【文献】
Journal of Investigative Dermatology,vol.134,2014年,p.1119-1127,Supplement
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
HISKYILRWRPKNSV (P46)、HIGKYGLRWRPKNSV (NP7)、HIGKYGLRWRPKGSV (NP8)、及びそれらの環化したポリペプチドからなる群から選択される、請求項2に記載のポリペプチド。
ポリペプチドがHISKYILRWRPKNSV (P46)、HIGKYGLRWRPKNSV (NP7)、HIGKYGLRWRPKGSV (NP8)、及びそれらの環化したポリペプチドからなる群から選択される、請求項6に記載の組成物。
外科的切開若しくは摘出、外傷性傷害、熱による熱傷、化学熱傷、患者の皮膚、粘膜、結合組織、筋膜、靭帯、腱、軟骨、神経若しくは筋肉の病変又は潰瘍化及び患者の骨に達する創傷からなる群から選択される創傷を有する患者を処置するための、
式Iによるポリペプチド:
(I): H-X1-X2-K-Y-X3-X4-R-W-R-P-K-X5-X6-X7
(式中、X1はIであり、
X2はS又はGであり、
X3はI又はG又はLであり、
X4はLであり、
X5はN又はGであり、
X6はSであり、及び
X7はVであり;及び
ポリペプチドの最初の13個のアミノ酸の中の2個の連続するアミノ酸が配列HISKYILRWRPKNと異なることはない)
を含み、
ポリペプチドは、任意選択で、N末端における低級アシル基、C末端における置換又は非置換の低級アルキル-、アルケニル-、アルキニル-又はハロアルキル-アミン基、及びポリエチレングリコールのうちの少なくとも1つで置換されており、
ポリペプチドは、更に任意選択で、各々独立に決定される式Iの配列間に任意選択でリンカーを有する式Iの直鎖状又は分岐多量体である、ポリペプチド又はそれらの環化したポリペプチド
を治療有効量含む、組成物。
ポリペプチドが、HISKYILRWRPKNSV (P46)、HIGKYGLRWRPKNSV (NP7)、HIGKYGLRWRPKGSV (NP8)及びそれらの環化したポリペプチドからなる群から選択される、請求項10に記載の組成物。
ポリペプチドが、HISKYILRWRPKNSV (P46)、HIGKYGLRWRPKNSV (NP7)、HIGKYGLRWRPKGSV (NP8)及びそれらの環化したポリペプチドからなる群から選択される、請求項11に記載の組成物。
ポリペプチドが、HISKYILRWRPKNSV (P46)、HIGKYGLRWRPKNSV (NP7)、HIGKYGLRWRPKGSV (NP8)及びそれらの環化したポリペプチドからなる群から選択される、請求項12に記載の組成物。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の1つ又は複数の実施形態の詳細を添付図面及び下の記載で説明する。本発明の他の特色、目的、及び利点は、該記載及び図面及び特許請求の範囲から明らかであろう。
【0015】
生物活性及び好中球エラスターゼによる消化に対する耐性が改善されたフィブロネクチンに由来するペプチドの決定:
以前に開示されたペプチドP12は、創傷流体中に存在する好中球エラスターゼにより分解される:
環状P12(「cP12」)がエンドペプチダーゼに感受性であるかどうかと決定するために、cP12をヒト好中球エラスターゼで消化した。反応をギ酸で停止させて、反応混合物を質量分析法により分析した。分析結果は、cP12は5箇所のエラスターゼ切断部位を有することを示した(
図1B)。それに加えて、殆ど全ての完全なcP12基質(1789mw)が消失した(
図1A)。
【0016】
ヒト好中球エラスターゼによるフィブロネクチンの消化により生じたフラグメントの決定及びそれらの生物活性:
生物活性がcP12と等価のエラスターゼ耐性のcP12-誘導体を見出すために、本発明者らは、その中でP12ペプチドが見出されるフィブロネクチンIII
1-C(FNIII
1-C)を、精製されたヒト好中球エラスターゼを1: 100の酵素:基質モル比で用いて、37℃で4時間又は24時間消化した。消化された試料をMSで分析した。結果は、両方の時点で、FN III
1-Cのエラスターゼ消化は、P12と同じフィブロネクチンの領域から、2種のペプチド、P45(SKYILRWRPKNSV)及びP46(HISKYILRWRPKNSV)を生ずることを示した。生物活性アッセイは、線維芽細胞の代謝アッセイにより決定して、P46はP12より高い生物活性を示すことを示した(
図2)。それに反して、P45は小さい生物活性しか示さなかった(
図2)。
【0017】
ヒト好中球エラスターゼ消化に対するP46の感度の決定:
エラスターゼ消化に対するP46の感度を決定するために、P46を合成してエラスターゼで消化した。MS分析の結果は、P46はエラスターゼ消化に対してある程度の感度を保持することを示した(
図3)。P46を、精製されたヒト好中球エラスターゼと1:100の酵素:基質のモル比、37℃で4時間(
図3A)又は24時間(
図3B)、インキュベートした。エラスターゼにより生成したより小さいペプチドを、MALDI-TOF分析により決定した。P46の分子量は1898である。
【0018】
生物学的に活性な好中球エラスターゼ耐性ペプチドとしてのcNP7及びcNP8:
P46のアミノ酸配列及びエラスターゼの酵素による切断の性質に基づいて、本発明者らは、エラスターゼ消化に対して耐性となるように、5通りの操作されたペプチド、-HIGKYGLRWRPKNSV- (NP7)及び-HIGKYGLRWRPKGSV- (NP8)、HISKYILGWRPKNSV (NP9)、HISKYILRGRPKNSV (NP10)、HISKYILRWGPKNSV (NP11)をデザインして合成した。これらのうち、NP8は、血清を含まないが1nMのPDGF-BBを含む培地中における成人ヒト真皮の線維芽細胞生存のスクリーニング実験で、6日のインキュベーション後に、最高の生物学的活性を示した。NP9、NP10及びNP11は、このスクリーニングで最小の生物学的活性を示した。
【0019】
P12、P46、cNP7及びcNP8を、PDGF-BBの存在下における成人ヒト真皮の線維芽細胞の生存を促進するそれらの能力について比較した。成人ヒト真皮の線維芽細胞を、1000細胞/ウェルで、DMEM、1nMのPDGF-BBを含むコラーゲンでコートされた96ウェルプレート中で、示された用量のペプチドと6日間インキュベートして、次に細胞代謝をXTTアッセイにより測定した。データは、6回の反復実験の平均を表す(
図4)。この生物活性のアッセイは、4種全てのペプチドが、成人ヒト真皮の線維芽細胞の生存を助長すること及びcNP8は、濃度に依存して、P46及びcNP7と比較して等価又はそれより優れた生物活性を示すことを示した。
【0020】
ペプチドとエラスターゼとのインキュベーションの結果は、cNP8はエラスターゼ消化に耐性であることを示した。P46に由来するcNP8を、精製されたヒト好中球エラスターゼと、1: 100の酵素:基質のモル比で、37℃で4時間(
図5A)又は24時間(
図5B)、インキュベートした。ペプチドの安定性を、MALDI-TOF分析により決定した。cNP8の分子量は1736である。大部分の完全ペプチドは24時間で保持された。したがって、cNP8は、生物活性及びエラスターゼ消化に耐性の両方のペプチドである。
【0021】
p46及びP46から操作されたcNP8は、成長因子に結合する能力を有する:
以前の研究は、フィブロネクチンに由来する生物学的活性ペプチドP12は、血小板由来の成長因子-BBと相互作用して、線維芽細胞生存を支持するその活性を増強することを示した。本発明者らは、上で、フィブロネクチンに由来するペプチドP46及びエラスターゼ耐性の操作されたペプチドcNP8は、両方共、P12よりもはるかに高い生物活性を示すことを示した。これらのペプチドの結合活性を研究するために、P12、P46、及びcNP8の成長因子とのリアルタイム相互作用を、プラズモン表面共鳴(Biacore T200)により決定した。結果は、P46及びcNP8は、両方共、P12と同様の結合活性を示すことを示した。それらは、PDGF-BB及びトランスフォーミング成長因子-ベータ1(TGF-β1)に結合するが、表皮性成長因子(EGF)及びインスリン様成長因子-1(IGF-1)には結合しなかった。
【0022】
表面プラズモン共鳴:
Biacore 2000システムにおいて、速度論データからの結合定数は、種々の濃度のFNペプチド(分析対象)を、PDGF-BB(リガンド)とカップルさせたチップ表面を、それぞれ通過させることにより決定する。全ての速度論的実験は、20℃、20μl/分の流速で実施した。質量輸送実験のために、各分析対象を、固定された濃度で注入して5〜75μl/分の範囲の流速で流す。全ての分析対象は、120秒間、PDGF-BBリガンド表面に並びに対照表面に注入し、ランニング緩衝液中で300秒解離させる。その後の注入のためのセンサーチップの再生は、0.1%SDSのパルスによって達成される。質量輸送実験は、異なる流速で応答に僅かの差しか検出せず、したがって速度論的実験からデータを検証した。センサーグラム(sensorgram)を準備して、非線形最小自乗法による分析及びBiacore Bioevaluationソフトウェアを用いて、速度微分方程式の数値積分を使用して、全体的に適合させた。対照表面を使用して発生させた各センサーグラムを対応する実験センサーグラムから差し引いて、生じた曲線を、注入された種の分子質量、1ng/mm2当たりの1000共鳴単位(RU)の当量、及び100nmのマトリックス厚さを使用して、濃度単位に変換する。同じ表面における異なる濃度の分析対象の注入からの一連のセンサーグラムからなる各データの組を、Bioevaluationソフトウェアからの速度論的モデルを使用して分析する。
【0023】
創傷治癒に使用するための新規ペプチド:
式Iによる直鎖状又は環状ペプチド
(I): H-X
1-X
2-K-Y-X
3-X
4-R-W-R-P-K-X
5-X
6-X
7
(式中、
X
1はI又はG又はLであり、
X
2はS又はGであり、
X
3はI又はG又はLであり、
X
4はL又はGであり、
X
5はN又はGであり、
X
6は存在しないか又はSであり、及び
X
7は存在しないか又はVであり;及び
ここで、ポリペプチドの最初の13個のアミノ酸中で2個の連続するアミノ酸が配列HISKYILRWRPKNと異なることはない)、
は、創傷の処置のために有用である。これらのペプチドは、ヒト成人真皮の線維芽細胞及びヒト成人心筋細胞の生存、遊走又は成長を促進して、創傷流体中に見出される好中球エラスターゼ、エンドペプチダーゼに耐性である。
【0024】
HISKYILRWRPKNSV、HISKYILRWRPKNS、HISKYILRWRPKN、HISKYILRWRPKGSV、HISKYILRWRPKGS、HISKYILRWRPKG、HGSKYILRWRPKNSV、HGSKYILRWRPKNS、HGSKYILRWRPKN、HGSKYILRWRPKGSV、HGSKYILRWRPKGS、HGSKYILRWRPKG、HLSKYILRWRPKNSV、HLSKYILRWRPKNS、HLSKYILRWRPKN、HLSKYILRWRPKGSV、HLSKYILRWRPKGS、HLSKYILRWRPKG、HIGKYILRWRPKNSV、HIGKYILRWRPKNS、HIGKYILRWRPKN、HIGKYILRWRPKGSV、HIGKYILRWRPKGS、HIGKYILRWRPKG、HISKYGLRWRPKNSV、HISKYGLRWRPKNS、HISKYGLRWRPKN、HISKYGLRWRPKGSV、HISKYGLRWRPKGS、HISKYGLRWRPKG、HGSKYGLRWRPKNSV、HGSKYGLRWRPKNS、HGSKYGLRWRPKN、HGSKYGLRWRPKGSV、HGSKYGLRWRPKGS、HGSKYGLRWRPKG、HLSKYGLRWRPKNSV、HLSKYGLRWRPKNS、HLSKYGLRWRPKN、HLSKYGLRWRPKGSV、HLSKYGLRWRPKGS、HLSKYGLRWRPKG、HIGKYGLRWRPKNSV、HIGKYGLRWRPKNS、HIGKYGLRWRPKN、HIGKYGLRWRPKGSV、HIGKYGLRWRPKGS、HIGKYGLRWRPKG、HISKYLLRWRPKNSV、HISKYLLRWRPKNS、HISKYLLRWRPKN、HISKYLLRWRPKGSV、HISKYLLRWRPKGS、HISKYLLRWRPKG、HGSKYLLRWRPKNSV、HGSKYLLRWRPKNS、HGSKYLLRWRPKN、HGSKYLLRWRPKGSV、HGSKYLLRWRPKGS、HGSKYLLRWRPKG、HLSKYLLRWRPKNSV、HLSKYLLRWRPKNS、HLSKYLLRWRPKN、HLSKYLLRWRPKGSV、HLSKYLLRWRPKGS、HLSKYLLRWRPKG、HIGKYLLRWRPKNSV、HIGKYLLRWRPKNS、HIGKYLLRWRPKN、HIGKYLLRWRPKGSV、HIGKYLLRWRPKGS、HIGKYLLRWRPKG、HISKYIGRWRPKNSV、HISKYIGRWRPKNS、HISKYIGRWRPKN、HISKYIGRWRPKGSV、HISKYIGRWRPKGS、HISKYIGRWRPKG、HGSKYIGRWRPKNSV、HGSKYIGRWRPKNS、HGSKYIGRWRPKN、HGSKYIGRWRPKGSV、HGSKYIGRWRPKGS、HGSKYIGRWRPKG、HLSKYIGRWRPKNSV、HLSKYIGRWRPKNS、HLSKYIGRWRPKN、HLSKYIGRWRPKGSV、HLSKYIGRWRPKGS、HLSKYIGRWRPKG、HIGKYIGRWRPKNSV、HIGKYIGRWRPKNS、HIGKYIGRWRPKN、HIGKYIGRWRPKGSV、HIGKYIGRWRPKGS又はHIGKYIGRWRPKGから選択される各直鎖状又は環状ペプチドは、ヒト成人真皮の線維芽細胞及び/又はヒト成人心筋細胞の生存、遊走又は成長を促進して、好中球エラスターゼに耐性であり、創傷及び/又は心臓血管疾患の処置のために有用である。
