特許第6953769号(P6953769)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ スズキ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6953769-産業用ロボットのハンド装置 図000002
  • 特許6953769-産業用ロボットのハンド装置 図000003
  • 特許6953769-産業用ロボットのハンド装置 図000004
  • 特許6953769-産業用ロボットのハンド装置 図000005
  • 特許6953769-産業用ロボットのハンド装置 図000006
  • 特許6953769-産業用ロボットのハンド装置 図000007
  • 特許6953769-産業用ロボットのハンド装置 図000008
  • 特許6953769-産業用ロボットのハンド装置 図000009
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6953769
(24)【登録日】2021年10月4日
(45)【発行日】2021年10月27日
(54)【発明の名称】産業用ロボットのハンド装置
(51)【国際特許分類】
   B25J 15/08 20060101AFI20211018BHJP
   F27D 3/15 20060101ALI20211018BHJP
   B22D 43/00 20060101ALI20211018BHJP
   B22D 45/00 20060101ALN20211018BHJP
【FI】
   B25J15/08 C
   F27D3/15 S
   B22D43/00 Z
   !B22D45/00 A
【請求項の数】7
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-76545(P2017-76545)
(22)【出願日】2017年4月7日
(65)【公開番号】特開2018-176318(P2018-176318A)
(43)【公開日】2018年11月15日
【審査請求日】2020年2月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001520
【氏名又は名称】特許業務法人日誠国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 竜也
(72)【発明者】
【氏名】河邑 尚弥
(72)【発明者】
【氏名】牧野 明男
(72)【発明者】
【氏名】松本 明
【審査官】 稲垣 浩司
(56)【参考文献】
【文献】 特開平6−218480(JP,A)
【文献】 特開平6−218478(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 15/08
F27D 3/15
B22D 43/00
B22D 45/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つ以上の関節部を介して連結される少なくとも1つ以上のアーム部材を有する産業用ロボットに設けられ、前記アーム部材の先端に設けられたハンド装置であって、
棒状のツールを把持する把持部と、
前記把持部に対して前記アーム部材側に設置され、前記把持部を把持位置と解除位置とに駆動する駆動部とを備え、
前記把持部の先端を覆うように設けられた第1の遮熱板と、
前記第1の遮熱板と前記関節部との間に設けられた第2の遮熱板とを有することを特徴とする産業用ロボットのハンド装置。
【請求項2】
前記把持部が、前記把持位置と前記解除位置とに移動自在な一対のフィンガー部材を有し、
前記駆動部が、前記フィンガー部材を前記把持位置と前記解除位置とに駆動するシリンダ部材を有し、
前記アーム部材に、前記シリンダ部材の周囲を覆うケースが設けられており、
前記ツールの軸線方向から見た場合に、前記第1の遮熱板は、前記ケースの前面を覆う大きさに形成されていることを特徴とする請求項1に記載の産業用ロボットのハンド装置。
【請求項3】
前記ツールの軸線方向から見た場合に、前記第2の遮熱板は、前記関節部を覆う大きさに形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の産業用ロボットのハンド装置。
【請求項4】
前記ツールの軸線方向と直交する方向における前記第1の遮熱板の面積に対して、前記ツールの軸線方向と直交する方向における前記第2の遮熱板の面積が大きいことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の産業用ロボットのハンド装置。
【請求項5】
