【文献】
ROBSON, M.E. et al.,Journal of Clinical Oncology,American Society of Clinical Oncology Policy Statement Update: Genetic and Genomic Testing for Cancer Susceptibility,2015年08月31日,Vol. 33, No. 31,p.3660-3667,DOI: 10.1200/JCO.2015.63.0996
【文献】
GREEN, R.C., et al.,Genetics in Medicine,ACMG recommendations for reporting of incidental findingsin clinical exome and genome sequencing,2013年06月20日,Vol. 15, No. 7,p.565-574,DOI: 10.1038/gim.2013.73
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記所定の疾患に関連する生殖細胞変異は、治療法及び/又は予防法が存在する疾患に関連する生殖細胞変異、又は、前記患者が罹患している又は過去に罹患した疾患に関連する生殖細胞変異である、請求項5に記載の解析方法。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、発明を実施するための形態を、添付の図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の説明及び図面において、同じ符号は同じ又は類似の構成要素を示すこととし、よって、同じ又は類似の構成要素に関する説明を省略する。
[実施形態の概要]
はじめに、
図1〜
図5を用いて実施形態の概要を説明する。
【0014】
患者検体の核酸配列の解析は、例えば、腫瘍細胞に対する抗がん剤の効果や、予後を予測するために、腫瘍細胞に存在する核酸の塩基配列(以下、核酸配列と称することがある)の変異を検出する目的で行われる。
【0015】
本明細書において「塩基配列の変異」は、ヌクレオチドの置換、挿入、欠失、遺伝子の融合などを含む概念である。検出対象の変異は、非同義変異であることが好ましい。非同義変異は、タンパク質の構造異常を引き起こす変異であり、細胞の腫瘍化に関連すると考えられている。
【0016】
体細胞で生じた変異は体細胞変異(somatic mutation)と呼ばれ、生殖細胞で生じた変異は生殖細胞変異(germline mutation)と呼ばれる。体細胞変異と異なり生殖細胞変異は次世代の個体に引き継がれ得る。したがって、本実施形態の方法が適用される患者が親世代から生殖細胞変異を引き継いでいる場合、体細胞から調製される検体であっても生殖細胞変異を含むこととなる。
【0017】
図1に示す例では、腫瘍細胞に存在する体細胞変異を検出するため、第1の核酸配列データとして、腫瘍細胞に由来する核酸配列データが取得される。また、第2の核酸配列データとして、腫瘍細胞に由来する核酸配列データを取得した患者と同一の患者から採取した非腫瘍細胞に由来する核酸配列データが取得される。続いて、第1の核酸配列データと、第2の核酸配列データとを参照配列データと比較し核酸配列の変異の有無が検出される。
図1において、腫瘍細胞由来配列上の「▲」は、核酸配列変異を意図し、非腫瘍細胞由来配列や参照配列には存在していないため、体細胞変異であると判定することができる。
【0018】
一方、第2の核酸配列データを用いる場合、前記患者の生殖細胞変異が検出される場合がある。例えば、
図1において、非腫瘍細胞由来配列上に存在する「●」は核酸配列変異を意図し、参照配列には存在していないことから生殖細胞変異であると判定することができる。
図1に示す例は、腫瘍細胞に存在する核酸配列変異を検出することを目的としているため、生殖細胞変異は、偶発的又は補足的に見つかった変異である。検査目的以外の核酸配列の変異を、本明細書において偶発的所見と呼ぶことがある。偶発的所見や補足情報について患者に伝えるか否かについては、変異が検出された遺伝子の種類、変異の種類、変異に関連して発症する疾患の重症度、治療の可能性、生殖細胞に関する情報の知得に関する患者、その親族、及び担当医師等の意向等を踏まえ熟考する必要がある。
【0019】
本実施形態の解析方法は、患者検体の核酸配列の解析において、生殖細胞変異が検出された場合に、通常レポートR1の様式で解析報告書を生成するか、秘匿レポートR2,R3,R4に例示されるいずれかの様式で解析報告書を生成するかを選択可能にする。
【0020】
図2を用いて、通常レポートR1の様式の例を説明する。通常レポートR1の様式は、第1の領域であるサマリレポートの領域S(以下、「サマリレポート領域S」ともいう)と、第2の領域である詳細レポートの領域D(以下、「詳細レポート領域D」ともいう)を含む例である。サマリレポート領域Sは、さらに患者や検査内容に関する情報が示される属性情報を示す領域S1(以下、「属性情報領域S1」ともいう)と、検出された全ての遺伝子変異のリストが示される領域S2(以下、「遺伝子変異リスト領域S2」ともいう)を含む。詳細レポート領域Dには、腫瘍細胞に由来する核酸配列において変異が検出された遺伝子とその変異の詳細情報が示される領域D1(以下、「遺伝子変異情報領域D1」ともいう)と、非腫瘍細胞に由来する核酸配列において生殖細胞変異が検出された遺伝子とその変異の詳細情報が示される領域D2(以下、「生殖細胞変異情報領域D2」ともいう)を含む。
【0021】
図2において、属性情報領域S1には、患者識別子(ID)、担当医師名、医療機関名等の患者を識別するための情報や、遺伝子パネル等の検査項目を示す情報等が表示されうる。遺伝子変異リスト領域S2には、体細胞変異であるか生殖細胞変異であるかを問わず、検出された全ての遺伝子の変異が示され得る。
図2に示される遺伝子変異リスト領域S2の例において、EGFR、BRAF、BRCA1は遺伝子名を示し、L585R、V600E、K1183Rは変異部位を示す。したがって、EGFR_ L585Rは、EGFR遺伝子の585番目のアミノ酸のコドンがロイシン(L)をコードする核酸配列からアルギニン(R)をコードする核酸配列に変異していることを示す。
サマリレポート領域Sは、患者、担当医師、遺伝子解析のエキスパート等に示され得る領域である。
【0022】
遺伝子変異情報領域D1には、変異が検出された遺伝子名、変異識別子(ID)、変異が検出された遺伝子のローカス番号(染色体番号:CROMと変異位置:POSを含む)、参照配列の核酸配列(REF)、検出された変異配列(ALT)、解析報告書において検出された変異を示す際のアノテーション等の情報を含み得る。
【0023】
生殖細胞変異情報領域D2には、変異が検出された遺伝子名、変異識別子(ID)、変異が検出された遺伝子のローカス番号(染色体番号:CROMと変異位置:POSを含む)、参照配列の核酸配列(REF)、検出された変異配列(ALT)、解析報告書において検出された変異を示す際のアノテーション等の情報を含み得る。
詳細レポート領域Dは、少なくとも遺伝子解析のエキスパートには提示されうる。詳細レポート領域Dは、患者や担当医師には提示されなくてもよい。
【0024】
図2の例では、生殖細胞変異情報領域D2に、BRCA1遺伝子に生殖細胞変異である「BRCA1_K1183R」があることが示されており、また、サマリレポート領域Sの遺伝子変異リスト領域S2にも「BRCA1_K1183R」が示されている。言い換えると
図2に示される通常レポートR1では、遺伝子変異リスト領域S2に示された生殖細胞変異である「BRCA1_K1183R」が患者に提示されることとなる。
【0025】
図3に秘匿レポートR2の様式の例を示す。秘匿レポートR2は通常レポートR1と同様にサマリレポート領域Sと、詳細レポート領域Dを含む。しかし、生殖細胞変異が検出された場合であっても、サマリレポート領域Sと、詳細レポート領域Dに生殖細胞変異に関する情報を示さない例である。例えば、秘匿レポートR2の様式では、変異リスト領域S2に、生殖細胞変異である「BRCA1_K1183R」に関する情報は記載されない。また、詳細レポート領域Dにも、生殖細胞詳細情報である「BRCA1_K1183R」の詳細情報は記載されない。秘匿レポートR2は、サマリレポート領域Sと詳細レポート領域Dとの両方に、生殖細胞変異に関する情報を提示しない例である。
【0026】