【0025】
特定の実施形態において、各直鎖状又は環状ペプチド:HISKYILRWRPKNSV (P46)、HIGKYGLRWRPKNSV (NP7)、HIGKYGLRWRPKGSV (NP8)、HGSKYGLRWRPKNSV、HIGKYIGRWRPKNSV、HGSKYIGRWRPKNSV又はHGSKYIGRWRPKGSVは、ヒト成人真皮の線維芽細胞及び/又はヒト成人心筋細胞の生存、遊走又は成長を促進して、好中球エラスターゼに耐性であり、創傷及び/又は心臓血管疾患の処置のために有用である。
【0026】
別の特定の実施形態において、環状HIGKYGLRWRPKGSV(NP8)は、ヒト成人真皮の線維芽細胞及び/又はヒト成人心筋細胞の生存、遊走又は成長を促進して、好中球エラスターゼに耐性であり、創傷及び/又は心臓血管疾患の処置のために有用である。
【0027】
本明細書に記載された全てのペプチドは、標準の、1字アミノ酸コードの直鎖状形式で提示され、左のN末端から右のC末端へ読まれる。「環状」又は「環化した」ペプチドが、直鎖状形態で表されることもあるが、下に記載される1つ又は複数の標準的方法により、C末端アミノ酸に結合したN末端アミノ酸を有する。
【0028】
本明細書に記載される生物学的に活性なフィブロネクチンのフラグメント又はFNフラグメントの変形体は、PDGF-BB結合ペプチドとして機能して、ヒト好中球エラスターゼに耐性であり、対応するFNフラグメントと実質的に同じ様式で有用な程度に機能する変形体である。例えば、天然に生ずる配列を有するFNフラグメントが、特定の親和性でGFに結合して、患者に投与されたときに、GFが必要とされる部位においてGF活性を効果的に増強又は変更する場合、そのFNフラグメントの生物学的に活性な変形体は、FNフラグメントと同一ではないが、十分有用な親和性で同じGFに結合して、必要とされる部位でGFを同様に増強又は変更する変形体である。読み易くするために、本発明者らは、FNフラグメント又は他のタンパク質又はペプチドを引用する毎に、「又は生物学的に活性なそれらの変形体」という用語を繰り返すことはしない。天然に生ずる配列を有するFNフラグメントが有用な場合には、それらのフラグメントの生物学的に活性な変形体も同様であることが理解されるべきである。
【0029】
機能に関して、フラグメントは、ポリペプチド成長因子に、少なくとも又は約1×10
-7M(例えば、少なくとも1×10-
8M; 1×10
-9M;又はそれを超えて)の親和性で結合することができる。或いは、又はそれに加えて、フラグメントは、FNなしの(FN-null)細胞の生存及び/又は増殖を支持することができる。
【0030】
或いは、又はそれに加えて、フラグメントは、アミノ末端又はカルボキシ末端に置換基を更に含むことができる。該置換基は、アシル基又は置換された若しくは非置換のアミン基であってもよい(例えば、N末端の置換基は、アシル基であってもよく、C末端は、置換された又は非置換のアミン基(例えば、同じであっても又は異なっていてもよい1、2、又は3個の置換基を有するアミノ基)でアミド化され得る)。アミン基は、低級アルキル(例えば、1〜4個の炭素を有するアルキル)であってもよい。アシル基は、低級アシル基(例えば、4個までの炭素原子を有するアシル基)、特にアセチル基であってもよい。
【0031】
上に記載された改変フラグメントを含むフィブロネクチンのフラグメントは、プロテアーゼ耐性であってもよく、1つ又は複数のタイプの保護基、例えば、アシル基、アミド基、ベンジル又はベンゾイル基、又はポリエチレングリコール等を含んでいてもよい。より詳細には、上に記載された改変フラグメントを含むフィブロネクチンのフラグメントは、N末端でアセチル化及び/又はC末端でアミド化されていてもよい。
【0032】
フィブロネクチンのフラグメントは、例えば、血液脳関門を越える輸送を増強するための糖残基の添加を含めて、吸収を改善するために改変されていてもよい。
【0033】
任意のフラグメントは、少なくとも1個のアミノ酸残基をD-型で含むことができる。
【0034】
任意のフラグメントは、少なくとも1個の天然に生じない又は改変されたアミノ酸残基(例えば、4-ヒドロキシプロリン、ガンマ-カルボキシグルタミン酸、o-ホスホセリン、o-ホスホチロシン、又はデルタ-ヒドロキシリジン)を含むことができる。天然に生じないアミノ酸残基は、20種の天然に生ずる、遺伝的にコードされたアミノ酸以外のアミノ酸残基である。他の例は、トリプトファンに置換されて合成を容易にすることができるナフチルアラニン、L-ヒドロキシプロピル、L-3,4-ジヒドロキシフェニルアラニル、アルファ-アミノ酸、例えば、L-アルファ-ヒドロキシリジル及びD-アルファ-メチルアラニル、L-アルファ-メチルアラニル、ベータ-アミノ酸、及びイソキノリル等を含む。天然に生じないアミノ酸残基を有するフラグメントは、合成フラグメントと称することもできて、本明細書に記載された変形体の1タイプを構成する。他の変形体は、天然に生ずるアミノ酸残基の側鎖が天然に生じない側鎖で置き換えられているフィブロネクチンのフラグメントを含む(L-又はD-型のいずれかで)。別の態様において、本発明は、フィブロネクチンポリペプチド又は生物学的に活性なそれらの変形体で天然に見出される配列のN-及びC末端に関して逆転された配列を含むポリペプチドを特色とする。
【0035】
本発明の組成物中の任意のフラグメントは、存在する複数のフラグメントの1つであってもよい。これらのフラグメントは、本明細書に記載された方法により連結されて一緒になることもできる。注意したように、本明細書に記載された変形体形態を含むフィブロネクチンのフラグメントは、異種のポリペプチド(即ち、フィブロネクチンでは現れない配列を有するポリペプチド)を更に含むことができる。異種のポリペプチドは、それが取り付けられたフラグメントの循環半減期、細胞の浸透又は経皮浸透を増大させるポリペプチドであってもよい。
【0036】
上記フラグメントは、生理学的に許容される組成物内に含有されることが可能であるか、又はそれらは、生物体に投与するためには適当でない組成物(例えば、濃縮されたストック又は凍結されたか又は凍結乾燥された組成物)内に含有されていてもよい。
【0037】
生理学的に許容される組成物は、医薬組成物であってもよく、患者を処置する方法は更に下に記載される。生理学的に許容される組成物は、医師の処方箋なしで分配することができる非医薬組成物又は医薬組成物であることもできる。例えば、それらは、流通業者に又は「処方箋なしで」化粧目的で(例えば、皮膚からの損傷のリスクを低下させるため又は皮膚に対する損傷を最小化するか若しくは修復するため)販売することができる。例えば、フィブロネクチンのフラグメント及びそれら又はそれらの組合せを含む組成物(例えば、FN-成長因子複合体)は、化粧品、加湿剤等、日焼け止め、シャンプー又はコンディショナー、石鹸又は他の発泡清浄剤、又はリップクリームとして販売される局所製剤中に組み込むことができる。
【0038】
本発明は、本明細書に記載されたポリペプチドをコードする核酸分子も包含する。特定の核酸分子、ベクター(例えば、プラスミドベクター又はウイルスのベクター)、及びそれらを、生理学的に許容される組成物として含有する宿主細胞を、下に更に記載する。
【0039】
本発明の他の組成物は、フィブロネクチンのフラグメント又は生物学的に活性なそれらの変形体を含む、組織操作された生成物である。他の組成物におけるように、該フラグメント又はそれらの変形体は、ポリペプチド成長因子に結合することができるか又は成長因子の活性を増強することができて(上で及び更に下で記載されるように)、該因子は、その後、生物学的活性を保持することができて、患者に投与され得る。
【0040】
本発明の他の組成物は、本明細書に記載された、フィブロネクチンの1つ若しくは複数のフラグメント、又は生物学的に活性なそれらの変形体と関連する(例えば、それと結合するか又はそれが含浸される)固体の支持体を含む。該支持体は、例えば、組織培養容器(例えば、プレート又はフラスコ)又はデバイス(例えば、創傷被覆材(例えば、包帯又はガーゼ)で使用されるような医学的デバイス、創傷修復材(例えば、縫合糸又は「ステリストリップ(steri-strip)」)、外科的修復(例えば、外科用メッシュ)、又は組織インプラント(例えばステント)であってもよい。フィブロネクチンのフラグメント又は生物学的に活性なそれらの変形体は、上に記載された任意のものを含む活性成長因子に結合することができる。
【0041】
本発明の方法は、創傷治癒を促進する方法を含む。これらの方法は、本明細書に記載された、フィブロネクチンのフラグメント又は生物学的に活性なそれらの変形体を含む治療有効量の医薬組成物を患者に投与するステップを含む。フィブロネクチンのフラグメント又は生物学的に活性なそれらの変形体は、1つ又は複数の成長因子との複合体で存在することができる。上記の方法は、処置を必要とする患者を同定するステップを任意選択で含むことができる。そのような患者は、皮膚、粘膜、下層にある結合組織、筋膜、靭帯、腱、軟骨、骨、神経又は筋肉の外科的摘出又は切開で苦しんでいる患者;外傷性裂傷又は皮膚、粘膜、下層にある結合組織、筋膜、神経又は筋肉の組織の損失で苦しんでいる患者;及び熱による熱傷、化学熱傷、又は皮膚、粘膜、下層にある結合組織、筋膜、神経又は筋肉の潰瘍化で苦しんでいる患者を含む。
【0042】
本明細書において使用する「熱傷」は、熱又は苛性化学物質への曝露による組織損傷である。「熱による熱傷」は、熱への曝露による組織損傷である。「化学熱傷」は、苛性化学物質、しばしば強アルカリ又は強酸への曝露による組織損傷である。本発明により規定されたペプチドによって処置されるべき化学熱傷の薬品は、フェノール、クレゾール、マスタードガス、リン、ナイトロジェンマスタード、ヒ素化合物、アンモニア、苛性カリ、石灰、水酸化ナトリウム、塩酸、及び硫酸を含むが、これらに限定されない。
【0043】
本発明の方法は、熱傷による創傷;心筋梗塞;多臓器不全;糖尿病;鎌形細胞貧血;真性赤血球増多症;及び高フィブリノゲン血症で起こり得る、赤血球及び/又はフィブリノゲン及び/又はフィブリンの凝集塊による血管の閉塞を減少させることを含む心臓血管疾患を処置する方法を含む。これらの方法は、本明細書に記載された、フィブロネクチンのフラグメント又は生物学的に活性なそれらの変形体を含む治療有効量の医薬組成物を患者に投与するステップを含む。フィブロネクチンのフラグメント又は生物学的に活性なそれらの変形体は、1種又は複数の成長因子との複合体で存在することができる。該方法は、処置を必要とする患者を同定するステップを任意選択で含むことができる。
【0044】
適当な製剤は、下で更に記載されるが、一般的に、溶液剤、ローション剤、軟膏、ゲル剤、クリーム剤又は膏薬の形態をとる。フィブロネクチンのフラグメントは、成長因子と複合体化していてもいなくても、それらの細胞外マトリックス(ECM;例えば、天然又は操作されたECM)、包帯、被覆材、湿布等の中に含めることによっても投与することができる。
【0045】
本発明の他の方法により、内因性の成長因子を患者の組織に局在化することができる。これらの方法は、本明細書に記載された、フィブロネクチンのフラグメント又は生物学的に活性なそれらの変形体を含む治療有効量の組成物を患者に投与することにより実施することができる。より具体的な上に記載された処置方法として、これらの組成物は、医薬組成物、操作されたECM、又は固体支持体の局所適用によって投与することができる。これらの方法は、1種又は複数の成長因子を患者に送達する方法として説明することができる。該方法は、処置を必要とする患者を同定するステップを任意選択で含むことができる。そのような患者は、組織に対する傷害、組織の損失又は組織醜形又は機能障害を生ずる障害に苦しんでいる患者を含む。より詳細には、該患者は、脳、脊髄若しくは神経に対する傷害若しくは損失、又は脳、脊髄若しくは神経の機能障害を生ずる障害;心臓若しくは血管における傷害若しくは損失、又は心臓若しくは血管の機能障害を生ずる障害;肺、鼻咽頭管、副鼻洞、気管若しくは気道における傷害若しくは損失、又は肺、鼻咽頭管、副鼻洞、気管若しくは気道の機能障害を生ずる障害;胃腸管、肝臓又は膵臓における傷害若しくは損失、又は胃腸管、肝臓若しくは膵臓の機能障害を生ずる障害;腎臓、尿管、膀胱若しくは尿道に対する傷害若しくは損失、又は腎臓、尿管、膀胱又は尿道の機能障害を生ずる障害;骨、軟骨、滑膜、半月板、靭帯、腱又は髄核における傷害又は損失、又は骨、軟骨、滑膜、半月板、靭帯、腱又は髄核の機能障害を生ずる障害;口唇、舌若しくは歯肉における傷害若しくは損失、又は口唇、舌又は歯肉の機能障害を生ずる障害;皮下組織における傷害若しくは損失、又は皮下組織の機能障害を生ずる障害で苦しんでいる可能性がある患者を含む。