前記第1の遮熱板および前記第2の遮熱板は、積層方向の中央部に断熱材が配置される多層構造であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の産業用ロボットのハンド装置。
【請求項6】
前記ツールが着脱自在に設けられ、前記ツールを軸線方向に位置決めする着脱部を有し、
前記把持部が前記把持位置に移動したときに前記ツールが前記着脱部に固定されることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の産業用ロボットのハンド装置。
【請求項7】
前記第1の遮熱板に、前記ツールが挿通される挿通穴が形成されていることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の産業用ロボットのハンド装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、産業用ロボットのハンド装置に関する。
【背景技術】
【0002】
溶解炉内の溶湯(溶融金属)に生ずるノロ(金属酸化物等の不純物、スラグ)を除去するノロ取り装置が知られており、ノロ取り装置は、1000℃以上の高温の溶湯に対して作業するため熱対策が必要になる。
【0003】
ノロ取りの作業時に溶湯に最も近づくハンド部は、溶解炉の熱の影響や飛散する溶湯の影響を最も受け易いので、熱対策が必要となる。
【0004】
従来、ハンド部の熱対策として特許文献1に記載される耐熱用ハンド装置がある。この耐熱用ハンド装置は、サンプリング棒を把持する把持部と、把持部を操作する操作棹とを有し、把持部と操作棹の周囲を耐熱用の保護筒と保護ケースによって覆っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭60−1559号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような従来の耐熱用ハンド装置にあっては、複数の関節部によってアーム部が連結される多軸の産業用ロボットに適用した場合には、ハンド装置、関節部、アーム部を全て保護筒や保護ケースによって覆う必要がある。このため、保護筒や保護ケースによって産業用ロボットの動きに制約を受けることがあった。
【0007】
本発明は、上記のような問題点に着目してなされたものであり、多軸を有する産業用ロボットの動きに制約を与えずに熱害から保護できる産業用ロボットのハンド装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、少なくとも1つ以上の関節部を介して連結される少なくとも1つ以上のアーム部材を有する産業用ロボットに設けられ、前記アーム部材の先端に設けられたハンド装置であって、棒状のツールを把持する把持部と、前記把持部に対して前記アーム部材側に設置され、前記把持部を把持位置と解除位置とに駆動する駆動部とを備え、前記把持部の先端を覆うように設けられた第1の遮熱板と、前記第1の遮熱板と前記関節部との間に設けられた第2の遮熱板とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
このように上記の本発明によれば、多軸を有する産業用ロボットの動きに制約を与えずに産業用ロボットを熱害から保護できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明の一実施例に係る溶解炉のノロ取り装置の平面図である。
図2図2は、本発明の一実施例に係る溶解炉のノロ取り装置に設置される産業用ロボットおよび溶解炉の側面図である。
図3図3は、本発明の一実施例に係る溶解炉のノロ取り装置に設置されるツール保持棒の正面図である。
図4図4は、本発明の一実施例に係る溶解炉のノロ取り装置に設置されるツール保持棒の側面図である。
図5図5は、本発明の一実施例に係る溶解炉のノロ取り装置に設置されるノロ取り用ツール本体の構成図である。
図6図6は、本発明の一実施例に係る溶解炉のノロ取り装置に設置される産業用ロボットのハンド装置の断面図である。
図7図7は、本発明の一実施例に係る溶解炉のノロ取り装置に設置される産業用ロボットのハンド装置に取付けられた第1の遮熱板をツールの軸線方向から見た図である。
図8図8は、本発明の一実施例に係る溶解炉のノロ取り装置に設置される産業用ロボットのハンド装置に取付けられた第2の遮熱板をツールの軸線方向から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の一実施の形態に係る産業用ロボットのハンド装置は、少なくとも1つ以上の関節部を介して連結される少なくとも1つ以上のアーム部材を有する産業用ロボットに設けられ、アーム部材の先端に設けられたハンド装置であって、棒状のツールを把持する把持部と、把持部に対してアーム部材側に設置され、把持部を把持位置と解除位置とに駆動する駆動部とを備え、把持部の先端を覆うように設けられた第1の遮熱板と、第1の遮熱板と関節部との間に設けられた第2の遮熱板とを有する。