図4に秘匿レポートR3の様式の例を示す。秘匿レポートR3は通常レポートR1と同様にサマリレポート領域Sと、詳細レポート領域Dを含む。しかし、変異リスト領域S2に、生殖細胞変異であるである「BRCA1_K1183R」に関する情報は記載されない。一方、詳細レポート領域Dには、生殖細胞変異情報領域D2を示している例である。このような例では、例えば遺伝子解析エキスパートは、患者の生殖細胞変異に関する情報を知得することができるが、患者自身は、生殖細胞変異に関する情報を知得することができない。秘匿レポートR3は、サマリレポート領域Sのみ、生殖細胞変異に関する情報を提示しない例である。なお、詳細レポート領域Dの閲覧者は遺伝子解析エキスパートに限られず、担当医師、担当医師のスーパーバイザー等の患者以外の閲覧者であってもよい。
【0027】
上記秘匿レポートR2,R3は、患者が保有する生殖細胞変異に関する情報の少なくとも一部を提示しない例である。以下に、患者が保有する生殖細胞変異に関する情報の少なくとも一部を提示し、かつ患者への解析結果の提示について注意を喚起するためのラベルを付す例を示す。
【0028】
図5に秘匿レポートR4の様式の例を示す。秘匿レポートR4は通常レポートR1と同様にサマリレポート領域Sと、詳細レポート領域Dを含む。サマリレポート領域Sには、生殖細胞変異である「BRCA1_K1183R」に関する情報が示されているが、BRCA1_K1183Rに「(*)」が付されている。また、詳細レポート領域Dに生殖細胞変異に関する情報が示されているものの、「生殖細胞変異」のタイトルに「(*)」が付されている。この例において、(*)は、生殖細胞変異が検出された場合に、患者がその結果の知得に非同意であることを示している。「(*)」は、患者に解析結果の提示について注意する必要があることを、伝子解析のエキスパート、又は担当医師等に喚起するためのラベルの例である。ラベルは、「*」、「!」等の記号であってもよいが、色で表してもよく、また「開示注意」等の用語やフレーズ等であってもよい。
【0029】
本実施形態は、患者の検体を用いた核酸配列の解析において、生殖細胞変異が検出された場合に、通常レポートR1、及び秘匿レポートR2,R3,R4に例示される複数の解析報告書の様式の中から、解析報告書を生成するための様式を選択することができる。したがって、本発明によれば、患者等の意向に応じた解析報告書の生成が可能となり、患者への生殖細胞変異に関する情報の開示について配慮が容易となる。
[核酸配列の解析方法]
<解析方法の概要と用語の説明>
【0030】
本実施形態は、患者検体の核酸配列を解析する方法に関する。前記解析方法は、(工程1)患者から採取された腫瘍細胞に由来する第1の核酸配列データと、同一患者から採取された非腫瘍細胞に由来する第2の核酸配列データとを取得すること;(工程2)前記第2の核酸配列データに基づいて生殖細胞変異を検出すること;(工程3)前記生殖細胞変異に関する情報を提示する様式を複数の候補から選択し、選択された様式により解析報告書を生成すること、を含み得る。
【0031】
腫瘍は、良性上皮性腫瘍、良性非上皮性腫瘍、悪性上皮性腫瘍、悪性非上皮性腫瘍を含み得る。腫瘍の発生母地は、制限されない。腫瘍の発生母地として、気管、気管支又は肺等の呼吸器系組織;上咽頭、食道、胃、十二指腸、空腸、回腸、盲腸、虫垂、上行結腸、横行結腸、S状結腸、直腸又は肛門部等の消化管組織;肝臓;膵臓;膀胱、尿管又は腎臓等の泌尿器系組織;卵巣、卵管及び子宮等の女性生殖器系組織;乳腺:前立腺等の男性生殖器系組織;皮膚;視床下部、下垂体、甲状腺、副甲状腺、副腎等の内分泌系組織;中枢神経系組織;骨軟部組織;骨髄、リンパ節等の造血系組織;血管等を例示することができる。
【0032】
検体は、患者から採取した組織、体液、排泄物、これらから調製された試料等、腫瘍細胞に由来する核酸を含む試料である。体液は、例えば、血液、骨髄液、腹水、胸水、髄液等である。排泄物は、たとえば大便、尿である。腹腔内洗浄液や大腸洗浄液など、患者の体の一部を洗浄した後に得られる液体を用いてもよい。
【0033】
検体に含まれる核酸量は、核酸の配列を検出できる量であれば制限されない。また、非腫瘍細胞に由来する核酸配列データを取得する場合、非腫瘍細胞に由来する核酸を含む検体が用いられる。前記組織、体液等に含まれる非腫瘍細胞の濃度は、非腫瘍細胞に存在する核酸の配列を検出できる限り制限されない。ここで、腫瘍細胞が固形腫瘍に由来する場合には、非腫瘍細胞を含む検体として、例えば、末梢血、口腔粘膜組織、皮膚組織等を使用することができる。腫瘍細胞が造血系組織に由来する場合には、非腫瘍細胞を含む検体として、例えば、口腔粘膜組織、皮膚組織等を使用することができる。
【0034】
前記検体は新鮮組織、新鮮凍結組織、パラフィン包埋組織等から採取することができる。検体の採取は公知の方法にしたがって行うことができる。
【0035】
腫瘍細胞に由来する核酸を含む試料と、非腫瘍細胞に由来する核酸を含む試料とは、同一の患者から採取される。非腫瘍細胞に由来する核酸を含む試料と、腫瘍細胞に由来する核酸を含む試料とは、同時期に採取されてもよいし、異なる時期に採取されてもよい。
【0036】
核酸は、DNAであってもRNAであってもよい。
【0037】
核酸配列の解析対象となる遺伝子は、ヒトゲノム上に存在する遺伝子である限り、制限されない。好ましくは、腫瘍の発症、予後、治療効果に関連する遺伝子である。
【0038】
生殖細胞変異は、疾患に関連する変異であっても、遺伝子の配列多型であってもよい。遺伝子の「多型」は、SNV(Single Nucleotide Variant、一塩基多型)、VNTR(Variable Nucleotide of Tandem Repeat、反復配列多型)、及びSTRP(Short Tandem Repeat Polymorphism)、マイクロサテライト多型などを含む。
図6の表の左列に生殖細胞変異を検出し得る遺伝子の例を示す。
図6の表の左列に記載の遺伝子は、それぞれ当該表の右列に示す疾患に関連する。
【0039】
核酸配列データは、核酸配列を反映したデータである限り制限されない。核酸配列データは、核酸配列情報そのものであってもよいが、核酸配列の構造、核酸配列上の変異の有無を示すデータ、核酸配列に由来するタンパク質の構造を示すデータであってもよい。好ましくは、核酸配列情報そのものである。
【0040】
核酸配列データの取得は、変異情報が取得できる方法である限り制限されない。核酸配列データの取得は、後述する次世代シーケンサーを使って核酸配列情報そのものを取得してもよいが、PCR−Invader法、PCR−RFLP法、PCR−SSCP法、サザンブロッティング法、ノーザンブロッティング法、ウエスタンブロッティング法、FISH法、マイクロアレイ法、免疫染色法等により、核酸配列の構造、核酸配列上の変異の有無を示すデータ、核酸配列に由来するタンパク質の構造を示すデータを、核酸配列データとして取得してもよい。これらの核酸配列データの取得方法は、公知である。腫瘍細胞に由来する第1の核酸配列データと非腫瘍細胞に由来する第2の核酸配列データの取得方法は、同じ方法であることが好ましい。
【0041】
体細胞変異及び生殖細胞変異の検出は、一般的な配列として報告されている参照配列データと、第1の核酸配列データ及び第2の核酸配列データとを比較することにより行うことができる。例えば、参照配列データと第1の核酸配列データとを比較する場合には、参照配列データ内の配列と異なる第1の核酸配列データ内の配列を検出することにより、第1の核酸配列データ内の変異を検出することができる。同様に、参照配列データと第2の核酸配列データとを比較する場合には、参照配列データ内の配列と異なる第2の核酸配列データ内の配列を検出することにより、第2の核酸配列データ内の変異を検出することができる。
【0042】
生殖細胞変異に関する情報は、核酸配列の解析を行った患者が保有する生殖細胞変異に関する情報である限り制限されない。例えば、生殖細胞変異に関する情報には、少なくとも変異が検出された遺伝子名を示すラベルを含み得る。好ましくは、生殖細胞変異に関する情報は、変異が検出された遺伝子名を示すラベルと検出された核酸配列情報及び/又は変異により生じるアミノ酸配列の情報を含んでいてもよい。また、[実施形態の概要]の項で述べたように、変異が検出された遺伝子のローカス情報、参照配列情報、患者が保有する変異配列の情報を含んでいてもよい。また、生殖細胞変異に関する情報は、変異が有るか無いかを検出した情報に限られず、例えば、生殖細胞変異がある可能性を示唆する情報(例えば、モザイク変異)であってもよい。
【0043】
上記[実施形態の概要]の項で述べたように、生殖細胞変異に関する情報の提示様式は、複数の候補から選択される。そして、解析報告書は、選択された様式にしたがって生成される。ここで、生殖細胞変異に関する情報は、紙媒体に出力され提示されてもよく、例えば後述する核酸配列解析・提示装置10,10A〜10Eのディスプレイ上に出力され提示されてもよい。また、提示は、担当医師、遺伝子解析のエキスパート等によって行われてもよく、後述する核酸配列解析・提示装置10,10A〜10Eによって行われてもよい。
【0044】