【0046】
本発明は、「使用」に関して記載することができて、その場合、該用語は、組織再生及び/又は組織修復を促進するための、FNフラグメント、FNフラグメントのペプチド誘導体、1種又は複数のFNフラグメント及び/又はFNフラグメントのペプチド誘導体を含有する複合体(GFと結合したものを含む)、本発明のFNフラグメント及び/又はFNフラグメントのペプチド誘導体をコードする核酸、発現ベクター、宿主細胞、及び組織操作された生成物(生体材料を含有するものを含む)を含む、本明細書に記載された組成物の「使用」を包含する。例えば、本発明の組成物は、創傷治癒を促進することに、又は組織再生若しくは創傷治癒を促進するための医薬の調製に使用することができる。組織の再生又は修復は、通常の成人の創傷治癒と対比的に、瘢痕を殆ど又は全く生じないで治癒することができる。
【0047】
本明細書において使用する「成長因子結合ペプチド」(又は「GFBP」)及び「成長因子増強ペプチド」(又は「GFEP」)は、同義語として使用される。
【0048】
本明細書において使用する「美容トリートメント」は、個体の外見を改善又は維持するための生理学的に許容される組成物の使用を指す。
【0049】
上で詳細に説明したように、本発明者らは、とりわけ、特定のフィブロネクチンのフラグメント及びフィブロネクチンに由来するペプチドが、種々の成長因子(例えば、IGF-1、HGF、TGF-β1、TGF-β2、bFGF、FGF-7、PDGF-BB、VEGF-A、又はNGF)に結合することができて、結合を受けた成長因子は、増強された/低下した生物学的活性を保持するか又は示すことができることを見出した。本発明は、上記のファミリー(即ち、IGF、TGF、FGF、PDGF、VEGF、及びNGFファミリー中)の成長因子と結合しているか又は結合していない、種々の製剤及び構成(configurations)中のそのようなフラグメント及びペプチドを含む組成物を特色とする。上記フラグメント及びペプチドは、FNフラグメント又はペプチドが結合していないGFとの相乗効果を促進することができる。1つの構成で、FNフラグメント又はペプチド、又はFNフラグメント又はペプチド/GF-含有複合体は、操作された2次元又は3次元の細胞外マトリックス(本発明者らは、本明細書でengECMと略記するか又は合成マトリックスと称することがある)に組み込むことができて、これらは、本明細書に記載されたペプチド(例えば、式Iに従うペプチド)又は生物学的に活性なそれらの変形体の任意のもの又は任意の組合せを含むことができる。組み込まれる成長因子は、例えば、IGF-1、TGF-β1、TGF-β2、bFGF、FGF-7、PDGF-BB、VEGF-A、又はNGF;それらの任意の組合せ若しくは副次的組合せ(sub-combination);又はこれらのリストのものと同じファミリー中の別の特定の成長因子であってもよい。該成長因子は、ペプチド含有製剤(例えば、FNフラグメント含有マトリックス)に外部から加えることができて、又は製剤(例えば、マトリックス)は、成長因子なしで生成することができる。後者の場合、成長因子の内因性供給の近傍に置かれたときに、マトリックスが成長因子を補充することができる。マトリックスは、細胞を補充すること及びそれらを誘発することもできて、組織を分化、産生又は増殖させることもできる(おそらく成長因子の含有又は補充によるが、本発明は、いかなる特定の機構により機能する組成物にも限定されない)。
【0050】
マトリックスは、任意のタイプの生体材料(例えば、バイオポリマー)を含むことができる。例えば、マトリックスは、ハイドロゲル(例えば、分子内で架橋したハイドロゲル)であるか又はそれを含むことができる。本発明のペプチド及びGFは、多くの異なるタイプの材料(例えば、ヒアルロナン)に、又はそれに関連して組み込まれ得る。マトリックスは、例えば、ポリカーボネート骨格を有するか、又は生分解性ポリウレタンを含むことができる。適当なバイオポリマーの更なる例は、タンパク質(例えばコラーゲン)、タンパク質含有高分子(例えばプロテオグリカン)、絹(例えば誘導体化された絹)、アルギン酸塩、キチン及びキトサンである。
【0051】
予防的及び/又は治療的処置のための1種又は複数の本発明のペプチドを含有する医薬組成物を調製するために、有効成分(例えば、ペプチド単独又はGFと結合したペプチド)を、単独又は他の活性剤との組合せで、患者に投与するために適当な組成物に組み込むことができる。製剤は、当技術分野で日常的な方法を使用して作製することができて、特定の指針が、タンパク質に基づく治療剤の先行する製剤により提供され得る。組成物は、生理学的に許容されて(即ち、実質的に無毒性)、処方箋薬物療法又は処方箋なしの製品として製剤化することができる。医薬又は薬学的に許容される組成物は、化合物(例えば、ポリペプチド)、他の材料(例えば、希釈剤)、及び/又は信頼できる医学的判断の範囲内の、過剰な毒性、刺激、アレルギー応答、又は他の問題又は合併症がなく、妥当な利益/リスク比で釣り合った、ヒト及び動物の組織と接触して使用するために適当な投与形態を含有する。
【0052】
本明細書に記載されるペプチドをコードする核酸分子は、細胞培養における使用又は患者又は対象への投与のために製剤化することもできる。そのような組成物は、薬学的に許容される担体を一般的に含み、担体は本発明の製剤で考慮される。有効成分と適合性の任意の従来の媒体又は薬剤を、本発明の組成物に使用することができる。製剤及び使用方法は、更に下で記載するが、本発明者らは、ここで、ヒト患者に対する適用が意図され、動物(例えば、家畜、農耕用、又は展示動物)に対する適用も意図されることを指摘しておく。本発明は、それが、予備の組成物及び貯蔵するために適当な組成物(例えば、濃縮されたストック及び凍結された又は凍結乾燥された製剤)に拡大されることで、生理学的に許容されない組成物に拡大される。
【0053】
本明細書に記載された特定の配列は、ヒトの血漿フィブロネクチンに由来する。それに加えて、対応する配列を使用することができる(例えば、任意の種の任意のフィブロネクチンのイソ型に由来する対応する配列を有するフラグメント)。
【0054】
機能に関して、特色となるペプチドは、ポリペプチド成長因子、例えばPDGF-BBと約又は少なくとも約1×10
-6〜1×10
-7(例えば、約又は少なくとも約5×10
-7; 1×10
-8; 5×10
-8; 1×10
-9;又は5×10
-9)の親和性で結合することができる。或いは又はそれに加えて、ペプチドは、固有の成長因子活性及び/又は活性を増強する成長因子に対して二次的なFNのない細胞の生存及び/又は増殖を支持する。
【0055】
出願人は理論により束縛されることは望まないが、本明細書に記載されるペプチドは、皮膚の老化又は光による老化の処置に有用であり(例えば、皺の処置のために)、フィブロネクチンに由来するあるフラグメントが線維芽細胞の生存及び増殖を促進することが示された他の美容トリートメントにも有用である。更に、本明細書に記載されたペプチドは、線維芽細胞の生存及び増殖を促進する成長因子を、美容トリートメントを必要とする部位に送達するために使用することができる。例えば、ペプチドは、成長因子を含むか又は含まないそれらの送達を容易にするために、経皮パッチ又は任意の他のデバイス中に組み込むこともできる。
【0056】
出願人は理論により束縛されることは望まないが、本明細書に記載されたペプチドは、それらが線維芽細胞の生存、増殖及び/又は遊走を刺激する限り、創傷の処置に有用である。それに加えて、本明細書に記載されたペプチドは、例えば、成長因子の送達デバイスの成分、例えば、操作された3次元細胞外マトリックスとして有用である。
【0057】
ペプチドの改変:
特色となるフラグメント及び生物学的に活性なそれらの変形体は、多くの方法で改変することができる。例えば、追加のアミノ酸残基、他の置換基、及び保護基を含む薬剤は、アミノ末端、カルボキシ末端のいずれか、又は両方に付加することができる。改変は、フラグメントの形態を変化させるか又はフラグメントが、非同一のフラグメント、又は他のポリペプチドに結合するか又は互いに相互作用する方法を変化させる目的で行うことができる。本発明のペプチドは、直鎖状であっても環状であってもよいが、一般的に、それらの環状構造がより剛直であり、したがってそれらの生物学的活性が、対応する直鎖状ペプチドよりも高くなり得ることにおいて、環状ペプチドが、直鎖状ペプチドに優る利点を有する(一般的に、Camarero and Muir、J. Am.Chem. Soc. 121: 5597〜5598頁、1999を参照されたい)。
【0058】
直鎖状前駆体から円形ポリペプチドを調製するための戦略は、記載されており、本発明のフラグメントで使用することができる。例えば、化学架橋手法は、ペプチドの骨格環化した改造型を調製するために使用することができる(Goldenburg and Creighton、J. Mol. Biol.、165: 407〜413頁、1983)。他の手法は、化学分子内連結法(例えば、Camareroら、Angew. Chem. Int. Ed.、37: 347〜349頁、1998; Tam and Lu、Prot. Sci.、7: 1583〜1592頁、1998; Camarero and Muir、Chem. Commun.、1997: 1369〜1370頁、1997;及びZhang and Tam、J. Am. Chem. Soc. 119: 2363〜2370頁、1997を参照されたい)及び直鎖状の合成ペプチドが、水性条件下で効率的に環化されることを可能にする酵素的分子内連結法(Jacksonら、J. Am. Chem. Soc.、117: 819〜820頁、1995)を含む。米国特許第7,105,341号も参照されたい。
【0059】
或いは、又はそれに加えて、任意の本発明のフラグメントは、1つ又は複数の置換基を更に含むことができる。例えば、該フラグメントは、アミノ末端、カルボキシ末端、及び/又は反応性アミノ酸残基側鎖に置換基を含むことができる。該置換基は、アシル基又は置換された又は非置換のアミン基であってもよい(例えば、N末端における置換基は、アシル基であってもよく、及びC末端は、置換又は非置換のアミン基(例えば、同じであっても異なっていてもよい1、2、又は3個の置換基を有するアミノ基)でアミド化され得る)。アミン基は、低級アルキル(例えば、1〜4個の炭素を有するアルキル)、アルケニル、アルキニル、又はハロアルキル基であってもよい。アシル基は、低級アシル基(例えば、4個までの炭素原子を有するアシル基)、特にアセチル基であってもよい。置換基は、非タンパク質ポリマー、例えば、ポリエーテル、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール、又はポリアルキレン、ポリアルキレングリコール(例えば、ポリプロピレングリコール(PPG)、ポリブチレングリコール(PBG)、又はPPG-PEGブロック/ランダムポリマー)であってもよい。ペプチドは、当技術分野において知られた方法により、及び米国特許第4,640,835号;第4,496,689号;第4,301,144号;第4,670,417号;第4,791,192号又は第4,179,337号で説明されている様式で、非タンパク質ポリマーにより改変することができる。改変(例えば、PEG化)は、ペプチドを安定化する、その抗原性を低下させる、必要とされる投薬量を減少させる、及び/又はその標的化能力を増強することができる。
【0060】
非タンパク質ポリマーは、サイズ及び形状が様々であり得る。例えば、上でリストに挙げた任意の非タンパク質ポリマー(例えば、PEG)は、直鎖状、分岐、又は櫛形であってもよい。サイズに関して、分子量は様々であり得る。例えば、PEGは、例えば、約300kDa、約1,000kDa、約2,000kDa、約3,000kDa、約4,000kDa、約5,000kDa、約6,000kDa、約7,000kDa、約8,000kDa、約9,000kDa、約10,000kDa、約11,000kDa、約12,000kDa、約13,000kDa、約14,000kD、a約15,000kDa、約20,000kDa、約30,000kDa、約40,000kDa、又は約50,000kDaの分子量を有することができる。例えば、PEGは、300kDAから2000kDA、300kDAから3000kDA、1000kDAから2000kDA、及び1000から3000kDAの間のどの分子量であることもできる。
【0061】
非タンパク質ポリマー(例えば、PEG)は、任意の数の官能基の化学反応により、フラグメントに連結され得る(例えば、カルボキシル化されたmPEG、p-ニトロフェニル-PEG、アルデヒド-PEG、アミノ-PEG、チオール-PEG、マレイミド-PEG、アミノオキシ-PEG、ヒドラジン-PEG、トシル-PEG、ヨードアセトアミド-PEG、スクシンイミジルスクシネート-PEG、スクシンイミジルグルタレート-PEG、スクシンイミジルカルボキシペンチル-PEG、p-ニトロフェニカルボネート-PEG、又はエタンチオール-PEG)。非タンパク質ポリマー(例えば、PEG)は、アミノ末端のアミノ酸、カルボキシ末端のアミノ酸、遊離アミン、及び遊離スルフヒドリル基を含むが、これらに限定されない任意の数の化学基を通してフラグメントに連結することができる。
【0062】
非タンパク質ポリマー(例えば、PEG)は、官能化されていてもよい(例えば、単官能性の活性化された直鎖状PEG、ホモ二官能性の活性化された直鎖状PEG、ヘテロ二官能性の活性化された直鎖状PEG、多腕の(multiarmed)活性化されたPEG(例えば2腕、4腕、8腕、その他)、分岐して活性化されたPEG及び櫛形の活性化されたPEG)。
