(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ここで、培養して得られた細胞シートは、その用途に応じて、適した剥離性が求められる。つまり、培養により形成した細胞シートが培養層としての刺激応答性層から剥がれ易すぎると、光や温度などの刺激を与えた場合に、すぐに刺激応答性層から細胞シートが剥がれてしまい、収縮などによってシート形状を保てなくなり、意図した用途への使用が困難になる場合がある。また、細胞シートが刺激応答性層から剥がれ難すぎると、温度などの刺激を与えた場合でも、細胞シートを刺激応答性層から容易に剥がすことができず、剥離作業時において細胞シートの損傷が生じる場合がある。それゆえ、刺激応答性層上で培養した細胞シートが、使用用途に適した剥離性を有するように刺激応答性層からの細胞シートの剥離性を調整することができる技術が求められている。
【0008】
特許文献1の方法では、反応性ガスを用いたプラズマ処理を温度応答性ポリマー層に施すことにより細胞の接着性を向上させているが、この方法では、培養により形成した細胞シートのポリマー層からの剥離性については言及がない。また、反応性ガスの供給なども必要となり、コストの面でも改善が望まれる。
【0009】
そこで、本開示は、刺激応答性層からの細胞シートの剥離性を調整することができる方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、鋭意検討した結果、刺激応答性層中に含まれる刺激応答性ポリマーの量を減少させることにより、その後の細胞培養により得られる細胞シートの剥離性を調整することができることを見出し、本開示に至った。
【0011】
本発明の一態様を、以下に示す。
【0012】
(1) 刺激応答性ポリマーを含む刺激応答性層からの細胞シートの剥離性を調整する方法であって、前記刺激応答性ポリマーの量を減少させる工程を含む、方法。
(2) 前記工程が、前記刺激応答性層に紫外線処理を施す工程である、(1)に記載の方法。
(3) 前記紫外線処理が酸素の存在下で行われる、(2)に記載の方法。
(4) 前記紫外線処理においてオゾンが発生する、(3)に記載の方法。
(5) 前記工程が、前記刺激応答性層に超音波処理を施す工程である、(1)に記載の方法。
(6) 前記刺激応答性ポリマーが、下限臨界溶液温度を有する温度応答性ポリマーである、(1)〜(5)のいずれか1つに記載の方法。
(7) 前記刺激応答性層の厚さが、0nm超100nm以下である、(1)〜(6)のいずれか1つに記載の方法。
(8) 前記刺激応答性層が、基材上に形成されている、(1)〜(7)のいずれか1つに記載の方法。
(9) 前記基材が、細胞接着性を有する、(8)に記載の方法。
(10) 前記基材が、ガラス又はプラスチックを含む、(8)又は(9)に記載の方法。
(11) (1)〜(10)のいずれか1つに記載の方法により剥離性が調整された刺激応答性層上で細胞を培養して細胞シートを形成する工程を含む、細胞シートの製造方法。
(12) さらに、前記刺激応答性層に刺激を与えて前記細胞シートを剥がす工程、を含む、(11)に記載の細胞シートの製造方法。
(13) 細胞シートを形成するための細胞培養容器の製造方法であって、
刺激応答性ポリマーを含む刺激応答性層を形成する層形成工程と、
前記刺激応答性層中の前記刺激応答性ポリマーの量を減少させる剥離性調整工程と、
を含む、細胞培養容器の製造方法。
(14) 前記剥離性調整工程が、前記刺激応答性層に紫外線処理を施す工程である、(13)に記載の細胞培養容器の製造方法。
(15) 前記紫外線処理が酸素の存在下で行われる、(14)に記載の細胞培養容器の製造方法。
(16) 前記紫外線処理においてオゾンが発生する、(15)に記載の細胞培養容器の製造方法。
(17) 前記剥離性調整工程が、前記刺激応答性層に超音波処理を施す工程である、(13)に記載の細胞培養容器の製造方法。
(18) 前記刺激応答性ポリマーが、下限臨界溶液温度を有する温度応答性ポリマーである、(13)〜(17)のいずれか1つに記載の細胞培養容器の製造方法。
(19) 前記刺激応答性層の厚さが、0nm超100nm以下である、(13)〜(18)のいずれか1つに記載の細胞培養容器の製造方法。
(20) 前記刺激応答性層を基材上に形成する、(13)〜(19)のいずれか1つに記載の細胞培養容器の製造方法。
(21) 前記基材が、細胞接着性を有する、(20)に記載の細胞培養容器の製造方法。
(22) 前記基材が、ガラス又はプラスチックを含む、(20)又は(21)に記載の細胞培養容器の製造方法。
【発明の効果】
【0013】
