(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記の搬送装置では、帯状部材の偏在を補正するための張力の印加などに起因して、帯状部材が外周面側に反る場合がある。このように反りが生じた状態の帯状部材に載置された記録媒体に対して浮き上がりの検出を行う場合、上記出射光の検出範囲に比して反りが大きくなると、発光部からの出射光の光路が帯状部材により遮られ、シート部材の浮き上がりを正確に検出することができなくなるという課題がある。
【0008】
この発明の目的は、より正確にシート部材の浮き上がりを検出することができる搬送装置及びインクジェット記録装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の搬送装置の発明は、
シート部材を搬送する搬送装置であって、
外周面上にシート部材が載置される帯状部材と、
前記帯状部材を所定の周回経路で周回移動させる駆動部と、
発光部と、
前記発光部から出射された光のうち、前記周回移動する前記帯状部材の移動方向と直交する幅方向についての前記帯状部材の両端間に亘り、前記帯状部材に載置されたシート部材の表面が通過する面に沿って前記移動方向と交差する方向に延びる光路を進行した出射光を検出する受光部と、
前記出射光の前記受光部への入射状態の変化により、前記帯状部材に載置されたシート部材の前記外周面からの浮き上がりを検出する検出手段と、
前記幅方向について前記外周面側に反りが生じている前記帯状部材における当該反りが、前記出射光の前記光路を遮らない範囲内に抑制されるように、前記周回経路における所定の位置で前記外周面側への前記反りを抑制する向きに前記帯状部材を付勢する付勢部と、
を備え
、
前記付勢部は、前記外周面上に載置された記録媒体と接触しない態様で、前記帯状部材のうち前記幅方向の両端から所定範囲内の側端部を付勢する
ることを特徴としている。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の搬送装置において、
前記付勢部は、前記移動方向について前記出射光の光路の位置を含む範囲において前記帯状部材を付勢することを特徴としている。
上記目的を達成するため、請求項3に記載の搬送装置の発明は、
シート部材を搬送する搬送装置であって、
外周面上にシート部材が載置される帯状部材と、
前記帯状部材を所定の周回経路で周回移動させる駆動部と、
発光部と、
前記発光部から出射された光のうち、前記周回移動する前記帯状部材の移動方向と直交する幅方向についての前記帯状部材の両端間に亘り、前記帯状部材に載置されたシート部材の表面が通過する面に沿って前記移動方向と交差する方向に延びる光路を進行した出射光を検出する受光部と、
前記出射光の前記受光部への入射状態の変化により、前記帯状部材に載置されたシート部材の前記外周面からの浮き上がりを検出する検出手段と、
前記幅方向について前記外周面側に反りが生じている前記帯状部材における当該反りが、前記出射光の前記光路を遮らない範囲内に抑制されるように、前記周回経路における所定の位置で前記外周面側への前記反りを抑制する向きに前記帯状部材を付勢する付勢部と、
を備え、
前記付勢部は、前記移動方向について前記出射光の光路の位置を含む範囲において前記帯状部材を付勢する
ことを特徴としている。
【0011】
請求項
4に記載の発明は、請求項1
〜3のいずれか一項に記載の搬送装置において、
前記付勢部は、前記帯状部材を前記外周面側から押圧する押圧部材を有することを特徴としている。
【0012】
請求項
5に記載の発明は、請求項2
又は3に記載の搬送装置において、
前記付勢部は、前記帯状部材を前記外周面側から押圧する押圧部材を有し、
前記押圧部材は、前記出射光を通過させる光通過部が設けられた遮光性を有する部材であり、
前記受光部は、前記光通過部を通過した前記出射光を検出する
ことを特徴としている。
【0013】
請求項
6に記載の発明は、請求項
5に記載の搬送装置において、
前記押圧部材は、前記帯状部材の前記外周面に当接して当該帯状部材の前記周回移動に応じて回転する部材であり、
前記押圧部材には、当該押圧部材の回転に応じた互いに異なるタイミングで前記出射光をそれぞれ通過させる複数の前記光通過部が設けられている
ことを特徴としている。
【0014】
請求項
7に記載の発明は、請求項2
又は3に記載の搬送装置において、
前記付勢部は、前記帯状部材を前記外周面側から押圧する光透過性を有する押圧部材を有し、
前記受光部は、前記押圧部材を透過した前記出射光を検出する
ことを特徴としている。
【0015】
請求項
8に記載の発明は、請求項1
〜3のいずれか一項に記載の搬送装置において、
前記付勢部は、前記帯状部材を当該帯状部材の内周面側から吸引して力を及ぼすことで当該帯状部材を付勢することを特徴としている。
上記目的を達成するため、請求項9に記載の搬送装置の発明は、
シート部材を搬送する搬送装置であって、
外周面上にシート部材が載置される帯状部材と、
前記帯状部材を所定の周回経路で周回移動させる駆動部と、
発光部と、
前記発光部から出射された光のうち、前記周回移動する前記帯状部材の移動方向と直交する幅方向についての前記帯状部材の両端間に亘り、前記帯状部材に載置されたシート部材の表面が通過する面に沿って前記移動方向と交差する方向に延びる光路を進行した出射光を検出する受光部と、
前記出射光の前記受光部への入射状態の変化により、前記帯状部材に載置されたシート部材の前記外周面からの浮き上がりを検出する検出手段と、
前記幅方向について前記外周面側に反りが生じている前記帯状部材における当該反りが、前記出射光の前記光路を遮らない範囲内に抑制されるように、前記周回経路における所定の位置で前記外周面側への前記反りを抑制する向きに前記帯状部材を付勢する付勢部と、
を備え、
前記付勢部は、前記帯状部材を当該帯状部材の内周面側から吸引して力を及ぼすことで当該帯状部材を付勢する
ことを特徴としている。
【0016】
請求項
10に記載の発明は、請求項1から
9のいずれか一項に記載の搬送装置において、
前記帯状部材が架け渡されて、回転動作に応じて当該帯状部材を周回移動させる複数の搬送ローラーを備え、
前記駆動部は、前記複数の搬送ローラーのうち少なくとも一つを回転動作させることで前記帯状部材を周回移動させ、
当該搬送装置は、前記周回移動する前記帯状部材において前記幅方向についての前記帯状部材の両端における張力を異ならせるように、前記複数の搬送ローラーのうち少なくとも一部における前記回転動作の回転軸を前記幅方向に対して傾斜させる張力調整部を備える
ことを特徴としている。
【0017】
請求項
11に記載の発明は、請求項1から
10のいずれか一項に記載の搬送装置において、
前記受光部は、前記発光部から出射され、前記帯状部材の外周面からの距離が互いに異なる複数の前記光路を進行した複数の出射光を検出し、