【0063】
本明細書において使用する用語「アルキル」は、直鎖又は分岐の飽和炭化水素基を指すことが意図されている。例示的アルキル基は、メチル(Me)、エチル(Et)、プロピル(例えば、n-プロピル及びイソプロピル)、ブチル(例えば、n-ブチル、イソブチル、t-ブチル)、ペンチル(例えば、n-ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル)等を含む。アルキル基は、1から約20個、2から約20個、1から約10個、1から約8個、1から約6個、1から約4個、又は1から約3個の炭素原子を含有することができる。
【0064】
本明細書において使用する、「アルケニル」は、1つ又は複数の炭素-炭素二重結合を有するアルキル基を指す。例示的アルケニル基は、エテニル、プロペニル等を含む。「アルキニル」は、1つ又は複数の炭素-炭素三重結合を有するアルキル基を指す。例示的アルキニル基は、エチニル、プロピニル等を含む。「ハロアルキル」は、1つ又は複数のハロゲン置換基を有するアルキル基を指す。例示的ハロアルキル基は、CF3、C2F5、CHF2、CCl3、CHCl2、C2Cl5等を含む。
【0065】
本明細書において使用する、「ポリエーテル」は、エーテル結合を含有するポリマーを指す。例はポリエチレングリコールを含む。
【0066】
上で記載された改変されたフラグメントを含むフラグメントは、プロテアーゼ耐性であることがあり、1つ又は複数のタイプの保護基、例えばアシル基、アミド基、ベンジル又はベンゾイル基、又はポリエチレングリコールを含むことがある。より詳細には、上で記載された改変されたフラグメントを含むフラグメントは、N末端でアセチル化及び/又はC末端でアミド化されていることが可能である。
【0067】
天然に生じない又は改変されたアミノ酸残基が含まれる場合、それらは、以下の又は当技術分野で利用できる多くの他の残基から選択することができる: 4-ヒドロキシプロリン、ガンマ-カルボキシグルタミン酸、o-ホスホセリン、o-ホスホチロシン、又はデルタ-ヒドロキシリジン。他の例は、合成を容易にするためにトリプトファンに置換することができるナフチルアラニン、L-ヒドロキシプロピル、L-3,4-ジヒドロキシフェニルアラニル、アルファ-アミノ酸、例えば、L-アルファ-ヒドロキシリジル及びD-アルファ-メチルアラニル、L-アルファ-メチルアラニル、ベータ-アミノ酸、及びイソキノリル等を含む。天然に生じないアミノ酸残基を有するフラグメントは、合成フラグメントと称することもできて、本明細書に記載される変形体の1タイプを構成する。他の変形体は、アミノ酸残基の天然に生ずる側鎖(L-又はD-型のいずれか)が天然に生じない側鎖で置き換えられているフラグメントを含む。
【0068】
一実施形態において、フラグメントは、どちらかの末端(又は両方)に(例えば、N末端に)3個の余分のアミノ酸(MetGlySer)、及びどちらかの末端(又は両方)に(例えば、C末端に)7から8個の余分なアミノ酸(ThrSerHisHisHisHisHisHisCys)を有することができる。
【0069】
還元/アルキル化及び/又はアシル化によるフラグメント改変に関する指針として、Tarr, Methods of Protein Microcharacterization、J. E. Silver編、Humana Press、Clifton、ニュージャージー州155〜194頁、1986を参照することができて;適当な担体への化学的カップリングに関する指針として、Mishell and Shiigi編、Selected Methods in Cellular Immunology、WH Freeman、San Francisco、カリフォルニア州(1980)及び米国特許第4,939,239号を参照することができ、;及び緩和なホルマリン処置に関する指針として、Marsh、Int. Arch. of Allergy and Appl. Immunol.、41: 199〜215頁、1971を参照することができる。
【0070】
特色となる組成物中における任意のペプチドは、多量体の形態で存在する複数のもののうちの1種(例えば、ダイマー)であってもよい。これらの多量体は、直鎖状又は分岐状であってもよい。多量体の形態は、1つ又は複数のタイプのフラグメント及び骨格構造を含むこともできる。2つ以上のフラグメントが存在する場合、それらは、同一であっても又は同一でなくてもよい。リンカーといわれるより小さい構造も存在することができて、フラグメントの骨格への連結を媒介することができる。一般的に、リンカーは骨格より小さい。骨格構造の性質は重要ではなくて、多くの異なるタイプの分子が使用され得る。リンカー構造の一例は、例えば、2個以上のリジン残基(例えば、2、3、4、又はそれを超えるリジン残基)を有するオリゴリジン分子である。本発明の2つ以上のフラグメント(例えば、2、3又は4つのポリペプチド)が、リジン残基に、例えば、ペプチド結合によって取り付けられ得る。ポリリシンリンカーを有するこれらのフラグメントは、骨格構造に連結され得る。例えば、本発明は:、
骨格-KKKHIGKYGLRWRPKGSV
及び
HIGKYGLRWRPKGSVKKK-骨格
を包含する。
【0071】
骨格構造、例えば、オリゴリジン分子は、直鎖状であっても分岐していてもよい。分岐した骨格分子に付加した多量体の本発明のペプチドは、本明細書で「樹状」ペプチドと称することもある。
【0072】
本明細書に記載された変形形態を含む本明細書に記載された任意のフラグメントは、異種のポリペプチド(即ち、フィブロネクチンでは現れない配列を有するポリペプチド)を更に含むことができる。異種のポリペプチドは、それが取り付けられている(例えば、融合体タンパク質中におけるように、融合した)フラグメントの循環中における半減期を増大させるポリペプチドであってもよい。異種のポリペプチドは、アルブミン(例えば、ヒト血清アルブミン又はそれらの部分)又は免疫グロブリンの部分(例えば、IgGのFc領域)であってもよい。
【0073】
本明細書に記載されたFNが結合し得るポリペプチドの成長因子は、インスリン様成長因子(IGF)ファミリー内(例えば、IGF-1)、トランスフォーミング成長因子(TGF)ファミリー内(例えば、TGF-β1又はTGF-β2)、線維芽細胞成長因子(FGF)ファミリー内(例えばbFGF又はFGF-7)、血小板由来の成長因子(PDGF)ファミリー内(例えば、PDGF-BB)、血管内皮成長因子(VEGF)サブファミリー内(例えば、VEGF-A)、又は神経成長因子(NGF)ファミリー内であってもよい。フィブロネクチンフラグメントが生物学的活性を保持している成長因子に結合するかどうかを決定するために、標準的生物学的アッセイを実施することができる。例えば、下の実施例で概略を説明するように、遊走を通常刺激する結合した成長因子に対する遊走応答を実施することができる。例えば、線維芽細胞の遊走又は顆粒化組織形成に対する、結合した及び結合していない成長因子の効果を比較することができる。具体的には、成長因子がPDGF(例えば、PDGF-BB)であれば、AHDF細胞の遊走を分析することができる。
【0074】
本明細書に記載されたフィブロネクチンフラグメントの必要な構造を模倣する化合物が、本発明の範囲内である考えられる。そのような模倣体について種々のデザインが可能である。全て参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第5,192,746号;米国特許第5,169,862号;米国特許第5,539,085号;米国特許第5,576,423号;米国特許第5,051,448号;及び米国特許第5,559,103号は、そのような化合物を創り出す多くの方法を記載している。
【0075】
生理学的に許容される組成物:
本発明の医薬組成物は、その意図される投与経路、例えば、経口又は非経口(例えば、静脈内、皮内、皮下、腹腔内、筋肉、吸入による、経皮(局所)、及び経粘膜投与)と適合性であるように製剤化される。本発明のFNフラグメント、及びこれらのフラグメントを有するGF含有複合体には創傷治癒を促進する能力があるので、局所製剤が特に構想される。
【0076】
非経口投与のために使用される溶液剤又は懸濁液剤は、滅菌希釈剤、例えば、注射用の水、食塩水溶液、固定油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール又は他の合成溶媒等;抗菌剤、例えば、ベンジルアルコール又はメチルパラベン等;抗酸化剤、例えば、アスコルビン酸又は重硫酸ナトリウム等;キレート剤、例えばエチレンジアミン四酢酸等;緩衝剤、例えば、酢酸塩、クエン酸塩又はリン酸塩;及び等張性の調整のための薬剤、例えば、塩化ナトリウム又はデキストロース等を含むことができる。pHは、塩酸又は水酸化ナトリウム等の酸又は塩基で調整することができる。組成物は、アンプル、使い捨て注射器、単回又は複数回の用量のガラス又はプラスチック製のバイアル、瓶等に等分するか又はパッケージングすることができて、そのようなパッケージ形態は、使用説明書と共に本発明の範囲内である。好ましくは、組成物は、意図される投与経路に照らして医学的に許容されるレベルで滅菌されている。
【0077】
注射に適合する医薬組成物は、例えば、滅菌水溶液(水に可溶な場合)又は分散体及び滅菌注射用溶液又は分散体の即時調製のための滅菌散剤を含む。静脈内投与のために適当な担体は、例えば、生理学的食塩水、静菌水、クレモホールEL(商標)(BASF社、Parsippany、ニュージャージー州)及びリン酸緩衝食塩水(PBS)を含む。全ての場合に、投与のために調製された組成物は滅菌されているべきであり、及び流体であるか又は少なくとも容易に注射できるために十分な流体に変換され得るべきである。組成物及び/又は核酸構築物は、製造及び貯蔵条件下で安定であるべきであり、細菌及びカビ等の微生物の汚染作用を受けないように保存されるべきである。微生物に対する防腐剤は、種々の抗菌剤及び抗黴剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサール等を含むことができる。
【0078】
担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、及び液体ポリエチレングリコール等)、及び適当なそれらの混合物を含有する溶媒又は分散媒であってもよい。流動性は、例えば、レシチン等のコーティングの使用により、分散体の場合に必要な粒子サイズの維持により、及び界面活性剤の使用によって維持することができる。
【0079】
多くの場合に、組成物は血液と等張であることが望ましいであろう。これは、組成物中で、種々の等張化剤、例えば、糖類、ポリアルコール、例えば、マンニトール、ソルビトール等、塩化ナトリウムを使用して達成することができる。
【0080】
注射用組成物の遅らされた又は長期化された吸収は望ましいことがあり、組成物中に吸収を遅らせる薬剤、例えば、アルミニウムモノステアレート及びゼラチンを含ませることにより、又は組成物中の活性剤のミクロ粒子若しくはナノ粒子を、成分の放出を遅らせるか若しくは長期化する材料でコーティングすることにより達成することができる。
【0081】
滅菌注射用溶液は、例えば、活性化合物を必要とされる量で適当な溶媒中に追加の成分の1つ若しくは組合せと共に可溶化又は懸濁させることにより調製することができる。典型的には、そのような溶液又は懸濁液の創出に続いて滅菌濾過が行われる。一般的に、分散体は、活性化合物を基礎分散媒及び他の所望の成分を含有する滅菌ビヒクル中に組み込むことにより調製される。滅菌注射用溶液を調製するための滅菌散剤の場合に、製剤は、例えば、真空乾燥及び/又は凍結乾燥により乾燥される。
【0082】
局所投与に適合する医薬組成物は、皮膚の手入れ、皮膚の浄化、又は抗皺製品、シャンプー、メイキャップ、コンディショナー、ローション剤、エアロゾル、ゲル、ムース、染料、又は漂白剤の形態の組成物を含むことができるが、これらに限定されない。これらの組成物は、充填剤、界面活性剤、チキソトロープ剤、抗酸化剤、防腐剤、染料、顔料、芳香、増粘剤、ビタミン、ホルモン、加湿剤、UV吸収有機日焼け止め、UV散乱無機日焼け止め、加湿剤、カチオン、アニオン、非イオン性又は両性のポリマー、及び毛髪着色活性物質を含むが、これらに限定されない1つ又は複数の従来の化粧用又は外皮用の添加剤又は補助剤を含有することができる。これらの補助剤は、化粧品の分野で周知であり、多くの刊行物に記載されている。例えば、Harry's Book of Cosmeticology、第8版、Martin Rieger編、Chemical Publishing, New York (2000)を参照されたい。例示的な組成物は、例えば、米国特許出願第2005008604号、米国特許出願第20050025725号及び米国特許出願第20040120918号に記載されており、それらは、参照により本明細書に組み込まれる。
【0083】
ある実施形態では、本発明の医薬組成物は、1種又は複数の化学的浸透エンハンサーを含むことができる(例えば、国際公開第WO2005009510号に記載)。
【0084】
