【実施例】
【0025】
上記した本発明の一実施の形態についてさらに詳細に説明すべく、本発明の一実施例に係る制御装置、印刷物管理方法、カラーチャート及び印刷物管理プログラムについて、
図1乃至
図12を参照して説明する。
図1乃至
図3は、本実施例の印刷システムを示す模式図であり、
図4は、本実施例の印刷装置を示す模式図、
図5は、
図4の印刷装置の構成を示すブロック図である。また、
図6及び
図7は、本実施例の印刷装置の動作を示すフローチャート図であり、
図8は、本実施例の印刷物管理方法に利用するパッチの一例を示す模式図である。また、
図9は、
図8のパッチのトーンバリューの正常範囲を示すテーブルであり、
図10乃至
図12は、パッチのトーンバリューと印刷状態、表面加工状態との相関を示すグラフである。
【0026】
図1に示すように、本実施例の印刷システム10は、電子写真方式の印刷機などの印刷装置20と、ニス用インクジェットプリンタなどの表面加工装置30と、ライン測色計などの測色装置40と、制御装置50(例えば、測色装置40を制御するコンピュータ装置)などで構成される。これらはイーサネット(登録商標)、トークンリング、FDDI(Fiber-Distributed Data Interface)等の規格により定められるLAN(Local Area Network)やWAN(Wide Area Network)等の通信ネットワーク60を介して接続されている。
【0027】
なお、印刷装置20、表面加工装置30、測色装置40の配置や接続方法は任意であり、これらはインラインで接続してもよいし、ニアラインで配置してもよい。また、
図1では、印刷装置20、表面加工装置30、測色装置40とは別に制御装置50を設けたが、制御装置50は、いずれかの装置に内蔵(例えば、
図2に示すように測色装置40に内蔵)される構成としてもよい。また、測色装置40は独立した装置としてもよいが、
図3に示すように、印刷装置20に内蔵(インライン測色器として内蔵)される構成としてもよい。更に、表面加工装置30は独立した装置としてもよいが、
図4に示すように、印刷装置20に内蔵される(印刷装置20としてハイグロスコーター胴を持つオフセット印刷機などを用いる)構成としてもよい。以下、
図4の構成の印刷装置20について詳細に説明する。
【0028】
印刷装置20は、
図4及び
図5(a)に示すように、制御部21、記憶部22、ネットワークI/F部23、表示操作部24、画像処理部25、印刷処理部26、表面加工処理部27、インライン測色部28などで構成される。
【0029】
制御部21は、CPU(Central Processing Unit)とROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)などのメモリとで構成され、CPUは、ROMや記憶部22に記憶した制御プログラムをRAMに展開して実行することにより、印刷装置20全体の動作を制御する。
【0030】
記憶部22は、HDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)などで構成され、CPUが各部を制御するためのプログラム、自装置の処理機能に関する情報、後述するトーンバリューの正常範囲を示すテーブルやトーンバリューと印刷状態や表面加工状態との相関を示すグラフなどを記憶する。
【0031】
ネットワークI/F部23は、NIC(Network Interface Card)やモデムなどで構成され、印刷装置20を通信ネットワーク60に接続し、図示しないクライアント端末などとのデータ通信を可能にする。
【0032】
表示操作部24は、LCD(Liquid Crystal Display)や有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイなどの表示部上に透明電極が格子状に配置された感圧式の操作部(タッチセンサ)を設けたタッチパネルなどであり、印刷設定や表面加工設定などを行うための画面を表示し、当該画面に対する操作を受け付けて、印刷設定や表面加工設定などを可能にする。
【0033】
