175℃〜220℃、最も好ましくは180℃〜218℃の、ISO 306:2013によって決定されたビカット軟化温度を有する。
【0052】
コポリカーボネートは、ブロックおよびランダムのコポリカーボネートの形態でもよい。好ましいのはランダムコポリカーボネートである。
【0053】
コポリカーボネート中のジフェノキシドモノマー単位の周波数の比は、ここでは使用されるジフェノールの分子比から計算される。
【0054】
ISO 1628−4:1999で決定された、コポリカーボネートの相対的な溶液粘度は、好ましくは1.15〜1.35の範囲である。
【0055】
コポリカーボネートの重量平均モル質量M
wは、好ましくは15000〜40000g/mol、より好ましくは17000〜36000g/mol、最も好ましくは17000〜34000g/molであり、かつポリカーボネートカリブレーションに対して塩化メチレン中でのGPCによって決定される。
【0056】
製造方法
コポリカーボネートの好ましい製造方法は界面法およびメルトエステル交換反応法である。好ましい実施態様では、メルトエステル交換反応法によって製造が達成される。
【0057】
界面法によって高分子量のコポリカーボネートを得るためには、二相性混合物中でジフェノールのアルカリ金属塩をホスゲンと反応させる。分子量は、連鎖停止剤(例えばフェノール、tert−ブチルフェノール、またはクミルフェノール、より好ましくはフェノール、tert−ブチルフェノール)としての役割を果たすモノフェノールの量によって制御することができる。これらの反応は、事実上、直鎖状ポリマーのみを形成する。これは末端基分析によって確認することができる。いわゆる分岐剤の特定の使用によって、ここでは通常ポリヒドロキシル化された化合物、分岐状ポリカーボネートが得られる。
【0058】
使用される分岐剤は少量でもよく、使用するジフェノールのモルに基づき、好ましくは0.05および5mol%の間、より好ましくは0.1〜3mol%、最も好ましくは0.1〜2mol%の三官能性化合物、例えば、イサチンビスクレゾール(IBC)またはフロログルシノール、4,6−ジメチル−2,4,6−トリ(4−ヒドロキシフェニル)ヘプト−2−エン;4,6−ジメチル−2,4,6−トリ(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン;1,3,5−トリ(4−ヒドロキシフェニル)ベンゼン;1,1,1−トリ(4−ヒドロキシフェニル)エタン(THPE);トリ(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン;2,2−ビス[4,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキシル]プロパン;2,4−ビス(4−ヒドロキシフェニルイソプロピル)フェノール;2,6−ビス(2−ヒドロキシ−5’−メチルベンジル)−4−メチルフェノール;2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−(2,4−ジヒドロキシフェニル)プロパン;ヘキサ(4−(4−ヒドロキシフェニルイソプロピル)フェニルオルトテレフタレート;テトラ(4−ヒドロキシフェニル)メタン;テトラ(4−(4−ヒドロキシフェニルイソプロピル)フェノキシ)メタン;α,α’,α”−トリス(4−ヒドロキシフェニル)−1,3,5−トリイソプロピルベンゼン;2,4−ジヒドロキシ安息香酸;トリメシン酸;塩化シアヌル;3,3−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−2−オキソ−2,3−ジヒドロインドール;1,4−ビス(4’,4”−ジヒドロキシトリフェニル)メチル)ベンゼン)、および特に1,1,1−トリ(4−ヒドロキシフェニル)エタン)(THPE)およびビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−2−オキソ−2,3−ジヒドロインドールであってもよい。好ましいのはイサチンビスクレゾールならびにまた、1,1,1−トリ(4−ヒドロキシフェニル)エタン(THPE)およびビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−2−オキソ−2,3−ジヒドロインドールを使用することである。
【0059】
これらの分岐剤の使用で分岐状構造がもたらされる。結果として生じる長鎖分枝は、一般に直鎖状のタイプと比較して構造的な粘性につながる。
【0060】
使用される連鎖停止剤の量は、各場合に使用されるジフェノールのモルに基づき、0.5mol%〜10mol%、好ましくは1mol%〜8mol%、より好ましくは2mol%〜6mol%である。連鎖停止剤は好ましくは塩化メチレンとクロロベンゼンの溶媒混合物中の溶液(8〜15質量(重量)分率(percent strength by weight))として、ホスゲン化の前に、間に、または後に加えることができる。
【0061】
