(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
電極板と、前記電極板の一方面に設けられた正極と、前記電極板の他方面に設けられた負極とをそれぞれ含む複数のバイポーラ電極が、セパレータを介して積層された積層体と、
前記積層体を収容するように前記積層体の積層方向に延在するとともに、前記複数のバイポーラ電極の各電極板の周縁部に接合された枠体が前記積層体の積層方向に重ね合わされて構成された筒状のシール部を有するシール部材と、
前記積層体の積層方向において隣り合う前記枠体の周端面で構成される前記シール部のシール端面に設けられ、前記積層方向において隣り合う枠体の間において前記積層方向に直交する方向に前記シール部を貫通する連通口と、
前記連通口が設けられた領域の前記シール端面に取り付けられ、前記連通口と連通される圧力調整ユニットと、
前記シール部と前記圧力調整ユニットとの間に介在し、前記シール部の前記連通口と前記圧力調整ユニットとを連通させる貫通孔を有する樹脂層と
を備える蓄電装置を製造する蓄電装置の製造方法であって、
前記複数のバイポーラ電極の各電極板の周縁部に前記枠体が接合された積層体を、前記積層方向において隣り合う枠体の間に、一端が枠内まで延びるとともに他端が枠外において入れ子保持部で保持された入れ子を介在させた状態で、前記積層体と入れ子保持部との間を樹脂で充填する工程と、
前記積層体と前記入れ子保持部との間に充填された前記樹脂を硬化するとともに、硬化した樹脂から入れ子を取り外す工程と
を含む、蓄電装置の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来技術に係る構成では、シール部にチューブが設けられているため、シーチューブの変位や変形、破損等により、または、チューブを保持するシール部の構成要素の相対位置ズレ等により、チューブの圧力調整機能が毀損する事態が起こり得る。
【0005】
そこで、圧力調整機能を有するシール部構成であり、圧力調整機能をより確実に保全することができるシール部構成として、シール端面を溶融させる技術が考えられる。
【0006】
しかしながら、シール部の構成要素の相対位置ズレ等に起因してシール端面の凹凸が大きい場合(すなわち、平面度が低い場合)には、シール部によるシールの確実性が低下するため、シール端面の平面度が低い場合であってもシールの高い確実性を実現できる技術が求められる。
【0007】
本発明は、シール部によるシールの確実性の向上が図られた蓄電装置およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一側面に係る蓄電装置は、電極板と、電極板の一方面に設けられた正極と、電極板の他方面に設けられた負極とをそれぞれ含む複数のバイポーラ電極が、セパレータを介して積層された積層体と、積層体を収容するように積層体の積層方向に延在するとともに、複数のバイポーラ電極の各電極板の周縁部に接合された枠体が積層体の積層方向に重ね合わされて構成された筒状のシール部を有するシール部材と、積層体の積層方向において隣り合う枠体の周端面で構成されるシール部のシール端面に設けられ、積層方向において隣り合う枠体の間において積層方向に直交する方向にシール部を貫通する連通口と、連通口が設けられた領域のシール端面に取り付けられ、連通口と連通される圧力調整ユニットと、シール部と圧力調整ユニットとの間に介在し、シール部の連通口と圧力調整ユニットとを連通させる貫通孔を有する樹脂層とを備える。
【0009】
上記蓄電装置においては、シール部を構成する複数の枠体の相対位置ズレ等に起因して、シール部のシール端面に凹凸が生じている場合であっても、シール部と圧力調整ユニットとの間に介在する樹脂層がシール端面をシールすることで、シール端面自体を溶融させる場合に比べて、シール部による高い確実性でのシールが実現されている。
【0010】
本発明の他の側面に係る蓄電装置は、樹脂層と圧力調整ユニットとの接合面が平坦面である。この場合、樹脂層と圧力調整ユニットとの間の高い結合力が実現される。
【0011】