生殖細胞変異に関する情報の提示様式の選択は、好ましくは所定情報に基づいて行われる。所定情報に基づく様式の選択は、ユーザが行ってもよく、所定情報に基づいて核酸配列解析・提示装置10,10A〜10Eの制御部100が自動的に選択してもよい。提示様式の選択には、所定情報に基づいて、生殖細胞変異に関する情報の少なくとも一部を提示しない様式を選択すること、及び/又は生殖細胞変異に関する情報を提示することを含み得る。
【0045】
所定情報には、提示様式の選択に関する情報、患者に関する情報、解析依頼に関する情報、患者の核酸配列の検査結果に関する情報、解析依頼元情報等を含み得る。
【0046】
提示様式の選択に関する情報は、ユーザによって選択された提示様式に関する情報であり得る。
【0047】
患者に関する情報は、インフォームドコンセント、年齢、性別、婚姻の状況、嫡子の有無、及び疾患名等を含み得る。例えは、インフォームドコンセントの内容に基づいて提示様式を選択する場合、前記内容が、患者が生殖細胞変異に関する情報の知得を希望しないものである場合は、生殖細胞変異に関する情報の少なくとも一部を提示しない様式を選択することができる。また、前記内容が、患者が生殖細胞変異に関する情報の知得を希望するものである場合は、生殖細胞変異に関する情報を提示する様式を選択することができる。また、例えば、年齢に基づいて提示様式を選択する場合、小児の場合は生殖細胞変異に関する情報の少なくとも一部を提示しない様式を選択することができる。さらに、未婚、又は検査後に嫡子を得る可能性がある場合には、生殖細胞変異に関する情報の少なくとも一部を提示しない様式を選択することができる。
【0048】
解析結果の閲覧者に関する情報は、結果閲覧者のアカウント情報等を含み得る。例えば、結果閲覧者が、遺伝子解析のエキスパートのアカウントを有する場合には、生殖細胞変異に関する情報を提示する様式を選択することができる。一方、結果閲覧者が、遺伝子解析のエキスパートのアカウント以外のアカウントを有する場合には、生殖細胞変異に関する情報の少なくとも一部を提示しない様式を選択することができる。
【0049】
解析依頼元情報は、担当医師名、遺伝子解析のエキスパート名、医療機関名等を含み得る。遺伝子解析のエキスパートには、臨床遺伝専門医や遺伝カウンセラー等が含まれ得る。例えば、担当医師が患者の生殖細胞変異に関する情報を知りたくない場合、生殖細胞変異に関する情報の少なくとも一部を提示しない様式を選択することができる。
【0050】
患者の核酸配列の検査結果に関する情報は、検出された生殖細胞変異の情報を含み得る。検査結果に基づいて提示様式を選択する例としては、検出された生殖細胞変異が、所定の遺伝子に存在する生殖細胞変異である場合には、生殖細胞変異に関する情報を提示する様式を選択することができる。所定の遺伝子に存在する生殖細胞変異としては、所定の疾患に関連する生殖細胞変異が挙げられ、より具体的には、治療法及び/又は予防法が存在する疾患に関連する生殖細胞変異、前記患者が罹患している又は過去に罹患した疾患に関連する生殖細胞変異などが挙げられる。例えば、検出された生殖細胞変異がその変異に関連する疾患に治療法及び/又は予防法が存在する場合には、生殖細胞変異に関する情報を提示する様式を選択することができる。これによって、患者やその血縁者の治療や健康管理に役立てることが可能となる。一方、その変異に関連する疾患に治療法及び/又は予防法が存在しない場合には、生殖細胞変異に関する情報の少なくとも一部を提示しない様式を選択することができる。なお、治療法及び/又は予防法が存在する場合とは、治療法及び/又は予防法が文献等では提案されているが、その治療法及び/又は予防法が十分に確立されていない場合を含んでもよい。
【0051】
所定情報は、複数種を組み合わせて、提示様式を選択してもよい。例えば、所定情報が患者情報である性別に関する情報と、検査結果に関する情報として、検出された変異の種類に関する情報を含むとする。例えば患者が保有する生殖細胞変異に起因する疾患が女性で発症する場合、患者が女性である場合には、生殖細胞変異に関する情報の少なくとも一部を提示しない様式を選択することができる。
また、患者に関する情報と検査結果に基づいて提示様式を選択する例としては、検出された生殖細胞変異が、患者が罹患している、又は過去に罹患した疾患に関連する遺伝子の変異であり、その生殖細胞変異の情報が患者の治療又は予防に役立つことが期待される場合には、生殖細胞変異に関する情報を提示する様式を選択することができる。
<核酸配列の解析システム>
【0052】
図7に核酸配列の解析システム50(以下、単に「システム50」と称する場合がある)の概略を例示する。システム50は、核酸配列解析・提示装置10と、シーケンサー30を備える。核酸配列解析・提示装置10と、シーケンサー30とは、有線、又は無線のネットワークで通信可能に接続されていてもよい。また、核酸配列解析・提示装置10と、シーケンサー30とは、一体型であってもよい。核酸配列解析・提示装置10はシーケンサー30を制御する制御装置として機能してもよい。
【0053】
シーケンサー30は、核酸配列から読み取られた複数のリード配列を取得する装置である。シーケンサー30は、好ましくは次世代シーケンサー(NGS)である。次世代シーケンサーは公知である。
【0054】
以下に核酸配列解析・提示装置10の構成を説明する。
・核酸配列解析・提示装置10のハードウェア構成
【0055】
図8を用いて、核酸配列解析・提示装置10のハードウェアの構成について説明する。核酸配列解析・提示装置10は、汎用コンピュータであり得る。
【0056】
核酸配列解析・提示装置10は、制御部100と、入力部106と、出力部107とを備える。
【0057】
制御部100は、後述するデータ処理を行うCPU(Central Processing Unit)101と、データ処理を行うための一時的な記憶領域として使用するメモリ102と、後述するプログラム及び処理データを記録する記憶装置103と、各部の間でデータを伝送するバス104と、外部機器とのデータの入出力を行うインタフェース部105とを備える。入力部106及び出力部107は、制御部100に接続される。例示的には、入力部106は、キーボード、マウス、タッチセンサ等を含む。出力部107は、ディスプレイ、プリンタ、スピーカ等を含む。また、タッチセンサとディスプレイとが一体化されたタッチパネルのような、入力部及び出力部の双方の機能を有する装置を用いてもよい。I/F部105は、制御部100が外部の装置と通信するためのインタフェースである。
【0058】
また、制御部100の記憶装置103は、以下の
図16、
図20、
図23、
図26、
図29、
図30、
図32及び
図35で説明する各ステップの処理を行うために、本実施形態に係るアプリケーションプログラムを、例えば実行形式で記憶装置103に予め記録している。実行形式は、例えばプログラミング言語からコンパイラにより変換されて生成される形式である。制御部100は、記憶装置103に記録したプログラムを使用して、核酸配列解析・提示処理を行う。
【0059】
以下の説明においては、特に断らない限り、制御部100が行う処理は、記憶装置103又はメモリ102に格納されたアプリケーションプログラムに基づいて、CPU101が行う処理を意味する。CPU101はメモリ102を作業領域として必要なデータ(処理途中の中間データ等)を揮発性に一時記憶し、記憶装置103に解析結果等の長期保存するデータを不揮発性に適宜記憶する。
アプリケーションプログラムは、DVDやUSBメモリなどの外部記憶媒体98からダウンロードして制御部100の記憶装置103にインストールしてもよい。
核酸配列解析・提示装置10は、ネットワーク99を介して変異情報データベース400および核酸配列データ記憶装置300に接続アクセス可能である。
【0060】
変異情報データベース400は、外部の公開配列情報データベース及び公開既知変異情報データベースなどである。公開配列情報データベースとしては、NCBI RefSeq(ウェブページ、www.ncbi.nlm.nih.gov/refseq/)、NCBI GenBank(ウェブページ、www.ncbi.nlm.nih.gov/genbank/)、UCSC Genome Browserなどが挙げられる。また、公開既知変異情報データベースとしては、COSMICデータベース(ウェブページ、www.sanger.ac.uk/genetics/CGP/cosmic/)、ClinVarデータベース(ウェブページ、www.ncbi.nlm.nih.gov/clinvar/)及びdbSNP(ウェブページ、www.ncbi.nlm.nih.gov/SNP/)などが挙げられる。なお、変異情報データベース400は、公開既知変異に関し、人種あるいは動物種別毎の頻度情報を含む公開既知変異情報データベースであってもよい。このような情報を有する公開既知変異情報データベースとしては、HapMap Genome Browser release #28、Human Genetic Variation Browser(ウェブページ、www.genome.med.kyoto−u.ac.jp/SnpDB/index.html)及び1000 Genomes(ウェブページ、www.1000genomes.org/)が挙げられ、これらのデータベースからは、例えば、日本人の変異頻度情報などを入手することができる。
