特許第6953824号(P6953824)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6953824
(24)【登録日】2021年10月4日
(45)【発行日】2021年10月27日
(54)【発明の名称】有機電界発光素子
(51)【国際特許分類】
   H01L 51/50 20060101AFI20211018BHJP
   C08F 212/00 20060101ALI20211018BHJP
【FI】
   H05B33/22 D
   H05B33/14 A
   C08F212/00
【請求項の数】8
【全頁数】68
(21)【出願番号】特願2017-120775(P2017-120775)
(22)【出願日】2017年6月20日
(65)【公開番号】特開2019-9156(P2019-9156A)
(43)【公開日】2019年1月17日
【審査請求日】2020年5月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士フイルムビジネスイノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】菅原 啓
(72)【発明者】
【氏名】額田 克己
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 英一
【審査官】 小久保 州洋
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−030038(JP,A)
【文献】 特開2009−176963(JP,A)
【文献】 特開2013−060422(JP,A)
【文献】 特表2007−514832(JP,A)
【文献】 特表2004−503640(JP,A)
【文献】 特開2010−024407(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC H05B 33/22
H01L 51/50 − 51/56
C08F 212/00
DB名 CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一方が透明である一対の電極と、該一対の電極に挟持された発光層を含む1つ又は複数の有機化合物層と、を有し、
前記有機化合物層の少なくとも1つが、重合性基を有する正孔輸送化合物と重合性基を有する電子輸送化合物との重合体を含み、
前記重合性基を有する正孔輸送化合物が、下記一般式(2)で表される化合物であり、
前記重合性基を有する電子輸送化合物が、下記一般式(7)で表される化合物、下記一般式(8)で表される化合物、及び下記一般式(9)で表される化合物からなる群より選択される化合物である、有機電界発光素子。
【化1】

一般式(2)中、Ar乃至Arはそれぞれ独立に置換若しくは無置換のフェニル基を表し、Arは無置換のビフェニル基又は置換若しくは無置換のジベンジル基を表す。kは1を表し、c1乃至c4はそれぞれ独立に0以上1以下の整数を表し、c5は0の整数を表し、但しc1乃至c5の合計は1以上である。Dは一般式(3)で表される基を表し、一般式(3)中、Lはアルキレン基、メタンから水素3原子を除いた3価基、及びエチレンから水素3原子を除いた3価基から選択される1種の連結基又は2種以上を組み合わせてなる(n+1)価の連結基を表す
【化2】

一般式(7)中、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17及びR18は、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アラルキル基又は−Y−Zで表される基を示す。但し、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17及びR18中、−Y−(Z)で表される基は1以上4以下である。
一般式(8)中、R21、R22、R23、R24、R25、R26、R27及びR28は、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アラルキル基又は−Y−Zで表される基を示す。但し、R21、R22、R23、R24、R25、R26、R27及びR28中、−Y−(Z)で表される基は1以上4以下である。
一般式(9)中、R31、R32、R33、R34、R35、R36、R37及びR38は、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アラルキル基又は−Y−Zで表される基を示す。但し、R31、R32、R33、R34、R35、R36、R37及びR38中、−Y−(Z)で表される基は、1以上4以下である。
前記−Y−(Z)で表される基中、Yは、アルキレン基、アダマンタン基、−C=C−、−C(=O)−、−O−及びメタンから水素3原子を除いた3価基から選択される1種又は2種以上を組み合わせてなる(m+1)価の連結基を表し、Zは、アクリロイル基、メタクリロイル基又はスチレン基であり、mは1又は2である。
【請求項2】
前記一般式(2)で表される化合物における前記一般式(3)で表される基が、下記一般式(4)で表される基である、請求項に記載の有機電界発光素子。
【化3】

一般式(4)中、Xはアルキレン基を表し、pは0又は1を表す。
【請求項3】
前記一般式(2)で表される化合物における前記一般式(3)で表される基が、下記一般式(5−1)で表される基又は下記一般式(5−2)で表される基である、請求項に記載の有機電界発光素子。
【化4】

一般式(5−1)及び一般式(5−2)中、Xはアルキレン基を表し、pは0又は1を表す。
【請求項4】
前記一般式(2)で表される化合物における前記一般式(3)で表される基が、下記一般式(6−1)で表される基又は下記一般式(6−2)で表される基である、請求項に記載の有機電界発光素子。
【化5】

一般式(6−1)及び一般式(6−2)中、Xはアルキレン基を表し、pは0又は1を表す。
【請求項5】
熱ラジカル発生剤及びその誘導体並びに光ラジカル発生剤及びその誘導体から選択される少なくとも1種を更に含有する、請求項1〜請求項のいずれか1項に記載の有機電界発光素子。
【請求項6】
前記重合体中の、前記重合性基を有する正孔輸送化合物に由来する構造単位(C)と前記重合性基を有する電子輸送化合物に由来する構造単位(E)との質量比(C):(E)が10:1乃至1:20の範囲である請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の有機電界発光素子。
【請求項7】
前記重合体中の、前記重合性基を有する正孔輸送化合物に由来する構造単位(C)と前記重合性基を有する電子輸送化合物に由来する構造単位(E)との質量比(C):(E)が1:1乃至1:15の範囲である請求項に記載の有機電界発光素子。
【請求項8】
重合性基を有する正孔輸送化合物と重合性基を有する電子輸送化合物との重合体を含む前記有機化合物層の体積抵抗率が1×10Ω・cm以上1×1015Ω・cm以下である、請求項1〜請求項のいずれか1項に記載の有機電界発光素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機電界発光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真感光体、有機電界発光素子、有機トランジスタ、有機太陽電池などの電子デバイスが備える有機化合物層の1つとして、電荷輸送性能(正孔輸送性能とも呼ぶ)を有する膜、即ち「電荷輸送性膜」が、盛んに開発されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、一般式(I)で示される反応性化合物又は該反応性化合物に由来する構造を含む電荷輸送性膜が開示されている。
例えば、特許文献2には、一般式(I)で表される化合物の重合体を含有する電荷輸送性膜が開示されている。
例えば、特許文献3には、一般式(I)で表される化合物の重合体を含有する電荷輸送性膜が開示されている。
例えば、特許文献4には、一般式(I)で表される化合物を含有する組成物を硬化させた電荷輸送性膜が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−43841号公報
【特許文献2】特開2013−44819号公報
【特許文献3】特開2013−60422号公報
【特許文献4】特開2013−60572号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、有機電界発光素子には、重合性基を有する正孔輸送化合物の重合体を含む有機化合物層を備えているものがあるが、かかる有機化合物層は抵抗が高いことがある。
そこで、本発明の課題は、重合性基を有する正孔輸送化合物のみからなる重合体を含む場合に比べて、抵抗が低い有機化合物層を備える有機電界発光素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するための具体的手段には、下記の態様が含まれる。
【0007】
に係る発明は、
少なくとも一方が透明である一対の電極と、該一対の電極に挟持された発光層を含む1つ又は複数の有機化合物層と、を有し、
前記有機化合物層の少なくとも1つが、重合性基を有する正孔輸送化合物と重合性基を有する電子輸送化合物との重合体を含む有機電界発光素子。
【0008】
に係る発明は、
前記重合性基を有する正孔輸送化合物が、下記一般式(1)で表される化合物であるに記載の有機電界発光素子。
【0009】
【化1】
【0010】
一般式(1)中、Fは正孔輸送性サブユニットを表し、Lはアルキレン基、−C=C−、−C(=O)−、−N(R)−、−O−、−S−、メタンから水素3原子を除いた3価基、及びエチレンから水素3原子を除いた3価基から選択される1種の連結基又は2種以上を組み合わせてなる(n+1)価の連結基を表し、Rは水素原子、アルキル基、アリール基又はアラルキル基を表し、mは1以上6以下の整数を表し、nは1以上3以下の整数を表す。
【0011】
に係る発明は、
前記一般式(1)で表される化合物が、下記一般式(2)で表される化合物である、に記載の有機電界発光素子。
【0012】
【化2】
【0013】
一般式(2)中、Ar乃至Arはそれぞれ独立に置換若しくは無置換のアリール基を表し、Arは置換若しくは無置換のアリール基又は置換若しくは無置換のアリーレン基を表す。kは0又は1を表し、c1乃至c5はそれぞれ独立に0以上2以下の整数を表し、但しc1乃至c5の合計は1以上である。Dは一般式(3)で表される基を表し、一般式(3)中、Lはアルキレン基、−C=C−、−C(=O)−、−N(R)−、−O−、−S−、メタンから水素3原子を除いた3価基、及びエチレンから水素3原子を除いた3価基から選択される1種の連結基又は2種以上を組み合わせてなる(n+1)価の連結基を表し、Rは水素原子、アルキル基、アリール基又はアラルキル基を表し、nは1以上3以下の整数を表す。
【0014】
に係る発明は、
前記一般式(2)で表される化合物における前記一般式(3)で表される基が、下記一般式(4)で表される基である、に記載の有機電界発光素子。
【0015】
【化3】
【0016】
一般式(4)中、Xはアルキレン基、−C=C−、−C(=O)−、−N(R)−、−O−及び−S−から選択される1種又は2種以上を組み合わせてなる2価の連結基を表し、Rは水素原子、アルキル基、アリール基又はアラルキル基を表し、pは0又は1を表す。
【0017】
に係る発明は、
前記一般式(2)で表される化合物における前記一般式(3)で表される基が、下記一般式(5−1)で表される基又は下記一般式(5−2)で表される基である、に記載の有機電界発光素子。
【0018】
【化4】
【0019】
一般式(5−1)及び一般式(5−2)中、Xはアルキレン基、−C=C−、−C(=O)−、−N(R)−、−O−及び−S−から選択される1種又は2種以上を組み合わせてなる2価の連結基を表し、Rは水素原子、アルキル基、アリール基又はアラルキル基を表し、pは0又は1を表す。
【0020】
に係る発明は、
前記一般式(2)で表される化合物における前記一般式(3)で表される基が、下記一般式(6−1)で表される基又は下記一般式(6−2)で表される基である、に記載の有機電界発光素子。
【0021】
【化5】
【0022】
一般式(6−1)及び一般式(6−2)中、Xはアルキレン基、−C=C−、−C(=O)−、−N(R)−、−O−及び−S−から選択される1種又は2種以上を組み合わせてなる2価の連結基を表し、Rは水素原子、アルキル基、アリール基又はアラルキル基を表し、pは0又は1を表す。
【0023】
に係る発明は、
前記重合性基を有する電子輸送化合物が、下記一般式(7)で表される化合物、下記一般式(8)で表される化合物、及び下記一般式(9)で表される化合物からなる群より選択される化合物である、のいずれか1項に記載の有機電界発光素子。
【0024】
【化6】
【0025】
