(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
吸収体と、前記吸収体を肌面側から覆う肌面側シートと、前記吸収体を非肌面側から覆う非肌面側シートとを有し、着用者の股下に、長手方向が前記股下の前後方向に沿うように装着される吸収性物品であって、
前記吸収体は、前記長手方向と交差する幅方向の外側の両縁部を除いて配置され、
前記長手方向に収縮力を発揮する弾性部材によって形成されたズレ止めギャザーを有し、
前記非肌面側シートは、前記吸収体に近い第1非肌面側シートと、前記吸収体から遠い第2非肌面側シートとが層状に重なって構成され、
前記弾性部材は、前記第1非肌面側シートと前記第2非肌面側シートとの間に配置され、
前記吸収体の前記ズレ止めギャザーよりも前記幅方向の内側寄りにそれぞれ、前記長手方向に延びる溝状部が圧搾形成され、
前記溝状部が、前記股下に沿う部分において、装着状態で折れ目となって谷折れを案内すると共に前記溝状部の相互間の山折りを案内し、前記弾性部材が、前記溝状部の案内による前記折れを促進し前記折れを保持する
ことを特徴とする吸収性物品。
吸収体と、前記吸収体を肌面側から覆う肌面側シートと、前記吸収体を非肌面側から覆う非肌面側シートとを有し、着用者の股下に、長手方向が前記股下の前後方向に沿うように装着される吸収性物品であって、
前記吸収体は、前記長手方向と交差する幅方向の外側の両縁部を除いて配置され、
前記長手方向に収縮力を発揮する弾性部材によって形成されたズレ止めギャザーを有し、
前記非肌面側シートは、前記吸収体に近い第1非肌面側シートと、前記吸収体から遠い第2非肌面側シートとが層状に重なって構成され、
前記弾性部材は、前記第1非肌面側シートと前記第2非肌面側シートとの間に配置され、
前記弾性部材の有効範囲の全てが、前記吸収体と厚み方向に重なる領域に配置され、
前記吸収体の前記ズレ止めギャザーよりも前記幅方向の内側寄りにそれぞれ、前記長手方向に延びる溝状部が圧搾形成され、
前記溝状部が、前記股下に沿う部分において、装着状態で折れ目となって谷折れを案内すると共に前記溝状部の相互間の山折りを案内し、前記弾性部材が、前記溝状部の案内による前記折れを促進し前記折れを保持する
ことを特徴とする吸収性物品。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して、実施形態としての吸収性物品について説明する。なお、以下に示す実施形態はあくまでも例示に過ぎず、以下の実施形態で明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。本実施形態の各構成は、それらの趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。また、必要に応じて取捨選択することができ、あるいは適宜組み合わせることができる。
【0020】
本実施形態の吸収性物品は、着用者に装着され、尿や経血といった液体を吸収する衛生用品である。この吸収性物品としては、テープ型やパンツ型の紙おむつ(いわゆる「使い捨ておむつ」)、尿パッド、生理用ナプキン、パンティーライナーなどが挙げられる。以下の実施形態では、吸収性物品としてテープ型の紙おむつを例示する。
【0021】
本実施形態では、紙おむつについて、着用者の腹部に対向して配置される前身頃と背部に対向して配置される後身頃とを結ぶ方向を長手方向とする。これらの前身頃(長手方向の一側)と後身頃(長手方向の他側)との間(長手方向の中央)には、着用者の股下に配置(股間に対向して配置)される股下部が位置する。また、紙おむつが着用者に装着された状態(以下「装着状態」と略称する)において、着用者の肌に向かう側(装着された状態で内側)を肌面側とし、肌面側の反対側(装着された状態で外側)を非肌面側とする。さらに、肌面側と非肌面側とを結ぶ方向を厚み方向とし、長手方向と厚み方向の何れにも直交する方向を幅方向とする。そのほか、厚み方向から視ることを平面視とする。
【0022】
[I.一実施形態]
[1.紙おむつ]
[1−1.基本的な構成]
まず、
図1及び
図2を参照して、紙おむつ1の基本的な構成を説明する。この紙おむつ1は、幅方向の中心線Cを基準として左右対称に形成されている。なお、
図2では、各部材における幅方向の中心線を示す符号について、各部材を示す符号を符号「C」に下付きで追記している。
紙おむつ1は、長手方向に沿って前身頃1A、股下部1B及び後身頃1Cの三つの領域に大別される。
【0023】
この紙おむつ1には、後身頃1Cで幅方向に突出する止着テープ2が設けられ、前身頃1Aの最も非肌面側にフロントパッチ3(
図1では破線で示す)が設けられている。止着テープ2がフロントパッチ3に止め付けられることで、紙おむつ1が着用者に装着される。
