(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記測距センサは、前記電荷蓄積領域として1つの領域のみを有すると共に、前記転送ゲート電極として1つの電極のみを有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の距離画像取得装置。
前記制御部は、前記出射タイミングを固定して、前記転送タイミングを前記出射タイミングからずらすことにより、前記出射タイミングと前記転送タイミングとの間の前記時間差を前記複数の区間の間で異ならせる、請求項1〜5のいずれか一項に記載の距離画像取得装置。
前記制御部は、前記転送タイミングを固定して、前記出射タイミングを前記転送タイミングからずらすことにより、前記出射タイミングと前記転送タイミングとの間の前記時間差を前記複数の区間の間で異ならせる、請求項1〜5のいずれか一項に記載の距離画像取得装置。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図において同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
[距離画像取得装置]
【0020】
図1に示されるように、距離画像取得装置1は、光源2と、測距センサ10と、信号処理部3と、制御部4と、表示部5と、を備えている。距離画像取得装置1は、間接TOF方式を利用して対象物OJの距離画像を取得する装置である。距離画像は、対象物OJまでの距離dに関する情報を含む画像である。
【0021】
光源2は、パルス光(測定光)Lを出射する。光源2は、例えば赤外LED等を含んでいる。パルス光Lは、例えば近赤外光であり、パルス光Lの周波数は、例えば10kHz以上である。測距センサ10は、光源2から出射されて対象物OJで反射されたパルス光Lを検出する。測距センサ10は、画素部11及びCMOS読出し回路部12が半導体基板(例えばシリコン基板)にモノリシックに形成されることにより構成されている。測距センサ10は、信号処理部3上に実装されている。
【0022】
信号処理部3は、測距センサ10の画素部11及びCMOS読出し回路部12を制御する。信号処理部3は、測距センサ10から出力された信号に所定の処理を施して検出信号を生成する。制御部4は、光源2及び信号処理部3を制御する。制御部4は、信号処理部3から出力された検出信号に基づいて対象物OJの距離画像を生成する。表示部5は、制御部4によって生成された対象物OJの距離画像を表示する。
[測距センサ]
【0023】
図2、
図3及び
図4に示されるように、測距センサ10は、画素部11において、半導体層20と、電極層40と、を備えている。半導体層20は、第1表面20a及び第2表面20bを有している。第1表面20aは、半導体層20の厚さ方向における一方側の表面である。第2表面20bは、半導体層20の厚さ方向における他方側の表面である。電極層40は、第1表面20a上に設けられている。
【0024】
半導体層20及び電極層40は、第1表面20aに沿って配置された複数の画素11aを構成している。複数の画素11aは、例えば、第1表面20aに沿って2次元に配列されている。これらの画素11aにより距離画像が構成される。距離画像においては、各画素11aが対象物OJまでの距離dに関する情報を含む。以下、半導体層20の厚さ方向をZ方向といい、Z方向に垂直な一方向をX方向といい、Z方向及びX方向の両方向に垂直な方向をY方向という。Z方向における一方側を第1側といい、Z方向における他方側(第1側とは反対側)を第2側という。
図2では、後述する配線層60の図示が省略されている。
【0025】
各画素11aは、半導体層20において、半導体領域21と、アバランシェ増倍領域22と、電荷振分領域23と、一対の電荷蓄積領域24,25と、一対の電荷排出領域26,27と、複数の電荷阻止領域28と、ウェル領域31と、LOCOS(Local Oxidation of Silicon)領域33と、バリア領域34と、一対のシンク領域35と、を有している。各領域21〜28,31〜35は、半導体基板(例えばシリコン基板)に対して各種処理(例えば、エッチング、成膜、不純物注入等)を実施することにより形成される。
【0026】
半導体領域21は、p型(第1導電型)の領域であり、半導体層20において第2表面20bに沿って設けられている。一例として、半導体領域21は、1×10
15cm
−3以下のキャリア濃度を有するp型の領域であり、その厚さは、10μm程度である。
【0027】
アバランシェ増倍領域22は、第1増倍領域22a及び第2増倍領域22bを含んでいる。第1増倍領域22aは、p型の領域であり、半導体層20において半導体領域21の第1側に形成されている。一例として、第1増倍領域22aは、1×10
