特許第6953722号(P6953722)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6953722
(24)【登録日】2021年10月4日
(45)【発行日】2021年10月27日
(54)【発明の名称】シーリング材組成物
(51)【国際特許分類】
   C09K 3/10 20060101AFI20211018BHJP
   C09K 3/18 20060101ALI20211018BHJP
   C08F 220/24 20060101ALI20211018BHJP
【FI】
   C09K3/10 G
   C09K3/10 E
   C09K3/10 D
   C09K3/18 102
   C09K3/18 103
   C08F220/24
【請求項の数】13
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2017-5417(P2017-5417)
(22)【出願日】2017年1月16日
(65)【公開番号】特開2017-128725(P2017-128725A)
(43)【公開日】2017年7月27日
【審査請求日】2019年11月20日
(31)【優先権主張番号】特願2016-7273(P2016-7273)
(32)【優先日】2016年1月18日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100158
【弁理士】
【氏名又は名称】鮫島 睦
(74)【代理人】
【識別番号】100156085
【弁理士】
【氏名又は名称】新免 勝利
(72)【発明者】
【氏名】増田 英二
(72)【発明者】
【氏名】酒見 和樹
(72)【発明者】
【氏名】河原 一也
【審査官】 横山 敏志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−179922(JP,A)
【文献】 特開2006−037085(JP,A)
【文献】 特開2014−214174(JP,A)
【文献】 特表2013−519758(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/100546(WO,A1)
【文献】 国際公開第2008/143093(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0227173(US,A1)
【文献】 中国特許出願公開第103130950(CN,A)
【文献】 特開2015−105287(JP,A)
【文献】 特開昭64−014292(JP,A)
【文献】 特開平10−265716(JP,A)
【文献】 特開2015−155539(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 3/00−3/32
C08C 19/00−19/44
C08F 6/00−246/00,301/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)シーリング材と(2)含フッ素共重合体とを含むシーリング材組成物であって、
含フッ素共重合体(2)が、
(a)式:
CH2=C(-X)-C(=O)-Y-Z-Rf
[式中、Xは、水素原子、メチル基またはハロゲン原子であり、
Yは、-O-であり、
Zは、直接結合または炭素数1〜20の直鎖状のアルキレン基または分岐状のアルキレン基であり、
Rfは、炭素数4〜6のパーフルオロアルキル基である。]
で示される、炭素数4〜6のフルオロアルキル基を有する含フッ素単量体から誘導された構成単位、および
(b)式:
CH2=CA21-C(=O)-O-A22
[式中、A21は、水素原子またはメチル基であり、
A22は、炭素数14〜30の非環状炭化水素基である。]
で示される非フッ素単量体から誘導された構成単位を含み、
含フッ素共重合体(2)がポリオキシアルキレン基を有しないシーリング材組成物。
【請求項2】
含フッ素単量体(a)において、Xはメチル基である、請求項1に記載のシーリング材組成物。
【請求項3】
非フッ素単量体(b)が、ステアリル(メタ)アクリレートまたはベヘニル(メタ)アクリレートである、請求項1または2に記載のシーリング材組成物。
【請求項4】
含フッ素共重合体が、さらに、非フッ素架橋性単量体(c)を構成単位として含み、単量体(c)の量が、単量体(a)と単量体(b)の合計100重量部に対して、1〜30重量部である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のシーリング材組成物。
【請求項5】
非フッ素架橋性単量体(c)が、ヒドロキシル基を有するビニル単量体である、請求項4に記載のシーリング材組成物。
【請求項6】
含フッ素共重合体(2)が溶液重合によって製造されている、請求項1〜5のいずれか1項に記載のシーリング材組成物。
【請求項7】
シーリング材が、シリコーン系シーリング材、ウレタン系シーリング材およびアクリル系シーリング材から選択される少なくとも1種のシーリング材である、請求項1〜6のいずれか1項に記載のシーリング材組成物。
【請求項8】
シーリング材と含フッ素重合体との混合物を含んでなる1成分形である、請求項1〜7のいずれか1項に記載のシーリング材組成物。
【請求項9】
シーリング材組成物が主剤と硬化剤とを含む2成分形であり、主剤がシーリング材を含み、硬化剤が含フッ素共重合体を含む、請求項1〜8のいずれか1項に記載のシーリング材組成物。
【請求項10】
シーリング材と含フッ素共重合体の重量比が99.9:0.1〜85:15である請求項1〜9のいずれか1項に記載のシーリング材組成物。
【請求項11】
単量体(a)と単量体(b)の重量比が20:80〜80:20である請求項1〜10のいずれか1項に記載のシーリング材組成物。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1項に記載のシーリング材組成物の製造方法であって、
単量体(a)および単量体(b)を重合して含フッ素共重合体(2)を得た後に、シーリング材と混合することを含んでなる製造方法。
【請求項13】
