(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6953553
(24)【登録日】2021年10月1日
(45)【発行日】2021年10月27日
(54)【発明の名称】自動車両のバンパービーム用エネルギー吸収装置
(51)【国際特許分類】
B60R 19/34 20060101AFI20211018BHJP
【FI】
B60R19/34
【請求項の数】9
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2019-556644(P2019-556644)
(86)(22)【出願日】2018年4月19日
(65)【公表番号】特表2020-516538(P2020-516538A)
(43)【公表日】2020年6月11日
(86)【国際出願番号】FR2018050988
(87)【国際公開番号】WO2018197785
(87)【国際公開日】20181101
【審査請求日】2019年10月17日
(31)【優先権主張番号】1753749
(32)【優先日】2017年4月28日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】505113632
【氏名又は名称】ヴァレオ システム テルミク
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(72)【発明者】
【氏名】ハメド、トラベルシ
(72)【発明者】
【氏名】セルジオ、ダ、コスタ、ピト
【審査官】
立花 啓
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2006/0181090(US,A1)
【文献】
独国特許出願公開第102015011357(DE,A1)
【文献】
国際公開第2013/080974(WO,A1)
【文献】
特開2009−051244(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 19/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車両のバンパービーム用エネルギー吸収装置(1)であって、前記エネルギー吸収装置(1)は、バンパービーム(2)と前記バンパービーム(2)に対面する車両縦材(3)の端部との間の接続をなすように設計されるとともに、非強化ポリマー材料から作製される少なくとも1つの第1ゾーン(4)と、繊維強化ポリマー材料から作製される第1名目層(16)を備える少なくとも2つの第2ゾーン(6)とを含む、エネルギー吸収装置(1)において、
前記第2ゾーン(6)は、前記第1名目層(16)に少なくとも部分的に重ねられて前記第2ゾーン(6)の厚さ(ef)を変化させる少なくとも1つの追加層(14)を有し、
前記第1ゾーン(4)は前記第2ゾーン(6)間に渡された少なくとも1つの内壁(12)を有する、
ことを特徴とするエネルギー吸収装置(1)。
【請求項2】
前記第2ゾーン(6)は種々の部分を有し、重ねられる層(14、16)の個数が前記部分毎に可変である、
請求項1に記載のエネルギー吸収装置(1)。
【請求項3】
前記第2ゾーン(6)の前記厚さ(ef)は、前記第2ゾーン(6)の全長に亘って直線的に増加する、
請求項1に記載のエネルギー吸収装置(1)。
【請求項4】
前記重ねられる層(14、16)は、異なる寸法及び/又は形状を有する、
請求項1乃至3のいずれか一項に記載のエネルギー吸収装置(1)。
【請求項5】
前記繊維強化ポリマー材料は、連続及び/又は不連続のガラス繊維及び/又は炭素繊維を含む、
請求項1乃至4のいずれか一項に記載のエネルギー吸収装置(1)。
【請求項6】
前記第1名目層(16)及び前記追加層(14)は、単一の材料から作製される、
請求項1乃至5のいずれか一項に記載のエネルギー吸収装置(1)。
【請求項7】
前記エネルギー吸収装置(1)は、
〇車両縦材(3)に固定するための固定ベース(8)と、
〇中空の外側ケーシング(10)と、
〇前記中空の外側ケーシング(10)内に配置された内壁(12)と、