メルトエステル交換反応法によって高分子量のコポリカーボネートを得るためには、ジフェノールを、アルカリ金属塩、アンモニウムまたはホスホニウム化合物などの触媒および場合により追加の添加剤の存在下で、メルト中で炭酸ジエステル(通常は炭酸ジフェニル)と反応させる。
【0062】
メルトエステル交換反応法は、例えばEncyclopedia of Polymer Science,第10巻 (1969)、Chemistry and Physics of Polycarbonates, Polymer Reviews, H. Schnell, 第9巻, John Wiley and Sons, Inc. (1964)、およびDE−C1031512に記載されている。
【0063】
本発明のための炭酸ジエステルは式(5)および(6):
【化11】
[式中、
R、R’およびR”は、独立してH、場合によりC
1〜−C
34−アルキル/シクロアルキル基、C
7−〜C
34−アルカリル基、またはC
6−〜C
34−アリール基を表す]のものであり、
例えば、
炭酸ジフェニル、炭酸フェニルブチルフェニル、炭酸ジ(ブチルフェニル)、炭酸フェニルイソブチルフェニル、炭酸ジ(イソブチルフェニル)、炭酸フェニルtert−ブチルフェニル、炭酸ジ(tert−ブチルフェニル)、炭酸フェニルn−ペンチルフェニル、炭酸ジ(n−ペンチルフェニル)、炭酸フェニルn−ヘキシルフェニル、炭酸ジ(n−ヘキシルフェニル)、炭酸フェニルシクロヘキシルフェニル、炭酸ジ(シクロヘキシルフェニル)、炭酸フェニルフェニルフェノール、炭酸ジ(フェニルフェノール)、炭酸フェニルイソオクチルフェニル、炭酸ジ(イソオクチルフェニル)、炭酸フェニルn−ノニルフェニル、炭酸ジ(n−ノニルフェニル)、炭酸フェニルクミルフェニル、炭酸ジ(クミルフェニル)、炭酸フェニルナフチルフェニル、炭酸ジ(ナフチルフェニル)、炭酸フェニルジ−tert−ブチルフェニル、炭酸ジ(ジ−tert−ブチルフェニル)、炭酸フェニルジクミルフェニル、炭酸ジ(ジクミルフェニル)、炭酸フェニル4−フェノキシフェニル、炭酸ジ(4−フェノキシフェニル)、3−ペンタデシルフェニル炭酸フェニル、炭酸ジ(3−ペンタデシルフェニル)、炭酸フェニルトリチルフェニル、炭酸ジ(トリチルフェニル)であり、
好ましくは炭酸ジフェニル、炭酸フェニルtert−ブチルフェニル、炭酸ジ−(tert−ブチルフェニル)、炭酸フェニルフェニルフェノール、炭酸ジ(フェニルフェノール)、炭酸フェニルクミルフェニル、炭酸ジ(クミルフェニル)であり、より好ましくは、炭酸ジフェニルである。同様に、記載された炭酸ジエステルの混合物を使用することも可能である。
【0064】
炭酸エステルの割合は、1種以上のジフェノールに基づき、100〜130mol%、好ましくは103〜120mol%、より好ましくは103〜109mol%である。
【0065】
引用文献に記載されているように、メルトエステル交換反応法中で使用する触媒は、塩基性触媒(例えばアルカリ金属およびアルカリ土類金属水酸化物および酸化物)であり、同様に以下でオニウム塩として記載されているアンモニウム塩またはホスホニウム塩である。好ましいのは、オニウム塩の使用であり、より好ましくはホスホニウム塩である。本発明の文脈におけるホスホニウム塩は下記の一般式(7)を有するものである:
【化12】
[式中、
R
13−16は、同一または異なっていてもよく、C
1−〜C
10−アルキル基、C
6−〜C
10−アリール基、C
7−〜C
10−アラルキル基、またはC
5−〜C
6−シクロアルキル基、好ましくはメチル基またはC
6−〜C
14−アリール基、より好ましくはメチル基またはフェニル基であってもよく、
X’
−は、水酸化物、硫酸塩、硫酸水素塩、炭酸水素塩、炭酸塩、ハロゲン化物、好ましくは塩化物、または式OR
17のアルコキシドのアニオンであってもよく、式中R
17はC
6−〜C
14−アリール基、またはC
7−〜C
12−アラルキル基であってもよく、好ましくはフェニル基でもよい。
【0066】
好ましい触媒は塩化テトラフェニルホスホニウム、水酸化テトラフェニルホスホニウム、テトラフェニルホスホニウムフェノキシド、より好ましくは、テトラフェニルホスホニウムフェノキシドである。
【0067】
触媒は、ジフェノール1モルに基づき、好ましくは10
−8〜10
−3molの量で、より好ましくは10
−7〜10
−4molの量で使用される。
【0068】
さらなる触媒は重合の速度を増加させるために、単独または場合によりオニウム塩に加えて使用してもよい。これらには、リチウム、ナトリウム、およびカリウムの水酸化物、アルコキシドおよびアリールオキシドなどのアルカリ金属およびアルカリ土類金属の塩、好ましくはナトリウムの水酸化物、アルコキシドまたはアリールオキシドの塩が含まれる。最も好ましいのは水酸化ナトリウムおよびナトリウムフェノキシドである。助触媒の量は、各場合にナトリウムとして計算して、1〜200ppbの範囲、好ましくは5〜150ppb、最も好ましくは10〜125ppbでもよい。
【0069】