請求項1〜11のいずれか1項に記載のシーリング材組成物を、土木、建築、または自動車の内装資材または外装資材の境界部に充填し、ついで該シーリング材組成物を硬化させてシーラントを形成することを含む、境界部のシーリング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定のフルオロアルキル基を有する含フッ素単量体を含む含フッ素共重合体とシーリング材とを含み、防汚性および撥水撥油性に優れるシーリング材組成物に関する。シーリング材組成物は、土木、建築(例えば、台所および洗面所、特に、流し台、ならびに浴室)、自動車等の内装資材または外装資材に用いられるシーリング材用途に使用できる。
【背景技術】
【0002】
建築物等の外装部材および内装部材、例えばコンクリート、木材、サイディングボード、アルミサッシ等の境界部に塗布し、その隙間から水およびほこり等が侵入するのを防止したり、気密性を高める目的で一般的にシーリング材が用いられている。シーリング材はシリコーン系、ウレタン系、アクリル系など様々な種類がありそれぞれの用途に応じて使用されている。これらシーリング材には作業上および表面保護上の観点から様々な添加剤が入っていて、長期間経過することでそれらがブリードしてくることで汚れが付着したり、ベースとなる樹脂の性質上汚れが付着しやすいといった問題がある。
【0003】
この問題を解決するために従来、様々な技術が提案されている。
たとえば、特開2010−275481号公報において、パーフルオロアルキル基を含有するフッ素系界面活性剤を含むコーティング組成物を、シーリング材の表面に塗布することで防汚性を付与する技術が提案されている。ただしこの方法ではシーリング材の表面にさらにコーティングする手間と時間を要するといった作業上の課題がある。またシーリング材には抗菌剤および抗カビ剤といった表面を保護する目的で添加剤を含むことがあるが、シーリング材表面の上にコーティングを施してしまうと、その効果が発揮できなくなるといった問題がある。
【0004】
また、特開2008−291159号公報において、シーリング材組成物に親水性を付与するパーフルオロアルキル基含有界面活性剤を添加して防汚性を付与する技術が提案されている。この方法ではすすおよび土に対する防汚性は付与できるものの、シーリング材が親水性であることからカビおよび微生物といったものが表面に付着しやすくなり、結果的にはシーリング材表面は汚れてくる問題がある。
【0005】
特開2001−234157号公報および特開2001−81330号公報においては、平均炭素数9のパーフルオロアルキル基を含有する単量体と、光硬化性単量体とを含有する共重合体とシーリング材を含む、防汚性に優れた硬化性組成物の技術が提案されている。この技術においても防汚性は改善されるが、塗布するまでの保管期間に光硬化が進むのを抑制しておく処置が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−275481号公報
【特許文献2】特開2008−291159号公報
【特許文献3】特開2001−234157号公報
【特許文献4】特開2001−81330号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、土木、建築、自動車等の内装資材または外装資材に用いられるシーリング材に、特定の含フッ素重合体を混合することにより、撥水撥油性を発現しながら防汚性も発現する、シーリング材と含フッ素重合体とを含んでなる組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、
(1)シーリング材と、
(2)含フッ素単量体(a)から誘導された構成単位および非フッ素単量体(b)から誘導された構成単位として含む含フッ素重合体
とを含むシーリング材組成物である。
より詳細には、本発明は、シーリング材と、
含フッ素単量体(a):炭素数4〜6のフルオロアルキル基を有する含フッ素単量体、および
非フッ素単量体(b):非環状炭化水素基または環状炭化水素基を有する非フッ素単量体を構成単位として含む含フッ素共重合体とを含むシーリング材組成物である。
本発明の含フッ素共重合体は、単量体(a)および(b)に加えて、必要に応じて、単量体(a)および(b)以外の他の単量体(c)を構成単位として含んでいてもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、シーリング材の撥水性を低下させることなく、防汚性に優れたシーリング材組成物を得ることができる。シーリング材組成物は、カーボン(すす)、砂および黄土などの汚れに対して、優れた付着防止性および離脱性(洗浄性)を有する。さらにシーリング材に撥油性を付与することもできる。さらに、シーリング材組成物は、防汚性および撥水撥油性の耐久性、ならびに抗菌性および防カビ性をも与える。
シーリング材組成物は、土木、建築、自動車等の内装資材または外装資材に用いられるシーリング材に有用である。
【0010】
より詳細には、シーリング材と防汚性を発揮する含フッ素重合体とが混合物として適用されるために、表面コーティングによりシーリング材の効果が発揮されないという問題は生じない。また、シーリング材の表面に含フッ素重合体を適用する作業が不要である。また、本発明に用いるシーリング材は疎水性であることから多様な汚れに対して防汚性を発揮し、また含フッ素重合体による撥水撥油性によりカビおよび微生物がシーリング材の表面に付着しにくくなる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(1)シーリング材
シーリング材とは、建築物の外装資材および内装資材において、コンクリートおよびサイディングボード、タイルといった資材を組み合わせた際にその境界部から、外気および水の混入することを防止し構造物を保護する目的で、外装資材および内装資材の組み合わせでできる境界部に塗装されるものである。また建築物に限らず、自動車の内装資材およびアルミサッシ等においても、同様の目的で使用されている。
【0012】
シーリング材の例としては、シリコーン系、ポリサルファイド系、ポリウレタン系、アクリル系、SBR系、ブチルゴム系、油性コーキング材系、アクリルウレタン系のシーリング材などがある。シリコーン系およびポリサルファイド系のシーリング材においては、さらに保護性を向上させるために変性シリコーン系および変性ポリサルファイド系のシーリング材といったものがある。