本開示によれば、刺激応答性層からの細胞シートの剥離性を調整することができる方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本明細書において、「剥離性」との用語は、培養により形成される細胞シートの刺激応答性層からの剥がれ易さを意味する。本実施形態に係る方法は、形成される細胞シートの剥離性を調整する方法であり、実質的には細胞シートの剥離性を低下させる方法である。「剥離性が低下する」とは、形成される細胞シートが刺激応答性層から剥がれ難くなることを意味し、換言すると、形成される細胞シートの刺激応答性層への接着度合いが高くなることを意味する。また、「適した剥離性」とは、細胞シートの使用用途に応じた好ましい剥離性を意味し、この「適した剥離性」は使用用途に応じて適宜選択されるものである。なお、剥離性は、例えば、所定の刺激を与えた後に、細胞シートが自然に刺激応答性層から剥がれて溶液中に浮遊してくるまでの時間によって評価することができる。
【0016】
本明細書において、細胞シートは、細胞間を接着する細胞外マトリクスを細胞が形成することによって形成される。細胞シートは、1層または複数層の細胞から形成される細胞集合体である。
【0017】
以下、本実施形態に係る方法について説明する。
【0018】
本実施形態は、刺激応答性ポリマーを含む刺激応答性層からの細胞シートの剥離性を調整する方法であって、前記刺激応答性ポリマーの量を減少させる工程を含む、方法に関する。
【0019】
本実施形態に係る方法により、刺激応答性層からの細胞シートの剥離性を調整することができ、具体的には、細胞シートの剥離性を低下させることができ、換言すると、細胞シートの刺激応答性層への接着度合いを高くすることができる。目的とする剥離性は、上述の通り、細胞シートの使用用途などによって、適宜選択することができる。
【0020】
以下、本実施形態について
図1を参照して説明する。
図1(A)は、ディッシュ型の形態を有する細胞培養容器の概略断面図である。
図1(A)に示される細胞培養容器は、プラスチックなどの基材から構成されるディッシュ型の基材2を有し、該基材2の底には、刺激応答性ポリマーを含む刺激応答性層1が形成されている。
図1(B)は、
図1(A)の細胞培養容器の底に形成された刺激応答性層1中に含まれる刺激応答性ポリマーの量を減少させる工程を示している。
図1(B)では、具体的には、紫外線処理を刺激応答性層1に施すことにより刺激応答性ポリマー量を減少させている。
【0021】
本実施形態では、基材2上に設けられた刺激応答性層1中に含まれる刺激応答性ポリマーの量を減少させることにより、その後の細胞培養に形成される細胞シートの剥離性を低下させることができる。それゆえ、本実施形態により、形成される細胞シートの剥離性を容易に調整することができる。
【0022】
刺激応答性層中の刺激応答性ポリマー量を減少させる手段としては、特に制限されるものではないが、例えば、紫外線処理、超音波処理、エッチング試薬処理、エキシマレーザー処理、コロナ処理等が挙げられる。これらの手段のうち、紫外線処理又は超音波処理が好ましく用いられる。
【0023】
紫外線処理による刺激応答性ポリマー量の減少は、紫外線照射による刺激応答性ポリマーの分解によるものと推測される。紫外線処理は、緩やかに刺激応答性層中の刺激応答性ポリマーを分解することができるため、より精密にポリマー量を減少させることができる。また、紫外線処理は、基材へのダメージがより少ない。そのため、処理後の刺激応答性層表面が細胞シートの形成に好ましい形態となっている。なお、これらは推測であり、本発明を制限するものではない。また、紫外線処理は、簡便に広範囲に処理することも可能である。
【0024】
紫外線処理による刺激応答性ポリマー量の減少は、例えば、X線光電子分光(XPS)を用いて確認することができる。具体的には、処理前と処理後の刺激応答性層についてXPSスペクトルを測定し、処理後のXPSスペクトルにおけるNピーク強度及び/又はCピーク強度が、処理前のXPSスペクトルにおけるNピーク強度及び/又はCピーク強度に対して低くなっている場合、刺激応答性層中に含まれる刺激応答性ポリマー量が減少したことを確認することができる。
【0025】
紫外線処理の条件は、所望の剥離性や刺激応答性ポリマーの種類などを考慮して、適宜選択することができる。刺激応答性ポリマーの種類や刺激応答性層の膜厚、また、紫外線の波長や照度などによって、適度な処理時間は異なる。紫外線処理は、酸素存在下で行うことが好ましく、また、オゾンが発生する条件下で行うことが好ましい。オゾンにより、刺激応答性ポリマーをより効率的に分解させることができるためである。紫外線の照度としては、例えば1mW/cm