【0061】
シーケンサー30に適用可能なシークエンシング技術の例としては、イオン半導体シークエンシング、パイロシークエンシング(pyrosequencing)、可逆色素ターミネータを使用するシークエンシング・バイ・シンセシス(sequencing−by−synthesis)、シークエンシング・バイ・リゲーション(sequencing−by−ligation)、及びオリゴヌクレオチドのプローブ結紮によるシークエンシングなどの、1ラン当たりに多数のリード配列を取得可能なシーケンシング技術が挙げられる。シーケンサー30は、核酸配列をシーケンシングし、核酸配列情報として、リード配列情報を取得する。リード配列は、シーケンシングによって得られた核酸配列である。シーケンサー30は、リード配列情報として、例えば、
図10に示すフォーマットのファイルを出力する。リード配列情報には、配列名、核酸配列、シーケンシングのクオリティスコア等が含まれ得る。腫瘍細胞に由来する核酸から取得されたリード配列情報が第1の核酸配列データであり、非腫瘍細胞に由来する核酸から取得されたリード配列情報が第2の核酸配列データとなる。
【0062】
核酸配列データ記憶装置300は、シーケンサー30によって取得された核酸配列データを記憶するコンピュータである。
【0063】
図9に核酸配列解析・提示装置10の機能ブロック図を示す。
核酸配列解析・提示装置10は、リード配列情報取得部1、配列決定部2、変異検出部3、レポート生成部4、フォーム選択部5、参照配列管理部120a、参照配列生成部120b、遺伝子パネル情報データベース121、参照配列データベース6、及び変異データベース7を含む。
【0064】
・核酸配列解析・提示装置10の動作
・・配列決定
図8、
図9および
図11を用いて、リード配列の配列決定を行う際の核酸配列解析・提示装置10の動作について説明する。
図9に示すリード配列情報取得部1は、
図11に示すステップST1において、
図8に示す核酸配列データ記憶装置300からリード配列を取得する。リード配列情報取得部1は、
図8に示すシーケンサー30から直接リード配列を取得してもよい。
【0065】
配列決定部2は、以下に説明するステップST2〜ST5を実行することによって、取得したリード配列を参照配列にアライメントする。
配列決定部2は、ステップST2において、リード配列を参照配列と比較することにより、リード配列との一致率が所定の基準を満たす参照配列上の位置を特定する。前記比較は、リード配列を参照配列にマッピングすることにより行われる。マッピングは、各リード配列と、用いた参照配列の核酸配列との一致度が高い領域に、前記リード配列を整列させる処理を意味している。また、参照配列に替えて、変異配列を使用してもよい。
【0066】
参照配列とは、リード配列が遺伝子上のどの領域に対応するか、及びリード配列が遺伝子上のどの変異に対応するかなどを判定するために、リード配列をマッピングする対象となる配列である。解析対象となる遺伝子毎に、参照配列として(1)野生型のエクソンの部分配列又は全配列である野生型参照配列が用いられ得る。また、変異配列として(2)野生型のエクソンの配列から公知の多型、変異を含む再編成配列を一繋がりに連結した単一の変異参照配列が用いられ得る。単一の変異参照配列とは、解析対象となる遺伝子毎に、該解析対象となる遺伝子に関する2つ以上の再編成配列を1繋がりに連結して生成される配列である。単一の変異参照配列は、リード配列をマッピングするときに、再編成配列を含む変異参照配列として用いられる。
なお、2つ以上の再編成配列を1繋がりに連結された単一の変異参照配列に代えて、連結されていない2つ以上の再編成配列が変異参照配列として用られてもよい。
【0067】
図12に単一の変異参照配列の生成方法の概略を示す。
図12は、外部の変異情報データベース400からダウンロードした公開既知変異情報を用いて、変異参照配列を生成する方法の一例を説明する概念図である。
【0068】
図12では、染色体位置「xxxx」の遺伝子「EGFR」に生じた変異「C797S」に関する情報が、研究機関Pから外部の変異情報データベース400に新たにアップロードされ、変異情報データベース400に記憶された場合を例に挙げている。研究機関Pからアップロードされた、遺伝子名「EGFR」の遺伝子の染色体位置「xxxx」に生じた変異「C797S」に関する情報は、外部の変異情報データベース400において、変異ID「yyyy」及びアップロード日「zz年z月z日」などと関連付けられて、公開既知変異情報として登録される。新たにアップロードされた情報としてここに例示した変異は、遺伝子「EGFR」から転写・翻訳された遺伝子産物であるタンパク質「EGFR」の797番目のアミノ酸残基がシステインからセリンに置換された変異である。なお、外部の変異情報データベース400には、このような変異に限定されず、多型、変異、及びメチル化などに関する情報が集められ、記憶されていてもよい。
【0069】
図9に示す参照配列管理部120aは、
図12に示す変異情報データベース400に対して変異情報要求を送信し、変異情報データベース400から公開既知変異情報をダウンロードする。参照配列管理部120aは、前回、公開既知変異情報をダウンロードした日以降に変異情報データベース400にアップロードされた公開既知変異情報のみをダウンロードする構成であってもよい。この構成によれば、例えば、参照配列管理部120aが変異情報データベース400から公開既知変異情報を「zz年z月z日」以前にもダウンロードしていた場合、参照配列管理部120aは、前回ダウンロードした公開既知変異情報のダウンロードは行わない。
図12において、参照配列管理部120aが「zz年z月z日」の前日に変異情報データベース400から公開既知変異情報をダウンロードし、翌「zz年z月z日」にも変異情報要求を送信した場合、参照配列管理部120aは、「zz年z月z日」にアップロードされて新しく公開既知変異情報として登録された、遺伝子名「EGFR」の変異「C797S」に関する情報のみをダウンロードしてもよい。
【0070】
なお、参照配列管理部120aは、核酸配列解析・提示装置10の解析対象のすべての遺伝子についての公開既知変異情報を定期的(例えば、1か月に1回、1週間に1回、及び2日に1回など)に変異情報データベース400からダウンロードする構成であってもよい。又は、核酸配列解析・提示装置10を使用するユーザによって入力部106から入力された遺伝子パネル名に関連付けられた遺伝子パネルの解析対象となる1又は複数の遺伝子、及び遺伝子名などに対応する遺伝子について、該ユーザの指示に従って公開既知変異情報をダウンロードする構成であってもよい。この場合、参照配列管理部120aは、遺伝子パネル情報データベース121を参照して、公開既知変異情報をダウンロードすべき遺伝子を決定する。なお、ユーザの指示に従って公開既知変異情報をダウンロードする構成の場合、参照配列管理部120aは、前回、公開既知変異情報をダウンロードした日をユーザに対して提示してもよい。これにより、ダウンロードされている公開既知変異情報が新しく適切なものであるか否かを事前にユーザに知らせることができる。
【0071】
参照配列管理部120aは、ダウンロードした公開既知変異情報に基づいて、再編成配列を生成し、参照配列データベース6に追加・保存する。例えば、参照配列管理部120aは、野生型の部分配列又は全配列と、公開既知変異情報が示す変異の染色体番号、位置、及び変異配列aとを用いて、変異配列aを含む再編成配列を生成する。これにより、再編成配列は、野生型のエクソンなどの部分配列又は全配列に生じた公知の多型、変異、及びメチル化などを再現させた配列となる。
【0072】
参照配列生成部120bは、参照配列データベース6から再編成配列aa、再編成配列bb、再編成配列cc、…、再編成配列xxを読み出して、所定の連結様式によって再編成配列を1つに連結して、単一の参照配列を生成する。なお、参照配列データベース6には、変異配列が組込まれた再編成配列及び参照配列の他に、野生型参照配列も記憶されている。
【0073】