一般式(7)中、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17及びR18は、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アラルキル基又は−Y−Zで表される基を示す。但し、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17及びR18中、−Y−(Z)で表される基は1以上4以下である。
一般式(8)中、R21、R22、R23、R24、R25、R26、R27及びR28は、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アラルキル基又は−Y−Zで表される基を示す。但し、R21、R22、R23、R24、R25、R26、R27及びR28中、−Y−(Z)で表される基は1以上4以下である。
一般式(9)中、R31、R32、R33、R34、R35、R36、R37及びR38は、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アラルキル基又は−Y−Zで表される基を示す。但し、R31、R32、R33、R34、R35、R36、R37及びR38中、−Y−(Z)で表される基は、1以上4以下である。
前記−Y−(Z)で表される基中、Yは、アルキレン基、アダマンタン基、−C=C−、−C(=O)−、−O−及びメタンから水素3原子を除いた3価基から選択される1種又は2種以上を組み合わせてなる(m+1)価の連結基を表し、Zは、アクリロイル基、メタクリロイル基又はスチレン基であり、mは1又は2である。
【0026】
に係る発明は、
熱ラジカル発生剤及びその誘導体並びに光ラジカル発生剤及びその誘導体から選択される少なくとも1種を更に含有する、のいずれか1項に記載の有機電界発光素子。
【0027】
に係る発明は、
前記重合体中の、前記重合性基を有する正孔輸送化合物に由来する構造単位(C)と前記重合性基を有する電子輸送化合物に由来する構造単位(E)との質量比(C):(E)が10:1乃至1:20の範囲であるに記載の有機電界発光素子。
【0028】
10に係る発明は、
前記重合体中の、前記重合性基を有する正孔輸送化合物に由来する構造単位(C)と前記重合性基を有する電子輸送化合物に由来する構造単位(E)との質量比(C):(E)が1:1乃至1:15の範囲であるに記載の有機電界発光素子。
【0029】
11に係る発明は、
重合性基を有する正孔輸送化合物と重合性基を有する電子輸送化合物との重合体を含む前記有機化合物層の体積抵抗率が1×10Ω・cm以上1×1015Ω・cm以下である、10のいずれか1項に記載の有機電界発光素子。
【発明の効果】
【0030】
10、又は11に係る発明によれば、重合性基を有する正孔輸送化合物のみからなる重合体を含む場合に比べて、抵抗が低い有機化合物層を備える有機電界発光素子が提供される。
に係る発明によれば、重合性基を有する正孔輸送化合物のみからなる重合体と後述する化合物7、8又は9とを含む場合に比べて、抵抗変化が少ない有機化合物層を備えた有機電界発光素子が提供される。
に係る発明によれば、熱ラジカル発生剤及びその誘導体並びに光ラジカル発生剤及びその誘導体から選択される少なくとも1種を含有しない場合に比べて、機械的強度に優れた有機化合物層を備える有機電界発光素子が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本実施形態に係る有機電界発光素子の一例の模式的断面図である。
図2】本実施形態に係る有機電界発光素子の一例の模式的断面図である。
図3】本実施形態に係る有機電界発光素子の一例の模式的断面図である。
図4】本実施形態に係る有機電界発光素子の一例の模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下に、発明の実施形態を説明する。これらの説明及び実施例は実施形態を例示するものであり、発明の範囲を制限するものではない。
【0033】
本明細書において、層中又は組成物中の各成分の量について言及する場合、層中又は組成物中に各成分に該当する物質が複数種存在する場合には、特に断らない限り、層中又は組成物中に存在する当該複数種の物質の合計量を意味する。
【0034】
<有機電界発光素子>
本実施形態に係る有機電界発光素子は、少なくとも一方が透明である一対の電極と、該一対の電極に挟持された発光層を含む1つ又は複数の有機化合物層と、を有し、有機化合物層の少なくとも1つが、重合性基を有する正孔輸送化合物と重合性基を有する電子輸送化合物との重合体を含む。
【0035】
本発明者らは、重合性基を有する正孔輸送化合物と重合性基を有する電子輸送化合物とを共重合させて得られた重合体を用いることで、該重合体を含む有機化合物層の抵抗が低くなることを見出した。
重合性基を有する正孔輸送化合物と重合性基を有する電子輸送化合物とを共重合させて得られた重合体は、分子内に正孔輸送部位と電子輸送部位との両方が存在することとなるため、正孔輸送部位と電子輸送部位との間で部分的な電荷移動が起こり易く、その結果として、電荷を帯びた分子となる。そして、このような重合体を含む有機化合物層は、層中の電荷量が増加して抵抗が低下するものと推測される。
有機電界発光素子において有機化合物層の抵抗を低下させることは、電極からの電荷の注入性、電荷量の調整及び増加の観点から重要である。したがって、重合性基を有する正孔輸送化合物と重合性基を有する電子輸送化合物との重合体を含む有機化合物層は、有機電界発光素子を構成する有機化合物層として有用であるといえる。
【0036】
また、有機電界発光素子は、一対の電極に挟持された有機化合物層を含むが、この有機化合物層は、熱や他の層の形成時の溶剤等の外的要因により影響を受け、抵抗変化が起きてしまうことがある。
有機化合物層の抵抗変化は、1.有機化合物層中の成分(特に低分子化合物)が熱により層外へ移動してしまうこと(以下、「マイグレーション」と呼ぶ)、2.有機化合物層上に他の層を形成する際に使用される溶剤等によって、下層である有機化合物層中の成分が溶出してしまうこと、などにより起こると考えられる。
特に、重合性基を有する正孔輸送化合物の重合体を含むものの、重合性基を有しない電子輸送化合物が含まれている有機化合物層の場合、電子輸送化合物が移動し易い状態であるため、マイグレーションを起こしたり、溶剤に溶出したりして、抵抗変化が生じてしまうと考えられる。
本実施形態における有機化合物層は、重合性基を有する正孔輸送化合物と重合性基を有する電子輸送化合物との重合体を含む。このような形態の重合体を有機化合物層に含ませることで、電子輸送化合物のマイグレーションや溶出が抑えられ、抵抗変化が抑制されるものと考えられる。
【0037】
〔重合体含有有機化合物層〕
まず、本実施形態に係る有機電界発光素子を構成する重合性基を有する正孔輸送化合物と重合性基を有する電子輸送化合物との重合体を含む有機化合物層(以下、適宜、「重合体含有有機化合物層」と称する。)について、説明する。
重合体含有有機化合物層は、以下に説明する、重合性基を有する正孔輸送化合物及び重合性基を有する電子輸送化合物の他、必要に応じて、熱ラジカル発生剤及び光ラジカル発生剤からなるラジカル発生剤を用いることで得られる。
【0038】
(重合性基を有する正孔輸送化合物)
本実施形態における重合性基を有する正孔輸送化合物は、正孔輸送性能を有する骨格に、重合性基が直接又は連結基を介して結合した化合物であればよい。
重合性基を有する正孔輸送化合物としては、正孔輸送性能を有する骨格の種類、重合性基の種類、重合性基の数、連結基の有無等の異なる種々の化合物があるが、重合体含有有機化合物層に求められる性能に応じて、選択されればよい。
正孔輸送性能を有する骨格としては、正孔輸送性能を有する化合物に由来する骨格であればよく、具体的には、後述する正孔輸送性能を有する化合物に由来するサブユニットが挙げられる。
重合性基としては、ラジカル重合し得る官能基であることが好ましく、例えば、少なくとも炭素二重結合を含有する基を有する官能基が挙げられる。具体的には、重合性基としては、ビニル基、ビニルエーテル基、ビニルチオエーテル基、スチレン基、アクリロイル基、メタクリロイル基、及びそれらの誘導体から選択される少なくも1つを含有する基等が挙げられる。
連結基としては、上記の正孔輸送性能を有する骨格と重合性基とを連結しうる基であればよく、直鎖状、分岐状、環状、及びこれらを組み合わせた構造のいずれであってもよい。
【0039】
重合性基を有する正孔輸送化合物としては、正孔輸送性能、重合性能、耐溶剤性、塗布適性等の点から、下記一般式(1)で表される化合物が好ましい。
【0040】
下記一般式(1)で表される化合物は、Fで表される正孔輸送性サブユニットに、連結基Lを介して、連鎖重合性基であるスチレン基が結合した化合物である。
一般的に、正孔輸送化合物の正孔輸送性能は、正孔輸送化合物の架橋部位数(重合性基の数)を多くするほど、低下する傾向がある。これは、正孔輸送化合物の架橋部位数(重合性基の数)を多くすると、重合させた際に、正孔輸送性サブユニットに歪みが生じる故と考えられる。
これに対して、一般式(1)で表される化合物は、正孔輸送性サブユニットFに、連結基Lを介して、連鎖重合性基であるスチレン基が結合した構造であるため、連結基Lの存在により重合させた際に正孔輸送性サブユニットに歪みを発生させにくく、重合性能と正孔輸送性能との両立が可能となる。
また、一般式(1)で表される化合物の重合体は正孔輸送性能に優れることから、電子輸送部位との間での電荷移動がより起こり易く、その結果として、一般式(1)で表される化合物の重合体を含む有機化合物層は、層中の電荷量が増加して抵抗が低下するものと推測される。したがって、一般式(1)で表される化合物は、有機電界発光素子の重合体含有有機化合物層に用いる材料として有用である。
また、連鎖重合性基としてスチレン基を有する正孔輸送化合物は、連鎖重合性基として(メタ)アクリル基のみを有する正孔輸送化合物に比べて、連鎖重合性基の耐溶剤性及び化合物の塗布適性に優れると考えられる。本観点からも、一般式(1)で表される化合物は、重合体含有有機化合物層に用いる材料として有用である。
【0041】
【化7】
【0042】
一般式(1)中、Fは正孔輸送性サブユニットを表し、Lはアルキレン基、−C=C−、−C(=O)−、−N(R)−、−O−、−S−、メタンから水素3原子を除いた3価基、及びエチレンから水素3原子を除いた3価基から選択される1種の連結基又は2種以上を組み合わせてなる(n+1)価の連結基を表し、Rは水素原子、アルキル基、アリール基又はアラルキル基を表し、mは1以上6以下の整数を表し、nは1以上3以下の整数を表す。
なお、分子内に「L」が複数個存在する場合、「L」は互いに同じでもよく異なっていてもよい。
【0043】
Fで表される正孔輸送性サブユニットとしては、正孔輸送性能を有する化合物に由来するサブユニットであればよく、具体的には、フタロシアニン系化合物、ポルフィリン系化合物、アゾベンゼン系化合物、トリアリールアミン系化合物、ベンジジン系化合物、アリールアルカン系化合物、アリール置換エチレン系化合物、スチルベン系化合物、アントラセン系化合物、ヒドラゾン系化合物、キノン系化合物、フルオレノン系化合物等の正孔輸送性能を有する化合物に由来するサブユニットが挙げられる。中でも、電荷移動度、酸化安定性等に優れる、トリアリールアミン系化合物に由来するサブユニットが好ましい。
【0044】
Lで表される連結基は、2価、3価又は4価であり、2価又は3価がより好ましい。
【0045】
Lで表される2価の連結基としては、アルキレン基と、−C=C−、−C(=O)−、−N(R)−、−O−及び−S−から選択される少なくとも1種と、を組み合わせてなる2価の連結基が好ましく、アルキレン基としては、炭素数1以上6以下の直鎖アルキレン基が好ましく、炭素数1以上4以下の直鎖アルキレン基がより好ましい。
【0046】
Lで表される2価の連結基としては、以下の基が挙げられる。下記の連結基中、「*」はFと連結する部位であり、a、b及びcはメチレン基の繰り返し数を表す。
【0047】
*−(CH)a−O−(CH)b−
*−(CH)a−O−(CH)c−O−(CH)b−
*−(CH)a−C(=O)−O−(CH)b−
*−(CH)a−C(=O)−N(R)−(CH)b−
*−(CH)a−C(=O)−S−(CH)b−
*−(CH)a−N(R)−(CH)b−
*−(CH)a−S−(CH)b−
*−O−(CH)a−O−(CH)b−
*−CH=CH−(CH)a−O−(CH)b−
*−CH=CH−C(=O)−O−(CH)b−
【0048】
Lで表される3価の連結基としては、以下の基が挙げられる。下記の連結基中、「*」はFと連結する部位であり、a、b、c、d、e及びfはメチレン基の繰り返し数を表す。
【0049】
*−(CH)a−CH[−C(=O)−O−(CH)b−]
*−(CH)a−CH[−CH−O−(CH)b−]
*−CH=C[−C(=O)−O−(CH)b−]
