(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
二軸延伸ポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルムの片面の上に、シランカップリング剤を含む塗料からなるアンカーコート、及び接着性樹脂組成物からなる層を、この順に有する積層体を含むフレキシブルフラットケーブルであって、
前記接着性樹脂組成物が、
(A)酸変性ポリプロピレン系樹脂 20〜70質量%;
(B)ポリプロピレン系樹脂 20〜60質量%;及び
(C)エチレンと酢酸ビニル、メタクリル酸アルキル、及びアクリル酸アルキルからなる群から選択される1種以上のコモノマーとの共重合体 2〜25質量%;を含み、
ここで上記成分(A)、上記成分(B)及び上記成分(C)の和は100質量%であり、
前記成分(C)は、JIS K 7210:1999に準拠して190℃、21.18Nの条件で測定したメルトマスフローレートが1g/10分以上、30g/10分以下である、フレキシブルフラットケーブル。
【発明を実施するための形態】
【0018】
1.接着性樹脂組成物:
本発明の接着性樹脂組成物は、(A)酸変性ポリプロピレン系樹脂、(B)ポリプロピレン系樹脂、及び(C)エチレン酢酸ビニル共重合体を含む。好ましくは更に(D)難燃剤を含む。
【0019】
(A)酸変性ポリプロピレン系樹脂:
上記成分(A)は、本発明の接着性樹脂組成物を、長期間高温多湿の環境に曝されても導体との接着性を保持することができるものにする働きをする。
【0020】
上記成分(A)は、不飽和カルボン酸や不飽和カルボン酸誘導体がグラフト(以下、「酸変性」ということがある。)されているポリプロピレン系樹脂であり、酸変性されているという点で、上記成分(B)とは明確に区別される。
【0021】
上記成分(A)の酸変性量(グラフトされている不飽和カルボン酸や不飽和カルボン酸誘導体に由来する構造単位の量)は、グラフトされている不飽和カルボン酸や不飽和カルボン酸誘導体の種類にもよるが、例えば、無水マレイン酸の場合には、接着性の観点から、好ましくは1モル%以上、より好ましくは2モル%以上である。一方、製膜性の観点から、好ましくは10モル%以下、より好ましくは5モル%以下である。
【0022】
上記成分(A)のJIS K 7210:1999に準拠し、190℃、21.18Nの条件で測定したメルトマスフローレート(以下、MFR−Aと略すことがある。)は、接着性の観点から、好ましくは1g/10分以上、より好ましくは5g/10分以上、更に好ましくは20g/10分以上である。一方、製膜性の観点から、好ましくは500g/10分以下、より好ましくは200g/10分以下、更に好ましくは100g/10分以下である。
【0023】
上記成分(A)の融点は、より高い定格温度の規格に架橋工程なしで適合させる観点から、好ましくは135℃以上、より好ましくは150℃以上、更に好ましくは160℃以上である。融点の上限は、特になく、高いほど好ましいが、酸変性ポリプロピレン系樹脂であるから、通常入手可能なのは、高くてもせいぜい168℃程度であろう。
【0024】
本明細書において、融点は、株式会社パーキンエルマージャパンのDiamond DSC型示差走査熱量計を使用し、230℃で5分間保持し、10℃/分で−10℃まで冷却し、−10℃で5分間保持し、10℃/分で230℃まで昇温するプログラムで測定されるセカンド融解曲線(最後の昇温過程で測定される融解曲線)において、最も高い温度側のピークトップ融点である。
【0025】
上記成分(A)の配合量は、上記成分(A)、上記成分(B)、及び上記成分(C)の和を100質量%として、接着性と製膜性の観点から、20〜70質量%、好ましくは32〜45質量%である。
【0026】
上記成分(A)を生産する方法は、特に制限されないが、例えば、(p)ポリプロピレン系樹脂 100質量部;(q)不飽和カルボン酸、及び不飽和カルボン酸誘導体からなる群から選択される1種以上 0.05〜5質量部;及び(r)有機過酸化物 0.05〜5質量部;を含む樹脂組成物を、溶融混練し、上記成分(p)に上記成分(q)をグラフトさせることにより、生産することができる。上記溶融混練は、成分(q)及び成分(r)が完全に反応し、生産される成分(A)中に未反応のまま残存しないようにする観点から、好ましくは成分(r)の1分半減期温度以上の温度で1分間以上、より好ましくは成分(r)の1分半減期温度以上の温度で2分間以上行う。
【0027】