また、股下部1Bの幅方向寸法は、一般的な着用者の両脚部の付け根間の寸法よりもやや大きく設定されている。そのため、装着状態では、幅方向に挟まれた股下部1Bが折り曲げられた状態となる。この状態では、長手方向に折れ目が延びる。
【0024】
つぎに、
図1〜
図3を参照して、紙おむつ1を構成するシート類について述べる。
紙おむつ1には、前身頃1A、股下部1B及び後身頃1Cに亘って長手方向に延びる吸収体12(
図1では太破線で示す)が設けられている。
図1及び
図2では、前身頃1A及び後身頃1Cよりも股下部1Bのほうが幅方向寸法の小さい、即ち、股下部1Bで幅方向両縁部が抉られた正面視形状の吸収体12を例示する。ただし、幅方向寸法が一定の吸収体12を用いてもよい。
【0025】
吸収体12は、着用者から排泄される液体を吸収して保持する部材である。この吸収体12については、この例ではマット状であるため、以下の説明では「マット12」と呼ぶが、吸収体の形状については、マット状に限らず当技術分野で知られる種々の形状のものを採用することができる。
たとえば、粉砕あるいは解繊されたパルプ(いわゆる「フラッフパルプ」)に高吸水性樹脂(いわゆるSAP〈Superabsorbent polymer〉、高吸水性高分子あるいは高吸水性ポリマーとも称される)が混合されたコアをラップシート(コアラップ)で被包(ラップ)したものがマット12に用いられる。ここでは、ラップシートにティッシュが用いられている。
【0026】
このマット12に対して肌面側及び非肌面側には、以下に述べる種々のシートが積層されている。
マット12の肌面側には、肌面側シートの一つとしてトップシート11がマット12の幅方向両側縁部(耳部)を除いた広い領域に重なるように配置され積層されている。トップシート11がマット12の全域を覆ってもよい。
トップシート11は、紙おむつ1で最も肌面側に配置される。このトップシート11は、着用者から排泄された液体をマット12に吸収させるために、液体を透過させる性質(液透過性)をもつ。そして、トップシート11は、マット12の肌面側を被覆する。
【0027】
さらに、トップシート11及びマット12に対して幅方向側方のそれぞれには、肌面側シートの一つとしてサイドシート10が設けられている。
サイドシート10は、トップシート11と同様に紙おむつ1で最も肌面側に配置される。このサイドシート10は、排泄された液体の漏れを防止するために、液体を透過させ難い性質(疎水性)をもつ。
【0028】
マット12の非肌面側には、マット12に近い側に非肌面側シートの一つとしてバックシート(第1非肌面側シート)13が積層されている。このバックシート13の非肌面側、(マット12から遠い側)には非肌面側シートの一つとしてカバーシート(第2非肌面側シート)14が積層されている。
バックシート13は、マット12からの液漏れを防ぐために、液不透過性をもつ。このバックシート13は、マット12を非肌面側から被覆する。たとえば、ポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)といった熱可塑性の樹脂シートがバックシート13に用いられる。
【0029】
図1及び
図2に示すように、カバーシート14は、紙おむつ1の股下部1B及び後身頃1Cで最も非肌面側に配置される。このカバーシート14は、バックシート13を補強するとともに触感(たとえば手触り)を向上させるために設けられ、バックシート13を非肌面側から被覆する。
なお、カバーシート14は、単層構造に限らず、インナカバーシート及びアウターカバーシートを有する多層構造であってもよい。
【0030】
なお、マット12は、紙おむつ1の幅方向の外側の両縁部1Sを除いて配置される。つまり、紙おむつ1の幅方向の外側の両縁部1Sでは、マット12及びトップシート11は配置されず、サイドシート10,バックシート13,カバーシート14のみが重ねられて配置されている。また、幅方向外側の両縁部1Sの最も外側では、バックシート13は配置されず、サイドシート10,カバーシート14のみが重ねられて配置されている。
【0031】
また、サイドシート10,バックシート13,カバーシート14のそれぞれの幅方向両縁部の正面視形状は、マット12の幅方向両縁部と同様に股下部1Bで抉られた形状になっている。ただし、マット12や各シート10,13,14は、このように抉られた形状に限定されず、それぞれ矩形であってもよい。サイドシート10,カバーシート14の幅方向両縁部は最も外側に延びて紙おむつ1の幅方向両縁部を構成し、マット12と厚み方向に重なるように配置されるトップシート11の幅方向両縁部は、バックシート13の幅方向両縁部よりもさらに内側に位置する。
【0032】
カバーシート14の非肌面側には、フロントパッチ3が貼着されている。
