(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
pH指示薬と、機能性物質と、担体と、を含有する層を備え、前記pH指示薬は、第四級アンモニウム塩によって前記担体に固定されており、前記機能性物質は、金属酸化物であることを特徴とする、機能性シート。
pH指示薬と、機能性物質と、担体と、を含有する層を備え、前記pH指示薬は、第四級アンモニウム塩によって前記担体に固定されており、前記機能性物質は、シクロデキストリンであることを特徴とする、機能性シート。
pH指示薬と、機能性物質と、担体と、を含有する層を備え、前記pH指示薬は、第四級アンモニウム塩によって前記担体に固定されており、前記機能性物質は、炭酸ガス発生剤であることを特徴とする、機能性シート。
前記層は、繊維を含み、前記繊維によって形成される空隙に、前記pH指示薬が固定された前記担体と、前記機能性物質と、が保持されていることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の機能性シート。
前記層に隣接する隣接層は、熱融着性樹脂を含み、前記層中に存在する前記pH指示薬を固定した担体の一部が当該熱融着性樹脂で被覆された状態で固定されていることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の機能性シート。
前記第四級アンモニウム塩は、塩化ベンジルコニウム、塩化セチルピリジウム、塩化ベンゼトニウム、およびジデシルジメチルアンモニウム塩からなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の機能性シート。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1を参照して、本発明の実施の形態に係る機能性シート(不織布)の構成について説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係る機能性シートの構成を、限定目的ではなく例示目的で示す図である。図中において、同一の符号は同一の構成要素を示す。同一の構成要素に関しては、重複する説明を省略する場合がある。
【0013】
図1(a)〜(c)は、本発明の実施の形態に係る、pH指示薬Iと機能性物質Dとを含有する層(以下、単に機能性物質含有層ともいう)100を備える機能性シートを示す。
図1(a)は、機能性物質含有層100のみからなる機能性シートである。
図1(b)および(c)は、機能性物質含有層100の片面または両面に他の層300が積層された機能性シートである。
【0014】
本発明の実施の形態に係る機能性シートは、このように、単層構造を有していてもよく、2層、3層、または図示しない4層以上の多層構造を有していてもよい。機能性シートは、機能性物質含有層100を2層以上含んでいてもよい。他の層300は、例えば、機能性シートの表面を改質する目的や、機能性シートに強度(剛性)を付与する目的など、機能性シートに何らかの機能性を付与する目的等で配設することができる。他の層300には、例えば、布、不織布、紙、フィルム等のシートを用いることができる。他の層300には、熱融着性樹脂が含まれていてもよい。機能性シートが複数の層300を備える場合、これらの層300は、同一材料であっても異なる材料であってもよい。
【0015】
ただし、本発明の実施の形態に係る機能性シートは、その機能性物質含有層100に含まれるpH指示薬によりもたらされるシートの色変化により、機能発揮中であるか否かのステータスが視覚により認識される。そのため、本発明の実施の形態に係る機能性シートは、機能性物質含有層100が最外層である構成、または、最外層が機能性物質含有層100以外の他の層300であっても、他の層300を介して外部から機能性物質含有層100の色を視認可能な構成を有する。
【0016】
機能性物質含有層100には、pH指示薬Iおよび機能性物質Dが含まれていることができる。ここで、pH指示薬Iは、後述するように、担体に固定された形態で機能性物質含有層に配合される。つまり、機能性物質含有層100は、pH指示薬Iおよび機能性物質Dに加えて、pH指示薬Iが固定される担体を含む。
【0017】
以下、本明細書において、「機能性シートにpH指示薬が含まれている」構成について言及する際には、特段の記載がない限り、「pH指示薬は担体に固定された形態で含まれている」構成を意図しているものとする。「pH指示薬は担体に固定された形態で含まれている」というとき、機能性シートに配合されたpH指示薬は、その全量が担体に固定されていてもよいのはもちろんであるが、必ずしも全量が担体に固定されていなくてもよい。つまり、機能性シートには、担体に固定されていないpH指示薬が含まれていてもよい。pH指示薬Iおよび機能性物質Dは、それぞれ一種類が含まれていることができ、また、これに限定されず、機能性シートの同一層および/または異なる層に複数種類が含まれていることができる。pH指示薬Iおよび機能性物質Dの種類については後述する。
【0018】
機能性物質含有層100には、pH指示薬Iおよび機能性物質Dに加えて、繊維、熱融着性樹脂、および効果促進剤などが含まれていてもよい。繊維、熱融着性樹脂、および効果促進剤は、それぞれ、一種類であっても複数種類であってもよい。
【0019】
機能性シートからpH指示薬Iおよび機能性物質Dが粉落ちしないための構成の例として、以下の第1の態様から第6の態様に示すような具体的態様を説明する。
【0020】
(第1の態様)
図1(d)は、機能性物質含有層100が繊維Fを含む例である。繊維Fを含む機能性物質含有層110において、pH指示薬I、および機能性物質Dは、繊維Fによって形成される空隙、すなわち繊維Fが構成する繊維構造物中の空隙に保持されることによって、粉落ちが防止されている。
【0021】
繊維を含む機能性物質含有層110には、pH指示薬I、機能性物質D、および繊維Fのみが含まれていることができる。また、繊維を含む機能性物質含有層110には、pH指示薬I、機能性物質D、および繊維Fに加えて、熱融着性樹脂、および効果促進剤などが含まれていてもよい。また、繊維F自体が、熱融着性樹脂であってもよい。
【0022】
本態様において、機能性シートは、例えば表面改質や強度(剛性)付与等の機能性付与の目的で、繊維を含む機能性物質含有層110の片面または両面に他の層300が積層された多層構造(不図示)を有していてもよい。
【0023】
ただし、上述のように、本発明の実施の形態に係る機能性シートは、その機能性物質含有層100に含まれるpH指示薬によりもたらされるシートの色変化により、機能発揮中であるか否かのステータスが認識される。そのため、本態様に係る機能性シートは、繊維を含む機能性物質含有層110が最外層である構成、または、最外層が繊維を含む機能性物質含有層110以外の他の層300であっても、他の層300を介して繊維を含む機能性物質含有層110の色を認識可能な構成を有する。
【0024】
(第2の態様)
図1(e)は、機能性物質含有層100が熱融着性樹脂Aを含む例である。熱融着性樹脂を含む機能性物質含有層120は、pH指示薬Iと、機能性物質Dと、熱融着性樹脂Aと、を含む混合物中の熱融着性樹脂Aを溶融することにより得られたものである。この例では、機能性物質含有層中の、pH指示薬Iおよび機能性物質Dは、一部が前記熱融着性樹脂Aで被覆された状態で固定(結着または固着ともいう)される。
【0025】
熱融着性樹脂を含む機能性物質含有層120において、pH指示薬Iおよび機能性物質Dは、溶融した熱融着性樹脂Aが固化する際に、一部が被覆された状態で固着されることによって、粉落ちが防止されている。また、熱融着性樹脂Aは、pH指示薬Iおよび機能性物質Dの全体を被覆しないような量で配合されており、pH指示薬Iおよび機能性物質Dは、熱融着性樹脂Aによって被覆されていない部分を有し、シート使用時における水との接触および溶出が保証されている。
【0026】
熱融着性樹脂を含む機能性物質含有層120には、pH指示薬I、機能性物質D、および熱融着性樹脂Aのみが含まれていることができる。また、熱融着性樹脂を含む機能性物質含有層120には、pH指示薬I、機能性物質D、および熱融着性樹脂Aに加えて、繊維、および効果促進剤などが含有されていてもよい。また、熱融着性樹脂A自体が、繊維状であってもよい。
【0027】