例示的な化学的浸透エンハンサーは、1-ドデシルピロリドン、ベンジルジメチルドデシル塩化アンモニウム、コカミドプロピルベタイン、コカミドプロピルヒドロキシスルタイン、オレイルベタイン、シネオール、臭化セチルトリメチルアンモニウム、ドデシルアミン、ドデシルピリジニウムクロリド、ヘキサデシルトリメチルアンモモニオプロパンスルホネート、イソプロピルミリステート、ラウリン酸、リモネン、リノール酸、リノレン酸、メントール(テルペン)、メチルラウレート、1-メチル-2-ピロリドン、N-ラウリルサルコシン(CAS番号137-16-6、ラウロイルサルコシン酸ナトリウムともいわれる)、ニコチン硫酸塩、オレイン酸、臭化オクチルトリメチルアンモニウム、ポリエチレングリコールドデシルエーテル、1-フェニルピペラジン、ソルビタンモノラウレート、ラウリルエーテル硫酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、オクチル硫酸ナトリウム、テトラカイン、及びTween-20(商標)を含むが、これらに限定されない。
【0085】
化学的浸透エンハンサーは、皮膚透過性を増大させ、当技術分野において知られている(例えば、Shahら、「Skin Penetration Enhancement: Clinical pharmacological and regulatory considerations.」Pharmaceutical Skin Penetration EnhancementK. Walters編、1993、New York, Basel、Hong Kong: Marcel Dekker 417-427頁を参照されたい)。
【0086】
本発明のペプチドは、化粧用組成物中で、ペプチドそれ自体として又は適当な賦形剤中に前もって混ぜてあるものの形態でのいずれかで使用することができて、それらは、溶液、分散体、エマルション、ペースト又は粉末の形態で使用することができる。それらは、個別的に、又は本明細書に特に記載されたものを含むがこれらに限定されない他の活性物質と共に、マクロ、ミクロ又はナノカプセル、リポソーム又は乳状脂粒、マクロ、ミクロ又はナノ粒子又はマイクロスポンジ等の化粧ベクターにより運ばれ得る。それらは、粉末状有機ポリマー、タルク、ベントナイト及び他の無機担体に吸着させることもできる。
【0087】
上記ペプチドは、編織布と皮膚の間の接触を通して美容効果を発揮して、連続した局所送達を可能にする目的で、日中又は夜間のための衣類又は下着の製造で使用されるべき、皮膚との接触が意図される網織物、合成又は天然繊維、羊毛及び全ての材料、例えば、パンティーストッキング、下着、ハンカチーフ及び拭き布等を処理するために、任意の形態で又はマクロ、ミクロ及びナノ粒子、マクロ、ミクロ及びナノカプセルに結合し、組み込まれ、吸収又は吸着された形態で使用され得る。
【0088】
上記ペプチドは、局所用組成物(例えば、治療用又は化粧用組成物)中、0.00001%(w/w)(「w/w」は質量/質量である)から10%(w/w)(例えば、約0.0001%(w/w)から1%(w/w))の間の範囲の濃度で使用することができる。別の有用な範囲は、約0.001%から約5%(w/w)である。ペプチドは、約1ppmから約500ppm(例えば、約100から約400ppm)の範囲で使用することもできる。
【0089】
経口投与のための組成物は、典型的には不活性若しくは可食性の希釈剤又は可食性担体を含む。そのような組成物は、種々の方法で、例えば、液体、カプセル、又は錠剤の形態で製剤化することができる。薬学的に適合性の結合剤、及び/又はアジュバント材料は、組成物の一部として含まれ得る。錠剤、ピル、カプセル、トローチ等は、任意の1種又は複数の以下の成分、又は同様な性質の化合物:微結晶性セルロース、トラガカントガム又はゼラチン等の結合剤;デンプン又はラクトース等の賦形剤、アルギン酸、プリモゲル、又はトウモロコシデンプン等の崩壊剤;ステアリン酸マグネシウム又はSterotes等の潤滑剤;コロイド状二酸化ケイ素等の流動促進剤;スクロース又はサッカリン等の甘味剤;又はペパーミント、サリチル酸メチル、又はオレンジ着香料等の着香料を含有することができる。
【0090】
吸入投与(例えば、粘膜、鼻腔内、鼻咽腔、気管又は肺等の負傷した組織に適用するための)のために、本発明の組成物は、湿潤又は乾燥エアロゾルスプレーの形態で、例えば、適当な噴射剤、例えば、二酸化炭素等のガス、又はネブライザーを含有する加圧された容器又はディスペンサーから送達される。
【0091】
全身的投与は、経粘膜又は経皮経路によることもできる。経粘膜又は経皮投与のために、典型的には、透過されるべきバリアに適した浸透剤が製剤で使用される。多くのそのような浸透剤が、当技術分野において一般的に知られており、例えば、経粘膜投与のために、界面活性剤、胆汁酸塩、及びフシジン酸誘導体が含まれる。投与は、イオントフォレシス、マイクロ注射針及び経皮浸透を増強するためにデザインされた他のデバイスによっても容易に行われる。
【0092】
経粘膜投与は、経鼻スプレー又は坐剤の使用(例えば、ココアバター及び他のグリセリド等の従来の坐薬基剤を使用して)により達成することができる。経皮投与のために、活性化合物は、当技術分野において一般的に知られている軟膏、膏薬、ゲル剤、又はクリーム剤に製剤化される。
【0093】
そのような組成物は、埋め込み及びマイクロカプセル化された送達システムを含む制御された放出製剤等、身体からの急速な脱離に対して組成物を保護するであろう担体を用いて製剤化することもできる。エチレン酢酸ビニル、ポリ酸無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、ポリカーボネート、及びポリ乳酸等の生分解性、生体適合性ポリマーを使用することができる。材料は、市販でも、例えば、Alza社及びNova Pharmaceuticals社から得ることができる。リポソームの懸濁液(モノクローナル抗体を用いて特定の細胞を標的とする(例えば、感染細胞を標的とする)リポソームを含む)も、医薬組成物を調製するために使用することができる。これらは、当業者に知られており、例えば、米国特許第4,522,811号に記載された方法に従って調製することができる。
【0094】
投与の容易さ及び投薬量の均一性のために、経口又は非経口組成物を、投薬量単位の形態で製剤化することが特に有利である。本明細書において使用する投薬量単位の形態とは、処置されるべき対象のための一体の投薬量として適当な物理的に離散的な単位を指し;各単位は、必要とされる薬学的担体が付随する場合に所望の治療効果を生ずると計算された所定量の活性化合物を含有する。本発明の投薬量単位の形態の明細は、活性化合物の固有の特性及び達成されるべき特定の治療効果、及びそのような活性化合物を個体の処置のために配合する当技術分野に固有の制限により規定されてそれに直接依存する。本発明のフィブロネクチンのフラグメント及びフィブロネクチンのフラグメントのペプチド誘導体の一実施形態において、投薬量単位の形態は、約0.1から5mgの凍結乾燥されたペプチド又はペプチド誘導体である。本発明のフィブロネクチンのフラグメント及びフィブロネクチンのフラグメントのペプチド誘導体の別の実施形態において、投薬量単位の形態は、約1mgの凍結乾燥されたペプチド又はペプチド誘導体である。
【0095】
活性化合物及び医薬組成物の毒性及び治療有効性は、標準の薬学的手順により細胞培養又は実験動物で決定することができる。例えば、そのような手順は、LD50(集団の50%に致死的な用量)及びED50(集団の50%の治療的に有効な用量)を決定するためにルーチン的に適用される。毒性と治療効果の間の投与比は、治療の指標であり、それは、LD50/ED50の比として表現することができる。大きい治療指標を示す化合物が一般的に好ましい。細胞培養アッセイ及び動物研究から得られたデータ(下の例に記載されたものを含む)は、ヒト又は他の意図される対象者で使用するための投薬量の範囲を定式化することに使用することができる。そのような化合物の投薬量は、殆ど又は全く毒性のないED50を含む濃度を循環させる範囲を生ずるように、通常は選択される。投薬量は、使用される投与形態及び利用される投与経路に依存して、この範囲内で変えてもよい。本発明の方法で使用される任意の化合物について、治療有効用量は、最初に、細胞培養アッセイから推定することができる。したがって、例えば、用量は、細胞培養で決定されたEC50(即ち、最高の半分の応答を得る試験化合物の濃度)を含む循環中の血漿濃度範囲を達成するために、動物モデルで最初に確立することができる。そのような情報は、ヒトで有用な用量をより正確に決定するために使用することができる。血漿中のレベルは、例えば、高速液体クロマトグラフィーにより、又は目的の化合物に適合される他の適当な分析方法により測定することができる。
【0096】
注記したように、成長因子を結合及び/又は増強/阻害する活性を有するペプチド(例えば、合成又は組換えで産生されたペプチド)は、組織操作された生成物に組み込むことができる。線維芽細胞の遊走を促進するFNドメインも含まれ得る。好ましくは、生成物は堅牢である(即ち、急速な分解に対して比較的耐性である)。それらは、例えば、急性又は非治癒創傷(例えば、慢性潰瘍)を含む創傷の処置に使用することができる。処置に適応する患者を下に更に記載する。或いは又はそれに加えて、成長因子を結合及び/又は増強するペプチドは、1種若しくは複数の成長因子を、処置を必要とする細胞、組織若しくは器官に送達するために、又は成長因子の内因性局在化のために、生体適合性ポリマーに繋ぐことができる。或いは又はそれに加えて、成長因子を結合及び/又は増強するペプチドは、急性又は非治癒の創傷に対する制御された放出のために、ポリマー又は非ポリマー生体材料に組み込むことができる。
【0097】
本発明者らは、分子内で架橋したヒアルロナン(HA)ハイドロゲルに繋がれた血液タンパク質フィブロネクチン(FN)の分子ドメインC、H、及びHV又は細胞接着ペプチドを利用するブタ皮膚の創傷における新組織形成に関して伝導性且つ誘導性である操作されたECMを開発した。したがって、1実施において、本発明は、フィブロネクチン(例えば、血漿フィブロネクチン)のフラグメント又は生物学的に活性なその変形体を含む操作されたECMを含む。該フラグメントは、ハイドロゲル(例えば、HAハイドロゲル)に繋ぐことができて(例えば、共有結合又は非共有結合で)、ポリペプチドの成長因子に結合し及び/又はそれを増強するフラグメントであり得る。該フラグメントは、内容の全体が本明細書に組み込まれる米国特許出願第20050282747号で論じられている連結方法によって繋ぐことができる。
【0098】
天然に生ずるECMは、糖タンパク質、プロテオグリカン、複合体炭水化物、及び他の分子等の多様な構成要素を含む。ECMの主要な機能は、構造支持体、引っ張り強度又はクッション作用を提供し;細胞接着及び細胞遊走のための基質及び経路を提供し;並びに細胞分化及び代謝性機能を調節することを含むが、これらに限定されない。ECMタンパク質は、例えば、コラーゲン、エラスチン、フィブロネクチン、ラミニン、プロテオグリカン、ビトロネクチン、トロンボスポンジン、テナシン(サイトアクチン)、エンタクチン(entactin)(ニドゲン(nidogen))、オステオネクチン(SPARC)、アンコリン(anchorin)CII、コンドロネクチン、リンクタンパク、オステオカルシン、骨シアロタンパク質、オステオポンチン、エピネクチン、ヒアルロネクチン、アミロイドP成分、フィブリリン、メロシン(merosin)、s-ラミニン、ウンドゥリン(undulin)、エピリグリン(epilligrin)、及びカリニン(kalinin)を含む。
【0099】
特色とされる組織操作された生成物(例えば、操作されたECM)は、生物学的及び/又は合成成分を含むことができる。それは、バイオポリマー(例えば、ヒアルロナン(HA)、グルコサミノグルカン(GAG)、フィブリノゲン、ラミニン、又はコラーゲン)を含むことができる。生体適合性ポリマーは、合成生分解性ポリマーであってもよく、その多くは、当技術分野において知られている。例えば、生分解性ポリマーは、ポリ(ラクチド)、ポリ(グリコリド)、ポリ(ラクチド-コグリコリド)、ポリ(乳酸)、ポリ(グリコール酸)、ポリ(乳酸-co-グリコール酸)、ポリ(カプロラクトン)、ポリカーボネート、ポリエステルアミド、ポリ酸無水物、ポリ(アミノ酸)、ポリ(オルトエステル)、ポリシアノアクリレート、ポリアミド、ポリアセタール、ポリ(エーテルエステル)、ポリ(エチレングリコール)及びポリ(オルトエステル)のコポリマー、ポリ(ジオキサノン)、ポリ(アルキレンアルキレート)、生分解性ポリウレタン、又はそれらの任意のブレンド又はコポリマーであってもよい。他の有用なポリマーは、アルギン酸塩のポリマー及びカルボキシ-ビニルポリマー(例えば、少なくとも90%のアクリル酸モノマー及び約0.1%から約5.0%の二官能性架橋剤を含むポリマー)を含む。
【0100】
創傷箇所への組織細胞の再生着(repopulation)及び新しい組織の発育に関して伝導性且つ誘導性である、組織操作された「スマート(smart)」マトリックスは、最適の創傷修復のために必要とされる適当なECMの文脈において、それぞれ、GF、又はそれらの活性フラグメントで構成され得る。それに加えて、FNGF-結合ドメインは、軟質又は硬質の組織の修復、増加及び再生のために、多くの他のGFの局在化(内因性又は外因性の供給源から)及び/又は送達システムを操作するために有用な手段を提供することができる。更に、成長因子FN/VN-結合ペプチド又はFN及びVNGF-結合ドメインの分子を操作された誘導体は、GF活性を強く阻害するようになり、癌、肺線維症、GI又はGU狭窄、熱傷拘縮及び自己免疫で生ずる硬化症等の増殖性又は線維症障害のために有用になり得る。