2以上1000mW/cm
2以下であり、好ましくは2mW/cm
2以上500mW/cm
2以下であり、より好ましくは10mW/cm
2以上200mW/cm
2以下であり、さらに好ましくは20mW/cm
2以上160mW/cm
2以下である。このような範囲の照度を有する紫外線は、オゾン又は活性酸素を発生させるのに好適である。また、紫外線は真空紫外線であっても良い。紫外線の発生源としては、例えば、低圧水銀ランプなどを用いることができる。紫外線処理の時間は、例えば1秒以上であり、好ましくは10秒以上である。また、紫外線処理の時間は、例えば120分以下であり、好ましくは60分以下、さらに好ましくは10分以下である。照射時間が長ければ長いほど基材そのものも劣化する可能性があるため、適度な範囲を設定することが望ましい。
【0026】
超音波処理による刺激応答性ポリマー量の減少は、超音波により生じるキャビテーションによる分解又は破壊によるものと推測される。超音波処理は、緩やかに刺激応答性層中に含まれる刺激応答性ポリマー量を減少させることができるため、より精密にポリマー量を減少させることができる。また、基材へのダメージがより少ない。そのため、処理後の刺激応答性層表面が細胞シートの形成に好ましい形態となっている。なお、これらは推測であり、本発明を制限するものではない。また、超音波処理は、簡便に広範囲処理も可能である。
【0027】
超音波処理の条件は、所望の剥離性や刺激応答性ポリマーの種類などを考慮して、適宜選択することができる。刺激応答性ポリマーの種類や刺激応答性層の膜厚、超音波処理の周波数などによって、適度な処理時間は異なる。超音波の周波数は、特に制限されるものではないが、例えば10kHz以上100kHz以下であり、好ましくは25kHz以上50kHz以下である。また、超音波の処理時間は、例えば5秒以上であり、好ましくは10秒以上である。超音波の処理時間は、例えば24時間以下であり、好ましくは60分以下である。処理時間が長ければ長いほど基材などの他の部材が劣化する可能性もあるため、適度な範囲を設定することが望ましい。
【0028】
刺激応答性層の全面が上述の処理を施されてもよく、また、刺激応答性層の一部が上述の処理を施されてもよい。刺激応答性層の膜厚は、望まれる剥離性に応じて適宜選択することができるが、0nm超100nm以下であることが好ましく、1nm以上70nm以下であることがより好ましい。この範囲とすることにより、細胞シートの剥離性を適した範囲に調整し易くなる。また、処理前と処理後の刺激応答性層の膜厚は、実質的にはほとんど変化しないものと推測される。
【0029】
刺激応答性層は、光や温度などの所定の刺激によって細胞に対する接着度合いが変化する刺激応答性ポリマーを含む層である。例えば、刺激応答性ポリマーを含む刺激応答性層は、所定の刺激によって細胞の接着度合いを変化させることにより、細胞接着性から細胞非接着性へとその性質を変化させることが可能な表面を有する。刺激応答性ポリマーとしては、例えば、温度応答性ポリマー、pH応答性ポリマー、イオン応答性ポリマー、光応答性ポリマーなどを挙げることができる。なかでも温度応答性ポリマーが、刺激の付与が容易である観点から好ましく用いられる。
【0030】
温度応答性ポリマーとしては、例えば、細胞を培養する温度では細胞接着性を示し、形成した細胞シートを剥離する時の温度では細胞非接着性を示すものを用いることができる。例えば、温度応答性ポリマーは、下限臨界溶液温度未満の温度では周囲の水に対する親和性が向上し、ポリマーが水を取り込んで膨潤して表面に細胞を接着し難くする性質(細胞非接着性)を示し、下限臨界溶液温度以上の温度ではポリマーから水が脱離することでポリマーが収縮して表面に細胞を接着しやすくする性質(細胞接着性)を示すものが好ましく用いられる。下限臨界溶液温度(T)が0℃以上80℃以下、好ましくは0℃以上50℃以下、より好ましくは37℃以下である温度応答性ポリマーを用いることが好ましい。
【0031】
好適な温度応答性ポリマーとしては、例えば、アクリル系ポリマー又はメタクリル系ポリマーが挙げられ、より具体的にはポリ−N−イソプロピルアクリルアミド(PNIPAAm)(T=32℃)、ポリ−N−n−プロピルアクリルアミド(T=21℃)、ポリ−N−n−プロピルメタクリルアミド(T=32℃)、ポリ−N−エトキシエチルアクリルアミド(T=約35℃)、ポリ−N−テトラヒドロフルフリルアクリルアミド(T=約28℃)、ポリ−N−テトラヒドロフルフリルメタクリルアミド(T=約35℃)、ポリ−N,N−ジエチルアクリルアミド(T=32℃)などが挙げられる。また、これらのポリマーを形成するためのモノマーが2種以上組み合わされて重合された共重合体であってもよい。