*−CH=C[−(CH)c−O−(CH)b−]
*−(CH)a−CH[−C(=O)−N(R)−(CH)b−]
*−(CH)a−CH[−C(=O)−S−(CH)b−]
*−(CH)a−CH[−(CH)c−N(R)−(CH)b−]
*−(CH)a−CH[−(CH)c−S−(CH)b−]
*−O−(CH)d−CH[−(CH)c−O−(CH)b−]
*−(CH)f−O−(CH)d−CH[−(CH)c−O−(CH)b−]
【0050】
【化8】
【0051】
Lで表される4価の連結基としては、以下の基が挙げられる。下記の連結基中、「*」はFと連結する部位であり、b、c及びgはメチレン基の繰り返し数を表す。
【0052】
【化9】
【0053】
一般式(1)で表される化合物としては、正孔輸送性サブユニットとしてトリアリールアミン系化合物に由来するサブユニットを有する化合物が好ましく、具体的には、一般式(2)で表される化合物が好ましい。
【0054】
【化10】
【0055】
一般式(2)中、Ar乃至Arはそれぞれ独立に置換若しくは無置換のアリール基を表し、Arは置換若しくは無置換のアリール基又は置換若しくは無置換のアリーレン基を表す。kは0又は1を表し、c1乃至c5はそれぞれ独立に0以上2以下の整数を表し、但しc1乃至c5の合計は1以上である。Dは一般式(3)で表される基を表し、一般式(3)中、Lはアルキレン基、−C=C−、−C(=O)−、−N(R)−、−O−、−S−、メタンから水素3原子を除いた3価基、及びエチレンから水素3原子を除いた3価基から選択される1種の連結基又は2種以上を組み合わせてなる(n+1)価の連結基を表し、Rは水素原子、アルキル基、アリール基又はアラルキル基を表し、nは1以上3以下の整数を表す。
【0056】
一般式(2)において、c1乃至c5の合計が2以上である場合、分子内に複数個存在する「D」(つまり、一般式(3)で表される基)は、互いに同じでもよく異なっていてもよい。
【0057】
一般式(2)中、Ar乃至Arで表される置換若しくは無置換のアリール基は、互いに同じでもよく異なっていてもよい。
【0058】
Ar乃至Arにおける「D」(つまり、一般式(3)で表される基)以外の置換基としては、炭素数1以上4以下のアルキル基、炭素数1以上4以下のアルコキシ基、無置換のフェニル基、炭素数1以上4以下のアルキル基若しくはアルコキシ基で置換されたフェニル基、炭素数7以上10以下のアラルキル基、及びハロゲン原子等が挙げられる。
【0059】
Ar乃至Arとしては、構造式(11)乃至(17)のいずれかであることが好ましい。構造式(11)乃至(17)は、Ar乃至Arに連結される「−(D)C1」乃至「−(D)C4」を総括的に示した「−(D)」と共に示す。
【0060】
【化11】
【0061】
構造式(11)中、R11は、水素原子、炭素数1以上4以下のアルキル基、無置換のフェニル基、炭素数1以上4以下のアルキル基若しくはアルコキシ基で置換されたフェニル基、及び炭素数7以上10以下のアラルキル基から選択される1種を表す。
【0062】
構造式(12)中、R12及びR13はそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1以上4以下のアルキル基、炭素数1以上4以下のアルコキシ基、無置換のフェニル基、炭素数1以上4以下のアルキル基若しくはアルコキシ基で置換されたフェニル基、炭素数7以上10以下のアラルキル基、及びハロゲン原子から選択される1種を表す。
【0063】
構造式(13)中、R14は、炭素数1以上4以下のアルキル基、炭素数1以上4以下のアルコキシ基、無置換のフェニル基、炭素数1以上4以下のアルキル基若しくはアルコキシ基で置換されたフェニル基、炭素数7以上10以下のアラルキル基、及びハロゲン原子から選択される1種を表す。tは0以上4以下の整数を表す。
【0064】
構造式(17)中、Arは置換又は無置換のアリーレン基を表す。Arは、構造式(18)又は(19)であることが好ましい。
【0065】
【化12】
【0066】
構造式(18)及び構造式(19)中、R15は、炭素数1以上4以下のアルキル基、炭素数1以上4以下のアルコキシ基、無置換のフェニル基、炭素数1以上4以下のアルキル基若しくはアルコキシ基で置換されたフェニル基、炭素数7以上10以下のアラルキル基、及びハロゲン原子から選択される1種を表し、tは0以上4以下の整数を表す。
【0067】
構造式(17)中、Zは2価の連結基を表し、sは0又は1を表す。Zは、構造式(21)乃至(28)のいずれかであることが好ましい。
【0068】
【化13】
【0069】
構造式(21)中、sは1以上10以下の整数を表す。
【0070】
構造式(22)中、sは1以上10以下の整数を表す。
【0071】
構造式(27)及び(28)中、R21は、炭素数1以上4以下のアルキル基、炭素数1以上4以下のアルコキシ基、無置換のフェニル基、炭素数1以上4以下のアルキル基若しくはアルコキシ基で置換されたフェニル基、炭素数7以上10以下のアラルキル基、及びハロゲン原子から選択される1種を表し、tは0以上4以下の整数を表し、Wは2価の連結基を表す。Wとしては、構造式(31)乃至(39)のいずれかであることが好ましい。構造式(38)中、sは0以上3以下の整数を表す。
【0072】
【化14】
【0073】
一般式(2)中のArは、kが0のときは置換若しくは無置換のアリール基であり、kが1のときは、置換若しくは無置換のアリーレン基である。
【0074】
Arで表される置換若しくは無置換のアリール基としては、Ar乃至Arについて例示したアリール基が挙げられる。アリール基における置換基としては、炭素数1以上4以下のアルキル基、炭素数1以上4以下のアルコキシ基、無置換のフェニル基、炭素数1以上4以下のアルキル基若しくはアルコキシ基で置換されたフェニル基、炭素数7以上10以下のアラルキル基、及びハロゲン原子等が挙げられる。
【0075】
Arが置換若しくは無置換のアリーレン基の場合、C5は0であることが好ましく、即ち、Arには「D」(つまり、一般式(3)で表される基)が結合していないことが好ましい。Arで表される置換若しくは無置換のアリーレン基としては、構造式(41)乃至(46)が挙げられる。
【0076】
【化15】
【0077】
構造式(41)乃至(43)中、R41は、炭素数1以上4以下のアルキル基、炭素数1以上4以下のアルコキシ基、無置換のフェニル基、炭素数1以上4以下のアルキル基若しくはアルコキシ基で置換されたフェニル基、炭素数7以上10以下のアラルキル基、及びハロゲン原子から選択される1種を表し、xは0以上4以下の整数を表す。構造式(43)中、Yは2価の連結基を表し、Yは構造式(51)乃至(60)のいずれかであることが好ましい。構造式(51)中、yは1以上4以下の整数を表す。
【0078】
【化16】
【0079】
一般式(2)中のc1乃至c5はそれぞれ独立に0以上2以下の整数であり、但しc1乃至c5の合計は1以上である。つまり、一般式(2)で表される化合物は、一般式(3)で表される基を1個以上有する。分子内における一般式(3)で表される基の総数は、1以上4以下が好ましく、1以上3以下がより好ましく、2が更に好ましい。一般式(3)におけるL及びnは、一般式(1)におけるL及びnと同義である。
【0080】
一般式(3)で表される基としては、一般式(4)で表される基、一般式(5−1)で表される基、一般式(5−2)で表される基、一般式(6−1)で表される基、及び一般式(6−2)で表される基が、正孔輸送性、成膜性の観点から好ましい。
【0081】
【化17】
【0082】
一般式(4)中、Xはアルキレン基、−C=C−、−C(=O)−、−N(R)−、−O−及び−S−から選択される1種又は2種以上を組み合わせてなる2価の連結基を表し、Rは水素原子、アルキル基、アリール基又はアラルキル基を表し、pは0又は1を表す。Xとしては、アルキレン基と、−C=C−、−C(=O)−、−N(R)−、−O−及び−S−から選択される少なくとも1種と、を組み合わせてなる2価の連結基が好ましく、アルキレン基としては、炭素数1以上6以下の直鎖アルキレン基が好ましく、炭素数1以上4以下の直鎖アルキレン基がより好ましい。分子内に一般式(4)で表される基が複数個存在する場合、一般式(4)で表される基は互いに同じでもよく異なっていてもよい。
【0083】
一般式(4)で表される基としては、一般式(4−1)で表される基又は一般式(4−2)で表される基がより好ましい。
【0084】
【化18】
【0085】
一般式(4−1)及び一般式(4−2)中、qは0以上6以下の整数を表し、1以上4以下の整数が好ましい。
【0086】
【化19】
【0087】
一般式(5−1)、一般式(5−2)、一般式(6−1)及び一般式(6−2)中、Xはアルキレン基、−C=C−、−C(=O)−、−N(R)−、−O−及び−S−から選択される1種又は2種以上を組み合わせてなる2価の連結基を表し、Rは水素原子、アルキル基、アリール基又はアラルキル基を表し、pは0又は1を表す。分子内に一般式(5−1)、一般式(5−2)、一般式(6−1)又は一般式(6−2)表される基が複数個存在する場合、これら基は互いに同じでもよく異なっていてもよい。
【0088】
Xとしては、アルキレン基が好ましく、アルキレン基としては、炭素数1以上6以下の直鎖アルキレン基が好ましく、炭素数1以上3以下の直鎖アルキレン基がより好ましく、炭素数1又は2の直鎖アルキレン基が更に好ましい。
【0089】
以下に、重合性基を有する正孔輸送化合物(一般式(1)で表される化合物)の具体例を示す。
詳細には、以下に、一般式(1)中のFで表される正孔輸送性サブユニットの具体例と、Fに連結する基(即ち、一般式(3)で表される基)の具体例と、を例示し、これらの組み合わせを表1に示して、重合性基を有する正孔輸送化合物(一般式(1)で表される化合物)の具体例を示す。
一般式(1)で表される化合物は、これらにより何ら限定されるものではない。以下に示す構造式において、「*」は連結部位を意味する。
【0090】
【化20】
【0091】
【化21】
【0092】
【化22】
【0093】
【化23】
【0094】
【化24】
【0095】
【化25】
【0096】
【化26】
【0097】
【化27】
【0098】
【化28】
【0099】
【化29】
【0100】
【化30】
【0101】
【化31】
【0102】
【化32】
【0103】
【化33】
【0104】
【表1】
【0105】
例えば、CTM−1は、Fで表される正孔輸送性サブユニット(表1中「母核」と記載)が(1)−1であり、一般式(3)で表される基(表1中「官能基」と記載)が(III)−1であり、両者が「*」で連結した化合物であって、下記の構造を有する。
【0106】
【化34】
【0107】
一般式(1)で表される化合物の合成方法としては、特開2013−43841号公報の[0126]、特開2013−60422号公報の[0070]、特開2013−60572号公報の[0099]〜[0101]等に記載の合成方法が挙げられる。
【0108】
本実施形態における重合体含有有機化合物層中の重合体は、重合性基を有する正孔輸送化合物を1種単独で使用して得られたものであってもよいし、2種以上を使用して得られたものであってもよい。
【0109】
(重合性基を有する電子輸送化合物)
本実施形態における重合性基を有する電子輸送化合物は、電子輸送性能を有する骨格に、重合性基が直接又は連結基を介して結合した化合物であればよい。
重合性基を有する電子輸送化合物としては、電子輸送性能を有する骨格の種類、重合性基の種類、重合性基の数、連結基の有無等の異なる種々の化合物があるが、重合体含有有機化合物層に求められる性能に応じて、選択されればよい。
電子輸送性能を有する骨格としては、電子輸送性能を有する化合物に由来する骨格であればよく、具体的には、p−ベンゾキノン、クロラニル、ブロマニル、アントラキノン等のキノン系化合物;テトラシアノキノジメタン系化合物;2,4,7−トリニトロフルオレノン等のフルオレノン化合物;キサントン系化合物;ベンゾフェノン系化合物;シアノビニル系化合物;エチレン系化合物等に由来する骨格が挙げられる。
重合性基としては、ラジカル重合し得る官能基であることが好ましく、例えば、少なくとも炭素二重結合を含有する基を有する官能基が挙げられる。具体的には、重合性基としては、ビニル基、ビニルエーテル基、ビニルチオエーテル基、スチレン基、アクリロイル基、メタクリロイル基、及びそれらの誘導体から選択される少なくも1つを含有する基等が挙げられる。
連結基としては、上記の電子輸送性能を有する骨格と重合性基とを連結しうる基であればよく、直鎖状、分岐状、環状、及びこれらを組み合わせた構造のいずれであってもよい。
【0110】
重合性基を有する電子輸送化合物としては、電子輸送性能、重合性能、耐溶剤性、塗布適性等の点から、下記一般式(7)で表される化合物、下記一般式(8)で表される化合物、及び下記一般式(9)で表される化合物からなる群より選択されることが好ましい。
【0111】
【化35】