上記ポリプロピレン系樹脂としては、例えば、プロピレン単独重合体;プロピレンと他の少量のα−オレフィン(例えば、エチレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、及び4−メチル−1−ペンテン等)との共重合体(ブロック共重合体、及びランダム共重合体を含む。);などをあげることができる。上記成分(p)の融点は、より高い定格温度の規格に架橋工程なしで適合させる観点から、好ましくは135℃、より好ましくは150℃以上、更に好ましくは160℃以上である。融点の上限は、特になく、高いほど好ましいが、ポリプロピレン系樹脂であるから、通常入手可能なのは、高くてもせいぜい167℃程度であろう。融点の定義及び測定方法は上述した。このようなポリプロピレン系樹脂としては、例えば、高立体規則性(アイソタクチックペンタッド分率が、通常96モル%以上、好ましくは98モル%以上。)のプロピレン単独重合体をあげることができる。上記成分(p)としては、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
【0028】
上記不飽和カルボン酸としては、例えば、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸、アクリル酸、及びメタクリル酸などをあげることができる。上記不飽和カルボン酸の誘導体としては、マレイン酸モノエステル、マレイン酸ジエステル、無水マレイン酸、イタコン酸モノエステル、イタコン酸ジエステル、無水イタコン酸、フマル酸モノエステル、フマル酸ジエステル、無水フマル酸、アクリル酸メチル等のアクリル酸アルキル、及びメタクリル酸メチル等のメタクリル酸アルキルなどをあげることができる。上記成分(q)としては、接着性の観点から、無水マレイン酸が好ましい。上記成分(q)としては、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
【0029】
上記成分(q)の配合量は、上記(p)ポリプロピレン系樹脂100質量部に対して、接着性の観点から、0.05質量部以上、好ましくは0.2質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上である。また酸変性時に成分(q)が生産される上記成分(A)中に未反応のまま残存しないようにする観点から、5質量部以下、好ましくは4質量部以下、より好ましくは3質量部以下である。
【0030】
上記有機過酸化物としては、例えば、ジクミルパーオキサイド、ジ−tert−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、1,3−ビス(tert−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、1,1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、n−ブチル−4,4−ビス(tert−ブチルパーオキシ)バレレート、ベンゾイルパーオキサイド、p−クロロベンゾイルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシベンゾエート、tert−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、ジアセチルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、tert−ブチルクミルパーオキサイドなどをあげることができる。上記成分(r)としては、接着性の観点から、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(tert−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3が好ましい。上記成分(r)としては、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
【0031】
上記成分(r)の配合量は、上記(p)ポリプロピレン系樹脂100質量部に対して、接着性の観点から、0.05質量部以上、好ましくは0.2質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上である。また酸変性時の溶融粘度低下を制御する観点から、5質量部以下、好ましくは4質量部以下、より好ましくは3質量部以下である。
【0032】
(B)ポリプロピレン系樹脂:
上記成分(B)は、本発明の接着性樹脂組成物の製膜性を良好にする働きをする。
【0033】
上記成分(B)の配合量は、上記成分(A)、上記成分(B)、及び上記成分(C)の和を100質量%として、接着性と製膜性の観点から、20〜60質量%、好ましくは45〜58質量%である。
【0034】
