(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ストレート面との間に隙間を空けて対向するとともに前記軸線方向に沿って延びて前記貫通孔に嵌合可能な外周面が形成された筒状または筒状の一部を形成する突出部を備えている請求項1から3のいずれかに記載のプラグ。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[ボイラ発電プラントについて]
まず、本開示の一実施形態に係るプラグが設置されるボイラ発電プラントについて
図1を用いて説明する。
【0014】
図1は、ボイラ発電プラントにおける蒸気、復水、給水系統を表す概略図である。
ボイラ発電プラントは、ボイラの熱交換器102,103,104と、ボイラが生成した蒸気によって回転駆動される蒸気タービン110と、蒸気タービン110に連結され、蒸気タービン110の回転に応じて発電を行う発電機115とを備える。
【0015】
蒸気タービン110は、例えば、高圧タービン111と中圧タービン112と低圧タービン113とから構成され、後述する再熱器105,106からの蒸気が中圧タービン112に流入したのちに低圧タービン113に流入する。
【0016】
低圧タービン113には、復水器114が連結されており、低圧タービン113を回転駆動した蒸気がこの復水器114で冷却水(例えば、海水)により冷却されて復水となる。復水器114は、給水ラインL1を介して節炭器107に連結されている。
【0017】
給水ラインL1には、例えば、復水ポンプ(CP)121、低圧給水ヒータ122、ボイラ給水ポンプ(BFP)123、高圧給水ヒータ124が設けられている。
【0018】
低圧給水ヒータ122と高圧給水ヒータ124には、蒸気タービン111,112,113を駆動する蒸気の一部が抽気されて、図示しない抽気ラインを介して高圧給水ヒータ124と低圧給水ヒータ122に熱源として供給され、節炭器107へ供給される給水が加熱される。
【0019】
以下、ボイラが貫流ボイラの場合を例にして説明をする。
節炭器107は、火炉壁101の各蒸発管に連結されている。節炭器107で加熱された給水は、火炉壁101の蒸発管を通過する際に、火炉内の火炎から輻射を受けて加熱され、汽水分離器126へと導かれる。汽水分離器126にて分離された蒸気は、過熱器102,103,104へと供給され、汽水分離器126にて分離されたドレン水は、ドレン水ラインL2を介して復水器114へと導かれる。
【0020】
燃焼ガスが燃焼ガス通路(煙道)13を流れるとき、この燃焼ガスは、過熱器102,103,104、再熱器105,106、節炭器107で熱回収される。一方、ボイラ給水ポンプ(BFP)123から供給された給水は、節炭器107によって予熱された後、火炉壁101の各蒸発管を通過する際に加熱されて蒸気となり、汽水分離器126に導かれる。
【0021】
汽水分離器126で分離された蒸気は、過熱器102,103,104に導入され、燃焼ガスによって過熱される。
【0022】
過熱器102,103,104で生成された過熱蒸気は、蒸気ラインL3を介して高圧タービン111に供給され、この高圧タービン111を回転駆動する。
【0023】
高圧タービン111から排出された蒸気は、蒸気ラインL4を介して再熱器105,106に導入されて再度過熱される。再度過熱された蒸気は、蒸気ラインL5を介して中圧タービン112を経て低圧タービン113に供給され、中圧タービン112及び低圧タービン113を回転駆動する。
【0024】
各蒸気タービン111,112,113の回転軸は、発電機115を回転駆動して、発電が行われる。低圧タービン113から排出された蒸気は、復水器114で冷却されることで復水となり、給水ラインL1を介して再び節炭器107に送られる。
【0025】
上記のようなボイラ発電プラントの各蒸気ラインを構成する蒸気配管50には、放射線源を挿入するために穿設された貫通孔51を閉塞するプラグ1が複数個所に設置される。例えば、同図において各蒸気ライン上の箇所Pに設置される。なお、同図の箇所Pは例示であり、全ての設置箇所を示したものではない。
【0026】
[プラグ(第1実施形態)について]
次に、本開示の第1実施形態に係るプラグ1Aについて
図2から
図3を用いて説明する。
図2は、プラグ1Aの側面図である。