を含み、
前記外側ケーシング(10)は、前記固定ベース(8)から、前記バンパービーム(2)に接続された前記エネルギー吸収装置(1)の反対側の端部まで延び、
前記内壁(12)は、前記外側ケーシング(10)の内部で、前記外側ケーシング(10)の内面の互いに対面する2つの壁の間で延びる、
ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載のエネルギー吸収装置(1)。
【請求項8】
前記中空の外側ケーシング(10)は、前記第2ゾーン(6)に対応し、
前記固定ベース(8)及び前記内壁(12)は、前記第1ゾーン(4)に対応する、
請求項7に記載のエネルギー吸収装置(1)。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか記載のエネルギー吸収装置を製造するための方法において、‐重ねるための前記追加層(14)を所望のフォーマットに予め切断するステップと、
‐前記追加層を前記第1名目層に配置するステップと、
‐前記追加層と前記第1名目層を加熱してスタンピングする又はプレスすることによって固定するステップと、
を備える、エネルギー吸収装置を製造するための方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車両の衝突、特に正面衝突があった場合に保護を提供することに適したエネルギー吸収装置に関する。より詳細には、本発明は、バンパービームとこのバンパービームに面する車両縦材の端部との間に配置された自動車両のバンパービーム用エネルギー吸収装置、並びにかかるエネルギー吸収装置を製造するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車両のバンパーに対する衝突、特に正面衝突のエネルギーを級数するように、衝突から受ける力によって変形するエネルギー吸収装置を使用することが公知である。このようなエネルギー吸収装置は、一般に、その強度のために金属材料から作製されている。しかしながら、金属製のエネルギー吸収装置は重く、更なる減量が模索される自動車両の変化に対応していない。
【0003】
エネルギー吸収装置の重量を削減するために、それらをプラスチック材料又は特にプラスチックと金属とを組み合わせた複合材料から構成することが知られている。プラスチック製のエネルギー吸収装置は、比エネルギー吸収が低いため、すなわち、装置の質量に対して吸収可能なエネルギー量が少ないため、完全に十分なものではない。つまり、このようなプラスチック製エネルギー吸収装置は、より脆弱である。プラスチックと金属とを組み合わせた複合材料から作製されるエネルギー吸収装置は、プラスチック製のエネルギー吸収装置より比エネルギー吸収の点で優れているが、依然として重量が重い。
【発明の概要】
【0004】
本発明の目的の1つは、先行技術の欠点のうちの少なくとも一部を克服し、改善された比エネルギー吸収を有する軽量のエネルギー吸収装置を提案することである。
【0005】
この目的のために、本発明は、自動車両のバンパービーム用エネルギー吸収装置であって、前記エネルギー吸収装置は、バンパービームと前記バンパービームに対面する車両縦材の端部との間の接続をなすように設計されるとともに、非強化ポリマー材料から作製される少なくとも1つの第1ゾーンと、繊維強化ポリマー材料から作製される第1名目層を備える少なくとも1つの第2ゾーンとを含む、エネルギー吸収装置を提出する。前記第2ゾーンは、前記第1名目層に少なくとも部分的に重ねられて前記第2ゾーンの厚さを変化させる少なくとも1つの追加層を有する。
【0006】
したがって、追加層を追加する又は追加しないことで第2ゾーンの厚さを変化させることにより、車両のニーズに合わせた特定の強度プロファイルを規定することが可能となるとともに、車両の構成に応じて、特にバンパービーム及び縦材の構成に応じて、最適な衝突吸収のためのエネルギー吸収装置を構成することが可能となる。
【0007】
本発明による別の態様は、前記第2ゾーンは種々の部分を有し、重ねられる層の個数が前記部分毎に可変であることを提案する。
【0008】