【0101】
EngECMは、成長因子、又はそれらの活性フラグメント(例えば、本明細書に記載された成長因子及びフラグメント)があってもなくても生成され得る。前者の場合、engECMにおける成長因子の投薬量は、例えば、下で記載されるように変えることができて、2:1となるように、操作されたECMに加えられた100ng/ml(創傷当たり合計15ng)のPDGF-BBは、傷害及び材料の適用4日後に顆粒化形成を増強した。後者の場合、内因性で供給された成長因子の近傍に置かれたときに、成長因子はマトリックスにより補充され得る。
【0102】
本発明は、本明細書に記載されたポリペプチドをコードするDNA及びRNA分子を含む核酸分子を更に包含する。核酸分子は、投与されるための生理学的に許容される組成物に製剤化することができる。本発明は、本発明の核酸構造を含むベクターも特色とする。発現ベクター、特に真核細胞中で発現させるための発現ベクターが特に役立つ。そのようなベクターは、例えば、ウイルス、プラスミド、コスミド、又は人工染色体(例えば、酵母人工染色体)のベクターであってもよい。典型的には、プラスミドは、選択されたDNA配列、例えばコード配列を挿入するための1つ又は複数のクローニング部位を含む円形のdsDNA要素である。そのようなプラスミドは、複製の機能性起点を含むことができて、したがって複製能力があることも、又は複製に欠陥のあることもある。
【0103】
プラスミドに加えて、ウイルスのベクター(例えば、複製欠陥のあるレトロウイルス、レンチウイルス、アデノウイルス及びアデノ関連ウイルス)も、有利に使用され得る。広い種々の異なる性質を有する多くのそのようなウイルスのベクターが開発されている。例えば、そのようなウイルスのベクターは、複製に欠陥のあるレトロウイルス、アデノウイルス及びアデノ関連ウイルスであることもある。組換えレトロウイルスを産生するための、及び細胞をインビトロ又はインビボでそのようなウイルスに感染させるための技法及び手順が、Current Protocols in Molecular Biology、Ausubel、F. M.ら(編) Greene Publishing Associates、(1989)、Sections 9.10-9.14及び他の標準的実験室マニュアルで提供される。適当なレトロウイルスの例は、当業者に周知のpLJ、pZIP、pWE及びpEMを含む。適当なパッケージングウイルス系統の例は、psi.Crip、psi.Cre、psi.2及びpsi.Amを含む。アデノウイルスのゲノムは、本明細書に記載された核酸構築物をコードして発現するように操作することができるが、細胞を溶解するウイルスの正常なライフサイクルで複製させるその能力に関して不活性化されている。(例えば、Berknerら、BioTechniques 6: 616頁、1988; Rosenfeldら、Science 252: 431〜434頁、1991;及びRosenfeldら、Cell 68: 143〜155頁、1992を参照されたい)。アデノウイルス株Adタイプ5d1324又はアデノウイルスの他の株(例えば、Ad2、Ad3、Ad7その他)に由来する適当なアデノウイルスのベクターは、当業者に周知である。或いは、Tratschinら、(Mol. Cell. Biol. 5: 3251-3260頁、1985)に記載されたようなアデノ関連ウイルスベクターは、トランス活性化因子融合体タンパク質を発現させるために使用することができる。他のウイルスのベクターの代替物は、レンチウイルスベクターを含む。そのようなベクター及びそれらの調製及び使用は、例えば、米国特許第6,924,123号;第6,863,884号;第6,830,892号;第6,818,209号;第6,808,923号;第6,799,657号に記載されており、それらの全ては全体が本明細書に組み込まれる。
【0104】
本発明のベクターは、本明細書に記載されたポリペプチドフラグメントを有利に含むことができる。特定の発現ベクターのデザインに含まれる他の要素は、形質転換されるべきホスト細胞の選択のような要因、タンパク質の所望の発現レベル、その他に依存し得る。本発明の発現ベクターは宿主細胞に導入され、それにより本明細書に記載された核酸によりコードされた融合体タンパク質又はペプチドを含むタンパク質又はペプチドを産生することができる。
【0105】
本明細書に記載されるベクターは、当技術分野で知られている種々の方法の任意の1つにより細胞又は組織に導入することができる。そのような方法は、例えば、参照により本明細書に組み込まれるSambrookら、Molecular Cloning: A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory、New York (1992)に記載されている。Cell Biology: A Laboratory Handbook、J. E. Celis編、Academic Press、第2版、Volume 1、500〜512頁、1998中のAusubelら、Current Protocols in Molecular Biology、John Wiley and Sons、Baltimore、Md. (1989); Hittら、「Construction and Propagation of Human Adenovirus Vectors」;及びMethods in Molecular Genetics、K. W. Adolph編、Academic Press、Orlando、Fla.、Volume 7B、12-30頁、1995中のHittら、「Techniques for Human Adenovirus Vector Construction and Characterization」も参照されたい。該方法は、例えば、安定な又は一過性のトランスフェクション、リポフェクション、電気穿孔及び組換えウイルスのベクターを用いる感染を含む。用語「トランスフェクトする」又は「トランスフェクション」は、リン酸カルシウム共沈殿、DEAF-デキストランにより媒介されるトランスフェクション、リポフェクション、電気穿孔及びマイクロインジェクションを含む、核酸を宿主細胞に導入する全ての従来の技法を包含することが意図される。宿主細胞にトランスフェクトする適当な方法は、Sambrookら(Molecular Cloning: A Laboratory Manual、第2版、Cold Spring Harbor Laboratory press (1989))、及び他の実験室の教則本に見出すことができる。
【0106】
植物細胞については、Tiプラスミド又はウイルスのベクターがしばしば使用される。例えば、そのようなプラスミド及びウイルスのベクターは、ホストの植物細胞にアグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)により媒介されるトランスフェクション(A.ツメファシエンス感染を受けやすい植物細胞について)によりトランスフェクトするために使用することができ、又は細胞に、例えば、マイクロインジェクション、粒子衝撃、又は電気穿孔を使用して直接挿入することができる。他の方法では、プロトプラストを植物細胞から作製して、次にトランスフェクトすることができる。
【0107】
本発明の核酸構築物を用いて形質転換される宿主細胞の数は、少なくとも部分的には、使用される組換え発現ベクターのタイプ及びトランスフェクション技法のタイプに依存するであろう。核酸は、ホスト細胞に一過性で、又は長期発現のために導入することができる。長期発現のためには、核酸は、ホスト細胞のゲノムに安定に組み込まれるか又は安定なエピソーム要素としてとどまる。
【0108】
核酸をホスト細胞DNAに組み込むためには、典型的には、選択可能なマーカー(例えば、薬剤耐性)をコードする遺伝子が使用され、目的の核酸と共に宿主細胞に導入される。薬剤ハイグロマイシン及びネオマイシン等の種々のそのような選択可能マーカーが、一般的に使用される。選択可能マーカーは、目的の核酸と別のプラスミド若しくは他のベクターで導入することができるか、又は同じベクターで導入される。本発明の核酸構築物(例えば、組換え発現ベクター)及び選択可能マーカーの遺伝子をトランスフェクトされた宿主細胞は、選択可能マーカーを使用して細胞を選択することにより同定され得る。
【0109】
本発明の核酸構築物は、インビトロにおける培養で成長させた真核細胞に、従来のトランスフェクション技法(例えば、リン酸カルシウム沈殿、DEAE-デキストラントランスフェクション、電気穿孔、及び他の方法)により導入することができる。細胞には、例えば、核酸を細胞にインビボで導入するために適当な送達機構、例えばウイルスのベクター(例えば、Ferryら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88: 8377〜8381頁、1991、及びKayら、Human Gene Therapy 3: 641〜647頁、1992を参照されたい)、アデノウイルスのベクター(例えば、Rosenfeld、Cell 68: 143〜155頁、1992;及びHerz and Gerard、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90: 2812〜2816頁、1993を参照されたい)、受容体により媒介されるDNA取り込み(例えば、Wu及びWu、J. Biol. Chem. 263: 14621頁、1988; Wilsonら、J. Biol. Chem. 267: 963〜967頁、1992;及び米国特許第5,166,320号を参照されたい)、DNAの直接注入(例えば、Acsadiら、Nature 332: 815〜818頁、1991;及びWolffら、Science 247: 1465〜1468頁、1990を参照されたい)又は粒子衝撃(例えば、Cheng ら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90: 4455〜4459頁、1993;及びZelenin ら、FEBS Letters 315: 29〜32頁、1993を参照されたい)等の適用により、インビボでトランスフェクトすることもできる。したがって、本発明では、細胞には、インビトロ又はエクスビボでトランスフェクトすることができて、発現されたペプチドは、当技術分野において知られた方法によりそこから単離することができる。細胞は、対象に投与することもできるか、又は或いは、細胞はインビボで直接改変することができる。任意のこれらの状況で、ペプチドを発現させるために使用される核酸構築物は、細胞からのエクスポートを容易にするためのシグナル配列を含むことができる。
【0110】
本発明の別の態様は、本発明の核酸構築物が導入された宿主細胞、即ち、「組換えホスト細胞」に関係する。用語「組換えホスト細胞」は、対象とする特定の細胞だけでなくそのような細胞の子孫又は可能性としての子孫も指すと理解される。ある改変が、継承する世代で、突然変異又は環境の影響のいずれかのために起こり得るので、そのような子孫は、事実において、親細胞と同一ではないこともあるが、それでもまだ本明細書において使用する用語の範囲内に含まれる。
【0111】
ホスト細胞は、任意の原核細胞又は真核細胞であってもよいが、真核細胞が好ましい。例示的な真核細胞は、哺乳動物の細胞(チャイニーズハムスターの卵巣細胞(CHO)又はCOS細胞等)を含む。他の適当な宿主細胞も当技術分野において知られている。
【0112】
本発明は、製剤が、ポリペプチド成長因子に結合するか若しくは固有の生存若しくは成長因子活性を有する適当なフィブロネクチンのフラグメント又はフィブロネクチンに結合する成長因子の適当なフラグメントを含む限り、治療用製剤の特定の性質により限定されることは意図されない。例えば、そのような組成物は、生理学的に許容される液体、ゲル若しくは固体の担体、希釈剤、補助剤及び/又は賦形剤と一緒に提供され得る。
【0113】
これらの治療用製剤は、家畜等の哺乳動物に獣医学的使用のために、及び臨床用途でヒトに他の治療剤と同様な様式で投与することができる。一般的に、治療有効性のために必要とされる投薬量は、使用のタイプ及び投与の様式、並びに個々の宿主の特定の必要性によって変化するであろう。
【0114】
そのような組成物は、典型的に液体の溶液又は懸濁液として、又は固体形態で調製される。製剤は、そのような通常使用される添加剤、例えば結合剤、充填剤、担体、防腐剤、安定剤、乳化剤、緩衝剤及び賦形剤等、例えば、薬学的等級のマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウム等を含むことができる。これらの組成物は、溶液、懸濁液、錠剤、ピル、カプセル剤、持続放出製剤、又は散剤の形態を取り、典型的には1%〜95%、好ましくは2%〜70%の有効成分を含有する。
【0115】
組成物は、液体の溶液又は懸濁液のいずれかで注射用としても調製され、又は注射する前に、懸濁物で、液体で溶解するために適当な固体形態も調製することができる。
【0116】
本発明のフラグメントは、生理学的に許容される及び適合性である希釈剤又は賦形剤としばしば混合される。適当な希釈剤及び賦形剤は、例えば、水、食塩水、デキストロース、グリセロール等、及びそれらの組合せである。それに加えて、所望であれば組成物は、少量の加湿剤又は乳化剤、安定剤又はpH緩衝剤等の補助物質を含有することもできる。
【0117】