図3は、プラグ1Aの縦断面図である。
【0027】
プラグ1Aは、材質が金属(例えば、クロム含有合金鋼など)とされている。好ましくは、プラグ1Aは、後述する蒸気配管50と同一または類似の材質がよい。
【0028】
図2及び
図3に示すように、プラグ1Aは、軸線X1方向に延びた円柱形状の管台部30と、その下部(後述する蒸気配管50に臨む部分)において開先面31及びストレート面32によって形成された開先部35とを備えている。
【0029】
管台部30の外径はプラグ1Aの最大外径となり、後述する蒸気配管50に形成された貫通孔51の内径よりも大径とされ、例えばΦ50mm〜Φ130mm程度とされる。
【0030】
開先面31は、プラグ1Aの基端12から先端11に向かう方向で管台部30の外周面から軸線X1側(内側)に縮径する傾斜面とされている。開先面31は、軸線X1を中心とした周方向において円環状に形成されている。
【0031】
ストレート面32は、プラグ1Aの底面38付近にて、開先面31の先端(軸線X1側の端部)に接続された面であり、プラグ1Aの先端11から基端12に向かう方向で軸線X1方向に沿って延びている。ストレート面32は、軸線X1に対して平行又は略平行とされている。ストレート面32は、軸線X1を中心とした周方向において円環状に形成されている。ストレート面32は、軸線X1方向の長さ寸法が1mm以上5mm以下とされることが好ましい。これは、後述する円環状の開先部35を形成するために必要な寸法とされている。
【0032】
先端が開先面31に接続されているストレート面32の基端は、四半円弧状のラウンド面34を介して底面38に接続されている。
【0033】
底面38は、プラグ1Aの先端11から基端12側に窪むように形成された面であり、ラウンド面34と滑らかに接続されている。底面38の窪み量は、ストレート面32の長さ寸法及びラウンド面34の半径によって一義的に定められる。
【0034】
ラウンド面34は、例えばプラグ1Aの最大外径(すなわち、管台部30の外径)が130mm、厚さ寸法(ストレート面32からプラグ1Aの管台部30の最外周面への半径方向における肉厚)が例えば30mmのとき、半径の寸法が3mm以上10mm以下とされることが好ましい。なお、半径の下限の3mmは製作容易な寸法の範囲の最小値であり、上限の10mmは寿命(例えば24万時間)を満足する寸法の範囲の最大値である。ラウンド面34の半径は、上記寸法の範囲内で、後述する蒸気配管50に形成された貫通孔51の内径よりもストレート面32が半径方向(軸線X1方向と直交する方向)外側に位置するように決定される。
【0035】
以上のように形成された開先面31及びストレート面32によって、プラグ1Aの下部には、V字状に尖るように突出した開先部35が形成されている。開先部35は、開先面31やストレート面32と同様、軸線X1を中心とした周方向において円環状に形成されている。開先部35は、蒸気配管50への設置時において、蒸気配管50側に突出するように形成されている。これによって、蒸気配管50との溶接時における溶金の溶け込みを良好なものにすることができ、溶接されるべき部分に未溶着部の発生を抑制することができる。なお、開先部35の先端において、開先面31とストレート面32との間にルート面33を形成してもよい。
【0036】
[蒸気配管構造物について]
次に、プラグ1Aが設置された蒸気配管50の構造について
図4から
図8を用いて説明する。
図4は、蒸気配管50上のプラグ1Aを蒸気配管50の軸線方向から見た断面図である。すなわち、
図4は、蒸気配管50の円周方向が見える断面図である。
図5は、蒸気配管50上のプラグ1Aを蒸気配管50の軸線方向と直交する方向から見た断面図である。すなわち、
図5は、蒸気配管50の長手方向(軸線方向)が見える断面図である。
図6は、蒸気配管50に溶接によって接続されたプラグ1Aを蒸気配管50の軸線方向から見た断面図である。
図7は、蒸気配管50に溶接によって接続されたプラグ1Aを蒸気配管50の軸線方向と直交する方向から見た断面図である。
図8は、集中部の概念を表す参考図である。
【0037】
図4及び
図5に示すように、プラグ1Aは、蒸気ライン(
図1のL3,L5)を構成する蒸気配管50に形成された貫通孔51上に載置され、円環状の開先部35が蒸気配管50の外周面に突き合わされる(第1工程)。これにより、開先部35と蒸気配管50の外周面との間で溶接のための開先が形成される。