このフロントパッチ3は、ファスニング機構によって止着テープ2が結合されるものであり、止着テープ2は、後身頃1Cの幅方向両端部のそれぞれに設けられる。
図1及び
図2では、後身頃1Cの幅方向両側に二つずつ設けられた止着テープ2を例示する。ただし、少なくとも幅方向両側に一つずつの止着テープ2が設けられていればよく、個数は限定されない。これらの止着テープ2は、後身頃1Cの両縁部1Sのそれぞれから幅方向外側へ延設される。なお、フロントパッチは必須ではなく、例えば、カバーシート14がファスニングテープを引っかけられる素材であればよい。
【0033】
本実施形態では、止着テープ2とフロントパッチ3とを結合し前身頃1Aの両側部に後身頃1Cの両側部を固定するファスニング機構として、フック材(雄部材)とループ材(雌部材)との機械的結合により固定する面状ファスナーが用いられる。
面状ファスナーは、表面に多数の突起(たとえば鉤状やきのこ状など)が形成されたフック材と、表面にループ状の繊維が配置されたループ材との組み合わせにより構成される。すなわち、止着テープ2及びフロントパッチ3のうちの何れか一方にフック材が設けられ、他方にループ材が設けられる。面状ファスナーを用いることで、フック材及びループ材を剥離可能な状態としつつ強固に固着させることができ、繰り返しの使用も可能となる。
ただし、粘着剤や粘着テープなどをファスニング機構に用いてもよい。
【0034】
[1−2.詳細な構成]
つぎに、
図1〜
図3を参照して、紙おむつ1の詳細な構成を説明する。
ここでは、装着状態において、股下部1Bを所定形状に折り曲げて保持するための構造(以下「折曲保持構造」という)を述べる。なお、股下部1Bの不規則な折れ曲がりや捩れが着用者の快適性を低下させることから、股下部1Bを所定形状に折り曲げることで着用者の快適性を確保するために、折曲保持構造が紙おむつ1に設けられている。
【0035】
この折曲保持構造として、股下部1Bの形状を所定形状に折り曲げるためのエンボス部20(溝状部)が設けられ、所定形状に折り曲げられた股下部1Bの形状を保持するためのズレ止めギャザー(サポートギャザー)32が設けられている。さらに、エンボス部20によって股下部1Bを所定形状へ確実に折り曲げるための構成がマット12に設けられている。
【0036】
なお、紙おむつ1には、このズレ止めギャザー32と共に、レッグギャザー31及び立体ギャザー33も設けられている。本実施形態では、これらのギャザー31,32,33は、何れも幅方向の中心線Cに対して左右対称に設けられている。ズレ止めギャザー32については、レッグギャザー31よりも幅方向の中心線C寄り(内側寄り)にそれぞれ配置されるため、内側ギャザーとも呼ぶ。
【0037】
〈エンボス部〉
エンボス部20は、股下部1Bにおいて長手方向に延びて凹設された、少なくとも一対(二本)の部位である。なお、前身頃1Aや後身頃1Cにはエンボス部20が設けられていない。
【0038】
ここでは、トップシート11及びマット12にエンボス部20が設けられている。すなわち、紙おむつ1の肌面側にエンボス部20が配置される。なお、エンボス部20は、少なくともマット12に設けられていればよく、トップシート11には設けられていなくてもよい。
【0039】
このエンボス部20は、少なくともトップシート11が積層されたマット12を部分的にプレス(圧搾)することで凹設(エンボス加工)することができる。この場合には、エンボス部20の設けられたマット12が圧搾(圧密化)された状態をなしている。言い換えれば、エンボス部20は、マット12の圧搾により形成されてなるものである。
【0040】
図1及び
図2に示す本実施形態では、エンボス部20の一例として、幅方向の中心線Cを基準として左右対称に配置され、互いに平行であって二本で一対をなす直線状のエンボス部20を例示する。ただし、エンボス部20は、長手方向に延びるライン状に延びるエンボス(ラインエンボス)であればよく、直線状のラインエンボスに限らず、波線状のラインエンボスや、弧状などその他の曲線状のラインエンボスであってもよい。
【0041】
また、本実施形態では、左右の各エンボス部20が中心線Cと平行であるが、左右の各エンボス部20は、長手方向の一方から他方に向かうにつれて離間あるいは接近する形状であってもよい。さらに、エンボス部20は、本実施形態のように左右に1本ずつ設ければよいが、左右にそれぞれ複数本ずつ設けてもよく、各本数も限定されない。また、左右対称なエンボス部20以外に、エンボス部20を設けてもよく、三本以上のエンボス部20を設けてもよい。
【0042】
〈レッグギャザー〉