画像処理部25は、RIP(Raster Image Processor)部として機能し、図示しないクライアント端末から送信される印刷ジョブに対して、色変換、スクリーニング、ラスタライズ等の画像処理を行い、画像処理後の画像データを印刷処理部26に転送する。
【0034】
印刷処理部(印刷エンジン)26は、画像処理後の画像データに基づき、予め定めた印刷設定に従って印刷処理を実行する。この印刷処理部26は、帯電装置により帯電された感光体ドラムに露光装置から画像に応じた光を照射して静電潜像を形成し、現像装置で帯電したトナーを付着させて現像し、そのトナー像を転写ベルトに1次転写し、転写ベルトから用紙に2次転写し、更に定着装置で用紙上のトナー像を定着させる処理を行う。
【0035】
表面加工処理部27は、印刷処理部26が印刷処理を行った用紙上に、予め定めた表面加工設定に従って透明ニスやクリアトナー、PPフィルムなどの透明材料を形成する表面加工処理を実行する。例えば、透明ニス塗りの場合は、印刷処理後の用紙に透明ニスを塗布する。また、クリアトナー加工の場合は、有色トナーを用いた画像形成工程で、クリアトナーを用紙表面全面に乗せ、その後に冷却剥離定着で定着する。また、PP貼りの場合は、後処理工程でPPフィルムのラミネートを行う。
【0036】
インライン測色部28は、例えば、外部の測色装置40と同様に、光の波長ごとに計測可能な測色器(スペクトル方式の分光光度計)であり、印刷処理部26が印刷処理を行い、表面加工処理部27が表面加工処理を行ったパッチを測色して、測色値(L*a*b*、XYZなど)を出力する。
【0037】
なお、
図5(a)では、印刷処理部26と表面加工処理部27とインライン測色部28とを別々に記載したが、表面加工としてクリアトナー加工を行う場合は、表面加工処理部27は印刷処理部26内に設けてもよい。また、インライン測色部28は印刷処理部26内の用紙搬送経路上に設けてもよい。
【0038】
また、制御部21は、
図5(b)に示すように、測色値処理部21a、判断部21b、フィードバック制御部21cなどとして機能する。
【0039】
測色値処理部21aは、インライン測色部28からパッチの測色値を取得し、取得した測色値に基づいて、第1色の中間調の第1パッチ(後述するAパッチ)と下地の第2色のベタ上に第1色の中間調を重ね合わせた第2パッチ(後述するBパッチ)とに対して、トーンバリュー又はトーンバリューからデータ上網%値を引いた値であるドットゲインを算出する。具体的には、第1パッチの測色値と第1パッチの第1色の階調を増減させたパッチの測色値とを用いて、第1パッチのトーンバリュー又はドットゲインを算出すると共に、第2パッチの測色値と第2パッチの第1色の階調を増減させたパッチの測色値とを用いて、第2パッチのトーンバリュー又はドットゲインを算出する。なお、トーンバリューの求め方は、ISO10128 annex Aに規定されたCIE XYZを用いた式、同規定から特定波長の分光反射率を用いた式を用いる例や、マーレー・デービス式、ユール・ニールセン式を用いる例などの内、扱いやすい式を用いることができる。このトーンバリューの算出方法については後述する。
【0040】
判断部21bは、記憶部22に予め記憶したトーンバリューの正常範囲を示すテーブル、トーンバリューと印刷状態や表面加工状態との相関を示すグラフを用いて、測色値処理部21aが算出した第1パッチ及び第2パッチのトーンバリュー(又はドットゲイン)に対応する印刷状態及び/又は表面加工状態を判断する。具体的には、測色値処理部21aが算出した第1パッチ及び第2パッチのトーンバリュー(又はドットゲイン)と予め定めた基準値とを各々比較し、第1パッチと第2パッチとでトーンバリュー(又はドットゲイン)の増減の傾向が異なることを利用して、印刷が基準より強いか弱いか(濃度が基準値よりも大きいか小さいか)、表面加工が基準より強いか弱いか(透明材料の膜厚が基準値よりも厚いか薄いか)を判断する。例えば、第1パッチ及び第2パッチのトーンバリュー(又はドットゲイン)が共に基準値に対して同程度の変動値で変動している場合は、印刷状態が異常であると判断し、第1パッチのトーンバリュー(又はドットゲイン)が基準値に対して第1変動値で変動し、かつ、第2パッチのトーンバリュー(又はドットゲイン)が基準値に対して第1変動値よりも小さい第2変動値で変動している場合は、表面加工状態が異常であると判断する。また、判断部21bは、必要に応じて、測色値処理部21aが算出した第1パッチ及び第2パッチのトーンバリュー(又はドットゲイン)を、表示操作部24に表示、又は、上記テーブルやグラフに関連付けて表示操作部24に表示し、ユーザによる印刷処理部26及び/又は表面加工処理部27へのフィードバック制御を可能にする。