【0038】
蒸気配管50は、内部に高温高圧の蒸気が流通する配管とされている。蒸気配管50の肉厚は、例えば25mm〜130mmとされる。蒸気配管50には、放射線透過試験用の放射線源を挿入するための貫通孔51が形成されている。
【0039】
貫通孔51は、蒸気配管50の管壁をその厚さ方向に貫通する直管状の孔とされており、蒸気配管50の外部と内部とを連通している。
【0040】
放射線透過試験は、蒸気配管50同士の溶接接合部近傍で実施される。このため、貫通孔51は、蒸気配管50同士の溶接接合部近傍に形成されていることが好ましい。
なお、貫通孔51に挿入する放射線源によって適切に検査可能であれば、蒸気配管50同士の溶接接合部と間隔を空けて貫通孔51を形成してもよい。
【0041】
プラグ1Aは、突き合わされた開先部35と蒸気配管50の外周面との間に所定の隙間(ルート間隔)が確保されて保持される。ルート間隔は、例えば2mm〜7mmとされている。
【0042】
このとき、軸線X1方向に対して、ストレート面32が貫通孔51の内径よりも半径方向外側に位置しているので、開先部35の先端よりも半径方向内側に蒸気配管50の外周面が存在することになる(
図4及び
図5において点線の四角で囲ったB部)。開先部35の先端から貫通孔51までの蒸気配管50の外周面は、溶接開始時において開先部35の先端と蒸気配管50の外周面との隙間から流れ出る溶金の受け部分として機能する。また、開先部35を蒸気配管50の外周面に突き合わさせて溶接することで溶接開始時における溶金の溶け込みを良好なものにすることができる。これによって、溶接されるべき部分に未溶着部の発生を抑制して、不連続な溶接溶け込み形状の発生を抑制することができる。
【0043】
その後、
図6及び
図7に示すように、溶接によって開先面31と蒸気配管50の外周面との間に溶金を盛ることで溶接部60を形成してプラグ1Aと蒸気配管50とを接続する(第2工程)。これによって、貫通孔51がプラグ1Aで閉塞される。
【0044】
溶接部60を形成するにあたって、溶接止端61の位置は、管台部30の外周面の位置よりも軸線X1方向に対して半径方向外側に位置させておくことが好ましい。溶接止端61とは、溶接部60において蒸気配管50に接する部分の半径方向外側の端部である。この構成によって、
図7に示すように、蒸気配管50の管材の内部に発生している応力集中部53よりも半径方向外側に距離を置いて溶接止端61を位置させることができる。
【0045】
以下、応力集中部53について
図8を用いて説明する。
貫通孔71が形成され長手方向に延びる仮想した平板70の長辺には、引張応力σfが負荷されている。このとき、既知の通り、平板70の中心線上に作用する応力σyは、貫通孔71の長手方向近傍で最大応力σmaxが発生する(いわゆる応力集中)。なお、最大応力σmaxは、貫通孔点72に発生する引張応力σfのおよそ3倍とされる。
【0046】
蒸気配管50には内部を流通する蒸気の内圧によって貫通孔51の周方向にフープ応力が作用しており、
図8に示した応力集中の現象を蒸気配管50に適用した場合、
図7に示すように、蒸気配管50の軸線方向(長手方向)において、蒸気配管50の管材の内部かつ貫通孔51の近傍に応力集中部53が発生することになる。
【0047】
本実施形態において、溶接止端61の位置は、蒸気配管50の管材の内部に発生している応力集中部53よりも軸線X1方向に対して半径方向外側なので、応力集中部53に発生している応力の一部を管台部30で担うことができる。これにより、開先面31及びストレート面32付近の溶接部60で発生する応力集中を緩和して、溶接部60の強度確保と寿命延長をすることができる。
【0048】
[溶接始端の詳細について]
溶接部60の溶接止端61の位置は、詳細には、次のように決定されることが好ましい。
【0049】
図9に示すように、プラグ1Aの管台部30の外周面から半径方向に張り出した溶接部60の溶接脚長をLwとする。すなわち、プラグ1Aの外周面から溶接止端61までの半径方向(プラグ1Aの半径方向)に沿った距離をLwとする。
【0050】
このとき、溶接脚長Lwと応力集中部53における損傷度Dcとの関係、及び、溶接脚長Lwと溶接止端61における損傷度Dcとの関係は、