本態様において、機能性シートは、例えば表面改質や強度(剛性)付与等の機能性付与の目的で、熱融着性樹脂を含む機能性物質含有層120の片面または両面に他の層300が積層された多層構造(不図示)を有していてもよい。
【0028】
ただし、上述のように、本発明の実施の形態に係る機能性シートは、その機能性物質含有層100に含まれるpH指示薬によりもたらされるシートの色変化により、機能発揮中であるか否かのステータスが認識される。そのため、本態様に係る機能性シートは、機能性物質含有層120が最外層である構成を有するか、または、最外層が他の層300であっても、他の層300を介して機能性物質含有層120の色を認識可能な構成を有する。例えば、他の層300は、メッシュ構造であったり、厚さが薄く下層が透けて見えるものであったり、透明または半透明の材料で構成されていたりしてもよい。
【0029】
(第3の態様)
図1(f)は、機能性物質含有層100に隣接する層が熱融着性樹脂Bを含む例である。機能性物質含有層100に隣接する、熱融着性樹脂Bを含む層200は、機能性物質含有層100の表面に熱融着性樹脂Bを配置して熱により熱融着性樹脂Bを溶融することにより得られたものである。この例では、機能性物質含有層100中の、pH指示薬Iおよび機能性物質Dは、その一部が前記熱融着性樹脂Bで被覆された状態で固定されている。なお、層120に含まれる熱融着性樹脂Aと、層200に含まれる熱融着性樹脂Bとは、同じで樹脂であっても異なる樹脂であってもよい。
【0030】
機能性物質含有層100に含まれる機能性物質Dは、これに隣接する熱融着性樹脂Bを含む層200において溶融した熱融着性樹脂Bが固化する際に、一部が被覆されて固着されることによって、粉落ちが防止されている。また、機能性物質Dは、熱融着性樹脂Bによって被覆されていない部分を有し、シート使用時における水との接触および溶出が保証されている。
【0031】
熱融着性樹脂Bを含む層200には、熱融着性樹脂Bのみが含まれていることができる。また、熱融着性樹脂Bを含む層200には、熱融着性樹脂Bに加えて、繊維、および効果促進剤などが含まれていてもよい。これら他の成分が含まれる場合は、熱融着性樹脂Bを含む層200は、機能性物質含有層100の表面に熱融着性樹脂Bとこれら他の成分との混合物を配置して熱により熱融着性樹脂Bを溶融することにより得ることができる。
【0032】
図1(f)に示す例の機能性シートは、詳細には、熱融着性樹脂Bを含む層200と、pH指示薬Iおよび機能性物質Dからなる機能性物質含有層100と、pH指示薬I、機能性物質D、および熱融着性樹脂Aを含む機能性物質含有層120と、からなる3層構造を有する。この例の場合、機能性物質含有層120もまた、中間層として位置付けられた機能性物質含有層100に含まれるpH指示薬Iおよび機能性物質の粉落ち防止に寄与し得る。
【0033】
ここでは、pH指示薬Iおよび機能性物質Dからなる機能性物質含有層100と、pH指示薬Iおよび機能性物質Dに加えてさらに熱融着性樹脂Aを含む機能性物質含有層120と、を別々の層として図示および説明したが、この2つの層が一体的に構成されていて、構成材料である、pH指示薬I、機能性物質、および熱融着性樹脂Aが、厚さ方向において偏在している1層の機能性物質含有層120を成している構成も、本態様に含まれる。本態様によれば、特に、機能性物質含有層120の1つの表面側に粉末状の材料が偏在している場合に、その表面に隣接して層200を配置することで、粉落ちを有効に防止することができる。
【0034】
また、層100および層120の両方に、pH指示薬Iと機能性物質Dとが含まれるものとして図示および説明したが、pH指示薬Iは、層100および層120のうちのどちらか一方にのみ含まれていてもよい。機能性シートの色変化の視認性の観点から、pH指示薬Iは、機能性シートの、より外面側に含まれていることが好ましい。
【0035】
本態様において、熱融着性樹脂Bを含む層200は、機能性物質含有層の両面に設けられていてもよい。すなわち、例えば、熱融着性樹脂Bを含む層200と、機能性物質含有層と、熱融着性樹脂Bを含む層200と、をこの順で含む構成(不図示)は、本態様の範囲である。
【0036】
本態様において、機能性シートは、例えば表面改質や強度(剛性)付与等の機能性付与の目的で、機能性物質含有層および熱融着性樹脂Bを含む層200の積層体の外面のうちの片面または両面に他の層300が積層された多層構造(不図示)を有していてもよい。その場合、他の層300には、機能性シートの色変化の視認を妨げないような構成が採用される。
【0037】
(第4の態様)
上述の本発明の実施の形態に係る機能性シートは、ヒートシール加工によって形成されていてもよい。1つの例として、
図1(g)は、機能性物質含有層100の両面に熱融着性樹脂を含む他の層300が積層され、四辺がヒートシールされた構成を示す。他の層300の少なくとも一方は、他の層300を介して機能性物質含有層100の色を認識可能な構成を有する。
【0038】
(第5の態様)
図1(h)は、機能性物質含有層100に隣接して接着層が設けられている例である。機能性物質含有層に隣接する接着層500は、機能性物質含有層の表面に接着層を配置することにより得られたものである。接着層としては、機能性物質含有層100に含まれるpH指示薬Iおよび機能性物質Dの粉落ちが防止されるように粘着機能を示す層であれば特に限定されないが、例えば、ホットメルト接着剤等が挙げられる。
【0039】
詳細には、
図1(h)に示す例の機能性シートは、機能性物質含有層100と他の層300との間に、例えば熱可塑性樹脂のようなホットメルト接着剤からなる接着層500を介在させて、ホットメルト加工により層間接着された構成を有する。
【0040】
より詳細には、
図1(h)に示す例の機能性シートは、機能性物質含有層100の、接着層500とは反対側の面に、pH指示薬I、機能性物質Dおよび熱融着性樹脂Aを含む機能性物質含有層120を有する。
図1(h)に示す例の機能性シートにおいても、
図1(f)に示す例の場合と同様に、熱融着性樹脂Aを含む機能性物質含有層120は、中間層として位置付けられた機能性物質含有層100に含まれるpH指示薬Iおよび機能性物質Dの粉落ち防止に寄与し得る。また、ここでは機能性物質含有層100と、pH指示薬I、機能性物質Dおよび熱融着性樹脂Aを含む機能性物質含有層120とを別々の層として図示および説明したが、この2つの層が一体的に構成されていて、構成材料であるpH指示薬I、機能性物質Dおよび熱融着性樹脂Aが厚さ方向において偏在している1層の機能性物質含有層120を成している構成も、本態様に含まれる。本態様によれば、特に、機能性物質含有層120の1つの表面側に粉末状の材料が偏在している場合に、その表面に隣接して層200を配置することで、粉落ちを有効に防止することができる。
【0041】
また、pH指示薬Iおよび機能性物質Dは、最外層である層120と、それよりも内側の層である層100と、の両方の層に含まれるものとして図示および説明したが、pH指示薬Iは、そのうちのどちらか一方にのみ含まれていてもよい。機能性シートの色変化の視認性の観点から、pH指示薬Iは、機能性シートの、より外面側に含まれていることが好ましい。
【0042】
(第6の態様)
上述の本発明の実施の形態に係る機能性シートは、エンボス加工によって形成されていてもよい。1つの例として、
図1(i)は、熱融着性樹脂Aを含む機能性物質含有層120の両面に他の層300が積層され、エンボス加工により層間接着された構成を示す。他の層300の少なくとも一方は、他の層300を介して機能性物質含有層100の色を認識可能な構成を有する。
【0043】
以上、
図1(a)から(i)を用いて本発明の機能性シートの構成を説明した。しかしながらこれらは例示であり、これ以外の構成、例えば例示した各態様の組み合わせも本発明の範囲に含まれる。例えば、図中で機能性物質含有層100として示した層は、繊維Fを含む機能性物質含有層110、または熱融着性樹脂Aを含む機能性物質含有層120であってもよく、あるいは、繊維Fおよび熱融着性樹脂Aの両方を含む層であってもよい。同様に、これらの層間で層を置き換えた構成は、本発明の範囲に含まれる。
【0044】
以下に、本発明に係る機能性シートの構成要素の詳細について説明する。
【0045】
<機能性シート(不織布)>