本発明の一側面に係る蓄電装置の製造方法は、電極板と、電極板の一方面に設けられた正極と、電極板の他方面に設けられた負極とをそれぞれ含む複数のバイポーラ電極が、セパレータを介して積層された積層体と、積層体を収容するように積層体の積層方向に延在するとともに、複数のバイポーラ電極の各電極板の周縁部に接合された枠体が積層体の積層方向に重ね合わされて構成された筒状のシール部を有するシール部材と、積層体の積層方向において隣り合う枠体の周端面で構成されるシール部のシール端面に設けられ、積層方向において隣り合う枠体の間において積層方向に直交する方向にシール部を貫通する連通口と、連通口が設けられた領域のシール端面に取り付けられ、連通口と連通される圧力調整ユニットと、シール部と圧力調整ユニットとの間に介在し、シール部の連通口と圧力調整ユニットとを連通させる貫通孔を有する樹脂層とを備える蓄電装置を製造する蓄電装置の製造方法であって、複数のバイポーラ電極の各電極板の周縁部に枠体が接合された積層体を、積層方向において隣り合う枠体の間に、一端が枠内まで延びるとともに他端が枠外において入れ子保持部で保持された入れ子を介在させた状態で、積層体と入れ子保持部との間を樹脂で充填する工程と、積層体と入れ子保持部との間に充填された樹脂を硬化するとともに、硬化した樹脂から入れ子を取り外す工程とを含む。
【0012】
上記蓄電装置の製造方法においては、シール部を構成する複数の枠体の相対位置ズレ等に起因して、シール部のシール端面に凹凸が生じている場合であっても、積層体と入れ子保持部との間を樹脂で充填する工程において、シール部と入れ子保持部との間に介在する樹脂層がシール端面をシールする。そのため、上記蓄電装置の製造方法によれば、シール端面自体を熱溶融させる場合に比べて、シール部による高い確実性でのシールが実現されている。
【0013】
本発明の他の側面に係る蓄電装置の製造方法は、入れ子保持部が、圧力調整ユニットであってもよく、樹脂を充填する工程で積層体が収容される金型の一部であってもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、シール部によるシールの確実性の向上が図られた蓄電装置およびその製造方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態が詳細に説明される。図面の説明において、同一又は同等の要素には同一符号が用いられ、重複する説明は省略される。
【0017】
図1を参照して、蓄電装置の実施形態について説明する。
図1に示される蓄電装置10は、例えばフォークリフト、ハイブリッド自動車、電気自動車等の各種車両のバッテリとして用いられる。蓄電装置10は、複数(本実施形態では3つ)の蓄電モジュール12を備えるが、単一の蓄電モジュール12を備えてもよい。蓄電モジュール12は、バイポーラ電池である。蓄電モジュール12は、例えばニッケル水素二次電池、リチウムイオン二次電池等の二次電池であるが、電気二重層キャパシタであってもよい。以下の説明では、ニッケル水素二次電池を例示する。
【0018】
複数の蓄電モジュール12は、例えば金属板等の導電板14を介して積層され得る。積層方向から見て、蓄電モジュール12及び導電板14は例えば矩形形状を有する。各蓄電モジュール12の詳細については後述する。導電板14は、蓄電モジュール12の積層方向(Z方向)において両端に位置する蓄電モジュール12の外側にもそれぞれ配置される。導電板14は、隣り合う蓄電モジュール12と電気的に接続される。これにより、複数の蓄電モジュール12が積層方向に直列に接続される。積層方向において、一端に位置する導電板14には正極端子24が接続されており、他端に位置する導電板14には負極端子26が接続されている。正極端子24は、接続される導電板14と一体であってもよい。負極端子26は、接続される導電板14と一体であってもよい。正極端子24及び負極端子26は、積層方向に交差する方向(X方向)に延在している。これらの正極端子24及び負極端子26により、蓄電装置10の充放電を実施できる。
【0019】
導電板14は、蓄電モジュール12において発生した熱を放出するための放熱板としても機能し得る。導電板14の内部に設けられた複数の空隙14aを空気や気体等の冷媒が通過することにより、蓄電モジュール12からの熱を効率的に外部に放出できる。各空隙14aは例えば積層方向に交差する方向(Y方向)に延在する。積層方向から見て、導電板14は、蓄電モジュール12よりも小さいが、蓄電モジュール12と同じかそれより大きくてもよい。