【0041】
フィードバック制御部21cは、判断部21bの判断結果に基づいて、印刷処理部26の印刷設定及び/又は表面加工処理部27の表面加工設定を制御する。具体的には、印刷が基準より弱い(濃度が基準値よりも薄い)場合は、濃度を上げるように印刷設定を変更するフィードバック制御を行い、印刷が基準より強い(濃度が基準値よりも濃い)場合は、濃度を下げるように印刷設定を変更するフィードバック制御を行う。また、表面加工が基準より弱い(透明材料の膜厚が基準値よりも薄い)場合は、膜厚を厚くするように表面加工設定を変更するフィードバック制御を行い、表面加工が基準より強い(透明材料の膜厚が基準値よりも厚い)場合は、膜厚を薄くするように表面加工設定を変更するフィードバック制御を行う。
【0042】
上記測色値処理部21a、判断部21b、フィードバック制御部21cは、ハードウェアとして構成してもよいし、制御部21を、測色値処理部21a、判断部21b、フィードバック制御部21c(特に、測色値処理部21a及び判断部21b)として機能させる印刷物管理プログラムとして構成し、当該印刷物管理プログラムをCPUに実行させる構成としてもよい。
【0043】
なお、
図1乃至
図5は本実施例の印刷システム10及び印刷装置20の一例であり、その構成や制御は適宜変更可能である。
【0044】
以下、上記構成の印刷装置20を用いてフィードバック制御を行う場合の動作について、
図6のフローチャート図を参照して説明する。
【0045】
まず、印刷用紙に対して、印刷処理部26は予め定めた印刷設定に従って所定のパッチを印刷する(S100)。このパッチは、例えば
図8に示すように、第1色単体のトーンバリュー(又はドットゲイン)を算出するためのパッチ(図中のAパッチ)と、下地色(第2色)のトーンバリュー(又はドットゲイン)を算出するためのパッチ(図中のBパッチ)と、Aパッチ及びBパッチの各々に対して無地とベタの2つのパッチを追加した6パッチで構成されている。
【0046】
なお、第1色と第2色とは任意に設定することができるが、第1色が反射する波長の光を第2色で効率よく吸収すると感度が上がるため、そのような組み合わせとなるように第1色及び第2色を設定することが望ましい。例えば、色相が異なるようにCIE LCh表現で90度以上差がある色の組み合わせとすることができ、第1色をイエロー系、第2色をシアン系又はブルー系とすることができる。
【0047】
また、光学的ドットゲイン量は紙白部に発生するため、効果的にドットゲインが発生する物理的網点サイズに設定することが好ましく、例えば、第1色の中間調の網%は、紙面上の非着色部の面積が50%以上、90%以下となる値にすることができる。なお、上記の50%は、矩形状の網点を4隅で接触させた場合の値であり、90%は、インクの滲みを考慮して設定した値である。
【0048】
また、下地ベタによる吸光について、紙白部はできるだけ少なくするのが効果的であるため、紙白が埋まっていることが好ましく、例えば、第2色のベタの網%は、紙面上の非着色部の面積が10%以下となる値にすることができる。なお、印刷方式によっては印刷データ上で網%が100%でなくてもインクの滲みによりベタ印刷になるため、紙面状態で定義することが好ましい。
【0049】
次に、表面加工処理部27は、予め定めた表面加工設定に従って、パッチ印刷後の用紙上に透明材料を塗布して表面加工を行う(S200)。その際、透明材料のパターンを形成するのは困難であり、パターン状の透明材料では膜厚が不正確になる恐れがあることから、本実施例では、用紙の全体に透明材料を形成する。
【0050】
次に、インライン測色部28は、表面加工処理後の各パッチを測色して測色値を取得し(S300)、印刷製品として出力する。その際、インライン測色部28は測色した結果(測色値)を制御部21に出力する。
【0051】