本発明の実施の形態に係る機能性シートは、pH指示薬と機能性物質と担体とを含有する層を備える機能性シートであって、前記pH指示薬は、第四級アンモニウム塩によって前記担体に固定された形態で前記層に含有されていることを特徴とする機能性シートである。
【0046】
前記「シート」は、「不織布シート」または単に「不織布」と表現することも可能である。すなわち、上記の本発明の実施の形態に係るシートは、pH指示薬と機能性物質とを含有する層を備えた不織布であるということもできる。本明細書において、「pH指示薬と機能性物質とを含有する層」を、単に「機能性物質含有層」ともいうものとする。機能性物質含有層は非水系の製造方法で設けられたものであり、不織布であることが好ましい。
【0047】
<機能性物質を含有する層>
本発明の実施の形態の機能性シート(不織布)は、機能性物質を含有する層を有する。本明細書では、機能性物質を含有する層を、機能性物質含有層とも呼ぶ。機能性物質含有層に含まれる機能性物質は、一種類に限定されず、複数種類であってもよい。また、機能性物質含有層には、機能性物質に加えて、pH指示薬、繊維、熱融着性樹脂、および効果促進剤などが含有されていてもよい。機能性物質含有層が複数あるときは、pH指示薬は、少なくとも1つの層、好ましくは最も外側に近い層に含まれる。
【0048】
<機能性物質>
本発明の実施の形態に用いられる機能性物質Dとは、水と接触して機能を発揮する物質、または水を介した反応により機能を発揮する物質である。
【0049】
機能性物質の非限定的な例には、金属酸化物および/または金属水酸化物、シクロデキストリン、炭酸ガス発生剤等が挙げられる。また、これらに限定されず、水と接触して機能を発揮する物質、または水を介した反応により機能を発揮することのできる物質を本発明の実施の形態に係る機能性物質として用いることができる。
【0050】
(金属酸化物および/または金属水酸化物)
(金属酸化物)
本発明の実施の形態で用いることのできる金属酸化物は、水と接触して強アルカリになる金属酸化物であり、好ましくは2価の金属の酸化物であり、より好ましくは周期表2族元素の金属の酸化物であり、さらに好ましくはMO(前記Mは、Mg、Ca、SrまたはBaである)で表される金属酸化物であり、特段好ましくはアルカリ土類金属の酸化物である。非限定的な例として、酸化マグネシウム(11.4)、酸化カルシウム(12.7)、酸化ストロンチウム(13.2)、酸化バリウム(13.4)、および酸化マンガン(10.6)を好ましく使用することができる。なお、物質名の後の括弧内の数値は、酸解離定数pKaの値を示す。用途や所望の効果に応じて、使用する金属酸化物を選択することができる。例えば、食品に接する用途においては、安全性等の観点から、酸化カルシウムが好ましく使用される。これらの金属酸化物は、単独で使用することができ、また、併用することもできる。
【0051】
(金属水酸化物)
本発明の実施の形態で用いることのできる金属水酸化物は、水と接触して強アルカリになる金属水酸化物であり、好ましくは2価の金属の水酸化物であり、より好ましくは周期表2族元素の金属の水酸化物およびであり、さらに好ましくはM(OH)
2(前記Mは、Mg、Ca、SrまたはBaである)で表される金属水酸化物であり、特段好ましくはアルカリ土類金属の水酸化物である。非限定的な例として、水酸化マグネシウム(11.4)、水酸化カルシウム(12.7)、水酸化ストロンチウム(13.2)、水酸化バリウム(13.4)、および水酸化マンガン(10.6)を好ましく使用することができる。物質名の後の括弧内の数値は、酸解離定数pKaの値を示す。用途や所望の効果に応じて、使用する金属水酸化物を選択することができる。例えば、食品に接する用途においては、安全性等の観点から、水酸化カルシウムが好ましく使用される。これらの金属水酸化物は、単独で使用することができ、また、併用することもできる。
【0052】
このように、金属成分を含有する層は、金属酸化物および/金属水酸化物を含有する層であって、前記金属酸化物および/金属水酸化物を構成する前記金属成分は、前記金属酸化物および/金属水酸化物が水と接触して強アルカリになるような金属成分である。金属成分の好ましくは2価の金属であり、より好ましくは周期表2族元素の金属であり、さらに好ましくはM(前記Mは、Mg、Ca、SrまたはBaである)で表される金属であり、特段好ましくはアルカリ土類金属である。
【0053】
本発明の実施の形態で用いることのできる金属酸化物および/または金属水酸化物は、粉末(粒子)の形態で用いられる。粉末(粒子)の形態の金属酸化物および/または金属水酸化物は、当技術分野で知られている任意の方法で得ることができる他、メーカーから販売品を購入することができる。例えば、酸化カルシウムの場合は、ナチュラルジャパン株式会社のオホーツクカルシウム、およびユニセラ株式会社のホタテ貝殻焼成パウダーなどを好適に使用することができる。また、例えば、水酸化カルシウムの場合は、株式会社抗菌研究所が製造し菱江化学株式会社が販売するスカロー(登録商標)などを好適に使用することができる。なお、酸化カルシウムや水酸化カルシウムの場合、カルシウム原料としては、ホタテ貝殻から得られるカルシウム(炭酸カルシウム)を好適に用いることができるが、これに限定されず、他の貝の貝殻(例えば、牡蠣の貝殻など)、動物の骨(例えば、ウニの殻など)、および鉱物などから得られるものであってもよい。
【0054】
前記金属酸化物および/または金属水酸化物の粉末(粒子)の平均粒径は限定的ではないが、1〜1000μmが好ましく、2〜800μmがより好ましい。前記平均粒径が小さすぎるとシート(不織布)からの脱落や、製造工程において飛散による作業効率の低下、などの懸念がある。また、前記平均粒径が大きすぎると、均一に不織布全体に配合することが難しくなる場合がある。
【0055】
(シクロデキストリン)
シクロデキストリンは、サイクロデキストリンまたは環状オリゴ糖とも呼ばれ、ゲストとして種々の分子を空洞に取り込み(包接し)包接錯体を形成する性能、および取り込んだゲスト分子を徐放する性能を有する。シクロデキストリン1分子中に含まれるグルコース基の数が6個のα−シクロデキストリン、7個のβ−シクロデキストリン、8個のγ−シクロデキストリンのいずれも、包接される機能性成分との相性を勘案して使用することができる。シクロデキストリンはメチル化、ヒドロキシル化、アセチル化等の化学修飾がされていてもよい。また、シクロデキストリンは、分岐を有していてもよい。これらのシクロデキストリンは、本発明の実施の形態において、単独で使用することができ、また、併用することもできる。
【0056】
本発明の実施の形態では、上述のようなシクロデキストリンに、機能性成分を包接させたものを使用することができる。使用するシクロデキストリンには機能性成分を包接していない空のシクロデキストリンが含まれていてもよい。
【0057】
(シクロデキストリンに包接される機能性成分)
シクロデキストリンに包接される機能性成分としては、シクロデキストリンを含有する機能性シートの用途および目的等に応じてさまざまな機能性成分を用いることができる。
【0058】
機能性成分として、例えば、ワサビ成分、マスタード成分、唐辛子成分、ジンジャー成分、レモン成分、オレンジ成分、グレープフルーツ成分、ユズ成分、ウメ成分、抹茶成分、アーモンド成分、天然ミートフレーバー、ローズ、ハーブなどの抽出成分、植物抽出エキス、茶抽出物等の天然物系抗菌剤もしくは香料、l-メントール成分等の天然系または有機系揮発性抗菌剤もしくは香料、コエンザイムQ10やイソフラボン等の化粧品原料等が挙げられる。
【0059】
上述のもの以外にも、機能性成分としては、例えば:薬用成分、保湿剤、感触向上剤、酸化防止剤、還元剤、酸化剤、防腐剤、抗菌剤、pH調整剤、紫外線吸収剤、美白剤、ビタミン類およびその誘導体類、消炎剤、抗炎症剤、育毛用薬剤、血行促進剤、刺激剤、ホルモン類、抗しわ剤、抗老化剤、ひきしめ剤、冷感剤、温感剤、創傷治癒促進剤、刺激緩和剤、鎮痛剤、細胞賦活剤、植物・動物・微生物エキス、鎮痒剤、角質剥離・溶解剤、制汗剤、清涼剤、収れん剤、香料、色素、着色剤、消炎鎮痛剤、抗真菌剤、抗ヒスタミン剤、催眠鎮静剤、精神安定剤、抗高血圧剤、降圧利尿剤、抗生物質、麻酔剤、抗菌性物質、抗てんかん剤、冠血管拡張剤、生薬、補助剤、湿潤剤、止痒剤、角質軟化剥離剤、防腐殺菌剤、脂溶性物質、消臭成分等の公知の化合物を、用途および目的に応じて任意に選択することができる。