【0032】
これらのポリマーを形成するためのモノマーとしては、放射線照射によって重合し得るモノマーを用いることができる。モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリルアミド化合物、N−(若しくはN,N−ジ)アルキル置換(メタ)アクリルアミド誘導体、環状基を有する(メタ)アクリルアミド誘導体、ビニルエーテル誘導体などが挙げられる。モノマーは、1種を単独で使用してもよく、又は2種以上を組み合わせて使用してよい。モノマーを一種類単独で使用した場合、基材上に形成されるポリマーはホモポリマーとなり、モノマーを複数種組み合わせて使用した場合、基材上に形成されるポリマーはヘテロポリマーとなる。どちらの形態も本発明に包含される。
【0033】
温度応答性高分子は、1種以上の上記モノマーと、上記モノマー以外のさらなるモノマーとを共重合することによって形成される共重合体であってもよい。あるいは、温度応答性高分子は、1種以上の上記モノマーを重合又は共重合することによって形成される重合体又は共重合体と、さらなる重合体又は共重合体とをグラフト重合又はブロック重合することによって形成される、グラフト共重合体又はブロック共重合体であってもよい。あるいは、温度応答性高分子は、1種以上の上記重合体又は共重合体の混合物の形態であってもよい。これらの形態の場合、使用される材料を適宜選択することにより、Tを所望の範囲に調整することができる。
【0034】
また、増殖細胞の種類によって、Tを調節する必要がある場合などには、上記モノマー以外の他のモノマーを更に加えて共重合してよい。
【0035】
pH応答性ポリマー又はイオン応答性ポリマーは形成しようとする細胞シートに適したものを適宜選択することができる。
【0036】
細胞接着性及び細胞非接着性は、一の領域と他の領域における細胞の接着度合いの相対的な関係を示すものである。細胞接着性とは、細胞が接着しやすいことをいう。細胞接着性は、表面の化学的性質や物理的性質などによって細胞の接着や伸展が起こりやすいか否かで決定される。刺激応答性層の細胞接着性を判断する指標として、実際に細胞培養した際の細胞接着伸展率を用いることができる。細胞接着性の表面は、細胞接着伸展率が60%以上の表面であることが好ましく、細胞接着伸展率が80%以上の表面であることがより好ましい。細胞接着伸展率が高いと、効率的に細胞を培養することができる。本実施形態における細胞接着伸展率は、播種密度が4000cells/cm
2以上30000cells/cm
2未満の範囲内で培養しようとする対象細胞を測定対象表面に播種し、37℃、CO
2濃度5%のインキュベーター内に保管し、14.5時間培養した時点で接着伸展している細胞の割合({(接着している細胞数)/(播種した細胞数)}×100(%))と定義する。細胞の播種は、10%FBS入りDMEM培地に懸濁させて測定対象物上に播種し、その後、細胞ができるだけ均一に分布するよう、細胞が播種された測定対象物をゆっくりと振とうすることにより行う。さらに、細胞接着伸展率の測定は、測定直前に培地交換を行って接着していない細胞を除去した後に行う。細胞接着伸展率の測定では、細胞の存在密度が特異的になりやすい箇所(例えば、存在密度が高くなりやすい所定領域の中央、存在密度が低くなりやすい所定領域の周縁)を除いた箇所を測定箇所とする。
【0037】
一方、細胞非接着性とは、細胞が接着し難い性質をいう。細胞非接着性は、表面の化学的性質や物理的性質などによって細胞の接着や伸展が起こり難いか否かで決定される。細胞非接着性の表面は、上記で定義した細胞接着伸展率が60%未満の表面であることが好ましく、40%未満の表面であることがより好ましく、5%以下の表面であることが更に好ましく、2%以下の表面であることが特に好ましい。
【0038】
刺激応答性ポリマーは、1種を単独で用いてもよく、複数種を混合して用いてもよい。
【0039】
刺激応答性層は、上記刺激応答性ポリマーを主成分として含む。刺激応答性層における刺激応答性ポリマーの含有量は、刺激応答性層の総固形分中、50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることがさらに好ましく、95質量%以上であることが特に好ましく、100質量%であることがより特に好ましい。刺激応答性層は、上記刺激応答性ポリマーの他に、添加剤などを含んでもよい。添加剤としては、例えば、他の高分子、可塑剤などが挙げられる。
【0040】
刺激応答性層は、基材の上に配置されることが好ましい。基材は、細胞培養容器の外壁の少なくとも一部を構成していてもよい。また、刺激応答性層は、細胞培養容器の底部の略全体に形成されていてもよく、また、細胞培養容器の底部の一部に形成されていてもよい。