図10に示されたグラフようになる。すなわち、溶接脚長Lwが大きくなるにつれて応力集中部53における損傷度Dcが低下する。また、溶接脚長Lwが大きくなるにつれて溶接止端61、特に、蒸気配管50の円周方向の溶接止端61(
図6参照)における損傷度Dcが増加する。このため、2つの損傷度を比較して、応力集中部53及び溶接止端61の両方の損傷度が材料性能へ影響する所定の量を超え難いような溶接脚長Lwの範囲を決定することが好ましい。
ここで、損傷度Dcとは、金属組織への損傷の影響を示すものであり、機械的強度などの材料性能の低下要因の影響度を示すものとなる。
【0051】
また、
図9に示すように、溶接止端61は、滑らかな湾曲形状となるラウンド状に形成されることが好ましい。これによって、溶接止端61における応力集中を抑制できる。
【0052】
ここで、ラウンド状に形成された溶接止端61の半径をRwとする。このとき、半径Rwと応力集中部53における損傷度Dcとの関係、及び、半径Rwと溶接止端61における損傷度Dcとの関係は、
図11に示されたグラフのようになる。すなわち、半径Rwが大きくなるにつれて応力集中部53における損傷度Dc及び溶接止端61における損傷度Dcが低下する。このため、半径Rwは大きく設定することが好ましい。しかし、貫通孔51は蒸気配管50同士の接合部近傍に形成されるという性質上、貫通孔51の位置を固定した場合、半径Rwを大きく設定するほど、溶接止端61が蒸気配管50同士の接合部に接近することになる。この場合、溶接部60を形成する際の熱的な影響が蒸気配管50同士の接合部に及ぶ可能性があり好ましくない。
また、溶接止端61の位置を固定した場合、半径Rwを大きく設定するほど、貫通孔51の位置が蒸気配管50同士の溶接接合部から遠ざかることになる。この場合、蒸気配管50同士の溶接接合部から貫通孔51が離れることになり、放射線透過試験用に放射線源を貫通孔51から挿入する作業に支障が発生する可能性があり好ましくない。
以上より、溶接部60の半径Rwは、蒸気配管50同士の接合部に対して溶接時に熱的な影響を及ぼさない範囲、かつ、放射線透過試験用に放射線源を貫通孔51から挿入する作業に支障が発生しない範囲で、可能な限り大きく設定することが好ましい。例えば、溶接部60の半径Rwは、10mm〜30mmの範囲で設定することが望ましい。
【0053】
本実施形態によれは、以下の効果を奏する。
開先面31とストレート面32とによって形成された開先部35を備えている。これにより、開先部35を蒸気配管50の外周面に突き合わさせて溶接することで溶接開始時における溶金の溶け込みを良好なものにして、溶接されるべき部分に未溶着部があるような不連続な溶接溶け込み形状の発生を抑制する。これにより、負荷が印可された場合にも、応力が集中してき裂発生の起因となることを抑制することができる。
また、開先部35が蒸気配管50に突き合わされたときに、軸線X1方向に対する半径方向においてストレート面32が貫通孔51よりも外側に位置するように設定されているので、プラグ1Aを蒸気配管50に突き合わせた場合に、ストレート面32及び開先面31によって形成された円環状の開先部35の先端から貫通孔51までの距離の分だけ蒸気配管50の外周面が存在することになる。開先部35の先端から貫通孔51までの蒸気配管50の外周面は、溶接開始時において蒸気配管50へ突出した円環状の開先部35の先端と蒸気配管50の外周面との隙間から流れ出る溶金の受け部分として機能するので、溶金の溶け込みを更に良好なものにすることができるる。
このようにして溶金の溶け込みを良好にすることで、溶接されるべき部分に未溶着部が発生することを抑制でき、ひいては負荷が印可された場合に未溶着部に応力が集中して未溶着部を起点として、き裂が発生・伸展することを抑制できる。
【0054】
また、ストレート面32は、基端にラウンド面34が形成されているので、ストレート面32と底面38との接続部分における応力集中を抑制できる。
【0055】
また、プラグ1Aは、開先面31と蒸気配管50の外周面との間に溶接部60が形成されて蒸気配管50に接続されているので、溶接部60の全てを蒸気配管50の外周面上に形成することができる。これによって、溶接部60の欠陥の有無を非破壊法で検査することができるので、溶接部60の検査が容易に実施できるようになる。また、検査対象となる溶接部60の全てが蒸気配管50の外周面上に形成されるので、プラグ1Aの検査の精度が向上する。