【0060】
これらの機能性成分は、シクロデキストリンを含有する機能性シート中において、単独で使用されることができ、また、併用されることもできる。
【0061】
(機能性成分が包接されたシクロデキストリン)
本発明の実施の形態において、機能性成分が包接されたシクロデキストリンは、粉末(粒子)の形態で用いられる。粉末(粒子)の形態の、機能性成分が包接されたシクロデキストリンは、当技術分野で知られている任意の方法で得ることができる他、メーカーから販売品を購入することができる。例えば、塩水港製糖株式会社製のデキシーエース(サイクロデキストリン利用製品)や株式会社シクロケム製のCAVAMAX(登録商標)などを好適に使用することができる。これらの、粉末(粒子)の形態の、機能性成分が包接されたシクロデキストリンには、機能性成分が包接された状態のシクロデキストリンに加えて、機能性成分が包接されていない状態のシクロデキストリンが含まれていてもよい。
【0062】
(炭酸ガス発生剤)
炭酸ガス発生剤は、塩基と酸との反応により炭酸ガスを発生する2成分系の材料である。これらの材料は、好ましくは、別々の層に配合される。本発明の実施の形態に係る炭酸ガス発生剤は、炭酸塩および/または重炭酸塩と、固体の酸と、の組み合わせである。
【0063】
(炭酸塩および/または重炭酸塩)
炭酸塩または重炭酸塩としては、化粧料として使用する場合は、化粧料で使用できるグレードのものであれば特段の限定無く使用でき、その他の用途で使用する場合は、特段グレードを規定しない。例えば、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、セスキ炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、重炭酸マグネシウム、重炭酸カルシウムもしくはその誘導体等を用いることができる。炭酸塩および/または重炭酸塩は2種以上を併用しても構わない。炭酸塩および/または重炭酸塩は、固体状の組成物であり、例えば粒子の形態であることが好ましい。炭酸塩および/または重炭酸塩は、例えばシリカ等の担持体に担持させた形態であってもよい。また、炭酸塩および/または重炭酸塩は結晶水として水を含んでいてもよい。結晶水を含むと水への溶解度が高くなり、反応性が向上する。ただし、保存安定性の観点から、炭酸塩層は、加水分解や酸との反応が開始される等、変質の原因となる水分を含まないことが好ましい。本発明に使用する炭酸塩または重炭酸塩としては、平均粒子径5〜5000μmの粒子が好ましい。平均粒子径5〜5000μmであれば、粒子の脱落が少なく、適度な粒状感により、良好な使用感が得られる。
【0064】
(酸)
酸としては、化粧料として使用する場合は、化粧料で使用できるグレードのものであれば特段の限定無く使用でき、その他の用途で使用する場合は、特段グレードを規定しない。例えば、マロン酸、マレイン酸、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、コハク酸、フマル酸、ヒアルロン酸、リン酸二水素ナトリウムもしくはその誘導体、加水分解されて酸を生じる物質等を用いることができる。酸は2種以上を併用しても構わない。酸は、固体状の組成物であり、例えば粒子の形態であることが好ましい。また、酸は結晶水として水を含んでいてもよい。結晶水を含むと水への溶解度が高くなり、反応性が向上する。ただし、保存安定性の観点から、酸層は、加水分解や炭酸塩との反応が開始される等、変質の原因となる水分を含まないことが好ましい。本発明に使用する酸としては、平均粒子径5〜5000μmの粒子が好ましい。平均粒子径5〜5000μmであれば、粒子の脱落が少なく、適度な粒状感により、良好な使用感が得られる。平均粒子径を小さくすると溶解速度が速くなり、水に濡らしてすぐに反応が進むため、使用初期のCO
2ガス発生量が多くなる。
【0065】
また、肌に使用する場合は、粒状感を低減することができる。一方、平均粒子径を大きくすると、水と接触した際、溶解が徐々に進むため、炭酸ガス発生の持続時間を延長する効果がある。また、平均粒子径を大きくすることで粒子脱落を少なくする効果がある。
【0066】
<pH指示薬>
pH指示薬は、酸塩基指示薬とも称され、溶液中の水素イオンに反応し、水素イオン濃度に応じて色調が変化する指示薬であれば、特に限定されない。
【0067】
本発明の実施の形態に適用可能なpH指示薬の例として、メチルバイオレッド、チモールブルー、コンゴーレッド、メチルイエロー、ブロモチモールブルー(ブロムチモールブルーとも呼ばれる)、メチルレッド、メチルオレンジ、リトマス、ブロモクレゾールパープル(ブロムクレゾールパープルとも呼ばれる)、フェノールレッド、フェノールフタレイン、クレゾールフタレイン、チモールフタレイン、アリザリンイエローR、エリオクロムブラックT等の合成色素が挙げられる。また、赤キャベツ色素、シソ色素、ムラサキイモ色素、アカダイコン色素、ムラサキトウモロコシ色素、エルダーベリー色素、ブドウ/ブルーベリー色素等の天然色素を使用することができる。
【0068】
これらの合成色素および天然色素は、一般に知られており、メーカーから販売品を購入することができる。本明細書において、pH指示薬を、単に色素とも呼ぶ。
【0069】
pH指示薬は、1種類のみを使用してもよいが、2種類以上を組み合わせて使用することで、広い範囲のpHの変化に対応した不織布製品を提供することができる。例えば、メチルオレンジとブロモチモールブルーとを組み合わせることで、pH2〜9の範囲で色調を変化させることができる。
【0070】
<担体>
担体は、pH指示薬を機能性シート(不織布)に固定するための土台となる物質である。担体は、担持体、または支持体とも称される。また、担体は、機能性シートのうちpH指示薬が配合される機能性物質含有層の構成要素でもある。例えば、不織布シートが繊維で構成される構造体である場合、pH指示薬は、かかる繊維を担体として、不織布シートに固定されてもよい。あるいはまた、pH指示薬は、かかる繊維以外の成分、例えば粒子状物質を担体として、かかる繊維が構成する繊維構造物中の空隙に担体が保持されることによって、不織布シートに固定されてもよい。あるいはまた、その両方であってもよい。
【0071】
本発明の実施の形態に適用可能な担体の例としては、木材、麻、綿、マニラ麻等に由来するパルプ、セルロース、ヘミセルロース、微結晶セルロース、イオン交換セルロースのようなセルロース系物質、ナイロン、ポリエステル、アクリル等の合成繊維、カオリン、合成シリカ、ガラス、ケイ酸アルミニウム、ゼオライト、ベントナイト等の粘土鉱物の微粉末、でんぷん、タンパク質などが挙げられる。担体の形状は、特に制限はなく、粒子状であってもよく、繊維状であってもよい。
【0072】
パルプとは、木材その他の植物から機械的または化学的処理によって取り出されたセルロース繊維の集合体である。植物、特にはその細胞壁は、一般に、水不溶性の多糖類として、セルロースおよびヘミセルロースを構成成分に含む。このうち、セルロースは、分子式(C
6H
10O
5)
nで表される多糖類(炭水化物)であり、ヘミセルロースは、非セルロース系の多糖類の総称である。パルプは、セルロースを主成分とし、一般には、セルロースとヘミセルロースとの両方を含むが、セルロースのみを含むものであってもよい。以下、本明細書において、セルロースおよびヘミセルロースを総称的にセルロースと呼ぶこともある。つまり、本明細書において、例えば、セルロース繊維は、セルロースを主成分とし、セルロースのみからなるものであってもよく、また、セルロースおよびヘミセルロースを含むものであってもよい。
【0073】
パルプは、針葉樹、広葉樹等の木材原料から得られる木材パルプであってもよく、綿、麻等の草本類のような非木材原料を原料とする非木材パルプであってもよい。木材パルプは、例えば、木材チップに対してクラフト蒸解等の処理を行って得ることができるが、製法はこれに限定されず、知られている方法により製造された木材パルプは、本発明の実施の形態に適用可能な担体の例に含まれる。
【0074】
微結晶セルロースとは、パルプを加水分解して非結晶領域を除いて得られたものであり、主成分は結晶セルロースである。
【0075】