【0020】
蓄電装置10は、交互に積層された蓄電モジュール12及び導電板14を積層方向に拘束する拘束部材16を備え得る。拘束部材16は、一対の拘束プレート16A,16Bと、拘束プレート16A,16B同士を連結する連結部材(ボルト18及びナット20)とを備える。各拘束プレート16A,16Bと導電板14との間には、例えば樹脂フィルム等の絶縁フィルム22が配置される。各拘束プレート16A,16Bは、例えば鉄等の金属によって構成されている。積層方向から見て、各拘束プレート16A,16B及び絶縁フィルム22は例えば矩形形状を有する。絶縁フィルム22は導電板14よりも大きくなっており、各拘束プレート16A,16Bは、蓄電モジュール12よりも大きくなっている。積層方向から見て、拘束プレート16Aの縁部には、ボルト18の軸部を挿通させる挿通孔16A1が蓄電モジュール12よりも外側となる位置に設けられている。同様に、積層方向から見て、拘束プレート16Bの縁部には、ボルト18の軸部を挿通させる挿通孔16B1が蓄電モジュール12よりも外側となる位置に設けられている。積層方向から見て各拘束プレート16A,16Bが矩形形状を有している場合、挿通孔16A1及び挿通孔16B1は、拘束プレート16A,16Bの角部に位置する。
【0021】
一方の拘束プレート16Aは、負極端子26に接続された導電板14に絶縁フィルム22を介して突き当てられ、他方の拘束プレート16Bは、正極端子24に接続された導電板14に絶縁フィルム22を介して突き当てられている。ボルト18は、例えば一方の拘束プレート16A側から他方の拘束プレート16B側に向かって挿通孔16A1及び挿通孔16B1に通される。他方の拘束プレート16Bから突出するボルト18の先端には、ナット20が螺合されている。これにより、絶縁フィルム22、導電板14及び蓄電モジュール12が挟持されてユニット化されると共に、積層方向に拘束荷重が付加される。
【0022】
図2を参照して、蓄電装置を構成する蓄電モジュールについて説明する。
図2に示される蓄電モジュール12は、複数のバイポーラ電極32が積層された積層体30を備える。バイポーラ電極32の積層方向から見て、積層体30は、例えば矩形形状を有する。隣り合うバイポーラ電極32間にはセパレータ40が配置され得る。
【0023】
各バイポーラ電極32は、電極板34と、電極板34の第1面34cに設けられた正極36と、電極板34の第2面34dに設けられた負極38とを含む。積層体30において、一のバイポーラ電極32の正極36は、セパレータ40を挟んで積層方向に隣り合う一方のバイポーラ電極32の負極38と対向し、一のバイポーラ電極32の負極38は、セパレータ40を挟んで積層方向に隣り合う他方のバイポーラ電極32の正極36と対向している。
【0024】
積層方向において、積層体30の一端には、内側面(図示下側の面)に負極38が配置された電極板34が配置される。この電極板34は負極側終端電極に相当する。積層方向において、積層体30の他端には、内側面(図示上側の面)に正極36が配置された電極板34が配置される。この電極板34は正極側終端電極に相当する。負極側終端電極の負極38は、セパレータ40を介して最上層のバイポーラ電極32の正極36と対向している。正極側終端電極の正極36は、セパレータ40を介して最下層のバイポーラ電極32の負極38と対向している。これら終端電極の電極板34はそれぞれ隣り合う導電板14(
図1参照)に接続される。
【0025】
蓄電モジュール12は、バイポーラ電極32の積層方向に延在し、積層体30を収容する筒状の樹脂部(シール部材)50を備える。樹脂部50は、複数の電極板34の周縁部34aを保持する。樹脂部50は、積層体30を取り囲むように構成されている。樹脂部50は、バイポーラ電極32の積層方向から見て例えば矩形形状を有している。すなわち、樹脂部50は例えば角筒状である。
【0026】
樹脂部50は、電極板34の周縁部34aに接合されて、その周縁部34aを保持する第1シール部52と、積層方向に交差する方向(X方向及びY方向)において第1シール部52の外側に設けられた第2シール部54とを有する。第2シール部54は、第1シール部52とシールされた状態で設けられている。
【0027】