【0056】
また、溶接部60は、溶接止端61がプラグ1Aの管台部30の外周面よりも軸線X1方向に対して半径方向外側に位置しているので、蒸気配管50の管材の内部かつ貫通孔51の近傍に発生する応力集中部53よりも半径方向外側に溶接部60の溶接止端61を位置させることができる。これによって、溶接部60が応力集中部53を覆うような形態となり、応力集中部53に発生している応力の一部を管台部30で担うことができる。これにより、溶接部60の耐力を向上させることができる。また、開先面31及びストレート面32付近の溶接部60で発生する応力集中を緩和して、溶接部60の強度確保と寿命延長をすることができる。
【0057】
[プラグ(第2実施形態)について]
次に、本開示の第2実施形態に係るプラグ1Bについて
図12から
図15を用いて説明する。
本実施形態のプラグは、第1実施形態のプラグに対して突出部が設けられている点で相違している。このため、同一の構成については同一の符号を付してその説明を省略する。
【0058】
図12には、プラグ1Bの側面図が示されている。
図13には、プラグ1Bの縦断面図が示されている。
図12及び
図13に示すように、プラグ1Bは、突出部37を備えている。
【0059】
突出部37は、底面38から軸線X1方向に沿って延びた筒状の部位とされている。突出部37の外周面は、ストレート面32と間隔を空けて対向している。突出部37の外周面は、蒸気配管50に形成された貫通孔51に嵌合するように寸法が設定されている。これによって、貫通孔51に対してプラグ1Bを設置する際に、容易に半径方向に位置決めすることができる。
なお、突出部37は、必ずしも全周が形成された筒状である必要はなく、筒状の一部分となるものでもよい。
【0060】
図14には、プラグ1Bが取り付けられ好適な蒸気配管50の断面図が示されている。
図14に示すように、蒸気配管50の貫通孔51には、段部51aが形成されている。
【0061】
段部51aは、蒸気配管50の外周面(同図の上面)側から内周面(同図の下面)側に向かって貫通孔51が縮径するように設けられている。
【0062】
図15に示すように、段部51aには、プラグ1Bに設けられた突出部37の突出端37aが軸線X1方向に当接する。これによって、貫通孔51に対してプラグ1Bを設置する際に、貫通孔51に対してプラグ1Bを容易に軸線X1方向に位置決めすることができる。
【0063】
本実施形態によれば、以下の効果を奏する。
突出部37を備えているので、プラグ1Bを設置する際に、貫通孔51に突出部37を嵌合することで貫通孔51に対してプラグ1Bを容易に半径方向に位置決めすることができる。
【0064】
また、貫通孔51には段部51aが形成されているので、突出部37を貫通孔51に嵌合させるとき、貫通孔51に対してプラグ1Bを容易に軸線X1方向に位置決めすることができる。これによって、プラグ1Bに形成された開先部35と蒸気配管50の外周面との隙間(ルート間隔)を適切に保つことができる。
【0065】
[プラグ(第3実施形態)について]
次に、本開示の第3実施形態に係るプラグ1Cについて
図16及び
図17を用いて説明する。
本実施形態のプラグは、第2実施形態の突出部に対して鍔が形成されている点で相違している。このため、同一の構成については同一の符号を付してその説明を省略する。
【0066】
図16には、プラグ1Cの縦断面図が示されている。
図16に示すように、プラグ1Cの突出部37には鍔37bが形成されている。
【0067】
鍔37bは、突出部37の外周面から半径方向に張り出した部分とされている。鍔37bは、軸線X1の全周方向に形成されてもよいし、一部の周方向にのみ形成されてもよい。ただし、鍔37bは、ストレート面32に到達しないように、かつ、貫通孔51の内径よりも大径となるように形成されている。
【0068】
図17に示すように、プラグ1Cの鍔37bは、貫通孔51の周囲(蒸気配管50の外周面)に当接する。これによって、プラグ1Cを設置する際に、貫通孔51に対してプラグ1Cを容易に軸線X1方向に位置決めすることができる。
【0069】
本実施形態によれば、以下の効果を奏する。