イオン交換セルロースとは、セルロースに正または負に荷電する基を導入して、イオン交換体としての性質を与えたものである。イオン交換セルロースの例には、ジエチルアミノエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ホスホセルロース等が含まれる。
【0076】
セルロース誘導体とは、セルロースを部分的に変性した高分子化合物である。上述のイオン交換セルロースも、セルロース誘導体の一種である。セルロース誘導体の例には、酢酸セルロース、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)等が含まれる。
【0077】
不織布に配合したときの地合や外観が優れている点から、セルロース繊維を好ましく用いることができる。セルロース繊維は、長繊維状であってもよく、短繊維状であってもよく、粉末状に加工されていてもよい。繊維長で示すと0.01mm〜5mm程度のセルロース繊維を、好ましく使用することができる。例えば、レッテンマイヤー社製の粉末セルロースには、平均繊維長が18μmから2.2mmまでの製品があり、適する繊維長のセルロース繊維を使用することができる。
【0078】
粉末状のセルロース繊維は前処理なく色素コーティング処理に使用できる。シート状のセルロース繊維は、色素コーティング処理の前処理として、後段の機械処理に適した大きさに切断後、解繊して使用してもよい。
【0079】
<第四級アンモニウム塩>
第四級アンモニウム塩は、pH指示薬の発色を促進して色変わりを明瞭にし、またpH指示薬の担体への付着を強化するために配合される。
【0080】
第四級アンモニウム塩は、第四級アンモニウムカチオンと他のアニオンとの塩である。第四級アンモニウムカチオンは、分子式NR4+(式中、Rはアルキル基またはアリール基)で表される正電荷を持った多原子イオンであり、溶液中において、溶液のpHに左右されずに常に帯電している材料として知られている。この第四級アンモニウムカチオンが、界面活性作用やイオン結合のような化学的結合によって、pH指示薬を担体へ付着させるものと考えられる。
【0081】
本発明の実施の形態に適用可能な第四級アンモニウム塩の例としては、塩化セチルトリメチルアンモニウム、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ラウリルトリメチルアンモニウム、塩化ベンジルトリメチルアンモニウム、塩化ベンジルトリエチルアンモニウム、塩化セチルピリジウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム 、塩化ジアルキルジメチルアンモニウム、塩化ジデシルジメチルアンモニウム、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム等が挙げられる。塩化セチルピリジウム、塩化ベンゼトニウム、または塩化ジデシルジメチルアンモニウムを好ましく用いることができる。特に、塩化ベンジルコニウムを好ましく用いることができる。
【0082】
<結合剤>
結合剤は、pH指示薬を担体に固定するために使用される。結合剤は、pH指示薬の呈色反応に悪影響を及ぼさないものが望ましい。また、結合剤は、非水溶性の高分子化合物であることが好ましい。
【0083】
本発明の実施の形態に適用可能な結合剤の例としては、ニトロセルロース、酢酸セルロース、エチルセルロース等のセルロース誘導体、または、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、塩化ビニル共重合体樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリ酢酸ビニルエマルジョン、アクリル酸エステル共重合体エマルジョン、塩化ビニリデン共重合体エマルジョン、エポキシ樹脂エマルジョン、合成ゴムラテックス等の合成樹脂類が挙げられる。
【0084】
担体へpH指示薬を固定するために結合剤を使用する場合、まず、pH指示薬および第四級アンモニウム塩に加えて結合剤を溶媒に溶解して、pH指示薬混合溶液(以下、色素溶液とも呼ぶ)を調製する。次いで、この色素溶液を、スプレー塗布または滴下法などの方法によって担体にコーティングする。これにより、pH指示薬および第四級アンモニウム塩は担体に物理的に固定される。
【0085】
色素溶液の成分として混合されるため、溶媒への溶解性が高く、粘度が低い結合剤であることが好ましい。結合剤の粘度は、結合剤をエタノール/トルエン(1/1)(w/w)で最終濃度が10質量%になるように調製した溶液において、60mPa・s以下であることがよく、さらに30mPa・s以下であることが望ましい。
【0086】
(繊維)
繊維Fとしては、パルプ、レーヨン、麻、綿、絹、羊毛、鉱物繊維等の天然繊維、ポリ乳酸、ナイロン、ポリビニルアルコール(PVA)、高分子吸収繊維(SAF)等の合成繊維を用いることができる。これらの繊維は、吸水性を有するため、吸水性材料として配合して、機能性シートの使用時に機能性の水との接触および溶解を促進させることもできる。また、本発明の繊維として、非吸水性の繊維を用いることもできる。以下に説明する熱融着性樹脂を、繊維の形態で使用してもよい。これらの繊維は、例えば解繊ショートカットファイバーの形態で用いることができる。これらの繊維は、2種以上を併用しても構わない。
【0087】
(熱融着性樹脂)
本発明の実施の形態において、熱融着性樹脂Aは、構成成分を結着させるバインダ樹脂となる。また、熱融着性樹脂は、機能性シートにおける強度付与の効果を有し、機能性シートは熱融着性樹脂を含むことにより形状が維持されやすくなる。
【0088】
熱融着性樹脂は、機能性物質同士、機能性物質とpH指示薬、pH指示薬同士を、それぞれ結着させることができる。また、他の成分が含まれる場合は、熱融着性樹脂は、機能性物質同士、機能性物質とpH指示薬、またはpH指示薬同士と、他の成分と、を結着させることができる。熱融着性樹脂AおよびBは、機能性物質の水との接触および溶出を妨げないように、溶融され固化する際に、機能性物質の粉末(粒子)の全体を被覆しないような量で配合される。
【0089】
熱融着性樹脂は繊維状であってもよいし、粒子状であってもよい。強度がより高くなる点からは、熱融着性樹脂は繊維状であることが好ましい。熱融着性樹脂は、例えば、ショートカットファイバーの形態であってもよい。
【0090】
熱融着性樹脂としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン、低融点ポリエチレンテレフタレート等のポリエチレンテレフタレート(PET)、エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)、低融点ポリアミド、低融点ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネートなどが挙げられる。
【0091】
熱融着性樹脂は、2種類以上の樹脂の複合体であってもよい。例えば、芯部分と鞘部分とからなる芯鞘繊維、長手方向に垂直な断面において片側の半分ともう一方の片側の半分とが異なる樹脂からなるサイドバイサイド繊維、異なる樹脂からなるコアとシェルとを有するコアシェル粒子等が挙げられる。中でも、不織布の剛度を向上させつつ熱融着性樹脂の性能を発揮させたい場合には芯鞘繊維が好ましい。
【0092】
芯鞘繊維としては、例えば、ポリプロピレン繊維(融点160℃)からなる芯部分と、
該芯部分の外周に形成された、ポリエチレン(融点130℃)からなる鞘部分とを備えたPP/PE複合芯鞘繊維が挙げられる。また、他の芯鞘繊維としては、PP/EVA複合芯鞘繊維、PET/低融点PET複合芯鞘繊維、高密度ポリエチレン/低密度ポリエチレン複合芯鞘繊維、PET/PE複合芯鞘繊維、ポリアミド/低融点ポリアミド複合芯鞘繊維、ポリ乳酸/低融点ポリ乳酸複合芯鞘繊維、ポリ乳酸/ポリブチレンサクシネート複合芯鞘繊維等が挙げられる。芯鞘繊維の中でも、PP/PE複合芯鞘繊維、PET/PE複合芯鞘繊維、PE/PE複合芯鞘繊維等の、ポリエチレンからなる鞘部分を備えた複合芯鞘繊維が好ましい。
【0093】
熱融着性樹脂としては、(1)PET熱融着性繊維、(2)PETからなる鞘部分を備えた複合芯鞘繊維、(3)ポリエチレン熱融着性繊維、 (4)ポリエチレンからなる鞘部分を備えた複合芯鞘繊維、(5)EVA熱融着性繊維、(6)EVAからなる鞘部分を備えた複合芯鞘繊維からなる群から選ばれた少なくとも1種が好ましく、ポリエチレン熱融着性繊維、およびポリエチレンからなる鞘部分を備えた芯鞘繊維からなる群から選ばれた少なくとも1種がより好ましい。