樹脂部50の内壁を構成する第1シール部52は、複数のバイポーラ電極32(すなわち積層体30)における電極板34の周縁部34aの全周にわたって設けられている。第1シール部52は、電極板34の周縁部34aに例えば溶着されており、その周縁部34aをシールする。すなわち、第1シール部52は、電極板34の周縁部34aに接合されている。各バイポーラ電極32の電極板34の周縁部34aは、第1シール部52に埋没した状態で保持されている。積層体30の両端に配置された電極板34の周縁部34aも、第1シール部52に埋没した状態で保持されている。これにより、積層方向に隣り合う電極板34,34間には、当該電極板34,34と第1シール部52とによって気密および水密に仕切られた内部空間Vが形成されている。当該内部空間Vには、例えば水酸化カリウム水溶液等のアルカリ溶液からなる電解液(不図示)が収容されている。なお、「内部空間Vの体積」と言う場合は、セパレータ40の空隙を含む体積を意味する。
【0028】
ここで、
図3を参照しつつ、第1シール部52の構成についてより詳しく説明する。第1シール部52は、複数の枠体60が積層方向に積層された構造を有している。枠体60は、積層方向において、セパレータ40の厚みよりも大きい厚みを有する。より詳しくは、枠体60は、積層方向において、電極板34の厚みとセパレータ40の厚みとの合計よりも大きい厚みを有する。
【0029】
枠体60は、バイポーラ電極32の電極板34の周縁部34aに接合されると共に、積層方向に隣接する別の枠体60に接合されている。バイポーラ電極32と、バイポーラ電極32の電極板34の周縁部34aに接合された枠体60とで、バイポーラ電極ユニット65が構成される。枠体60と別の枠体60とが接合されることにより、枠体60は、積層方向に隣り合う電極板34,34間に形成される内部空間V(セル)の高さを規定している。
【0030】
枠体60は、電極板34の第1面34c側に配置されて第1面34cに接合された内周部61と、内周部61の外側に連続して設けられた外周部62とを含む。内周部61及び外周部62は、それぞれ、電極板34の形状に対応しており、例えば矩形形状を有する。内周部61は、電極板34の第1面34cに例えば溶着により接合されている。すなわち、内周部61は、電極板34の第1面34cに接合されている。内周部61の内周端61cが、第1シール部52の内周端52cに相当する。外周部62の厚みは、内周部61の厚みよりも大きく、枠体60の厚みになっている。外周部62の外周面(枠体の周端面)62dが、第1シール部52の外周端52d(すなわち外周面52a)に相当する。
【0031】
枠体60は、積層方向における第1端面60aと、第1端面60aに対向する第2端面60bとを含む。枠体60の第1端面60aは、積層方向に隣接する別の枠体60の第2端面60bに接合されている。枠体60の第2端面60bは、積層方向に隣接する別の枠体60の第1端面60aに接合されている。第1端面60aおよび第2端面60bは、周方向の大部分において(後述する連通口70を除く全域において)、別の枠体60に面状に接合されている。この構成により、枠体60は、蓄電モジュール12における1つのセルの高さを規定している。積層方向の厚みが異なる内周部61と外周部62との間には、これらを接続する矩形環状の段差部68が形成されている。積層方向における段差部68の深さは、セパレータ40の厚みよりも大きい。段差部68には、セパレータ40の外周端40dを含む周縁部40aが配置される。すなわち、枠体60に形成された段差部68は、枠体60の内方に面しており、セパレータ40の外周端40dを第1シール部52内に配置するための空間を提供している。内周部61の表面61a(第1面34cに接合されているのとは反対の面)に、例えばセパレータ40の周縁部40aが当接している。セパレータ40は、枠体60の高さの範囲内に収まっている。周縁部40aと、負極38の厚みを隔ててセパレータ40に隣接する別の電極板34との間には、僅かな隙間が形成され得る。
【0032】
なお、セパレータ40の外周端40dは、枠体60の周端面62dと面一であってもよい。セパレータ40の外周端40dは、第1シール部52の外周端52dと同じかその外周端52dより内側であって、第1シール部52の内周端52cより外側に位置してもよい。
【0033】
