(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
吸収塔と、該吸収塔の液溜部に貯留された吸収液を汲み上げる循環ポンプと、該循環ポンプで汲み上げられた吸収液を循環させる循環ラインと、該循環ラインに接続されて吸収液を前記吸収塔の内部に噴出するスプレノズルと、前記液溜部に酸化剤を供給する酸化剤供給器と、前記吸収液が噴出されないスプレノズルに空気を導く空気導入系統とを備えた排煙脱硫装置の吸収液循環系統閉塞・腐食防止装置であって、
前記酸化剤供給器は、酸化剤として空気を前記液溜部に供給する酸化空気ブロワであり、
前記空気導入系統は、
前記酸化空気ブロワと、
該酸化空気ブロワの出側から分岐する大気放出ラインに設けられた放風弁と、
該放風弁の出側から分岐して前記循環ラインに接続された空気導入ラインと、
該空気導入ラインの分岐点に設けられた切換弁と、
該切換弁より下流側の空気導入ラインに設けられたパージ弁と
を備えた排煙脱硫装置の吸収液循環系統閉塞・腐食防止装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、前述の如き排煙脱硫装置の吸収塔の内部には、固形分を含むミストや硫黄分を含む排煙が存在しているが、前記吸収塔の通常運転時、スプレノズルや循環ラインには吸収液が流通している。このため、スプレノズルや循環ラインの内部には、前記ミストや排煙が入り込みにくくなっており、スケールが発生して閉塞を引き起こしたり、腐食が発生したりする心配はない。しかしながら、例えば、循環ポンプの故障で吸収液が流れなくなった場合、前記スプレノズルや循環ラインに前記ミストや排煙が入り込み、該スプレノズルや循環ラインが閉塞したり腐食したりする虞があった。
【0007】
前記スプレノズルや循環ラインが閉塞したり腐食したりすると、該スプレノズルや循環ラインの清掃或いは交換が必要となり、清掃や交換の作業に手間と時間が掛かると共に、費用も嵩むという問題を有していた。
【0008】
因みに、特許文献1には、液溜部の吸収液の一部を循環ポンプの出側から抜き出して石膏分離装置で石膏を分離し、該石膏が分離された戻し液を、オーバーフロー管の上部に取り付けられたスプレノズルから噴射することにより、オーバーフロー管の閉塞を防止する点が記載されている。しかしながら、特許文献1に記載のものの場合、循環ポンプが故障している状況では戻し液をスプレノズルへ導入することが困難となる。又、特許文献1のスプレノズルは、本発明の循環ラインに接続されるスプレノズルとは根本的に異なるものである。
【0009】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みてなしたもので、スプレノズルや循環ラインの閉塞や腐食を防いで、運転を安定して継続し得る排煙脱硫装置の吸収液循環系統閉塞・腐食防止装置及び排煙脱硫装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明の排煙脱硫装置の吸収液循環系統閉塞・腐食防止装置は、吸収塔と、該吸収塔の液溜部に貯留された吸収液を汲み上げる循環ポンプと、該循環ポンプで汲み上げられた吸収液を循環させる循環ラインと、該循環ラインに接続されて吸収液を前記吸収塔の内部に噴出するスプレノズルと、前記液溜部に酸化剤を供給する酸化剤供給器と
、前記吸収液が噴出されないスプレノズルに空気を導く空気導入系統とを備えた排煙脱硫装置の吸収液循環系統閉塞・腐食防止装置であって、
前記酸化剤供給器は、酸化剤として空気を前記液溜部に供給する酸化空気ブロワであり、
前記空気導入系統は、
前記酸化空気ブロワと、
該酸化空気ブロワの出側から分岐する大気放出ラインに設けられた放風弁と、
該放風弁の出側から分岐して前記循環ラインに接続された空気導入ラインと、
該空気導入ラインの分岐点に設けられた切換弁と、
該切換弁より下流側の空気導入ラインに設けられたパージ弁と
を備えることができる。
【0012】
前記排煙脱硫装置の吸収液循環系統閉塞・腐食防止装置において、前記パージ弁より出側の空気導入ラインに設けられた逆止弁を備えることができる。
【0013】
前記排煙脱硫装置の吸収液循環系統閉塞・腐食防止装置において、前記循環ラインにおける吸収液の流通状態を検出するセンサと、
