【実施例】
【0029】
以下、本発明の一形態について、実施例に基づき、さらに詳細に説明する。ただし、本発明は下記実施例により制限されるものではない。
【0030】
<実施例1>
図4Aの表1は、実施例1および比較例1の条件および結果を示している。表1の例は、(i)原料ガス量を2000Nm
3/hとし、かつ、(ii)第1のガス分離膜ユニットにおけるガスの供給圧力(表中の「膜供給圧」参照)が、第2のガス分離膜ユニットのガス供給圧力よりも低い例である。表中の数値は、分離膜ユニットの膜の本数やガス量、圧力などを適宜変更してシミュレーションを行った結果である。以下では、第1の分離膜ユニットを「一段目」、第2の分離膜ユニットを「二段目」と表現することもある。
【0031】
実施例1−A−(枝番:1〜4)では、一段目が1.2MPaGであり、二段目が2.1MPaGである。実施例1−B−(枝番:1〜4)では、一段目が0.9MPaGであり、二段目が2.1MPaGである。実施例1−C−(枝番:1〜4)では、一段目が0.7MPaGであり、二段目が2.1MPaGである。実施例1−D−(枝番:1〜4)では、一段目が0.5MPaGであり、二段目が2.1MPaGである。
【0032】
比較例1−(枝番:1〜4)では、一段目が2.1MPaGであり、二段目の膜供給圧は約2.1MPaGで圧縮機102は用いていない。その他の条件は表1に示すとおりである。表中、
−「原料ガス量」は、単位時間あたりの原料ガスの供給量を示している;
−「非透過ガス量」は、一段目および二段目それぞれにおける、ガス分離膜を透過しなかった単位時間当りのガス量を示している;
−「循環ガス量」は、透過ガス循環ラインで送られる単位時間当りのガス量を示している;
−「膜本数」は、ガス分離膜ユニット内の膜の本数を示している;
−「膜運転温度」は、一段目および二段目それぞれにおける、原料ガスの温度を示している;
−「膜供給圧」は、一段目および二段目それぞれにおける供給されたガスの圧力を示している;
−「膜透過側圧」は、一段目および二段目それぞれにおける膜透過側のガスの圧力を示している;
−「製品ガス濃度」は、最終的に得られる製品ガスの二酸化炭素濃度およびメタン濃度を示している;
−「メタン回収率」は、本実施形態のシステムにおけるメタンの回収率を示し、原料ガスラインにおけるメタンの量に対する第2の非透過ガスラインにおけるメタンの量の割合で表される;
−「圧縮機動力」は、圧縮機の動力を示している;
−「製品ガスあたりの動力」は、単位体積あたりに必要な動力(動力(合計)を製品ガス量で割ったもの)を示している。
【0033】
実施例および比較例のいずれも、分離膜は「高分離」タイプのものが使用されている。
【0034】
実施例1によれば、(i)第2の圧縮機を設けて二段目のガスの供給圧力(換言すれば、第2の圧縮機の吐出圧)を一段目のガス供給圧力より高くし、かつ、(ii)第2のガス分離膜ユニットの透過圧を「原料ガスと同等」とする(この例では0MPaG)ことで、
図4Bに示すように、比較例に比べて効率的なメタンを行うことができることが示される。実施例では、製品ガス量当り動力が、メタン回収率およそ96.5%〜98%の範囲で、比較例のいずれよりも低くなることが示された。
【0035】
<実施例2>
図5Aの表2は、実施例2および比較例2の条件および結果を示している。上記実施例1と同様の構成および条件等については、重複する説明は省略するものとする。実施例3以降も同様である。
【0036】
実施例2は、原料ガス量を1000Nm
3/hとし、かつ、第1のガス分離膜ユニットにおけるガスの供給圧力(表中の「膜供給圧」参照)が、第2のガス分離膜ユニットにおけるガスの供給圧力よりも低い例である。
【0037】
実施例2
−A−(枝番)では、一段目が0.9MPaGであり、二段目が1.4MPaGとなっている。実施例
2−B−(枝番)では、一段目が0.7MPaGであり、二段目が1.4MPaGとなっている。実施例
2−C−(枝番)では、一段目が0.5MPaGであり、二段目が1.4MPaGとなっている。実施例