上記成分(B)としては、例えば、プロピレン単独重合体;プロピレンと他の少量のα−オレフィン(例えば、エチレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、及び4−メチル−1−ペンテン等)との共重合体(ブロック共重合体、及びランダム共重合体を含む。);などをあげることができる。上記成分(B)としては、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
【0035】
上記成分(B)のJIS K 7210:1999に準拠し、230℃、21.18Nの条件で測定したメルトマスフローレート(以下、MFR−Bと略すことがある。)は、製膜性の観点から、好ましくは5g/10分以上、より好ましくは10g/10分以上である。一方、溶融粘度低下を制御する観点から、好ましくは30g/10分以下、より好ましくは20g/10分以下である。
【0036】
上記成分(B)の融点は、より高い定格温度の規格に架橋工程なしで適合させる観点から、好ましくは135℃以上、より好ましくは150℃以上、更に好ましくは160℃以上である。融点の上限は、特になく、高いほど好ましいが、ポリプロピレン系樹脂であるから、通常入手可能なのは、高くてもせいぜい167℃程度であろう。融点の定義及び測定方法については上述した。
【0037】
(C)エチレンと酢酸ビニル、メタクリル酸アルキル、及びアクリル酸アルキルからなる群から選択される1種以上のコモノマーとの共重合体:
上記成分(C)は、エチレンと酢酸ビニル;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、及びメタクリル酸ブチルなどのメタクリル酸アルキル;及びアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、及びアクリル酸ブチルなどのアクリル酸アルキル;からなる群から選択される1種以上のコモノマーとの共重合体である。
【0038】
上記成分(C)は、本発明の接着性樹脂組成物を、長期間高温多湿の環境に曝されても導体との接着性を保持することができるものにするとともに、上記成分(D)難燃剤を包含する働きをする。また上記コモノマーは、−COO構造を有しており、燃焼時に脱カルボキシル反応(脱炭酸反応)を起こして難燃性を補助する働きもする。
【0039】
これらの中で、接着性の観点から、エチレンと酢酸ビニルとの共重合体が好ましい。上記成分(C)としては、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
【0040】
上記成分(C)の配合量は、上記成分(A)、上記成分(B)、及び上記成分(C)の和を100質量%として、上記成分(D)の包含性の観点から、2質量%以上、好ましくは5質量%以上、より好ましくは7質量%以上である。一方、より高い定格温度の規格に架橋工程なしで適合させる観点から、25質量%以下、好ましくは16質量%以下、より好ましくは12質量%以下である。
【0041】
上記成分(C)の上記コモノマーに由来する構造単位の含量(以下、「コモノマー含量」と略すことがある。)は、導体接着性の観点から、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、更に好ましくは25質量%以上である。一方、耐熱性の観点から、好ましくは85質量%以下である。
【0042】
上記成分(C)のJIS K 7210:1999に準拠し、190℃、21.18Nの条件で測定したメルトマスフローレート(以下、MFR−Cと略すことがある。)は、製膜性の観点から、好ましくは0.1g/10分以上、より好ましくは1g/10分以上である。より低いラミネート温度で導体密着強度を得る観点から、更に好ましくは3g/10分以上、最も好ましくは5g/10分以上である。一方、溶融粘度低下を制御する観点から、好ましくは30g/10分以下、より好ましくは20g/10分以下である。
【0043】
(D)難燃剤:
本発明の接着性樹脂組成物をフレキシブルフラットケーブルなどの難燃性が要求される用途に用いる場合には、上記成分(D)を更に含ませることが好ましい。
【0044】
上記成分(D)としては、特に制限されず、任意の難燃剤を、好ましくはポリオレフィン系樹脂及びその樹脂組成物に通常用いられる難燃剤を用いることができる。
【0045】
上記成分(D)としては、例えば、アンチモン系難燃剤、ハロゲン系難燃剤、金属水酸化物、亜鉛系難燃剤、燐系難燃剤、及び含窒素化合物系難燃剤などをあげることができる。
【0046】
上記アンチモン系難燃剤としては、例えば、三酸化二アンチモン、五酸化二アンチモン、三塩化アンチモン、硼酸アンチモン、及びモリブテン酸アンチモンなどをあげることができる。
【0047】