図2に戻って、樹脂部50の外壁を構成する第2シール部54は、バイポーラ電極32の積層方向に延在する第1シール部52の外周面52aを覆っている。第2シール部54は、第1シール部52の外周面52aのうちの連通口70が形成された領域を覆う、後述する樹脂層55を有する。樹脂層55を含む第2シール部54の内周面は、第1シール部52の外周面52aに例えば溶着されており、その外周面52aをシールする。すなわち、第2シール部54は、第1シール部52の外周面52aに接合されている。第1シール部52に対する第2シール部54の溶着面(接合面)は、例えば4つの矩形平面をなす。
【0034】
電極板34は、例えばニッケルからなる矩形の金属箔である。電極板34の周縁部34aは、正極活物質及び負極活物質の塗工されない未塗工領域となっている。未塗工領域では、電極板34が露出している。その未塗工領域が、樹脂部50の内壁を構成する第1シール部52に埋没して保持されている。正極36を構成する正極活物質としては、例えば水酸化ニッケルが挙げられる。負極38を構成する負極活物質としては、例えば水素吸蔵合金が挙げられる。電極板34の第2面34dにおける負極38の形成領域は、電極板34の第1面34cにおける正極36の形成領域に対して一回り大きくてもよい。
【0035】
セパレータ40は、例えばシート状に形成されている。セパレータ40は、例えば矩形形状を有する。セパレータ40を形成する材料としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン系樹脂からなる多孔質フィルム、ポリプロピレン等からなる織布又は不織布等が例示される。また、セパレータ40は、フッ化ビニリデン樹脂化合物等で補強されたものであってもよい。
【0036】
樹脂部50(第1シール部52及び第2シール部54)は、例えば絶縁性の樹脂を用いた射出成形によって矩形の筒状に形成されている。樹脂部50を構成する樹脂材料としては、例えばポリプロピレン(PP)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、又は変性ポリフェニレンエーテル(変性PPE)等が挙げられる。
【0037】
蓄電装置10では、電極板34の第1面34c側の正極36と、隣接する電極板34の第2面34d側の負極38と、正極36及び負極38の間のセパレータ40と、第1面34c及び第2面34dの間の空間を密閉する樹脂部50とによって、一層のセルが構成されている。樹脂部50は、あるセルから他のセルへとガスおよび電解液が移動することを規制している。これにより、隣接するセル間における絶縁性が確保されている。
【0038】
次に、
図4を参照して、樹脂部50と、バイポーラ電極32及びセパレータ40との構造について説明する。
図4に示されるように、積層方向から見て、セパレータ40の周縁部40aは、第1シール部52が設けられた領域に重なっている。言い換えれば、積層方向に垂直な平面(XY平面)に、セパレータ40及び第1シール部52が積層方向に投影された場合、これらの投影像は重なる(すなわちオーバーラップする)。セパレータ40は、第1シール部52が設けられた領域に達している。セパレータ40の外周端40dは、第1シール部52の外周端52dと内周端52cとの間に位置している。なお、
図4では、第1シール部52の構成が容易に理解されるよう、セパレータ40の一部が破断されたように示されている。
【0039】
電極板34の第1シール部52付近の領域においても、隣り合う2つの電極板34の間にセパレータ40が設けられているため、隣り合う電極板34の未塗工領域は直接に対面しない。隣り合う2つの電極板34において、一方の未塗工領域と、他方の未塗工領域との間に、常にセパレータ40が存在する。第1シール部52に重なるように設けられたセパレータ40は、隣り合う2つの電極板34(特に未塗工領域)が接触して短絡が発生することを防止する。セパレータ40の全周にわたって、外周端40dが、第1シール部52の外周端52dと内周端52cとの間に位置してもよい。セパレータ40の周方向の一部において、外周端40dが、第1シール部52の外周端52dと内周端52cとの間に位置してもよい。セパレータ40の周方向において、セパレータ40が第1シール部52に大きな範囲で重なっているほど、短絡の発生がより確実に防止され得る。
【0040】