【0012】
これにより、多軸を有する産業用ロボットの動きに制約を受けずに産業用ロボットを熱害から保護できる。
【実施例】
【0013】
以下、本発明に係る産業用ロボットの実施例について、図面を用いて説明する。
図1から図8は、本発明に係る一実施例の産業用ロボットを示す図である。
【0014】
まず、構成を説明する。
図1図2において、ノロ取り装置100にはノロ取り用の産業用ロボット1、台座2、溶解炉3が設置されており、産業用ロボット1は、台座2に設置されている。台座2は、ノロ取り装置100が設置される地面から上方に延びており、産業用ロボット1は、地面よりも高所に設置されている。
【0015】
図2において、溶解炉3は、縦方向(上下方向)に延びる中心軸O1を有し、溶解炉3には、例えば、高温(一例として、1500℃程度)の溶湯4が収容可能となっている。本実施例の溶解炉3は、縦型の溶解炉から構成されている。
【0016】
図1において、溶解炉3には排出口3Aが設けられており、溶湯4は、排出口3Aを通して溶解炉3から排出される。溶解炉3は、図示しない駆動装置により中心軸O1が傾くように揺動自在となっており、傾いた状態で排出口3Aから溶湯4が排出される。
【0017】
溶湯4は、例えば、自動車の制動を行うためのディスクブレーキ、ブレーキドラム、あるいは、内燃機関のシリンダブロック等の材料となるアルミニウム合金や、鋼等の鉄系合金等であり、溶湯4を鋳造することにより、これら自動車部品が製造される。
【0018】
自動車部品の鋳造を行う場合に、溶湯4の内部に発生するノロを除去する必要がある。ノロは、溶湯4の表面が酸化することで発生し、溶湯4の表面に浮かぶ。ノロが残存した状態で自動車部品を鋳造した場合には、ノロが鋳物の中に入り込み、ノロ噛みと呼ばれる鋳造不良が生じる。このため、産業用ロボット1によってノロを除去する。
【0019】
図2において、産業用ロボット1は、胴部11を有する。胴部11は、台座2に載置された下側胴部12と、下側胴部12の上方において下側胴部12に連結される上側胴部13とを備えている。
【0020】
上側胴部13は、図示しないモータや減速機等を有する図示しない第1の駆動部により、下側胴部12に対して鉛直方向に延びる旋回中心軸L1回りに揺動される。
【0021】
胴部11の上側胴部13には第1の関節部14を介して第1のアーム部材15が連結されている。第1の関節部14には図示しないモータや減速機等を有する図示しない第2の駆動部が設けられており、第1のアーム部材15は、第2の駆動部によって水平方向に延びる揺動軸L2回りに揺動される。
【0022】
第1のアーム部材15には第2の関節部16を介して第2のアーム部材17が連結されている。第2の関節部16には図示しないモータや減速機等を有する図示しない第3の駆動部が設けられており、第2のアーム部材17は、第3の駆動部によって第1のアーム部材15に対して水平方向に延びる揺動軸L3回りに揺動、かつ、第2のアーム部材17の軸線L4回りに揺動される。
【0023】
第2のアーム部材17には第3の関節部18を介して第3のアーム部材19が連結されている。第3の関節部18には図示しないモータや減速機等を有する図示しない第4の駆動部が設けられている。
【0024】
第3のアーム部材19は、第4の駆動部によって第2のアーム部材17に対して水平方向に延びる揺動軸L5回りに揺動、かつ、第3のアーム部材19の軸線L6回りに揺動される。第3のアーム部材19の先端にはハンド装置21が設けられている。図2において、溶解炉3の輻射熱Hを斜線で示す。
【0025】
このように本実施例の産業用ロボット1は、複数の第1の関節部14、第2の関節部16および第3の関節部18を有する多軸の産業用ロボットから構成されており、第1のアーム部材15、第2のアーム部材17および第3のアーム部材19は、旋回中心軸L1を中心に揺動される。
【0026】
本実施例の第1の関節部14、第2の関節部16および第3の関節部18は、本発明の関節部を構成し、第1のアーム部材15、第2のアーム部材17および第3のアーム部材19は、本発明のアーム部材を構成する。
【0027】
第1の関節部14、第2の関節部16、第3の関節部18、第1のアーム部材15、第2のアーム部材17および第3のアーム部材19は、アーム機構30を構成している。第3のアーム部材19の先端にはハンド装置21が設けられており、ハンド装置21にはツール保持棒51(図3図4参照)が装着される。
【0028】