上記ハロゲン系難燃剤としては、例えば、1、2−ビス(ペンタブロモフェニル)エタン、ペンタブロモジフェニルエーテル、オクタブロモジフェニルエーテル、デカブロモジフェニルエーテル、テトラブロモビスフェノールA、ヘキサブロモシクロドデカン、ビス(テトラブロモフタルイミド)エタン、ポリ(ジブロモプロピルエーテル)、テトラブロモビスフェノールAカーボネートオリゴマー、テトラブロモビスフェノールエポキシオリゴマー、テトラブロモビスフェノールA−ビス(ジブロモプロピルエーテル)、臭素化ポリスチレン、及びヘキサブロモベンゼンなどの臭素系難燃剤;塩素化パラフィン、塩素化ポリフェニル、及びパークロルペンタシクロデカンなどの塩素系難燃剤;などをあげることができる。
【0048】
上記金属水酸化物としては、例えば、水酸化アルミニウム、及び水酸化マグネシウムなどをあげることができる。
【0049】
上記亜鉛系難燃剤としては、例えば、錫酸亜鉛、及び硼酸亜鉛などをあげることができる。
【0050】
上記燐系難燃剤としては、例えば、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリブトキシエチルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリネオペンチルホスフェート、トリ(2−エチルヘキシル)ホスフェート、トリ(ブチル化フェニル)ホスフェート、トリ(イソプロピル化フェニル)ホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、t-ブチルジフェニルホスフェートなどの有機燐酸エステル系難燃剤;1種又は2種以上の有機燐酸エステルの2分子又は3分子以上が縮合した化合物を主成分とする縮合有機燐酸エステル系難燃剤;有機燐酸エステル又は縮合有機燐酸エステルの1つ又は2つ以上の水素原子が臭素原子に置換された化合物、例えばトリス(トリブロモネオペンチル)ホスフェートなどの臭素化有機燐酸エステル系難燃剤;有機燐酸エステル又は縮合有機燐酸エステルの1つ又は2つ以上の水素原子が塩素原子に置換された化合物、例えばトリス(2,3−ジクロロプロピル)ホスフェートなどの塩素化有機燐酸エステル系難燃剤;ポリ燐酸アンモニウム系難燃剤;及び赤燐などの無機燐系難燃剤;などをあげることができる。
【0051】
上記含窒素化合物系難燃剤としては、例えば、メラミンシアヌレート、トリス(2−ビドロシキエチル)イソシアヌレート、及びトリス(2,3−エポキシプロピル)イソシアヌレートなどのシアヌレート系難燃剤;トリアジン系難燃剤;及びグアニジン系難燃剤などをあげることができる。
【0052】
上記成分(D)としては、これらの1種以上を用いることができる。
【0053】
上記成分(D)の配合量は、上記成分(A)、上記成分(B)、及び上記成分(C)の和を100質量部として、難燃性の観点から、通常10質量部以上、好ましくは30質量部以上である。また柔軟性、耐折曲性の観点から、通常300質量部以下、好ましくは250質量部以下である。
【0054】
本発明の接着性樹脂組成物には、本発明の目的に反しない限度において、所望により、上記成分(A)〜(D)以外の成分、例えば、上記成分(A)〜(C)以外の熱可塑性樹脂;顔料、無機フィラー、有機フィラー、樹脂フィラー;滑剤、酸化防止剤、耐候性安定剤、熱安定剤、離型剤、帯電防止剤、及び界面活性剤等の添加剤;などを更に含ませることができる。
【0055】
本発明の接着性樹脂組成物は、上記成分(A)〜(C)、及び上記成分(D)などの所望により用いる任意成分を、任意の溶融混練機を用いて溶融混練することにより得られる。上記溶融混練機としては、加圧ニーダーやミキサーなどのバッチ混練機;一軸押出機、同方向回転二軸押出機、及び異方向回転二軸押出機等の押出混練機;カレンダーロール混練機;などをあげることができる。これらを任意に組み合わせて使用してもよい。得られた接着性樹脂組成物は、任意の方法でペレット化することができる。上記ペレット化はホットカット、ストランドカット、及びアンダーウォーターカットなどの方法により行うことができる。
【0056】
2.積層体:
本発明の積層体は、本発明の接着性樹脂組成物からなる層を、少なくとも1層以上含む。好ましくは、二軸延伸ポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルムの片面の上に、シランカップリング剤を含む塗料からなるアンカーコート層、及び本発明の接着性樹脂組成物からなる層をこの順に有する。
【0057】
本発明の積層体は、例えば、任意の樹脂フィルムの片面の上に、直接、又はアンカーコート層などを介して、本発明の接着性樹脂組成物からなる層を形成することにより得ることができる。
【0058】
本発明の積層体は、例えば、任意の樹脂フィルムの原料樹脂と本発明の接着性樹脂組成物とを任意の共押出装置を使用して共押出する方法;各々のフィルムを任意の製膜装置を使用して得た後、両者をドライラミネート又は熱ラミネートする方法;及び、任意の樹脂フィルムを基材として、本発明の接着性樹脂組成物を溶融押出する押出ラミネート法;などにより得ることができる。