【0013】
本発明において、シリコーン系、変性シリコーン系、ウレタン系およびアクリル系のシーリング材が好ましい。シリコーン系のシーリング材および変性シリコーン系のシーリング材がさらに好ましい。シーリング材は、有機溶媒を含んでもよいが、有機溶媒を含まないことが好ましい。シーリング材は、一般に、水を含有しない。シーリング材は、例えば、塗布後に空気中の湿気で硬化する。
【0014】
シリコーン系または変性シリコーン系のシーリング材は、シロキシ基(一般に、シロキサン基)を有する重合体(シロキシ基含有重合体)を含有する。シロキシ基含有重合体は、一般に、AmSiO(4-m)/2[式中、Aは水素原子、ハロゲン原子または一価の有機基、mは0〜3である。]示される構造単位を有する。シロキシ基含有重合体は、一官能性シロキシ基(ASiO0.5)および二官能性シロキシ単位(ASiO)を有しており、必要により、三官能性シロキシ単位(ASiO1.5)(さらに場合により、四官能性シロキシ単位(SiO))を有していてよい。A基は、炭素数1〜20の炭化水素基、例えばアルキル基であってよい。あるいは、A基は、反応性基であるか、あるいは反応性基を有する基であってよい。反応性基の例は、ハロゲン原子(例えば、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、アミノ基、エポキシ基、カルボキシル基、カルビノール基、メルカプト基、アミノオキシ基、ヒドロキシル基、アルコキシ基およびオキシム基である。反応性基はヒドロキシル基(OH基)、アルコキシ基(例えば、メトキシ基)およびオキシム基(例えば、メチルエチルケトオキシム基などのケトオキシム基)であることが好ましい。
【0015】
変性シリコーン系のシーリング材において、シロキシ基含有重合体は、シロキシ基に加えて、シロキシ基以外の構造単位、例えば、(ポリ)オキシアルキレン基、アミド基、イミド基、またはアルキレン基を有する重合体である(アルキレンの炭素数は例えば1〜5、特に2または3である。)。変性シリコーン系のシーリング材は、例えば、有機ポリマー(例えば、ポリエーテル)の末端に(ポリ)オルガノシロキサン基(例えば、一官能性シロキシ基(ASiO0.5))を有していてよい。
【0016】
シリコーン系のシーリング材は、シラン化合物を含有してよい。シラン化合物は、一般に、加水分解性基を有する。加水分解性基の具体例は、オキシム基、アルコキシ基、アルコキシ置換アルコキシ基、アシロキシ基、アルケノキシ基、ケトオキシム基、アミノキシ基およびアミド基である。シラン化合物の代表例は、オキシム型または脱オキシム型のシラン化合物である(オキシム型または脱オキシム型のシリコーン)である。オキシム型または脱オキシム型のシリコーンは、塗布後硬化する際にオキシム(例えば、メチルエチルケトオキシム)が脱離して硬化する。オキシム型のシリコーンは、オキシム基を有するシラン化合物を含有する。オキシム基を有するシラン化合物の例は、メチルトリ(メチルエチルケトオキシム)シランおよびビニルトリ(メチルエチルケトオキシム)シランである。
また、その他の硬化系としてアルコール型または脱アルコール型のシリコーンや、アセトン型、酢酸型、アミノキシ型のシーリング材がある。これらはオキシム型と同様に、塗布後効果する際にアルコール、アセトン、酢酸等が脱離することで硬化するシーリング材である。
シリコーン系のシーリング材は、シラン化合物に加えて、ヒュームドシリカ粉末、例えば、ジメチルジクロロシラン処理シリカ粉末を含有してよい。
【0017】
ウレタン系シーリング材の例は、ポリオール化合物(ウレタンプレポリマー)と、硬化剤の主成分であるイソシアネート(特に、ポリイソシアネート)とが反応して、硬化する反応硬化型ウレタン、および空気中の水分とイソシアネート(特に、ポリイソシアネート)とが反応して、表面から硬化する湿気硬化型ウレタンである。ポリオール化合物は、ヒドロキシ基を2個以上有する。ポリオール化合物の例は、例えば、ポリエーテルポリオール(ポリオキシアルキレンポリオール)、ポリエステルポリオール、これらの混合ポリオール等である。ポリイソシアネート化合物は、分子内にイソシアネート基を2個以上有する。ポリイソシアネート化合物の例は、イソシアネート基が芳香族炭化水素と結合している芳香族ポリイソシアネート、イソシアネート基が脂肪族炭化水素と結合している脂肪族ポリイソシアネート、イソシアネート基が脂環式炭化水素と結合している脂環族ポリイソシアネートである。
【0018】
アクリル系のシーリング材は、一般に、アクリルポリマーをベースにしたもので、塗布後含有溶媒が蒸発することで乾燥硬化するシーリング材である。
アクリル系のシーリング材は、アクリル重合体を含んでなる。アクリル重量体は、アクリレート単量体を繰り返し単位とする重合体である。アクリレート単量体は、(メタ)アクリル酸エステル、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(アルキル基の炭素数1〜30)、オキシアルキレン基(オキシアルキレン基の数は1〜30、例えば、1〜25)を有する(メタ)アクリル酸エステルなどであってよい。アクリル重合体の具体例は、アクリル酸アルキルエステル共重合体、アクリロニトリル−アクリル酸アルキルエステル共重合体、アクリル酸−メタクリル酸−アクリル酸アルキルエステル共重合体、アクリロニトリル−アクリル酸−アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン−アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン−メタクリル酸アルキルエステル−アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン−アクリロニトリル−アクリル酸アルキルエステル共重合体およびスチレン−アクリロニトリル−メタクリル酸アルキルエステル−アクリル酸アルキルエステル共重合体である。
【0019】