図9に示す参照配列生成部120bが、再編成配列を一繋がりに連結する方法としては、再編成配列aa(第1の再編成配列)、再編成配列bb(第2の再編成配列)、再編成配列cc(第3の再編成配列)、・・・を1塩基も挿入することなく直接連結してもよい。あるいは、再編成配列aa、再編成配列bb、再編成配列cc、・・・の連結部分に所定の長さのスペーサー配列を挿入してもよい。スペーサー配列としては、例えば、グアニンが10連続する配列などとすることができる。なお、スペーサー配列は、A,T,G,C以外の文字列で構成されていてもよく、例えば、「AKT1」及び「EGFR」などの遺伝子名、α、βなどのギリシア語のアルファベットに含まれる文字、又は、I、VI、IXなどのローマ数字、及び「20170901」などの所定数の数字を挿入してもよい。このように、A,T,G,C以外の文字列も含むスペーサー配列を挿入することにより、リード配列が、参照配列の隣り合う2つの再編成配列にまたがる領域、すなわち、2つの再編成配列を繋ぐ連結部分にマッピングされる可能性を無視できるようにすることができる。なお、英語のアルファベットに含まれる文字「N」は、参照配列において、リード配列中のA、T、C、Gのいずれにも一致するヌクレオチドを意味する文字として用いられる場合がある。それゆえ、スペーサー配列として「N」を利用することは、可能な限り避けることが望ましい。
【0074】
参照配列生成部120bが生成した変異参照配列は、参照配列管理部120aによって、例えば「egfr−20170801」といった参照配列IDが付与され、参照配列データベース6に保存される。
なお、ここでは、参照配列管理部120aが変異情報データベース400にアクセスし、情報をダウンロードする例を説明したが、核酸配列解析・提示装置10の操作者がマニュアル操作にて、変異情報データベース400から参照配列データベース6および変異データベース7に変異情報をダウンロードしてもよい。
【0075】
次に
図11に示すステップST3において、
図9に示す配列決定部2は、リード配列が、参照配列上、又は変異参照配列上の複数の位置に一致するか、単一の位置に一致するかを判定する。リード配列が、参照配列上、又は変異参照配列上の単一の位置に一致した場合(「No」の場合)には、配列決定部2はステップST4に進み、全てのリード配列について比較したか否かを判定する。全てのリード配列について比較を完了した場合(「Yes」)の場合には、処理を終了する。全てのリード配列の比較が完了していない場合(「No」の場合)には、配列決定部2は、ステップST2に戻り、処理を継続する。
【0076】
ステップST3において、リード配列が、参照配列上、又は変異参照配列上の複数の位置に一致した場合(「Yes」の場合)には、配列決定部2は、ステップST5に進み、最も一致率(スコア)が高い位置をリード配列に割り当てる。
図13(A)は、参照配列としてEPS8L2遺伝子の一部の配列(配列番号1)を参照配列としたときの、リード配列1(配列番号2)のスコアの算出と、リード配列2(配列番号3)のスコアの算出の一例を示す図である。なお、
図13(A)では、EPS8L2遺伝子の配列のうち23塩基のみ示している。
図13(A)に示されるように、この23塩基の配列はリード配列1およびリード配列2と最も一致率が高い13塩基(配列番号1における1番目〜13番目)を含む。リード配列1と参照配列との一致率のスコアは、リード配列1の13塩基中13塩基が一致しているため100%と算出される。リード配列2と参照配列との一致率のスコアは、リード配列2の13塩基中ミスマッチが1塩基存在し(
図13(A)において、下線で示す)、12塩基が一致しているため92.3%と算出される。
【0077】
また、配列決定部2は、リード配列と参照配列の一致率を示すスコアの計算において、リード配列が参照配列に対して所定の変異(例えば、InDel)を含む場合には、通常の計算よりも低いスコアが付くように計算してもよい。
【0078】
一態様において、配列決定部2は、リード配列が参照配列に対して挿入及び欠失の少なくとも一方を含む配列について、例えば、上述したような通常計算で算出されたスコアに、InDelに対応する塩基数に応じた重み係数を乗算することで、スコアを補正してもよい。重み係数Wは、例えば、W={1−(1/100)×(InDelに対応する塩基数)}で計算してもよい。
【0079】
図13(B)は、参照配列としてEPS8L2遺伝子の一部の配列(配列番号1)を参照配列としたときの、リード配列3(配列番号4)のスコアの算出と、リード配列4(配列番号5)のスコアの算出の他の例を示す図である。この例では、参照配列と比べてリード配列3は配列「AA」が欠失している。図中、リード配列3の欠失に対応する箇所はギャップを示す「**」で表示する。また、参照配列と比べてリード配列4では配列「CGT」(
図13(B)において、下線で示す)が挿入されている。図中、参照配列およびリード配列3の対応する箇所はギャップを示す「***」で表示する。リード配列3には、参照配列の一部である17塩基に対して2塩基のギャップがあるため、リード配列3と参照配列との一致率のスコアは、通常計算では、88%と算出され、補正後のスコアは88%×0.98=86%と算出される。また、リード配列4に対して参照配列は3塩基のギャップがあるため、リード配列4と参照配列との一致率のスコアは、通常計算では、85%と算出され、補正後のスコアは85%×0.96=81.6%と算出される。
なお、実際のリード配列の塩基長は通常100nt以上であるが、
図13(A)および(B)の仮想事例では、説明の便宜上リード配列1〜4の塩基長は短い配列とした。
【0080】
配列決定部2は、各参照配列に対するリード配列のマッピング位置を変えながら一致率のスコアを算出することにより、リード配列との一致率が所定の基準を満たす参照配列上の位置を特定する。その際、動的計画法、FASTA法、BLAST法等の当該分野において公知のアルゴリズムを使用してもよい。
配列決定部2はステップST5のあと、ステップST4に進み、全てのリード配列について比較したか否かを判定する。
【0082】
図14のステップST21において、
図9に示すリード配列情報取得部1は、
図8に示す核酸配列データ記憶装置300からリード配列を取得する。取得されるリード配列には、非腫瘍細胞に由来するリード配列(正常リード配列)のデータと、腫瘍細胞に由来するリード配列(腫瘍リード配列)が含まれる。
【0083】
図14のステップST22において、配列決定部2は、正常リード配列と腫瘍リード配列のそれぞれを参照配列にアライメントする。より詳細には、配列決定部2は、
図11のステップST2〜ST5の処理を実行する。
【0084】
図14のステップST23において、変異検出部3は、腫瘍リードに参照配列との不一致があるか否かを判定する。腫瘍リードに参照配列との不一致がある場合(「Yes」の場合)、変異検出部3はST24に進み、正常リードに参照配列との不一致がないか否かを判定する。正常リードに参照配列との不一致がない場合(「Yes」の場合)、変異検出部3は、ステップST25に進み、腫瘍リードに存在する変異を体細胞変異と判定する。また、変異検出部3は不一致のあったリード配列に対応する参照配列の遺伝子名、遺伝子座、不一致部位を特定する。
【0085】
図14のステップST26において、検出された変異に基づいて、変異検出部3は変異データベース7を検索する。ここで、変異データベース7は、例えば、
図8に示した、COSMICやClinVarなどの外部の変異情報データベース400を基に構築される。また、一態様において、データベース中の各変異情報には、遺伝子パネルに関する情報に関するメタデータが付与され得る。
【0086】
変異データベース7に含まれる変異情報には、変異識別子(ID)、遺伝子名、変異の位置情報(例えば、「CHROM」、及び「POS」)、「REF」、「ALT」、「Annotation」が含まれていてもよい。変異IDは、変異を識別するための識別子である。変異の位置情報のうち、「CHROM」は染色体番号を示し、「POS」は染色体番号上の位置を示す。「REF」は、野生型(Wild type)における塩基を示し、「ALT」は、変異後の塩基を示す。「Annotation」は、変異に関する情報を示す。「Annotation」は、例えば、「EGFR C2573G」、「EGFR L858R」といったアミノ酸の変異を示す情報であってもよい。例えば、「EGFR C2573G」は、タンパク質「EGFR」の2573残基目のシステインがグリシンに置換した変異であることを示す。
【0087】
したがって、変異検出部3は、
図14のステップST25において検出された変異部位について、変異している遺伝子名と、変異の位置情報に基づいて、変異データベース7を検索することが可能である。
【0088】
次に変異検出部3は、
図14のステップST27において、ステップST26の検索結果に基づき、検出された変異にアノテーションを付与する。アノテーションの例は、
図18の表の最右列に示されている。なお、本発明において、アノテーションの付与は省略可能である。