2−D−(枝番)では、一段目が0.3MPaGであり、二段目が1.4MPaGとなっている。比較例2−(枝番)では、一段目が1.4MPaGであり、二段目の膜供給圧は約1.4MPaGで圧縮機102は用いていない。その他の条件は表2に示すとおりである。
【0038】
実施例2によれば、上記実施例と同様、(i)第2の圧縮機を設けて二段目のガスの供給圧力(すなわち第2の圧縮機の吐出圧)を一段目のガス供給圧力より高くし、かつ、(ii)第2のガス分離膜ユニットの透過圧を「原料ガスと同等」とする(この例では0MPaG)ことで、
図5Bに示すように、比較例に比べて効率的なメタンを行うことができることが示された。
【0039】
<実施例3>
図6Aの表3は、実施例3および比較例3の条件および結果を示している。実施例3は、原料ガス量を1000Nm
3/hとし、かつ、第1のガス分離膜ユニットにおけるガスの供給圧力(表中の「膜供給圧」参照)が、第2のガス分離膜ユニットにおけるガスの供給圧力よりも低い例である。
【0040】
実施例3−A−(枝番)では、一段目が0.5MPaGであり、二段目が0.7MPaGとなっている。実施例3−B−(枝番)では、一段目が0.3MPaGであり、二段目が0.7MPaGとなっている。比較例3−(枝番)では、一段目が0.7MPaGであり、二段目の膜供給圧は約0.7MPaGで圧縮機102は用いていない。その他の条件は表3に示すとおりである。
【0041】
実施例3によれば、上記実施例と同様、(i)第2の圧縮機を設けて二段目のガスの供給圧力(すなわち第2の圧縮機の吐出圧)を一段目のガス供給圧力より高くし、かつ、(ii)第2のガス分離膜ユニットの透過圧を「原料ガスと同等」とする(この例では0MPaG)ことで、
図6Bに示すように、比較例に比べて効率的なメタンを行うことができることが示された。
【0042】
<実施例4>
図7Aの表4は、実施例4および比較例4の条件および結果を示している(
図2の構成)。実施例4−A−(枝番)では、一段目が0.5MPaGであり、二段目が2.1MPaGとなっている。また、膜透過側圧は、一段目が0MPaGであり、二段目が0.5MPaGである。
【0043】
比較例4−(枝番)では、膜供給圧が一段目では2.1MPaGであり、二段目は約2.1MPaGで圧縮機102は用いていない。その他の条件は表4に示すとおりである。
【0044】
実施例4によれば、
図7Bに示すように、比較例に比べて効率的なメタンを行うことができることが示された。
【0045】
<実施例5>
図8Aの表5は、実施例5および比較例5の条件および結果を示している(
図1の構成)。実施例5−A−(枝番)では、一段目は「高分離」タイプの中空糸であるが、二段目が「高透過」タイプの中空糸である。実施例5−B−(枝番)では、膜運転温度が55℃であり高温運転となっている。なお、高分離タイプか高透過タイプかは、共通の中空糸膜を用いつつ運転温度を変えることで、高分離タイプのものを高透過タイプのように用いるものであってもよい。
【0046】
実施例5によれば、
図8Bに示すように、比較例に比べて効率的なメタンを行うことができることが示された。実施例5−Bでは、二段目の温度を上げたため分離度が低下しやや効率が低減しているものの二段目の膜本数を減らすことができるという効果も期待される。
【0047】
<実施例6>
図9Aの表6は、実施例6および比較例6の条件および結果を示している(
図2の構成)。実施例6−A−(枝番)では、一段目は「高分離」タイプ(運転温度を変更している)であるが、二段目が「高透過」タイプ(運転温度を変更していない)である。
【0048】
実施例6によれば、
図9Bに示すように、比較例に比べて効率的なメタンを行うことができることが示された。
【0049】
本明細書は以下の発明を開示する:
1.分離膜(111)を有する第1の分離膜ユニット(110)と、
分離膜(121)を有する第2の分離膜ユニット(120)と、
上記第1の分離膜ユニット(110)に原料ガスを供給する原料ガスライン(141)と、
上記第1の分離膜ユニット(110)の非透過ガスを上記第2の分離膜ユニット(120)に送る第1の非透過ガスライン(142)と、