局所投与等の、投与の他の様式のために適当な追加の製剤は、膏薬、チンキ、クリーム剤、ローション剤、及びある場合には坐剤を含む。膏薬及びクリーム剤のための、伝統的結合剤、担体及び賦形剤は、例えば、ポリアルキレングリコール又はトリグリセリドを含むことができる。
【0118】
使用方法:
本明細書に記載されるフィブロネクチンフラグメント及びフィブロネクチンフラグメントのペプチド誘導体は、組織再生、例えば、創傷治癒を促進することに、及び例えば、老化に関係する貧相な皮膚外見の予防及び処置のための化粧用及び治療用製剤で有用である。細胞培養における使用も記載される。該ポリペプチド(又はそれらをコードする核酸若しくは発現ベクター又はそれらを発現する細胞)は、例えば、本明細書に記載される適応のための治療用製剤に、並びに例えば、皮膚老化の徴候を示す皮膚の外見及び/又は感触を改善するための製品及び組成物に組み込まれ得る。
【0119】
例えば、本発明の組成物は、皮膚に組成物を適用した後の皮膚における外見の視覚的改善を提供することにより、皺及びUVBによる光線性損傷に基づく皮膚の外見を調節することに有用である。一般的に言えば、粒子状材料を更に含有する本発明の組成物は、即時型視覚的改善を提供するために最も有用であろう。
【0120】
本発明は、皮膚状態を予防的に調節するための組成物及び皮膚状態を治療的に調節するための組成物を含む美容トリートメントを特色とする。「皮膚老化の徴候」、「貧相な皮膚外見」、及び、例えば、老化等の症状を同様に指す他の語句は、外見で視覚的に及び触覚で知覚できる全ての現れ方並びに皮膚老化による任意の他の巨視的又は微視的効果を含むが、これらに限定されない。そのような徴候は、内因性の因子及び/又は外因性の因子、例えば、年代学的老化及び/又は環境的損傷(例えば、UVBによる光線性損傷、汚染物質への曝露、及び劣悪な食事)により誘発又は惹起され得る。これらの徴候は、肌合いの不連続性、例えば皺及び粗い深い皺、皮膚線、ひび割れ、出っ張り、大きい毛穴(例えば、汗腺導管、皮脂腺、又は毛髪の毛包等の付属器構造と関連する)等の発達、又は不規則性又は粗さ、皮膚弾性の消失(機能性皮膚エラスチンの消失及び/又は不活性化)、たるみ(眼の領域及び顎における腫脹を含む)、皮膚の張りの消失、皮膚緊張の消失、皮膚の変形からの反跳の消失、変色(目の下のくまを含む)、しみ、黄ばみ、色素沈着過度の皮膚領域、例えば年齢斑及びそばかす等、角化症、異常な分化、角質増殖症、弾性線維症、コラーゲン破壊、並びに角質層、真皮、表皮、皮膚静脈系(例えば、毛細血管拡張症又はクモ状血管(spider vessels)、及び下層組織、特に皮膚に近い下層組織における他の組織学的変化を含むが、これらに限定されない過程から生じ得る。本発明により特に好ましい、皮膚老化の徴候は皺であり、本発明の組成物は、ある好ましい実施形態で、皺と戦い、処置又は予防することに有用である。
【0121】
皺は、多くの場合から生じ得る。例えば、皺は、皮膚の自然な老化過程、喫煙、及び紫外放射線に対する曝露により引き起こされ得る(例えば、慢性的日光曝露から)。皺は、引用により本明細書に組み込まれるKligmanら(Br. J. Derm. 113: 37〜42頁、1985)に記載されたように分類することができる。Kligmanは、皺を3つのクラス:直線状の皺、縦溝皺、及び縮れに分類したが、任意のこれらのタイプの皺は、それらの原因に関わりなく、本明細書に記載されたように処置することができる。本発明の組成物は、皺それ自体はさておき、皮膚の外見を改善するために使用することができる。
【0122】
本明細書で開示された方法は、対象におけるUVに誘発された皺を含む皺を予防又は処置し又は減少させるために、及び/又は皮膚の品質及び外見を改善するために有用である。該方法は、フィブロネクチンフラグメント又は生物学的に活性なそれらの変形体を含有する組成物を、対象に投与することにより実施することができる。例示的な処置方法は、皺又は皺が生ずる可能性のある箇所を突き止めて、本明細書に記載された組成物を適用することを含むことができる。
【0123】
本明細書において使用する、皮膚状態を予防的に調節するという表現は、皮膚老化の徴候を含む、皮膚における可視的な及び/又は触知できる不連続性(例えば、皮膚における視覚的に又は感触により検出され得る肌合いの不規則性)を遅らせること、最小化すること及び/又は予防することを含む。
【0124】
本明細書において使用する、皮膚の状態を治療的に調節するとは、軽減すること、例えば、皮膚老化の徴候を含む皮膚における不連続性を減少させ、最小化し及び/又は目立たなくすることを含む。本発明の組成物を使用して産生された生成物の幾つか及び実際に組成物それ自体は、皮膚の状態を予防的に又は治療的に調節するために使用することができる。
【0125】
ある好ましい態様で、本発明は、ヒトの皮膚の生理学的状態及び/又は物理的外見を改善するために、特に日光曝露(例えば、UVB光線性損傷)、物理的及びホルモンのストレス、擦過、栄養学的効果及び他の同様な原因で発生した皮膚老化の徴候を減少させるために有用である。該組成物は、それらを使用する消費者に、より若々しい外見を与える目的で、老化の徴候を予防するために及び/又はそれらを処置するためにしばしば使用され得る。
【0126】
「皮膚老化」、「皮膚老化の徴候」、「貧相な皮膚の外見」、「局所適用」等の全ての用語は、それらが、化粧及びパーソナルケア製品を開発し、試験して市販する当技術分野で一般的に及び広く使用される意味で使用される。「皺」は、裸眼で可視の、平均深さが50から200μmを超える及び年齢が進むと本質的に現れる、顔面の皮膚の、それが無ければ平滑な表面における溝を意味する。本発明による「化粧用組成物」という用語は、化粧目的、衛生の目的のために又は1種又は複数の薬学的成分を送達するための主剤として使用することができる製剤に関する。これは、化粧品、パーソナルケア製品及び医薬製剤を含む。これらの製剤が、2つ以上のこれらの同じ目的のために同時に使用されることも可能である。例えば、薬用ふけ取りシャンプーは、薬理学的性質を有し、毛髪を清潔にするためのパーソナルケア製品として使用される。これらの組成物は、外皮用薬として許容される担体等の追加の成分も含むことができる。
【0127】
本明細書において使用する「化粧品」は、リップスティック、マスカラ、ルージュ、ファンデーション、ブラシ、アイライナー、リップライナー、リップグロス、顔面の又は身体のパウダー、サンスクリーン及び日焼け止め、爪磨き、ムース、スプレー、整髪用ゲル、ネイルコンディショナーを、クリーム剤、ローション剤、ゲル剤、軟膏、エマルション剤、コロイド剤、溶液剤、懸濁液剤、コンパクト、固体、鉛筆型、スプレー式製剤、はけ塗りの製剤等の形態に関わらず含むが、これらに限定されない。「パーソナルケア製品」は、浴用及びシャワーゲル、シャンプー、コンディショナー、クリーム、リンス、毛髪染料及び着色製品、つけたままにしておくコンディショナー、サンスクリーン及び日焼け止め、リップクリーム、皮膚コンディショナー、コールドクリーム剤、加湿剤、毛髪スプレー、石鹸、身体スクラブ、皮膚摩擦剤、アストリンゼン、脱毛剤及びパーマネント溶液、ふけ防止剤、防汗剤及び発汗抑制剤組成物、ひげ剃り、プレシェービング及びアフターシェービング製品、加湿剤、脱臭剤、コールドクリーム、クレンザー、スキンゲル、リンスを、固体、粉末、液体、クリーム、ゲル、軟膏、ローション、エマルション、コロイド、溶液、懸濁液、又は他の形態であるかどうかに関わらず含むが、これらに限定されない。本発明による「医薬製剤」は、薬学的に有効な成分の局所及び経皮適用を含む外皮用薬目的のための担体を含むが、これらに限定されない。これらは、ゲル剤、パッチ、クリーム剤、鼻内スプレー剤、軟膏、ローション剤、エマルション剤、コロイド剤、溶液剤、懸濁液剤、散剤等の形態であってもよい。本発明による組成物は、化粧品、パーソナルケア製品及び医薬製剤を含む。
【0128】
本発明は、例えば、創傷治癒を含む組織再生を促進する方法を特色とする。本明細書において使用する、組織再生とは、損傷した組織の、細胞の組織への増殖及び分化による置き換えを指すために使用される。組織損傷は、物理的傷害、疾患、及び感染を含む任意の原因(means)により起こり得る。本明細書に記載したように、「創傷治癒」は、組織再生の非限定的例として使用される。
【0129】
創傷の処置における主要な目標点は、創傷閉鎖を達成することである。開放された皮膚の創傷は、創傷の1つの主要なカテゴリーを代表し、熱による熱傷及び/又は化学熱傷、神経障害性潰瘍、加圧ただれ、静脈の鬱血潰瘍、及び糖尿病性潰瘍を含む。開放された皮膚の創傷は、6種類の主な成分: i)炎症、ii)線維芽細胞の増殖、iii)血管の増殖、iv)結合組織の合成v)上皮形成、及びvi)創傷収縮を含む過程により定型的に治癒する。創傷治癒は、これらの成分が、個別に又は全体としてのいずれかで、適当に機能しない場合に損なわれる。栄養不良、感染、薬理学的薬剤(例えば、アクチノマイシン及びステロイド)、糖尿病、及び高齢を含む多くの因子が創傷治癒に影響し得る(Hunt and Goodson in Current Surgical Diagnosis & Treatment (Way; Appleton & Lange)、86〜98頁、1988を参照されたい)。
【0130】
用語「創傷」は、異なる過程で開始された、及び種々の特性を有する皮膚及び皮下組織に対する傷害(例えば、長期のベッド静養による加圧ただれ及び外傷により誘発された創傷)並びに主な創傷箇所における又はその近傍周囲の組織及び骨を含む他の組織及び骨に対する傷害を広く指す。言うまでもなく、創傷は、外科的に又は疾患(例えば癌)により生じることもあり得る。創傷は、創傷の深さに依存して4つの等級: i)等級I:上皮に限定される創傷; ii)等級II:真皮に広がった創傷; iii)等級III:皮下組織に広がった創傷;及びiv)等級IV(又は全層性創傷):骨が露出されている創傷(例えば、より大きい転子又は仙骨等の骨圧点)の1つに分類することができる。用語「非全層性創傷」は、等級I〜IIIを包含する創傷を指す;非全層性創傷の例は、熱による熱傷又は化学熱傷、加圧ただれ、静脈の鬱血潰瘍、及び糖尿病性潰瘍を含む。用語「深い創傷」は、等級III及び等級IVの創傷の両方を含むことが意図される。本発明は、深い創傷及び慢性の創傷を含む全ての創傷のタイプを含む処置を考慮している。
【0131】
「創傷治癒を促進する」、「創傷治癒を増強/改善する」等の語句は、顆粒化組織の形成の誘導及び/又は上皮形成の誘導(即ち、上皮における新しい細胞)、及び/又は瘢痕の縮小のいずれかを指す。創傷治癒は、創傷面積の減少により簡便に測定される。「創傷治癒を促進する」又は「創傷治癒を増強/改善する」等の語句は対照との定量的比較を必要とすることは意図されない。慢性創傷の処置の場合には、創傷治癒の証拠が、処置後に始まれば十分である。多くの外傷性創傷及び癌摘出は、二期の治癒過程により回復するために、開放されたままにしなければならず、そのような創傷及び摘出を有する患者は、創傷治癒を促進する本明細書に記載される組成物で処置することができる。
【0132】
本発明のフィブロネクチンフラグメント又はフィブロネクチンフラグメントのペプチド誘導体の「治療有効量」という語句は、創傷治癒、創傷治癒の促進又は創傷治癒の増強を指す場合、顆粒化組織の形成の誘導及び/又は上皮形成の誘導及び/又は瘢痕の縮小を促進するその量である。例えば、本発明のフィブロネクチンフラグメント又はフィブロネクチンフラグメントのペプチド誘導体は、約0.1μg/kgから約1mg/kg(患者体重);幾つかの実施形態では、約1μg/kgから約1mg/kg(患者体重);幾つかの実施形態では、約1μg/kgから約0.1mg/kg(患者体重);幾つかの実施形態では、約0.01mg/kgから約1mg/kg(患者体重);及び幾つかの実施形態では、約0.01mg/kgから約0.1mg/kg(患者体重)の量のi.v.製剤で、創傷治癒を促進するために使用することができる。
【0133】
時には非治癒性創傷と称される慢性創傷の発生率は、老化人口;これらの人口における年齢に関連する疾患の増大; AIDSの発生率の増大;糖尿病の発生率の増大、及び癌介入に続発する放射線創傷の増大等の事象のために上昇しつつある。記載したばかりの事象と関連するものを含む慢性創傷を有する患者は、創傷治癒を促進する本明細書に記載された組成物で処置することができる。
【0134】
本発明の組成物は、既存の創傷手当の手順、例えば、皮膚移植及び組織弁、創傷清拭、及び抗炎症剤の投与、抗菌及び/又は抗疼痛薬物療法等の代わりに又はそれを補完するいずれかで使用することができる。処置に適する患者は、糖尿病と関連して起こり得る慢性の真皮の潰瘍化を有する患者を含む。しかしながら、糖尿病性潰瘍は、慢性創傷の病像の一部にすぎない。米国で550万人の人々が慢性の、非治癒創傷を有すると推定されている。
【0135】
本発明の方法は、フィブロネクチンのペプチドフラグメント、又は本明細書に記載された生物学的に活性なそれらの変形体を含む医薬組成物の治療有効量を患者に投与するステップを含む。フィブロネクチンのペプチドフラグメント、又は生物学的に活性なそれらの変形体は、1種又は複数の成長因子との複合体で存在することができる。該方法は、処置を必要とする患者を同定するステップを任意選択で含むことができる。そのような患者は、皮膚、粘膜、下層にある結合組織、筋膜、神経又は筋肉の外科的摘出又は切開に苦しむ患者;皮膚、粘膜、下層にある結合組織、筋膜、神経、筋肉又は骨の外傷性裂傷又は組織損失に苦しむ患者;及び熱による熱傷若しくは化学熱傷、又は皮膚、粘膜、下層にある結合組織、筋膜、神経若しくは筋肉の潰瘍化に苦しむ患者を含む。