【0041】
基材表面に刺激応答性層を形成する方法としては、特に制限されるものではないが、例えば、浸漬法、スプレー法、スピンコート法等により基材表面にポリマー液を配置した後、溶媒を除去(乾燥)する方法が挙げられる。ポリマー液は、均一性の観点から、バーコータを用いて塗布することが好ましい。
【0042】
基材の材料は、特に制限されるものではなく、例えば、ガラス又はプラスチックを用いることができる。プラスチックとしては、例えば、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、環状ポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、シリコーン樹脂、又はアクリル樹脂が挙げられる。アクリル樹脂としては、汎用性の観点から、ポリメチルメタクリレート(PMMA)が好ましい。
【0043】
基材は細胞接着性を有することが好ましい。基材が細胞接着性を有する場合、刺激応答性層への細胞の接着性を向上することができる。この場合、刺激応答性層が薄いほど、刺激応答性層への細胞の接着性に対する基材の細胞接着性の影響が大きくなる傾向がある。なお、基材の細胞接着性は、例えば、基材上に対象細胞を播種し、対象細胞が基材に接着して増殖するか否かを調べることで判断することができる。
【0044】
基材は、細胞接着性の観点から、親水性処理面を有するプラスチックを含んで構成されることが好ましい。プラスチックとしては、例えば、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、環状ポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリイミド、シリコーン、又はアクリルなどが挙げられる。親水性処理は、プラスチックの表面を親水性に改質できる処理であれば特に制限されるものではない。そのような表面処理としては、例えば、コロナ放電処理、プラズマ処理、UVオゾン処理、電子線照射処理、又はレーザー処理などが挙げられる。親水性処理面を有する基材は、市販されているものを用いてもよく、例えば、NuncTM細胞培養ディッシュ(商品名、Thermo Fisher Scientific社製)、Falconセルカルチャーディッシュ(Corning社製)、細胞培養用シャーレ(住友ベークライト社製)、又は組織培養用ディッシュ(旭硝子社製)として市販されている。また、親水性処理面を有する基材は、例えば、親水性処理が施されていない未処理のプラスチック製の基材に親水性処理を施すことにより用意することもできる。未処理の基材としては、例えば、NuncTMペトリディッシュ(商品名、Thermo Fisher Scientific社製)、Falconペトリディッシュ(Corning社製)、浮遊培養用シャーレ(住友ベークライト社製)、又は無処理ディッシュ(旭硝子社製)を用いることができる。親水性処理により、プラスチック表面に存在する親水性官能基(例えばヒドロキシ基やカルボニル基)が増えるものと考えられる。本実施形態において、プラスチック製の基材の表面が親水性処理されることにより、細胞の接着性を向上させることができる。基材の表面が親水性処理されていることにより、培養液中に含まれるタンパク質などの細胞間マトリックスの材料となる栄養素が接着面に集まり易くなり、結果として、未処理の基材を用いる場合に比べて細胞の接着性が向上するものと考えられる。
【0045】
なお、基材の細胞接着性の度合いに関し、以下に記載される方法に従って測定される基材表面の細胞接着率が、20%以上であることが好ましく、30%以上であることがより好ましく、40%以上であることがさらに好ましく、50%以上であることが特に好ましい。
【0046】
細胞接着率の測定方法:まず、対象細胞を、1.0×10
3cells/cm
2以上1.0×10
5cells/cm
2以下(例えば1.0×10
4cells/cm
2)の範囲の播種密度で培養面上に播種する。播種密度に関しては、培養面上で細胞がコンフルエントに到達した際に存在する密度よりも少ない播種密度に設定する。また、播種溶液中の細胞濃度は1.0×10
3cells/cm
3以上1.0×10
6cells/cm
3以下であることが好ましい。次に、対象細胞の培養における通常の条件(例えば、37℃、約5%のCO