前記検出手段は、前記複数の光路のうち、前記外周面上に載置されているシート部材の厚さに応じた所定の一の光路を進行した出射光の入射状態の変化により前記浮き上がりを検出し、
前記付勢部は、前記帯状部材の反りが、前記一の光路を遮らない範囲内に抑制されるように前記帯状部材を付勢する
ことを特徴としている。
【0018】
請求項
12に記載の発明は、請求項1から
10のいずれか一項に記載の搬送装置において、
前記発光部及び前記受光部を前記帯状部材の外周面からの距離が変化する方向に移動させる第1の移動駆動部と、
前記検出手段による前記浮き上がりの検出が行われる場合に、前記出射光の光路の前記外周面からの距離が、前記外周面上に載置されるシート部材の厚さに応じた所定
の第1の距離となるように前記第1の移動駆動部により前記発光部及び前記受光部を移動させる第1の移動制御手段と、
を備えることを特徴としている。
【0019】
請求項
13に記載の発明は、請求項1から
12のいずれか一項に記載の搬送装置において、
前記帯状部材は、スチールベルトであることを特徴としている。
【0020】
また、上記目的を達成するため、請求項
14に記載のインクジェット記録装置の発明は、
請求項1から
13のいずれか一項に記載の搬送装置と、
前記帯状部材の前記外周面に載置されているシート部材に対してインクを吐出するインク吐出部と、
を備えることを特徴としている。
【0021】
請求項
15に記載の発明は、請求項
14に記載のインクジェット記録装置において、
前記インク吐出部は、前記搬送装置によるシート部材の搬送方向について前記出射光の光路の位置よりも下流側においてインクを吐出することを特徴としている。
【0022】
請求項
16に記載の発明は、請求項
15に記載のインクジェット記録装置において、
前記インク吐出部を、当該インク吐出部においてインクが吐出されるインク吐出面と前記帯状部材の外周面との距離が変化する方向に移動させる第2の移動駆動部と、
前記検出手段により前記浮き上がりが検出された場合に、前記第2の移動駆動部により、前記インク吐出面と、前記浮き上がりが生じたシート部材とが接触しない退避位置に前記インク吐出部を移動させる第2の移動制御手段と、
を備え、
前記発光部及び前記受光部は、前記搬送方向について前記インク吐出部に対して上流側において、前記搬送方向についての前記インク吐出部と前記出射光の光路との距離が所定
の第2の距離以上となる位置範囲内に配置され、
前記
第2の距離は、前記第2の移動駆動部による前記インク吐出部の前記退避位置への移動に要する最大時間と、前記帯状部材の前記周回移動における移動速度との積である
ことを特徴としている。
【発明の効果】
【0023】
本発明に従うと、より正確にシート部材の浮き上がりを検出することができるという効果がある。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の搬送装置及びインクジェット記録装置に係る実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0026】
<インクジェット記録装置の構成>
図1は、本発明の第1の実施形態であるインクジェット記録装置1の概略構成を示す図である。
インクジェット記録装置1は、記録媒体供給部10と、画像記録部20と、記録媒体排出部30と、制御部40(
図2)(検出手段、第1の移動制御手段、第2の移動制御手段)などを備える。
【0027】
記録媒体供給部10は、載置トレー11と媒体送出ローラー12などを備える。
載置トレー11は、枚葉紙、厚紙、段ボール材や樹脂板などのシート状の記録媒体P(シート部材)を重ねて載置可能な板状の部材であり、最上部に載置された記録媒体Pから順に画像記録部20へと送出される。載置トレー11は、上下方向に移動可能であり、載置された記録媒体Pの全重量などに応じて最上の記録媒体Pが画像記録部20へ送出される位置で保持される。なお、記録媒体Pは、枚葉紙などの短尺の媒体に限られず、ロールから巻き出されて供給されるロール紙などの長尺の媒体であってもよい。
媒体送出ローラー12は、記録媒体Pを上下から挟持する回転自在なローラーであり、載置トレー11の最上部に載置された記録媒体Pをここでは水平方向に送出する。媒体送出ローラー12には、記録媒体Pの搬送方向(
図1における左方向)に垂直な幅方向について記録媒体Pを所定の位置に合わせるガイド部材が取り付けられており、媒体送出ローラー12は、幅方向の位置合わせがなされた状態で記録媒体Pを画像記録部20に送出する。
なお、記録媒体供給部10と画像記録部20との間に、記録媒体Pを所定温度に加熱する加熱部や、記録媒体Pの表面をインクが定着しやすい状態に改質する表面処理部などが設けられていてもよい。
【0028】
画像記録部20は、記録媒体供給部10から引き渡された記録媒体P上にインクを吐出して画像を記録する。また、画像記録部20は、画像が記録された記録媒体Pを記録媒体排出部30に送出する。
画像記録部20は、搬送ベルト211(帯状部材)、駆動ローラー212、従動ローラー213、テンションローラー214及び付勢部215を有する搬送部21と、支持吸引部22と、押圧ローラー23と、インクを吐出する一又は複数の(ここでは4つの)ヘッドユニット24(インク吐出部)と、記録媒体Pの浮きを検出する媒体検出部25などを備える。搬送部21における駆動ローラー212、従動ローラー213及びテンションローラー214は、いずれも搬送ローラーを構成する。
【0029】
搬送部21の搬送ベルト211は、駆動ローラー212、従動ローラー213及びテンションローラー214の回りに架け渡された無端状(環状)の帯状部材であり、ここではスチールベルトが用いられている。スチールベルトは、例えば、厚さ0.3[mm]程度のSUS304、SUS631といったステンレス鋼やアルミ合金などにより構成することができる。また、搬送ベルト211には、搬送ベルト211の外周面と内周面との間を貫通し同一の開口形状を有する孔部211a(
図3)が、等間隔で配列されて所定の開口率(例えば、20%)となるように設けられており、空気が通過可能となっている。
搬送ベルト211は、駆動ローラー212が、当該駆動ローラー212に取り付けられた搬送モーター561(
図2)(駆動部)により駆動されて回転動作することにより、当該回転動作に応じて駆動ローラー212、従動ローラー213及びテンションローラー214の回りの周回経路を周回移動する。搬送部21は、搬送ベルト211に載置された記録媒体Pを当該搬送ベルト211の周回移動動作により、従動ローラー213から駆動ローラー212までの搬送区間内で搬送方向に移動させることで、ヘッドユニット24によるインクの着弾範囲を通過させる。
【0030】