変異検出部3は、ステップST23において、腫瘍リードに参照配列との不一致がない(「No」)と判定した場合、処理を終了する。
【0089】
図14のステップST27の後に、
図18に示すアノテーションのついた結果を出力してもよい。また、
図17に示す遺伝子検出結果は、
図2から
図5に示す解析報告書R1〜R4の遺伝子変異情報領域D1に出力され得る。
【0091】
図16のステップST11において、
図9に示すリード配列情報取得部1は、
図8に示す核酸配列データ記憶装置300からリード配列を取得する。取得されるリード配列には、非腫瘍細胞に由来するリード配列(正常リード配列)のデータが含まれる。
【0092】
図16のステップST12において、配列決定部2は、正常リード配列を参照配列にアラインメントする。より詳細には、配列決定部2は、
図11のステップST2〜ST5の処理を実行する。
【0093】
図16のステップST13において、変異検出部3は、正常リードに参照配列との不一致があるか否かを判定する。正常リードに参照配列との不一致がある場合(「Yes」の場合)、変異検出部3はST14に進み、正常リードに存在する変異を生殖細胞変異と判定する。また、変異検出部3は不一致のあったリード配列に対応する参照配列の遺伝子名、遺伝子座、不一致部位を特定する。
変異検出部3は、
図16のステップST15において、特定された変異に基づいて、
図9に示す変異データベース7を検索する。
次に変異検出部3は、
図16のステップST16において、ステップST15の検索結果に基づき、検出された変異にアノテーションを付与する。
【0094】
図16のステップST14〜ステップST16は、
図14のステップST25〜ステップST27と同じであるので、上記説明をここに援用する。
【0095】
変異検出部3は、
図16ステップST13において、正常リードに参照配列との不一致がない(「No」)と判定した場合、処理を終了する。
【0096】
図16のステップST16の後に、
図18に示すアノテーションのついた結果を出力してもよい。
図18の結果は、
図2、
図4及び
図5に示す解析報告書R1、R3、R4の生殖細胞変異情報領域D2に出力され得る。
【0097】
なお、本明細書において、変異を検出するとは、リード配列と参照配列とを比較し、変異の有無を判定することを意味し、比較の結果体細胞変異又は生殖細胞変異が有ると判定された場合のみならず、比較の結果変異が無いと判定された場合も含む。
【0098】
以下、核酸配列解析・提示装置10の複数の実施形態について説明する。提示装置10は実施形態に応じて提示装置10A〜10Eまでの符号を付している。
【0099】
(核酸配列解析・提示装置10A)
・核酸配列解析・提示装置10Aの構成
核酸配列解析・提示装置10Aのハードウェア構成は、
図8に示した核酸配列解析・提示装置10と同じである。核酸配列解析・提示装置10Aは、ユーザの入力にしたがって、解析報告書の提示様式の選択の要否を決定する。
【0100】
図19に、核酸配列解析・提示装置10Aの、核酸配列解析・提示処理に関する機能についての機能ブロック図を示す。核酸配列解析・提示装置10Aは、リード配列情報取得部1、配列決定部2、変異検出部3、レポート生成部4A、フォーム選択部5A、参照配列データベース6、及び変異データベース7を含む。
【0101】
・核酸配列解析・提示装置10Aによる核酸配列解析・提示処理
図20に、提示装置10Aによる核酸配列解析・提示処理を示す。
リード配列情報取得部1は、ステップST101において、
図8に示す核酸配列データ記憶装置300からリード配列のデータを取得する。このステップにおける処理は
図11のステップST1と同じである。
【0102】
フォーム選択部5Aは、ステップST102において、ユーザによる解析報告書の提示様式であるレポートフォームの選択を受け付ける。
図21にレポートフォームの選択ダイアログW1の例を示す。フォーム選択部5Aは、
図8に示す出力部107に選択ダイアログW1を表示させる。選択ダイアログW1において、偶発的所見をレポートに記載するか否かの問い合わせが表示される。問い合わせのための表現は、「生殖細胞変異をレポートに記載しますか?」等の他の表現であってもよい。ユーザは選択ダイアログW1内の「いいえ」アイコンW11又は「はい」アイコンW12を、入力部106であるマウス等によるクリック、又はタッチパネル上でタッチすることにより選択する。フォーム選択部5Aは、ユーザによるアイコンの選択を受け付ける。
【0103】
配列決定部2は、
図20のステップST103aにおいて、
図11のステップST2〜5の処理を実行し、正常リード配列および腫瘍リード配列をそれぞれ参照配列にアライメントする。
【0104】
変異検出部3は、
図20のステップST103bにおいて、
図14のステップST23〜ST27および
図16のST13〜ST16の処理を実行し、体細胞変異および生殖細胞変異を検出し、アノテーションを付与する。
【0105】
フォーム選択部5Aは、
図20のステップST102において、「いいえ」アイコンW11の選択が受け付けられていれば、ステップST104において秘匿フォームが選択されている(Yes)と判断する。この場合、ステップST105に進み、レポート生成部4Aは、秘匿フォームでレポートを作成する。秘匿レポートR2、秘匿レポートR3、又は秘匿レポートR4のいずれの様式で解析報告書を生成するかは、あらかじめ、ユーザによって決定されていてもよく、ステップST102において、ユーザの選択を受け付けてもよい。
【0106】
フォーム選択部5Aは、ステップST102において、「はい」アイコンW12の選択が受け付けられていれば、秘匿フォームが選択されていない(No)と判断する。この場合、ステップST106に進み、レポート生成部4Aは、通常フォームにより
図2に記載の通常レポートR1を生成する。
ここで、ステップST102とステップST103は、どちらを先に行ってもよい。
【0107】
(核酸配列解析・提示装置10B)
・核酸配列解析・提示装置10Bの構成
核酸配列解析・提示装置10Bのハードウェア構成は、
図8に示した核酸配列解析・提示装置10と同じである。核酸配列解析・提示装置10Bは、関連データとして取得した所定情報にしたがって、解析報告書の提示様式の選択の要否を決定する。所定情報は、上記<解析方法の概要と用語の説明>で説明した通りである。
【0108】
図22に、核酸配列解析・提示装置10Bの、核酸配列解析・提示処理に関する機能についての機能ブロック図を示す。核酸配列解析・提示装置10Bは、リード配列情報取得部1と、配列決定部2と、変異検出部3と、レポート生成部4Bと、フォーム選択部5Bと、参照配列データベース6と、変異データベース7とを備える。リード配列情報取得部1と、配列決定部2と、変異検出部3と、レポート生成部4Bと、フォーム選択部5Bと、参照配列データベース6と、変異データベース7は、
図19に示す同一符号のブロックと同じ機能を有する。
【0109】
・核酸配列解析・提示装置10Bによる核酸配列解析・提示処理1
図23に、核酸配列解析・提示装置10Bによる核酸配列解析・提示処理を示す。
リード配列情報取得部1は、ステップST111において、
図24に例示するダイアログW2又は
図25に例示するダイアログW3を出力部107に表示させ、ユーザによるダイアログ内への入力を受け付けることにより、リード配列のデータと関連データを取得する。
【0110】
図24は、所定情報が、ユーザによって選択された提示様式に関する情報である場合の例である。ダイアログW2は、リード配列データの配列名(
図10を参照)を入力するリード配列名入力領域W21と、リード配列データの読取処理を開始するためのアイコンW22と、偶発的所見をレポートに記載するか否かをユーザに選択させるための「いいえ」アイコンW23及び「はい」アイコンW24を備える。ユーザが、リード配列名入力領域W21に解析報告書を作成したいリード配列情報の配列名を入力し、アイコンW22をマウス等によるクリック、又はタッチパネル上でタッチすることにより選択することで、リード配列情報取得部1はリード配列情報を読み込む。リード配列名入力領域W21は、シーケンサー30が生成したリード配列情報がプルダウンリストで表示されてもよい。また、フォーム選択部5Aは、偶発的所見をレポートに記載するか否かについて、ユーザによる「いいえ」アイコンW23又は「はい」アイコンW24のマウス等によるクリック、又はタッチパネル上でタッチすることによる選択を受け付ける。
【0111】
図25は、所定情報が、患者に関する情報、解析依頼に関する情報、解析依頼元情報等である場合の例である。ダイアログW3は、リード配列データの配列名(