レッグギャザー31は、着用者の脚部への追従性を高めるために設けられている。このレッグギャザー31は、幅方向には、紙おむつ1の幅方向の外側の両縁部1Sに設けられている。レッグギャザー31は、長手方向には、股下部1Bの全域と、前身頃1Aの股下部1B寄りの部分及び後身頃1Cの股下部1B寄りの部分とに亘って長手方向に延びるように設けられている。また、レッグギャザー31は、股下部1Bにおいては、紙おむつ1の幅方向外側の両縁部1Sのマット12の配置されない領域に、前身頃1A及び後身頃1Cにおいては、マット12の外縁部やマット12と隣接する領域に、それぞれ形成される。
【0043】
レッグギャザー31は、長手方向に収縮力を発揮する弾性部材(第1弾性部材)41によって長手方向に収縮して皴を付けられて形成される。第1弾性部材41は、
図1に破線で示すように、2本の線状弾性体(第1線状弾性体)41a,41bによって構成される。第1弾性部材41は、幅方向には、股下部1Bにおいては、紙おむつ1の両縁部1Sに、前身頃1A及び後身頃1Cにおいては、マット12の外縁部やマット12と隣接する領域に、それぞれ配置される。また、第1弾性部材41は、股下部1Bの全域と、前身頃1Aの股下部1B寄りの部分及び後身頃1Cの股下部1B寄りの部分とに亘って長手方向に延びるように設けられている。
【0044】
〈ズレ止めギャザー〉
ズレ止めギャザー32は、装着状態において、マット12を肌面側に持ち上げて支持すると共にマット12がずれないようにするために設けられている。このズレ止めギャザー32は、幅方向には、レッグギャザー31よりも幅方向内側で且つエンボス部20よりも幅方向外側で、マット12の幅方向両縁部付近(縁部寄り)に対応するように配置されている。ズレ止めギャザー32は、長手方向には、股下部1Bを中心に、マット12の前身頃1Aの股下部1B寄りの部分から後身頃1Cの股下部1B寄りの部分に亘って、長手方向に延びるように配置されている。
【0045】
また、ズレ止めギャザー32は、股下部1Bの領域内において、厚み方向において(平面視で)マット12と重なる位置に配置される。ここでは、ズレ止めギャザー32の長手方向位置がマット12の長手方向位置と一致している。このようにズレ止めギャザー32の長手方向位置とマット12の長手方向位置とが一致することは必須ではないが、ズレ止めギャザー32の全てがマット12と重なる位置に配置されていることが好ましい。この場合、ズレ止めギャザー32がマット12の長手方向全領域まではカバーしない構成を含むが、ズレ止めギャザー32は無駄なくマット12に作用することになる。また、ズレ止めギャザー32の配置はこれに限定されず、ズレ止めギャザー32の少なくとも一部がマット12と重なる位置に配置されていればよい。
【0046】
ズレ止めギャザー32も、長手方向に収縮力を発揮する弾性部材(第2弾性部材)42によって長手方向に収縮して皴を付けられて形成される。第2弾性部材42は、
図1に破線で示すように、何れも長手方向に沿って配置された3本の線状弾性体(第2線状弾性体)42a〜42cによって構成される。
【0047】
第2弾性部材42は、幅方向には、レッグギャザー31の第1弾性部材41よりも幅方向内側で且つエンボス部20よりも幅方向外側で、マット12の幅方向両縁部付近に対応するように配置されている。第2弾性部材42は、長手方向には、その有効範囲(弾性力を発揮する範囲)を、股下部1Bを中心に、マット12の前身頃1Aの股下部1B寄りの部分から後身頃1Cの股下部1B寄りの部分に亘って長手方向に延びるように配置されている。
【0048】
当然ながら、第2弾性部材42の長手方向への有効範囲もズレ止めギャザー32と対応しており、第2弾性部材42の長手方向への有効範囲はマット12の長手方向範囲と一致している。第2弾性部材42の有効範囲はマット12の長手方向範囲と一致することは必須ではないが、第2弾性部材42の有効範囲の全てがマット12と重なる位置に配置されていることが好ましい。この場合、第2弾性部材42がマット12の長手方向全領域まではカバーしない構成を含むが、第2弾性部材42は無駄なくマット12に作用することになる。また、第2弾性部材42の有効範囲の配置はこれに限定されず、第2弾性部材42の有効範囲の少なくとも一部がマット12と重なる位置に配置されていればよい。
【0049】
〈立体ギャザー〉
立体ギャザー33は、排泄された液体が幅方向外側に漏れることを防ぐために設けられる。この立体ギャザー33の基端は、幅方向には、ズレ止めギャザー32よりも幅方向外側でレッグギャザー31よりも幅方向内側に配置されている。立体ギャザー33は、長手方向には、紙おむつ1の長手方向端部(この端部は、固定部とされ伸縮機能はない)を除くほぼ全長に亘って長手方向に延びるように配置されている。
【0050】
サイドシート10の幅方向内側は、
図3,