16cm
−3以上のキャリア濃度を有するp型の領域であり、その厚さは、1μm程度である。第2増倍領域22bは、n型(第2導電型)の領域であり、半導体層20において第1増倍領域22aの第1側に形成されている。一例として、第2増倍領域22bは、1×10
16cm
−3以上のキャリア濃度を有するn型の領域であり、その厚さは、1μm程度である。第1増倍領域22a及び第2増倍領域22bは、pn接合を形成している。
【0028】
電荷振分領域23は、n型の領域であり、半導体層20において第2増倍領域22bの第1側に形成されている。一例として、電荷振分領域23は、5×10
15〜1×10
16cm
−3のキャリア濃度を有するn型の領域であり、その厚さは、1μm程度である。
【0029】
各電荷蓄積領域24,25は、n型の領域であり、半導体層20において第2増倍領域22bの第1側に形成されている。各電荷蓄積領域24,25は、電荷振分領域23と接続されている。一対の電荷蓄積領域24,25は、電荷振分領域23における第1側の部分を挟んで、X方向において向かい合っている。一例として、各電荷蓄積領域24,25は、1×10
18cm
−3以上のキャリア濃度を有するn型の領域であり、その厚さは、0.2μm程度である。電荷振分領域23における第2側の部分は、各電荷蓄積領域24,25と第2増倍領域22bとの間に入り込んでいる。
【0030】
各電荷排出領域26,27は、n型の領域であり、半導体層20において第2増倍領域22bの第1側に形成されている。各電荷排出領域26,27は、電荷振分領域23と接続されている。一対の電荷排出領域26,27は、電荷振分領域23における第1側の部分を挟んで、Y方向において向かい合っている。一例として、各電荷排出領域26,27は、1×10
18cm
−3以上のキャリア濃度を有するn型の領域であり、その厚さは、0.2μm程度である。電荷振分領域23における第2側の部分は、各電荷排出領域26,27と第2増倍領域22bとの間に入り込んでいる。
【0031】
各電荷阻止領域28は、p型の領域であり、半導体層20において各電荷蓄積領域24,25と電荷振分領域23(電荷振分領域23における第2側の部分)との間に形成されている。一例として、各電荷阻止領域28は、1×10
17〜1×10
18cm
−3のキャリア濃度を有するp型の領域であり、その厚さは、0.2μm程度である。
【0032】
ウェル領域31は、p型の領域であり、半導体層20において第2増倍領域22bの第1側に形成されている。ウェル領域31は、Z方向から見た場合に電荷振分領域23を包囲している。LOCOS領域33は、半導体層20においてウェル領域31の第1側に形成されている。LOCOS領域33は、ウェル領域31と接続されている。ウェル領域31は、LOCOS領域33と共に複数の読出し回路(例えば、ソースフォロワアンプ、リセットトランジスタ等)を構成している。複数の読出し回路は、それぞれ、電荷蓄積領域24,25と電気的に接続されている。一例として、ウェル領域31は、1×10
16〜5×10
17cm
−3のキャリア濃度を有するp型の領域であり、その厚さは、1μm程度である。画素部と読出し回路部とを電気的に分離するための構造としては、LOCOS領域33に代えて、STI(Shallow Trench Isolation)が用いられてもよいし、或いは、ウェル領域31のみが用いられてもよい。
【0033】
バリア領域34は、n型の領域であり、半導体層20において第2増倍領域22bとウェル領域31との間に形成されている。バリア領域34は、Z方向から見た場合にウェル領域31を含んでいる。すなわち、ウェル領域31は、Z方向から見た場合にバリア領域34内に位置している。バリア領域34は、電荷振分領域23を包囲している。バリア領域34のn型不純物の濃度は、第2増倍領域22bのn型不純物の濃度よりも高い。一例として、バリア領域34は、第2増倍領域22bのキャリア濃度から第2増倍領域22bのキャリア濃度の2倍程度までのキャリア濃度を有するn型の領域であり、その厚さは、1μm程度である。
【0034】
各シンク領域35は、n型の領域であり、半導体層20においてバリア領域34の第1側に形成されている。各シンク領域35における第2側の端部は、バリア領域34と接続されている。各シンク領域35における第1側の端部は、各電荷排出領域26,27と接続されている。各電荷排出領域26,27のn型不純物の濃度は、各シンク領域35のn型不純物の濃度よりも高く、各シンク領域35のn型不純物の濃度は、バリア領域34のn型不純物の濃度及びウェル領域31のp型不純物の濃度よりも高い。一例として、各シンク領域35は、ウェル領域31のキャリア濃度以上のキャリア濃度を有するn型の領域であり、その厚さは、各電荷排出領域26,27とバリア領域34との間の距離に依存する。