【0059】
上記樹脂フィルムとしては、例えば、ポリ塩化ビニル、及び塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体などのポリ塩化ビニル系樹脂;芳香族ポリエステル、及び脂肪族ポリエステルなどのポリエステル系樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン、及びポリメチルペンテンなどのポリオレフィン系樹脂;ポリスチレン、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合樹脂(ABS樹脂)、スチレン・エチレン・ブタジエン・スチレン共重合体、スチレン・エチレン・プロピレン・スチレン共重合体、及びスチレン・エチレン・エチレン・プロピレン・スチレン共重合体などのスチレン系樹脂;ポリ(メタ)アクリル酸メチルなどのアクリル系樹脂;ポリカーボネート系樹脂;セロファン、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、及びアセチルセルロースブチレートなどのセルロース系樹脂;ポリ塩化ビニリデン系樹脂;ポリフッ化ビニリデンなどの含弗素系樹脂;その他、ポリビニルアルコール、エチレンビニルアルコール、ポリエーテルエーテルケトン、ナイロン、ポリアミド、ポリイミド、ポリウレタン、ポリエーテルイミド、ポリスルフォン、及びポリエーテルスルフォン;などの樹脂、及びこれらの1種又は2種以上の樹脂混合物、並びにこれらの樹脂組成物のフィルムをあげることができる。これらのフィルムは、無延伸フィルム、一軸延伸フィルム、及び、二軸延伸フィルムを包含する。更にこれらのフィルムは、これらのフィルムの1種以上を2層以上積層した積層フィルムを包含する。
【0060】
上記樹脂フィルムとしては、これらの中で耐熱性の高いもの、例えば、二軸延伸ポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルム、二軸延伸ポリエチレンナフタレート系樹脂フィルム、二軸延伸ポリプロピレン系樹脂フィルム、ポリフェニレンサルファイド系樹脂フィルム、ポリイミド系樹脂フィルム、アミド系樹脂フィルム、及びポリエーテルスルフォン系樹脂フィルムが好ましい。
【0061】
上記アンカーコート層の形成用塗料としては、例えば、例えば、ポリエステル、アクリル、ポリウレタン、アクリルウレタン、及びポリエステルウレタンなどの公知のものを用いることができる。またシランカップリング剤を含む塗料を用いることもできる。
【0062】
上記シランカップリング剤を含む塗料は、シランカップリング剤を主として(固形分として通常50質量%以上、好ましくは75質量%以上、より好ましくは90質量%以上)含む塗料である。
【0063】
上記シランカップリング剤は、加水分解性基(例えば、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基;アセトキシ基等のアシルオキシ基;クロロ基等のハロゲン基;など)、及び有機官能基(例えば、アミノ基、ビニル基、エポキシ基、メタクリロキシ基、アクリロキシ基、イソシアネート基など)の少なくとも2種類の異なる反応性基を有するシラン化合物である。これらの中で、本発明の接着性樹脂組成物からなる層との接着強度向上の観点から、アミノ基を有するシランカップリング剤、及びエポキシ基を有するシランカップリング剤が好ましい。
【0064】
アミノ基を有するシランカップリング剤としては、例えば、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、及びN−(ビニルベンジル)−2−アミノエチル−3−アミノプロピルトリメトキシシランなどをあげることができる。アミノ基を有するシランカップリング剤としては、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
【0065】
エポキシ基を有するシランカップリング剤としては、例えば、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、及び3−グリシドキシプロピルトリエトキシシランなどをあげることができる。エポキシ基を有するシランカップリング剤としては、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
【0066】