図3図4において、ツール保持棒51には、ノロ取り用ツール本体52A(図5参照)が着脱される。図5において、ノロ取り用ツール本体52Aは、棒状部52aと、棒状部52aの先端に形成され、ノロを引っ掛ける三叉形状のフィンガー部52bとを含んで構成される。
【0029】
図3図4において、ツール保持棒51は、棒状に形成されており、細径部51Aと、細径部51Aよりも大径な大径部51B、51C、51D、51Eとを備えている。ツール保持棒51の内部には貫通孔51aが形成されており、貫通孔51aには後述するツール本体52Aの棒状部52aが嵌合される。これにより、ツール保持棒51にツール52が装着される。
【0030】
大径部51CにはV字形状の切り込み51m、51nが形成されており、切り込み51m、51nは、ツール保持棒51の軸線を挟んで対向している。
図6において、ハンド装置21は、把持部22および駆動部23を備えている。把持部22は、一対のフィンガー部材24、25およびガイド部26を備えている。駆動部23は、シリンダ部材27を備えている。
【0031】
フィンガー部材24、25は、対向する内壁に複数の突起24a、24b、24c、25a、25b、25cを備えている。突起24b、25bは、それぞれのフィンガー部材24、25から対向するフィンガー部材24、25に向かって先細りとなる山形形状に形成されている。
【0032】
突起24b、25bは、ツール保持棒51の大径部51Cの切り込み51m、51nの内周面と同一の外周面に形成されており、切り込み51m、51nに嵌合される。突起24a、25aは、ツール保持棒51の大径部51Bを両側から挟持し、突起24c、25cは、ツール保持棒51の大径部51Dを両側から挟持する。
【0033】
ガイド部26にはレール溝26aが形成されており、レール溝26aにはフィンガー部材24、25の上部に設けられた嵌合部24A、25Aが嵌合されており、フィンガー部材24、25は、レール溝26aに沿って近接および離隔するように移動する。
【0034】
ガイド部26には挿入穴26Aが形成されており、挿入穴26Aにはツール保持棒51の先端が着脱自在となっている。挿入穴26Aにホール保持棒51の先端が装着、すなわち、嵌合されると、ツール52が軸線方向に位置決めされ、この状態でフィンガー部材24、25が把持位置に移動されると、ツール保持棒51が挿入穴26Aに固定される。本実施例のガイド部26は、本発明の着脱部を構成する。
【0035】
シリンダ部材27は、第3のアーム部材19の先端に固定されたシリンダ本体31を有する。シリンダ本体31の内部にはシリンダ室32が形成されており、シリンダ室32にはプランジャ33が往復動自在に設けられている。
【0036】
プランジャ33には仕切部33Aが形成されており、仕切部33Aは、シリンダ室32を導入室32Aと排出室32Bとに仕切っている。シリンダ本体31には導入ポート31Aと排出ポート31Bとが形成されている。
【0037】
導入ポート31Aは、図示しない空気導入管の導入通路に連結しており、導入ポート31Aは、空気導入通路を通して高圧の空気を導入室32Aに導入する。排出ポート31Bは、図示しない空気排出管の排出通路に連結しており、排出ポート31Bは、排出室32Bの空気を排出通路に排出する。
【0038】
シリンダ室32にはコイルスプリング34が収容されている。シリンダ室32の上部には受け板35が固定されており、受け板35は、コイルスプリング34の一端を支持している。
【0039】
プランジャ33には受け溝33Bが形成されており、受け溝33Bは、コイルスプリング34の他端を支持している。これにより、プランジャ33は、コイルスプリング34によって受け板35から離れる方向に付勢されている。
【0040】
シリンダ本体31の下部には収容室31Cが形成されており、収容室31Cにはリンク機構36が収容されている。リンク機構36は、揺動部37a、38aを支点にして揺動する一対のガイド板37、38を有する。プランジャ33の下部にはスリット33Cが形成されており、スリット33Cには嵌合部33Dが設けられている。
【0041】
ガイド板37、38の一端は、スリット33Cに収容された状態で嵌合部33Dに嵌合されている。フィンガー部材24、25の嵌合部24A、25Aには挿入溝24m、25mが形成されており、挿入溝24m、25mにはガイド板37、38の他端に設けられたボール部37b、38bが挿入されている。
【0042】
挿入溝24m、25mにボール部37b、38bが完全に挿入された状態において、挿入溝24m、25mは、ボール部37b、38bの直径よりも深く形成されている。これにより、挿入溝24m、25mにボール部37b、38bが完全に挿入された状態において、ボール部37b、38bは、挿入溝24m、25mに沿って移動可能である。
【0043】