テンションローラー214は、搬送ローラーの一つであるとともに、後述する搬送ベルト211の偏在が補正されるように搬送ベルト211に対して幅方向に所定の分布で張力を与えるための部材である。テンションローラー214は、回転軸が幅方向に対して傾斜可能に設けられており、搬送ローラー傾斜駆動部57(
図2)の動作によって回転軸が傾斜されることで搬送ベルト211に対して上記の張力を与える。
【0031】
付勢部215は、搬送ベルト211の幅方向の両端から所定の近傍範囲内の側端部211E(
図3(b))を搬送ベルト211の内周面側に付勢する。このように付勢部215により搬送ベルト211の側端部211Eが付勢されることで、搬送ベルト211に外周面側への反りが生じている場合において、後述する媒体検出部25による記録媒体Pの浮き検出に用いられる光が搬送ベルト211によって遮られないようになっている。付勢部215の構成については後に詳述する。
【0032】
支持吸引部22は、搬送ベルト211の内周面に沿って設けられ、当該支持吸引部22上を摺動して周回移動する搬送ベルト211を平面(支持面)で支持する。また、支持吸引部22は、搬送ベルト211に設けられた孔部211aを介して搬送ベルト211の内周面側から吸引ファン511(
図2)により空気を吸引することで、搬送ベルト211上の記録媒体Pを当該搬送ベルト211の外周面(記録媒体Pの載置面)上に吸着させる。
【0033】
押圧ローラー23は、搬送ベルト211を挟んで従動ローラー213と対向する位置で回転可能に設けられたローラーであり、記録媒体供給部10から送出された記録媒体Pの搬送ベルト211の外周面からの浮き上がり、特に、先端部のカール(巻き上がり)などを抑制してより確実に吸着されるように、適宜な圧力で搬送ベルト211に対して押圧(押下)して搬送ベルト211に沿って誘導する。
【0034】
ヘッドユニット24は、搬送ベルト211の外周面に対向する面(インク吐出面)に、インクを吐出する記録ヘッド241(
図2)が配列された構成を有する。ヘッドユニット24は、記録媒体Pが載置された搬送ベルト211の周回移動に応じた適切なタイミングで、インク吐出面において記録ヘッド241に設けられたノズル開口部からインクを吐出し、記録媒体P上に着弾させて画像を記録する。本実施形態のインクジェット記録装置1では、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の4色のインクにそれぞれ対応する4つのヘッドユニット24が記録媒体Pの搬送方向上流側からY,M,C,Kの色の順に所定の間隔で並ぶように配列されている。
【0035】
ヘッドユニット24では、搬送方向に直交する幅方向について、記録媒体Pにおける画像の記録可能幅をカバーする範囲でノズル開口部が設けられている。ヘッドユニット24は、画像の記録時には位置が固定されて用いられ、記録媒体Pの搬送に応じて搬送方向の異なる位置に所定の間隔(搬送方向間隔)で順次インクを吐出していくことで、シングルパス方式で画像を記録する。
【0036】
ヘッドユニット24は、搬送ベルト211の外周面に垂直な距離方向に移動可能に設けられている。これにより、記録対象の記録媒体Pの厚さに応じてヘッドユニット24の距離方向の位置を調整することで、ヘッドユニットのインク吐出面と記録媒体Pとの距離が一定となるようにすることができる。また、媒体検出部25により記録媒体Pの浮き上がりが検出された場合に、ヘッドユニット24を上昇させて、インク吐出面と記録媒体Pとが接触しない退避位置に退避させることができる。
ヘッドユニット24を距離方向に移動させる機構の構成は、特には限られないが、本実施形態では、距離方向に延びる支柱部に沿って、ステッピングモーターやサーボモーターといったヘッドユニット昇降モーター531(
図2)(第2の移動駆動部)の動作に応じて昇降する昇降部材に対し、ヘッドユニット24を固定した構成とされている。
ヘッドユニット24から記録媒体Pへのインクの着弾範囲より搬送方向下流側には、これらのインクを定着されるための構成、例えば、溶媒成分を乾燥させる乾燥部や、紫外線硬化型インクを反応固化させる紫外線照射部などがさらに設けられていてもよい。
【0037】
媒体検出部25は、搬送ベルト211の外周面上に載置されて搬送される記録媒体Pの外周面からの浮き上がりを、記録媒体Pがヘッドユニット24と対向する位置に搬送される前に(すなわち、搬送方向についてヘッドユニット24の上流側で)検出する。媒体検出部25は、発光部251(
図3)と、当該発光部251から出射された光のうち、上述の搬送区間内において搬送ベルト211に載置された記録媒体Pの表面が通過する面に沿った所定の光路L(進行経路)を進行した出射光を検出する受光部252と、を有する。受光部252による出射光の検出結果は、制御部40に出力される。制御部40では、この検出結果に基づき、記録媒体Pの外周面からの浮き上がりに応じた出射光の受光部252への入射状態の変化により浮き上がりを検出することができる。なお、媒体検出部25は、記録媒体P上に出射光を遮る高さの異物がある場合には、当該異物を検出することもできる。媒体検出部25の構成及び動作については、後に詳述する。
【0038】
記録媒体排出部30は、画像記録部20から引き渡された記録媒体Pをユーザーに取り出されるまで載置して保持する。記録媒体排出部30は、排出トレー31及びガイドローラー32を備え、画像記録部20から送出された記録媒体Pをガイドローラー32により上下から挟持して搬送し、排出トレー31上に載置させる。
【0039】
図2は、インクジェット記録装置1の主要な機能構成を示すブロック図である。
インクジェット記録装置1は、制御部40と、吸引制御部51及び吸引ファン511を有する支持吸引部22と、ヘッド制御部52及び記録ヘッド241を有するヘッドユニット24と、ヘッドユニット昇降制御部53と、ヘッドユニット昇降モーター531と、媒体検出制御部54、発光部251及び受光部252を有する媒体検出部25と、検出部昇降制御部55と、検出部昇降モーター551(第1の移動駆動部)と、搬送制御部56と、搬送モーター561と、搬送ローラー傾斜駆動部57(張力調整部)と、入出力インターフェース58と、バス59などを備える。このうち吸引制御部51、ヘッド制御部52、ヘッドユニット昇降制御部53、媒体検出制御部54、検出部昇降制御部55及び搬送制御部56は、制御部40の各ハードウェア構成が併用されてもよいし、別個に専用のCPU、メモリーや論理回路などが用意されていてもよい。また、本実施形態のインクジェット記録装置1では、搬送部21、媒体検出部25、制御部40、検出部昇降制御部55、検出部昇降モーター551、搬送制御部56、搬送モーター561及び搬送ローラー傾斜駆動部57により搬送装置が構成される。
【0040】