触媒は計量の間の有害な過剰濃縮(overconcentration)を回避するために溶液で加えられる。溶媒は、システムに、そしてプロセスに固有の化合物であり、例えばジフェノール、炭酸ジエステル、モノヒドロキシアリール化合物である。特に触媒の活性下で、単に緩やかに上昇した温度でもジフェノールおよび炭酸ジエステルがすぐに変換および分解することが当業者にはよく知られているため、特に好ましいのはモノヒドロキシアリール化合物である。これはポリカーボネート品質に悪影響を及ぼす。ポリカーボネートの調製のための産業的に重要なエステル交換反応法では、好ましい化合物はフェノールである。製剤中で好ましく使用されるテトラフェニルホスホニウムフェノキシド触媒がフェノールと共に共結晶として単離されるので、フェノールは有力な選択肢である。
【0070】
エステル交換反応法によりコポリカーボネートを製造する方法にはバッチ的な、またはほかの連続的な構成があり得る。一旦ジフェノールおよび炭酸ジエステルが場合により追加の化合物とメルト物の形態になると、反応は触媒の存在下で開始する。変換/分子量は、所望の最終状態が達成されるまで除去されたモノヒドロキシアリール化合物を取り除くことにより、好適な装置中での上昇する温度および低下する圧力で増加する。ジフェノールの炭酸ジエステルに対する比、ならびに蒸気を介した炭酸ジエステルおよび任意の追加化合物(例えばより高沸点のモノヒドロキシアリール化合物)の損失速度の選択がその性質および濃度の点から末端基を決定し、当該損失速度はポリカーボネートを製造するための手順/プラントの選択を通じて発生するものである。
【0071】
方法において実施されるプラントおよび方法が実施される手順に関する様式には制約または規制はない。
【0072】
さらに、ジフェノールと炭酸ジエステルと、追加される他の任意の反応物との間のメルトエステル交換反応を行なうために使用する温度、圧力、および触媒には特定の制約および規制はない。あらゆる条件も可能であるが、選択された温度、圧力および触媒が、除去されたモノヒドロキシアリール化合物の、対応する迅速な除去でのメルトエステル交換反応を可能にすることが条件である。
【0073】
全過程にわたる温度は、絶対圧15bar〜絶対圧0.01mbarで一般に180〜330℃である。
【0074】
製品品質に有利であるので、通常は連続的手順が選択される。
【0075】
好ましくは、ポリカーボネートを生産するための連続法は、炭酸ジエステルとの1種以上のジフェノール、同様に任意の他の反応物が、触媒を使用して、事前縮合後に、形成されたモノヒドロキシアリール化合物を除去することなく、その後、段階的に上昇する温度および段階的に低下する圧力に従い幾つかの反応蒸発装置の段階にて加えられ、分子量は所望のレベルに増加する。
【0076】
個々の反応蒸発装置の段階に好適な装置、装置(devices, apparatuses)および反応装置は、方法の順序に従い、熱交換器、フラッシュ装置、セパレーター、カラム、蒸発装置、撹拌容器および反応装置、または選択された温度および圧力での必要な滞留時間を提供する他の購入可能な装置である。選択された装置は、必要な熱の入力を可能にしなければならず、それらが連続的に増加する融解粘度に対処することができるように構築されていなければならない。
【0077】
装置はすべてポンプ、配管およびバルブによって互いに接続されている。不要に延長された滞留時間を回避するために、すべての装置間の配管は当然に可能な限り短くあるべきであり、導管の湾曲は可能な限り小さくしておくべきである。同時に、化学プラントの外部的(即ち技術的)な境界条件、およびの組立条件も観察するべきである。
【0078】
好ましい連続的手順により方法を行なうために、好ましくは調製から直接に、共反応物を一緒に溶解させることもでき、あるいは固体のジフェノールを炭酸ジエステルのメルト中に溶解させることもでき、または固体の炭酸ジエステルをジフェノールのメルト中に溶解させることもでき、または原料の両方を溶融物の形態に組み合わせる。原料の個々のメルト物の滞留時間、特にジフェノールのメルト物の滞留時間は可能な限り短くなるように調節される。対照的にメルト混合物は、個々の原料と比較して、原料混合物の融点が低いために、品質を損うことなく相当に低い温度でより長時間滞留することができる。
【0079】
その後、好ましくはフェノール中に溶解した触媒を混合し、メルト物を反応温度に加熱する。2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンと炭酸ジフェニルからポリカーボネートを製造するための産業的に重要な方法における開始時では、この温度は、180〜220℃、好ましくは190〜210℃、最も好ましくは190℃である。15〜90分、好ましくは30〜60分の滞留時間の間に、形成されたヒドロキシアリール化合物を引き出すことなく、反応平衡が確立する。反応は大気圧で行うことができるが、産業上の理由で高圧で行うこともできる。工業プラントでの好ましい圧力は2〜15bar絶対圧である。
【0080】