【0094】
熱融着性樹脂は2種類以上を併用しても構わない。すなわち、熱融着性樹脂AおよびBは、同一の熱融着性樹脂であってもよく異なる熱融着性樹脂であってもよい。熱融着性樹脂Aおよび熱融着性樹脂Bとして、それぞれ、1種類の熱融着性樹脂を用いてもよく、また、複数種類の熱融着性樹脂を併用してもよい。機能性シートが、後述する他の層300を含む場合であって、他の層300が熱融着性樹脂を含む場合は、他の層300に含まれる熱融着性樹脂は、熱融着性樹脂AおよびBと同一であってもよく異なっていてもよく、1種類であっても複数種類の併用であってもよい。
【0095】
(他の層)
本発明の機能性シートは、機能性物質含有層100、110、120に加えて、例えば表面改質や強度(剛性)付与等の機能性付与の目的で、他の層300を含むことができる。
【0096】
他の層300としては、例えば、不織布、布、紙などの水分を通す性質(通水性)および/または水分を吸収する性質(吸水性)を有する任意のシートを用いることができる。また、任意のフィルムを用いることができる。他の層300は、熱融着性樹脂を含んでいてもよい。機能性シートの1つの面に通水性が相対的に低いフィルムを用いると、シートの使用時に機能性成分がその面から溶出することを防止できる。すなわち、機能性物質の成分が他方の面から溶出することを促進させることができる。
【0097】
機能性シートの外層となる他の層300の表面には、凹凸付与などの表面加工や、孔やスリットの形成などの加工を施してもよい。例えば食品トレイ用マットなどの用途において、機能性シートの1つまたは両方の面に、衛生材料の表面材のような多数の孔が形成された孔あきフィルムやスリットの入ったフィルムを好ましく用いることができる。そのような構成であると、シートの使用時に孔やスリットにより、機能性物質が容易に溶出することができると共に、食品からのドリップを機能性シートの内部の層に吸わせることができる。
【0098】
機能性シートの色変化の視認性の観点から、他の層300は、それを介して機能性物質含有層の色を認識可能な構成を有することが好ましい。例えば、他の層300は、機能性物質含有層の構成材料が外部に漏れ出ないような網目サイズを有するメッシュ構造であってもよい。また、他の層300は、厚さが薄く下層が透けて見えるものであってもよく、透明または半透明の材料で構成されていてもよい。
【0099】
(効果促進剤)
本発明の機能性シートには、その用途に応じて、1つまたは複数の効果促進剤を配合することができる。
【0100】
効果促進剤としては、例えば:油性基剤、保湿剤、感触向上剤、界面活性剤、高分子、増粘・ゲル化剤、溶剤、噴射剤、酸化防止剤、還元剤、酸化剤、防腐剤、抗菌剤、キレート剤、pH調整剤、酸、炭酸塩、アルカリ、粉体、無機塩、紫外線吸収剤、美白剤、ビタミン類およびその誘導体類、消炎剤、抗炎症剤、育毛用薬剤、血行促進剤、刺激剤、ホルモン類、抗しわ剤、抗老化剤、ひきしめ剤、冷感剤、温感剤、創傷治癒促進剤、刺激緩和剤、鎮痛剤、細胞賦活剤、植物・動物・微生物エキス、鎮痒剤、角質剥離・溶解剤、制汗剤、清涼剤、収れん剤、酵素、核酸、香料、色素、着色剤、染料、顔料、金属含有化合物、不飽和単量体、多価アルコール、高分子添加剤、消炎鎮痛剤、抗真菌剤、抗ヒスタミン剤、催眠鎮静剤、精神安定剤、抗高血圧剤、降圧利尿剤、抗生物質、麻酔剤、抗菌性物質、抗てんかん剤、冠血管拡張剤、生薬、補助剤、湿潤剤、増粘剤、粘着付与物質、止痒剤、角質軟化剥離剤、油性原料、紫外線遮断剤、防腐殺菌剤、抗酸化物質、液状マトリックス、脂溶性物質、高分子カルボン酸塩、添加剤、金属セッケン、吸水性材料等、が挙げられる。
【0101】
効果促進剤は、機能性物質含有層100、110、120に配合することができる。また、機能性シートが、機能性物質含有層と他の層とを含む多層構造である場合は、複数の層のうちのいずれか1つまたは複数の層に配合することができる。
【0102】
(ヒートシール加工)
ヒートシールは、ヒートシーラーなどの加熱手段により熱を加えて層間接着させる方法である。本発明の実施の形態においては、例えば、pH指示薬と機能性物質のみからなる機能性物質含有層100を中間層とし、その両面に、熱融着性樹脂を含む他の層300を配置して、四辺をヒートシールすることにより、多層構造の機能性シートを形成することができる。機能性物質含有層の両面に配置される他の層300のうちの少なくとも一方は、それを介して機能性物質含有層の色変化を使用者が視認することのできる構成を有する。例えば、他の層300は、透明であってもよく、半透明であってもよく、機能性物質含有層の構成材料が外部に漏れ出ないような網目サイズを有するメッシュ構造であってもよい。
【0103】
(接着層)
接着層の形成方法は特に限定されないが、ホットメルト加工によって得られた接着層であることが好ましい。ホットメルト加工は、熱可塑性樹脂を溶かして押し出し、シートとシートを接着する加工方法である。機能性物質含有層と他の層を接合する際の層間接着に用いることができる。
【0104】
ホットメルト加工に用いることのできる熱可塑性樹脂としては、例えばエチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)などがあり、一般にホットメルト接着剤として知られている樹脂を用いることができる。
【0105】
(エンボス加工)
エンボス加工は、凸凹模様を彫った押し型で強圧し、熱を加える加工である。この方法もまた、多層構造の層間接着に用いることができる。また、この方法は、単層または多層構造の機能性シートに凹凸などの表面加工を施すために用いることもできる。
【0106】
(成分の含有比率)
機能性シートにおける機能性物質の配合量は、用途および所望の効果によっても異なる。
【0107】
例えば、機能性シートが金属(水)酸化物含有シートであり、機能性物質が金属(水)酸化物である場合は、金属(水)酸化物の抗菌性能発揮の観点から、シート全量に占める粉末の量が0.01質量%以上であることが好ましく、0.2質量%以上であることがより好ましく、0.5質量%以上がさらに好ましく、1質量%以上であることが特段好ましい。また、金属(水)酸化物の消臭性発揮の観点からは、消臭対象ガスの種類にもよるが、シート全量に占める粉末の量が1質量%以上であることが好ましく、3質量%以上であることがより好ましく、5質量%以上であることがさらに好ましく、8質量%以上がなお一層好ましく、10質量%以上であることが特段好ましい。また、金属(水)酸化物の粉落ち防止の観点から、金属(水)酸化物含有シート全量に占める金属(水)酸化物の粉末の量が60質量%以下であることが好ましく、50質量%以下であることがより好ましく、40質量%以下であることがさらに好ましい。
【0108】
(坪量)
機能性シートの坪量は、用途に応じて適宜設定することができる。例えば、10〜4000g/m
2であることが好ましく、30〜3000g/m
2がより好ましく、50〜300g/m
2がさらに好ましい。前記坪量が小さすぎると均一なシート(不織布)を作製することが困難になる場合があり、前記坪量が大きすぎると使用時のハンドリングが悪くなる場合がある。
【0109】
(機能性物質含有層の形成)
本発明において、機能性物質含有層は、乾式法で設けられた層である。本発明で用いることのできる乾式法には、水を使用しない非水系の任意の層形成方法が含まれる。
【0110】
(色素溶液の担体へのコーティング方法)
本発明の実施の形態に適用可能な、色素溶液(pH指示薬混合溶液)の担体への適用方法について説明する。
【0111】
色素(pH指示薬)を機能性シートに付与する方法としては、大きく分けて次の方法がある。
【0112】
まず、機能性シート(不織布)においてpH指示薬を配合すべき層を構成する成分(例えばセルロース繊維等)に色素を担持させてから、シート化を行う方法がある。例えば、セルロース繊維をミキサー等で攪拌しながら、色素溶液を添加し、繊維表面に色素溶液をコーティングされた繊維を得る方法がある。
【0113】
また、シート(不織布)を作成してから、色素溶液をシート(不織布)の表面に塗布する方法がある。例えば、不織布シート形成時に色素容液をスプレー(噴霧)し、シート表面をコーティングする方法がある。また、コーティングに限らず、含浸により担体(シート構成要素)に色素溶液を付与してもよい。