【0112】
一般式(7)中、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17及びR18は、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アラルキル基又は−Y−Zで表される基を示す。但し、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17及びR18中、−Y−(Z)で表される基は1以上4以下である。
一般式(8)中、R21、R22、R23、R24、R25、R26、R27及びR28は、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アラルキル基又は−Y−Zで表される基を示す。但し、R21、R22、R23、R24、R25、R26、R27及びR28中、−Y−(Z)で表される基は1以上4以下である。
一般式(9)中、R31、R32、R33、R34、R35、R36、R37及びR38は、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アラルキル基又は−Y−Zで表される基を示す。但し、R31、R32、R33、R34、R35、R36、R37及びR38中、−Y−(Z)で表される基は、1以上4以下である。
前記−Y−(Z)で表される基中、Yは、アルキレン基、アダマンタン基、−C=C−、−C(=O)−、−O−及びメタンから水素3原子を除いた3価基から選択される1種又は2種以上を組み合わせてなる(m+1)価の連結基を表し、Zは、アクリロイル基、メタクリロイル基又はスチレン基であり、mは1又は2である。
【0113】
一般式(7)〜(9)において、アルキル基、アルコキシ基、アリール基及びアラルキル基の好ましい態様を以下に示す。
アルキル基としては、炭素数1以上4以下のアルキル基が好ましく、また、直鎖状、分岐状のいずれであってもよいが、合成容易性、塗布適性の点から、直鎖状のアルキル基が好ましい。
アルコキシ基としては、炭素数1以上4以下のアルコキシ基が好ましい。
アリール基としては、無置換のフェニル基、又は炭素数1以上4以下のアルキル基で置換されたフェニル基が好ましい。
アラルキル基としては、炭素数7以上10以下のアラルキル基が好ましい。
【0114】
一般式(7)〜(9)において、−Y−(Z)で表される基の好ましい態様を以下に示す。
Yで表される(m+1)価の連結基としては、合成容易性、耐溶剤性、成膜性等の点から、−C(=O)−及び−O−を含むことが好ましい。
また、合成容易性、成膜性等の点からは、Yで表される(m+1)価の連結基に、直鎖のアルキレン基を含むことが好ましい。
Yで表される(m+1)価の連結基には、合成容易性、耐溶剤性、成膜性等の点から、アダマンタン基が含まれることが好ましい。
Yで表される(m+1)価の連結基は、置換基を有していてもよく、導入可能な置換基としては、置換又は無置換のアルキル基、フェニル基、更には、置換若しくは無置換のアルキル基又はフェニル基と−C(=O)−、−N(R)−、−O−、及び−S−から選択される1種又は2種以上とを組み合わせてなる基等が挙げられる。
【0115】
Zで表される重合性基としては、重合性能、耐溶剤性、成膜性等の点からは、スチレン基、アクリロイル基、又はメタクリロイル基が好ましい。
また、成膜性、耐溶剤性等の点からは、Zで表される重合性基は、スチレン基が好ましい。
mは、1又は2であるが、耐溶剤性の点からは、1が好ましい。
【0116】
一般式(7)で表される化合物としては、重合性能、耐溶剤性、塗布適性等の点から、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17及びR18のうち、1つが−Y−(Z)で表される基であり、残りが水素原子又は炭素数1以上3以下のアルキル基であることが好ましく、中でも、耐溶剤性の点から、炭素数1以上3以下のアルキル基が1つ以上4つ以下で含まれることがより好ましい。
【0117】
一般式(8)で表される化合物としては、重合性能、耐溶剤性、塗布適性等の点から、R21、R22、R23、R24、R25、R26、R27及びR28のうち、1つが−Y−(Z)で表される基であり、残りが水素原子又は炭素数1以上3以下のアルキル基であることが好ましく、中でも、耐溶剤性の点から、炭素数1以上3以下のアルキル基が1つ以上4つ以下で含まれることがより好ましい。
【0118】
一般式(9)で表される化合物としては、重合性能、耐溶剤性、塗布適性等の点から、R31、R32、R33、R34、R35、R36、R37及びR38のうち、1つが−Y−(Z)で表される基であり、残りが水素原子又は炭素数1以上3以下のアルキル基であることが好ましく、中でも、耐溶剤性の点から、炭素数1以上3以下のアルキル基が1つ以上4つ以下で含まれることがより好ましい。
【0119】
以下に、重合性基を有する電子輸送化合物(一般式(7)で表される化合物、一般式(8)で表される化合物、及び一般式(9)で表される化合物)の具体例を示す。
詳細には、以下に、一般式(7)で表される化合物の母核の具体例と、一般式(8)で表される化合物の母核の具体例と、一般式(9)で表される化合物の母核の具体例と、−Y−(Z)で表される官能基の具体例と、を例示し、これらの組み合わせを表2に示して、重合性基を有する電子輸送化合物(一般式(7)で表される化合物、一般式(8)で表される化合物、及び一般式(9)で表される化合物)の具体例を示す。
一般式(7)で表される化合物、一般式(8)で表される化合物、及び一般式(9)で表される化合物は、これらにより何ら限定されるものではない。
以下に示す構造式において、「*」は連結部位を意味し、「C」はn−プロピル基を意味する。
【0120】
【化36】
【0121】
【化37】
【0122】
【化38】
【0123】
【化39】
【0124】
【表2】
【0125】
一般式(7)で表される化合物、一般式(8)で表される化合物、及び一般式(9)で表される化合物の合成方法としては、例えば、以下の方法が挙げられる。
【0126】
一般式(7)で表される化合物の合成方法の一例としては、以下のスキームが挙げられる。
【0127】
【化40】
【0128】
三つ口フラスコに、9-Fluorenone-4-carboxylic Acid(上記構造、東京化成工業社製)12.3g(0.055mol)及びマロン酸ニトリル7.07g(0.107mol)をトルエン300mlに溶解し、ピペリジン0.5mlを加え、窒素気流下、110℃で5時間攪拌する。室温まで、放冷後、ヘキサン500mlを加え、析出した沈殿を濾取し、カラムクロマトグラフィー(吸着剤:シリカゲル、溶剤:酢酸エチル/ヘキサン=3/7)にて精製する。
酢酸エチル/ヘキサンより再結晶し、中間体8.0gを得る。
続いて、この中間体に対し、塩化チオニル等を用いて、カルボキシ基の塩素化を行った後、目的とする「−Y−(Z)で表される官能基」を導入するための、重合性基及びヒドロキシ基を有する化合物を反応させる。
【0129】
一般式(8)で表される化合物の合成方法の一例としては、以下のスキームが挙げられる。
即ち、9-Fluorenone-4-carboxylic Acid(下記構造、東京化成工業社製)を用い、これに対し、塩化チオニル等を用いて、カルボキシ基の塩素化を行った後、目的とする「−Y−(Z)で表される官能基」を導入するための、重合性基及びヒドロキシ基を有する化合物を反応させる。
【0130】
【化41】
【0131】
一般式(9)で表される化合物の合成方法の一例としては、以下のスキームが挙げられる。
即ち、Anthraquinone-2-carbonyl Chloride(下記構造、東京化成工業社製)を用い、これに対し、目的とする「−Y−(Z)で表される官能基」を導入するための、重合性基及びヒドロキシ基を有する化合物を反応させる。
【0132】
【化42】
【0133】
本実施形態における重合体含有有機化合物層中の重合体は、重合性基を有する電子輸送化合物を1種単独で使用して得られたものであってもよいし、2種以上を使用して得られたものであってもよい。
【0134】
(熱ラジカル発生剤、光ラジカル発生剤)
本実施形態における重合体含有有機化合物層は、熱ラジカル発生剤及びその誘導体並びに光ラジカル発生剤及びその誘導体から選択される少なくとも1種を更に含有していてもよい。
ここで、「熱ラジカル発生剤の誘導体」とは、熱ラジカル発生剤がラジカルを発生した後の生成物、又は熱ラジカル発生剤が重合体の末端に結合したものを意味する。
また、「光ラジカル発生剤の誘導体」とは、光ラジカル発生剤がラジカルを発生した後の生成物、又は光ラジカル発生剤が重合体の末端に結合したものを意味する。
重合性基を有する正孔輸送化合物と重合性基を有する電子輸送化合物との重合体を、熱ラジカル発生剤及び光ラジカル発生剤からなる群より選択される少なくとも1種を用いて得ることにより、重合体含有有機化合物層中に、熱ラジカル発生剤及びその誘導体並びに光ラジカル発生剤及びその誘導体から選択される少なくとも1種が導入される。
このような重合体含有有機化合物層は、機械的強度に優れることから、積層化される際に好適である。
【0135】
熱ラジカル発生剤としては、例えば、アゾ化合物、有機過酸化物が挙げられる。
【0136】
熱ラジカル発生剤の市販品としては、V−30(10時間半減期温度:104℃)、V−40(同:88℃)、V−59(同:67℃)、V−601(同:66℃)、V−65(同:51℃)、V−70(同:30℃)、VF−096(同:96℃)、Vam−110(同:111℃)、Vam−111(同:111℃)(以上、和光純薬工業製)、OTAZO−15(同:61℃)、OTAZO−30、AIBN(同:65℃)、AMBN(同:67℃)、ADVN(同:52℃)、ACVA(同:68℃)(以上、大塚化学社製)等のアゾ系開始剤;パーテトラA、パーヘキサHC、パーヘキサC、パーヘキサV、パーヘキサ22、パーヘキサMC、パーブチルH、パークミルH、パークミルP、パーメンタH、パーオクタH、パーブチルC、パーブチルD、パーヘキシルD、パーロイルIB、パーロイル355、パーロイルL、パーロイルSA、ナイパーBW、ナイパーBMT−K40/M、パーロイルIPP、パーロイルNPP、パーロイルTCP、パーロイルOPP、パーロイルSBP、パークミルND、パーオクタND、パーヘキシルND、パーブチルND、パーブチルNHP、パーヘキシルPV、パーブチルPV、パーヘキサ250、パーオクタO、パーヘキシルO、パーブチルO、パーブチルL、パーブチル355、パーヘキシルI、パーブチルI、パーブチルE、パーヘキサ25Z、パーブチルA、パーへヘキシルZ、パーブチルZT、パーブチルZ(以上、日油化学社製)、カヤケタールAM−C55、トリゴノックス36−C75、ラウロックス、パーカドックスL−W75、パーカドックスCH−50L、トリゴノックスTMBH、カヤクメンH、カヤブチルH−70、ペルカドックスBC−FF、カヤヘキサAD、パーカドックス14、カヤブチルC、カヤブチルD、カヤヘキサYD−E85、パーカドックス12−XL25、パーカドックス12−EB20、トリゴノックス22−N70、トリゴノックス22−70E、トリゴノックスD−T50、トリゴノックス423−C70、カヤエステルCND−C70、カヤエステルCND−W50、トリゴノックス23−C70、トリゴノックス23−W50N、トリゴノックス257−C70、カヤエステルP−70、カヤエステルTMPO−70、トリゴノックス121、カヤエステルO、カヤエステルHTP−65W、カヤエステルAN、トリゴノックス42、トリゴノックスF−C50、カヤブチルB、カヤカルボンEH−C70、カヤカルボンEH−W60、カヤカルボンI−20、カヤカルボンBIC−75、トリゴノックス117、カヤレン6−70(以上、化薬アクゾ社製)、ルペロックスLP(同:64℃)、ルペロックス610(同:37℃)、ルペロックス188(同:38℃)、ルペロックス844(同:44℃)、ルペロックス259(同:46℃)、ルペロックス10(同:48℃)、ルペロックス701(同:53℃)、ルペロックス11(同:58℃)、ルペロックス26(同:77℃)、ルペロックス80(同:82℃)、ルペロックス7(同:102℃)、ルペロックス270(同:102℃)、ルペロックスP(同:104℃)、ルペロックス546(同:46℃)、ルペロックス554(同:55℃)、ルペロックス575(同:75℃)、ルペロックスTANPO(同:96℃)、ルペロックス555(同:100℃)、ルペロックス570(同:96℃)、ルペロックスTAP(同:100℃)、ルペロックスTBIC(同:99℃)、ルペロックスTBEC(同:100℃)、ルペロックスJW(同:100℃)、ルペロックスTAIC(同:96℃)、ルペロックスTAEC(同:99℃)、ルペロックスDC(同:117℃)、ルペロックス101(同:120℃)、ルペロックスF(同:116℃)、ルペロックスDI(同:129℃)、ルペロックス130(同:131℃)、ルペロックス220(同:107℃)、ルペロックス230(同:109℃)、ルペロックス233(同:114℃)、ルペロックス531(同:93℃)(以上、アルケマ吉富社製)などが挙げられる。