本発明において、シーリング材は市販品を用いることができる。例えばシリコーン系の場合、東レダウコーニング社製のSE5007、SH780、SH5010、SE960、SE990F、SE930、SE931、SE936、SE797など、信越シリコーン社製のシーラント45、シーラント4588、シーラント4515、シーラント70、シーラント701など、コニシ社製のSRシールS70、SRシールNB50、ボンドシリコンコーク、ボンドMSシール、ボンドMSシールNB、ボンドヒンドシールなど、シャープ化学工業社製のシャーピーシリコーンS、ヘンセイシリコーンMなど、セメダイン社製の8000、8060、8070、8051N、POSシール、POSシールタイプII、S750NBなど、がある。またアクリル系の場合はシャープ化学工業社製のシャーピーペイントアクリル、コニシ社製のアクリルコークなどがある。
シーリング材については、これらの利用に限定されるものではなく、上記以外の市販品についても有用である。
【0020】
シーリング材は、使用される箇所に求められる効果にあわせて、充填剤、抗菌剤、抗カビ剤、着色剤、顔料、保存剤、可塑剤、耐候性改良剤、老化防止剤(紫外線吸収剤および熱安定剤など)、硬化触媒、タック防止剤、溶剤等を含んでもよい。
【0021】
硬化触媒(硬化剤)としては、例えば、オクチル酸スズ、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズオクトエート、ジブチルスズオキサイド、ジオクチルスズオキサイド、ジブチルスズビストリエトキシシリケート、ジブチルスズビスアセチルアセトネート、ジブチルスズビス−2−エチルヘキサノエート、ジブチルスズジアセチル等の有機スズ化合物が例示されるスズ系触媒や、ラウリルアミン等の有機アミン化合物が例示されるアミン系触媒が挙げられる。これらは1種を単独で、または2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
硬化触媒は、スズ系触媒とアミン系触媒との混合物(重量比は一般に10:90〜90:10)あってよい。この混合物は、硬化の促進効果が高い。
【0022】
本発明のシーリング材組成物は、1成分形(1液型)または2成分形(2液型)であってよい。1成分形の場合はあらかじめシーリング材と含フッ素共重合体を混合しておけばよく、また2成分形では硬化剤と含フッ素共重合体を混合しておけばよい。
【0023】
1成分形のシーリング材組成物は、シーリング材と含フッ素重合体との混合物を含んでなる。1成分形のシーリング材組成物は、そのもの単独で塗布後に硬化するので、作業しやすい利点がある。
一方、2成分形のシーリング材組成物は、シーリング材を含む主剤、および含フッ素重合体を含む硬化剤を含む。2成分形のシーリング材組成物は、シーリング材単独では硬化しないで、第二成分である硬化剤と混合した上で塗布することで硬化するものである。2成分形のシーリング材組成物は、2成分を混合する作業上の手間はかかるが、塗布後の保護性は1成分形に比べると優れているという利点がある。
【0024】
2成分形の場合に、一般的に、硬化剤において、シーリング材を硬化できる成分(シーリング材とともに硬化できる成分、および/または、シーリング材の硬化を促進する硬化触媒)が混合されている。硬化剤は有機溶剤を含んでも良い。
シーリング材組成物、特に、1成分形のシーリング材組成物において、含フッ素重合体は溶液重合によって製造したものであることが好ましい。
シーリング材は、単独であってよく、あるいは2種以上の組み合わせであってもよい。
【0025】
(2)含フッ素重合体
含フッ素重合体は、含フッ素単量体(a)と非フッ素単量体(b)を構成単位として含む共重合体である。含フッ素単量体(a)は、炭素数4〜6のフルオロアルキル基を有する単量体であり、非フッ素単量体(b)は非環状の炭化水素基、および、または窒素、酸素、もしくは硫黄原子を含んでいてもよい環状の炭化水素基を有する単量体である。非フッ素単量体(b)は、好ましくは炭素数14以上の非環状炭化水素基、および、または環状炭化水素基を有する非フッ素非架橋性単量体である。また、必要に応じて、他の単量体(c)を構成単位として含む共重合体としてもよい。
【0026】
含フッ素単量体(a)は、式:
CH2=C(-X)-C(=O)-Y-Z-Rf
[式中、Xは、水素原子、一価の有機基またはハロゲン原子であり、
Yは、-O-または-NH-であり、
Zは、直接結合または二価の有機基であり、
Rfは、炭素数4〜6のパーフルオロアルキル基である。]
で示される化合物である。
【0027】
Xは、例えば、水素原子、メチル基、ハロゲン、炭素数2〜21の直鎖状または分岐状のアルキル基、CFX1X2基(但し、X1およびX2は、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、またはヨウ素原子である。)、シアノ基、炭素数1〜21の直鎖状または分岐状のフルオロアルキル基、置換または非置換のベンジル基、置換または非置換のフェニル基である。
本発明の含フッ素共重合体においては、Xは、水素原子、メチル基、フッ素原子、または塩素原子であることが好ましい。Xは、水素原子またはメチル基、特にメチル基であることがさらに好ましい。
【0028】
Yは、-O-であることが好ましい。
【0029】
Zは、例えば、直接結合、炭素数1〜20の直鎖状のアルキレン基または分岐状のアルキレン基[例えば、式−(CH2)x−(式中、xは1〜10である。)で示される基]、あるいは式−SO2N(R1)R2−または式−CON(R1)R2−で示される基(式中、R1は、炭素数1〜10のアルキル基であり、R2は、炭素数1〜10の直鎖状のアルキレン基または分岐状のアルキレン基である。)、あるいは式−CH2CH(OR3)CH2−(式中、R3は、水素原子、または炭素数1〜10のアシル基(例えば、ホルミルまたはアセチルなど)を表す。)で示される基、あるいは、式−Ar−(CH2)r−(式中、Arは、置換基を必要により有するアリーレン基であり、rは0〜10である。)で示される基、あるいは−(CH2m−SO2−(CH2n−基または-(CH2m−S−(CH2n−基(但し、mは1〜10、nは0〜10である。)である。
本発明の含フッ素共重合体において、Zは、直接結合、炭素数1〜20のアルキレン基、−SO2N(R1)R2−であることが好ましい。
【0030】
Rfは、パーフルオロアルキル基であることが好ましいが、水素原子を有するフルオロアルキル基であってもよい。Rfの炭素数は4〜6、例えば4または6である。Rfの炭素数は6であることが特に好ましい。Rfの例は、−CF2CF2CF2CF3、−CF2CF(CF3)2、−C(CF3)3、−(CF2)5CF3、−(CF2)3CF(CF3)2などである。