図4に示すように、サイドシート10が接合されるトップシート11の縁部から肌面側に離隔可能に延設された内側延設部10Sを有している。この内側延設部10Sは、サイドシート10の全長にわたって形成されており、この内側延設部10Sに立体ギャザー33が形成される。上記の立体ギャザー33の基端は、この内側延設部10Sの基端側の縁部、即ち、内側延設部10Sがトップシート11から離隔を開始する部分に相当する。
【0051】
立体ギャザー33は、長手方向に収縮力を発揮する弾性部材(第3弾性部材)43によって長手方向に収縮して皴を付けられて形成される。
図3,
図4に示すように、内側延設部10Sの先端側の縁部は折り返されて接合された二重構造になっており、この二重構造部分の内部に、第3弾性部材43が配置されている。
【0052】
第3弾性部材43は、
図1に破線で、
図3,
図4に断面で示すように、2本の線状弾性体(第3線状弾性体)43a,43bによって構成される。第3弾性部材43は、長手方向には、紙おむつ1の長手方向端部(この端部は、固定部とされ伸縮機能はない)を除くほぼ全長に亘って長手方向に延びるように配置される。
【0053】
〈各ギャザーの特徴〉
レッグギャザー31,ズレ止めギャザー32,立体ギャザー33は、何れも弾性部材41,42,43によって長手方向に収縮して皴を付けられて形成される。これらの弾性部材41,42,43は、何れも装着されるシート間に伸長状態で連続的に接合されて装着される。これらの弾性部材41,42,43が収縮力を発揮する。
【0054】
本実施形態では、各弾性部材41,42,43は何れも複数の線状弾性体41a,41b,42a〜42c,43a,43bにより構成されているが、各線状弾性体としては、例えば、天然ゴムや合成ゴムを用いた糸ゴム(糸状のゴム)や、糸状の伸縮フィルムを適用することができる。これらの線状弾性体41a,41b,42a〜42c,43a,43bで構成される弾性部材41,42,43は、それぞれ、紙おむつ1を構成する各シートの層間に配置されている。
【0055】
つまり、レッグギャザー31の第1弾性部材41は、股下部1Bではサイドシート10とバックシート13との層間に配置される。また、レッグギャザー31は、主として固定端となる前身頃1A及び後身頃1Cではサイドシート10とバックシート13との層間に、それぞれ配置されるが、前身頃1A及び後身頃1Cではサイドシート10とカバーシート14との層間や、バックシート13とカバーシート14との層間に配置されてもよい。
【0056】
ズレ止めギャザー32の第2弾性部材42は、その全域においてバックシート13とカバーシート14との層間に配置される。ズレ止めギャザー32の第2弾性部材42の有効範囲は、その全てがマット12と重なる位置に配置されているため、第2弾性部材42の線状弾性体42a〜42cが伸縮変形すると、線状弾性体42a〜42cとこれに接触するシートとの間で擦れが生じる。線状弾性体42a〜42cがマット12に直接接触していると、線状弾性体42a〜42cとマット12との間で擦れが生じて、マット12が破れたり崩れたりして、マット12の吸収性が低下するおそれが発生する。特に、ラップシートにティッシュが用いられていると、線状弾性体42a〜42cとティッシュとが擦れるため、ティッシュが破れやすい。
【0057】
これに関し、第2弾性部材42の線状弾性体42a〜42cをバックシート13とカバーシート14との層間に配置することにより、線状弾性体42a〜42cとマット12との接触を回避しながら、バックシート13を通じて第2弾性部材42の収縮力をマット12に伝えるようにして、マット12の破れや崩れを招くことなく、ズレ止めギャザー32により、マット12を肌面側に持ち上げて支持すると共にマット12がずれないようにすることができるようにしている。
【0058】
また、
図1〜
図4に示すように、レッグギャザー31の第1弾性部材41は2本の線状弾性体41a,41bが、ズレ止めギャザー32の第2弾性部材42は3本の線状弾性体42a〜42cが、立体ギャザー33の第3弾性部材43は2本の線状弾性体43a,43bが、それぞれ設けられるが、各弾性部材41,42,43や各線状弾性体41a,41b,42a〜42c,43a,43bは、各ギャザー31,32,33に対する要求に応じた弾性特性のものが適用されている。
【0059】
特に、レッグギャザー31の第1弾性部材41とズレ止めギャザー32の第2弾性部材42との間では、第1弾性部材41の方が第2弾性部材42よりも高い弾性率を有するものが適用されている。つまり、幅方向の内側の弾性部材42よりも幅方向の外側の弾性部材41の方が高い弾性率を有するように構成されている。
言い換えれば、同じ伸び(伸び率)を与えた場合には、幅方向の内側の弾性部材42よりも幅方向の外側の弾性部材41の方が強い弾性力を発揮するように構成されている。