制御部40は、CPU41(Central Processing Unit)、RAM42(Random Access Memory)、ROM43(Read Only Memory)及び記憶部44を有する。
【0041】
CPU41は、ROM43に記憶された各種制御用のプログラムや設定データを読み出してRAM42に記憶させ、当該プログラムを実行して各種演算処理を行う。また、CPU41は、インクジェット記録装置1の全体動作を統括制御する。
【0042】
RAM42は、CPU41に作業用のメモリー空間を提供し、一時データを記憶する。RAM42は、不揮発性メモリーを含んでいてもよい。
【0043】
ROM43は、CPU41により実行される各種制御用のプログラムや設定データ等を格納する。なお、ROM43に代えてEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)やフラッシュメモリー等の書き換え可能な不揮発性メモリーが用いられてもよい。
【0044】
記憶部44には、入出力インターフェース58を介して外部装置2から入力されたプリントジョブ(画像記録命令)及び当該プリントジョブに係る記録対象の画像の画像データなどが記憶される。記憶部44としては、例えばHDD(Hard Disk Drive)が用いられ、また、DRAM(Dynamic Random Access Memory)などが併用されてもよい。
【0045】
吸引制御部51は、制御部40からの制御信号に応じた回転速度で支持吸引部22の吸引ファン511を回転動作させる。
【0046】
ヘッド制御部52は、制御部40からの制御信号に応じた適切なタイミングで画像データを記録ヘッド241内のヘッド駆動部に出力することで、記録ヘッド241のノズルからインクを吐出させる。
【0047】
ヘッドユニット昇降制御部53は、制御部40からの制御信号に応じてヘッドユニット昇降モーター531を動作させることで、ヘッドユニット24を距離方向に移動させる。
【0048】
媒体検出制御部54は、制御部40からの制御信号に応じて発光部251による発光を行わせ、また受光部252による受光信号を受信して、発光部251からの出射光の検出結果に係る信号を制御部40に出力する。
【0049】
検出部昇降制御部55は、制御部40からの制御信号に応じて検出部昇降モーター551を動作させることで、媒体検出部25における発光部251及び受光部252を距離方向に移動させる。
【0050】
搬送制御部56は、制御部40から供給される制御信号に基づいて、媒体送出ローラー12、駆動ローラー212及びガイドローラー32にそれぞれ取り付けられた搬送モーター561の動作を別個に制御して各ローラーを回転させ、記録媒体Pを適切な速度で搬送させる。
【0051】
搬送ローラー傾斜駆動部57は、制御部40から供給される制御信号に基づいて、テンションローラー214の回転軸を幅方向に対して所定方向に傾斜させる駆動動作を行う。
【0052】
入出力インターフェース58は、外部装置2と制御部40との間のデータの送受信を媒介する。入出力インターフェース58は、例えば各種シリアルインターフェース、各種パラレルインターフェースのいずれか又はこれらの組み合わせで構成される。
【0053】
バス59は、制御部40と他の構成との間で信号の送受信を行うための経路である。
【0054】
外部装置2は、例えばパーソナルコンピューターであり、入出力インターフェース58を介してプリントジョブ及び画像データ等を制御部40に供給する。
【0055】
<媒体検出部の構成及び動作>
次に、画像記録部20における媒体検出部25の構成及び動作について説明する。
図3は、媒体検出部25及び付勢部215の構成を示す模式図である。
図3(a)は、画像記録部20のうち媒体検出部25及び付勢部215が設けられた部分を搬送ベルト211の外周面の上方から(距離方向の正方向から)見た平面図である。
図3(b)は、
図3(a)におけるA−A線での搬送方向に垂直な断面を示す図である。
図3(c)は、媒体検出部25及び付勢部215を側方から(幅方向の負方向から)見た図である。
【0056】
図3(a)に示されるように、媒体検出部25は、搬送ベルト211の外周面よりも幅方向の負方向側に配置された発光部251と、搬送ベルト211の外周面よりも幅方向の負方向側において発光部251と対向するように配置された受光部252とを有する。
発光部251は、高い指向性を有して直線状の光路を進行する光、例えばレーザー光を、発光素子2511から出射する。発光部251からの出射光の光路Lは、記録媒体Pの搬送区間内において、幅方向について搬送ベルト211の両端間に亘って幅方向に延びる外周面に沿った経路である。また、発光部251には、
図3(b)及び
図3(c)に示されるように、距離方向に沿って等間隔に複数の(ここでは、4つの)発光素子2511が設けられており、当該複数の発光素子2511により、距離方向について互いに平行かつ等間隔な複数の光路Lを進行する複数の出射光が出射される。なお、
図3(b)では、見難くなるのを避けるため、複数の光路Lのうち一の光路Lのみが破線で描かれている。
受光部252には、発光部251の複数の発光素子2511からの出射光を受光して当該出射光の強度を検出する複数の(ここでは、4つの)受光素子2521が、複数の発光素子2511と対応して設けられている。
なお、発光部251における発光素子2511の数や配置間隔、及び受光部252における受光素子2521の数や配置間隔は、上記に限られない。また、出射光の光路Lは、幅方向に平行な経路に限られず、搬送方向に交差する他の方向に延びていてもよい。また、発光部251の発光素子2511の前面に、スリットが設けられた遮光部材を配置し、発光素子2511から光路L以外の方向に散乱する光を遮光してもよい。
【0057】
搬送ベルト211の外周面上に載置されて搬送される記録媒体Pが外周面から浮き上がっている場合には、複数の発光素子2511からの出射光のうち、外周面からの浮き上がりの高さの範囲内にある光路Lを進行する光が記録媒体Pにより遮られ、当該光を検出する受光素子2521による検出値が変化する。この検出値の変化(すなわち、受光部252への入射状態の変化)に基づいて、搬送ベルト211の外周面からの記録媒体Pの浮き上がりが検出される。
より詳しくは、上記の複数の出射光のうち、記録媒体Pの表面からの距離方向についての距離d2が所定の距離条件を満たすような一の出射光が予め検出対象の出射光として選択され、当該検出対象の出射光の検出値が浮き上がりの検出に用いられる。ここで、所定の距離条件は、記録媒体Pの表面から光路Lまでの距離が所定の基準距離以下であり、かつ記録媒体Pの表面から最も離れた光路Lであること、とすることができる。上記の基準距離は、記録媒体Pの表面とヘッドユニット24のインク吐出面24aとの距離方向についての距離d1に対して、所定の安全域を設けて距離d1よりも小さな値に設定される。本実施形態では、距離d1は約1mmであり、基準距離は、距離d1に対して0.5mmの安全域を設けて0.5mmに設定されている。