【0031】
含フッ素単量体(a)の具体例としては、例えば以下のものを例示できるが、これらに限定されるものではない。
CH2=C(−H)−C(=O)−O−(CH2)2−Rf
CH2=C(−H)−C(=O)−O−C6H4−Rf
CH2=C(−Cl)−C(=O)−O−(CH2)2−Rf
CH2=C(−H)−C(=O)−O−(CH2)2N(−CH3)SO2−Rf
CH2=C(−H)−C(=O)−O−(CH2)2N(−C2H5)SO2−Rf
CH2=C(−H)−C(=O)−O−CH2CH(−OH)CH2−Rf
CH2=C(−H)−C(=O)−O−CH2CH(−OCOCH3)CH2−Rf
CH2=C(−H)−C(=O)−O−(CH2)2−S−Rf
CH2=C(−H)−C(=O)−O−(CH2)2−S−(CH2)2−Rf
CH2=C(−H)−C(=O)−O−(CH2)3−SO2−Rf
CH2=C(−H)−C(=O)−O−(CH2)2−SO2−(CH2)2−Rf
CH2=C(−H)−C(=O)−NH−(CH2)2−Rf
CH2=C(−CH3)−C(=O)−O−(CH2)2−Rf
CH2=C(−CH3)−C(=O)−O−C6H4−Rf
CH2=C(−CH3)−C(=O)−O−(CH2)2N(−CH3)SO2−Rf
CH2=C(−CH3)−C(=O)−O−(CH2)2N(−C2H5)SO2−Rf
CH2=C(−CH3)−C(=O)−O−CH2CH(−OH)CH2−Rf
CH2=C(−CH3)−C(=O)−O−CH2CH(−OCOCH3)CH2−Rf
【0032】
CH2=C(−CH3)−C(=O)−O−(CH2)2−S−Rf
CH2=C(−CH3)−C(=O)−O−(CH2)2−S−(CH2)2−Rf
CH2=C(−CH3)−C(=O)−O−(CH2)3−SO2−Rf
CH2=C(−CH3)−C(=O)−O−(CH2)2−SO2−(CH2)2−Rf
CH2=C(−CH3)−C(=O)−NH−(CH2)2−Rf
CH2=C(−F)−C(=O)−O−(CH2)2−S−Rf
CH2=C(−F)−C(=O)−O−(CH2)2−S−(CH2)2−Rf
CH2=C(−F)−C(=O)−O−(CH2)2−SO2−Rf
CH2=C(−F)−C(=O)−O−(CH2)2−SO2−(CH2)2−Rf
CH2=C(−F)−C(=O)−NH−(CH2)2−Rf
CH2=C(−Cl)−C(=O)−O−(CH2)2−S−Rf
CH2=C(−Cl)−C(=O)−O−(CH2)2−S−(CH2)2−Rf
CH2=C(−Cl)−C(=O)−O−(CH2)2−SO2−Rf
CH2=C(−Cl)−C(=O)−O−(CH2)2−SO2−(CH2)2−Rf
CH2=C(−Cl)−C(=O)−NH−(CH2)2−Rf
CH2=C(−CF3)−C(=O)−O−(CH2)2−S−Rf
CH2=C(−CF3)−C(=O)−O−(CH2)2−S−(CH2)2−Rf
CH2=C(−CF3)−C(=O)−O−(CH2)2−SO2−Rf
CH2=C(−CF3)−C(=O)−O−(CH2)2−SO2−(CH2)2−Rf
CH2=C(−CF3)−C(=O)−NH−(CH2)2−Rf
CH2=C(−CF2H)−C(=O)−O−(CH2)2−S−Rf
CH2=C(−CF2H)−C(=O)−O−(CH2)2−S−(CH2)2−Rf
CH2=C(−CF2H)−C(=O)−O−(CH2)2−SO2−Rf
CH2=C(−CF2H)−C(=O)−O−(CH2)2−SO2−(CH2)2−Rf
CH2=C(−CF2H)−C(=O)−NH−(CH2)2−Rf
【0033】
CH2=C(−CN)−C(=O)−O−(CH2)2−S−Rf
CH2=C(−CN)−C(=O)−O−(CH2)2−S−(CH2)2−Rf
CH2=C(−CN)−C(=O)−O−(CH2)2−SO2−Rf
CH2=C(−CN)−C(=O)−O−(CH2)2−SO2−(CH2)2−Rf
CH2=C(−CN)−C(=O)−NH−(CH2)2−Rf
CH2=C(−CF2CF3)−C(=O)−O−(CH2)2−S−Rf
CH2=C(−CF2CF3)−C(=O)−O−(CH2)2−S−(CH2)2−Rf
CH2=C(−CF2CF3)−C(=O)−O−(CH2)2−SO2−Rf
CH2=C(−CF2CF3)−C(=O)−O−(CH2)2−SO2−(CH2)2−Rf
CH2=C(−CF2CF3)−C(=O)−NH−(CH2)2−Rf
CH2=C(−F)−C(=O)−O−(CH2)3−S−Rf
CH2=C(−F)−C(=O)−O−(CH2)3−S−(CH2)2−Rf
CH2=C(−F)−C(=O)−O−(CH2)3−SO2−Rf
CH2=C(−F)−C(=O)−O−(CH2)3−SO2−(CH2)2−Rf
CH2=C(−F)−C(=O)−NH−(CH2)3−Rf
【0034】
CH2=C(−Cl)−C(=O)−O−(CH2)3−S−Rf
CH2=C(−Cl)−C(=O)−O−(CH2)3−S−(CH2)2−Rf
CH2=C(−Cl)−C(=O)−O−(CH2)3−SO2−Rf
CH2=C(−Cl)−C(=O)−O−(CH2)3−SO2−(CH2)2−Rf
CH2=C(−CF3)−C(=O)−O−(CH2)3−S−Rf
CH2=C(−CF3)−C(=O)−O−(CH2)3−S−(CH2)2−Rf
CH2=C(−CF3)−C(=O)−O−(CH2)3−SO2−Rf
CH2=C(−CF3)−C(=O)−O−(CH2)3−SO2−(CH2)2−Rf
CH2=C(−CF2H)−C(=O)−O−(CH2)3−S−Rf
CH2=C(−CF2H)−C(=O)−O−(CH2)3−S−(CH2)2−Rf
CH2=C(−CF2H)−C(=O)−O−(CH2)3−SO2−Rf
CH2=C(−CF2H)−C(=O)−O−(CH2)3−SO2−(CH2)2−Rf
CH2=C(−CN)−C(=O)−O−(CH2)3−S−Rf
CH2=C(−CN)−C(=O)−O−(CH2)3−S−(CH2)2−Rf
CH2=C(−CN)−C(=O)−O−(CH2)3−SO2−Rf
CH2=C(−CN)−C(=O)−O−(CH2)3−SO2−(CH2)2−Rf
CH2=C(−CF2CF3)−C(=O)−O−(CH2)3−S−Rf