該センサで検出された吸収液の流通状態に基づき前記切換弁及びパージ弁へ制御信号を出力する制御器と
を備えることができる。
【0014】
前記排煙脱硫装置の吸収液循環系統閉塞・腐食防止装置において、前記センサは、前記循環ラインに設けられた圧力計とすることができる。
【0015】
前記センサは、前記循環ラインに設けられた流量計とすることもできる。
【0016】
前記排煙脱硫装置の吸収液循環系統閉塞・腐食防止装置において、前記空気導入系統は、
前記循環ラインに接続された洗浄水供給ラインに接続自在な空気供給ラインと、
該空気供給ラインに空気を供給する空気供給ブロワと
を備えることができる。
【0017】
前記排煙脱硫装置の吸収液循環系統閉塞・腐食防止装置において、前記スプレノズルは、前記吸収塔の通常運転時に吸収液が噴出されない予備を備えることができる。
【0018】
更に、前記吸収液循環系統閉塞・腐食防止装置を備えた排煙脱硫装置とすることもできる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の排煙脱硫装置の吸収液循環系統閉塞・腐食防止装置及び排煙脱硫装置によれば、スプレノズルや循環ラインの閉塞や腐食を防いで、運転を安定して継続し得るという優れた効果を奏し得る。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照して説明する。
【0022】
図1は本発明の排煙脱硫装置の吸収液循環系統閉塞・腐食防止装置及び排煙脱硫装置の第一実施例である。
【0023】
図1に示す排煙脱硫装置は、吸収塔10と、循環ポンプ20と、循環ライン30と、スプレノズル40と、酸化剤供給器50とを備えている。
【0024】
前記吸収塔10は、上下方向へ延びる塔本体11を備え、該塔本体11の側面所要高さ位置に排煙の導入口12が形成されると共に、前記塔本体11の上部に排煙の導出口13が形成されている。前記塔本体11の導入口12より下側における内部には、吸収液の液溜部14が形成されている。尚、前記吸収液の吸収剤としては、炭酸カルシウム(CaCO
3)が用いられている。
【0025】
前記循環ポンプ20は、前記吸収塔10の液溜部14に貯留された吸収液を汲み上げるポンプである。
図1に示す循環ポンプ20は、二個設けられているが、個数に関しては、単数であっても、三個以上の複数であっても良い。
【0026】
前記循環ライン30は、一端が前記吸収塔10の塔本体11の底部に液溜部14と連通するよう接続されて上方へ立ち上がり、他端が前記塔本体11の側面を貫通して内部へ延びるよう配設されている。前記循環ライン30の途中には前記循環ポンプ20が設けられ、該循環ポンプ20で汲み上げられた液溜部14の吸収液を前記循環ライン30から吸収塔10へ循環させるようになっている。
図1に示す循環ライン30は、一端が前記吸収塔10の塔本体11の底部に接続されて上方へ立ち上がる二系統の汲上ライン31と、該二系統の汲上ライン31の他端に接続される汲上ヘッダ32と、該汲上ヘッダ32の中間部に接続されて上方へ立ち上がる基幹ライン33と、該基幹ライン33の上部から分岐して前記塔本体11の内部へ延びる三系統のスプレヘッダ34とを備えている。前記汲上ライン31には、前記循環ポンプ20と吐出弁35とが設けられ、前記スプレヘッダ34には、遮断弁36が設けられている。
【0027】
前記スプレノズル40は、前記塔本体11の内部へ挿通された循環ライン30に対し、その長手方向へ所要間隔をあけて配設されるよう、接続されており、吸収液を前記吸収塔10の内部に噴出するようになっている。
図1に示すスプレノズル40は、前記循環ライン30のスプレヘッダ34に設けられ、三系統のスプレヘッダ34のうち最下段における一系統のスプレヘッダ34は、必要に応じて使用される予備として設定されている。
【0028】
前記酸化剤供給器50は、前記液溜部14に酸化剤として空気を供給する酸化空気ブロワ51で構成されている。