【0058】
本実施形態のインクジェット記録装置1では、搬送される記録媒体Pの厚さによらず、記録媒体Pの表面からインク吐出面24aまでの距離が距離d1で一定となるようにヘッドユニット24の高さが調整される。また、ヘッドユニット24の高さの調整に合わせて、記録媒体Pの浮き上がりの検出に用いられる検出対象の出射光が変更される。記録媒体Pの厚さは、図示しない接触センサーや距離センサーによる記録媒体Pの表面の高さの検出結果から取得されてもよいし、プリントジョブにより指定された記録媒体Pの種別に基づいて取得されてもよい。
【0059】
図4は、ヘッドユニット24の高さ調整、及び検出対象の出射光の選択について説明する図である。以下では、発光部251における4つの発光素子2511を、搬送ベルト211の外周面からの距離が近い方から順に発光素子2511a〜2511dと記す。
【0060】
図4(a)では、所定の標準値以下の厚さを有する記録媒体Pの搬送が行われる場合の例が示されている。この場合には、発光部251において最も下方に設けられた発光素子2511aからの出射光が上記の距離条件を満たし、当該出射光が検出対象の出射光として選択される。
図4(b)では、上記の標準値よりも大きい厚さを有する記録媒体Pの搬送が行われる場合の例が示されている。この場合には、ヘッドユニット昇降制御部53による制御に応じたヘッドユニット昇降モーター531の動作により、ヘッドユニット24の位置が、インク吐出面24aと記録媒体Pの表面との距離が距離d1となる位置まで上方に移動する。また、この例では、発光部251において下から2番目に設けられた発光素子2511bからの出射光が上記の距離条件を満たし、当該出射光が検出対象の出射光として選択される。
本実施形態では、ヘッドユニット24が、記録媒体Pに対するインク吐出が可能な最も高い位置に配置されている場合のインク吐出面24aよりもさらに高い位置まで発光素子2511及び受光素子2521が配列されている。これにより、ヘッドユニット24がどのような位置でインク吐出を行う場合であっても、適切な高さの出射光を検出対象として選択して浮き検知を行うことができる。
【0061】
また、媒体検出部25により記録媒体Pの浮き上がりが検出された場合には、
図4(c)に示されるように、ヘッドユニット昇降制御部53による制御に応じたヘッドユニット昇降モーター531の動作により、ヘッドユニット24の位置が、インク吐出面24aと搬送ベルト211の外周面との距離が距離d3となる所定の退避位置まで上方に移動する。ここで、距離d3は、図示しない押さえ部材により記録媒体Pの浮き上がりが規制される高さ(外周面からの距離)よりも大きく設定される。したがって、退避位置は、インク吐出面24aと、浮き上がりが生じている記録媒体Pとが接触しない位置である。
【0062】
本実施形態では、媒体検出部25により記録媒体Pの浮き上がりが検出された後、当該浮き上がりの検出箇所がヘッドユニット24と対向する位置に移動する前に、ヘッドユニット24の退避位置への移動が完了するように、媒体検出部25の発光部251及び受光部252の位置(より詳しくは、ヘッドユニット24と、発光素子2511及び受光素子2521との間の搬送方向についての距離d4)が定められている。すなわち、発光部251及び受光部252は、ヘッドユニット24に対して搬送方向上流側に所定距離以上離れた位置範囲内でヘッドユニット24になるべく近い位置に配置され、当該所定距離は、ヘッドユニット24が、搬送ベルト211の外周面と最も近い位置から退避位置まで移動するのに要する時間(すなわち、ヘッドユニット24の退避位置への移動に要する最大時間)と、搬送ベルト211の周回移動における移動速度との積により定められている。
【0063】
なお、検出対象の出射光の高さを変更するための構成は、
図4に示したものに限られない。
例えば、
図5(a)及び
図5(b)に示されるように、出射光の光路Lの外周面からの距離が、外周面上に載置される記録媒体Pの厚さの増大に応じて漸増するように、媒体検出部25の発光部251及び受光部252を距離方向に移動させてもよい。この発光部251及び受光部252の距離方向への移動は、検出部昇降制御部55による制御に応じた検出部昇降モーター551の動作により行われる。この場合には、発光部251に設けられる発光素子2511の数、及び受光部252に設けられる受光素子2521の数は、発光部251及び受光部252の昇降可能範囲に応じて低減させることができる。例えば、発光素子2511及び受光素子2521をそれぞれ1つとして、出射光の高さが記録媒体Pに応じた適切な高さとなるように発光部251及び受光部252を距離方向に移動させる構成とすることができる。
【0064】
<搬送ベルトの偏在の補正>
ここで、搬送ベルト211の偏在の補正について説明する。
駆動ローラー212、従動ローラー213及びテンションローラー214に架け渡されて周回移動する搬送ベルト211では、搬送ベルト211がこれらの各搬送ローラーから受ける力の幅方向についての分布の不均衡などに起因して、搬送ローラーにおける搬送ベルト211の接触範囲が搬送ローラーの軸方向にずれて、幅方向について搬送ベルト211が偏在する不具合が生じる場合がある。この偏在は、搬送ベルト211の蛇行とも呼ばれる。
【0065】
図6は、搬送ベルト211の偏在及びその補正方法を説明する図である。
図6では、搬送ベルト211のうちテンションローラー214の周辺部が示されている。
図6(a)では、搬送ベルト211の幅方向についての位置がずれて、テンションローラー214の幅方向についての一方の端部214aの側に搬送ベルト211が偏在している例が示されている。
【0066】
このような搬送ベルト211の偏在を補正する場合には、搬送ベルト211の幅方向の両端における張力が異なるように、テンションローラー214の端部214a側を、搬送ベルト211の周回経路の外側に向けて付勢(押圧又は引張)する。本実施形態では、
図6(a)の下部におけるグラフに示されるように、幅方向についての張力の分布が、テンションローラー214の一方の端部214a側における張力が最も高くなる分布となるようにテンションローラー214の端部214a側を付勢する。この付勢は、制御部40による制御下で、搬送ローラー傾斜駆動部57によりテンションローラー214の回転軸を幅方向に対して傾斜させる動作により行うことができる。
【0067】
このように、幅方向について搬送ベルト211の両端における張力を異ならせることにより、
図6(b)に示されるように、テンションローラー214における搬送ベルト211の接触範囲が、テンションローラー214の他方側の端部214bに近付くように移動するため、搬送ベルト211の偏在が補正される。