このような構成を有するハンド装置21は、コイルスプリング34によってプランジャ33が図6中、下方に付勢されると、プランジャ33の嵌合部33Dが下方に移動する。ガイド板37、38の一端は、嵌合部33Dに嵌合されているので、嵌合部33Dが下方に移動すると、ガイド板37、38の一端が揺動部37a、38aを支点にして下方に移動する。
【0044】
これにより、ガイド板37、38のボール部37b、38bが挿入溝24m、25mに沿って図6中、外側上方に移動し、ボール部37b、38bが外側に移動するのに伴ってフィンガー部材24、25が離隔される。フィンガー部材24、25が離隔されると、フィンガー部材24、25からツール保持棒51が外される。
【0045】
ハンド装置21は、導入ポート31Aから導入室32Aに高圧の圧縮空気が導入されると、プランジャ33がコイルスプリング34の付勢力に抗して受け板35に向かって図6中、上方に移動する。
【0046】
これにより、プランジャ33の嵌合部33Dが上方に移動し、ガイド板37、38の一端が揺動部37a、38aを支点にして上方に移動する。このとき、ガイド板37、38のボール部37b、38bが挿入溝24m、25mに沿って図6中、内側下方に移動し、ボール部37b、38bが内側に移動するのに伴ってフィンガー部材24、25が近接される。
【0047】
フィンガー部材24、25が近接すると、突起24b、25bがツール保持棒51の切り込み51m、51nに嵌合され、突起24a、25aと突起24c、25cとがそれぞれがツール保持棒51の大径部51B、51Dを挟持する。これにより、ツール保持棒51がフィンガー部材24、25に強固に保持される。
【0048】
このようにフィンガー部材24、25は、シリンダ部材27によってツール保持棒51を把持する把持位置とツール保持棒51の把持を解除する解除位置との間に移動自在に構成されている。
【0049】
ハンド装置21は、筒状のケース39を備えており、ケース39は、シリンダ部材27の周囲を覆うようにしてシリンダ本体31に固定されている。ここで、空気導入管や空気排出管は、シリンダ本体31から第3のアーム部材19の内部に延び、第3のアーム部材19を通して圧縮空気の供給源に接続されている。
【0050】
ケース39とシリンダ本体31にはフレーム41が固定されており(図6参照)、フレーム41は、シリンダ本体31からフィンガー部材24、25の先端に向かって延びている。フレーム41の先端には円板状の遮熱板42が設けられており、遮熱板42は、フィンガー部材24、25の先端を覆っている。
【0051】
遮熱板42は、積層方向の中央部に断熱板42Aが配置され、断熱板42Aを鉄板42B、42Cによって両側から挟んだ多層構造を有する。図7において、例えば、ツール52の軸線方向L11から見た場合に、遮熱板42は、ケース39の前面を覆う大きさに形成されている。
【0052】
図2において、第3の関節部18に対向するケース39の上面には円板状の遮熱板43が設けられており、遮熱板43は、遮熱板42と第3の関節部18との間において第3のアーム部材19を取り囲むようにして設けられている(図2参照)。
【0053】
図6において、遮熱板43は、積層方向の中央部に断熱板43Aが配置され、断熱板43Aを鉄板43B、43Cによって両側から挟んだ多層構造を有する。本実施例の断熱板42A、43Aは、本発明の断熱材を構成する。
【0054】
図2において、ツールの軸線方向L11から見た場合に、遮熱板43は、第3の関節部18を覆う大きさに形成されている。
【0055】
図2において、ツールの軸線方向L11と直交する方向における遮熱板42の面積に対して、ツールの軸線方向L11と直交する方向L12における遮熱板43の面積は、大きく形成されている。本実施例の遮熱板42は、本発明の第1の遮熱板を構成し、遮熱板43は、本発明の第2の遮熱板を構成する。
【0056】
図6において、遮熱板42の半径方向中央部には挿通穴42aが形成されており、挿通穴42aは、ガイド部26の挿入穴26Aと同軸上(ツールの軸線方向L11と同軸上)に設けられている。
【0057】
挿通穴42aは、ツール保持棒51の大径部51Bから51Dよりも大きい内径に形成されており、ツール保棒51は、挿通穴42aを通してフィンガー部材24、25の間の空間に挿入される。
【0058】
図1において、ノロ取り装置100は、ノロ取り用ツール置き台61を有する。ノロ取り用ツール52は、ノロ取り用ツール置き台61に縦置き状態で設置されている。ノロ取り用ツール置き台61は、新品のノロ取り用ツール52が設置される新品ツール置き部61Aを有する。
【0059】