【0035】
各画素11aは、電極層40において、フォトゲート電極41と、一対の第1転送ゲート電極42,43と、一対の第2転送ゲート電極44,45と、有している。各ゲート電極41〜45は、絶縁膜46を介して半導体層20の第1表面20a上に形成されている。絶縁膜46は、例えば、シリコン窒化膜、シリコン酸化膜等である。
【0036】
フォトゲート電極41は、電極層40において電荷振分領域23の第1側に形成されている。フォトゲート電極41は、導電性及び光透過性を有する材料(例えばポリシリコン)によって形成されている。一例として、フォトゲート電極41は、Z方向から見た場合に、X方向において向かい合う2辺、及びY方向において向かい合う2辺を有する矩形状を呈している。
【0037】
半導体領域21、アバランシェ増倍領域22及び電荷振分領域23のうち、フォトゲート電極41の直下の領域(Z方向から見た場合にフォトゲート電極41と重なる領域)は、入射光に応じて電荷を発生させる電荷発生領域(光吸収領域、光電変換領域)36として機能する。換言すれば、フォトゲート電極41は、電荷発生領域36上に配置されている。電荷発生領域36においては、半導体領域21において発生した電荷が、アバランシェ増倍領域22において増倍され、電荷振分領域23において振り分けられる。
【0038】
第1転送ゲート電極42は、電荷振分領域23における電荷発生領域36と電荷蓄積領域24との間の領域上に配置されている。第1転送ゲート電極43は、電荷振分領域23における電荷発生領域36と電荷蓄積領域25との間の領域上に配置されている。各第1転送ゲート電極42,43は、導電性及び光透過性を有する材料(例えばポリシリコン)によって形成されている。一例として、各第1転送ゲート電極42,43は、Z方向から見た場合に、X方向において向かい合う2辺、及びY方向において向かい合う2辺を有する矩形状を呈している。
【0039】
第2転送ゲート電極44は、電荷振分領域23における電荷発生領域36と電荷排出領域26との間の領域上に配置されている。第2転送ゲート電極45は、電荷振分領域23における電荷発生領域36と電荷排出領域27との間の領域上に配置されている。各第2転送ゲート電極44,45は、導電性及び光透過性を有する材料(例えばポリシリコン)によって形成されている。一例として、各第2転送ゲート電極44,45は、Z方向から見た場合に、X方向において向かい合う2辺、及びY方向において向かい合う2辺を有する矩形状を呈している。
【0040】
測距センサ10は、画素部11において、対向電極50と、配線層60と、を更に備えている。対向電極50は、半導体層20の第2表面20b上に設けられている。対向電極50は、Z方向から見た場合に複数の画素11aを含んでいる。対向電極50は、Z方向において電極層40と向かい合っている。対向電極50は、例えば金属材料によって形成されている。配線層60は、電極層40を覆うように半導体層20の第1表面20aに設けられている。配線層60は、各画素11a及びCMOS読出し回路部12(
図1参照)と電気的に接続されている。配線層60のうち各画素11aのフォトゲート電極41と向かい合う部分には、光入射開口60aが形成されている。
【0041】
半導体層20には、各画素11aを互いに分離するようにトレンチ29が形成されている。トレンチ29は、半導体層20の第1表面20aに形成されている。トレンチ29の底面29aは、アバランシェ増倍領域22に対して第2側に位置している。すなわち、トレンチ29は、アバランシェ増倍領域22を完全に分離している。トレンチ29内には、シリコン酸化物等の絶縁材料47が配置されている。絶縁材料47の代わりに、タングステン等の金属材料、ポリシリコン等がトレンチ29内に配置されていてもよい。
【0042】
各画素11aにおいて、アバランシェ増倍領域22は、トレンチ29に至っている。アバランシェ増倍領域22は、アバランシェ増倍を引き起こす領域である。各画素11aでは、所定値の逆方向バイアスが印加された場合に3×10
5〜4×10
5V/cmの電界強度を発生し得るアバランシェ増倍領域22が、トレンチ29によって包囲された領域全体に広がっている。
[距離画像取得方法]
【0043】
距離画像取得装置1の動作例(距離画像取得方法)を説明する。以下の動作は、制御部4が各部の駆動を制御することにより実現される。まず、測距センサ10によるパルス光Lの検出方法について説明する。
【0044】
測距センサ10の各画素11aにおいては、フォトゲート電極41の電位を基準として負の電圧(例えば−50V)が対向電極50に印加される。すなわち、アバランシェ増倍領域22に形成されたpn接合に逆方向バイアスが印加される。これにより、アバランシェ増倍領域22に3×10
5〜4×10