上記アンカーコート層形成用塗料を用いてアンカーコートを形成する方法は、制限されず、公知のウェブ塗布方法を使用することができる。具体的には、ロールコート、グラビアコート、リバースコート、ロールブラッシュ、スプレーコート、エアナイフコート、及びダイコートなどの方法があげられる。このとき、必要に応じて任意の希釈溶剤、例えば、メタノール、エタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、酢酸nブチル、トルエン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、及びアセトンなどを使用することができる。
【0067】
また上記アンカーコート層形成用塗料には、本発明の目的に反しない限度において、酸化防止剤、耐候性安定剤、耐光性安定剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、帯電防止剤、界面活性剤、着色剤、赤外線遮蔽剤、レベリング剤、チクソ性付与剤、及びフィラー等の添加剤を1種、又は2種以上含ませてもよい。
【0068】
アンカーコート層の乾燥厚みは、通常0.01〜5μm程度、好ましくは0.03〜1μmである。
【0069】
3.フレキシブルフラットケーブル:
本発明のフレキシブルフラットケーブルは、本発明の接着性樹脂組成物や、本発明の積層体を含む。
【0070】
本発明のフレキシブルフラットケーブルは、例えば、二軸延伸ポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルムの片面の上に、シランカップリング剤を含む塗料からなるアンカーコート層、及び本発明の接着性樹脂組成物からなる層を、この順に有する本発明の積層体を2ロール用い、幅0.6〜1.7mm、厚み0.035〜2mm程度の軟銅線、錫メッキ軟銅線、及びニッケルメッキ軟銅線などの導体を1〜30本程度配列させたものを、一方の上記積層体の接着性樹脂組成物層と他方の上記積層体の接着性樹脂組成物層とで挟持し、温度130〜200℃に予熱された押圧ロールと温度130〜200℃に予熱された受けロールとで、押圧することにより得ることができる。
【実施例】
【0071】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0072】
測定方法
(イ)製膜性:
700mm幅Tダイ、押出機、及びニップ方式の引巻取り装置を備える製膜装置を使用し、ダイ出口樹脂温度210℃の条件で厚さ50μmのフィルムを製膜した。得られたフィルムの幅方向の中央、中央から右50mm、中央から右100mm、中央から左50mm、中央から左100mmの5ヶ所について、マシン方向に50m枚に5ヶ所の計25か所の厚みを測定し、以下の基準で評価した。なお製膜できなかったものについては、以下の評価を省略した。
◎:厚みのばらつきは±5%以下である。
○:厚みのばらつきは±5%以上を超えるが、±10%以下である。
△:厚みのばらつきは±10%を超える。
×:製膜できなかった。
【0073】
(ロ)接着力1(導体接着力):
積層体からそのマシン方向が長さ方向となるように幅50mm、長さ150mmの試験片を切り出し、その接着性樹脂組成物層の上に、導体幅0.7mm、厚み0.035mmの錫メッキ軟銅線を、該銅線の長さ方向と上記試験片の長さ方向とが一致するように置き、プレス装置を使用し、何れも温度190℃に予熱された金属板とシリコンゴムシートとで、これを上記銅線側が上記シリコンゴムシート側となるように挟み、圧力0.3MPa、時間8秒の条件で押圧した。上記で得たサンプルの上記試験片と上記銅線との接着強度を、試験速度100mm/分の条件で180度剥離を行い測定した。
【0074】
(ハ)接着力2(湿熱後の導体接着力):
上記試験(ロ)と同様にして得たサンプルを温度85℃、相対湿度85%に設定した恒温恒湿槽中において、1000時間処理した後、上記試験(ロ)と同様に、上記試験片と上記銅線との接着強度を測定した。
【0075】
(ニ)接着力3(耐熱後の導体接着力):
上記試験(ロ)と同様にして得たサンプルを温度151℃に設定したギアオーブンに入れて、168時間処理した後、上記試験(ロ)と同様に、上記試験片と上記銅線との接着強度を測定した。
【0076】
(ホ)接着力4(接着剤同士の接着力):
積層体からそのマシン方向が長さ方向となるように幅50mm、長さ150mmの試験片を切り出し、その接着性樹脂組成物層同士を向い合わせて重ねたものを、何れも温度190℃に予熱された金属板とシリコンゴムシートとで、圧力0.3MPa、時間2秒の条件で押圧した。上記で得たサンプルの接着強度を、試験速度100mm/分の条件でT字剥離を行い測定した。なお表中の「材破」とは、積層体の二軸延伸ポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルムが破れたことを意味する。「PET」とは、二軸延伸ポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルムの層と接着性樹脂組成物層との界面において剥離したことを意味する。