CH2=C(−CF2CF3)−C(=O)−O−(CH2)3−S−(CH2)2−Rf
CH2=C(−CF2CF3)−C(=O)−O−(CH2)3−SO2−Rf
CH2=C(−CF2CF3)−C(=O)−O−(CH2)2−SO2−(CH2)2−Rf
これらのうち、CH2=CH−C(=O)−O−(CH2)2−Rf、CH2=C(−CH3)−C(=O)−O−(CH2)2−Rfが好ましい。
【0035】
非フッ素単量体(b)は、非フッ素非架橋性単量体(b1)であってよい。
非フッ素非架橋性単量体(b1)の具体例は、式:
CH2=CA-T
[式中、Aは、水素原子、メチル基、または、フッ素原子以外のハロゲン原子(例えば、塩素原子、臭素原子およびヨウ素原子)であり、
Tは、水素原子、フッ素原子以外のハロゲン原子(例えば、塩素原子、臭素原子およびヨウ素原子)、非環状または環状の炭素数1〜30、好ましくは14〜30の炭化水素基、またはエステル結合を有する非環状または環状の炭素数1〜30、好ましくは14〜30の炭化水素基である。]
で示される化合物であってよい。
【0036】
非環状または環状の炭素数1〜30の炭化水素基の例は、炭素数1〜30、好ましくは14〜30の直鎖状または分岐状の飽和または不飽和(例えば、エチレン性不飽和)の脂肪族炭化水素基、炭素数4〜30、好ましくは6〜30、例えば14〜30の飽和または不飽和(例えば、エチレン性不飽和)の環状脂肪族基、炭素数6〜30、好ましくは14〜30の芳香族炭化水素基、炭素数7〜30、好ましくは14〜30の芳香脂肪族炭化水素基である。
【0037】
エステル結合を有する非環状または環状の炭素数1〜30の有機基の例は、-C(=O)-O-Qおよび-O-C(=O)-Q(ここで、Qは、炭素数1〜30、好ましくは14〜30の直鎖状または分岐状の飽和または不飽和(例えば、エチレン性不飽和)の脂肪族炭化水素基、炭素数4〜30、好ましくは14〜30の飽和または不飽和(例えば、エチレン性不飽和)の環状脂肪族基、炭素数6〜30、好ましくは14〜30の芳香族炭化水素基、炭素数7〜30、好ましくは14〜30の芳香脂肪族炭化水素基)である。
その他、非フッ素非架橋性単量体は、(メタ)アクリレートエステル単量体(b1−1)およびハロゲン化オレフィン単量体(b1−2)などであってもよい。
【0038】
(メタ)アクリレートエステル単量体(b1−1)の具体例は、
CH2=CA21-C(=O)-O-A22
[式中、A21は、水素原子、炭素数1〜30、好ましくは14〜30の直鎖状または分岐状のアルキル基、シアノ基、置換または非置換のベンジル基、置換または非置換のフェニル基、またはフッ素原子以外のハロゲン原子である一価の有機基であり、
A22は、炭素数1〜30、好ましくは14〜30の炭化水素基である。]
で示される化合物であってよい。
A21は、水素原子、メチル基、炭素数2〜30、好ましくは14〜30の直鎖状または分岐状のアルキル基、シアノ基、置換または非置換のベンジル基、置換または非置換のフェニル基、または塩素基であることが好ましい。
A22は、炭素数1〜30、好ましくは4〜30、より好ましくは6〜30、特に14〜30の炭化水素基である。A22(炭化水素基)は、炭素数14〜30の非環状炭化水素基(直鎖状または分岐状の炭化水素基、例えば、アルキル基)、および炭素数4〜30の環状炭化水素含有基(例えば、飽和または不飽和の単環基、多環基、橋かけ環基)であることが好ましい。
【0039】
非環状炭化水素基を有する(メタ)アクリレートエステル単量体の具体例は、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレートなどである。非環状炭化水素基を有する(メタ)アクリレートエステル単量体の中で、ステアリル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0040】
環状炭化水素含有基を有する(メタ)アクリレートエステル単量体の具体例は、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルオキシエチル(メタ)アクリレート、トリシクロペンタニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、2−メチル−2−アダマンチル(メタ)アクリレート、2−エチル−2−アダマンチル(メタ)アクリレートなどである。
【0041】
ハロゲン化オレフィン単量体(b1−2)は、フッ素原子を有しない。
ハロゲン化オレフィン単量体は、1〜10の塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子で置換されている炭素数2〜20のオレフィンであってよい。ハロゲン化オレフィン単量体は、炭素数2〜20、特に1〜5の塩素原子を有する炭素数2〜5のオレフィンであることが好ましい。ハロゲン化オレフィン単量体の好ましい具体例は、ハロゲン化ビニル、例えば塩化ビニル、臭化ビニル、ヨウ化ビニル、ハロゲン化ビニリデン、例えば塩化ビニリデン、臭化ビニリデン、ヨウ化ビニリデンである。撥水撥油性(特に撥水撥油性の耐久性)が高くなるので、塩化ビニルおよび塩化ビニリデンが好ましい。
【0042】
含フッ素共重合体はポリオキシアルキレン基を有しないことが好ましいので、非フッ素単量体(b)はポリオキシアルキレン基を有しないことが好ましい。これにより、含フッ素重合体は、良好な防汚性および撥水撥油性を付与できる。
【0043】
また、本発明の含フッ素共重合体は、必要に応じて、他の単量体(c)を構成単位として含む共重合体とすることができ、他の単量体(c)は好ましくは非フッ素架橋性単量体であり、フッ素原子を含まない単量体である。非フッ素架橋性単量体は、少なくとも1つの反応性基および/またはオレフィン性炭素−炭素二重結合(好ましくは、(メタ)アクリレート基)を有し、フッ素を含有しない化合物であってよい。非フッ素架橋性単量体は、少なくとも2つのオレフィン性炭素−炭素二重結合(好ましくは、(メタ)アクリレート基)を有する化合物、あるいは少なくとも1つのオレフィン性炭素−炭素二重結合および少なくとも1つの反応性基を有する化合物であってよい。反応性基の例は、ヒドロキシル基、エポキシ基、クロロメチル基、ブロックイソシアネート基、アミノ基、カルボキシル基、グリシジル基などである。
反応性基、例えば、ヒドロキシル基を有することによって、防汚性および撥水撥油性の耐久性を付与できる。