メルト混合物は、圧力を100〜400mbar、好ましくは150〜300mbarに設定した第一真空室内で膨張し、次いで好適な装置内にて同一の圧力で入口温度に直接加熱し戻される。膨張の操作では、形成されたヒドロキシアリール化合物は、依然として存在するモノマーとともに蒸発する。同一圧力および同一温度で、場合によりポンプによる循環付きの底部レザーバー(bottoms reservoir)での5〜30分の滞留時間後に反応混合物は、圧力が50〜200mbar、好ましくは80〜150mbarである第二真空室内で膨張し、その直後に好適な装置内で同一圧力にて、190℃〜250℃、好ましくは210℃〜240℃、より好ましくは210℃〜230℃の温度へ加熱される。ここでもまた、形成されたヒドロキシアリール化合物は、依然として存在するモノマーと一緒に蒸発する。同一圧力および同一温度で、場合によりポンプによる循環付きの底部レザーバーでの5〜30分の滞留時間後に反応混合物は、圧力が30〜150mbar、好ましくは50〜120mbarである第三真空室内で膨張し、その直後に好適な装置内で同一圧力にて、220℃〜280℃、好ましくは240℃〜270℃、より好ましくは240℃〜260℃の温度へ加熱される。ここでもまた、形成されたヒドロキシアリール化合物は、依然として存在するモノマーと一緒に蒸発する。同一圧力および同一温度で、場合によりポンプによる循環付きの底部レザーバーでの5〜20分の滞留時間後に反応混合物は、圧力が5〜100mbar、好ましくは15〜100mbar、より好ましくは20〜80mbarであるさらなる真空室内で膨張し、その直後に好適な装置内で同一圧力にて、250℃〜300℃、好ましくは260℃〜290℃、より好ましくは260℃〜280℃の温度へ加熱される。ここでもまた、形成されたヒドロキシアリール化合物は、依然として存在するモノマーと一緒に蒸発する。
【0081】
これらの段階の数は、ここでは例示として4であるが、2〜6の間で変わってもよい。比較可能な結果を得るために段階の数を変更した場合、温度および圧力は適切に調節するべきである。これらの段階で達成したオリゴマーカーボネートの相対粘度は、1.04と1.20の間、好ましくは1.05と1.15の間、より好ましくは1.06〜1.10の間である。
【0082】
このように場合によりポンプによる循環付きの底部レザーバー内で、最後のフラッシュ/蒸発段階と同一の圧力および同一の温度にて、5〜20分の滞留時間後に得られたオリゴカーボネートは、ディスク反応装置またはケージ反応装置へ送られ、250℃〜310℃、好ましくは250℃〜290℃、より好ましくは250℃〜280℃の温度で、1〜15mbar、好ましくは2〜10mbarの圧力で、30〜90分、好ましくは30〜60分の滞留時間でさらなる縮合に供された。生成物は1.12〜1.28、好ましくは1.13〜1.26、より好ましくは1.13〜1.24の相対粘度に到達する。
【0083】
この反応装置を出るメルト物は、追加のディスク反応装置またはケージ反応装置内で所望される最終粘度/最終分子量になる。温度は270℃〜330℃、好ましくは280℃〜320℃、より好ましくは280℃〜310℃であり、圧力は0.01〜3mbar、好ましくは0.2〜2mbar、滞留時間は60〜180分、好ましくは75〜150分である。相対粘度は想定される用途に必要なレベルに設定され、1.18〜1.40、好ましくは1.18〜1.36、より好ましくは1.18〜1.34である。
【0084】
2つのケージ反応装置またはディスク反応装置の機能は1つのケージ反応装置またはディスク反応装置中で組み合わせることができる。
【0085】
方法のすべての段階からの蒸気は、直接に介され(led off)、回収され処理される。この処理は、一般に回収された物質の高純度を達成するために蒸留によって達成される。これは、例えばドイツの特許出願第10100404により達成することができる。除去されたモノヒドロキシアリール化合物を超高純度の形態で回収および単離することは、経済および環境上の点から見て明白な目的である。 モノヒドロキシアリール化合物は、ジフェノールまたは炭酸ジエステルを製造するために直接使用することができる。
【0086】
ディスク反応装置またはケージ反応装置の特徴として、それらが長い滞留時間で、減圧下にて非常に大きな、絶えず更新する表面を提供することがある。ディスク反応装置またはケージ反応装置は生成物の溶融粘度に従い幾何学的形状を有する。好適な例は、DE4447422C2およびEPA1253163、DE 4447に記載の反応装置またはWOA99/28370に記載の二軸反応装置である。
【0087】
完成したポリカーボネートは、一般に、ギアポンプ、種々様々の設計のスクリューまたは特定の設計の容積型ポンプによって送られる。
【0088】
界面法と同様に、分岐剤として多官能化合物を使用することも可能である。
【0089】
界面法によるポリシロキサン−ポリカーボネートブロックコポリマーの調製は文献から知られていて、例えばUS−A3189662、US−A3419634、DE−A334782、およびEP0122535に記載されている。同一のことがUS5227449に記載の、ビスフェノール、ジアリールカーボネート、シラノール末端ポリシロキサンおよび触媒からのメルトエステル交換反応法による調製にも当てはまる。