【0060】
なお、ここで言う「弾性率」とは、主として紙おむつ1の長手方向への伸縮に着目した弾性係数あるいは弾性定数であり、以下に示すヤング率Eに相当し、バネ定数kにも対応させることができる。
E=σ/ε
σ:弾性部材の伸張による応力
ε:弾性部材の伸張による歪み
したがって、第1弾性部材41のヤング率(弾性率)をE1、第2弾性部材42のヤング率(弾性率)をE2とすると、E1,E2は次式(1)の関係となる。
E1>E2 ・・・(1)
【0061】
このように、第1弾性部材41の方が第2弾性部材42よりも高い弾性率のものが適用されていると、同じ伸びを与えた場合には、第1弾性部材41の方が第2弾性部材42よりも強い弾性力を発揮する。つまり、レッグギャザー31の方がズレ止めギャザー32よりも強い弾性力で肌面に密着するため、紙おむつ1の装着状態で、レッグギャザー31とズレ止めギャザー32との間の液体は、ズレ止めギャザー32側には移動し易くレッグギャザー31側には漏出し難くなる。
【0062】
本実施形態では、各弾性部材41,42は、何れも複数の線状弾性体41a,41b,42a,42b,42cによって構成されており、線状弾性体41a,41b,42a,42b,42cのヤング率(弾性率)をそれぞれE1a,E1b,E2a,E2b,E2cとすると、第1弾性部材41,第2弾性部材42のヤング率(弾性率)E1,E2はそれぞれ、次式(2A),(2B)のように、各線状弾性体のヤング率(弾性率)の合成値(=加算値)になる。
E1=E1a+E1b ・・・(2A)
E2=E2a+E2b+E2c ・・・(2B)
【0063】
なお、上記の合成値は、複数の線状弾性体が一体的に作用する場合を想定した単純な加算値である。実際には、複数の線状弾性体は僅かであるが離間して配置されるため、複数の線状弾性体が完全に一体的に作用するわけではないため、弾性部材の実質的な弾性率(肌面への密着性に相関する弾性率)は、上記合成値のような単純な加算値よりも低下することも想定される。
【0064】
本実施形態では、第1弾性部材41の各線状弾性体41a,41bについても、第2弾性部材42の各線状弾性体42a〜42cについても、幅方向の内側のものよりも幅方向の外側のものの方が高い弾性率を有していることが好ましい。
つまり、線状弾性体41a,41bについては次式(3A)のように、線状弾性体42a〜42cについては次式(3B)のように、幅方向の外側に配設された線状弾性体ほど高い弾性率を有するものが適用されている。
E1a<E1b ・・・(3A)
E2a<E2b<E2c・・・(3B)
【0065】
なお、線状弾性体42a〜42cについては、次式(3B1),(3B2)のように、その一部に幅方向の外側に配設された線状弾性体ほど高い弾性率を有するものが適用されてもよい。
E2a=E2b<E2c・・・(3B1)
E2a<E2b=E2c・・・(3B2)
【0066】
このように、幅方向の内側の線状弾性体よりも幅方向の外側の線状弾性体の方が高い弾性率を有していると、同じ伸びを与えた場合には、外側の線状弾性体の方が内側の線状弾性体よりも強い弾性力を発揮する。つまり、外側の線状弾性体付近のギャザー部分の方が内側の線状弾性体付近のギャザー部分よりも強い弾性力で肌面に密着するため、外側の線状弾性体付近と内側の線状弾性体付近との間の液体は、内側の線状弾性体の側には移動し易く外側の線状弾性体の側には漏出し難くなる。
【0067】
また、本実施形態では、第1弾性部材41及び第3弾性部材43が何れも2本の線状弾性体で構成されているのに対して、第2弾性部材42は3本の線状弾性体42a〜42cで構成されている。このように、第2弾性部材42についてはより多くの数の線状弾性体により構成することで、各線状弾性体の弾性率(弾性力)を抑えながらも第2弾性部材42として必要な弾性率(弾性力)を確保することができるようにしている。これによって、第2弾性部材42の弾性力がマット12に対して局部的に作用し難くなっている。
【0068】
なお、各弾性部材41,42,43は、単一の線状弾性体で構成してもよいが、複数の線状弾性体を組み合わせて構成することにより、各ギャザー31,32,33が着用者の肌に局部的に強く圧接することを抑制でき、ギャザー31,32,33を着用者の肌にソフトに且つ必要な密着力で圧接することができる。第2弾性部材42の場合は、これに加えてマット12への影響(マット12の破れや崩れを招くこと)を抑制することが要求される。
【0069】
弾性部材41,42,43を、複数の線状弾性体を組み合わせて構成する場合、最も一般的には、各線状弾性体を互いに平行に配置する。また、互いに平行に配置する場合の隣接する線状弾性体間の距離は、弾性部材の弾性率(弾性力)を確保する観点からは短い方がよい。ただし、加工上の制約や、これらの線状弾性体によって形成されるギャザー31,32,33の形状への影響も考慮して、線状弾性体間の距離を設定することになる。