制御部21は、インライン測色部28から取得した測色値を用いて、第1パッチ及び第2パッチのトーンバリュー(又はドットゲイン)を算出し、算出したトーンバリュー(又はドットゲイン)と基準値とを比較する。そして、比較結果がOKの場合(第1パッチ及び第2パッチのトーンバリューが正常範囲内の場合)は上記の印刷設定及び表面加工設定で継続して生産を行い、比較結果がNGの場合(第1パッチ及び第2パッチのトーンバリューが正常範囲から外れる場合)は、比較結果に基づいて、印刷設定及び/又は表面加工設定を変更すべく、フィードバック制御を行う(S400)。
【0052】
上記S400の処理について、
図7を参照して詳細に説明する。制御部21のCPUは、ROM又は記憶部22に記憶した印刷物管理プログラムをRAMに展開して実行することにより、
図7のフローチャート図に示す各ステップの処理を実行する。なお、以下の説明において、印刷処理部26の印刷設定及び表面加工処理部27の表面加工設定は、予め表示操作部24などを用いて行われているものとする。
【0053】
まず、制御部21(測色値処理部21a)は、インライン測色部28からパッチを測色した測色値(ここでは、XYZ)を取得する(S401)。
図8は、本実施例で使用するパッチの一例であり、図中の上段左のパッチはインクを塗布していないパッチ、上段中央は第1色(ここではY(Yellow))の中間調(ここではY50%)のパッチ(Aパッチとする。)、上段右は第1色のベタ(ここではY100%)のパッチである。また、図中の下段は上段の各パッチに対して下地側に形成される第2色(第1色とは異なる色、ここではC(Cyan))のベタが追加されたパッチであり、下段左はC100%のパッチ、下段中央はC100%Y50%のパッチ(Bパッチとする。)、下段右はC100%Y100%のパッチである。
【0054】
次に、制御部21(測色値処理部21a)は、
図8の上段の3つのパッチの測色値を用いて、上段中央のAパッチのトーンバリュー(又はドットゲイン)を算出する(S402)。また、制御部21(測色値処理部21a)は、
図8の下段の3つのパッチの測色値を用いて、下段中央のBパッチのトーンバリュー(又はドットゲイン)を算出する(S403)。なお、トーンバリューは、上述したように、ISO10128 annex Aに規定されたCIE XYZを用いた式、同規定から特定波長の分光反射率を用いた式を用いる例や、マーレー・デービス式、ユール・ニールセン式を用いる例などの内、扱いやすい式を用いることができる。
【0055】
例えば、ISO10128 Annex Aに規定されたCIE XYZを用いる場合、Y成分に対応するZ値を用いて、
Aパッチのトーンバリュー=(AパッチのZ成分−上段左パッチのZ成分)/(上段右パッチのZ成分−上段左パッチのZ成分)
Bパッチのトーンバリュー=(BパッチのZ成分−下段左パッチのZ成分)/(下段右パッチのZ成分−下段左パッチのZ成分)
により求めることができる。
【0056】
次に、制御部21(判断部21b)は、S402、403で算出したトーンバリューと予め定めた基準値とを比較する(S404)。例えば、上記構成のパッチであれば、Aパッチの基準値を70、Bパッチの基準値を56とする。
【0057】
ここで、上述したように、物理的ドットゲインは、トーンカーブ(印刷設定)と印刷状態によって定められるため、AパッチとBパッチのトーンバリューは基準値からの変動がほぼ同等になる。一方、光学的ドットゲインは、主に紙の表面加工状態によって定められるが、下地があると用紙の内部での乱反射光が吸収されるため、Bパッチのトーンバリューは基準値からの変動が少なく、Aパッチのトーンバリューは基準値からの変動が大きくなり、その変動量は透明材料の膜厚によって変化する(すなわち、AパッチとBパッチとで基準値からの変動の程度が異なる)。
【0058】