なお、搬送ベルト211の偏在の補正は、テンションローラー214以外の搬送ローラー、すなわち駆動ローラー212や従動ローラー213の回転軸を傾斜させることで行われてもよい。また、搬送ローラーを付勢する方向は、周回経路の外側に向かう方向であればどのような方向としてもよい。
【0068】
このような搬送ベルト211の偏在の補正では、搬送ベルト211の幅方向についての端に近い部分ほど、搬送ベルト211において大きな張力、すなわち搬送ベルト211の周長を増大させる方向の力がかかる。このため、搬送ベルト211の偏在の補正における張力の印加に起因して、搬送ベルト211において、幅方向について外周面側への反りが生じる場合がある。この搬送ベルト211の反りは、幅方向の端から所定の近傍範囲内の側端部211Eにおいて特に生じやすい。また、本実施形態のスチールベルトように、可塑性を有する部材、すなわち外力に応じて変形し外力を取り去っても歪みが残る性質の部材により構成された搬送ベルト211では、このような反りが特に生じやすい。
【0069】
<付勢部の構成及び作用>
次に、画像記録部20の搬送部21における付勢部215の構成及び作用について
図3を用いて説明する。
【0070】
上述のように搬送ベルト211の側端部211E(
図3(b))が外周面側に反った状態で搬送ベルト211を周回移動させると、発光部251からの出射光の光路L(複数の光路Lのうち、検出対象として選択されている出射光の光路L)を搬送ベルト211の側端部211Eが遮ってしまい、記録媒体Pの浮き上がりを正確に検出することができなくなる(誤検出が生じる)という問題が生じる。
そこで、本実施形態では、側端部211Eの反りが、出射光の光路Lを遮らない範囲内に抑制されるように、記録媒体Pの搬送区間内における所定の位置で側端部211Eを、外周面側への反りを抑制する向きに(すなわち、搬送ベルト211の内周面側に向けて)付勢する付勢部215が設けられている。
【0071】
図3(a)〜
図3(c)に示されるように、付勢部215は、軸215bを中心に回転するホイール215a(押圧部材)と、軸215bが取り付けられ、軸215bと支持吸引部22との位置関係が固定されるように搬送部21の支持吸引部22の側面に対して固定された固定部215cと、を有している。なお、固定部215cは、支持吸引部22との相対位置が固定された他の架台や筐体などに対して固定されてもよい。
【0072】
付勢部215のホイール215aは、幅方向について側端部211Eの範囲内で、搬送ベルト211の外周面に上方から当接して内周面側に付勢しながら、外周面との間の摩擦力により、搬送ベルト211の周回移動に応じて回転する。なお、ホイール215aは、搬送ベルト211の側端部211Eに反りが生じていない場合には搬送ベルト211の外周面と接触しないような高さに設けられていることが望ましいが、検出対象の出射光の外周面からの高さがごく低く、側端部211Eの反りを可能な限り抑えたい場合など、必要に応じて側端部211Eの反りの有無に関わらず外周面と接触する高さに設けられていてもよい。
【0073】
付勢部215は、搬送ベルト211の幅方向の両側にそれぞれ2つずつ設けられている。搬送ベルト211の発光部251側に設けられた2つの付勢部215は、発光部251からの出射光の光路Lの近傍において、搬送方向について光路Lを挟む2箇所に設けられている。同様に、搬送ベルト211の受光部252側に設けられた2つの付勢部215は、受光部252に入射する出射光の光路Lの近傍において、搬送方向について光路Lを挟む2箇所にそれぞれ設けられている。また、各付勢部215は、ホイール215a、軸215b及び固定部215cがいずれも出射光の光路Lを遮らない位置に設けられている。
【0074】
なお、付勢部215のホイール215aの形状及び配置位置は上記に限られない。
例えば、
図7(a)に示されるように、ホイール215aの半径方向に沿って延在し光を通過させるスリットS(光通過部)をホイール215aに設け、ホイール215aの回転に応じた互いに異なるタイミングで発光部251からの出射光がスリットSを通過する位置に付勢部215を配置してもよい。この場合は、出射光がスリットSを通過する期間内で出射光の受光部252による検出値に基づいて浮き検知を行えばよい。スリットSは、
図7(a)のようにホイール215aを貫通する光通過孔としてもよいし、ホイール215aの外周から中心に向かって設けられた切り欠きにより構成されてもよい。
また、
図7(b)に示されるように、光透過性を有する部材によりホイール215aを構成し、発光部251からの出射光がホイール215aを透過するような位置に付勢部215を配置してもよい。
【0075】
(変形例1)
続いて、上記実施形態の変形例1について説明する。本変形例は、付勢部215の構成が上記実施形態と異なる。以下では、上記実施形態との相違点について説明する。
【0076】
図8は、本変形例おける付勢部215の構成を示す模式図である。
図8(a)は、画像記録部20のうち媒体検出部25及び付勢部215が設けられた部分を搬送ベルト211の外周面の上方から見た平面図である。
図8(b)は、
図8(a)におけるB−B線での搬送方向に垂直な断面を示す図である。
【0077】
本変形例の付勢部215は、鉤型のガイド部材215d(押圧部材)からなる。このガイド部材215dは、支持吸引部22の側面に固定され距離方向に延びる第1部分と、第1部分の上端で幅方向に折れ搬送ベルト211の側端部211Eにかかる位置まで幅方向に延在する第2部分とを有する。ガイド部材215dは、上記第2部分の下面で搬送ベルト211の側端部211Eにおける外周面と当接して、反りが生じている側端部211Eを内周面側に付勢する。また、ガイド部材215dは、搬送方向について、発光部251からの出射光の光路Lと重なる位置に設けられ、また、第2部分の高さが、光路Lの高さよりも低くなるように設けられている。このような本変形例の構成の付勢部215によっても、出射光の光路Lを遮ることなく、搬送ベルト211の側端部211Eを付勢して反りを抑制することができる。
なお、ガイド部材215dの構成や配置は、出射光の光路Lを遮らないように搬送ベルト211の側端部211Eを付勢することができれば上記に限られない。例えば、光透過性を有する部材によりガイド部材215dを構成し、発光部251からの出射光がガイド部材215dを透過するような位置にガイド部材215d(付勢部215)を配置してもよい。
【0078】
(変形例2)
続いて、上記実施形態の変形例2について説明する。本変形例は、付勢部215の構成が上記実施形態と異なる。以下では、上記実施形態との相違点について説明する。
【0079】
図9は、本変形例における付勢部215の構成を示す模式図である。