本発明による別の態様は、前記第2ゾーンの前記厚さは、前記第2ゾーンの全長に亘って直線的に増加することである。
【0009】
本発明による別の態様は、前記重ねられる層は、異なる寸法及び/又は形状を有することである。
【0010】
本発明による別の態様は、前記強化ポリマー材料は、連続及び/又は不連続のガラス繊維及び/又は炭素繊維を含むことである。ガラス繊維及び/又は炭素繊維は、単一の方向又は種々の方向に配向され得る。
【0011】
本発明による別の態様は、前記名目層及び前記追加層は、単一の材料から作製されることである。
【0012】
また、本発明は、先行請求項のうちの一項に記載のエネルギー吸収装置であって、
〇車両縦材に固定するためのベースと、
〇中空の外側ケーシングと、
〇前記中空の外側ケーシング内に配置された内壁と、
を含み、
前記外側ケーシング及び前記内壁は、前記固定ベースから、前記バンパービームに接続された前記エネルギー吸収装置の反対側の端部まで延びる、ことを特徴とするエネルギー吸収装置に関する。
【0013】
本発明による別の態様は、前記中空の外側ケーシングは、前記第2ゾーンに対応し、前記固定ベース及び前記内壁は、前記第1ゾーンに対応することである。
【0014】
また、本発明は、
‐重ねるための前記追加層を所望のフォーマットに予め切断するステップと、
‐前記追加層を前記名目層に配置するステップと、
‐前記アセンブリを加熱してスタンピングする又はプレスすることによって固定するステップと、
を備える、前述のエネルギー吸収装置を製造するための方法に関する。
【0015】
他の実施形態は、以下を提案する。
‐第1ゾーンの非強化ポリマー材料はポリプロピレン及びポリアミドから選択され、第2ゾーンの強化ポリマー材料はポリプロピレン又はポリアミドを含む。
‐固定ベース及び中空の外側ケーシングは非強化ポリマー材料から作製され、内壁は強化ポリマー材料から作製される。
‐中空の外側ケーシング及び内壁は、非強化ポリマー材料から作製される上方周縁部及び下方周縁部と、強化ポリマー材料から作製される中央部と、を含む。
‐固定ベースは、非強化ポリマー材料から作製される。
‐固定ベースは、強化ポリマー材料から作製される。
‐また、エネルギー吸収装置は、
〇中間ベースであって、当該中間ベースから、
・第1の中空の外側ケーシングが、バンパービームに向かって延びて第1キャビティを形成し、
・第2の中空の外側ケーシングが、車両縦材に向かって延びて第2キャビティを形成する、
中間ベースと、
〇第1キャビティ及び第2キャビティの両方に配置された内壁と、
を含む。
‐エネルギー吸収装置は、
〇中間ベースと、第1外側ケーシングと、第2外側ケーシングとが、非強化ポリマー材料から作製され、
〇第1キャビティ及び第2キャビティの内壁が、強化ポリマー材料から作製される、
ようになされている。
‐エネルギー吸収装置は、
〇中間ベースと、第1外側ケーシングと、第1キャビティの内壁とが、非強化ポリマー材料から作製され、
〇第2外側ケーシングと、第2キャビティの横断内壁とが、強化ポリマー材料から作製される、
ようになされている。
‐エネルギー吸収装置は、
〇車両縦材に固定するためのベース及びセル構造の列が、固定ベースからバンパービームに接続されたエネルギー吸収装置の反対側の端部まで延び、固定ベース及びセル構造は非強化ポリマー材料から作製され、
〇食違い壁が、セル構造の列を少なくとも部分的に囲むとともに、固定ベースからバンパービームに接続されたエネルギー吸収装置の反対側の端部まで延び、食違い壁は強化ポリマー材料から作製される、
ようになされている。
【0016】
本発明の更なる特徴及び利点は、非限定的な例示としてなされる以下の説明及び添付図面からより明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】バンパービームと、縦材と、本発明によるエネルギー吸収装置の概略上面図。
【
図2】第1実施形態による
図1のエネルギー吸収装置の線AAに沿った縦断面図。
【
図3】第1実施形態の変形例による
図1のエネルギー吸収装置の線AAに沿った縦断面図。
【
図4】第1実施形態の変形例による