【0070】
また、各線状弾性体を必ずしも互いに平行に配置する必要はない。つまり、隣接する線状弾性体の相互間を長手方向のある箇所は接近させて他の箇所は次第に離間させるなど、種々の配置が考えられる。例えば上記のように、線状弾性体の相互間が離間すると弾性部材の実質的な弾性率(肌面への密着性に相関する弾性率)が低下することが想定されるが、第1弾性部材41の実質的な弾性率の確保(E1>E2)が長手方向の要部のみに要求され、他の部分では肌面へのソフトな触感が要求される場合は、要部では線状弾性体41a,41bの相互間を接近させ、他の部分では離間させることが考えられる。
【0071】
[2.装着状態の紙おむつ]
つぎに、
図4(a),(b)を参照して、装着状態の股下部1Bを説明する。
装着状態では、股下部1Bが所定形状に折り曲がった状態となる。具体的には、股下部1Bの幅方向断面が、
図4(a)に示すように、エンボス部20の相互間が幅方向中心を頂点に肌面側に盛り上がって、更に、エンボス部20の外側も肌面側に盛り上がるため、
図4(b)に示すように、「W」字状の所定形状に折り曲げられる。この「W」字状をなす部分を二つの並んだV字に準えて、一方のV字部分及び他方のV字部分をV字部51,52と呼ぶ。また、折れ目の位置が肌面側であれば山折りと呼び、非肌面側であれば谷折れと呼ぶ。
【0072】
この装着状態では、エンボス部20が折れ目となって股下部1Bの谷折れを案内している。具体的に言えば、二つのエンボス部20を折れ目として股下部1Bを谷折りすることで、二つの谷折りが案内される。そして、V字部51、52のそれぞれの角部に対応する部位に二つのエンボス部20が位置する。このときの股下部1Bでは、二つのエンボス部20の幅方向中間部が逆V字状に山折りされ、幅方向中心が折れ目となる。
【0073】
このように所定形状に折り曲げられた股下部1Bでは、V字部51,52のそれぞれの幅方向外側に、第2弾性部材42で形成されるズレ止めギャザー32が位置する。これらの第2弾性部材41で収縮するズレ止めギャザー32によって、マット12が長手方向に収縮され、全体的に股下部1Bが肌面側に持ち上げられる。
【0074】
[3.作用及び効果]
上述したように紙おむつが構成されるため、以下のような作用及び効果を得ることができる。
第2弾性部材42によってマット12が長手方向に収縮されることで、マット12が肌面側に持ち上げられ、エンボス部20でのマット12の折り曲げを確実に保持することができる。
よって、装着状態において紙おむつ1の股下部1Bが所定形状に折り曲げて保持され、触感や吸液性を確保して着用者の快適性を向上させることができる。
【0075】
また、レッグギャザー31を形成する第1弾性部材41の方がズレ止めギャザー(内側ギャザー)32を形成する第2弾性部材42よりも高い弾性率を有しているので、レッグギャザー31とズレ止めギャザー32とが同じように伸びを生じると、第1弾性部材41の方が第2弾性部材42よりも強い弾性力で肌面に密着するため、紙おむつ1の装着状態で、レッグギャザー31とズレ止めギャザー32との間の液体は、ズレ止めギャザー32側には移動し易くレッグギャザー31側には漏出し難くなり、これによって、横漏れが抑制される。
【0076】
さらに、第1弾性部材41を構成する第1線状弾性体41a,41b及び第2弾性部材42を構成する第2線状弾性体42a,42b,42cは、幅方向の内側のものよりも幅方向の外側のものの方が高い弾性率を有しているので、第1弾性部材41の周辺においても第2弾性部材42の周辺においても、外側の線状弾性体付近のギャザー部分の方が内側の線状弾性体付近のギャザー部分よりも強い弾性力で肌面に密着する。これにより、外側の線状弾性体付近と内側の線状弾性体付近との間の液体は、内側の線状弾性体の側には移動し易く外側の線状弾性体の側には漏出し難くなって、外側には漏出し難くなり、いわゆる、横漏れが抑制される。
【0077】
また、ズレ止めギャザー32及び第2弾性部材42は、マット12の幅方向両縁部付近に対応するように配置されているので、ズレ止めギャザー32の第2弾性部材42が、マット12の幅方向の各縁部の着用者へのフィット性,密着性を効率よく向上させるので、マット12による排泄物の吸収性を高める効果が得られる。また、排泄物がマット12に吸収され易いので外部への排泄物の漏出を抑制する効果も高まる。なお、排泄物がマット12よりも外側に漏れた場合には、上記のように第1弾性部材41と第2弾性部材42との弾性率の関係や、各弾性部材41,42を構成する線状弾性体41a,41b,42a,42b,42c同士の弾性率の関係により、外部への排泄物の漏出が抑制される。