【0044】
非フッ素架橋性単量体は、反応性基を有するモノ(メタ)アクリレート、ジ(メタ)アクリレートまたはモノ(メタ)アクリルアミドであってよい。あるいは、非フッ素架橋性単量体は、ジ(メタ)アクリレートであってよい。
【0045】
非フッ素架橋性単量体の1つの例は、ヒドロキシル基を有するビニル単量体(特に、(メタ)アクリレート単量体)である。
非フッ素架橋性単量体としては、例えば、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2,3−ジヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン、モノクロロ酢酸ビニル、メタクリル酸ビニル、グリシジル(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレートなどが例示されるが、これらに限定されるものでない。
【0046】
その他、非フッ素架橋性単量体は、イソシアナトアクリレート単量体などであってよい。
イソシアナトアクリレート単量体の具体例は、2−イソシアナトエチル(メタ)アクリレート、3−イソシアナトプロピル(メタ)アクリレート、4−イソシアナトブチル(メタ)アクリレート、2−イソシアナトエチル(メタ)アクリレートの2−ブタノンオキシム付加体、2−イソシアナトエチル(メタ)アクリレートのピラゾール付加体、2−イソシアナトエチル(メタ)アクリレートの3,5−ジメチルピラゾール付加体、2−イソシアナトエチル(メタ)アクリレートの3−メチルピラゾール付加体、2−イソシアナトエチル(メタ)アクリレートのε−カプロラクタム付加体、3−イソシアナトプロピル(メタ)アクリレートの2−ブタノンオキシム付加体、3−イソシアナトプロピル(メタ)アクリレートのピラゾール付加体、3−イソシアナトプロピル(メタ)アクリレートの3,5−ジメチルピラゾール付加体、3−イソシアナトプロピル(メタ)アクリレートの3−メチルピラゾール付加体、3−イソシアナトプロピル(メタ)アクリレートのε−カプロラクタム付加体、4−イソシアナトブチル(メタ)アクリレートの2−ブタノンオキシム付加体、4−イソシアナトブチル(メタ)アクリレートのピラゾール付加体、4−イソシアナトブチル(メタ)アクリレートの3,5−ジメチルピラゾール付加体、4−イソシアナトブチル(メタ)アクリレートの3−メチルピラゾール付加体、4−イソシアナトブチル(メタ)アクリレートのε−カプロラクタム付加体などである。
【0047】
本明細書において、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレートまたはメタクリレートを意味し、「(メタ)アクリルアミド」とは、アクリルアミドまたはメタクリルアミドを意味する。
【0048】
単量体(a)〜(c)のそれぞれは、単独であってよく、あるいは2種以上の組み合わせであってもよい。
含フッ素重合体は、単独であってよく、あるいは2種以上の組み合わせであってもよい。
【0049】
含フッ素共重合体において、単量体(a)と単量体(b)の重量比は、20:80〜80:20、30:70〜70:30、例えば35:60〜65:35であってよい。
【0050】
単量体(c)を含む含フッ素共重合体において、単量体(a)と単量体(b)と単量体(c)の重量比は、20:75:5〜80:5:15、好ましくは30:65:5〜70:15:15、例えば40:53:7〜65:25:10であってよい。あるいは、単量体(c)の量は、単量体(a)と単量体(b)の合計100重量部に対して、1〜30重量部、好ましくは3〜20重量部、より好ましくは5〜15、例えば7〜12重量部であってよい。
【0051】
含フッ素共重合体は、重合開始剤、溶媒、必要に応じて連鎖移動剤を用いて、既知の方法にて重合したものを用いることができる。含フッ素共重合体は、有機溶媒中の溶液重合、または水中の乳化重合などによって製造できる。含フッ素共重合体は、重合によって得られた液状媒体(有機溶媒または水)を含む重合混合物から液状媒体を(蒸留などによって)除去することによって得ることができる。含フッ素共重合体は、水を含有しないことが好ましい。
【0052】
含フッ素共重合体の分子量は、例えば、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフ)測定でポリスチレン換算した場合、一般に1,000〜1,000,000、特に2,000〜50,000であってよい。
【0053】
組成物中のシーリング材と含フッ素共重合体の混合割合は、重量比で99.9:0.1〜85:15、例えば99.5:0.5〜90:10、さらには99:1〜95:5であってよい。この重量比により、含フッ素共重合体およびシーリング材に求められる性能(特に、防汚性および撥水撥油性)を発揮できる。
【0054】
本発明において、シーリング材と含フッ素共重合体の混合方法は、シーリング材と含フッ素共重合体をあらかじめ混合して得た混合物を塗布する1成分形でもよく、またシーリング材をベースとする基材と含フッ素共重合体を含む硬化剤とを有し、使用する直前に混合する2成分形のいずれであってもよい。含フッ素共重合体を含む硬化剤である場合、溶媒として酢酸エチル、酢酸ブチル、トルエン、キシレンなどの有機溶媒を用いてもよい。
【0055】
1成分形のシーリング材は、シーリング材と含フッ素共重合体を混合することによって製造することができる。
【0056】
また、本発明は、上記した組成物を、土木、建築、または自動車等の内装資材または外装資材の隙間に充填し、ついで該組成物を硬化させてシーラントを形成することを含む、隙間のシーリング方法をも提供する。
【実施例】
【0057】
以下に実施例を挙げて詳細を説明するが、本発明はこれら実施例にのみ限定されるものではない。
物性は次のようにして測定した。
【0058】
撥水性および撥油性
水およびn−ヘキサデカン(HD)にて接触角測定(室温(25℃)および液滴2μl)を行った。
【0059】
防汚性
下記の防汚試験液を作成し、シーリング材と含フッ素共重合体からプレート上に形成された塗膜上に防汚試験液20mlをのせ、オーブンで60℃にて1時間乾燥して十分に水分を乾燥した後に、プレートを90度傾けて乾燥した防汚試験液を布で拭き取った際の汚れの残り度合を目視で評価した。