すなわち、印刷(塗布圧)の強弱(第1色の濃度の濃淡)については、物理的ドットゲインが支配的になり、表面加工の強弱(透明材料の膜厚)については、光学的ドットゲインが支配的となる。その結果、印刷(塗布圧)が基準よりも弱い(第1色の濃度が薄い)場合は、Aパッチ及びBパッチ共にトーンバリューが低下し、逆に印刷(塗布圧)が基準よりも強い(第1色の濃度が濃い)場合は、Aパッチ及びBパッチ共にトーンバリューが上昇する。一方で、表面加工が基準よりも弱い(透明材料の膜厚が薄い)場合は、Aパッチはトーンバリューが低下、Bパッチはトーンバリューが微量低下し、表面加工が基準よりも強い(透明材料の膜厚が厚い)場合は、Aパッチはトーンバリューが上昇、Bパッチはトーンバリューが微量上昇となる。従って、AパッチのトーンバリューとBパッチのトーンバリューの基準値からの変動の傾向に基づいて、印刷状態及び/又は表面加工状態を判断することができる。
【0059】
例えば、Aパッチのトーンバリュー及びBパッチのトーンバリューが共に基準値よりも大きくなった場合は、印刷(塗布圧)が強い(第1色の濃度が濃い)と判断できることから、制御部21(フィードバック制御部21c)は、印刷処理部26に第1色の濃度を下げるようにフィードバック制御(印刷設定を変更する制御)を行う(S405)。
【0060】
また、Aパッチのトーンバリューが基準値よりも大きく、Bパッチのトーンバリューが基準値よりもやや大きくなった場合は、表面加工が強い(透明材料の膜厚の厚い)と判断できることから、制御部21(フィードバック制御部21c)は、表面加工処理部27に透明材料の膜厚を薄くするようにフィードバック制御(表面加工設定を変更する制御)を行う(S406)。
【0061】
また、Aパッチのトーンバリューが基準値よりも小さく、Bパッチのトーンバリューが基準値よりもやや小さくなった場合は、表面加工が弱い(透明材料の膜厚が薄い)と判断できることから、制御部21(フィードバック制御部21c)は、表面加工処理部27に透明材料の膜厚を厚くするようにフィードバック制御を行う(S407)。
【0062】
また、Aパッチのトーンバリュー及びBパッチのトーンバリューが共に基準値よりも小さくなった場合は、印刷(塗布圧)が弱い(第1色の濃度が薄い)と判断できることから、制御部21(フィードバック制御部21c)は、印刷処理部26に第1色の濃度を上げるようにフィードバック制御を行う(S408)。
【0063】
上記の判断は、例えば、
図9に示すようなテーブルや
図10及び
図11に示すようなグラフを予め用意しておくことにより実現することができる。
図9のテーブルは印刷設定及び表面加工設定が正常範囲の時のAパッチ及びBパッチのトーンバリューの基準値(下限値、適正値、上限値)を表している。
【0064】
図10は、横軸をAパッチのトーンバリュー、縦軸をBパッチのトーンバリューとした時の表面加工(透明材料の膜厚)の正常範囲を表す図であり、
図9のテーブルの上限値及び上限値を結ぶ線を描画し、3行3列のデータの内の1列目と3列目の線を延ばした図である。Aパッチのトーンバリューが小さく、かつ、Bパッチのトーンバリューがやや小さくなるに従って、表面加工が弱い(透明材料の膜厚が薄い)状態になるため、S402及びS403で算出したトーンバリューがこの領域に属する場合は、透明材料の膜厚を厚くするようにフィードバック制御を行う。また、Aパッチのトーンバリューが大きく、かつ、Bパッチのトーンバリューがやや大きくなるに従って、表面加工が強い(透明材料の膜厚が厚い)状態になるため、S402及びS403で算出したトーンバリューがこの領域に属する場合は、透明材料の膜厚を薄くするようにフィードバック制御を行う。
【0065】
図11は、横軸をAパッチのトーンバリュー、縦軸をBパッチのトーンバリューとした時の印刷(濃度)の正常範囲を表す図であり、
図9のテーブルの上限値及び上限値を結ぶ線を描画し、3行3列のデータの内の1行目と3行目の線を延ばした図である。Aパッチ及びBパッチのトーンバリューが共に小さくなるに従って、印刷(塗布圧)が弱い(濃度が薄い)状態になるため、S402及びS403で算出したトーンバリューがこの領域に属する場合は、濃度を濃くするようにフィードバック制御を行う。また、Aパッチ及びBパッチのトーンバリューが共に大きくなるに従って、印刷(塗布圧)が強い(濃度が濃い)状態になるため、S402及びS403で算出したトーンバリューがこの領域に属する場合は、濃度を薄くするようにフィードバック制御を行う。
【0066】