【0137】
光ラジカル発生剤としては、例えば、芳香族ケトン類、アシルフォスフィンオキサイド化合物、芳香族オニウム塩、有機過酸化物、チオ化合物(チオキサントン化合物、チオフェニル基含有化合物等)、ヘキサアリールビイミダゾール化合物、ケトオキシムエステル化合物、ボレート化合物、アジニウム化合物、メタロセン化合物、活性エステル化合物、炭素ハロゲン結合を有する化合物、アルキルアミン化合物等が挙げられる。
【0138】
光ラジカル発生剤として具体例には、例えば、アセトフェノン、アセトフェノンベンジルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、キサントン、フルオレノン、べンズアルデヒド、フルオレン、アントラキノン、トリフェニルアミン、カルバゾール、3−メチルアセトフェノン、4−クロロベンゾフェノン、4,4'−ジメトキシベンゾフェノン、4,4'−ジアミノベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、チオキサントン、ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノ−プロパン−1−オン、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド、2,4−ジエチルチオキサントン、及びビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド等が挙げられる。
【0139】
本実施形態における重合体含有有機化合物層は、更に、発光材料、色素化合物、正孔輸送材料、正孔注入材料、電子輸送材料及び電子注入材料から選択される少なくとも1種を含有していてもよい。
これらの材料の具体例については後述する。
【0140】
(重合体含有有機化合物層の形成)
本実施形態における重合体含有有機化合物層は、重合性基を有する正孔輸送化合物と重合性基を有する電子輸送化合物との重合体を含めばよいが、より抵抗が低い有機電界発光素子を得るためには、重合性基を有する正孔輸送化合物と重合性基を有する電子輸送化合物とを含む組成物を硬化した硬化膜であることが好ましい。
なお、重合体含有有機化合物層(硬化膜)中には、重合性基を有する正孔輸送化合物、重合性基を有する電子輸送化合物が、未反応の状態で含まれていてもよい。
【0141】
また、重合性基を有する正孔輸送化合物と重合性基を有する電子輸送化合物とを含む組成物において、重合性基を有する正孔輸送化合物と重合性基を有する電子輸送化合物との含有比は、重合体含有有機化合物層(硬化膜)に求められる、抵抗値、正孔輸送性能、電子輸送性能、及びそれらのバランス、更には、重合性能等に応じて決定されればよい。
例えば、重合体含有有機化合物層を、正孔輸送性能を有する層とする場合には、重合性基を有する正孔輸送化合物を、重合性基を有する電子輸送化合物よりも多く含む組成物を用いて、層を形成すればよい。
また、重合体含有有機化合物層を、電子輸送性能を有する層とする場合には、重合性基を有する電子輸送化合物を、重合性基を有する正孔輸送化合物よりも多く含む組成物を用いて、層を形成すればよい。
【0142】
重合性基を有する正孔輸送化合物や重合性基を有する電子輸送化合物の入手容易性の他、耐溶剤性、成膜性、電荷注入性の点から、重合体含有有機化合物層(硬化膜)は正孔輸送性能を有する層とすることが好ましい。
このように、正孔輸送性能を有する層とする場合、重合性基を有する電子輸送化合物よりも重合性基を有する正孔輸送化合物を多く含む組成物を用いればよい。
具体的には、例えば、重合性基を有する電子輸送化合物を、重合性基を有する正孔輸送化合物に対して、0.1質量%以上20質量%以下(好ましくは1質量%以上15質量%以下、より好ましくは2質量%以上10質量%以下)で用いた組成物を用いることで、有機電界発光素子を構成する正孔輸送性能を有する層が得られる。
【0143】
本実施形態において、重合体含有有機化合物層が正孔輸送性能を有する層である場合、かかる層に含まれる重合体は、重合性基を有する正孔輸送化合物に由来する構造単位(C)と重合性基を有する電子輸送化合物に由来する構造単位(E)との質量比(C):(E)が10:1乃至1:20の範囲であることが好ましく、1:1乃至1:15の範囲であることがより好ましく、1:2乃至1:10の範囲が更に好ましい。
構造単位(C)及び構造単位(E)は、重合性基を有する正孔輸送化合物及び重合性基を有する電子輸送化合物の量比を変えることで調整される。
【0144】
上記の硬化膜は、重合性基を有する正孔輸送化合物と重合性基を有する電子輸送化合物とを含む組成物を、熱、光、電子線などのエネルギーにより硬化させることで得られる。
硬化の際、重合性基を有する正孔輸送化合物と重合性基を有する電子輸送化合物とを含む組成物に、使用するエネルギーに応じて、熱ラジカル発生剤や光ラジカル発生剤を用いることが、硬化性が上がり、機械的強度に優れる硬化膜が得られる点から、好ましい。
硬化膜の電気特性、機械的強度等の特性のバランスを取るためには、硬化膜を得るためには熱硬化が望ましい。
【0145】
熱ラジカル発生剤の使用量は、重合性基を有する正孔輸送化合物及び重合性基を有する電子輸送化合物の量に応じて、適宜、決定されればよい。
例えば、重合性基を有する正孔輸送化合物及び重合性基を有する電子輸送化合物を含む組成物において、重合性基を有する正孔輸送化合物及び重合性基を有する電子輸送化合物の総量:100質量部に対して、0.1質量部以上25質量部以下が望ましく、1質量部以上20質量部以下がより望ましく、5質量部以上18質量部以下が更に望ましい。
【0146】
光ラジカル発生剤の使用量は、重合性基を有する正孔輸送化合物及び重合性基を有する電子輸送化合物の量に応じて、適宜、決定されればよい。
例えば、重合性基を有する正孔輸送化合物及び重合性基を有する電子輸送化合物を含む組成物において、重合性基を有する正孔輸送化合物及び重合性基を有する電子輸送化合物の総量:100質量部に対して、0.001質量部以上10質量部以下が望ましく、0.01質量部以上5質量部以下がより望ましく、0.1質量部以上3質量部以下が更に望ましい。
【0147】
本実施形態に係る重合体含有有機化合物層中の、重合性基を有する正孔輸送化合物と重合性基を有する電子輸送化合物との重合体の含有量は、用途に応じて設定されればよく、一般的には、全固形分の50質量%以上99質量%以下の範囲である。
【0148】
本実施形態に係る重合体含有有機化合物層は、体積抵抗率が1×10Ω・cm以上1×1015Ω・cm以下であることが好ましく、1×10Ω・cm以上1×1013Ω・cm以下であることがより好ましく、1×10Ω・cm以上1×1010Ω・cm以下であることが更に好ましい。
【0149】
〔有機電界発光素子〕
有機電界発光素子は、少なくとも一方が透明である一対の電極と、該一対の電極に挟持された、発光層を含む1つ又は複数の有機化合物層とから構成されるデバイスである。
本実施形態に係る有機電界発光素子は、有機化合物層の少なくとも1つが、前述した重合体含有有機化合物層である。
【0150】
本実施形態に係る有機電界発光素子において、有機化合物層が単層の場合は、この有機化合物層が正孔輸送性能を有する発光層であり、この正孔輸送性能を有する発光層が本実施形態における前述した重合体含有有機化合物層となる。
【0151】
有機電界発光素子において、有機化合物層が複数層の場合(即ち、各層が異なる機能を有する機能分離型の場合)は、少なくともいずれか1層が発光層であり、例えば、下記の層構成(1)〜(3)が挙げられる。層構成(1)〜(3)において、本実施形態に係る有機電界発光素子では、少なくとも1層が、前述した重合体含有有機化合物層となる。
【0152】
層構成(1):正孔輸送層と、発光層と、を有する機能分離型の層構成。本構成においては、正孔輸送層及び発光層の少なくとも一方が重合体含有有機化合物層であればよく、正孔輸送層が重合体含有有機化合物層であることが好ましい。
【0153】
層構成(2):正孔輸送層と、発光層と、電子輸送層と、を有する機能分離型の層構成。本構成においては、正孔輸送層、発光層及び電子輸送層の少なくとも1層が重合体含有有機化合物層であればよく、正孔輸送層が重合体含有有機化合物層であることが好ましい。
【0154】
層構成(3):発光層と、電子輸送層と、を有する機能分離型の層構成。本構成においては、発光層及び電子輸送層の少なくとも一方が重合体含有有機化合物層であればよく、発光層が重合体含有有機化合物層であることが好ましい。
【0155】
以下、図面を参照しつつ、本実施形態に係る有機電界発光素子を説明するが、本実施形態はこれに限定されるわけではない、
【0156】
図1乃至図4は、本実施形態に係る有機電界発光素子の層構成を説明するための模式的断面図であって、図1図2図3は、有機化合物層が複数層からなる場合の一例であり、図4は、有機化合物層が単層からなる場合の一例である。図1乃至図4において、同様の機能を有する層には同じ符号を付して説明する。
【0157】
図1は、前記の層構成(1)を示す。
図1に示す有機電界発光素子は、透明絶縁体基板1上に、透明電極2、正孔輸送層3、発光層4、背面電極7がこの順に積層された素子である。透明電極2と正孔輸送層3との間には、正孔注入層が配置されていてもよい。図1に示す形態例においては、正孔輸送層3を、本実施形態における重合体含有有機化合物層とすることが好ましく、更に、正孔注入層が配置されていれば、この正孔注入層を本実施形態における重合体含有有機化合物層としてもよい。
【0158】
図2は、前記の層構成(2)を示す。
図2に示す有機電界発光素子は、透明絶縁体基板1上に、透明電極2、正孔輸送層3、発光層4、電子輸送層5、背面電極7がこの順に積層された素子である。透明電極2と正孔輸送層3との間には、正孔注入層が配置されていてもよい。電子輸送層5と背面電極7との間には、電子注入層が配置されていてもよい。図2に示す形態例においては、正孔輸送層3を、本実施形態における重合体含有有機化合物層とすることが好ましく、更に、正孔注入層が配置されていれば、この正孔注入層を本実施形態における重合体含有有機化合物層としてもよい。
【0159】
図3は、前記の層構成(3)を示す。
図3に示す有機電界発光素子は、透明絶縁体基板1上に、透明電極2、発光層6、電子輸送層5、背面電極7がこの順に積層された素子である。電子輸送層5と背面電極7との間には、電子注入層が配置されていてもよい。図3に示す形態例においては、発光層6を、本実施形態における重合体含有有機化合物層とすることが好ましい。この場合、本実施形態における重合体含有有機化合物層には、発光材料を少なくとも1種含有させる。
【0160】
図4は、単層型の層構成を示す。図4に示す有機電界発光素子は、透明絶縁体基板1上に、透明電極2、正孔輸送性能を有する発光層6、背面電極7がこの順に積層された素子である。図4に示す形態例においては、発光層6を、本実施形態における重合体含有有機化合物層とする。この場合、本実施形態における重合体含有有機化合物層には、発光材料を少なくとも1種含有させる。
【0161】
図1乃至図4に示す各有機電界発光素子において、背面電極7上には、水分や酸素による有機電界発光素子の劣化を防ぐ目的で、保護層を設けてもよい。
【0162】
トップエミッション構造とする場合、又は、2つの電極を共に透明電極とする場合は、図1乃至図4に示される層構成を複数段積み重ねた構造とすることも可能である。
【0163】
以下、図1乃至図4における各層をより詳細に説明する。
【0164】
透明絶縁体基板1について透明とは、可視領域の光の透過率が10%以上であることを意味し、透過率が75%以上であることが好ましい。
透明絶縁体基板1としては、例えば、ガラス板、石英板、金属箔、樹脂製フィルムが用いられる。樹脂製フィルムの材料としては、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等のメタクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂が挙げられる。
透明絶縁体基板1は、透水性や透ガス性を抑える目的で、表面処理を行なってもよく、積層構造にしてもよい。
【0165】
透明電極2は、透明絶縁体基板1と同様に発光を取り出すため透明であって、かつ正孔の注入を行うため仕事関数の大きな電極が好ましく、仕事関数が4eV以上の電極が好ましい。
【0166】
透明電極2について透明とは、可視領域の光の透過率が10%以上であることを意味し、透過率が75%以上であることが好ましい。
透明電極2の材料としては、酸化スズインジウム(ITO)、酸化スズ、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化インジウム亜鉛等の金属酸化物;アルミニウム、ニッケル、金、銀、白金、パラジウム等の金属;ヨウ化銅等のハロゲン化金属;カーボンブラック、ポリ(3−メチルチオフェン)、ポリピロール、ポリアニリン等の導電性高分子;が挙げられる。