図1に示す酸化剤供給器50の酸化空気ブロワ51の出側には、酸化剤としての空気を前記液溜部14へ導く酸化剤供給ライン52が接続され、前記酸化空気ブロワ51の出側の酸化剤供給ライン52から分岐する大気放出ライン53には放風弁54が設けられている。該放風弁54は、前記循環ポンプ20の故障等による停止に伴い、液溜部14へ供給すべき酸化空気量が減少し、酸化空気ブロワ51によって酸化剤供給ライン52へ送出される空気が一部余剰となり、酸化剤供給ライン52の圧力或いは流量が設定値を超えた場合に開いて、余剰となる空気を逃すための弁である。尚、前記酸化剤供給ライン52の液溜部14内における吹出口52a近傍には、撹拌機55が設けられ、酸化剤としての空気を液溜部14内の吸収液へ均一に混ぜるようになっている。
【0029】
そして、第一実施例の場合、吸収液が噴出されないスプレノズル40に空気を導く空気導入系統60を備えた点を特徴としている。
【0030】
図1に示す前記空気導入系統60は、前記酸化空気ブロワ51と、前記大気放出ライン53に設けられた放風弁54と、空気導入ライン61と、切換弁62と、パージ弁63とを備えている。
【0031】
前記空気導入ライン61は、前記放風弁54の出側の大気放出ライン53から分岐して前記循環ライン30に接続されている。
図1に示す空気導入ライン61は、上部が三系統の空気導入分岐管61aとして分岐され、該空気導入分岐管61aはそれぞれ前記スプレヘッダ34の遮断弁36より上流側に接続されている。
【0032】
前記切換弁62は、前記空気導入ライン61の分岐点に設けられた三方弁である。該三方弁は、前記放風弁54が開かれた際に空気を空気導入ライン61へ導く導入ポジションと、前記放風弁54が開かれた際に空気を大気放出する放出ポジションとに切換自在となっている。
【0033】
前記パージ弁63は、前記切換弁62より下流側の空気導入ライン61に設けられている。
図1に示すパージ弁63は、三系統の前記空気導入分岐管61aそれぞれに設けられている。
【0034】
更に、前記パージ弁63より出側の空気導入ライン61(空気導入分岐管61a)には逆止弁64が設けられている。
【0035】
次に、上記第一実施例の作用を説明する。
【0036】
吸収塔10の通常運転時、循環ポンプ20が駆動され、液溜部14の吸収液は、循環ライン30を流れてスプレノズル40から吸収塔10の内部へ噴出され液溜部14へ流下しつつ循環しており、図示していない石炭焚ボイラ等から吸収塔10に送り込まれた排煙は、前記スプレノズル40から噴出される吸収液と気液接触することにより、硫黄酸化物が吸収除去された後、吸収塔10の導出口13から外部へ排出される。このときの吸収反応は、
SO
2+CaCO
3+1/2H
2O→CaSO
3・1/2H
2O+CO
2
となる。尚、前記パージ弁63より出側の空気導入ライン61(空気導入分岐管61a)には逆止弁64が設けられているため、吸収塔10の通常運転時に、吸収液が空気導入ライン61へ逆流する心配はない。
【0037】
同時に、酸化剤供給器50の酸化空気ブロワ51からは、酸化剤としての空気が酸化剤供給ライン52を介して吸収塔10の液溜部14へ供給され、該空気が撹拌機55によって吸収液へ均一に混ぜられ、副生物として石膏が生成される。該石膏は、吸収液の一部と共に前記液溜部14から図示していない管路より抜き出されて回収される。このときの酸化反応は、
CaSO
3・1/2H
2O+1/2O
2+3/2H
2O→CaSO
4・2H
2O
となる。
【0038】
前記吸収塔10の通常運転時、スプレノズル40や循環ライン30には吸収液が流通している。このため、スプレノズル40や循環ライン30の内部には、固形分を含むミストや排煙が入り込みにくくなっており、スケールが発生して閉塞を引き起こしたり、腐食が発生したりする心配はない。
【0039】
これに対し、万一、循環ポンプ20の故障で循環ライン30に吸収液が流れなくなった場合、そのままの状態では、前記スプレノズル40や循環ライン30に前記ミストや排煙が入り込み、該スプレノズル40や循環ライン30が閉塞したり腐食したりする虞がある。ここで、前記循環ポンプ20が故障して停止すると、前記酸化反応のために液溜部14へ供給すべき酸化空気量が減少し、酸化空気ブロワ51によって酸化剤供給ライン52へ送出される空気が一部余剰となり、酸化剤供給ライン52の圧力或いは流量が設定値を超えて放風弁54が開き、余剰となる空気が大気放出ライン53を流れる状況となる。この状況において、三方弁である切換弁62を導入ポジションに切り換えてパージ弁63を開くと、余剰の空気が空気導入ライン61から循環ライン30のスプレヘッダ34へ導かれ、スプレノズル40から吹き出される。