【0077】
(へ)接着力5(湿熱後の接着剤同士の接着力):
上記試験(ホ)と同様にして得たサンプルを温度85℃、相対湿度85%に設定した恒温恒湿槽中において、1000時間処理した後、上記試験(ホ)と同様に接着強度を測定した。
【0078】
(ト)接着力6(耐熱後の接着剤同士の接着力):
上記試験(ホ)と同様にして得たサンプルを温度151℃に設定したギアオーブンに入れて、168時間処理した後、上記試験(ホ)と同様に接着強度を測定した。
【0079】
(チ)難燃性:
フレキシブルフラットケーブル装置を使用し、積層体を2ロール用い、導体幅0.7mm、厚み0.035mmの錫メッキ軟銅線を8本配列させたものを、一方の上記積層体の接着性樹脂組成物層と他方の上記積層体の接着性樹脂組成物層とで挟持し、温度190℃に予熱された押圧ロールと温度190℃に予熱された受けロールとで、押圧することにより、幅25mmのフレキシブルフラットケーブルを得た。得られたフレキシブルフラットケーブルについて、UL1581の1080 VW−1燃焼試験に従い評価した。
【0080】
(リ)耐熱性:
上記試験(チ)と同様にして得たフレキシブルフラットケーブルから長さ15cmの試験片を採取し、錫メッキ軟銅線の長手方向と直角をなす方向に各辺が5cmのつづら折りにし(Z字状に折り)、その折り目をクリップにより保持し、試験片とした。上記で得た試験片を温度151℃に設定したギアオーブンに入れて、168時間処理した後、上記試験片を目視観察し、以下の基準で評価した。
○:界面剥離は認められない。また接着剤の凝集破壊も認められない。
△:界面剥離は認められないが、接着剤の一部に凝集破壊が認められた。
×:何れかの層間において、界面剥離が認められた。
【0081】
(ヌ)耐湿熱性:
上記試験(リ)と同様にして得た試験片を温度85℃、相対湿度85%に設定した恒温恒湿槽中において、1000時間処理した後、上記試験片を目視観察し、以下の基準で評価した。
○:界面剥離は認められない。また接着剤の凝集破壊も認められない。
△:界面剥離は認められないが、接着剤の一部に凝集破壊が認められた。
×:何れかの層間において、界面剥離が認められた。
【0082】
(ル)耐ヒートサイクル:
上記試験(リ)と同様にして得た試験片を、恒温槽中において、温度−40℃で30分間処理した後、温度125℃まで昇温し、同温度で30分間処理した後、温度−40℃まで冷却するサイクルを1サイクルとして、500サイクル処理した後、上記試験片を目視観察し、以下の基準で評価した。
○:界面剥離は認められない。また接着剤の凝集破壊も認められない。
△:界面剥離は認められないが、接着剤の一部に凝集破壊が認められた。
×:何れかの層間において、界面剥離が認められた。
【0083】
(ヲ)耐寒性:
上記試験(チ)と同様にして得たフレキシブルフラットケーブルを、−40℃に設定した恒温試験室内に24時間放置した後、同室内において、折り目が上記ケーブルのマシン方向となるように二つ折りにし、上記試験片を目視観察した。同様に折り目が上記ケーブルの幅方向となるように二つ折りにし、上記試験片を目視観察した。以下の基準で評価した。
○:何れの場合も界面剥離は認められない。また接着剤の凝集破壊も認められない。
△:何れの場合も界面剥離は認められないが、少なくとも何れかの場合に接着剤の一部に凝集破壊が認められた。
×:少なくとも何れかの場合に、何れかの層間において、界面剥離が認められた。
【0084】
使用した原材料
(A)酸変性ポリプロピレン系樹脂:
(A−1)無水マレイン酸変性ポリプロピレン系樹脂、酸変性量2モル%、MFR−A 40g/10分、融点168℃。
(A−2)三洋化成工業株式会社の無水マレイン酸変性ポリプロピレン系樹脂「ユーメックス1001(商品名)」、酸変性量1.7モル%、MFR−A 130g/10分、融点154℃。
(A−3)デュポン株式会社の酸変性ポリプロピレン系樹脂「フサボンドP353(商品名)」、酸変性量0.8モル%、MFR−A 23g/10分、融点136℃。
【0085】
(B)ポリプロピレン系樹脂:
(B−1)株式会社プライムポリマーのポリプロピレン系樹脂「プライムポリプロF227D(商品名)」、MFR−B 7g/10分、融点142℃
【0086】
(C)エチレン酢酸ビニル共重合体等:
(C−1)三井・デュポンポリケミカル株式会社のエチレン酢酸ビニル共重合体「エバフレックスEV260(商品名)」、MFR−C 6.0g/10分、コモノマー含量28質量%
(C−2)三井・デュポンポリケミカル株式会社のエチレン酢酸ビニル共重合体「エバフレックスEV180(商品名)」、MFR−C 0.2g/10分、コモノマー含量33質量%