図1のエネルギー吸収装置の線AAに沿った横断面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
種々の図面において、同一の要素は同じ参照符号で示される。
【0019】
以下の実施形態は、例示としてのものである。単数又は複数の実施形態について説明がなされるが、これは、各参照が同一の実施形態に関すること、又は特徴が単一の実施形態にのみ適用されることを必ずしも意味しない。種々の実施形態の単一の特徴を組み合わせて、及び/又は交換して他の実施形態を提供することも可能である。
【0020】
本明細書において、特定の要素又はパラメータに序数を付して、例えば第1要素又は第2要素、第1パラメータ及び第2パラメータ、又は第1基準及び第2基準等とすることがあり得る。この場合、序数は、類似しているが同一ではない要素、パラメータ又は基準を単に区別して示すためだけのものである。序数は、要素、パラメータ又は基準が他のものより優先されることを意味せず、これらの番号は本説明の範囲から逸脱せずに容易に交換され得る。同様に、この序数は、例えばある基準又は別の基準を検討する場合などの時間における順序を意味するものではない。
【0021】
一般に、自動車両は、フロントパネルに配置されたバンパービーム2を有している。
図1に示すように、このバンパービーム2は、車両の縦材3に固定され得る。衝突を吸収することで衝突のエネルギーが縦材3や車両の他の部分に直接伝達されることを防ぐように、バンパービーム2は、バンパービーム2と当該バンパービーム2に対面する縦材3の端部との間の接続をなすエネルギー吸収装置1を含み得る。このようなエネルギー吸収装置1は、衝突のエネルギーが所定のレベルに達すると、このエネルギーを吸収すべくプログラムされた変形に従って変形する。
【0022】
エネルギー吸収装置1は、
図1の軸で示されるように、例えば車両の軸に対して、長手方向(X)、横手方向(Y)、及び鉛直方向(Z)に延びている。
【0023】
図2及び
図3に示すように、エネルギー吸収装置1は、少なくとも1つの第1ゾーン4と、少なくとも1つの第2ゾーン6と、を含む。第1ゾーン4は、非強化ポリマー材料から作製され、ここでは斜線を付けた要素として図示されている。第2ゾーン6は、繊維強化ポリマー材料から作製され、ここでは無地の要素として図示されている。
【0024】
強化ポリマー材料とは、ポリマー材料がガラス繊維及び/又は炭素繊維を含むことを意味するものである。非強化ポリマー材料とは、ポリマー材料が繊維を含まないことを意味するものである。したがって、第1衝突吸収特性を有する材料作製される第1ゾーン4と、第2衝突特性を有する材料作製される第2ゾーン6とを含むエネルギー吸収装置1を得ることができる。本発明によるエネルギー吸収装置1は、第1ゾーン4と第2ゾーン6とが異なる衝突吸収特性を有する、すなわち換言すれば、第1ゾーン4の非強化ポリマー材料は、第2ゾーン6の繊維強化ポリマー材料とは異なる衝突吸収特性、プロファイル、能力又は性能を有するようになされていることが明瞭である。本発明によれば、強化ポリマー材料のみが繊維を含む。
【0025】
第1セクション4の非強化ポリマー材料は、ポリプロピレン及びポリアミドから選択され得る。第2セクション6の強化ポリマー材料も、ポリプロピレン又はポリアミドを含み得る。
【0026】
強化ポリマー材料の繊維は、特にガラス繊維及び/又は炭素繊維であり得る。これらの繊維は不連続繊維であり得るため、射出によるエネルギー吸収装置の製造が可能となる。繊維は連続繊維であり得るため、熱成形によるエネルギー吸収装置1の製造が可能となる。これらの製造方法は限定的なものではなく、二種の材料作製される部品であって、一方の材料が繊維の形態の強化材を含む部品を製造するのに適した他の公知の製造方法が想定され得る。繊維は、単一の方向又は異なる方向に整列させることができる。
【0027】
図1のエネルギー吸収装置1の線AAに沿った縦断面図である
図2に示す第1実施形態によれば、エネルギー吸収装置1は、
〇エネルギー吸収装置1の一端部に配置された、車両縦材3に固定するためのベース8と、
〇中空の外側ケーシング10と、