ノロ取り用ツール置き台61には新品ツール置き部61Aに隣接して使用済みツール置き部61Bが設けられており、使用済みツール置き部61Bにはノロを回収したノロ取り用ツール52が設置されている。使用済みツール置き部61Bにはノロ回収箱61Cが設けられている。
【0060】
使用済みツール置き部61Bに使用済みのノロ取り用ツール52が縦置きに設置された状態で、使用済みのノロ取り用ツール52が回収したノロがノロ回収箱61Cに回収される。本実施例のノロ回収箱61Cは、本発明のノロ回収部材を構成する。
【0061】
図2において、溶解炉3の上方にはレーダ5が設けられている。レーダ5は、溶湯4の湯面にマイクロ波を照射し、溶湯4の湯面からの反射波を測定することにより、溶湯4の湯面の高さを測定する。
【0062】
産業用ロボット1は、レーダ5によって測定された溶湯4の湯面の高さ情報に基づいて、ハンド装置21の作業位置を修正する。本実施例のレーダ5は、本発明の湯面検出装置を構成する。
【0063】
図1において、産業用ロボット1の平面視、すなわち、ノロ取り装置100の平面視において、溶解炉3およびツール置き台62は、産業用ロボット1の胴部11の旋回中心軸L1を中心として三角形状に設置されている。ツール置き台61は、ツール置き台62に対して産業用ロボット1側に設置されている。
【0064】
サンプル取得用ツール53のサンプル容器53b、除滓剤散布用ツールの除滓剤容器54b、添加剤投入用ツールの添加剤容器55bは、ツール置き台62に対して溶解炉3と反対側に設置されている。
【0065】
産業用ロボット1の平面視において、溶解炉3の排出口3Aは、アーム機構30の旋回域の接線方向Rに対して外方に位置している。アーム機構30の旋回域とは、産業用ロボット1の旋回中心軸L1を中心とした半径方向おけるアーム機構30の旋回範囲である。
【0066】
ノロ取り装置100には溶解炉3に金属材料を投入するための投入装置102が設置されている。投入装置102は、仮想線で示すように搬送路103上を移動自在となっており、搬送路103は、アーム機構30の旋回域の接線方向Rに対して外方に配置されている。
【0067】
次に、作用を説明する。
ノロ取りを行う場合には、待機位置に位置しているアーム機構30の姿勢制御を行い、ハンド装置21をノロ取り用ツール置き台61に向かって移動させる。
【0068】
このとき、産業用ロボット1は、ノロ取り用ツール置き台61の新品ツール置き部61Aに上方から接近し、新品ツール置き部61Aに縦置きに設置されたノロ取り用ツール52のツール保持棒51を把持する。
【0069】
具体的には、産業用ロボット1は、ハンド装置21を上方から下方に向かって縦方向きに移動させてハンド装置21をツール保持棒51に近づけ、遮熱板42の挿通穴42aを通してフィンガー部材24、25の間にツール保持棒51を挿入する。
【0070】
さらに、ガイド部26の挿入穴26Aにツール保持棒51の先端を挿入した後、フィンガー部材24、25を把持位置に移動させることにより、フィンガー部材24、25によってツール保持棒51を把持する。
【0071】
次いで、ハンド装置21を溶解炉3に移動し、ノロ取り用ツール52の三叉形状のフィンガー部52bを溶湯4に入れて溶湯4の表面に浮かんだノロをフィンガー部52bに引っ掛けて荒取りする。
【0072】
溶湯4には除滓剤が散布されており、溶湯4を撹拌することにより、溶湯4の表面に浮遊しているノロが除滓剤に効率よく付着し、ノロの一部を安定な固体酸化物に変化させて、溶湯4の表面から除去できる。
【0073】
次いで、ハンド装置21を溶解炉3からノロ取り用ツール置き台61に移動させ、ノロ取り用ツール52を使用済みツール置き部61Bに縦置きで設置する。このとき、ノロ取り用ツール52が回収したノロがノロ回収箱61Cに回収される。
【0074】
次いで、産業用ロボット1は、フィンガー部材24、25を解除位置に移動させた後、ハンド装置21を縦向きのまま上方に移動させ、遮熱板42の挿通穴42aからツール保持棒51を引き抜いた後に、アーム機構30を待機位置に移動させて作業を終了する。
【0075】
本実施例の産業用ロボット1のハンド装置21は、棒状のツール52を把持する把持位置とツール保持棒51の把持を解除する解除位置とに移動自在に設けられたフィンガー部材24、25と、フィンガー部材24、25に対して第3のアーム部材19側に設置され、フィンガー部材24、25を把持位置と解除位置とに駆動するシリンダ部材27とを備えている。
【0076】
ハンド装置21は、フィンガー部材24、25の先端を覆うように設けられた遮熱板42と、遮熱板42と第3の関節部18との間に設けられた遮熱板43とを有する。
【0077】
これにより、高温の溶湯4の熱を遮熱板42によって遮ることができる上に、溶解炉から飛散した溶湯を遮熱板42によって遮ることができる。このため、フィンガー部材24、25およびシリンダ部材27を溶湯4から容易に保護でき、結果的にハンド装置21を容易に保護できる。