【0040】
これにより、スプレノズル40や循環ライン30には空気が流通するため、スプレノズル40や循環ライン30の内部に前記ミストや排煙が入り込みにくくなり、前記吸収塔10の通常運転時と同様、スプレノズル40や循環ライン30の内部にスケールが発生して閉塞を引き起こしたり、腐食が発生したりすることが防止される。
【0041】
前記スプレノズル40や循環ライン30が閉塞したり腐食したりしなくなると、該スプレノズル40や循環ライン30の清掃或いは交換が不要となり、清掃や交換の作業に手間と時間が掛からず、費用が嵩むことも避けられる。
【0042】
又、前記循環ポンプ20の停止時に余剰となって大気放出されていた空気を活用できることは運転の無駄をなくす上で有効となる。因みに、空気ではなく水等をスプレノズル40へ供給することも考えられるが、水等をスプレノズル40へ供給した場合、液溜部14の液位や吸収液の性状が変化してしまい、復旧後の運転に支障を来たす可能性があるのに対し、空気であれば、液溜部14の液位や吸収液の性状に影響を及ぼすことはなく、運転再開も円滑に進められる。
【0043】
尚、最下段におけるスプレヘッダ34が予備として設定されている場合、吸収塔10の通常運転時に、三方弁である切換弁62を導入ポジションに切り換え、予備として設定されているスプレヘッダ34に接続された空気導入分岐管61aのパージ弁63のみを開いておき、放風弁54が開いた際に予備のスプレノズル40へ空気が供給されるようにし、これにより、該予備のスプレノズル40の閉塞や腐食を予防することも可能である。
【0044】
こうして、スプレノズル40や循環ライン30の閉塞や腐食を防いで、運転を安定して継続し得る。
【0045】
図2は本発明の排煙脱硫装置の吸収液循環系統閉塞・腐食防止装置及び排煙脱硫装置の第二実施例であって、図中、
図1と同一の符号を付した部分は同一物を表わしている。
【0046】
第二実施例の特徴とするところは、前記循環ライン30における吸収液の流通状態を検出するセンサ70と、該センサ70で検出された吸収液の流通状態に基づき前記切換弁62及びパージ弁63へ制御信号81,82を出力する制御器80とを備えた点にある。
【0047】
前記センサ70は、前記循環ライン30に設けられた圧力計71とし、該圧力計71で循環ライン30の圧力を検出することにより、循環ライン30における吸収液の流通状態を判断することができる。この場合、前記センサ70から出力される信号70aは、圧力計71から出力される圧力信号71aとなる。
【0048】
又、前記センサ70は、前記循環ライン30に設けられた流量計72とし、該流量計72で循環ライン30の流量を検出することにより、循環ライン30における吸収液の流通状態を判断することもできる。この場合、前記センサ70から出力される信号70aは、流量計72から出力される流量信号72aとなる。
【0049】
次に、上記第二実施例の作用を説明する。
【0050】
センサ70が圧力計71である場合、該圧力計71で循環ライン30の圧力が検出され、前記センサ70から出力される信号70aが圧力計71から出力される圧力信号71aとして制御器80へ入力され、循環ライン30における吸収液の流通状態が判断される。
【0051】
又、センサ70が流量計72である場合、該流量計72で循環ライン30の流量が検出され、前記センサ70から出力される信号70aが流量計72から出力される流量信号72aとして制御器80へ入力され、循環ライン30における吸収液の流通状態が判断される。
【0052】
前記センサ70により循環ライン30に吸収液が流れていないと判断されると、余剰となる空気が大気放出ライン53を流れる状況において、制御器80から出力される制御信号81,82により、三方弁である切換弁62が導入ポジションに切り換えられると共にパージ弁63が開かれ、余剰の空気が空気導入ライン61から循環ライン30のスプレヘッダ34へ導かれ、スプレノズル40から吹き出される。
【0053】