上記第2の分離膜ユニットの非透過ガスを送る第2の非透過ガスライン(144)
上記原料ガスラインに配置され、原料ガスを昇圧する第1の圧縮機(101)と、
上記第1の非透過ガスライン上に配置され、非透過ガスを昇圧する第2の圧縮機(102)と、
第2の分離膜ユニット(120)の透過ガスを、上記原料ライン(141)上の上記第1の圧縮機より上流側に戻す透過ガス循環ライン(145)と、
を備えるシステムであって、
運転時、
(a)上記第2の圧縮機(102)の吐出圧が上記第1の圧縮機(101)の吐出圧よりも高く、
(b)上記第2の分離膜ユニット(120)の透過圧が、原料ガス圧と同等かやや高い、
ことを特徴とする、バイオガス濃縮システム。
【0050】
2.上記第1の圧縮機の吐出圧が、0.5MPaG以上であり、
上記第2の圧縮機の吐出圧が、1.4MPaG以上である、
上記記載のシステム。
【0051】
3.上記原料ガスは、メタンおよび二酸化炭素を含む混合ガスであり、
上記第2の分離膜ユニットの非透過ガスの二酸化炭素の濃度が3%以下である、
上記記載のシステム。
【0052】
4.上記原料ガスは、二酸化炭素およびメタンを含む混合ガスであり、
上記第2の分離膜ユニットの非透過ガスのメタンの量が、上記原料ガスのメタンの量の97%以上である、
上記記載のシステム。
【0053】
5.上記第1の分離膜ユニットの分離膜、および、上記第2の分離膜ユニットの分離膜のいずれかまたは両方が、ポリイミド中空糸膜である、上記記載のシステム。
【0054】
6.上記第1の分離膜ユニットは、中空フィード型のモジュールを有する、上記記載のシステム。
【0055】
7.上記第2の分離膜ユニットは、シェルフィード型のモジュールを有する、上記記載のシステム。
【0056】
8.分離膜(111)を有する第1の分離膜ユニット(110)と、
分離膜(121)を有する第2の分離膜ユニット(120)と、
上記第1の分離膜ユニット(110)に原料ガスを供給する原料ガスライン(141)と、
上記第1の分離膜ユニット(110)の非透過ガスを上記第2の分離膜ユニット(120)に送る第1の非透過ガスライン(142)と、
上記第2の分離膜ユニットの非透過ガスを送る第2の非透過ガスライン(144)
上記原料ガスラインに配置され、原料ガスを昇圧する第1の圧縮機(101)と、
上記第1の非透過ガスライン上に配置され、非透過ガスを昇圧する第2の圧縮機(102)と、
第2の分離膜ユニット(120)の透過ガスを、上記原料ライン(141)上の前記第1の圧縮機より下流側に戻す透過ガス循環ライン(145)と、
を備えるシステムであって、
運転時、
(a)前記第2の圧縮機(102)の吐出圧が前記第1の圧縮機(101)の吐出圧よりも高く、
(b)上記第2の分離膜ユニット(120)の透過圧が、第1の圧縮機の吐出圧と同等かやや高い、
ことを特徴とする、システム。
【0057】
9.分離膜(111)を有する第1の分離膜ユニット(110)と、
分離膜(121)を有する第2の分離膜ユニット(120)と、
上記第1の分離膜ユニット(110)に原料ガスを供給する原料ガスライン(141)と、
上記第1の分離膜ユニット(110)の非透過ガスを上記第2の分離膜ユニット(120)に送る第1の非透過ガスライン(142)と、
上記第2の分離膜ユニットの非透過ガスを送る第2の非透過ガスライン(144)
上記原料ガスラインに配置され、原料ガスを昇圧する第1の圧縮機(101)と、
上記第1の非透過ガスライン上に配置され、非透過ガスを昇圧する第2の圧縮機(102)と、
第2の分離膜ユニット(120)の透過ガスを、上記原料ライン(141)上の上記第1の圧縮機より上流側に戻す透過ガス循環ライン(145)と、
上記透過ガス循環ライン(145)に配置された減圧手段と、
を備えるシステムであって、
運転時、
(a)上記第2の圧縮機(102)の吐出圧が上記第1の圧縮機(101)の吐出圧よりも高く、
(b)上記第2の分離膜ユニット(120)の透過圧が上記減圧手段により減圧される、システム。
【0058】
さらに、上記発明を方法の発明として表現したものも、本出願によって開示される。