図4に示すように、積層方向において隣り合う枠体60間には、周方向の複数箇所において、枠体60の内外を貫通する連通口70が形成されている。なお、
図4では、一箇所の連通口70のみ図示している。各連通口70は、積層方向に直交する方向に第1シール部52を貫通している。連通口70は、積層方向において隣り合う枠体60同士が部分的に接合されていない箇所である。連通口70は、第1シール部52内の内圧に応じて開閉する圧力調整弁(たとえば内圧が所定値を超えたときに開くガス抜き安全弁)として用いられ得る。そして、連通口70と連通するように圧力調整ユニット75が設けられており、圧力調整ユニット75は連通口70の圧力調整弁としての機能を補助または補完する。圧力調整ユニット75は、第2シール部54の樹脂層55を介して、連通口70が形成された領域52bに取り付けられている。連通口70を、第1シール部52の内部空間Vへ電解液を注入するための注液口(電解液注入口)として用いることもできる。
【0041】
以下、上述した蓄電装置10を製造する手順について、
図5〜9を参照しつつ説明する。
【0042】
まず、積層工程S1として、複数のバイポーラ電極ユニット65をセパレータ40を介して積層する。このとき、積層方向において隣り合う枠体60同士が溶着等により接合される。なお、積層工程S1では、
図6に示すように、積層方向において隣り合う枠体60の間に、上述した連通口70を形成するための入れ子80を介在させる。このとき、積層方向に直交し、枠体60の枠内から枠外まで延びるように入れ子80を介在させる。入れ子80は、たとえば均一幅および均一厚さを有する帯状のフィルム部材である。入れ子80の構成材料は、後続の工程の処理温度に対して耐性を有する程度の耐熱性を有する材料であればよく、一例として金属材料である。
【0043】
入れ子80は、積層方向において隣り合う枠体60間それぞれに配置される。枠体60の周方向に関して同じ位置に入れ子80を配置した場合には、入れ子80を配置した箇所の厚さだけが他の箇所に比べて極端に厚くなるという不具合が生じるため、入れ子80を配置する位置は枠体60の周方向に関して分散される。本実施形態では、入れ子80を配置する位置は枠体60の周方向に関して8箇所に周期的に分散されており、
図6の断面図に示すように各箇所において3つの入れ子80が8層おきに重なっている。各入れ子80は、第1シール部52の外周面52aに対して直交する方向に突出し、かつ、平行に並んでいる。本実施形態において、3つの入れ子80の枠外側の各端部80aおよび枠内側の各端部80bは積層方向において重畳している。なお、3つの入れ子80は、枠外側の各端部80aが積層方向において重畳しないように配置した場合には、チャック等による入れ子の取り外し作業の容易化が図られる。
【0044】
積層工程S1の後、樹脂充填工程S2として、入れ子80が形成された第1シール部52の外周面52aの領域52b(以下、入れ子形成領域と称す。)を樹脂で覆う。すなわち、第1シール部52の外周面52aのうちの入れ子形成領域52bを、第2シール部54となるべき樹脂54aで覆うとともに、その他の領域も樹脂54aで覆う。
【0045】
ここで、
図7に示した蓄電装置10の製造装置100を参照しつつ、樹脂充填工程S2において形成される樹脂層55を含む第2シール部54について説明する。
【0046】
図5に示す製造装置100は、具体的には、インサート成形によりシール部材50の第2シール部54を形成する竪型射出成形機であり、下型110および上型120を含む金型130と、金型130に樹脂54aを射出する射出器140とを備えて構成されている。
【0047】
下型110は、水平方向に延在しており、鉛直方向に窪んだ矩形状のキャビティ112を有する。キャビティ112の内部には、インサート物として電極積層体58が配置される。このとき、電極積層体58は、その積層方向(すなわち、積層体30の積層方向)が鉛直方向と実質的に平行となるように配置される。キャビティ112は、電極積層体58が配置されたときに、電極積層体58の周囲には略均一幅の矩形環状の空隙Gが形成される寸法に設計されている。下型110のキャビティ112内には、入れ子80が形成された外周面52aの領域52bの位置に入れ子保持部85が配置されており、入れ子保持部85においては、空隙Gの幅が狭くなっている。また、キャビティ112の深さは、