図9(a)は、画像記録部20のうち媒体検出部25及び付勢部215が設けられた部分を搬送ベルト211の外周面の上方から見た平面図である。
図9(b)は、
図9(a)におけるC−C線での搬送方向に垂直な断面を示す図である。
【0080】
本変形例では、磁石により吸引される磁性体によって搬送ベルト211が構成される。また、本変形例の付勢部215は、支持吸引部22における支持面のうち、搬送ベルト211の側端部211Eの内周面と対向する部分に埋め込まれた磁石215eと、磁石215eを被覆するコーティング層215fとを有する。コーティング層215fは、周回移動する搬送ベルト211を付勢部215上において円滑に摺動させるために設けられ、搬送ベルト211との間の摩擦係数が小さい部材により構成される。また、磁石215e及びコーティング層215fは、搬送方向について、発光部251からの出射光の光路Lと重なる位置に設けられている。
【0081】
本変形例の付勢部215は、磁性体の搬送ベルト211の側端部211Eを内周面側から磁石215eにより吸引して側端部211Eに力を及ぼすことで、側端部211Eを内周面側に付勢する。このような本変形例の構成の付勢部215によっても、出射光の光路Lを遮ることなく、搬送ベルト211の側端部211Eを付勢して反りを抑制することができる。特に、本変形例の付勢部215は、搬送ベルト211の内周面側に全ての構成要素が位置するため、付勢部215によって発光部251からの出射光が遮られる心配がない。また、搬送ベルト211の外周面を直接押圧しないため、外周面が押圧によってよれたり傷付いたりする不具合の発生が抑制される。
【0082】
以上のように、上記実施形態に係る搬送装置は、外周面上に記録媒体Pが載置される搬送ベルト211と、搬送ベルト211を所定の周回経路で周回移動させる搬送モーター561と、発光部251と、発光部251から出射された光のうち、周回移動する搬送ベルト211の移動方向と直交する幅方向についての搬送ベルト211の両端間に亘り、搬送ベルト211に載置された記録媒体Pの表面が通過する面に沿って移動方向と交差する方向に延びる光路を進行した出射光を検出する受光部252と、当該出射光の受光部252への入射状態の変化により、搬送ベルト211に載置された記録媒体Pの外周面からの浮き上がりを検出する検出手段としての制御部40と、幅方向について外周面側に反りが生じている搬送ベルト211における当該反りが、出射光の光路Lを遮らない範囲内に抑制されるように、周回経路における所定の位置で外周面側への反りを抑制する向きに搬送ベルト211を付勢する付勢部215を備える。
このような構成によれば、外周面側に反っている搬送ベルト211を周回移動させる場合において、発光部251からの出射光の光路が搬送ベルト211によって遮られないようにすることができる。この結果、搬送ベルト211による出射光の遮断により記録媒体Pの浮き上がりを誤検出してしまう不具合の発生を抑制することができる。よって、本実施形態によれば、より正確に記録媒体の浮き上がりを検出することができる。
【0083】
また、付勢部215は、搬送方向について出射光の光路Lの位置を含む範囲において搬送ベルト211を付勢する。これによって、より確実に搬送ベルト211が出射光の光路Lを遮らないように搬送ベルト211を変形させることができる。
【0084】
また、付勢部215は、搬送ベルト211を外周面側から押圧する押圧部材としてのホイール215a(変形例1ではガイド部材215d)を有する。このように外周面側から搬送ベルト211を押圧することにより、搬送ベルト211が出射光の光路Lを遮らないように、搬送ベルト211を確実に内周面側に変形させることができる。
【0085】
また、ホイール215aは、出射光を通過させるスリットSが設けられた遮光性を有する部材であり、受光部252は、押圧部材に設けられたスリットSを通過した出射光を検出する。このように、ホイール215aにスリットSを設けて出射光を通過可能とすることで、ホイール215aの形状や配置位置に係る自由度を向上させることができる。よって、例えば搬送方向について出射光の光路Lの位置にホイール215aを配置することができるため、より確実に搬送ベルト211が出射光の光路Lを遮らないように搬送ベルト211を変形させることができる。
【0086】
また、ホイール215aは、搬送ベルト211の外周面に当接して当該搬送ベルト211の周回移動に応じて回転する部材であり、ホイール215aには、当該ホイール215aの回転に応じた互いに異なるタイミングで出射光をそれぞれ通過させる複数のスリットSが設けられている。このような構成によれば、ホイール215aを出射光の光路Lにかかる位置に配置した場合において、出射光が所定期間ごとにスリットSを通過するため、出射光がスリットSを通過するタイミングにおける受光部252による出射光の検出結果に基づいて、記録媒体Pの浮き上がりを検出することができる。
【0087】
また、ホイール215aは、光透過性を有し、受光部252は、ホイール215aを透過した出射光を検出する。このような構成によっても、搬送方向について出射光の光路Lの位置にホイール215aを配置することができる。これにより、確実に搬送ベルト211が出射光の光路Lを遮らないように搬送ベルト211を変形させることができる。
【0088】
また、変形例2における磁石215eを有する付勢部215は、搬送ベルト211を内周面側から吸引して力を及ぼすことで当該搬送ベルト211を付勢する。このような構成によれば、付勢部215を、搬送ベルト211の内周面側に設けることができるため、搬送ベルト211の外周面に沿った出射光の光路Lが付勢部215により遮られる不具合の発生を抑制することができる。また、搬送ベルト211の外周面が直接押圧されないため、外周面が押圧によってよれたり傷付いたりする不具合の発生を抑制することができる。
【0089】
また、本実施形態の搬送装置は、搬送ベルト211が架け渡されて、回転動作に応じて当該搬送ベルト211を周回移動させる駆動ローラー212、従動ローラー213及びテンションローラー214を有し、搬送モーター561は、駆動ローラー212を回転動作させることで搬送ベルト211を周回移動させ、搬送装置は、周回移動する搬送ベルト211において幅方向についての搬送ベルト211の両端における張力を異ならせるように、テンションローラー214における回転動作の回転軸を幅方向に対して傾斜させる搬送ローラー傾斜駆動部57を備える。このような構成によれば、搬送ベルト211の偏在が生じた場合において、容易に偏在を補正して搬送ベルト211を適正な経路で周回させることができる。また、偏在の補正によって搬送ベルト211が外周面側に反った場合において、付勢部215により搬送ベルト211を内周面側に付勢することで、発光部251からの出射光の光路が搬送ベルト211で遮られる不具合の発生を抑制することができる。
【0090】