透明電極2のシート抵抗は、低いほど望ましく、数百Ω/□以下が好ましく、100Ω/□以下がより好ましい。
【0167】
有機化合物層(図1乃至図4において、符号3乃至6で示される層)は、その機能に応じて、正孔輸送材料、正孔注入材料、電子輸送材料、電子注入材料、及び発光材料から選択される材料を含む。
有機化合物層が本実施形態における重合体含有有機化合物層である場合には、これら材料と共に、重合性基を有する正孔輸送化合物及び重合性基を有する電子輸送化合物を混合した組成物を用いて層形成してもよい。
【0168】
正孔輸送材料としては、テトラフェニレンジアミン誘導体、トリフェニルアミン誘導体、カルバゾール誘導体、スチルベン誘導体、アリールヒドラゾン誘導体、ポルフィリン系化合物が挙げられ、テトラフェニレンジアミン誘導体、スピロフルオレン誘導体、トリフェニルアミン誘導体が挙げられる。
【0169】
正孔注入材料としては、フェニレンジアミン誘導体、フタロシアニン誘導体、インダンスレン誘導体、ポリアルキレンジオキシチオフェン誘導体等が挙げられ、これらには、ルイス酸、スルホン酸等の有機酸、塩化鉄等の無機酸を混合してもよい。
【0170】
電子輸送材料としては、オキサジアゾール誘導体、ニトロ置換フルオレノン誘導体、ジフェノキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、シロール誘導体、キレート型有機金属錯体、多核又は縮合芳香環化合物、ペリレン誘導体、トリアゾール誘導体、フルオレニリデンメタン誘導体等が挙げられる。
【0171】
電子注入材料としては、Li、Ca、Sr等の金属やLiF、MgF等の金属フッ化物、MgO、Al、LiO等の金属酸化物が挙げられる。
【0172】
発光材料としては、固体状態で高い発光量子効率を示す化合物が望ましい。発光材料は、低分子化合物及び高分子化合物のいずれでもよい。
有機低分子化合物としては、キレート型有機金属錯体、多核又は縮合芳香環化合物、ペリレン誘導体、クマリン誘導体、スチリルアリーレン誘導体、シロール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサチアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体が挙げられる。
有機高分子化合物としては、ポリパラフェニレン誘導体、ポリパラフェニレンビニレン誘導体、ポリチオフェン誘導体、ポリアセチレン誘導体が挙げられる。
【0173】
発光材料の具体例として、下記例示化合物(VI−1)乃至(VI−17)が挙げられる。
なお、下記例示化合物(VI−1)乃至(VI−17)は、電子輸送材料として用いることもできる。
【0174】
【化43】
【0175】
【化44】
【0176】
【化45】
【0177】
【化46】
【0178】
例示化合物(VI−13)乃至(VI−17)中、n及びgはそれぞれ独立に1以上の整数であり、Vは2価の連結基である。Vとしては、例えば、下記の2価の基が挙げられる。
下記の2価の基において、gは1以上の整数を表し、hは0以上5以下の整数を表す。
【0179】
【化47】
【0180】
有機電界発光素子の耐久性の向上又は発光効率の向上を目的に、発光材料の中に、発光材料とは異なる色素化合物をゲスト材料としてドーピングしてもよい。
色素化合物のドーピング量は、ホスト100質量部に対して、0.001質量部以上40質量部以下が好ましく、0.01質量部以上10質量部以下がより好ましい。
【0181】
ドーピング用の色素化合物としては、クマリン誘導体、DCM誘導体、キナクリドン誘導体、ペリミドン誘導体、ベンゾピラン誘導体、ローダミン誘導体、ベンゾチオキサンテン誘導体、ルブレン誘導体、ポルフィリン誘導体;ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、レニウム、オスニウム、イリジウム、白金、及び金等の金属錯体化合物;などが挙げられる。
ドーピング用の色素化合物の具体例として、例示化合物(VII−1)〜(VII−6)が挙げられる。
【0182】
【化48】
【0183】
各有機化合物層は、結着樹脂を含有していてもよい。
結着樹脂としては、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、セルロース樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリススチレン樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、スチレンブタジエン共重合体、塩化ビニルデン−アクリロニトリル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体、シリコン樹脂、ポリ−N−ビニルカルバゾール樹脂、ポリシラン樹脂、ポリチオフェン、ポリピロール等の導電性樹脂が挙げられる。
各有機化合物層は、必要に応じて、公知の酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤等を含有していてもよい。
【0184】
背面電極7の材料としては、真空蒸着可能で、電子注入を行なうため仕事関数の小さな材料が好ましく、金属、金属酸化物、金属フッ化物が好ましい。
金属としては、マグネシウム、アルミニウム、金、銀、インジウム、リチウム、カルシウム及びこれらの合金が挙げられる。
金属酸化物としては、酸化リチウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化スズインジウム、酸化スズ、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化インジウム亜鉛が挙げられる。
金属フッ化物としては、フッ化リチウム、フッ化マグネシウム、フッ化ストロンチウム、フッ化カルシウム、フッ化アルミニウムが挙げられる。
【0185】
背面電極7上には、保護層を設けてもよい。
保護層の材料としては、インジウム、スズ、鉛、金、銀、銅、アルミニウム等の金属;酸化マグネシウム、二酸化ケイ素、酸化チタン等の金属酸化物;ポリエチレン樹脂、ポリウレア樹脂、ポリイミド樹脂等の樹脂;が挙げられる。
【0186】
透明電極2、各有機化合物層、背面電極7、及び保護層の厚さは、一般的に、0.001μm以上10μm以下であり、0.001μm以上5μm以下が好ましい。
【0187】
図1乃至図4に示される有機電界発光素子は、透明絶縁体基板1上に、透明電極2、各有機化合物層、及び背面電極7を順次形成することで作製される。
透明電極2、各有機化合物層、及び背面電極7は、例えば、真空蒸着法、スパッタ法、塗布法等により形成できる。
塗布法は、材料を適切な溶媒に溶解又は分散した塗布液を透明電極2上に塗布し、塗布膜を乾燥させる成膜法である。
塗布液の塗布方法としては、スピンコーティング法、ダイコート法、インクジェット法、キャスト法、ディップ法等が挙げられる。
【0188】
有機化合物層における各材料の含有状態は、分子が分散した状態(分子分散状態)でもよく、粒子を形成して分散した状態(粒子分散状態)でもよい。
塗布液を用いた成膜法において分子分散状態にするためには、塗布液の溶媒を、各材料の分散性及び溶解性を考慮して選択する。
塗布液を用いた成膜法において粒子分散状態にするためには、ボールミル、サンドミル、ペイントシェイカー、アトライター、ホモジナイザー、超音波のいずれかを利用して塗布液を調製する。
【0189】
本実施形態に係る有機電界発光素子を、マトリクス状又はセグメント状に配置して画像表示媒体が構成される。
有機電界発光素子をマトリクス状に配置する場合、電極のみをマトリクス状に配置する形態であってもよいし、電極及び有機化合物層をマトリクス状に配置する形態であってもよい。
有機電界発光素子をセグメント状に配置する場合、電極のみをセグメント状に配置する形態であってもよいし、電極及び有機化合物層をセグメント状に配置する形態であってもよい。
マトリクス状又はセグメント状の有機化合物層は、インクジェット法により形成可能である。
【0190】
マトリクス状の有機電界発光素子及びセグメント状の有機電界発光素子の駆動装置及び駆動方法としては、特開平2−148687号公報、特開平6−301355号公報、特開平5−29080号、特開平7−134558号公報、特開平8−234685号公報、特開平8−241047号公報、特許第2784615号公報、米国特許5828429号明細書、米国特許6023308号明細書などに記載の駆動装置及び駆動方法を適用し得る。
【実施例】
【0191】
以下実施例によって本実施形態を更に具体的に説明するが、本実施形態はこれらに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「%」は「質量%」を表す。
【0192】
<一般式(1)で表される化合物の合成>
[合成例1:CTM−11の合成]
表1に示すCTM−11を、以下のスキームにて合成した。
【0193】
【化49】
【0194】
三つ口フラスコに、化合物(1)25g、トルエン250ml、マロン酸ジエチル12.8gを採取し、溶解させた。次いで、ピペリジン3.4g、酢酸3.6gを加え130℃で2時間撹拌した。次いで、ピペリジン0.68g、酢酸0.72gを加え130℃で1時間撹拌した。次いで、室温まで冷却しトルエン250mlを加え、有機層を蒸留水250mlで3回洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下溶剤を留去した。次いで、カラムクロマトグラフィー(吸着剤:シリカゲル、溶剤:トルエン/酢酸エチル=10/1)にて精製し、オイル状の化合物(2)33.3gを得た。
次いで、ナス型フラスコに、オイル状の化合物(2)33.3gを採取し、テトラヒドロフラン200mlに溶解させ、エタノール50ml、10%Pd/C2gを加え、水素ガス供給元につなぎ24時間撹拌し、減圧下溶剤を留去した。次いで、カラムクロマトグラフィー(吸着剤:シリカゲル、溶剤:トルエン/酢酸エチル=20/1)にて精製し、オイル状の化合物(3)32.3gを得た。
次いで、ナス型フラスコに、オイル状の化合物(3)25gを採取し、テトラヒドロフラン200ml、エタノール50mlに溶解させ、水酸化ナトリウム8.7gを蒸留水25mlに溶解させた溶液を、0℃にて徐々に滴下し、室温にて2時間撹拌した。析出した固体をトルエン100mlで2回洗浄した。次いで、個体、ジメチルホルムアミド200ml、クロロメチルスチレン40gを室温で15分間、70℃で7時間撹拌した。次いで、室温まで冷却し、トルエン500mlを加え、有機層を蒸留水500mlで3回洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下溶剤を留去した。次いで、カラムクロマトグラフィー(吸着剤:シリカゲル、溶剤:トルエン/酢酸エチル=20/1)にて精製し、オイル状の化合物CTM−11を27.1g得た。
【0195】
[合成例2:CTM−12の合成]
表1に示すCTM−12を、以下のスキームにて合成した。
【0196】
【化50】
【0197】
合成例1と同様の方法で合成した化合物(3)25gを、テトラヒドロフラン250mlに溶解し水素化アルミニウムリチウム8.9gを加え室温にて2時間撹拌した。次いで、水500ml、トルエン1Lを加え、セライトを敷いた濾紙で固形分を濾別した。次いで、有機層を蒸留水500mlで3回洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下溶剤を留去した。次いで、ヘキサン20ml、酢酸エチル30mlから再結晶し淡桃色の固体状の化合物(4)18.5gを得た。
次いで、固体状の化合物(4)16.5gをテトラヒドロフラン200mlに溶解し4−クロロメチルスチレン18g、カリウムtert−ブトキシド11.9gを徐々に加え、70℃で16時間撹拌した。次いで、室温まで冷却しトルエン250mlを加え、有機層を蒸留水250mlで3回洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下溶剤を留去した。次いで、カラムクロマトグラフィー(吸着剤:シリカゲル、溶剤:トルエン/酢酸エチル=20/1)にて精製し、オイル状のCTM−12を20.3g得た。
【0198】
[合成例3:CTM−15の合成]
表1に示すCTM−15を、以下のスキームにて合成した。
【0199】
【化51】
【0200】
三つ口フラスコに、化合物(5)25g、トルエン250ml、マロン酸ジエチル12.8gを採取し、溶解させた。次いで、ピペリジン3.4g、酢酸3.6gを加え130℃で2時間撹拌した。次いで、ピペリジン0.68g、酢酸0.72gを加え130℃で1時間撹拌した。次いで、室温まで冷却しトルエン250mlを加え、有機層を蒸留水250mlで3回洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下溶剤を留去した。次いで、カラムクロマトグラフィー(吸着剤:シリカゲル、溶剤:トルエン/酢酸エチル=20/1)にて精製し、オイル状の化合物(6)31.2gを得た。