これにより、第二実施例の場合、スプレノズル40や循環ライン30には、前記制御器80からの制御信号81,82により自動的に空気が流通するため、スプレノズル40や循環ライン30の内部に固形分を含むミストや排煙が入り込みにくくなり、スプレノズル40や循環ライン30の内部にスケールが発生して閉塞を引き起こしたり、腐食が発生したりすることが防止される。
【0054】
前記スプレノズル40や循環ライン30が閉塞したり腐食したりしなくなると、第二実施例の場合も第一実施例と同様、スプレノズル40や循環ライン30の清掃或いは交換が不要となり、清掃や交換の作業に手間と時間が掛からず、費用が嵩むことも避けられる。
【0055】
又、前記循環ポンプ20の停止時に余剰となって大気放出されていた空気を活用できることは、第二実施例の場合も第一実施例と同様、運転の無駄をなくす上で有効となる。因みに、空気ではなく水等をスプレノズル40へ供給することも考えられるが、水等をスプレノズル40へ供給した場合、液溜部14の液位や吸収液の性状が変化してしまい、復旧後の運転に支障を来たす可能性があるのに対し、空気であれば、第二実施例の場合も第一実施例と同様、液溜部14の液位や吸収液の性状に影響を及ぼすことはなく、運転再開も円滑に進められる。
【0056】
尚、最下段におけるスプレヘッダ34が予備として設定されている場合、吸収塔10の通常運転時に、前記制御器80からの制御信号81,82により、三方弁である切換弁62を導入ポジションに切り換え且つ予備として設定されているスプレヘッダ34に接続された空気導入分岐管61aのパージ弁63のみを開き、放風弁54が開いた際に予備のスプレノズル40へ空気が供給されるようにし、これにより、該予備のスプレノズル40の閉塞や腐食を予防することも可能である。
【0057】
こうして、第二実施例においても、第一実施例と同様、スプレノズル40や循環ライン30の閉塞や腐食を防いで、運転を安定して継続し得る。
【0058】
図3は本発明の排煙脱硫装置の吸収液循環系統閉塞・腐食防止装置及び排煙脱硫装置の第三実施例であって、図中、
図1と同一の符号を付した部分は同一物を表わしている。
【0059】
第三実施例の特徴とするところは、循環ライン30に既設の洗浄水供給ライン90が接続されている吸収塔10において、前記洗浄水供給ライン90に接続自在な空気供給ライン65と、該空気供給ライン65に空気を供給する空気供給ブロワ66とから空気導入系統60を構成した点にある。
【0060】
尚、前記洗浄水供給ライン90には開閉弁91が設けられている。又、前記洗浄水供給ライン90に対する空気供給ライン65の接続は、フランジ92を介して行うようにしてあるが、ワンタッチ式のカプラ等を用いても良い。
【0061】
次に、上記第三実施例の作用を説明する。
【0062】
万一、循環ポンプ20の故障で循環ライン30に吸収液が流れなくなった場合、循環ライン30に既設の洗浄水供給ライン90に空気供給ライン65を接続し、開閉弁91を開いて空気供給ブロワ66を駆動すると、該空気供給ブロワ66から空気が空気供給ライン65と洗浄水供給ライン90とを介して循環ライン30のスプレヘッダ34へ導かれ、スプレノズル40から吹き出される。
【0063】
これにより、第三実施例の場合、スプレノズル40や循環ライン30には、空気供給ライン65と洗浄水供給ライン90とを介して空気が流通するため、スプレノズル40や循環ライン30の内部に固形分を含むミストや排煙が入り込みにくくなり、スプレノズル40や循環ライン30の内部にスケールが発生して閉塞を引き起こしたり、腐食が発生したりすることが防止される。
【0064】
前記スプレノズル40や循環ライン30が閉塞したり腐食したりしなくなると、第三実施例の場合も第一実施例及び第二実施例と同様、スプレノズル40や循環ライン30の清掃或いは交換が不要となり、清掃や交換の作業に手間と時間が掛からず、費用が嵩むことも避けられる。
【0065】
又、循環ライン30に接続されている既設の洗浄水供給ライン90を利用することにより、新たに専用のノズル等を循環ライン30に設けなくて済み、洗浄水供給ライン90に空気供給ライン65を接続するだけの簡単な作業で対応が可能となる。因みに、空気ではなく水等をスプレノズル40へ供給することも考えられるが、水等をスプレノズル40へ供給した場合、液溜部14の液位や吸収液の性状が変化してしまい、復旧後の運転に支障を来たす可能性があるのに対し、空気であれば、第三実施例の場合も第一実施例及び第二実施例と同様、液溜部14の液位や吸収液の性状に影響を及ぼすことはなく、運転再開も円滑に進められる。