上記では、フィードバック制御として、濃度を制御するか(S405、S408)、透明材料の膜厚を制御するか(S406、S407)のいずれかの制御を行ったが、印刷状態と表面加工状態とが共に変化した場合は、濃度の制御と透明材料の膜厚の制御とを合わせて行うこともできる。その場合、制御部21(フィードバック制御部21c)は、
図12に示すグラフを参照してフィードバック制御の内容を判断することができる。
【0067】
図12は、
図10と
図11を統合した図であり、図中の(a)〜(h)は、上記の線で区切られた領域を示している。
図10より、(a)、(b)、(c)は、表面加工が強い(透明材料の膜厚が厚い)領域であり、(e)、(f)、(g)は、表面加工が弱い(透明材料の膜厚が薄い)領域である。また、
図11より、(c)、(d)、(e)は、印刷(塗布圧)が弱い(濃度が薄い)領域であり、(g)、(h)、(a)は、印刷(塗布圧)が強い(濃度が濃い)領域である。
【0068】
従って、Aパッチ及びBパッチのトーンバリューが(a)の領域に属する場合は、表面加工が弱く(透明材料の膜厚が薄く)、かつ、印刷(塗布圧)が弱く(濃度が薄く)なるように制御する。また、(b)の領域に属する場合は、表面加工が弱く(透明材料の膜厚が薄く)なるように制御する。また、(c)の領域に属する場合は、表面加工が弱く(透明材料の膜厚が薄く)、かつ、印刷(塗布圧)が強く(濃度が濃く)なるように制御する。また、(d)の領域に属する場合は、印刷(塗布圧)が強く(濃度が濃く)なるように制御する。また、(e)の領域に属する場合は、表面加工が強く(透明材料の膜厚が厚く)、かつ、印刷(塗布圧)が強く(濃度が濃く)なるように制御する。また、(f)の領域に属する場合は、表面加工が強く(透明材料の膜厚が厚く)なるように制御する。また、(g)の領域に属する場合は、表面加工が強く(透明材料の膜厚が厚く)、かつ、印刷(塗布圧)が弱く(濃度が薄く)なるように制御する。また、(h)の領域に属する場合は、印刷(塗布圧)が弱く(濃度が薄く)なるように制御する。
【0069】
なお、制御部21(フィードバック制御部21c)は、S404の比較結果に基づいて、印刷処理部26及び/又は表面加工処理部27に対するフィードバック制御を自動で行ってもよいが、制御部21(判断部21b)は、Aパッチ及びBパッチのトーンバリューの算出結果を、
図9のテーブルや
図10乃至
図12のグラフに対応付けて表示操作部24に表示することもでき、ユーザは、表示内容を確認して、印刷処理部26及び/又は表面加工処理部27に対するフィードバック制御を手動で行う(印刷用トーンカーブへの反映、インクジェットニスの塗布量の増減、ニス塗布用胴の圧力変更などを行う)ようにすることもできる。
【0070】
このように、第1色の中間調の第1パッチと、第2色のベタ上に第1色の中間調を重ね合わせた第2パッチと、第1パッチ及び第2パッチの第1色の階調を増減させたパッチとを含むカラーチャートを印刷し、その上に透明材料を塗布した状態で各パッチを測色し、測色値に基づいて、第1パッチ(Aパッチ)と第2パッチ(Bパッチ)のトーンバリュー(又はドットゲイン)を算出し、算出したトーンバリュー(又はドットゲイン)と予め設定した基準値とを比較し、第1パッチと第2パッチとでトーンバリュー(又はドットゲイン)の増減の傾向が異なることを利用して、第1パッチ及び第2パッチのトーンバリューの基準値からの変動の傾向に基づいて、印刷状態及び/又は表面加工状態を判断し、判断結果に基づいて印刷設定及び/又は表面加工設定に対してフィードバック制御を行うことにより、簡便に印刷物の品質の安定と生産性の向上を実現することができる。
【0071】
なお、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて、システムや各装置の構成や制御は適宜変更可能である。
【0072】
例えば、上記実施例では、本発明の制御に使用するパッチとして、
図8の6つのパッチを例示したが、第1色及び第2色の組み合わせ、第1色及び第2色の網%、パッチ数、パッチ形状、パッチ配置、用紙上のパッチの位置などは適宜変更可能である。また、カラーチャートにはこのパッチのみを印刷してもよいし、他のパッチと組み合わせて印刷してもよいし、カラーチャート以外の印刷物(印刷ジョブに基づく印刷物)にパッチを付加して印刷してもよい。