関東ローム:JIS Z8901試験用紛体 8種(関東ローム層)粒径8μmと水を重量比で1:2にて混合した液。
イエローオーカー:JSTM(建材試験センター規格)顔料用合成黄土(SiO 54%)と水を重量比で1:2にて混合した液。
カーボンブラック:JIS Z9801試験用紛体12種(カーボンブラック 粒径0.03〜0.2μm)と水を重量比で1:3にて混合した液。
評価基準
○:汚れがきれいに拭き取れている。
△:汚れが多少残るが、比較的きれいに拭き取れている。
×:汚れが全く拭き取れない。
【0060】
洗浄性
シーリング材と含フッ素共重合体からプレート上に形成された塗膜を、家庭排水が排出される排水口の壁面に貼り付け、1ケ月間の曝露試験を実施。試験後にプレートを取り外し、市販の家庭用洗剤とスポンジを用いて洗浄した。洗浄前後に色差計を用いてD65光源にてL値、a値、b値を測定して試験前後の色差(ΔE*)を計算した。
【0061】
重合体例1〜9および比較重合体例1〜3
表1に示す単量体(含フッ素単量体および非フッ素単量体)を、イソプロピルアルコール(IPA)100重量部と混合し、重合することによって、含フッ素共重合体の溶液を製造した。次いで、蒸留により有機溶媒(IPA)を除去し、塊状の含フッ素共重合体を得た。含フッ素共重合体における単量体組成は、仕込んだ単量体の組成とほぼ同様であった。
【0062】
実施例1〜15および比較例1〜7
重合体例1〜9および比較重合体例1〜3で得られた含フッ素共重合体を、表2の通り、シリコーン系シーリング材と混合した。その際、重合体例1〜9および比較重合体例1〜3は表2で示した重量部に対し、酢酸エチルを10重量部加えて混合したものを用いて、シーリング材と混合することで、含フッ素シーリング材組成物を得た。
この組成物をアプリケータにてガラスプレート上に塗布し、室温にて24時間乾燥した後、接触角、防汚性について評価を行った。その結果を表3に示す。
なお、実施例11〜13および実施例15は、本願発明に含まれない参考の例(すなわち、「例11〜13(参考)」および「例15(参考)」)である。

【0063】
【表1】
【0064】
C6SFA:CH=C(−H)−C(=O)−O−(CH)−C13
C6SFMA:CH=C(−CH)−C(=O)−O−(CH)−C13
LA:アクリル酸ラウリル
StA:アクリル酸ステアリル
VA:アクリル酸ベヘニル
CHMA:アクリル酸シクロヘキシル
EOA−1:CH=C(−H)−C(=O)−O−(CHCHO)−H n=2
EOA−2:CH=C(−H)−C(=O)−O−(CHCHO)−H n=10
2−HEA:アクリル酸2−ヒドロキシエチル
シリコーン系(45):オキシム系シリコーン(信越シリコーン社製シーラント45)
シリコーン系(SE):ジメチルジクロロシラン処理シリカ、メチルトリ(メチルエチルケトオキシム)シランおよびビニルトリ(メチルエチルケトオキシム)シランを主成分として含む(東レダウコーニング社製SE−5010)
シリコーン系(C):オキシム系シリコーン(セメダイン社製8000)
シリコーン系(S):変性シリコーン系シーラント(シャープ工業社製MSC1−22)
シリコーン系(70):二成分形アミノキシ型シリコーンシーラント(信越シリコーン社製シーラント70)主剤、硬化剤
シリコーン系(SEII):二成分形アルコール型シリコーンシーラント(東レダウ社製SE990F)主剤、硬化剤
シリコーン系(P):二成分形変性シリコーンシーラント(セメダイン社製POSシールタイプII)主剤、硬化剤
アクリル系:水性アクリルシーラント
【0065】
【表2】
【0066】
【表3】
【0067】
実施例16〜19および比較例8〜10
重合体例2〜3および比較重合体例1〜2で得られた含フッ素共重合体を、表2の通り、アクリル系シーリング材と混合した。その際、重合体例2〜3および比較重合体例1〜2は表4で示した重量部に対し、酢酸エチルを10重量部加えて混合したものを用いて、シーリング材と混合することで、含フッ素シーリング材組成物を得た。
この組成物をアプリケータにてガラスプレート上に塗布し、室温にて24時間乾燥した後、接触角、防汚性について評価を行った。その結果を表5に示す。
【0068】

【表4】
【0069】
【表5】
【0070】
実施例20〜23および比較例11
重合体例2〜3で得られた含フッ素共重合体を、表6の通り、シリコーン系シーリング材と混合した。その際、重合体例2〜3は表6で示した重量部に対し、酢酸エチルを10重量部加えて混合したものを用いて、シーリング材と混合することで、含フッ素シーリング材組成物を得た。
この組成物をアプリケータにてPET製フィルム上に塗布し、室温にて24時間乾燥した後、洗浄性について評価を行った。その結果を表7に示す。
【0071】
【表6】
【0072】
【表7】
【0073】
実施例24〜27および比較例12〜15
重合体例2〜3および比較重合体例1〜2で得られた含フッ素共重合体を、表8の通り、シリコーン系シーリング材と混合することで、含フッ素シーリング材組成物を得た。
この組成物をアプリケータにてガラスプレート上に塗布し、室温にて24時間乾燥した後、接触角、防汚性について評価を行った。その結果を表9に示す。
【0074】
【表8】
【0075】
【表9】
【0076】
実施例28〜31および比較例16〜19
重合体例2〜3および比較重合体例1〜2で得られた含フッ素共重合体を、表10の通りシーリング材硬化剤と混合することで、含フッ素重合体含有硬化剤を得た。この硬化剤4重量部と、表10の通りのシーリング材主剤100重量部とを混合することにより、含フッ素シーリング材組成物を得た。
この組成物をアプリケータにてガラスプレート上に塗布し、室温にて24時間乾燥した後、防汚性について評価を行った。その結果を表11に示す。
【0077】
【表10】
【0078】
【表11】
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明のシーリング材組成物は、シーリング材の撥水性を低下させることなく、防汚性に優れるものである。また、シーリング材に撥油性を付与することもできる。本発明のシーリング材組成物は、土木、建築(例えば、台所および洗面所、特に、流し台、ならびに浴室)、自動車等の内装資材または外装資材に用いられるシーリング材として有用である。