【0090】
三次元の目標対象物を製造するための本発明の方法において使用される支持材料は、好ましくは1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン(ビスフェノールTMC)および2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)から形成されたコポリカーボネートである。
【0091】
使用する印刷材料は、ポリアリールエーテルケトン、特にPEEK、ポリエステル、特にPBT、ポリアミド、特にPA−12、PC/ポリエステルブレンド、好ましくはPC/PBT、特に15重量%〜70重量%、より好ましくは30重量%〜40重量%、最も好ましくは30重量%〜35重量%のポリエステル含有量を有するPC/PBTブレンド、および/またはPET、より好ましくはPBTまたはポリアミド、特に、PA−12であるポリアミドである。
【0092】
「印刷材料として使用される」とは、純粋ポリマーを使用することだけでなく、主要な成分としてこれらのポリマーのうちの1種を含有しているポリマー組成物を使用することも含む。ここで「主要な」とは前述のポリマーの少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも60重量%、より好ましくは少なくとも75重量%、最も好ましくは少なくとも85重量%を含有している組成物を意味すると理解される。またこの種のポリマー組成物は典型的に慣習上の添加剤を含有している。
【0093】
ポリカーボネートに典型的に加えられるような添加剤は、特に酸化防止剤、離型剤、難燃剤、UV吸収剤、IR吸収剤、静電気防止剤、蛍光増白剤、光散乱剤、衝撃改質剤、有機または無機顔料などの着色剤、熱伝導性添加剤、熱安定剤および/またはEP−A0839623、WO−A96/15102、EP−A0 500496もしくは「Plastics Additives Handbook」, Hans Zweifel,第5版2000, Hanser Verlag, Munichに記載の、従来的な量でのレーザーマーキング用の添加剤である。これらの添加剤は、単独でまたは混合物内に加えることができる。
【0094】
本発明に従い使用される支持材料は、芳香族炭化水素中に溶解させることができる。特に良く適している芳香族炭化水素は、モノメチル化、ポリメチル化された芳香族炭化水素(例えばトルエン、キシレンおよび/またはメシチレンである。また支持材料を溶解させるために環式エーテル、例えばテトラヒドロフラン(THF)を使用することも可能である。支持材料は溶媒混合物(例えば、2.5重量%〜10重量%の1,3,5−トリメチルベンゼン、0.5重量%〜2.5%重量%のクメン、25重量%〜50重量%の酢酸2−メトキシ−1−メチルエチル、10重量%〜25重量%の1,2,4−トリメチルベンゼン、<0.5重量%の酢酸2−メトキシプロピル、25重量%〜50重量%の3−エトキシプロピオン酸エチルおよび10重量%〜25重量%のナフサの溶媒混合物、あるいは一般に芳香族炭化水素の群からの溶媒)を使用して溶解させることもできる。
【0095】
好ましく使用される前述の支持材料と、好ましく使用される前述の印刷材料と組み合わせて、支持材料は好ましくはテトラヒドロフラン、キシレン、メシチレン、クメン、ベンゼン、トルエン、ジオキサンまたはテトラヒドロピラン、さらに好ましくはテトラヒドロフランまたはキシレン、最も好ましくはテトラヒドロフランを使用して溶解させる。
【0096】
支持材料は、好ましくは室温に対して上昇した温度で溶解させる。
【0097】
支持材料は超音波の作用下で溶解し、その理由としてはこれが溶解プロセスを加速するためである。好ましいのは超音波と高温との組み合わせの使用である。
【0098】
本発明の方法と同様に、本発明は、
a)式(1a)、(1b)、(1c)、(1d):
【化13】
[式中、
R
1は、水素またはC
1−〜C
4−アルキル基、好ましくは水素であり、
R
2は、C
1−〜C
4−アルキル基、好ましくはメチル基であり、
nは、0、1、2または3、好ましくは3であり、
R
3は、C
1−〜C
4−アルキル基、アラルキル基、またはアリール基、好ましくはメチル基またはフェニル基、最も好ましくはメチル基である]
および/または式(1e):
【化14】
[式中、
R
19は、水素、Cl、Br、またはC
1−〜C
4−アルキル基、好ましくは水素またはメチル基、より好ましくは水素であり、
R
17およびR
18は、同一または異なっていて、各々独立してアリール基、C
1−〜C
10−アルキル基、またはC
1−〜C
10−アルキルアリール基、好ましくは各々メチル基であり、かつここで
Xは、単結合、−CO−、−O−、C
1−〜C
6−アルキレン基、C
2−〜C
5−アルキリデン基、C
5−〜C
12−シクロアルキリデン基、またはさらなるヘテロ原子含有芳香環に縮合していてもよいC
6−〜C
12−アリーレン基であり、Xは、好ましくは単結合、C