5V/cmの電界強度が発生する。この状態で、光入射開口60a及びフォトゲート電極41を介して半導体層20にパルス光Lが入射すると、パルス光Lの吸収によって発生した電荷(電子)が、アバランシェ増倍領域22で増倍されて電荷振分領域23に高速で移動する。
【0045】
各画素11aの第1転送ゲート電極42,43には、パルス電圧信号(後述する電圧信号TX1,TX2)が印加される。第1転送ゲート電極42,43に印加されるパルス電圧信号は、例えば、フォトゲート電極41の電位を基準として正の電圧(オン)及び負の電圧(オフ)が交互に繰り返される電圧信号である。第1転送ゲート電極42に正の電圧が印加されている期間には、電荷が電荷振分領域23から電荷蓄積領域24に高速で転送され、第1転送ゲート電極43に正の電圧が印加されている期間には、電荷が電荷振分領域23から電荷蓄積領域25に高速で転送される。
【0046】
第1転送ゲート電極42,43に印加されるパルス電圧信号は、後述するように、互いに異なるタイミングでオンとなるように設定されている。これにより、電荷振分領域23に移動した電荷は、パルス電圧信号に応じた転送タイミングで電荷蓄積領域24,25に転送されて振り分けられる。所定期間の転送によって電荷蓄積領域24,25に蓄積された電荷は、ウェル領域31等によって構成された読出し回路、及び配線層60を介して、信号としてCMOS読出し回路部12(
図1参照)に転送されて読み出される。電荷蓄積領域24,25に蓄積された電荷の量は、第1転送ゲート電極42,43に正の電圧が印加されている期間に電荷発生領域36に入射したパルス光Lの光量(強度)に対応する。このように、測距センサ10では、対象物OJで反射されたパルス光Lの入射に応じて電荷発生領域36において発生した電荷を第1転送ゲート電極42,43を用いて電荷蓄積領域24,25に転送することにより、パルス光Lを検出することができる。
【0047】
続いて、
図5及び
図6を参照しつつ、距離画像取得装置1の動作例を説明する。
図5及び
図6に示されるように、この距離画像取得方法では、測定対象の全距離範囲70が複数の区間(単位距離範囲)に分割される。この例では、複数の区間は、5つの区間71A〜71Eを含んでいる。区間71A〜71Eの長さは、互いに等しい。一例として、全距離範囲70は22.5mであり、各区間71A〜71Eの長さは4.5mである。区間71A,71B,71C,71D,71Eは、この順に光源から近い。すなわち、区間71Aは光源2から0m〜4.5mの範囲であり、区間71Bは光源2から4.5m〜9mの範囲であり、区間71Cは光源2から9m〜13.5mの範囲であり、区間71Dは光源2から13.5m〜18mの範囲であり、区間71Eは光源2から18m〜22.5mの範囲である。
【0048】
この距離画像取得方法では、各区間71A〜71Eについての測定が実施される。この例では、フレームレートは30fpsであり、1つのデータDTの長さは、33.3msである。データDTは、区間71A〜71Eに対応する5つのサブフレームF1〜F5を含んでいる。すなわち、この距離画像取得方法では、全距離範囲70に対応するフレーム(データDT)が、複数のサブフレームF1〜F5に時分割されている。サブフレームF1〜F5の長さは互いに等しく、この例では6.6msである。
【0049】
各サブフレームF1〜F5は、第1期間P1と、第1期間P1に続く第2期間P2と、を含んでいる。第1期間P1においては、光源2からパルス光Lが出射され、対象物OJで反射されたパルス光Lが測距センサ10により検出される。第2期間P2においては、光源2からパルス光Lが出射されず、背景光のみが測距センサ10により検出される。すなわち、第1期間P1においては測定光及び背景光が検出され、第2期間P2においては背景光のみが検出される。対象物OJの距離画像の生成時には、第1期間P1において取得された信号と第2期間P2において取得された信号との差分が信号光とされる。第1期間P1の長さは第2期間P2の長さと等しく、この例では3.3msである。
【0050】
各サブフレームF1〜F5においては、光源2によるパルス光Lの出射タイミングと第1転送ゲート電極42,43による電荷の転送タイミングとの間の時間差TDを区間71A〜71Eの間で異ならせながら、区間71A〜71Eについての測定が実施される。以下、各サブフレームF1〜F5における動作の詳細を説明する。
図5及び
図6には、光源2から出射されるパルス光Lの強度信号SL、第1転送ゲート電極42に印加される電圧信号TX1、及び第1転送ゲート電極43に印加される電圧信号TX2が示されている。
【0051】
図5及び