【0078】
第2弾性部材42は、第1,第3弾性部材41,43よりも多くの複数の第2線状弾性体によって構成されているので、各線状弾性体の弾性率(弾性力)を抑えながらも第2弾性部材42として必要な弾性率(弾性力)を確保することができ、第2弾性部材42の弾性力がマット12に対して局部的に作用し難くして、マット12の保護(即ち、マット12の損傷や型崩れの防止)を図りながら、ズレ止めギャザー32によるマット12の肌面へのフィット性を確保することができる。
【0079】
ズレ止めギャザー32及び第2弾性部材42の有効範囲の長手方向位置がマット12の長手方向位置と一致しているので、この点からも、第2弾性部材42の収縮力が効率よく発揮され、マット12の着用者へのフィット性,密着性を向上させ、マット12による排泄物の吸収性を高めることができる。なお、少なくとも、ズレ止めギャザー32の全て及び第2弾性部材42の有効範囲の全てがマット12と厚み方向に重なる領域に配置されていれば、第2弾性部材42の収縮力が効率よく発揮され、マット12のフィット性,密着性を向上させ、マット12による排泄物の吸収性を高める効果が得られる。
【0080】
また、第2弾性部材42は、バックシート13とカバーシートと14の間に配設され、ズレ止めギャザー32は、この第2弾性部材42によって収縮力を受けるバックシート13とカバーシート14とにより形成されているので、第2弾性部材42とマット12との直接接触を回避して、バックシート13を通じて第2弾性部材42の収縮力をマット12に伝えるため、マット12のラップシートであるティッシュの破れが抑制され、マット12の破れや崩れといったマット12の損傷発生を抑えマット12の性能の確保しながら、ズレ止めギャザー32により、マット12を肌面側に持ち上げて支持すると共にマット12がずれないようにすることができる。
【0081】
また、第1弾性部材41は、サイドシート(肌面側シート)10とバックシート13との間に配設され、レッグギャザー31は、第1弾性部材41によって収縮力を受けるサイドシート10とバックシート13とにより形成されるので、サイドシート10とバックシート13とによりレッグギャザー31の強度が確保され、紙おむつ1の耐久性を向上させることができる。
【0082】
さらに、マット12の幅方向両縁部に隣接して、長手方向に収縮力を発揮する第3弾性部材43によってトップシート(肌面側シート)11から肌面側に向けて立体的に形成される立体ギャザー33をさらに有しているので、この立体ギャザー33によっても、排泄物の外側への漏出が抑制される。
【0083】
サイドシート10の幅方向内側には、トップシート11から肌面側に離隔可能に延設された内側延設部10Sを有し、この内側延設部10Sに立体ギャザー33が設けられており、サイドシート10を利用して立体ギャザー33を形成しているので、紙おむつ1の構成部材の数を抑えることができる。
【0084】
[II.その他]
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は、上記実施形態を以下のように変形して実施してもよい。
例えば上記実施形態では、レッグギャザー31とズレ止めギャザー32と立体ギャザー33の3つのギャザーを装備しているが、本発明は、ズレ止めギャザー32の第2弾性部材42が非肌面側の2枚のシート、吸収体に近い第1非肌面側シート及び吸収体から遠い第2非肌面側シートの層間に配置されることが必須であり、ズレ止めギャザー32を装備すればよく、レッグギャザー31や立体ギャザー33は必須ではない。
【0085】
また、上記実施形態では、吸収体に近い第1非肌面側シートとしてバックシート13を適用し、吸収体から遠い第2非肌面側シートとしてカバーシート14を適用しているが、第1非肌面側シート及び第2非肌面側シートはこれに限定されず、非肌面側に積層された2枚の非肌面側シートの層間であれば何れも適用可能である。例えば、カバーシート14が多層構造であれば、ズレ止めギャザー32の第2弾性部材42がこれらの層間に配置されてもよい。例えば、吸収体に近い第1非肌面側シートとしてインナカバーシートを適用し、吸収体から遠い第2非肌面側シートとしてアウターカバーシートを適用することができる。
【0086】
また、上記実施形態では、エンボス部20を設けているが、本発明では、エンボス部20は必須でない。また、エンボス部20は、前身頃1Aや後身頃1Cの一部に設けられていてもよい。
そのうえ、エンボス部20に替えてまたは加えて、対応する部分のマット12が肉抜きされあるいは貫通した溝状部がマット12に凹設されてもよい。また、エンボス部20は、マット12の非肌面側に設けられていてもよく、マット12の肌面側と非肌面側とに設けられていてもよい。