図2に示したように電極積層体58の周縁部分を積層方向から覆う部分が形成されるように、電極積層体58の高さより所定長さだけ深く設計されている。
【0048】
下型110のキャビティ112内に配置された入れ子保持部85は、
図8に示すように、入れ子形成領域52bに対面するように配置されている。本実施形態において、入れ子保持部85は下型110の一部である。入れ子保持部85は、下型110と一体的に設けられてもよく、下型110から着脱可能なように別体で設けられてもよい。入れ子保持部85は、入れ子側において入れ子形成領域52bに対面する面85aと、その反対側における面85aと平行な面85bとを有する。入れ子保持部85の面85aは、高い平面度を有する平坦面である。入れ子保持部85は、面85aから面85bまで延びる3つの貫通孔86が形成されている。各貫通孔86は、入れ子80それぞれに挿通される部分であり、各入れ子80に対応する位置に形成されている。また、各貫通孔86の断面寸法は、入れ子80の断面寸法(外周面52aに平行な断面における寸法)よりわずかに大きくなるように設計されている。ただし、入れ子保持部85の貫通孔86に入れ子80が挿通された状態では、入れ子保持部85と入れ子80との間には隙間は実質的に生じない。なお、入れ子保持部85と入れ子80との間に生じた狭小な隙間に樹脂が入り込む事態を避けるために、入れ子保持部85の面85b側において入れ子80の端部80aを把持して入れ子80の位置を固定するとともに上記隙間を塞ぐ手段を別途設けてもよい。
【0049】
上型120は、下型110と対向するように水平方向に延在しており、下型110に重ね合わされると下型110のキャビティ112を覆う。下型110に対向する上型120の対向面120aには、射出器140から射出された樹脂54aをキャビティ112に注入するためのゲート122が4つ設けられている。
【0050】
射出器140は、シール部材50の第2シール部54となるべき樹脂54aを金型130内に射出する。射出器140のノズルから射出された樹脂54aは、図示しないランナを通って上型120のゲート122まで送られる。射出器140のヘッド部142は、たとえばスクリューやプランジャによって鉛直方向に沿って進退する部分である。ヘッド部142の移動により、射出器140から射出される樹脂54aの射出量や射出圧を調整することができる。射出器140は、図示しないコントローラによって制御される。
【0051】
樹脂充填工程S2では、上述した製造装置100を用い、金型130内に電極積層体58を配置した状態で、金型130内に第2シール部となるべき樹脂54aを注入する。具体的には、コントローラ150により射出器140を制御して、上型120の各ゲート122からキャビティ112内へ樹脂54aを注入する。すると、電極積層体58の第1シール部52の外周面52aが第2シール部となるべき樹脂54aで覆われるとともに、
図9に示すように、外周面52aの入れ子形成領域52bと入れ子保持部85との間に第2シール部となるべき樹脂54aが充填される。
【0052】
樹脂充填工程S2の後、連通口形成工程S3として、外周面52aに連通口70を設ける。具体的には、第2シール部となるべき樹脂54aの硬化処理をおこない、その後、第1シール部52から各入れ子80を取り外す。入れ子80の取り外しには、入れ子80の枠外側の端部80aを把持可能なチャックを有する自動機(図示せず)を用いることができる。
【0053】
入れ子80が取り外されると、
図10に示すように、入れ子80が取り外された第1シール部52の入れ子形成領域52bには、連通口70が形成される。また、入れ子形成領域52bを覆う樹脂によって樹脂層90が形成される。樹脂層90は、取り外された入れ子80の形状に対応する貫通孔91が形成される。樹脂層90は、第1シール部52の外周面52a側の第1の面90aにおいて第1シール部52の外周面52aをシールしており、第1シール部52の外周面52a側とは反対の側の第2の面90bは入れ子保持部85の面85aと同様に平坦面となっている。
【0054】
連通口形成工程S3の後は、圧力調整ユニット取付工程S4として、入れ子形成領域52bに、樹脂層90を介して、上述した圧力調整ユニット75を取り付ける。このとき、圧力調整ユニット75の取付面が、樹脂層90の第2の面90bに対面するようにして、溶着等により取り付けられる。このとき、圧力調整ユニット75は、樹脂層90の貫通孔91を介して、第1シール部52の連通口70と連通される。