図10を参照)を入力するリード配列名入力領域W31と、リード配列データの読取処理を開始するためのアイコンW32と、所定情報を入力するための関連データファイル名の入力領域W34と関連データファイルの読取処理を開始するためのアイコンW35とを備える。ユーザが、リード配列名入力領域W31に解析報告書を作成したいリード配列情報の配列名を入力し、アイコンW32をマウス等によるクリック、又はタッチパネル上でタッチすることにより選択することで、リード配列情報取得部1はリード配列情報を読み込む。リード配列名入力領域W31は、シーケンサー30が生成したリード配列情報がプルダウンリストで表示されてもよい。また、ユーザが関連データファイル名の入力領域W34に所望の関連データファイル名を入力し、アイコンW35をマウス等によるクリック、又はタッチパネル上でタッチすることにより選択することで、フォーム選択部5Aは関連データファイルを読み込む。ここで、
図25に示す例では、関連データファイルに、検査項目を識別するための検査ID、患者を特定するための患者ID、患者の生年月日、年齢、性別、疾患名、患者のインフォームドコンセント内容(IC)、担当医ID等が含まれている。
【0112】
配列決定部2は、
図23のステップST112aにおいて、
図11のステップST2〜5の処理を実行し、正常リード配列および腫瘍リード配列をそれぞれ参照配列にアライメントする。
【0113】
変異検出部3は、
図23のステップST112bにおいて、
図14のステップST23〜ST27および
図16のST13〜ST16の処理を実行し、体細胞変異および生殖細胞変異を検出し、アノテーションを付与する。
【0114】
フォーム選択部5Bは、ステップST112bで取得した情報に基づき、ステップST113において生殖細胞変異が検出されたか否かを判定する。ステップST113において生殖細胞変異ありと判断した場合(「Yes」の場合)には、ステップST114に進む。フォーム選択部5Bは、ステップST111で入力された関連データに基づいて、偶発的所見の秘匿が必要か否かを判断する。具体的には、ステップST111において、
図24に示すダイアログW2の「いいえ」アイコンW23が選択されていれば、フォーム選択部5Bは、ステップST114において偶発的所見の秘匿が必要(Yes)と判断する。また、フォーム選択部5Bは、ステップST114において、
図25に示す関連データファイル名の入力領域W34を介して入力を受け付けた名前のファイル内の情報に基づいて、偶発的所見の秘匿が必要か否かを判断する。ステップST114において偶発的所見の秘匿が必要(Yes)と判断する場合には、ステップST115に進み、レポート生成部4Bは、秘匿フォームでレポートを作成する。秘匿レポートR2、秘匿レポートR3、又は秘匿レポートR4のいずれの様式で解析報告書を生成するかは、あらかじめ、ユーザによって決定されていてもよく、ステップST111において、ユーザからの選択を受け付けてもよい。
【0115】
ステップST113において変異検出部3により生殖細胞変異が検出されなかった場合、及びステップST114でフォーム選択部5Bにより偶発的所見の秘匿が不要(No)と判断された場合、ステップST116に進み、レポート生成部5Bは、通常フォームにより
図2に記載の通常レポートR1を生成する。
【0116】
・核酸配列解析・提示装置10Bによる核酸配列解析・提示処理2
図26に、核酸配列解析・提示装置10Bによる核酸配列解析・提示処理の変形例を示す。
図26のステップST131からST134までは、
図23のステップST111からST114と同じである。
【0117】
図22に示すフォーム選択部5Bは、ステップST134において偶発的所見の秘匿が必要(Yes)と判断した場合、ステップST135に進み、秘匿レポートR2、秘匿レポートR3、又は秘匿レポートR4のいずれの様式で解析報告書を生成するかのユーザの選択を受け付ける。レポート生成部4Bは、受け付けられた様式でステップST136においてレポートを生成する。
【0118】
ステップST133において変異検出部3により生殖細胞変異が検出されなかった場合、及びステップST134でフォーム選択部5Bにより偶発的所見の秘匿が不要(No)と判断された場合、ステップST137に進み、レポート生成部4Bは、通常フォームにより
図2に記載の通常レポートR1を生成する。
【0119】
(核酸配列解析・提示装置10C)
・核酸配列解析・提示装置10Cの構成
核酸配列解析・提示装置10Cのハードウェア構成は、
図8に示した核酸配列解析・提示装置10と同じである。核酸配列解析・提示装置10Cは、関連データとして取得した所定情報の中の結果閲覧者のアカウント情報にしたがって、解析報告書の提示様式の選択の要否を決定する。
【0120】
図27に、核酸配列解析・提示装置10Cの、核酸配列解析・提示処理に関する機能についての機能ブロック図を示す。核酸配列解析・提示装置10Cは、リード配列情報取得部1、配列決定部2、変異検出部3、レポート生成部4C、フォーム選択部5C、参照配列データベース6、及び変異データベース7、アカウントデータベース9を含む。
【0121】
アカウントデータベース9は、
図8に示す制御部100の記憶装置103に格納されている。アカウントデータベース9には、例えば、
図28に示すデータが格納されている。
図28において、IDはレポートの閲覧者を特定する識別子である。開示条件は、生殖細胞変異に関する情報の開示条件を示す。インフォームドコンセントは、患者が本人への生殖細胞変異に関する情報の開示に同意しているか否かを示す。例えば、ID:AAAはインフォームドコンセントの有無にかかわらず(N/A)、生殖細胞変異に関する情報を全て開示することを示している。このようなアカウントは、例えば遺伝子解析のエキスパートや、患者の生殖細胞変異の知得を希望する担当医師等が取得することができる。また、ID:BBBは、患者がインフォームドコンセントにおいて本人への生殖細胞変異に関する情報の開示に同意しており、生殖細胞変異に関する情報を全て開示することを示している。このようなアカウントは、例えば遺伝子解析のエキスパートや、患者の生殖細胞変異の知得を希望する担当医師、また、生殖細胞変異の知得を希望する患者自身が取得することができる。ID:CCCは、患者がインフォームドコンセントにおいて本人への生殖細胞変異に関する情報の開示に同意しておらず、偶発的所見である生殖細胞変異に関する情報を全て秘匿することを示している。このようなアカウントは、インフォームドコンセントにおいて本人への生殖細胞変異に関する情報の開示に同意していない患者や、患者の生殖細胞変異の知得を希望しない担当医師等が取得することができる。
【0122】
・核酸配列解析・提示装置10Cによる核酸配列解析・提示処理1
提示装置10Cには、例えばクラウド等のネットワークを経由して、上記アカウント保有者が外部のコンピュータからアクセスを行うこともできる。
【0123】
図29に、酸配列解析・提示装置10Cによる核酸配列解析・提示処理を示す。リード配列情報取得部1は、
図29(A)のステップST41において、リード配列情報取得部1は、リード配列のデータを取得する。
【0124】
配列決定部2は、
図29(A)のステップST42aにおいて、
図11のステップST2〜5の処理を実行し、正常リード配列および腫瘍リード配列をそれぞれ参照配列にアライメントする。
【0125】
変異検出部3は、
図29(A)のステップST42bにおいて、
図14のステップST23〜ST27および
図16のST13〜ST16の処理を実行し、体細胞変異および生殖細胞変異を検出し、アノテーションを付与する。
【0126】
レポート生成部4Cおよびフォーム選択部5Cは、アカウントを有するユーザがアクセスするまで、解析報告書の選択および生成を行わずに待機する。
【0127】
アカウントを有するユーザがネットワーク経由で提示装置10CのI/F部105を介して制御部100にアクセスを開始すると、レポート生成部4Cおよびフォーム選択部5Cは解析報告書の選択および生成処理を開始する。
【0128】
図29(B)のステップST141において、フォーム選択部5Cは、アカウントを有するユーザが送信したログイン情報をI/F部105を介して取得し、ログインを受け付ける。
【0129】
ステップST142において、フォーム選択部5Cは、アカウントを有するユーザが送信したレポート出力要求を受け付ける。
【0130】
ステップST143において、フォーム選択部5Cが生殖細胞変異があると判定した場合(「Yes」の場合)には、ステップST144に進む。
【0131】
ステップST144において、フォーム選択部5Cはユーザが送信したアカウント情報に含まれるアカウントIDをアカウントデータベース9に格納されているアカウントIDと照合し、例えば、アカウントIDがCCCの場合には、生殖細胞変異に関する情報の開示条件にしたがって偶発的所見の秘匿が必要(Yes)と判断し、ステップST145に進む。
【0132】
ステップST145において、レポート生成部4Cは、