【0114】
<溶媒>
色素溶液(pH指示薬混合溶液)を作製するのに適用可能な溶媒の例としては、芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、エステル類、アルコール類等の非水系の溶媒(有機溶剤)が挙げられる。色素溶液の構成材料となるべき薬剤(pH指示薬、第四級アンモニウム塩、および適宜、結合剤等)を溶解して均一な色素溶液を調製することができ、担体に色素溶液をコーティングした後に、減圧乾燥等の手法によって除去可能な溶媒がよい。特にアルコール類がよく、さらにはイソプロピルアルコールがよい。
【0115】
(配合量)
色素(pH指示薬)の配合量は、使用する色素によって異なるが、使用時に明瞭な色変化が認められる量がよい。例えばチモールフタレインの配合量は、担体の重量に対して0.01〜0.5%(w/w)が好ましく、より好ましくは0.02〜0.1%(w/w)である。なお、ここでいう担体とは、機能性シートのうち、そのpH指示薬が配合される機能性物質含有層の構成要素(繊維、粉末等)をいう。
【0116】
結合剤の配合量は、担体の重量に対して3%(w/w)以下が好ましく、より好ましくは2%(w/w)以下である。3%より多く配合すると、色素を担持した担体の撥水性が高くなり、溶液が浸透し難くなり、発色性が悪くなる傾向がある。
【0117】
第四級アンモニウムの配合量は、担体の重量に対して0.05〜5%(w/w)が好ましく、より好ましくは0.1〜2%である。例えば、塩化ベンザルコニウムは、10%水溶液および50%水溶液のような水溶液の形態でメーカーから販売品を入手可能であるが、上記の数値は塩化ベンザルコニウムとしての固形分の配合量である。
【0118】
上記の配合量は、それぞれの薬剤の配合量に応じて最適化することができる。例えば、結合剤を担体の重量に対して2%(w/w)配合する場合は、塩化ベンザルコニウムの配合量を、担体の重量に対して0.1〜0.5%(w/w)とするのがよい。また、結合剤を配合しない場合は、塩化ベンザルコニウムの配合量は、担体の重量に対して0.3〜2%(w/w)がよい。
【0119】
つまり、結合剤を配合しない構成も、本発明の実施の形態に含まれるが、結合剤を配合することで、担体へのpH指示薬の固着を補強することができ、また、塩化ベンザルコニウムの配合量を低減させることができる。
【0120】
溶媒の配合量は、担体の重量に対して10〜100%(w/w)が好ましく、より好ましくは15〜50%(w/w)である。溶媒の配合量が少ない場合は、色素溶液の粘度が高くなり、担体との均一な混合が困難になる。また、溶媒が多すぎる場合は、色素溶液と担体を混合した後の乾燥工程の処理時間が長くなり、処理時間の増加とコストの増加の原因となる。
【0121】
(担体の配合量)
pH指示薬Iを固定した担体は、機能性物質含有層100、110、120に任意の割合で配合することが出来る。機能性シートの色変化の視認性の観点から、pH指示薬Iの色変化が明瞭に確認できることが好ましい。
【0122】
(機能性シートの製造方法)
例えば、エアレイド法を採用するウェブ形成装置で、pH指示薬および機能性物質を含む機能性物質含有層を作製し、他の層が含まれる場合は、機能性物質含有層に対して他の層を別途積層させる製造方法を用いることができる。そのような方法として、機能性物質含有層の表面に、例えばポリエチレン(PE)のような熱融着性樹脂Bを配置し、熱融着性樹脂Bを熱により溶融させて接合する方法がある。あるいはまた、エアレイド法を採用するウェブ形成装置で機能性物質含有層(例えば、熱融着性樹脂Aを含む機能性物質含有層120)を作製する際に、機能性物質含有層120となるウェブ層を搬送するためのキャリアシートに本発明の他の層300を用いることによって、他の層300と機能性物質含有層120との積層体を形成して、本発明の実施の形態に係る層構成を有する機能性シートを得てもよい。また、別途作製した機能性シートの各層を、エンボス加工やヒートシール加工により接合させてもよい。また、機能性シートの各層の接合面の少なくとも一方に熱可塑性樹脂のようなホットメルト接着剤などにより接着層(粘着層)を設けて、ホットメルト加工により各層を接合させる方法などもある。製造時における、機能性物質の水との接触および溶解を防ぐために、本発明において、これらの積層は乾式法(非水系)にて行う。
【実施例】
【0123】
以下、実施例および比較例によって本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されない。
【0124】
[実施例1]
<色素溶液の作製>
2%チモールフタレイン溶液50g、50%塩化ベンザルコニウム水溶液10g、およびポリビニルブチラール40gをイソプロパノールに溶解し、合計500gになるようにイソプロパノールで質量/質量基準でメスアップした。ポリビニルブチラールが完全に溶解するまで混合して混合液を調製し、色素溶液C1とした。
【0125】
<色素溶液の担体へのコーティング>
粉末状のセルロース繊維(繊維長0.2mm)をミキサーで攪拌しながら、色素溶液C1を添加し、繊維と色素溶液が均一に混合するまで攪拌した。次いで乾燥機で105℃2時間の条件で乾燥させて、溶剤を除去し、粉末状の色素コーティングセルロース繊維(繊維長0.2mm)を得た。
【0126】
<シート化>
ショートカットのポリエチレン(PE)熱融着性繊維(以下、PE繊維とも記載する)およびショートカットのポリエチレンテレフタレート(PET)繊維(以下、PET繊維とも記載する)をそれぞれ解繊処理して、それぞれの解繊ショートカットファイバーを得た。
【0127】
ポリエチレン(PE)パウダー(以下、PEパウダーとも記載する)と、ホタテ貝殻焼成物(ユニセラ株式会社のホタテ貝殻焼成パウダー。以下、酸化カルシウムとも記載する)と、粉末状の色素コーティングセルロース繊維(繊維長0.2mm)と、を4/1/20の割合(質量比)で混合し、PEパウダー、酸化カルシウム、および色素コーティングセルロース繊維の粉体混合物を調製した。
【0128】
次に、PE繊維の解繊ショートカットファイバーと、PET繊維の解繊ショートカットファイバーと、PEパウダー/酸化カルシウム/色素コーティングセルロース繊維の粒子混合物と、を、40/40/20の割合(質量比)で空気流により均一に混合して、PE/PET/色素コーティングセルロース繊維/酸化カルシウムを含むウェブ原料を得た。
【0129】
ウェブ形成装置を用い、ウェブ原料から1層構成の不織布シートを形成した。
【0130】
<評価試験>
(発色の確認)
形成したシートを5cm×5cm四方の大きさに裁断し、シート重量の5倍量の水を含ませた際の、発色およびpHを確認した。
【0131】
水を含ませる前のシートの色は、白色であった。水を含んだ部分が速やかに青く発色した。このときのシートに含まれる水のpHは12.0であった。
【0132】
[実施例2]
<色素溶液の作製>
2%チモールフタレイン溶液50g、および50%塩化ベンザルコニウム水溶液20gをイソプロパノールに溶解し、500gになるように質量/質量基準でイソプロパノールでメスアップした。ポリビニルブチラールが完全に溶解するまで混合し、色素溶液C2を調製した。
【0133】
それ以外は、実施例1と同じ方法で、<色素溶液の担体へのコーティング>および<シート化>を行い、1層構成の不織布シートを形成した。
【0134】
<評価試験>
(発色の確認)
形成したシートを5cm×5cm四方の大きさに裁断し、シート重量の5倍量の水を含ませた際の、発色およびpHを確認した。
【0135】
水を含ませる前のシートの色は、白色であった。水を含んだ部分が速やかに青く発色した。このときのシートに含まれる水のpHは12.0であった。
【0136】
[実施例3]
<色素溶液の作製>
実施例2と同様にして、色素溶液C2を調製した。
【0137】
<シート化>
フラップパルプを解繊した繊維と、ショートカットのポリエチレン(PE)熱融着性繊維およびショートカットのポリエチレンテレフタレート(PET)繊維をそれぞれ解繊処理した解繊ショートカットファイバーと、を得た。
【0138】
ポリエチレン(PE)パウダーと、ホタテ貝殻焼成物(酸化カルシウム)を4/1の割合(質量比)で混合し、PEパウダーと酸化カルシウムとの粒子混合物を調製した。
【0139】