2濃度、静置)下で培養する。培養時間は、例えば、1時間以上10時間以下であり、好ましくは2時間以上8時間以下であり、より好ましくは4時間以上6時間以下である(例えば3、4又は5時間)。培養後、培地を除去し、培養容器をバッファー(例えばPBSバッファー)で洗浄する。その後、培養面上の接着細胞数をカウントし、得られた細胞数を接着細胞数と定義する。そして、細胞接着率(%)を、式:[(接着細胞数/細胞播種数)×100]によって算出する。接着細胞数の計測方法としては、例えば、接着細胞をトリプシン処理して培養面から剥離させた後、培地で細胞懸濁液を調製し、血球計算盤で細胞数をカウントする方法が挙げられる。
【0047】
細胞接着率の測定において、細胞を培養する培地及び外部環境(例えば、温度、湿度、光周期又はCO
2濃度)等の培養条件は、使用される細胞の種類に基づき、当該技術分野で通常使用される培養条件を適宜選択することができる。細胞接着率及び倍加時間の測定において、実際に細胞集合体を形成するための培養条件と同様の条件を採用することが好ましい。
【0048】
基材は、細胞培養容器の外壁を構成する材料として用いられていてもよい。細胞培養容器の形状は、特に制限されるものではなく、所望の細胞シートの形状を考慮して適宜選択することができる。細胞培養容器の形状は、例えば、シャーレ、フラスコ、ビーカー、ウェルプレートなどの形状であり得る。
図1(A)において、基材2は外壁の側壁及び底壁を構成している。容器の内部空間(培養部)には培養液が配置される。また、
図1(A)には図示していないが、細胞培養容器は、適切な大きさの蓋を有することができる。細胞培養容器は、該蓋で閉じられた際に、液密になることが好ましい。
【0049】
本発明の一形態は、上述の本実施形態に係る方法により剥離性が調整された刺激応答性層上で細胞を培養して細胞シートを形成する工程を含む、細胞シートの製造方法に関する。
【0050】
上述の本実施形態に係る方法により剥離性が調整された刺激応答性層上で細胞を培養することで、適当な範囲に調整された剥離性を有する細胞シートを得ることができる。
【0051】
細胞シートの形成において、細胞を刺激応答性層に播種した後、培養により細胞を増殖させ、コンフルエントに到達させることが好ましい。本明細書において、「コンフルエント」とは、細胞が培養面を覆った状態を言う。
【0052】
本実施形態において、刺激応答性層の表面が、細胞が培養される表面である培養面となることが好ましい。つまり、細胞は刺激応答性層の表面に接着することが好ましい。
【0053】
細胞は、所定の細胞充填率が10%以下となるように細胞を培養面上に播種することが好ましい。細胞充填率(%)は、式:[(細胞断面積×播種細胞数/培養面面積)×100]で表される。細胞断面積とは、液中に存在する接着していない細胞(浮遊している細胞)における最大断面積(細胞の断面のうち面積が最大となる断面の断面積)である。通常、細胞は液中で球状であるため、細胞断面積は、一般的に、細胞の中心を通る断面の面積である。細胞充填率の測定において使用する液は、好ましくは細胞シートの製造(培養工程)に用いる培養液である。細胞の直径は、液中の細胞を顕微鏡で観察することにより測定することができる。同一種類の各細胞は、液中においてほぼ同じ径を有するため、複数の細胞の径を測定する必要はないが、好ましくは10〜100個の細胞の平均径を用いて細胞断面積を算出する。細胞培養容器の底部表面の略全体に刺激応答性層が形成されていることが好ましい。
【0054】
細胞の培養時間は、特に制限されるものではなく、細胞シートが形成されるまで培養することができる。細胞シートを形成するためには、播種された細胞が隣接する細胞間に細胞外マトリックスを形成することが必要となる。
【0055】
対象細胞は、特に制限されるものではなく、細胞シートを形成可能な細胞であれば特に制限なく用いることができる。対象細胞は、例えば、接着性細胞である。接着性細胞としては、例えば、肝臓の実質細胞である肝細胞、クッパー細胞、血管内皮細胞や角膜内皮細胞などの内皮細胞、線維芽細胞、骨芽細胞、砕骨細胞、歯根膜由来細胞、表皮角化細胞などの表皮細胞、気管上皮細胞、消化管上皮細胞、子宮頸部上皮細胞、角膜上皮細胞などの上皮細胞、乳腺細胞、ペリサイト、平滑筋細胞や心筋細胞などの筋細胞、筋芽細胞、腎細胞、膵ランゲルハンス島細胞、末梢神経細胞や視神経細胞などの神経細胞、軟骨細胞、又は骨細胞などが挙げられる。これらの細胞は、組織や器官から直接採取した初代細胞でもよく、或いは、それらを何代か継代させたものでもよい。さらにこれらの細胞は、未分化細胞である胚性幹細胞、多分化能を有する間葉系幹細胞などの多能性幹細胞、単分化能を有する血管内皮前駆細胞などの単能性幹細胞、分化が終了した細胞の何れであってもよい。また、細胞は単一種を培養してもよいし、二種以上の細胞を共培養してもよい。
【0056】