1−〜C
5−アルキレン基、C
2−〜C
5−アルキリデン基、C
5−〜C
12−シクロアルキリデン基、−O−または−CO−であり、さらに好ましくは、単結合、イソプロピリデン基、C
5−〜C
12−シクロアルキリデン基または−O−であり、最も好ましくはイソプロピリデン基であり、
nは、1〜500、好ましくは10〜400、より好ましくは10〜100、最も好ましくは20〜60の数であり、
mは、1〜10、好ましくは1〜6、より好ましくは2〜5の数であり、
pは、0または1、好ましくは1であり、かつ
n×mの値は、好ましくは12と400の間、さらに好ましくは15と200の間である]
のうち1つ以上のモノマー単位を含んでなる、コポリカーボネートを含んでなる複数の層、および
b)ポリアリールエーテルケトン、特にPEEK、ポリエステル、特にPBTまたはPET、ポリアミド、特にPA−12、および/またはPC/ポリエステルブレンド、特にPC/PBT、を含んでなる複数の層、
を有する成形品であって、
コポリカーボネートの、ISO 306:2013に従い決定されたビカット温度(VST/B120)が少なくとも150℃、好ましくは150℃超、さらに好ましくは少なくとも175℃、より好ましくは少なくとも200℃である、成形品も提供する。
【0099】
この成形品は、三次元の目標対象物を製造するための方法における中間体であって、即ち印刷材料と支持材料を印刷することにより得られる生成物であって、かつ次の工程で支持材料が好ましくは溶解によってそこから分離されなければならないものである。
【実施例】
【0100】
1.原料の説明
PC1は、18cm
3/10分のMVR(330℃/2.16kg、ISO 1133−1:2011)、および183℃の軟化温度(VST/B 120;ISO 306:2013)を有する、ビスフェノールAおよびビスフェノールTMCに基づく市販のコポリカーボネートである(Covestro Deutschland AGからのApec(商標)1895)。PC2およびPC3よりビスフェノールTMCの含有量が少ない。
PC2は、8cm
3/10分のMVR(330℃/2.16kg、ISO 1133−1:2011)、および202℃の軟化温度(VST/B 120;ISO 306:2013)を有する、ビスフェノールAおよびビスフェノールTMCに基づく市販のコポリカーボネートである(Covestro Deutschland AGからのApec(商標)2097)。
PC3は、5cm
3/10分のMVR(330℃/2.16kg、ISO 1133−1:2011)、および218℃の軟化温度(VST/B 120;ISO 306:2013)を有する、ビスフェノールAおよびビスフェノールTMCに基づく市販のコポリカーボネートである(Covestro Deutschland AGからのApec(商標)DP1−9389)。
PC4は、25cm
3/10分のMVR(320℃/2.16kg、ISO 1133−1:2011)のMVRを有する、<150℃の軟化温度(VST/B 120;ISO 306:2013)を有する、ビスフェノールAおよび一般的な構造式(1e)を有するシロキサンに基づくコポリカーボネートであって、式中、R
19=H、X=イソプロピリデン、R
17=R
18=メチル基、p=1、m= 3〜4、n=30である。
PC5は、>165℃および200℃未満の軟化温度(VST/B 120; ISO 306:2013)を有する、ビスフェノールAおよびR
3(=フェニル)のフタルイミド(1c)に基づくコポリカーボネートである。
PC6は、>165℃および200℃未満の軟化温度(VST/B 120; ISO 306:2013)を有する、ビスフェノールAおよびR
3=メチルのフタルイミド(1b)に基づくコポリカーボネートである。
PC7は、部分的分岐状構造を有する、2cm
3/10分のMVR(300℃/1.2kg、ISO1133−1:2011)、および150℃の軟化温度(VST/B 50;ISO 306:2013)を有する、ビスフェノールAに基づく市販のポリカーボネート(Covestro Deutschland AGからのMakrolon(商標)WB1239)である。
PC8は、部分的分岐状構造を有する、12.6cm
3/10分のMVR(300℃/1.2kg、ISO 1133−1:2011)および142℃の軟化温度(VST/B 50;ISO 306:2013)を有する、ビスフェノールAに基づくポリカーボネートである。
PC9は、45cm
3/10分のMVR(330℃/2.16kg、ISO 1133−1:2011)、および158℃の軟化温度(VST/B 120;ISO 306:2013)を有する、ビスフェノールAおよびビスフェノールTMCに基づく市販のコポリカーボネート(Covestro Deutschland AGからのApec(商標)1695)である。
PC10は、24cm
3/10分のMVR(330℃/2.16kg、ISO 1133−1:2011)、および173℃の軟化温度(VST/B 120; ISO 306:2013)を有する、ビスフェノールAおよびビスフェノールTMCに基づく市販のコポリカーボネート(Covestro Deutschland AGからのApec(商標)1795)である。