鍔37bを備えているので、プラグ1Cを設置する際に、突出部37を貫通孔51に嵌合させるとき、第2実施形態のような段部51aを蒸気配管50に設けることなく貫通孔51に対してプラグ1Cを容易に軸線X1方向に位置決めすることができる。これによって、プラグ1Cに形成された開先部35と蒸気配管50の外周面との隙間(ルート間隔)を適切に保つことができる。
【0070】
なお、各実施形態において、
図3に示すように、プラグ1に穴部36を形成してもよい。穴部36は、基端12側の面から軸線X1に沿って底面38に到達しない深さで穿設された穴である。穴部36は、プラグ1の剛性を低下させる。これによって、開先部35の溶接時にプラグ1の先端11側に発生する引っ張り応力の集中を緩和することができる。このため、プラグ1の先端11側にき裂が発生することを抑制できる。
【0071】
以上の通り説明した各実施形態は、例えば以下のように把握される。
すなわち、本開示の一態様に係るプラグ(1)は、蒸気配管(50)に形成された貫通孔(51)を前記蒸気配管(50)の外周面側から閉塞するプラグ(1)であって、軸線(X1)方向に延びる柱状に形成された管台部(30)と、基端(12)側から先端(11)側に向かう方向で前記軸線(X1)方向に直交する半径方向の外周側から縮経する開先面(31)と、該開先面(31)の端部から、前記先端(11)側から前記基端(12)側に向かって前記軸線(X1)方向に沿って延びるストレート面(32)と、前記開先面(31)と前記ストレート面(32)によって前記管台部(30)から突出するように形成された開先部(35)と、を備えている。
【0072】
本態様に係るプラグ(1)によれば、基端(12)側から先端(11)側に向かう方向で軸線(X1)方向に直交する半径方向の外周側から縮経する開先面(31)と、開先面(31)の端部から、先端(11)側から基端(12)側に向かって軸線(X1)方向に沿って延びるストレート面(32)によって管台部(30)から突出した開先部(35)を形成することができる。これにより、形成された開先部(35)を蒸気配管(50)の外周面に突き合わせて溶接することで溶接開始時における溶金の溶け込みを良好なものにすることができる。また、プラグ(1)の管台部(30)に形成された環状のストレート面(32)の内径よりも貫通孔(51)が小径であれば、開先部(35)を蒸気配管に突き合わせた場合、ストレート面(32)及び開先面(31)によって形成された開先部(35)の先端から貫通孔(51)までの距離の分だけ蒸気配管(50)の外周面が存在することになる。これにより、突出した開先部(50)の先端から貫通孔(51)までの蒸気配管(50)の外周面は、溶接開始時において開先部(35)の先端と蒸気配管(50)の外周面との間から流れ出る溶金の受け部分として機能するので、溶金の溶け込みを更に良好なものにして、未溶着部の発生を抑制することができる。
このようにして溶金の溶け込みを良好にすることで、溶接されるべき部分に未溶着部があるような不連続な溶接溶け込み形状の発生を抑制する。これにより、負荷が印可された場合にも、応力が集中してき裂発生の起因となることを抑制することができる。
【0073】
また、本開示の一態様に係るプラグ(1)において、前記開先部(35)には、前記蒸気配管(50)の外周面との間で溶接部(60)が形成される。
【0074】
本態様に係るプラグによれば、開先部(35)には、蒸気配管(50)の外周面との間で溶接部(60)が形成されるので、開先部(35)と蒸気配管(50)の外周面とを溶接して接続することができる。
【0075】
また、本開示の一態様に係るプラグ(1)において、前記ストレート面(32)は、前記開先部(35)が前記蒸気配管(50)の外周面に突き合わされたとき前記半径方向において前記貫通孔(51)よりも外側に位置している。
【0076】
本態様に係るプラグ(1)によれば、ストレート面(32)は、開先部(35)が蒸気配管(50)に突き合わされたとき半径方向において貫通孔(51)よりも外側に位置しているので、開先部(35)を蒸気配管に突き合わせた場合、ストレート面(32)及び開先面(31)によって形成された開先部(35)の先端から貫通孔(51)までの距離の分だけ蒸気配管(50)の外周面が存在することになる。開先部(35)の先端から貫通孔(51)までの蒸気配管(50)の外周面は、溶接開始時において開先部(35)の先端と蒸気配管(50)の外周面との間から流れ出る溶金の受け部分として機能するので、溶金の溶け込みを更に良好なものにすることができて、溶接されるべき部分に未溶着部があるような不連続な溶接溶け込み形状が発生することを抑制できる。