次に、フラッフパルプの解繊繊維と、PE繊維の解繊ショートカットファイバーと、PET繊維の解繊ショートカットファイバーと、PEパウダーと酸化カルシウムとの粒子混合物と、を、70/15/15/5の割合(質量比)で空気流により均一に混合して、フラッフパルプ/PE/PET/酸化カルシウムを含むウェブ原料を得た。
【0140】
ウェブ形成装置を用い、ウェブ原料から1層構成の不織布シートを形成した。
【0141】
<色素溶液の担体へのコーティング>
形成したシートに色素溶液をスプレーで均一に噴霧して色素を付着させた。スプレー噴霧する色素溶液は、不織布シート100gに対し、50gを使用した。スプレー噴霧後の不織布は、乾燥機で105℃2時間の条件で乾燥し、溶剤を除去した。
【0142】
<評価試験>
(発色の確認)
形成したシートを5cm×5cm四方の大きさに裁断し、シート重量の5倍量の水を含ませた際の、発色およびpHを確認した。
【0143】
水を含ませる前のシートの色は、白色であった。水を含んだ部分が速やかに青く発色した。このときのシートに含まれる水のpHは12.0であった。
【0144】
(色移りの確認)
次に、発色したシートで白いプラスチックシートを拭き、色移りを目視で確認した。ここで「色移り」とは、シートの発色成分である色素がシート外に溶出し、プラスチックシートに移動することを言う。色移りの程度は、色素がシートに対してどの程度しっかりと固定されているかの指標となる。色移りの程度が小さいほど、色素がシートに対してよりしっかりと固定されているということができ、好ましい。色移りは、確認できないことがより好ましい。
【0145】
色移りは確認できなかった。
【0146】
[比較例1]
<色素溶液の作製>
2%チモールフタレイン溶液50g、およびポリビニルブチラール40gをイソプロパノールに溶解し、500gになるように質量/質量基準でイソプロパノールでメスアップした。ポリビニルブチラールが完全に溶解するまで混合し、色素溶液R1を調製した。
【0147】
<色素溶液の担体へのコーティング>および<シート化>を実施例1と同じ方法で行い、1層構成の不織布シートを形成した。
【0148】
<評価試験>
(発色の確認)
形成したシートを5cm×5cm四方の大きさに裁断し、シート重量の5倍量の水を含ませた際の、発色およびpHを確認した。
【0149】
水を含ませる前のシートの色は、白色であった。水を含んだ部分が速やかに青く発色した。このときのシートに含まれる水のpHは12.0であった。
【0150】
(色移りの確認)
次に、発色したシートで白いプラスチックシートを拭き、色移りを目視で確認した。
【0151】
シートから青色の溶液が溶出し、色移りが確認された。
【0152】
[比較例2]
<色素溶液の作製>
2%チモールフタレイン溶液50g、50%塩化ベンザルコニウム水溶液10g、および水溶性高分子化合物のポリビニルピロリドン40gをイソプロパノールに溶解し、500gになるように質量/質量基準でイソプロパノールでメスアップした。ポリビニルピロリドンが完全に溶解するまで混合し、色素溶液R2を調製した。
【0153】
<色素溶液の担体へのコーティング>および<シート化>を実施例1と同じ方法で行い、1層構成の不織布シートを形成した。
【0154】
<評価試験>
(発色の確認)
形成したシートを5cm×5cm四方の大きさに裁断し、シート重量の5倍量の水を含ませた際の、発色およびpHを確認した。
【0155】
水を含ませる前のシートの色は、白色であった。水を含んだ部分は速やかに青く発色した。このときのシートに含まれる水のpHは12.0であった。
【0156】
(色移りの確認)
次に、発色したシートで白いプラスチックシートを拭き、色移りを目視で確認した。
【0157】
シートから青色の溶液が溶出し、色移りが確認された。
【0158】
以上のように、pH指示薬と、機能性物質(酸化カルシウム)と、第四級アンモニウム塩と、を含む実施例1〜3では、いずれも、水を付与することによりアルカリ性のpHを呈し、明瞭な色変化(発色)が見られた。また、実施例3のように結合剤を配合していない例についても、発色後の色移りが見られなかった。
【0159】
一方、比較例1のように第四級アンモニウム塩を配合していない例においては、水を付与することによりアルカリ性のpHを呈し、明瞭な色変化(発色)が見られたものの、発色後の色移りが見られた。比較例2のように非水溶性高分子を配合せず、水溶性高分子を配合した例においても、明瞭な色変化(発色)が見られたものの、発色後の色移りが見られた。
【0160】
このように、本発明の実施の形態によれば、付与した水を介した反応により、機能性シートに含まれる機能性物質は機能を発揮し、その際に前記水における水素イオン濃度に変化が生じる。機能性シートに含まれるpH指示薬は、この水素イオン濃度の変化に応じて呈色(発色)または変色し、それにより機能性シートの色を変化させる。使用者は、機能性シートが機能を発揮していることを認識することができる。したがって、使用者は、機能性シートが機能を発揮している最中に機能性シートを使用することができる。
【0161】
また、本発明は、機能性シートが機能を発揮し終えたことを、そのpH変化に応じた機能性シートの色変化により、視覚によって認識することにも適用可能である。これによれば、使用者は、機能性シートの使用終了時期を容易に判断することができる。
【0162】
以下に、本発明の好ましい実施の態様を例示する。
1. pH指示薬と、機能性物質と、担体と、を含有する層を備え、前記pH指示薬は、第四級アンモニウム塩によって前記担体に固定されていることを特徴とする、機能性シート。
2. 結合剤をさらに含み、前記pH指示薬は、前記第四級アンモニウム塩と、前記結合剤と、によって前記担体に固定されていることを特徴とする、1.に記載の機能性シート。
3. 前記層は、繊維を含み、前記繊維によって形成される空隙に、前記pH指示薬が固定された前記担体と、前記機能性物質と、が保持されていることを特徴とする、1.または2.に記載の機能性シート。
このとき、前記担体は、前記層に含まれる繊維の少なくとも一部を構成する繊維であってもよい。また、このとき、前記繊維によって形成される空隙に、前記担体(繊維)に固定された形態の前記pH指示薬と、前記機能性物質と、が保持されていてもよい。
4. 前記層は、熱融着性樹脂を含み、前記pH指示薬が固定された前記担体の一部は、当該熱融着性樹脂で被覆された状態で固定されていることを特徴とする、請求項1から3のいずれかに記載の機能性シート。
5. 前記層に隣接する隣接層は、熱融着性樹脂を含み、前記層中に存在する前記pH指示薬を固定した担体の一部が当該熱融着性樹脂で被覆された状態で固定されていることを特徴とする、1.から4.のいずれかに記載の機能性シート。
6. 前記第四級アンモニウム塩は、塩化ベンジルコニウム、塩化セチルピリジウム、塩化ベンゼトニウム、およびジデシルジメチルアンモニウム塩からなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする、1.から5.のいずれかに記載の機能性シート。
7. 前記pH指示薬を固定する担体は、セルロースおよび/またはセルロース誘導体であることを特徴とする、1.から6.のいずれか一項に記載の機能性シート。
8. 前記結合剤は、非水溶性高分子化合物であることを特徴とする、2.から7.のいずれかに記載の機能性シート。
9. 前記機能性物質は、金属酸化物および/または金属水酸化物であることを特徴とする、1.から8.のいずれかに記載の機能性シート。
10. 前記機能性物質は、シクロデキストリンであることを特徴とする、1.から8.のいずれかに記載の機能性シート。
11. 前記機能性物質は、炭酸ガス発生剤であることを特徴とする、1.から8.のいずれかに記載の機能性シート。
12. 1.から11.のいずれかに記載の機能性シートの製造方法であって、
前記pH指示薬と前記第四級アンモニウム塩と前記結合剤とを非水系の有機溶剤中に溶解する工程と、
前記工程により得られた溶液を、前記担体に付与する工程と、
を含むことを特徴とする、機能性シートの製造方法。
13. 前記担体をシート化する工程をさらに含み、
前記付与する工程は、前記シート化する工程の前に行われることを特徴とする、12.に記載の製造方法。
14. 前記担体をシート化する工程をさらに含み、
前記付与する工程は、前記シート化する工程の後に行われることを特徴とする、12.に記載の製造方法。