また、受光部252は、発光部251から出射され、搬送ベルト211の外周面からの距離が互いに異なる複数の光路Lを進行した複数の出射光を検出し、制御部40は、複数の光路Lのうち外周面上に載置されている記録媒体Pの厚さに応じた所定の一の光路Lを進行した出射光の入射状態の変化により浮き上がりを検出し(検出手段)、付勢部215は、搬送ベルト211の反りが、上記一の光路を遮らない範囲内に抑制されるように搬送ベルト211を付勢する。これにより、発光部251及び受光部252の高さ、すなわち出射光の光路Lの高さを調整することなく、記録媒体Pの厚さに応じた適切な高さで記録媒体Pの浮き上がりを検出することができる。
【0091】
また、本実施形態の搬送装置は、発光部251及び受光部252を搬送ベルト211の外周面からの距離が変化する方向に移動させる検出部昇降モーター551を備え、制御部40は、媒体検出部25による浮き上がりの検出が行われる場合に、出射光の光路Lの外周面からの距離が、外周面上に載置される記録媒体Pの厚さに応じた所定距離となるように検出部昇降モーター551により発光部251及び受光部252を移動させる(第1の移動制御手段)。このような構成によれば、より少ない出射光により、異なる複数の厚さの記録媒体Pに対する適切な高さでの浮き上がり検出を行うことができる。このため、発光部251及び受光部252の構成を簡素化することができる。
【0092】
また、搬送ベルト211には、スチールベルトが用いられている。このような構成では、搬送ベルト211が可塑性を有するため特に反りが生じやすいが、付勢部215により搬送ベルト211を付勢することで、発光部251からの出射光の光路が搬送ベルト211で遮られる不具合の発生を効果的に抑制することができる。
【0093】
また、本実施形態のインクジェット記録装置は、上記の搬送装置と、搬送ベルト211の外周面に載置されている記録媒体Pに対してインクを吐出するヘッドユニット24と、を備える。このような構成によれば、記録媒体Pの浮き上がりを正確に検出して、外周面上の記録媒体Pに対して行われる各種動作が記録媒体Pの浮き上がりに起因して適切に行われなくなる不具合の発生を抑制することができる。
【0094】
また、ヘッドユニット24は、搬送方向について出射光の光路Lの位置よりも下流側においてインクを吐出する。このような構成によれば、浮き上がりの検出に応じてヘッドユニット24の退避や搬送の停止といった対処を行うことで、記録媒体Pの浮き上がりにより記録媒体P上へのインクの着弾位置がずれて画質が低下したり、浮き上がった記録媒体Pとヘッドユニット24のインク吐出面24aとが接触し、インク吐出面24aが汚損されて正常なインク吐出ができなくなったりする不具合の発生を抑制することができる。
【0095】
また、インクジェット記録装置1は、ヘッドユニット24を、インク吐出面24aと搬送ベルト211の外周面との距離が変化する方向に移動させるヘッドユニット昇降モーター531を備え、制御部40は、媒体検出部25により記録媒体Pの浮き上がりが検出された場合に、ヘッドユニット昇降モーター531により、インク吐出面24aと、浮き上がりが生じた記録媒体Pとが接触しない退避位置にヘッドユニット24を移動させ(第2の移動制御手段)、発光部251及び受光部252は、搬送方向についてヘッドユニット24に対して上流側において、搬送方向についてのヘッドユニット24と出射光の光路Lとの距離が所定距離以上となる位置範囲内に配置され、当該所定距離は、ヘッドユニット昇降モーター531によるヘッドユニット24の退避位置への移動に要する最大時間と、搬送ベルト211の周回移動における移動速度との積である。このような構成によれば、記録媒体Pの搬送中に記録媒体Pの浮き上がりが検出された場合に、浮き上がった記録媒体Pがヘッドユニット24のインク吐出面24aと接触する前に確実にヘッドユニット24を退避位置に退避させることができる。これにより、浮き上がった記録媒体Pによりインク吐出面24aが汚損されて正常なインク吐出ができなくなる不具合の発生を確実に抑制することができる。
【0096】
なお、本発明は、上記実施形態及び各変形例に限られるものではなく、様々な変更が可能である。
例えば、上記実施形態及び各変形例では、搬送ベルト211において側端部211Eのみが外周面側に沿っている例を用いて説明したが、これに限定する趣旨ではない。例えば、搬送ベルト211の全体が幅方向について弓状に沿っている場合など、幅方向についての中心付近まで反りが生じている搬送ベルト211により記録媒体Pを搬送する搬送装置に本発明を適用してもよい。また、付勢部215により搬送ベルト211を付勢する幅方向の位置は、搬送ベルト211の外周面側への反りを抑制することができれば側端部211Eの範囲内に限られず、側端部211Eよりも幅方向の中心寄りの位置であってもよい。
【0097】
上記実施形態及び各変形例では、媒体検出部25により浮き上がりが検出された場合に、ヘッドユニット24を上方に退避させることで記録媒体Pとインク吐出面24aとの接触を回避する例を用いて説明したが、これに代えて、浮き上がりが検出された場合に、搬送ベルト211の周回移動を停止させる態様としてもよい。この場合には、媒体検出部25の発光部251及び受光部252は、浮き上がりの検出箇所がヘッドユニット24と対向する位置に到達する前に記録媒体Pの移動を停止させることができる距離だけヘッドユニット24より上流側に設けられることが好ましい。
【0098】
また、上記実施形態及び各変形例では、ヘッドユニット24の搬送方向上流側で媒体検出部25による浮き検出を行う例を挙げて説明したが、媒体検出部25を設ける位置はこれに限られない。
例えば、ロール紙などの長尺の記録媒体を搬送ベルト211の外周面に吸着させて搬送し、ヘッドユニット24の下流側で上方に剥離する場合に、搬送方向についてヘッドユニット24の下流側に媒体検出部25及び付勢部215を設けて記録媒体Pの浮き検出を行って、記録媒体の剥離状態を検出してもよい。
また、複数の搬送ベルトの間で記録媒体Pを受け渡しながら搬送し、各搬送ベルト上の記録媒体Pに対して互いに異なる処理を行うインクジェット記録装置において、当該複数の搬送ベルトのうち任意の搬送ベルトに対応して媒体検出部25及び付勢部215を設けて記録媒体Pの浮き検出を行ってもよい。
【0099】
また、上記各実施形態では、シングルパス形式のインクジェット記録装置1を例に挙げて説明したが、記録ヘッドを走査させながら画像の記録を行うインクジェット記録装置に本発明を適用してもよい。
【0100】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、本発明の範囲は、上述の実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲とその均等の範囲を含む。