【0078】
また、高温の溶湯4の熱を遮熱板43によって遮ることができる上に、溶湯4から飛散した溶湯を遮熱板43によって遮ることができ、アーム機構30を溶湯4から容易に保護できる。この結果、産業用ロボット1を熱害から容易に保護できる。
【0079】
また、本実施例の産業用ロボット1のハンド装置21によれば、第3のアーム部材19にシリンダ部材27の周囲を覆うケース39が設けられており、ツール52の軸線方向L11から見た場合に、遮熱板42がケース39の前面を覆う大きさに形成されている。
【0080】
これにより、遮熱板42を、フィンガー部材24、25およびシリンダ部材27を覆うだけの最低限の大きさにすることができる。このため、棒状のツール52およびアーム機構30の動きが遮熱板42によって制約されることを防止でき、ハンド装置21を溶湯4から容易に保護できる。
【0081】
また、本実施例の産業用ロボット1のハンド装置21によれば、ツール52の軸線方向L11から見た場合に、遮熱板43は、第3の関節部18を覆う大きさに形成されている。
これにより、第3の関節部18を溶湯4の熱および溶解炉3から飛散した溶湯4からより効果的に保護でき、結果的にアーム機構30を溶湯4からより効果的に保護できる。
【0082】
また、本実施例の産業用ロボット1のハンド装置21によれば、ツール52の軸線方向L11と直交する方向L12における遮熱板42の面積に対して、ツール52の軸線方向L11と直交する方向L12における遮熱板43の面積が大きく形成されている。
【0083】
これにより、ノロ取り作業時等において、第3の関節部18よりも溶解炉3に近づくハンド装置21の動きが遮熱板42によって制約を受けることを防止して、第3の関節部18を溶湯4の熱および溶解炉3から飛散する溶湯4から確実に保護できる。
【0084】
また、本実施例の産業用ロボット1のハンド装置21によれば、遮熱板42および遮熱板43は、積層方向の中央部に断熱板42A、43Aが配置される多層構造から構成されている。これにより、遮熱板42、43による遮熱効果をより効果的に向上できる。この結果、ハンド装置21およびアーム機構30を溶湯4の熱からより効果的に保護できる。
【0085】
また、本実施例の産業用ロボット1のハンド装置21は、ツール52が着脱自在に設けられ、ツール52を軸線方向L11に位置決めする挿入穴26Aが形成されたガイド部26を有し、フィンガー部材24、25が把持位置に移動したときにツール52が挿入穴26Aに固定される。
【0086】
これにより、ツール52を挿入穴26Aに位置決めして支持した状態で、フィンガー部材24、25によってツール52を安定して把持できる。また、挿入穴26Aにツール52を位置決めすることで、V字形状の切り込み51m、51nと突起24b、25bとの位置決めを容易に行うことができる。これにより、フィンガー部材24、25を把持位置に移動させたときに、V字形状の切り込み51m、51nに突起24b、25bを確実に嵌合できる。
【0087】
また、本実施例の産業用ロボット1のハンド装置21によれば、遮熱板42に、ツール52が挿通される挿通穴42aが形成されている。これにより、フィンガー部材24、25を遮熱板42によって覆ってもフィンガー部材24、25の間にツール52を挿入できる。
【0088】
また、挿通穴42aを通してフィンガー部材24、25の間にツール52を挿入することで、ツール52によって挿通穴42aを塞ぐことができ、ハンド装置21を溶湯4の熱および溶解炉3から飛散する溶湯から確実に保護できる。
【0089】
本発明の実施例を開示したが、当業者によっては本発明の範囲を逸脱することなく変更が加えられうることは明白である。すべてのこのような修正および等価物が次の請求項に含まれることが意図されている。
【符号の説明】
【0090】
1...産業用ロボット、3...溶解炉、4...溶湯、14...第1の関節部(関節部)、15...第1のアーム部材(アーム部材)、16...第2の関節部(関節部)、17...第2のアーム部材(アーム部材)、18...第3の関節部(関節部)、19...第3のアーム部材(ーム部材)、21...ハンド装置、22...把持部、23...駆動部、24,25...フィンガー部材(把持部)、26...ガイド部(着脱部)、27...シリンダ部材(駆動部)、39...ケース、42...遮熱板(第1の遮熱板)、42A...断熱板(断熱材)、42a...挿入穴、43...遮熱板(第2の遮熱板)、43A...断熱板(断熱材)、L11...ツールの軸線方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8