【0077】
また、本開示の一態様に係るプラグ(1)は、前記管台部(30)の前記基端(12)側の面から軸線(X1)方向に沿って穿設された穴部(36)を備えている。
【0078】
本態様に係るプラグ(1)によれば、柱状の管台部(30)の基端(12)側の面から軸線(X1)方向に沿って穿設された穴部(36)を備えているので、溶接時にプラグ(1)の先端(11)側に発生する引っ張り応力の集中を緩和することができる。これによって、プラグ(1)の先端(11)側にき裂が発生することを抑制できる。
【0079】
また、本開示の一態様に係るプラグ(1B,1C)は、前記ストレート面(32)との間に隙間を空けて対向するとともに前記軸線(X1)方向に沿って延びて前記貫通孔(51)に嵌合可能な外周面が形成された筒状または筒状の一部を形成する突出部(37)を備えている。
【0080】
本態様に係るプラグ(1B,1C)によれば、ストレート面(32)との間に隙間を空けて対向するとともに軸線(X1)方向に沿って延びて貫通孔(51)に嵌合可能な外周面が形成された筒状または筒状の一部を形成する突出部(37)を備えているので、プラグ(1B,1C)を設置する際に、貫通孔(51)に突出部(37)を嵌合することで貫通孔(51)に対してプラグ(1B,1C)を半径方向に位置決めすることができる。
【0081】
また、本開示の一態様に係るプラグ(1C)において、前記突出部(37)には、前記半径方向に張り出した鍔(37b)が形成され、前記鍔(37b)は、前記半径方向で前記貫通孔(51)よりも外側に位置する。
【0082】
本態様に係るプラグ(1C)によれば、突出部(37)には、半径方向に張り出した鍔(37b)が形成され、前記鍔(37b)は、前記半径方向で前記貫通孔(51)よりも外側に位置するので、突出部(37)を貫通孔(51)に嵌合させるとき、鍔(37b)を貫通孔(51)周囲の蒸気配管に当接させることができる。これによって、プラグ(1C)を設置する際に、貫通孔(51)に対してプラグ(1C)を軸線方向に位置決めすることができ、形成された開先部(35)と蒸気配管の外周面との隙間(ルート間隔)を適切に保つことができる。
【0083】
また、本開示の一態様に係るプラグ(1)において、前記ストレート面(32)は、前記基端(12)側の端部にラウンド面(34)が形成されている。
【0084】
本態様に係るプラグ(1)によれば、ストレート面(32)は、基端(12)側の端部にラウンド面(34)が形成されているので、ストレート面(32)の基端(12)側の端部における応力集中を抑制できる。
【0085】
また、本開示の一態様に係る蒸気配管構造物は、貫通孔(51)が形成された蒸気配管(50)と、上記のプラグ(1)とを備え、前記プラグ(1)は、前記開先部(35)が前記蒸気配管(50)の外周面に突き合わされ、前記開先部(35)の前記開先面(312)と前記蒸気配管(50)の外周面との間に溶接部(60)が形成されて前記蒸気配管(50)に接続されている。
【0086】
本態様に係る蒸気配管構造物によれば、プラグ(1)は、開先部(35)が蒸気配管(50)の外周面に突き合わされ、開先部(35)の開先面(31)と蒸気配管(50)の外周面との間に溶接部(60)が形成されて蒸気配管(50)に接続されているので、溶接部(60)の全てを蒸気配管(50)の外周面上に形成することができる。これによって、溶接部(60)の欠陥の有無を非破壊法で検査することができるので、溶接部(60)の検査が容易に実施できるようになる。また、検査対象となる溶接部(60)の全てが蒸気配管(50)の外周面上に形成されるので検査の精度が向上する。
【0087】
また、本開示の一態様に係る蒸気配管構造物は、貫通孔(51)が形成された蒸気配管(50)と、上記のプラグ(1B,1C)とを備え、前記貫通孔(51)には、前記突出部(37)の突出端(37a)が前記軸線(X1)方向に当接する段部(51a)が形成され、前記プラグ(1B,1C)は、前記突出部(37)が前記貫通孔(51)に挿入され、前記開先部(35)が前記蒸気配管(50)に突き合わされ、前記開先部(35)の前記開先面(31)と前記蒸気配管(50)の外周面との間に溶接部(60)が形成されて前記蒸気配管(50)に接続されている。