次いで、ナス型フラスコにオイル状の化合物(6)31.2gを採取し、テトラヒドロフラン200mlに溶解させ、エタノール50ml、10%Pd/C2gを加え、水素ガス供給元につなぎ24時間撹拌し、減圧下溶剤を留去した。次いで、カラムクロマトグラフィー(吸着剤:シリカゲル、溶剤:トルエン/酢酸エチル=20/1)にて精製し、オイル状の化合物(7)29.8gを得た。
次いで、ナス型フラスコにオイル状の化合物(7)25gを採取し、テトラヒドロフラン200ml、エタノール50mlに溶解させ、水酸化ナトリウム8.7gを蒸留水25mlに溶解させた溶液を、0℃にて徐々に滴下し、室温にて2時間撹拌した。析出した固体をトルエン100mlで2回洗浄した。次いで、個体、ジメチルホルムアミド200ml、クロロメチルスチレン40gを室温で15分間、70℃で7時間撹拌した。次いで、室温まで冷却し、トルエン500mlを加え、有機層を蒸留水500mlで3回洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下溶剤を留去した。次いで、カラムクロマトグラフィー(吸着剤:シリカゲル、溶剤:トルエン/酢酸エチル=20/1)にて精製し、オイル状の化合物CTM−15を25.3g得た。
【0201】
[合成例4:CTM−16の合成]
表1に示すCTM−16を、以下のスキームにて合成した。
【0202】
【化52】
【0203】
合成例3と同様の方法で合成した化合物(7)25gをテトラヒドロフラン250mlに溶解し水素化アルミニウムリチウム9.2gを加え室温にて2時間撹拌した。次いで、水500ml、トルエン1Lを加え、セライトを敷いた濾紙で固形分を濾別した。次いで、有機層を蒸留水500mlで3回洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下溶剤を留去した。次いで、カラムクロマトグラフィー(吸着剤:シリカゲル、溶剤:トルエン/酢酸エチル=2/1)にて精製し、オイル状の化合物(8)17.8gを得た。
次いで、オイル状の化合物(8)16.0gをテトラヒドロフラン200mlに溶解し4−クロロメチルスチレン17.5g、カリウムtert−ブトキシド11.2gを徐々に加え、70℃で16時間撹拌した。次いで、室温まで冷却しトルエン250mlを加え、有機層を蒸留水250mlで3回洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下溶剤を留去した。次いで、カラムクロマトグラフィー(吸着剤:シリカゲル、溶剤:トルエン/酢酸エチル=20/1)にて精製し、オイル状のCTM−16を18.7g得た。
【0204】
[合成例5:CTM−17の合成]
表1に示すCTM−17を、以下のスキームにて合成した。
【0205】
【化53】
【0206】
合成例3と同様にして化合物(5)から化合物(6)を合成した。次いで、ナス型フラスコにオイル状の化合物(6)27.5gを採取し、テトラヒドロフラン200ml、エタノール50mlに溶解させ、水酸化ナトリウム8.7gを蒸留水25mlに溶解させた溶液を、0℃にて徐々に滴下し、室温にて2時間撹拌した。二層に分離した下層をトルエン100mlで2回洗浄した。次いで、下層、ジメチルホルムアミド200ml、クロロメチルスチレン40gを室温で15分間、70℃で7時間撹拌した。次いで、室温まで冷却し、酢酸エチル500mlを加え、有機層を蒸留水500mlで3回洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下溶剤を留去した。次いで、カラムクロマトグラフィー(吸着剤:シリカゲル、溶剤:トルエン/酢酸エチル=20/1)にて精製し、オイル状の化合物CTM−17を18.4g得た。
【0207】
[合成例6:ETM−3の合成]
表2に示すETM−3を、以下のスキームにて合成した。
【0208】
【化54】
【0209】
三つ口フラスコにて、化合物(9)12.3g(0.055mol)及びマロン酸ニトリル7.07g(0.107mol)を、トルエン300mlに溶解し、ピペリジン0.5mlを加え、窒素気流下、110℃で5時間攪拌した。室温まで、放冷後、ヘキサン500mlを加え、析出した沈殿を濾取し、カラムクロマトグラフィー(吸着剤:シリカゲル、溶剤:塩化メチレン/ヘキサン=3/7)にて精製した。塩化メチレン/ヘキサンより再結晶し、化合物(10)を8.0g得た。
次いで、三口フラスコにて、化合物(10)8.0g(0.025mol)をトルエン20mlに溶解し、ピリジン0.1mlを加え、窒素気流下で水冷、攪拌しながら、塩化チオニル2ml(0.028)を徐々に添加した。添加終了後、混合物を徐々に加熱し、120℃で2時間攪拌した。反応終了後、放冷し、ヘキサンを加え、結晶を析出させた。得た結晶を塩化メチレン5mlに加熱溶解、不要物を濾過し、濃縮した後、ヘキサン20mlを加え、再結晶し、化合物(11)を6.2g得た。
次いで、三口フラスコにて、ピリジン3ml(0.037mol)、ハイドロキノン0.020g、及び塩化メチレン20mlの混合物を、窒素気流下で5℃に冷却した後、1−(アクリロイルオキシ)−3−(メタクリロイルオキシ)−2−プロパノール3.86g(0.018mol)を溶解し、この溶液を5℃で攪拌しながら、化合物(11)6.2g(0.018mol)を塩化メチレン50mlに溶かし、2時間かけて滴下した。5℃で30分攪拌した後、混合物を水200mlで洗浄、次いで希塩酸200ml、最後に炭酸カリウム水溶液(0.1%)200mlで洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下、溶剤を留去した。カラムクロマトグラフィー(吸着剤:シリカゲル、溶剤:塩化メチレン/ヘキサン=3/7)にて精製し、ETM−3を5.1g得た。
【0210】
[合成例7:ETM−5の合成]
表2に示すETM−5を、以下のスキームにて合成した。
【0211】
【化55】
【0212】
三つ口フラスコに、化合物(12)13.8g(0.055mol)及びマロン酸ニトリル7.07g(0.107mol)を、トルエン250mlに溶解し、ピペリジン0.5mlを加え、窒素気流下、110℃で5時間攪拌した。室温まで、放冷後、ヘキサン400mlを加え、析出した沈殿を濾取し、カラムクロマトグラフィー(吸着剤:シリカゲル、溶剤:塩化メチレン/ヘキサン=3/7)にて精製した。塩化メチレン/ヘキサンより再結晶し、化合物(13)を7.5g得た。
次いで、三口フラスコにて、化合物(13)7.5g(0.025mol)をトルエン20mlに溶解し、ピリジン0.1mlを加え、窒素気流下で水冷、攪拌しながら、塩化チオニル2ml(0.028mol)を徐々に添加した。添加終了後、混合物を徐々に加熱し、120℃で2時間攪拌した。反応終了後、放冷し、ヘキサンを加え、結晶を析出させた。得た結晶を塩化メチレン5mlに加熱溶解、不要物を濾過し、濃縮した後、ヘキサン25mlを加え、再結晶し、化合物(14)を6.2g得た。
次いで、三口フラスコにて、ピリジン3ml(0.037mol)、ハイドロキノン0.020g、及び塩化メチレン20mlの混合物を、窒素気流下で5℃に冷却した後、アリル2−メチル−3−ヒドロキシプロピオン酸3.86g(0.018mol)を溶解し、この溶液を5℃で攪拌しながら、化合物(14)5.7g(0.018mol)を塩化メチレン50mlに溶かし、2時間かけて滴下した。5℃で30分攪拌した後、混合物を水200mlで洗浄、次いで希塩酸200ml、最後に炭酸カリウム水溶液(0.1%)200mlで洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下、溶剤を留去した。カラムクロマトグラフィー(吸着剤:シリカゲル、溶剤:塩化メチレン/ヘキサン=3/7)にて精製し、ETM−5を4.4g得た。
【0213】
[合成例8:ETM−10の合成]
表2に示すETM−10を、以下のスキームにて合成した。
【0214】
【化56】
【0215】
三つ口フラスコに、化合物(15)13.8g(0.055mol)及びマロン酸ニトリル7.07g(0.107mol)を、トルエン250mlに溶解し、ピペリジン0.5mlを加え、窒素気流下、110℃で5時間攪拌した。室温まで、放冷後、ヘキサン400mlを加え、析出した沈殿を濾取し、カラムクロマトグラフィー(吸着剤:シリカゲル、溶剤:塩化メチレン/ヘキサン=3/7)にて精製した。塩化メチレン/ヘキサンより再結晶し、化合物(16)を7.5g得た。
次いで、三口フラスコにて、化合物(16)7.5g(0.025mol)をトルエン20mlに溶解し、ピリジン0.1mlを加え、窒素気流下で水冷、攪拌しながら、塩化チオニル2ml(0.028mol)を徐々に添加した。添加終了後、混合物を徐々に加熱し、120℃で2時間攪拌した。反応終了後、放冷し、ヘキサンを加え、結晶を析出させた。得た結晶を塩化メチレン5mlに加熱溶解、不要物を濾過し、濃縮した後、ヘキサン25mlを加え、再結晶し、化合物(17)を6.2g得た。
次いで、三口フラスコにて、ピリジン3ml(0.037mol)、ハイドロキノン0.020g、及び塩化メチレン20mlの混合物を、窒素気流下で5℃に冷却した後、2−ヒドロキシプロピルエステル2.34g(0.018mol)を溶解し、この溶液を5℃で攪拌しながら、化合物(17)5.7g(0.018mol)を塩化メチレン50mlに溶かし、2時間かけて滴下した。5℃で30分攪拌した後、混合物を水200mlで洗浄、次いで希塩酸200ml、最後に炭酸カリウム水溶液(0.1%)200mlで洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下、溶剤を留去した。カラムクロマトグラフィー(吸着剤:シリカゲル、溶剤:塩化メチレン/ヘキサン=3/7)にて精製し、ETM−10を4.1g得た。
【0216】
[合成例9:ETM−15の合成]
表2に示すETM−15を、以下のスキームにて合成した。
【0217】
【化57】
【0218】
三つ口フラスコに、化合物(18)13.8g(0.055mol)及びマロン酸ニトリル7.07g(0.107mol)を、トルエン300mlに溶解し、ピペリジン0.5mlを加え、窒素気流下、110℃で5時間攪拌した。室温まで、放冷後、ヘキサン500mlを加え、析出した沈殿を濾取し、カラムクロマトグラフィー(吸着剤:シリカゲル、溶剤:塩化メチレン/ヘキサン=3/7)にて精製した。塩化メチレン/ヘキサンより再結晶し、化合物(19)を7.5g得た。
次いで、三口フラスコにて、化合物(19)7.5g(0.025mol)をトルエン20mlに溶解し、ピリジン0.1mlを加え、窒素気流下で水冷、攪拌しながら、塩化チオニル2ml(0.028mol)を徐々に添加した。添加終了後、混合物を徐々に加熱し、120℃で2時間攪拌した。反応終了後、放冷し、ヘキサンを加え、結晶を析出させた。得た結晶を塩化メチレン5mlに加熱溶解、不要物を濾過し、濃縮した後、ヘキサン25mlを加え、再結晶し、化合物(20)を6.2g得た。
次いで、三口フラスコにて、ピリジン3ml(0.037mol)、ハイドロキノン0.020g、及び塩化メチレン20mlの混合物を、窒素気流下、5℃に冷却した後、1−(アクリロイルオキシ)−3−(メタクリロイルオキシ)−2−プロパノール3.85g(0.018mol)を溶解し、この溶液を5℃で攪拌しながら、化合物(20)5.7g(0.018mol)を塩化メチレン50mlに溶かし、2時間かけて滴下した。5℃で30分攪拌した後、混合物を水200mlで洗浄、次いで希塩酸200ml、最後に炭酸カリウム水溶液(0.1%)200mlで洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下、溶剤を留去した。カラムクロマトグラフィー(吸着剤:シリカゲル、溶剤:塩化メチレン/ヘキサン=3/7)にて精製し、ETM−15を4.8g得た。
【0219】
[合成例10:ETM−18の合成]
表2に示すETM−18を、以下のスキームにて合成した。
【0220】
【化58】
【0221】
三口フラスコにて、化合物(21)18.1g(0.059mol)をトルエン50mlに溶解し、ピリジン0.2mlを加え、窒素気流下で水冷、攪拌しながら、塩化チオニル4ml(0.056mol)を徐々に添加した。添加終了後、混合物を徐々に加熱し、120℃で2時間攪拌した。反応終了後、放冷し、ヘキサンを加え、結晶を析出させた。得た結晶を塩化メチレン10mlに加熱溶解、不要物を濾過し、濃縮した後、ヘキサンを加え、再結晶し、化合物(22)を14g得た。