培養液は、特に制限されるものではなく、例えば、当該技術分野で一般的に用いられる細胞培養用培地を用いることができる。培地としては、例えば、用いる細胞の種類に応じて、MEM培地、BME培地、DME培地、αMEM培地、IMDM培地、ES培地、DM−160培地、Fisher培地、F12培地、WE培地及びRPMI1640培地などの基礎培地を用いることができる。基礎培地は、例えば、朝倉書店発行「日本組織培養学会編 組織培養の技術第三版」581頁に記載されている。さらに、基礎培地に血清(ウシ胎児血清など)、各種増殖因子、抗生物質、アミノ酸などを加えてもよい。また、Gibco無血清培地(インビトロジェン社)などの市販の無血清培地も用いることができる。最終的に得られる細胞シートの臨床応用を考えると、動物由来成分を含まない培地を使用することが好ましい。
【0057】
形成された細胞シートは、所定の刺激を刺激応答性層に与えることにより、刺激応答性層から剥がすことができる。また、必要に応じて、意図的な揺動やピペッティングによる水流を細胞シートに与えることによって細胞シートを刺激応答性層から剥がしてもよい。また、ピンセットなどの器具を用いて細胞シートの端部を摘まんで剥離してもよい。例えば、刺激応答性ポリマーとして温度応答性ポリマーを用いた場合、容器温度を下限臨界溶液温度未満に冷却することにより、細胞シートを刺激応答性層から剥がすことができる。
【0058】
本実施形態の細胞シートの製造方法によれば、適当な範囲に調整された剥離性を有する細胞シートを得ることができる。そのため、細胞シートを容器から回収し易くかつ所望の用途に用い易い細胞シートを得ることができる。細胞シートを回収する水性媒体としては、回収の目的に応じて適宜選択される水性媒体を用いることができる。得られる細胞シートは、例えば、再生医療に利用することができる。
【0059】
本発明の一形態は、上述の本実施形態に係る方法を応用した細胞培養容器の製造方法である。すなわち、本発明の一形態は、細胞シートを形成するための細胞培養容器の製造方法であって、刺激応答性ポリマーを含む刺激応答性層を形成する層形成工程と、前記刺激応答性層中の前記刺激応答性ポリマーの量を減少させる剥離性調整工程と、を含む、細胞培養容器の製造方法に関する。本実施形態により、適当な範囲に調整された剥離性を有する細胞シートを得ることができる細胞培養容器を作製することができる。
【0060】
基材面上に、刺激応答性層を形成する方法としては、例えば、以下の方法が挙げられる。まず、重合により刺激応答性ポリマーとなる上述のモノマーを溶媒に溶解させた刺激応答性層形成用塗工液を調製する。次に、慣用の方法にしたがって、該塗工液を基材の表面に塗工して塗膜を形成させる。その後、放射線照射などの適当な手段により塗膜中のモノマーを重合させ、ポリマーを形成させるとともに、基材の表面とポリマーとの間にグラフト化反応を生じさせることにより、刺激応答性層を形成する。
【0061】
刺激応答性層形成用塗工液を調製する際に使用する溶媒は、モノマーを溶解しうるものであれば特に限定されないが、常庄下において沸点120℃以下、特に60℃以上110℃以下のものが好ましい。具体的にはメタノール、エタノール、n−プロパノール、2−プロパノール、n−ブタノール、2−ブタノール、水などが挙げられ、これらは組み合わせて使用してもよい。その他の溶媒、例えば1−ペンタノール、2−エチル−1−ブタノール、2−ブトキシエタノール、及びエチレン(若しくはジエチレン)グリコール又はそのモノエチルエーテルなども使用可能である。必要に応じて、上記溶液にはその他添加剤を配合してもよい。
【0062】
刺激応答性層形成用塗工液中のモノマーの含有量は、1重量%以上70重量%以下であることが好ましい。また、塗布用組成物中には、モノマーに加えて、複数個のモノマーが重合したオリゴマー又はプレポリマーが含まれてもよい。オリゴマー又はプレポリマーが含まれる場合には、その大きさは、ダイマー以上のものであれば特に限定されず、分子量約3,300より大きいものが好ましく、分子量5,700以上のものがより好ましい。
【0063】
刺激応答性層形成用塗工液を基材の表面に塗工する方法は、特に限定されず、従来公知の方法を用いることができる。例えば、グラビア印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法などの印刷による方法、ロールコート、リバースコート、コンマコート、ナイフコート、ダイコート、グラビアコートなどのコーティングによる方法が挙げられる。
【0064】
刺激応答性層には、その機能を損なわない範囲で、界面活性剤などの各種添加剤が配合されていてもよい。
【0065】