【0088】
本態様に係る蒸気配管構造物によれば、貫通孔(51)には、突出部(37)の突出端(37a)が軸線(X1)方向に当接する段部(51a)が形成され、プラグ(1B,1C)は、突出部(37)が貫通孔(51)に挿入され、開先部(35)が蒸気配管(50)に突き合わされ、開先部(35)の開先面(31)と蒸気配管(50)の外周面との間に溶接部(60)が形成されて蒸気配管(60)に接続されているので、突出部(37)を貫通孔(51)に嵌合させるとき、貫通孔(51)に対してプラグ(1B,1C)を軸線(X1)方向に位置決めすることができる。これによって、プラグ(1B,1C)を設置する際に、形成された開先部(35)と蒸気配管(50)の外周面との隙間(ルート間隔)を適切に保つことができる。
【0089】
また、本開示の一態様に係る蒸気配管構造物において、前記溶接部(60)は、前記蒸気配管(50)に接する部分の前記半径方向の外側の端部(61)が前記管台部(30)の外周面の位置よりも前記半径方向の外側に位置している。
【0090】
本態様に係る蒸気配管構造物によれば、溶接部(60)は、蒸気配管(50)に接する部分の半径方向の外側の端部(61)が管台部(30)の外周面の位置よりも半径方向の外側に位置しているので、蒸気配管(50)の管材の内部かつ貫通孔(51)の近傍に発生する応力集中部(53)よりも半径方向の外側に溶接部(60)の端部(61)を位置させることができる。これによって、応力集中部(53)に発生している応力の一部を管台部(30)で担うことができる。このため、蒸気配管(50)の耐力を向上させることができる。また、溶接部(60)で発生する応力集中を緩和して、溶接部(60)の強度確保と寿命延長をすることができる。なお、ここでいう「応力集中部」とは、蒸気配管(50)に作用するフープ応力(蒸気配管(50)の貫通孔(51)周囲に発生し、蒸気配管(50)の内部を流通する蒸気の圧力に起因する応力)によって貫通孔(51)の近傍に発生する応力のピーク部分及びその付近をいう。
【0091】
また、本開示の一態様に係る蒸気配管構造物において、前記溶接部(60)の前記端部(61)の位置は、応力集中部(53)の損傷度と、前記溶接部(60)の前記端部(61)の損傷度と、を比較して決定されている。
【0092】
本態様に係る蒸気配管構造物によれば、溶接部(60)の端部(61)の位置は、応力集中部(53)の損傷度と、溶接部(60)の端部(61)の損傷度と、を比較して決定されているので、応力集中部(53)及び溶接部(60)の端部(61)の両者が損傷し難い位置に溶接部(60)の端部(61)を設定できる。
【0093】
また、本開示の一態様に係る蒸気配管構造物において、前記溶接部(60)の前記端部(61)は、前記蒸気配管(50)の外周面に対して凹状に湾曲したラウンド状に形成されている。
【0094】
本態様に係る蒸気配管構造物によれば、溶接部(60)の端部(61)は、蒸気配管(50)の外周面に対して凹状に湾曲するラウンド状に形成されているので、溶接部(60)の端部(61)に応力が集中することを抑制できる。これによって、蒸気配管(50)の応力集中部(53)に発生している応力の一部を管台部(30)で担ったとしても、その応力によって溶接部(60)が損傷することを抑制できる。
【0095】
また、本開示の一態様に係るプラグ(1)の設置方法は、蒸気配管(50)に形成された貫通孔(51)を前記蒸気配管(51)の外周面側から閉塞するプラグ(1)であって、軸線(X1)方向に延びる柱状に形成された管台部(30)と、基端(12)側から先端(11)側に向かう方向で前記軸線(X1)方向に直交する半径方向の外周側から縮経する開先面(31)と、該開先面(31)の端部から、前記先端(11)側から前記基端(12)側に向かって前記軸線(X1)方向に沿って延びるストレート面(32)と、前記開先面(31)と前記ストレート面(32)によって前記管台部(30)から突出するように形成された開先部(35)と、を備えているプラグ(1)の設置方法であって、前記蒸気配管(50)に前記開先部(35)を突き合わせる第1工程と、前記開先面(31)と前記蒸気配管(50)の外周面との間を溶接して溶接部(60)を形成する第2工程と、を含む。