図6に示されるように、サブフレームF1においては、第1転送ゲート電極42に印加される電圧信号TX1は、光源2から出射されるパルス光Lの強度信号SLと同一の周期、パルス幅及び位相を有している。すなわち、サブフレームF1では、出射タイミングと転送タイミングとの間の時間差TDは無い(ゼロである)。第1転送ゲート電極43に印加される電圧信号TX2は、第1転送ゲート電極42の電圧信号TX1がオフになった直後に立ち上がってオンとなる。電圧信号TX2は、強度信号SL及び電圧信号TX1と同一の周期及びパルス幅を有している。パルス光L、電圧信号TX1,TX2のパルス幅は、例えば30nsである。電圧信号TX1,TX2の双方がオフである期間においては、第2転送ゲート電極44,45に正の電圧が印加されており、電荷が電荷振分領域23から電荷排出領域26,27に高速で転送される。電荷排出領域26,27に転送された電荷は外部に排出される。
【0052】
図5には、電荷蓄積領域24,25に蓄積された電荷が読み出されるタイミングが符号Rで示されている。
図5に示されるように、サブフレームF1では、第1期間P1及び第2期間P2の各々において、期間の始点及び終点に加えて、始点と終点との間で1回電荷が読み出される。すなわち、読出回数Nは3回である。
【0053】
図1に示されるように、パルス光Lが光源2から出射され、対象物OJで反射されたパルス光Lが測距センサ10で検出されると、測距センサ10で検出されるパルス光Lの強度信号の位相は、光源2から出射されるパルス光Lの強度信号SLの位相に対して、対象物OJまでの距離dに応じてずれることになる。したがって、サブフレームF1において電荷蓄積領域24,25に蓄積された電荷量を画素11aごとに取得することで、区間71Aについての距離画像を生成するためのデータを得ることができる。
【0054】
サブフレームF2においては、第1転送ゲート電極42に印加される電圧信号TX1は、光源2から出射されるパルス光Lの強度信号SLから、位相が時間TSだけずれている。すなわち、サブフレームF2では、時間差TDは時間TSである。時間TSは区間71Bに対応しており、例えば30nsである。この例では、時間TSは、パルス光Lのパルス幅と等しい。電圧信号TX1,TX2はその他の点についてはサブフレームF1と同様である。
図5に示されるように、サブフレームF2では、第1期間P1及び第2期間P2の各々において、期間の始点及び終点で2回電荷が読み出され、読出回数Nは2回である。サブフレームF2において電荷蓄積領域24,25に蓄積された電荷量を画素11aごとに取得することで、区間71Bについての距離画像を生成するためのデータを得ることができる。
【0055】
サブフレームF3においては、第1転送ゲート電極42に印加される電圧信号TX1は、光源2から出射されるパルス光Lの強度信号SLから、位相が時間TSの2倍だけずれている。すなわち、サブフレームF3では、時間差TDは時間2TSである。時間2TSは区間71Cに対応しており、例えば60nsである。電圧信号TX1,TX2はその他の点についてはサブフレームF1と同様である。サブフレームF3の読出回数Nは、サブフレームF2と同様に2回である。サブフレームF3において電荷蓄積領域24,25に蓄積された電荷量を画素11aごとに取得することで、区間71Cについての距離画像を生成するためのデータを得ることができる。
【0056】
サブフレームF4においては、第1転送ゲート電極42に印加される電圧信号TX1は、光源2から出射されるパルス光Lの強度信号SLから、位相が時間TSの3倍だけずれている。すなわち、サブフレームF4では、時間差TDは時間3TSである。時間3TSは区間71Dに対応しており、例えば90nsである。電圧信号TX1,TX2はその他の点についてはサブフレームF1と同様である。サブフレームF4の読出回数Nは、サブフレームF2と同様に2回である。サブフレームF4において電荷蓄積領域24,25に蓄積された電荷量を画素11aごとに取得することで、区間71Dについての距離画像を生成するためのデータを得ることができる。
【0057】
サブフレームF5においては、第1転送ゲート電極42に印加される電圧信号TX1は、光源2から出射されるパルス光Lの強度信号SLから、位相が時間TSの4倍だけずれている。すなわち、サブフレームF5では、時間差TDは時間4TSである。時間4TSは区間71Eに対応しており、例えば120nsである。電圧信号TX1,TX2はその他の点についてはサブフレームF1と同様である。サブフレームF4の読出回数Nは、サブフレームF2と同様に2回である。サブフレームF5において電荷蓄積領域24,25に蓄積された電荷量を画素11aごとに取得することで、区間71Eについての距離画像を生成するためのデータを得ることができる。
【0058】