図20のステップST105と同様に秘匿フォームの解析報告書を生成する。
【0133】
ステップST143において、フォーム選択部5Cが生殖細胞変異がないと判定した場合(「No」の場合)、及びステップST144において、アカウントIDがAAA又はBBBであり偶発的所見の秘匿が不要(No)と判断した場合には、ステップST146に進み、レポート生成部4Cは、通常フォームにより
図2に記載の通常レポートR1を生成する。
【0134】
・核酸配列解析・提示装置10Cによる核酸配列解析・提示処理2
提示装置10Cには、例えばクラウド等のネットワークを経由して、上記アカウント保有者が外部のコンピュータからアクセスを行うこともできる。
【0135】
図30を用いて、酸配列解析・提示装置10Cによる核酸配列解析・提示処理の変形例を示す。
図30(A)に示すステップST51及びST52は、
図29(A)に示すステップST41及びST42と同じである。
【0136】
図30(B)のステップST151、ST152、ST153、ST155、及びST156は、
図29(B)のステップST141、ST142、ST143、ST145、及びST146と同じである。
【0137】
ステップST154において、フォーム選択部5Cはユーザが送信したアカウント情報に含まれるアカウントIDをアカウントデータベース9に格納されているアカウントIDと照合し、
図31に示すダイアログW4をユーザのコンピュータのディスプレイに表示させる。ダイアログW4は、患者又はユーザが、患者の生殖細胞変異に関する情報の開示に同意しているか否かを確認するための「非同意」アイコンW41及び「同意」アイコンW42を備える。制御部100が患者又はユーザによる「非同意」アイコンW41の選択を受け付けた場合には、ステップST155に進む。制御部100が患者又はユーザによる「同意」アイコンW42の選択を受け付けた場合には、ステップST156に進む。
【0138】
(核酸配列解析・提示装置10D)
・核酸配列解析・提示装置10Dの構成
核酸配列解析・提示装置10Dのハードウェア構成は、
図8に示した核酸配列解析・提示装置10と同じである。核酸配列解析・提示装置10Dは、ユーザにより秘匿レポートR2による解析報告書の生成が選択された場合であっても、生殖細胞変異が特定の遺伝子であった場合に、秘匿レポートR3又は秘匿レポートR4の提示様式で解析報告書を生成する。
【0139】
図32に、核酸配列解析・提示装置10Dの、核酸配列解析・提示処理に関する機能についての機能ブロック図を示す。核酸配列解析・提示装置10Dは、リード配列情報取得部1、配列決定部2、変異検出部3、レポート生成部4D、フォーム選択部5D、参照配列データベース6、及び変異データベース7を含む。
【0140】
・核酸配列解析・提示装置10Dによる核酸配列解析・提示処理
図33を用いて、酸配列解析・提示装置10Dによる核酸配列解析・提示処理を示す。
図33において、ステップST161からST164、及びステップST167は、
図23に示すステップST111からST114、及びステップST116とそれぞれ同じである。
【0141】
ステップST163において検出された生殖細胞変異が、例えば
図6に示す特定の生殖細胞変異に該当するか否かを、ステップST165においてフォーム選択部5Dが判定する。生殖細胞変異が特定の生殖細胞変異に該当する場合(「Yes」の場合)、フォーム選択部5Dは、あらかじめ選択された秘匿フォームが秘匿レポートR2の生殖細胞変異に関する情報を完全に秘匿する様式であったとしても、ステップST166に進み、レポート生成部4Dは、秘匿レポートR3又はR4の生殖細胞変異に関する情報の少なくとも一部が開示される様式で解析報告書を生成する。
【0142】
ステップST165において、フォーム選択部5Dが、ステップST163で検出された生殖細胞変異が特定の生殖細胞変異に該当しない(No)と判定した場合には、ステップST168に進み、レポート生成部4Dは、秘匿レポートR2の様式で解析報告書を生成する。
【0143】
(核酸配列解析・提示装置10E)
・核酸配列解析・提示装置10Eの構成
核酸配列解析・提示装置10Eのハードウェア構成は、
図8に示した核酸配列解析・提示装置10と同じである。核酸配列解析・提示装置10Eは、提示装置10Eが関連データとして取得した、所定情報の中の患者が保有する疾患名にしたがって解析報告書の提示様式を変更する。
【0144】
図34に、提示装置10Eの核酸配列解析・提示処理に関する機能についての機能ブロック図を示す。核酸配列解析・提示装置10Eは、リード配列情報取得部1、配列決定部2、変異検出部3、レポート生成部4E、フォーム選択部5E、参照配列データベース6、及び変異データベース7、疾患情報データベース11を含む。
【0145】
図35に示す疾患情報データベース11は、記憶装置103に格納される。
図35に示す例では、疾患情報データベース11には、生殖細胞変異が報告されている遺伝子名、変異位置が、関連する疾患と関連付けられて記憶されている。
【0146】
・核酸配列解析・提示装置10Eによる核酸配列解析・提示処理
図36を用いて酸配列解析・提示装置10Eによる核酸配列解析・提示処理を示す。
図36において、ステップST171〜ST174、ST176、ST177及びST178は、
図33に示すステップST161〜ST164、ST166、ST167及びST168と同じである。
【0147】
フォーム選択部5Eは、ステップST175において、ステップST173で生殖細胞変異が検出された遺伝子名を疾患情報データベース11と照合する。フォーム選択部5Eは、ステップST173で生殖細胞変異が検出された遺伝子名が疾患情報データベース11に存在する場合には、その遺伝子が関連する疾患名を、ステップST171で入力された患者の疾患名と照合する。ステップST173で検出された生殖細胞変異に関連する疾患が、ステップST171で入力された患者の疾患名と一致する場合(「Yes」の場合)には、フォーム選択部5EはステップST176に進み、あらかじめ選択された秘匿フォームが秘匿レポートR2の生殖細胞変異に関する情報を完全に秘匿する様式であったとしても、レポート生成部4Eは、秘匿レポートR3又はR4の生殖細胞変異に関する情報の少なくとも一部が開示される様式で解析報告書を生成する。
【0148】
また、ステップST175において、ステップST173で検出された生殖細胞変異に関連する疾患が、ステップST171で入力された患者の疾患名と一致しない場合(「No」の場合)には、フォーム選択部5EはステップST177に進み、レポート生成部4Eは、秘匿レポートR2の様式で解析報告書を生成する。
【0149】
[コンピュータプログラム]
図11に示すステップST1〜ST5、
図14に示すステップST21〜27、及び
図16に示すステップST11〜ST16は核酸配列解析用のコンピュータプログラムとして、コンピュータ上で実行されうる。
図20に示すステップST101〜ST106、
図23に示すST111〜ST116、
図26に示すステップST131〜ST137、
図29に示すステップST141〜ST146、
図30に示すステップST151〜ST156、
図33に示すステップST161〜ST168及び
図36に示すステップST171〜ST178は、核酸配列の解析結果の提示用のコンピュータプログラムとして、コンピュータ上で実行されうる。
【0150】
さらに、前記コンピュータプログラムは、記憶媒体等のプログラム製品として提供されうる。前記コンピュータプログラムは、ハードディスク、フラッシュメモリ等の半
導体メモリ素子、光ディスク等の記憶媒体に記憶される。前記記憶媒体へのプログラムの記憶形式は、前記制御部が前記プログラムを読み取り可能である限り制限されない。前記記憶媒体への記憶は、不揮発性であることが好ましい。
【0151】
[その他の態様]
本発明の実施形態は、上記実施形態に限定して解釈されるものではない。
【0152】
上記酸配列解析・提示装置10A〜10Eは、変異の解析を行う装置として説明されているが、解析報告書の提示様式を選択する機能と、解析報告書R1,R2,R3,R4を生成する機能のみを備えた装置と、変異の解析を行う装置とが別であってもよい。また、変異の解析を行う装置が、シーケンサー30に組み込まれて入れもよい。
図37に、解析報告書R1,R2,R3,R4を生成する機能のみを備えた提示装置10Fの機能ブロック図を示す。提示装置10Fのハードウェア構成は、
図8に示した核酸配列解析・提示装置10と同じである。提示装置10Fは、変異読込部21、レポート生成部4F、フォーム選択部5Fを含む。変異読込部21は、例えば
図20のステップST103bで検出された変異情報を入力部106を介して受け付ける。レポート生成部4F、フォーム選択部5Fは、それぞれ、レポート生成部4A〜4E、フォーム選択部5A〜5Eと同じ機能を有していてもよい。