〇中空の外側ケーシング10の内側キャビティに配置された内壁12と、
を含む。
【0028】
中空の外側ケーシング10は、固定ベース8から、バンパービーム2に接続されたエネルギー吸収装置1の反対側の端部まで延びる。一方、内壁12は、外側ケーシング10の内部で、特に、外側ケーシング10の内面の互いに対面する2つの壁の間で延びる。内壁12及び/又は固定ベース8は、仮付け溶接部18を含み得る、又は一体成形され得る。
【0029】
図示されない別の実施形態によれば、外側ケーシング10及び内壁12の双方が、固定ベース8から、バンパービーム2に接続されたエネルギー吸収装置1の反対側の端部まで延び得る。
【0030】
固定ベース8は、特に、例えばボルトによって縦材3に固定され得るように、オリフィスを含み得る。
【0031】
本例において外側ケーシング10である第2ゾーン6は、少なくとも部分的に重ねられて第2ゾーンの厚さを変化させる少なくとも2つの層を有する。換言すれば、第2ゾーン6は、外側ケーシング10の全長に亘って延びる第1名目層16と、少なくともその長さの一部に亘る単数又は複数の追加層14、すなわちパッチと、を有する。これにより、第2ゾーン6の厚さは、層が1つである場合よりも層が2つである場合の方が大きい。
【0032】
したがって、第2ゾーン6、すなわち本例において外側ケーシング10は、所定の長さに亘って延びる、例えば、バンパービームを車両縦材から離間させる距離に亘って延びる第1名目層16と、第1名目層16より短い長さに亘って延びる複数の追加層14と、を備えるものとして規定され得る。
【0033】
追加層14は、第1名目層16と同じ材料から作製され得る。すなわち、追加層14は、複合又は非複合の、繊維が単一の方向又は異なる方向に配向され得るガラス繊維及び/又は炭素繊維強化ポリマー材料又は非強化ポリマー材料から作製され得る。
【0034】
追加層14は、第1名目層16とは異なる材料からも作製され得る。例えば、追加層14は、熱可塑性マトリックスを有するガラス繊維及び/又は炭素繊維を含む織物材料の形態の熱可塑性ストリップ等の(有機シートとしても知られる)材料から作製され得る。熱可塑性物質は、ガラス繊維及び/又は炭素繊維を含ませることで強化することも可能である。
【0035】
図2に示す実施形態によれば、追加層14は、上下に均一に重ねられ、これにより第2ゾーン6の厚さe
fが段階的に均一に増加している。つまり、第2ゾーン6の厚さe
fは、追加層14の個数に応じて増加する。換言すれば、第2ゾーン6は階段状である。本例では、第1名目層16と、異なる長さに亘って上下に重ねらた5つの追加層14とが存在している。第2ゾーンの厚さe
fは、本例において0乃至5の間で変化する追加層14の個数に応じて局所的に増加し、これにより厚さ勾配が規定されている。
【0036】
本発明は、追加層14の個数に限定されない。複数の追加層14は、等しい厚さを有しても異なる厚さを有してもよく、同一の形状を有しても異なる形状を有してもよい。追加層14は、外側ケーシング10の全体に亘って延びてもよいし、
図4に示すように、外側ケーシング10の一部のみを覆ってもよい。
図4に示す実施形態において、外側ケーシング10、特に名目層16は正方形の断面を有し、追加層14は、この正方形の断面の2つの対向する辺に分布している。追加層14は、名目層16の一辺又は両辺の幅の一部又は全部に亘って分布させることができる。
【0037】
本発明は、追加層14の特定の配置に明らかに限定されない。図示しない実施形態によれば、追加層14は、1辺、2辺、3辺、更には全ての辺(例えば、外側ケーシングが六角形の断面を有する場合には6辺)に配置され得る。外側ケーシング10は、任意の多角形の断面、又は楕円形の断面を有し得る。
【0038】
図3に示す実施形態によれば、追加層14は、上下に不均一に重ねられ、これにより第2ゾーン6の厚さが段階的に不均一に増加している。厚さe