【0136】
適当な製剤は、本明細書に記載されており、一般的に、溶液、軟膏又は膏薬の形態を取る。フィブロネクチンのフラグメントは、成長因子と複合体を形成していてもいなくても、生体材料、例えば、合成ポリマー、操作されたECM、包帯、被覆材、湿布等の中にそれらを含めることによって投与することもできる。
【0137】
本発明の他の方法により、内因性成長因子を患者の組織に局在化させることができる。これらの方法は、本明細書に記載された、フィブロネクチンのフラグメント又は生物学的に活性なそれらの変形体を含む治療有効量の組成物を、患者に投与することにより実施することができる。本明細書に記載されたより具体的な処置方法におけるように、これらの組成物は、医薬組成物、生体材料、若しくは固体支持体の局所適用により、又は他の局所及び全身的経路(例えば、経口的に、静脈内に、筋肉内に、皮下、皮内に、経皮的に、又は経粘膜的に)により投与することができる。これらの方法は、1種又は複数の成長因子を患者に送達する方法として記載することができる。該方法は、処置を必要とする患者を同定するステップを、任意選択で含むことができる。そのような患者は、組織に対する傷害、組織醜形又は機能障害を生ずる組織の損失又は障害に苦しむ患者を含む。より詳細には、患者は、脳、脊髄若しくは神経における傷害若しくは損失、又は脳、脊髄若しくは神経の機能障害を生ずる障害;心臓若しくは血管における傷害若しくは損失、又は心臓若しくは血管の機能障害を生ずる障害;肺、鼻咽頭管、静脈洞、気管若しくは気道における傷害若しくは損失、又は肺、鼻咽頭管、静脈洞、気管若しくは気道の機能障害を生ずる障害;胃腸管、肝臓若しくは膵臓における傷害若しくは損失、又は胃腸管、肝臓若しくは膵臓の機能障害を生ずる障害;腎臓、尿管、膀胱若しくは尿道における傷害若しくは損失、又は腎臓、尿管、膀胱若しくは尿道の機能障害を生ずる障害;軟骨、滑膜、半月板、靭帯、腱若しくは髄核における傷害若しくは損失、又は軟骨、滑膜、半月板、靭帯、腱若しくは髄核の機能障害を生ずる障害;骨における傷害若しくは損失;口唇、舌若しくは歯肉における傷害若しくは損失、又は口唇、舌及び歯肉の機能障害を生ずる障害;皮下組織における傷害若しくは損失、又は皮下組織の機能障害を生ずる障害に苦しむ患者であり得る。
【0138】
インビトロ及びインビボにおけるモデル系:
試験化合物は、インビトロ及びインビボにおけるモデル系で更に特徴づけることができる。例えば、試験化合物は、成人ヒトの真皮の線維芽細胞(ADHF)、ヒト微静脈の内皮細胞(HEDMC)、又は他のタイプの細胞を使用して細胞遊走に対する効果について試験することができる。例えば、試験化合物は、ブタの再傷害モデル、ブタ又はマウスにおける摘出創傷モデル、ブタ又はラットにおけるホットコーム(hot comb)熱傷モデル、ブタにおける頭頂の傷害進行性熱傷モデル、ブタにおける化学熱傷を使用して創傷治癒における効果について試験することができる。
【実施例】
【0139】
以下の実施例で、本発明の範囲内の実施形態を更に記載して実証する。該実施例は、例示の目的でのみ与えられ、それらの多くの変形が、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく可能であるので、本発明の限定と解釈されるべきでない。
【0140】
PDGF-BB及び式Iのペプチド製剤を用いるブタ熱傷の局所処置の研究:
4頭の20〜30kgの雌イエブタを皮膚の創傷手順のために使用した。
【0141】
研究プロトコル:上記動物にタラジンを(チレタミン及びゾラゼパム、Fort Dodge Lab社、Fort Dodge、アイオワ州)5mg/kgIMで与えた。次にブタの気管内に挿管して、室内の空気中イソフラン0.5〜2.5%で外科用の程度の麻酔の下に維持した。側面及び背部の毛髪を電気毛髪クリップでクリップ止めして、皮膚をポビドンヨウ素溶液で消毒した。
【0142】
熱水中で80℃に予熱された2.5cm×2.5cm、150グラムのアルミニウム棒を当てることにより、動物の背部及び側面に、標準化された深い非全層性熱傷を生じさせた。熱傷は、前肢及び後脚の間の脊柱のいずれかの側に生じた。水滴が皮膚にスチームやけどを生じることを防止するために、加熱された棒を適用直前に拭って乾燥させた。次に棒を、皮膚の表面に垂直に鉛直な位置において、重力により供給される全圧で20秒間適用した。この熱傷モデルは、真皮の上部の30〜50%に損傷を生じさせて、高度に再現性のあることを示した(Singerら、Acad. Emerg. Med. 7: 1〜6頁、2000)。24箇所の熱傷が、4頭のブタの背部の両側に一様に分布した。ブタは、熱による傷害の後に水疱を形成しないので、水疱が形成されてその後破裂するヒトにおける熱傷をシミュレートするために、傷害後直ちに壊死表皮の創傷清拭を実施した(Singerら、Acad. Emerg. Med.、7: 114〜119頁、2000)。創傷清拭は、壊死表皮が全熱傷表面から剥離してなくなるまで、熱傷の表面を乾燥ガーゼで穏やかにこすることにより実施した。介入:各ブタの背部の皮膚に、等しい組の4つの熱傷を6つの研究処置の1つで無作為に処置した。プルロニックレシチン有機ゲル(「PLO」)のゲル、PDGF-BBを含有するPLOゲル、cP12又はcNP8を含有するPLOゲル及びcP12又はcNP8のいずれか及びPDGF-BBを含有するPLOゲルの各処置を、1頭のブタ当たり4箇所の熱傷に、熱傷後24時間後又は48時間後のいずれかで適用した。試験のために選択されたペプチドは、GMPファカルティ(faculty)(American Peptide社、Vista、カリフォルニア州)で合成され、非特異的表面吸着によるペプチドの損失を避けるために、滅菌されたエンドドキシンを含まない2%ブタ血清(HyClone社、Logan、ユタ州)を添加された、滅菌されたエンドドキシンを含まないPBSで希釈した。滅菌の、エンドドキシンを含まない組換えPDGF-BB(R & D Systems社)も2%ブタ血清を添加されたPBSに希釈した。PDGF-BBを含むものも含まないものもペプチドの最終の濃度は、30%プルロニックレシチンゲル中で、滅菌されたエンドドキシンを含まないPLOキット(Transderma、Coquitlam社、ブリティッシュコロンビア州、カナダ)を使用して調合した。30%プルロニックゲル中の2%ブタ血清を添加されたPBSを、処置の対照として使用した。創傷は、第1週には毎日の基準で、その後は週に2回、局所的に150μlの処置ゲルの適用を受けた。次に熱傷を、乾燥した接着しないガーゼ(Telfa、Kendall社、Mansfield、マサチューセッツ州)で覆い、熱傷領域をガーゼ包帯ロール(Conform、Kendall Healthcare Products社、Mansfield、マサチューセッツ州)及び接着性弾性包帯(Elastoplast、Beiersdorf-Jobst社、Rutherford College、ノースカロライナ州)で覆った。被覆材の外れを防ぐために、ステープルをドレッシングの周縁部に適用した。被覆材の交換は各処置適用の後、上のように適用した。全ての動物を、手術後の鎮痛管理のためにフェンタニル経皮パッチで処置した。
【0143】
ブタの生存手術及び創傷箇所の収集は、全身麻酔下で行った。ブタは、外科的手順の前24時間の間絶食させた。手術前に予めアトロピンを0.05mg/kgの用量で与えた。全身麻酔の誘導のために4.4mg/kgテラゾール及び、2.2mg/kgのキシラジン及び0.22mg/kgブトファノールをIM投与した。次に動物に挿管して、イソフラン(1〜3%)及び酸素を用いて外科的麻酔の段階に保った。覆われた皮膚の創傷は、ヒトに対して、最大でもアセトアミノフェンしか必要としない軽微な疼痛を引き起こすので、動物を同様に処置して、生存手術後、毎日2回10〜20mg/kgのアセトアミノフェンを与えた。
【0144】
安楽死は、静脈内に100mg/kgペントバルビタール及び2mg/kgキシラジンを用いて遂行した。
【0145】
図6に示したように、創傷後10日、清拭して48時間の創傷の上皮再形成は、cNP8で処置された創傷では、対照又はcP12で処置された創傷と比較して著しく増大した。
【0146】
PDGF-BB及び式Iのペプチド製剤を用いるブタの熱傷のI.V.処置の研究:
垂直な進行性熱傷モデル(上の局所実験で示した)を、4頭のブタの各々の背部に熱傷を生じさせるために使用した。20箇所の熱傷(80℃/20秒)を各ブタの背部に生じさせ、1組の熱傷を点滴の8時間前に生じさせ、第2の組を点滴の4時間前に生じさせた。3頭のブタを0.001、0.01又は0.1mg/kgのcNP8の点滴で処置して、1頭のブタを対照として緩衝液の点滴で処置した。凍結乾燥されたcNP8を実験室でPBS中で復元して(75%の純度に基づいて補正して11.6mg/ml)5mMのストック溶液を得て、0.22μmの膜を有する注射器フィルターを用いて濾過した。濾過されたcNP8溶液の濃度を、OD280を読み取ることにより決定して、濃度を、1mMのcNP8当たりOD280=6.76に基づいて計算した。cNP8を必要に応じてPBSで5mMに希釈した。濾過されたcNP8溶液を等分して-80℃で貯蔵した。点滴の直前に、cNP8を更に希釈した: a)PBSで1: 270に希釈して0.019mMのcNP8溶液を得た。注射量は、0.1mg/kg体重と等しい3ml/kg体重の0.019mM cNP8であった。b)PBSで1: 2700に希釈して0.0019mMのcNP8溶液を得た。注射は、0.01mg/kg体重と等しい3ml/kg体重の0.0019mMのcNP8であった。c)PBSで1: 27000に希釈して0.00019mMのcNP8溶液を得た。注射量は、0.001mg/kg体重と等しい3ml/kg体重の0.00019mMのcNP8であった。各ブタに熱傷を生じさせた4時間又は8時間後に、cNP8/緩衝溶液を静脈内に投与した。室温の点滴は、耳静脈を通して30分の時間をかけてブタに投与された。全ての手順の間全身麻酔を使用した。傷害後生検を種々の時点で組織学的分析のために捕集して、上皮再形成のパーセントを決定した。
図7及び8に示したように、上皮再形成は、傷害の10日及び14日後にcNP8で著しく増大した。
【0147】
薬学的及び化粧用組成物:
本発明の例示として、数通りの化粧用配合物を挙げる。該配合物は、本発明の代表的なものであるが本発明を限定しない。
ゲル:
1g/100g白色軟質パラフィン1.5 シクロメチコン6.0 Crodacol C90 0.5 ルブラジェルMS10トリエタノールアミン0.3 パルミトイル-HISKYILRWRPKNSV-OH 0.0005 水、防腐剤、芳香剤q.s.100g
ゲルは、ペプチドを水に80℃で溶解して、最初の3成分(パラフィン、シリコーン及びCrodacol)を80℃で混合し、次に2相をブレンドして、30℃に冷却し、ルブラジェル、防腐剤及び芳香剤を添加することにより作製することができる。このゲルは、顔、特に眼の周囲の皮膚に毎日適用するために使用して、浮腫の浸潤を低下させることができる。
クリーム:
2g/100g Volpo S2 2.4 Volpo S20 2.6 Prostearyl 15 8.0 蜜蝋0.5 ステアロオキシジメチコン3.0プロピレングリコール3.0 カルボマー 0.25 トリエタノールアミン0.25 セラミドH03 (SEDERMA社) 0.5 アセチル-HIGKYGLRWRPKNSV-OH 0.001 水、防腐剤、芳香剤q.s. 100g。
【0148】
このエマルションは、顔面の皮膚、特に脆弱な皮膚の領域における皮膚を加湿し、それを再構成及び鎮静するために使用して皺を処置することができる。エマルションを製造するためには、セラミドHO3をvolpo 52、S20及びprostearyl 15に85℃で溶解して、蜜蝋及びステアロオキシジメチコンを添加して;他の成分を水相に加え75〜80℃で混合し、次に2相をブレンドして、冷却して、芳香剤を添加する。セラミドHO3は、トリヒドロキシパルミトアミドミリスチルエーテルである。
【0149】
加湿及び抗皺ファンデーション:
調合物%(w/w) 鉱物質を除いた水53.36 10%KOH1.30 ポリソルベート80 0.10 二酸化チタン6.00 タルク3.05 黄色酸化鉄1.80 赤色酸化鉄1.00 黒色酸化鉄0.15 プロピレングリコール6.00 マグネシウムアルミニウムシリケート1.00 ナトリウムカルボキシメチルセルロース0.12 DiPPG3ミリスチルエーテルアジペート12.00 イソステアリルネオペンタノエート4.00 Crodafos CS20 4.00 ステアレス-10 2.00セチルアルコール0.50 ステアレス-20.50セラミド2 (N-ステアロイル-0.10スフィンガニン) HIGKYGLRWRPKGSV-OH 0.0004 防腐剤q.s.
【0150】
対象者は、上によるファンデーションクリームの使用に関する研究に登録することができる。眼の周囲の皺は、自己評価/質問表により及び印象法により評価することができる。製品は目標領域に1日に1回56日間、適用される。判定は、0日目及び56日目に実行される。対照として、該部位を、ペプチドを欠く同じファンデーションクリームで処置して、皮膚の老化の症状における改善について評価する。
【0151】
本発明の多くの実施形態を記載してきた。それにも拘わらず、種々の改変が本発明の精神及び範囲から逸脱することなく為され得ることが理解されるであろう。したがって、他の実施形態も以下の特許請求の範囲の範囲内である。