(C−3)三井・デュポンポリケミカル株式会社のエチレン酢酸ビニル共重合体「エバフレックスEV40LX(商品名)」、MFR−C 2.0g/10分、コモノマー含量41質量%
(C−4)三井・デュポンポリケミカル株式会社のエチレンアクリル酸エチル共重合体「エルバロイ2615(商品名)」、MFR−C 9.0g/10分、コモノマー含量15質量%。
(C−5)三井・デュポンポリケミカル株式会社のエチレンメタクリル酸メチル共重合体「ニュクレルN0903(商品名)」、MFR−C 3.0g/10分、コモノマー含量 9質量%。
【0087】
(D)難燃剤:
(D−1)アルベマール社の臭素系難燃剤「SAYTEX8010(商品名)」
(D−2)日本精鉱株式会社の三酸化二アンチモン「PATOX−M(商品名)」
【0088】
アンカーコート塗料:
(AC−1)信越化学工業株式会社の3−アミノプロピルトリエトキシシラン「KBE−903(商品名)」を、変性アルコール溶剤「エタノール/イソプロピルアルコール/メタノール=80/20/1(体積比)の混合溶剤」で固形分濃度1質量%になるように希釈したアンカーコート塗料。
(AC−2)三井化学株式会社の変性オレフィン樹脂ワニス「XP012(商品名)」を、メチルエチルケトンで固形分濃度20質量%になるように希釈したアンカーコート塗料。
(AC−3)信越化学工業株式会社の3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン「KBE−403(商品名)」を、変性アルコール溶剤「エタノール/イソプロピルアルコール/メタノール=80/20/1(体積比)の混合溶剤」で固形分濃度1質量%になるように希釈したアンカーコート塗料。
(AC−4)信越化学工業株式会社の3−メタクロキシプロピルトリエトキシシラン「KBE−503(商品名)を、変性アルコール溶剤「エタノール/イソプロピルアルコール/メタノール=80/20/1(体積比)の混合溶剤」で固形分濃度1質量%になるように希釈したアンカーコート塗料。
【0089】
例1
上記(A−1)35質量部、上記(B−1)55質量部、上記(C−1)10質量部、上記(D−1)60質量部、及び上記(D−2)20質量部を含む接着性樹脂組成物を、同方向回転二軸押出機を使用し、ダイス出口樹脂温度210℃の条件で溶融混練して得た。得られた接着性樹脂組成物を用い、700mm幅Tダイ、押出機、及びニップ方式の引巻取り装置を備える製膜装置を使用し、ダイ出口樹脂温度210℃の条件で厚さ50μmの接着性樹脂組成物フィルムを製膜した。次に、厚み25μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルムの片面に、上記(AC−1)を、フィルムメイヤーバー方式の塗工装置を使用して、乾燥膜厚みが0.01μmとなるように塗布し、アンカーコートを形成した。続いて、上記二軸延伸ポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルムのアンカーコート形成面の上に、上記接着性樹脂組成物フィルムを重ね、温度190℃に予熱された押圧ロールと温度190℃に予熱された受けロールとで、圧力0.3MPa、速度1.0m/minの条件にて熱ラミネートし、積層体を得た。上記試験(イ)〜(ヌ)を行った。結果を表1に示す。
【0090】
例2〜17、例1C、3C〜5C
接着性樹脂組成物の配合を表1〜4の何れか1に示すように変更したこと以外は、全て例1と同様にして積層体を得た。上記試験(イ)〜(ヲ)を行った。結果を表1〜4の何れか1に示す。
【0091】
例2C
接着性樹脂組成物の配合を表1に示すように変更したこと以外は、全て例1と同様にして接着性樹脂組成物を得た。全て例1と同様に製膜を試みたところフィルムを得ることができなかった。そのため以下の評価は省略した。
【0092】
例18
アンカーコート塗料として上記(AC−2)を用い、乾燥膜厚みを2.0μmに変更したこと以外は、全て例1と同様にして積層体を得た。上記試験(イ)〜(ヲ)を行った。結果を表4に示す。
【0093】
例19
アンカーコート塗料として、上記(AC−3)を用いたこと以外は、全て例1と同様にして積層体を得た。上記試験(イ)〜(ヲ)を行った。結果を表4に示す。
【0094】
例1S
アンカーコート塗料として、上記(AC−4)を用いたこと以外は、全て例1と同様にして積層体を得た。上記試験(イ)〜(ヲ)を行った。結果を表4に示す。
【0095】
【表1】
【0096】
【表2】
【0097】
【表3】
【0098】
【表4】
【0099】
本発明の接着性樹脂組成物は製膜性が良好であり、耐湿熱性に優れ、長期間高温多湿の環境に曝されても導体との接着性を保持することができる。また架橋工程なしでULの定格温度125℃の認証を得ることができる。