【0066】
尚、最下段におけるスプレヘッダ34が予備として設定されている場合、吸収塔10の通常運転時に、予備として設定されているスプレヘッダ34から予備のスプレノズル40へ空気が供給されるようにし、これにより、該予備のスプレノズル40の閉塞や腐食を予防することも可能である。
【0067】
こうして、第三実施例においても、第一実施例及び第二実施例と同様、スプレノズル40や循環ライン30の閉塞や腐食を防いで、運転を安定して継続し得る。
【0068】
そして、第一実施例及び第二実施例において、前記酸化剤供給器50は、酸化剤として空気を前記液溜部14に供給する酸化空気ブロワ51であり、前記空気導入系統60は、前記酸化空気ブロワ51と、該酸化空気ブロワ51の出側から分岐する大気放出ライン53に設けられた放風弁54と、該放風弁54の出側から分岐して前記循環ライン30に接続された空気導入ライン61と、該空気導入ライン61の分岐点に設けられた切換弁62と、該切換弁62より下流側の空気導入ライン61に設けられたパージ弁63とを備えている。このように構成すると、前記循環ポンプ20の停止時に余剰となって大気放出されていた空気を活用でき、運転の無駄をなくす上で有効となる。
【0069】
又、第一実施例及び第二実施例においては、前記パージ弁63より出側の空気導入ライン61に設けられた逆止弁64を備えている。このように構成すると、吸収塔10の通常運転時に、吸収液が空気導入ライン61へ逆流することを逆止弁64によって防止できる。
【0070】
又、第二実施例においては、前記循環ライン30における吸収液の流通状態を検出するセンサ70と、該センサ70で検出された吸収液の流通状態に基づき前記切換弁62及びパージ弁63へ制御信号81,82を出力する制御器80とを備えている。このように構成すると、スプレノズル40や循環ライン30に対する空気の供給を前記制御器80からの制御信号81,82により自動的に行うことができる。
【0071】
又、第二実施例において、前記センサ70は、前記循環ライン30に設けられた圧力計71とすることができる。このように構成すると、圧力計71で循環ライン30の圧力を検出することにより、循環ライン30における吸収液の流通状態を判断することができる。
【0072】
又、第二実施例において、前記センサ70は、前記循環ライン30に設けられた流量計72とすることもできる。このように構成すると、流量計72で循環ライン30の流量を検出することにより、循環ライン30における吸収液の流通状態を判断することができる。
【0073】
又、第三実施例において、前記空気導入系統60は、前記循環ライン30に接続された洗浄水供給ライン90に接続自在な空気供給ライン65と、該空気供給ライン65に空気を供給する空気供給ブロワ66とを備えている。このように構成すると、循環ライン30に既設の洗浄水供給ライン90が接続されている場合、該洗浄水供給ライン90を利用すれば、新たに専用のノズル等を循環ライン30に設けることなく、洗浄水供給ライン90に空気供給ライン65を接続するだけの簡単な作業でスプレノズル40へ空気供給ブロワ66から空気を供給できる。
【0074】
又、第一実施例、第二実施例及び第三実施例において、前記スプレノズル40は、前記吸収塔10の通常運転時に吸収液が噴出されない予備を備えている。この場合、吸収塔10の通常運転時に、予備のスプレノズル40へ空気を供給すれば、該予備のスプレノズル40の閉塞や腐食を予防できる。
【0075】
又、第一実施例、第二実施例及び第三実施例における吸収液循環系統閉塞・腐食防止装置を備えた排煙脱硫装置としても、スプレノズル40や循環ライン30の閉塞や腐食を防いで、運転を安定して継続し得る。
【0076】
尚、本発明の排煙脱硫装置の吸収液循環系統閉塞・腐食防止装置及び排煙脱硫装置は、上述の実施例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。