このように、光源2によるパルス光Lの出射タイミングと第1転送ゲート電極42,43による電荷の転送タイミングとの間の時間差TDを区間71A〜71Eの間で異ならせながら、区間71A〜71Eについての測定が実施される。より具体的には、出射タイミングを固定して、転送タイミングを出射タイミングからずらすことにより、時間差TDが区間71A〜71Eの間で異ならせられる。また、区間71A(サブフレームF1)についての測定では、区間71Aよりも光源2から遠い区間71B〜71E(サブフレームF2〜F5)についての測定の場合よりも高い読出頻度(多くの読出回数N)で、電荷蓄積領域24,25に蓄積された電荷が読み出される。また、サブフレームF1〜F5における第1期間P1の長さが3.3msで互いに等しく、区間71A〜71Eについての測定における電荷蓄積時間(露光時間)が互いに等しい。
【0059】
実施形態の距離画像取得方法では、区間71A〜71Eについての測定結果に基づいて、全距離範囲70の距離画像が生成される。すなわち、上述した区間71A〜71E(サブフレームF1〜F5)についての測定により、区間71A〜71Eの距離画像を生成するためのデータが得られる。それらのデータを合成することで、全距離範囲70の距離画像を生成することができる。
[作用及び効果]
【0060】
以上説明したとおり、距離画像取得装置1では、電荷発生領域36が、アバランシェ増倍を発生させるアバランシェ増倍領域22を含んでいる。これにより、測距センサ10の感度を高めることができ、その結果、測定距離を伸ばすことが可能となる。一方、上述したとおり、一般に、測定距離を伸ばすためにはパルス光Lのパルス幅を広くする必要があり、パルス幅を広くすると距離精度が劣化してしまう。この点、距離画像取得装置1では、測定対象の全距離範囲70が複数の区間71A〜71Eに分割され、光源2によるパルス光Lの出射タイミングと第1転送ゲート電極42,43による転送タイミングとの間の時間差TDを区間71A〜71Eの間で異ならせながら区間71A〜71Eについての測定が実施され、区間71A〜71Eについての測定の結果に基づいて全距離範囲70の距離画像が生成される。これにより、測定距離が長い場合でも、パルス光Lのパルス幅が広くなるのを抑制することができ、距離精度を確保することができる。
【0061】
例えば、距離画像取得装置1とは異なり、区間71A〜71Eへの分割を行わずに全距離範囲70についての測定を行う場合、以下のとおり、パルス幅は150ns程度となる。すなわち、間接TOF方式においては、下記式(1)が成り立つ。
ΔD=cW/2 …(1)
ΔDは距離精度であり、cは光速であり、Wはパルス光Lのパルス幅である。式(1)において距離精度ΔDを22.5mとし、光速cを3×10
8m/sとすると、パルス幅Wは150nsとなる。これに対し、距離画像取得装置1では、上述したとおり、パルス光Lのパルス幅Wは30nsであり、距離精度ΔDは4.5mである。すなわち、区間71A〜71Eへの分割を行わない場合と比べて、距離精度ΔDが1/5(30ns/150ns)に向上する。このように、距離画像取得装置1では、測距レンジを時分割して距離データを取得することで、長距離化を図りつつ距離精度を向上することができる。なお、実際には、上記式(1)の右辺にはN/S比が更に乗算され得る。
【0062】
また、単に区間71A〜71Eへの分割を行った場合、電荷蓄積時間(露光時間)が減少して電荷蓄積量が不足するおそれがあるが、距離画像取得装置1では、電荷発生領域36がアバランシェ増倍領域22を含んでいるため、電荷蓄積量が不足するのを抑制することができる。そのため、電荷蓄積量の不足を補うために電荷蓄積時間を長くする必要が生じ難い。更に、区間71A〜71Eへの分割を行うことで、測距センサ10と対象物との間に透明体又は半透明体が存在することに起因する測定精度の低下を抑制することもできる(マルチエコー)。例えば、距離画像取得装置1とは異なり、区間71A〜71Eへの分割を行わずに全距離範囲70についての測定を行う場合、区間71Aに位置する物体までの距離と区間71Eに位置する物体までの距離が平均された距離が出力されてしまい、測定精度が低下するおそれがある。これに対し、距離画像取得装置1では、区間71A〜71Eへの分割を行うため、そのような測定精度の低下を抑制することができる。以上により、距離画像取得装置1によれば、測定距離を伸ばすことができると共に、距離精度を確保することができる。
【0063】
区間71A(第1区間)についての測定では、区間71Aよりも光源2から遠い区間71B〜71E(第2区間)についての測定の場合よりも高い読出頻度(多くの読出回数N)で、電荷蓄積領域24,25に蓄積された電荷が読み出される。これにより、区間71Aについての測定の際に電荷発生領域36が飽和してしまう信号飽和を抑制することができる。このような飽和の抑制は、電荷発生領域36がアバランシェ増倍領域22を含む場合に特に有効である。区間71Aについての測定において信号飽和が生じ易いのは、光源2から近い区間ほど、対象物OJで反射されて測距センサ10に戻るパルス光Lの強度が高くなるためである。