PLA:ポリ乳酸は、3D印刷で使用されるOrbi−Techからの市販の熱可塑性ポリマーである。
PBT:Lanxessからの市販のポリブチレンテレフタレート(POCAN B 1300)である。
PA−12:Nylon−12は、270℃の推奨された加工温度を有する、3D印刷で使用されるOrbi−Techからの市販の熱可塑性ポリマーである。
PC/PBTは、16cm
3/10分のMVR(260℃/5kg、ISO 1133−1:2011)および125℃の軟化温度(VST/B 120;ISO 306:2013)を有する、ビスフェノールAに基づくポリカーボネートとポリブチレンテレフタレートとに基づく市販のエラストマー変性ポリカーボネート/ポリブチレンテレフタレートブレンド物である。
PETは、Invistaからの市販のポリエチレンテレフタレート(XPURE(商標)ポリエステル4004/V004)である。
PCは、19cm
3/10分のMVR(300℃/1.2kg、ISO 1133−1:2011)のMVR、および148℃の軟化温度(VST/B 120; ISO 306:2013)を有する、ビスフェノールに基づく市販のポリカーボネート(Covestro Deutschland AGからのMakrolon(商標)2408)である。
PC/ABSは、18cm
3/10分のMVR(260℃/5kg、ISO 1133−1:2011)、および130℃の軟化温度(VST/B 120;ISO 306:2013)を有する、市販のポリカーボネート/アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンブレンド物(Covestro Deutschland AGからのBayblend(商標)T85XF)である。
PC/ABS FRは、18cm
3/10分のMVR(260℃/5kg、ISO 1133−1:2011)、および136℃の軟化温度(VST/B 120;ISO 306:2013)を有する、市販の難燃性ポリカーボネート/アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンブレンド物(Covestro Deutschland AGからのBayblend(商標)FR 3311TV)である。
ABSは、モノマーとしてアクリロニトリル、1,3−ブタジエンからなるターポリマーであり、Ineos Styrolution Europe GmbH(Terluran(商標)HI−10)のもの。
Durabioは、三菱化学からのイソソルビトールに基づく生物分解性ポリカーボネートである。
PEEKは、alt−intechからの市販のポリエーテルエーテルケトンである。
キシレン:Sigma−Aldrichから入手可能な、o−、m−およびp‐キシレンの異性体混合物。
THF:Sigma−Aldrichから入手可能なテトラヒドロフラン、≧99.9重量%。
MIBK:Sigma−Aldrichから入手可能なメチルイソブチルケトン、≧98.5重量%。
E3EP:Sigma−Aldrichから入手可能な3−エトキシプロピオン酸エチル、99重量%。
溶媒混合物(Solv. mixture):5重量%の1,3,5−トリメチルベンゼン(メシチレン)、2.5重量%のクメン、30重量%の2−メトキシ−1−メチルエチル−アセテート、15重量%の1,2,4−トリメチルベンゼン、30重量%の3−エトキシプロピオン酸エチル、および17.5重量%のナフサの溶媒混合物。
【0101】
2.実験の手順
様々な溶媒中で様々な印刷材料/支持材料の組み合わせの溶解性に関する研究を室温で行った(表1)。この目的のために、可能性のある印刷材料(PLA、PBT、PA−12、PC/PBT、PC/ABS、PET、PC、ABS、Durabio、PEEK)の材料試験片プラーク(plaque)(約1.0×1.0×0.2cm、0.3g)を、支持材料(ポリカーボネートコポリマー;ポリカーボネート)の試験片プラーク(約1.0×1.0×0.2cm、0.3g)に接着した。材料は、試験片プラーク間に1滴の塩化メチレンを適用することによって接着した。接着部が十分に乾燥した後、試験片を24時間、10mLの溶媒に入れた。続いて、結果を評価した(前と後に計量することで定性的、定量的の両方で)。従来の3D印刷では個々の層の互いへの接着は熱により引き起こされるが、溶媒による試験片プラークの接着は過酷な条件下での状況のシミュレーションをすることが意図されていた。2つの材料が部分的に溶解し、2つのポリマーが接着部位でより強度に互いにかみ合うことが推測されるために、溶媒の影響で、印刷材料と支持材料との互いへのより顕著に強い接着を生むことを引き起こされる。これらの条件下では、相互の剥離は支持材料の十分な溶解を通じてのみ可能である。この場合において、単なる熱接着の場合には、後の印刷部分における支持材料の剥離を達成することは著しくより容易である。
【0102】