fは、第1名目層16の厚さと追加層14の厚さとを含み、本例において0乃至3の間で変化する追加層14の個数に応じて変化する。換言すれば、第2ゾーン6は、切欠のある輪郭を有する。本例において、単数の第1名目層1と、一部が重ねられ一部は重ねられない複数の追加層14とが存在しており、名目層16にはその全長に亘って追加層14が重ねられていない。換言すれば、名目層16が追加層14と重なっていない切欠が存在する。第2ゾーン6の厚さe
fは、本例において0乃至3の間で変化する追加層14の個数に応じて局所的に増加し、これにより厚さ勾配が規定されている。
【0039】
図2及び3に示す実施形態によれば、第2ゾーン6は、追加層14が重ねられているか否かにかかわらず厚さが直線的に増加する名目層16を有することも可能である。
【0040】
非強化ポリマー材料から作製される第1ゾーン4は高い延性を有しているため、衝突が発生した場合に破損することなく変形可能である。すなわち、第1ゾーン4は、衝突が発生した場合に、許容量のエネルギーを吸収することができる。換言すれば、破損せずに塑性変形するための高い能力があり、塑性変形によって引き起こされる亀裂や空洞等の欠陥が臨界となって伝播するときに不具合が生じるため、第2ゾーン6はこの伝播に耐える高い能力を有する。
【0041】
強化ポリマー材料から作製される第2ゾーン6は、低い破断点伸びを有する。換言すれば、第2ゾーン6は、引張応力下に置かれたときに破断する前の伸び容量が小さい。
【0042】
特に、エネルギー吸収装置1は、良好な剪断強度を有する。
【0043】
また、第2ゾーン6に亀裂が発生した場合、第1ゾーン4は、この亀裂の伝播を防止し、エネルギー吸収装置1の完全性を維持することができる。
【0044】
更に、本発明の好適な実施形態において、以下のうちの単数又は複数の構成が使用可能である。
‐第1ゾーン4の非強化ポリマー材料は、熱可塑性ポリマーである。
‐第1ゾーン4の非強化ポリマー材料は、ポリアミド及び/又はポリプロピレンを含む。
‐第1ゾーンは、少なくとも40%、又は50%、60%、又は80%の破断点伸びを有する。したがって、バンパービームは大量のエネルギーを吸収することができる。より一般的には、第2ゾーン6は、少なくとも100%の破断点伸びを有し得る。
‐第2ゾーンの強化ポリマー材料は、熱可塑性ポリマーを含む。
‐第2ゾーン6の強化ポリマー材料、すなわち名目層16及び/又は追加層14の強化ポリマー材料は、ガラス繊維及び/又は炭素繊維を含む。ガラス繊維を含む場合、第2ゾーン6は安価になる。炭素繊維を含む場合、第2ゾーン6の機械的性能が向上する。
‐第2ゾーン6の強化ポリマー材料は、単一の方向又は異なる方向に配向された連続及び/又は不連続繊維を含む。
‐上下に交互に配置された追加層は、0.1ミリメートル乃至10ミリメートルの厚さを有する。
‐追加層14は、単一の厚さを有し得る。或いは、追加層14は、追加層14毎に異なる厚さを有し得る。これにより、バンパービームは機械的に強化される。
‐第2ゾーン6は、ガラス繊維強化ポリアミド及び/又はガラス繊維及び/又は炭素繊維強化ポリプロピレンを含む材料から作製された追加層を含み得る。これにより、エネルギー吸収装置は機械的に強化される。
【0045】
また、本発明は、下記のステップを備える、上述のエネルギー吸収装置を製造するための方法に関する。エネルギー吸収装置1、特に内壁12、固定ベース8及び名目層16は、二材料射出又は熱成形によって事前に形成され得る。
【0046】
最初に、追加層14を、例えば外側ケーシング10の1辺の幅の半分以上、外側ケーシング10の2辺の長さの4分の1以上等の所望のフォーマットに予め切断するステップが存在する。
【0047】
次に、追加層14が名目層16に隣接して配置されることでこれらの層が重ねられ且つその構成が保持されるステップが存在する。
【0048】
最後に、種々の追加層14と名目層16との間に接続が構成されるように、加熱及びスタンピング又はプレスのステップによって、種々の要素が一体に固定される。
【0049】
これらの実施形態は、本発明の目的の例示としてなされるものであることを理解されたい。本発明は、上記の実施形態に限定されず例示としてのみのものである。本発明は、当業者が本発明の範囲内、特に上述の異なる実施形態の組み合わせにおいて想定可能な変更例、代替形態、及び他の変形例を包含する。