【0064】
測距センサ10が、一対の電荷蓄積領域24,25と、電荷発生領域36と一対の電荷蓄積領域24,25との間の領域上にそれぞれ配置された一対の第1転送ゲート電極42,43を有している。このような構成においても、測定対象の全距離範囲70を複数の区間71A〜71Eに分割し、出射タイミングと転送タイミングとの間の時間差TDを区間71A〜71Eの間で異ならせながら区間71A〜71Eについての測定を実施することができる。
【0065】
パルス光Lの出射タイミングを固定して、第1転送ゲート電極42,43による電荷の転送タイミングをパルス光Lの出射タイミングからずらすことにより、出射タイミングと転送タイミングとの間の時間差TDが区間71A〜71Eの間で異ならせられる。これにより、出射タイミングと転送タイミングとの間の時間差TDを区間71A〜71Eの間で異ならせることができる。
【0066】
区間71A〜71Eについての測定における電荷蓄積時間(露光時間)が、互いに等しい。これにより、例えば、光源2から遠く電荷蓄積量が不足し易い区間(例えば区間71E)についての測定における電荷蓄積時間を長くする場合と比べて、距離画像の取得を高速化することができる。
[変形例]
【0067】
図7及び
図8に示される第1変形例のように測距センサ10が構成されてもよい。第1変形例の測距センサ10は、電荷蓄積領域24、電荷排出領域26、第1転送ゲート電極42及び第2転送ゲート電極44をそれぞれ1つずつ有している。換言すれば、測距センサ10は、電荷蓄積領域25、電荷排出領域27、第1転送ゲート電極43及び第2転送ゲート電極45を有していない。
【0068】
第1変形例の測距センサ10の各画素11aにおいて、電荷蓄積領域24は、Z方向から見た場合に電荷振分領域23の中央部に配置されている。電荷排出領域26は、Z方向から見た場合に、例えば矩形環状を呈しており、電荷振分領域23の外縁に沿って配置されている。フォトゲート電極41は、Z方向から見た場合に、例えば矩形環状を呈しており、電荷蓄積領域24の外側且つ電荷排出領域26の内側に配置されている。第1転送ゲート電極42は、Z方向から見た場合に、例えば矩形環状を呈しており、電荷蓄積領域24の外側且つフォトゲート電極41の内側に配置されている。第2転送ゲート電極44は、Z方向から見た場合に、例えば矩形環状を呈しており、フォトゲート電極41の外側且つ電荷排出領域26の内側に配置されている。なお、電荷蓄積領域24、電荷排出領域26、フォトゲート電極41、第1転送ゲート電極42及び第2転送ゲート電極44は、八角形等の任意の形状に形成されてよい。
【0069】
図9に示されるように、第1変形例の測距センサ10を用いる場合でも、上記実施形態と同様に、光源2によるパルス光Lの出射タイミングと第1転送ゲート電極42による電荷の転送タイミングとの間の時間差TDを区間71A〜71Eの間で異ならせながら、区間71A〜71Eについての測定を行うことができる。
【0070】
図9では、1つのデータが6つのサブフレームG1〜G6に分割されている。サブフレームG1においては、第1転送ゲート電極42に印加される電圧信号TX1は、光源2から出射されるパルス光Lの強度信号SLと同一の周期、パルス幅及び位相を有している。すなわち、サブフレームG1では、出射タイミングと転送タイミングとの間の時間差TDは無い(ゼロである)。電圧信号TX1がオフである期間においては、第2転送ゲート電極44に正の電圧が印加されており、電荷が電荷振分領域23から電荷排出領域26に高速で転送される。電荷排出領域26に転送された電荷は外部に排出される。
【0071】
サブフレームG2〜G6においては、時間差TDは、それぞれ、時間TS,2TS,3TS,4TS,5TSとなっている。電圧信号TX1はその他の点についてはサブフレームG1と同様である。
【0072】
図9に示されるように、隣り合うサブフレームG1,G2において取得されたデータから、上記実施形態におけるサブフレームF1に対応するデータを得ることができる。同様に、サブフレームG2,G3において取得されたデータから、上記実施形態におけるサブフレームF3に対応するデータを得ることができる。同様に、サブフレームG3〜G6において取得されたデータから、上記実施形態におけるサブフレームF3〜F5に対応するデータを得ることができる。したがって、サブフレームG1〜G6についての測定結果に基づいて、全距離範囲70の距離画像を生成することができる。このような第1変形例によっても、上記実施形態と同様に、測定距離を伸ばすことができると共に、距離精度を確保することができる。
【0073】