さらなる試験シリーズでは、ランダムなサンプリングによって選択された幾つかのコポリカーボネート/印刷材料の組み合わせは、高温での溶解試験に供された(表2)。表2では、支持材料が完全溶解するための時間と同様に、それぞれの溶媒に使用された温度が記載されている。
【0103】
さらに、超音波をさらに使用した試験シリーズが行われた(表3)。溶解試験は室温で開始された。溶解操作の間、超音波によるエネルギー入力により、温度は、THFの最終温度として約35℃、およびキシレンの最終温度として約35℃〜50℃に上昇した。
【0104】
使用されたコポリカーボネートはすべて、支持材料としてさらに印刷することができた。
【0105】
【表1】
【0106】
【表2】
【0107】
【表3】
【0108】
【表4】
【0109】
PC4はほとんどの溶媒中で完全に溶解しないが、小片へ破砕され、したがって印刷材料から分離することができる(評価「1」)。
【0110】
評価「2c」での組み合わせ(例えば印刷材料としてのABSと、支持材料としてのPC1、溶媒: MIBK)は両方とも不適当であり、その理由としては選択された溶媒中で印刷材料が破壊され、かつたとえ支持材料が溶解されたとしても、不完全にしか溶解することができなかったためである。
【0111】
対照的に、評価「1a」での組み合わせは卓越して好適であり、その理由としては、支持材料が選択された溶媒中に完全に溶解させることができ、かつ印刷材料が損傷されずに維持されたためである。印刷材料/支持材料の特に好適な組み合わせの例は、表1によれば、例えばPEEK+PC2、PBT+PC2、PC/PBT+PC2、またはPA−12+PC3(および他のもの)である。溶媒の選択は組み合わせの好適性に重大な影響を及ぼす。溶媒混合物は、高いBPA−TMC含有量を有するコポリマー(PC2、PC3)の溶解に好適であったが、PC1(評価「2」)の場合にはうまくいかなかった。
【0112】
結果によれば、特に好適な組み合わせは、支持材料の後の溶解でTHFまたはキシレンが使用される場合、印刷材料としてのPEEKおよび/またはPC/PBT、ならびに支持材料としてのPC2である。
【0113】
特にPEEKおよびPC1〜PC3(即ち、式(1a)のモノマー単位を有する、本発明に従い使用されるコポリカーボネート)は、非常に類似した加工温度を有し、すべては、延長された熱応力下で特に高い安定性を有する。他の多くの良好な組み合わせは表中で確認することができる。続けて、良好な組み合わせを、高温でまたは超音波を用いて試験し、支持材料の溶解性のための時間を検査した(表2および表3)。
【0114】
ポリカーボネートホモポリマーは印刷材料としても支持材料としても適切ではなく、その理由としては、溶解操作の間に割れが生じ脆くなるものの、溶解はせず、または剥離しないためである。部分的に分岐状の構造を有するコポリカーボネートPC8およびPC9は、同様に支持材料として不適切である。それらは試験された溶媒中に溶解せず、単に霞んでいて脆いだけであった。
【0115】
コポリカーボネートPC7のみがTHF中での良好な溶解特性およびキシレン中での適度な溶解特性を示した。しかしながら、PC2と比較するとそれははるかに遅く溶解した。
【0116】
【表5】
【0117】
【表6】
【0118】
行われた試験では、PEEK、PBT、PA−12、PC/PBTおよびPETが、ビスフェノールのTMCに基づくコポリカーボネートまたは3D印刷において支持材料として使用される高い熱安定性の他のコポリカーボネートと共に使用することができる、原理的には好適な印刷材料であり、かつキシレン、THFまたは溶媒混合物、特にTHFおよび/またはキシレンが、ビスフェノールのTMCに基づくコポリマーの溶解のための溶媒として好適であることが示された。これらの溶媒を使用することで、それぞれのコポリカーボネートは残留物がなく溶解させることができる。一般に支持材料が、それが印刷材料から剥離される程度に溶解するために完全に溶液中に入るまでに室温では最大24時間かかった。
【0119】
塩化メチレンを用いた印刷材料と支持材料の試料プラークの結合と同様に、これらは熱の手段により結合した。この目的のために、各場合において2つの材料のうちの1つをホットエアーガンで約400℃に加熱し、2つの試料プラークを、冷却するまで互いに対してプレスし続けた。研究されていた溶解特性は、上記の試験に続いて同様に検査された。指定された組み合わせに対して同一の溶解挙動が見出された。
【0120】
高温での様々な印刷材料/支持材料の組み合わせの溶解性に関する研究(表2)では、これが支持材料の溶解速度を増加させだけでなく、驚くべきことに、印刷材料は損傷されないことが示された。50℃の高温では、PC2およびPC3共に、最大75分以内に溶解した。コポリカーボネート中のビスフェノールTMCのより高い割合(PC3対PC2)で、溶解速度の上昇を観察することができた。
【0121】
表3から明白なように、支持材料の溶解のプロセスの間の超音波処理は、溶解速度の明らかな増加につながった。印刷材料に対する超音波処理の影響は検出されなかった。