次いで、三口フラスコにて、ピリジン6ml(0.074mol)、ハイドロキノン0.040g、及び塩化メチレン40mlの混合物を、窒素気流下で5℃に冷却した後、アクリル酸4−ヒドロキシブチル6.34g(0.044mol)を溶解し、この溶液を5℃で攪拌しながら、化合物(22)12g(0.044mol)を塩化メチレン80mlに溶かし、2時間かけて滴下した。5℃で30分攪拌した後、混合物を水300mlで洗浄、次いで希塩酸300ml、最後に炭酸カリウム水溶液(0.1%)300mlで洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下、溶剤を留去した。カラムクロマトグラフィー(吸着剤:シリカゲル、溶剤:塩化メチレン/ヘキサン=3/7)にて精製し、ETM−18を9.6g得た。
【0222】
[合成例11:ETM−22の合成]
表2に示すETM−22を、以下のスキームにて合成した。
【0223】
【化59】
【0224】
三口フラスコにて、化合物(23)15g(0.059mol)をトルエン50mlに溶解し、ピリジン0.2mlを加え、窒素気流下で水冷、攪拌しながら、塩化チオニル4ml(0.056mol)を徐々に添加した。添加終了後、混合物を徐々に加熱し、120℃で2時間攪拌した。反応終了後、放冷し、ヘキサンを加え、結晶を析出させた。得た結晶を塩化メチレン10mlに加熱溶解、不要物を濾過し、濃縮した後、ヘキサンを加え、再結晶し、化合物(24)を12g得た。
次いで、三口フラスコにて、ピリジン6ml(0.074mol)、ハイドロキノン0.040g、及び塩化メチレン40mlの混合物を、窒素気流下で5℃に冷却した後、2−ヒドロキシプロピルエステル5.72g(0.044mol)を溶解し、この溶液を5℃で攪拌しながら、化合物(24)12g(0.044mol)を塩化メチレン80mlに溶かし、2時間かけて滴下した。5℃で30分攪拌した後、混合物を水300mlで洗浄、次いで希塩酸300ml、最後に炭酸カリウム水溶液(0.1%)300mlで洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下、溶剤を留去した。カラムクロマトグラフィー(吸着剤:シリカゲル、溶剤:塩化メチレン/ヘキサン=3/7)にて精製し、ETM−22を8.2g得た。
【0225】
[合成例12:ETM−28の合成]
表2に示すETM−28を、以下のスキームにて合成した。
【0226】
【化60】
【0227】
三口フラスコにて、化合物(25)15.7g(0.059mol)をトルエン50mlに溶解し、ピリジン0.2mlを加え、窒素気流下で水冷、攪拌しながら、塩化チオニル4ml(0.056mol)を徐々に添加した。添加終了後、混合物を徐々に加熱し、120℃で2時間攪拌した。反応終了後、放冷し、ヘキサンを加え、結晶を析出させた。得た結晶を塩化メチレン10mlに加熱溶解、不要物を濾過し、濃縮した後、ヘキサンを加え、再結晶し、化合物(26)を12.5g得た。
次いで、三口フラスコにて、ピリジン6ml(0.074mol)、ハイドロキノン0.040g、及び塩化メチレン40mlの混合物を、窒素気流下で5℃に冷却した後、メタクリル酸3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル7.14g(0.044mol)を溶解し、この溶液を5℃で攪拌しながら、化合物(26)12.5g(0.044mol)を塩化メチレン80mlに溶かし、2時間かけて滴下した。5℃で30分攪拌した後、混合物を水300mlで洗浄、次いで希塩酸300ml、最後に炭酸カリウム水溶液(0.1%)300mlで洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下、溶剤を留去した。カラムクロマトグラフィー(吸着剤:シリカゲル、溶剤:塩化メチレン/ヘキサン=3/7)にて精製し、ETM−28を9.1g得た。
【0228】
[合成例13:ETM−30の合成]
表2に示すETM−30を、以下のスキームにて合成した。
【0229】
【化61】
【0230】
三口フラスコにて、化合物(27)14.8g(0.059mol)をトルエン50mlに溶解し、ピリジン0.2mlを加え、窒素気流下で水冷、攪拌しながら、塩化チオニル4ml(0.056mol)を徐々に添加した。添加終了後、混合物を徐々に加熱し、120℃で2時間攪拌した。反応終了後、放冷し、ヘキサンを加え、結晶を析出させた。得た結晶を塩化メチレン10mlに加熱溶解、不要物を濾過し、濃縮した後、ヘキサンを加え、再結晶し、化合物(28)を11.9g得た。
次いで、三口フラスコにて、ピリジン6ml(0.074mol)、ハイドロキノン0.040g、及び塩化メチレン40mlの混合物を、窒素気流下で5℃に冷却した後、アクリル酸4−ヒドロキシブチル6.34g(0.044mol)を溶解し、この溶液を5℃で攪拌しながら、化合物(28)11.9g(0.044mol)を塩化メチレン80mlに溶かし、2時間かけて滴下した。5℃で30分攪拌した後、混合物を水300mlで洗浄、次いで希塩酸300ml、最後に炭酸カリウム水溶液(0.1%)300mlで洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下、溶剤を留去した。カラムクロマトグラフィー(吸着剤:シリカゲル、溶剤:塩化メチレン/ヘキサン=3/7)にて精製し、ETM−30を8.3g得た。
【0231】
[合成例14:ETM−32の合成]
表2に示すETM−32を、以下のスキームにて合成した。
【0232】
【化62】
【0233】
三口フラスコにて、化合物(29)14.0g(0.059mol)をトルエン50mlに溶解し、ピリジン0.2mlを加え、窒素気流下で水冷、攪拌しながら、塩化チオニル4ml(0.056mol)を徐々に添加した。添加終了後、混合物を徐々に加熱し、120℃で2時間攪拌した。反応終了後、放冷し、ヘキサンを加え、結晶を析出させた。得た結晶を塩化メチレン10mlに加熱溶解、不要物を濾過し、濃縮した後、ヘキサンを加え、再結晶し、化合物(30)を11.2g得た。
次いで、三口フラスコにて、ピリジン6ml(0.074mol)、ハイドロキノン0.040g、及び塩化メチレン40mlの混合物を、窒素気流下で5℃に冷却した後、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル5.72g(0.044mol)を溶解し、この溶液を5℃で攪拌しながら、化合物(30)11.2g(0.044mol)を塩化メチレン80mlに溶かし、2時間かけて滴下した。5℃で30分攪拌した後、混合物を水300mlで洗浄、次いで希塩酸300ml、最後に炭酸カリウム水溶液(0.1%)300mlで洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下、溶剤を留去した。カラムクロマトグラフィー(吸着剤:シリカゲル、溶剤:塩化メチレン/ヘキサン=3/7)にて精製し、ETM−32を7.4g得た。
【0234】
[合成例15:ETM−38の合成]
表2に示すETM−38を、以下のスキームにて合成した。
【0235】
【化63】
【0236】
三口フラスコにて、ピリジン6ml(0.074mol)、ハイドロキノン0.040g、及び塩化メチレン50mlの混合物を、窒素気流下で5℃に冷却した後、3−ヒドロキシ−1−メタクリロイルオキシアダマン11g(0.047mol)を溶解し、この溶液を5℃で攪拌しながら、化合物(31)15g(0.047mol)を塩化メチレン120mlに溶かし、2時間かけて滴下した。5℃で30分攪拌した後、混合物を水400mlで洗浄、次いで、希塩酸400ml、最後に炭酸カリウム水溶液(0.1%)400mlで洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下、溶剤を留去した。カラムクロマトグラフィー(吸着剤:シリカゲル、溶剤:塩化メチレン/ヘキサン=3/7)にて精製し、ETM−38を12.3g得た。
【0237】
<有機電界発光素子の作製>
[実施例1]
ガラス基板上に形成されたITO(ジオマテック社製)を短冊状のフォトマスクを用いてフォトリソグラフィによりパターニングし、更にエッチング処理することにより短冊状のITO電極(幅2mm)を形成した。次いで、ITOガラス基板を、中性洗剤、水、アセトン(電子工業用、関東化学社製)及びイソプロパノール(電子工業用、関東化学社製)の順に、各液に浸して超音波を各5分間印加して洗浄した後、スピンコーターで乾燥させた。
【0238】
CTM−11:3質量部とETM−3:0.05質量部とをトルエン:77質量部に溶解させ、更に熱ラジカル発生剤V−601:0.5質量部を溶解させた溶液を、孔径0.1μmのPTFEフィルターで濾過し塗布液を得た。塗布液をディップ法によりITOガラス基板に塗布し、酸素濃度200ppm以下のグローブボックス中で温度145℃、35分間にて成膜し、厚さ約0.03μmの正孔輸送層を得た。
【0239】
正孔輸送層の上に、発光材料として例示化合物(VI−1)を蒸着して、厚さ0.055μmの発光層を形成した。
【0240】
発光層の上に、短冊状の穴が設けられている金属製マスクを設置して、Mg−Ag合金を共蒸着して、2mm幅、0.15μm厚の背面電極をITO電極と交差するように形成した。形成された有機電界発光素子の有効面積は0.04cmであった。
【0241】
[実施例2〜5]
実施例1において、CTM−11を下記表3に記載の正孔輸送化合物にそれぞれ変更した以外は実施例1と同様にして、実施例2〜5の有機電界発光素子を作製した。
【0242】
[実施例6〜15]
実施例1において、ETM−3:0.05質量部を下記表3に記載の電子輸送化合物及び量にそれぞれ変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例6〜15の有機電界発光素子を作製した。
【0243】
[比較例1]
実施例1において、電子輸送化合物を用いずに正孔輸送層を得た以外は、実施例1と同様にして、比較例1の有機電界発光素子を作製した。
【0244】
[比較例2〜4]
実施例1において、ETM−3:0.05質量部を下記表3に記載の電子輸送化合物及び量にそれぞれ変更した以外は、実施例1と同様にして、比較例2〜4の有機電界発光素子を作製した。
比較例2〜4に用いた電子輸送化合物(化合物7、化合物8、及び化合物9)の構造を以下に示す。
【0245】
【化64】
【0246】
<性能評価>
[重合性有機化合物層(正孔輸送層)の抵抗]
金電極上に上記実施例と同様な方式で成膜し、硬化させた。
この単層膜について、対向電極として100nmの金電極を1cmで真空スパッタ法により装着し、抵抗率測定用試料とした。測定方法は、電源としてSI 1287 Electrochemical Interface(東陽テクニカ製)、電流計としてSI 1260 Inpedance/Gain Phase Analyzer(東陽テクニカ製)、電流アンプとして1296 Dielectric Interface(東陽テクニカ製)を用い、1Vの交流電圧を周波数1MHzから1mHzまでの範囲で高周波側から印加し、各試料の交流インピーダンスを測定し、この測定より得られたCole ColeプロットのグラフをRC並列の等価回路にフィッティングすることで体積抵抗率(Ω・cm)を得た。
得られた値を結果を表3に示す。なお、ここで得られた値は、加熱前及びリンス前の抵抗とした。
また、金電極上に上記実施例と同様な方式で成膜し、硬化させて、単層膜を得た後、単層膜に対し、40℃40%RHの環境下に3時間保管した。保管後の単層膜に対し、対向電極として100nmの金電極を1cmで真空スパッタ法により装着して、抵抗率測定用試料を作製し、この試料について上記と同様の方法で体積抵抗率を測定した。得られた値を加熱後の抵抗とし、結果を表3に示す。
別に、金電極上に上記実施例と同様な方式で成膜し、硬化させて、単層膜を得た後、単層膜を有する金電極をトルエン溶剤に30秒間浸漬させ、その後、取り出して、窒素でブロー乾燥させた。乾燥後の単層膜に対し、対向電極として100nmの金電極を1cmで真空スパッタ法により装着して、抵抗率測定用試料を作製し、この試料について上記と同様の方法で体積抵抗率を測定した。得られた値をリンス後の抵抗とし、結果を表3に示す。
【0247】
[発光寿命]
有機電界発光素子のITO電極をプラス、Mg−Ag背面電極をマイナスとして、発光寿命の測定を行った。測定条件は、乾燥窒素中、室温、直流駆動方式(DC駆動)、初期輝度1000cd/mとした。
表3の「相対時間」は、比較例1の素子の輝度(L)が初期輝度(L)の半分(即ち、L/L=0.5)となった時点の駆動時間を1.00とし、その相対時間を示す。
表3の「電圧上昇」は、各素子の輝度(L)が初期輝度(L)の半分(即ち、L/L=0.5)となった時点での電圧上昇 (=電圧−初期駆動電圧)(単位:V)を示す。
【0248】
【表3】
【符号の説明】
【0249】
1 透明絶縁体基板、2 透明電極、3 正孔輸送層、4 発光層、5 電子輸送層、6 発光層、7 背面電極
図1
図2
図3
図4