図10に示される第2変形例のように距離画像が取得されてもよい。第2変形例では、上記実施形態とは異なり、第1転送ゲート電極42,43による電荷の転送タイミングを固定して、パルス光Lの出射タイミングを転送タイミングからずらすことにより、出射タイミングと転送タイミングとの間の時間差TDが区間71A〜71Eの間で異ならせられる。
【0074】
具体的には、
図10の例では、サブフレームF2〜F5においては、光源2によるパルス光Lの出射タイミングが、第1転送ゲート電極42,43による電荷の転送タイミングに対して、それぞれ、時間TS,2TS,3TS,4TSだけずれている。この場合でも、区間71A〜71Eについての測定データを合成することで、全距離範囲70の距離画像を生成することができる。したがって、第2変形例によっても、上記実施形態と同様に、測定距離を伸ばすことができると共に、距離精度を確保することができる。
【0075】
図11に示される第3変形例のように、第1変形例において、第2変形例と同様に、第1転送ゲート電極42による電荷の転送タイミングを固定して、パルス光Lの出射タイミングを転送タイミングからずらすことにより、出射タイミングと転送タイミングとの間の時間差TDが区間71A〜71Eの間で異ならせられてもよい。
【0076】
図11の例では、サブフレームG2〜G6においては、光源2によるパルス光Lの出射タイミングが、第1転送ゲート電極42による電荷の転送タイミングに対して、それぞれ、時間TS,2TS,3TS,4TS,5TSだけずれている。この場合でも、サブフレームG1〜G6において取得されたデータから、上記実施形態におけるサブフレームF1〜F5に対応するデータを得ることができ、全距離範囲70の距離画像を生成することができる。したがって、第3変形例によっても、上記実施形態と同様に、測定距離を伸ばすことができると共に、距離精度を確保することができる。
【0077】
本発明は、上記実施形態及び変形例に限られない。例えば、各構成の材料及び形状には、上述した材料及び形状に限らず、様々な材料及び形状を採用することができる。測距センサ10において、トレンチ29の底面29aがアバランシェ増倍領域22に対して第1側に位置し、アバランシェ増倍領域22が複数の画素11aに渡って繋がっていてもよい。或いは、半導体層20にトレンチ29が形成されず、アバランシェ増倍領域22が複数の画素11aに渡って繋がっていてもよい。電荷排出領域26,27及び第2転送ゲート電極44,45は、省略されてもよい。p型及びn型の各導電型は、上述した例に対して逆であってもよい。複数の画素11aは、半導体層20の第1表面20aに沿って1次元に配列されたものであってもよい。測距センサ10は、単一の画素11aのみを有していてもよい。
【0078】
全距離範囲70は、2以上の任意の数の区間に分割されてもよい。複数の区間の長さは、互いに異なっていてもよい。サブフレームF1〜F5における第1期間P1の長さは、互いに異なっていてもよい。すなわち、区間71A〜71Eについての測定における電荷蓄積時間は、互いに異なっていてもよい。サブフレームF1における読出回数Nは、期間の始点及び終点の2回であってもよいし、或いは4回以上であってもよい。サブフレームF2〜F5における読出回数Nは、3回以上であってもよい。
【0079】
上記実施形態では、区間71A(第1区間)についての測定では、区間71Aよりも光源2から遠い区間71B〜71E(第2区間)についての測定の場合よりも高い読出頻度で電荷蓄積領域24,25に蓄積された電荷が読み出され、これにより、区間71Aについての測定時における電荷発生領域36の信号飽和が抑制されている。これに代えて又は加えて、区間71Aについての測定では、区間71B〜71Eについての測定の場合よりも低い転送頻度で電荷蓄積領域24,25に蓄積された電荷が転送されてもよい。例えば、上記実施形態の区間71Aでは、1回のパルス光Lの出射に対して1回の電荷転送が行われたが、2回又は4回のパルス光Lの出射に対して1回の電荷転送が行われてもよい。この場合でも、信号飽和を抑制することができる。この場合、区間71A〜71Eにおける読出頻度は互いに同一であってもよい。
【解決手段】距離画像取得装置は、光源から出射されて対象物で反射された測定光の入射に応じて電荷発生領域において発生した電荷を転送ゲート電極を用いて電荷蓄積領域に転送することにより測定光を検出する測距センサを備える。電荷発生領域は、アバランシェ増倍を発生させるアバランシェ増倍領域を含む。制御部は、測定対象の全距離範囲70を複数の区間71A〜71Eに分割し、光源による測定光の出射タイミングと転送ゲート電極による電荷の転送タイミングとの間の時間差TDを区間71A〜71Eの間で異ならせながら区間71A〜71Eについての測定を実施するように、測距センサを制御し、区間71A〜71Eについての測定の結果に基づいて、全距離範囲70の距離画像を生成する。