【0055】
以上において説明したとおり、上述した蓄電装置10およびその製造方法によれば、第1シール部52の外周面52a(シール端面)は、樹脂層90によってシールされる。そのため、外周面52aの枠体60同士を熱溶融させる場合に比べて、外周面52aの入れ子形成領域52bを高い確実性でシールすることができる。
【0056】
また、第1シール部52を構成する複数の枠体60の相対位置ズレ等に起因して、第1シール部52の外周面52aにある程度大きな凹凸が生じ、外周面52aの平面度が低くなることがあり得る。平面度が低い外周面52aに圧力調整ユニット75を直接取り付けると、高い取り付け強度を実現することが難しく、第1シール部52と圧力調整ユニット75との界面におけるシールが弱くなる事態が生じ得る。上述した蓄電装置10およびその製造方法によれば、樹脂層90の第2の面90bが平坦面であり高い平面度を有するため、外周面52aと樹脂層90との界面における高いシール性に加えて、樹脂層90と圧力調整ユニット75との界面における高いシール性も実現されるため、第1シール部52と圧力調整ユニット75とが高いシール性で結合されている。
【0057】
本発明は、上述した実施形態に限定されず、様々な態様を取り得る。
【0058】
たとえば、入れ子形成領域52bを覆う樹脂層90は、必ずしも、第2シール部54の一部分でなくてもよく、第2シール部54と同時に形成されなくてもよい。すなわち、第2シール部54を形成する前に、入れ子形成領域52bのみを覆う樹脂層90を形成してもよい。また、第2シール部54を形成する際に、入れ子形成領域52bが露出するように第2シール部54を形成し、その露出した入れ子形成領域52bを覆うように樹脂層9−を形成してもよい。この場合においても、入れ子形成領域52bが樹脂層90によってシールされることで、入れ子形成領域52bが高い確実性でシールされる。
【0059】
また、下型110のキャビティ112内に配置される入れ子保持部85は、圧力調整ユニット75の全部または一部であってもよい。この場合、圧力調整ユニット75が、上述した入れ子保持部85と同一の形状または同様の形状の部分を有する。この場合、樹脂充填工程S2において第1シール部52の入れ子形成領域52bと圧力調整ユニット75との間に充填される樹脂54aが、連通口形成工程S3において樹脂層90となる。そのため、連通口形成工程S3において、第1シール部52と圧力調整ユニット75とが樹脂層90を介して結合されるため、圧力調整ユニット取付工程S4を省略することができる。なお、この場合においても、第1シール部52の外周面52aは、樹脂層90によってシールされ、外周面52aの入れ子形成領域52bが高い確実性でシールされる。
【0060】
さらに、入れ子80の形状は、上述した均一厚さを有するものに限らず、連通口形成工程S3における取り外し易さの観点から、不均一な厚さを有するものであってもよい。たとえば、
図11に示すように、枠内側にある端部80b側から枠外側にある端部80a側に向かって漸次厚さが増加する部分80cを有する入れ子80Aとすることができる。漸次厚さが増加する部分80cは、樹脂層90に対応する部分に形成されている。そのため、入れ子80Aは、連通口形成工程S3において樹脂層90から容易に取り外すことができる。たとえば、入れ子80A全体を漸次厚さが増加する部分80cとすることで(すなわち、枠内側にある端部80bから枠外側にある端部80aまで漸次厚さが増加することで)、連通口形成工程S3において第1シール部52からも入れ子80Aが取り外しやすくなる。
【0061】
また、上記実施形態又は変形例では、蓄電装置10がニッケル水素二次電池の例を挙げて説明したが、蓄電装置10はリチウムイオン二次電池であってもよい。この場合、正極活物質は、例えば複合酸化物、金属リチウム、硫黄等である。負極活物質は、例えば黒鉛、高配向性グラファイト、メソカーボンマイクロビーズ、ハードカーボン、ソフトカーボン等のカーボン、リチウム、ナトリウム等のアルカリ金属、金属化合物、SiOx(0.5≦x≦1.5)等の金属酸化物、ホウ素添加炭素等である。