モノマーを重合させるために使用する放射線としては、例えば、α線、β線、γ線、電子線、紫外線などが挙げられる。所望のグラフトポリマーを作製するために、エネルギー効率が良い点においてγ線と電子線が好ましく、特に、生産性の面では電子線が好ましい。紫外線は、適当な重合開始剤やシランカップリング剤などのアンカー剤と組合せることで使用できる。放射線の線量の範囲は、電子線であれば5Mrad以上50Mrad以下が好ましく、γ線であれば0.5Mrad以上5Mrad以下が好ましい。照射工程前後に、必要に応じて塗膜を乾燥させ、上記溶媒を除去する。
【0066】
このようにして形成された刺激応答性層を、必要に応じて洗浄してもよい。グラフト重合後の刺激応答性層の表面上には、共有結合により固定化されたポリマー分子だけでなく、固定化されていない遊離のポリマー分子や、未反応のモノマーなどが存在していると考えられる。洗浄によれば、これら遊離ポリマーや未反応物を除去することができるので好ましい。ここで、洗浄方法は特に限定されないが、典型的には浸漬洗浄、揺動洗浄、シャワー洗浄、スプレー洗浄などが挙げられる。また洗浄液としては、典型的には各種水系、アルコール系、炭化水素系、塩素系、酸・アルカリ洗浄液が挙げられる。
【0067】
基材上に形成した刺激応答性層は、上述の実施形態に係る方法により処理される。これにより、後工程で形成される細胞シートの剥離性を調整することができる。上記処理後、水洗等の洗浄工程を追加しても良い。
【0068】
その後、必要に応じて、エタノール滅菌、エチレンオキサイドガス(EOG)滅菌、γ線照射滅菌などの滅菌処理を施すことができる。これらのなかでも、γ線照射滅菌は、全生物種を死滅させられるという点で好適である。
【0069】
以上のようにして、細胞培養容器を製造することができる。
【実施例】
【0070】
以下、本発明について実施例を参照して説明する。なお、本発明は以下の実施例により限定されるものではない。
【0071】
(実施例1)
ポリイソプロピルアクリルアミド(ポリマーソース社製、品番:P3241)が1wt%、イソプロピルアクリルアミドモノマーが40wt%になるようイソプロピルアルコールに溶解した溶液0.1mLを、水平に静置したBD社製ペトリディッシュに、室温25℃、湿度60%で添加し、ディッシュ底面を溶液で被覆した。次に、溶液0.1mLで底面を被覆したペトリディッシュに電子線を2回に分けて照射した。照射量を初回5Mrad、2回目25Mradとした。電子線照射後、5℃のイオン交換水を用いて、ペトリディッシュを洗浄し、残留モノマーおよびペトリディッシュ表面に結合していないポリマーを取り除いた。その後、クリーンベンチ内で乾燥させ、さらにエチレンオキサイド(EO)ガス滅菌を行い、さらに十分に脱気を行うことにより、細胞培養容器を得た。
【0072】
次に、刺激応答性層の表面に、UV/オゾン洗浄機(あすみ技研社製)を使用して紫外線(UV強度:100mW/cm
2、低圧水銀ランプ)を1分間照射した。
【0073】
次に、処理された刺激応答性層を有する基材上に内径18mmφのポリカーボネート製リングを接着して細胞培養容器E1を作製した。
【0074】
次に、作製した細胞培養容器E1にマウス線維芽細胞を1×10
6cells/cm
2となるよう播種した。そして、培地として20%FBS/DMEMを用い、37℃、5%CO
2の条件下で細胞を24時間培養し、細胞シートを得た。
【0075】
(実施例2)
紫外線照射の時間を3分間としたこと以外は、実施例1と同様にして細胞培養容器E2を作製した。そして、この細胞培養容器E2を用いて実施例1と同様に細胞シートを得た。
【0076】
(実施例3)
紫外線照射の時間を10分間としたこと以外は、実施例1と同様にして細胞培養容器E3を作製した。そして、この細胞培養容器E3を用いて実施例1と同様に細胞シートを得た。
【0077】
(比較例1)
紫外線照射処理を行わなかったこと以外は、実施例1と同様にして細胞培養容器を作製した。そして、この細胞培養容器を用いて実施例1と同様に細胞シートを得た。
【0078】
(評価)
実施例1〜3及び比較例1において形成した細胞シートについて、刺激応答性層からの剥離性を評価した。剥離性は、細胞シートが形成されている細胞培養容器に低温処理(処理温度:20℃)を施し、この低温処理を開始してから細胞シートが刺激応答性層から完全に剥がれて培養液中に浮遊するまでの時間を測定することにより評価した。
【0079】
紫外線照射処理を行わなかった比較例1では、細胞シートは15分で完全に剥離した。一方、紫外線照射処理を行った実施例1(紫外線照射時間:1分)では、細胞シートが完全に剥がれるまで30分程度かかり、実施例2(紫外線照射時間:3分)では、細胞シートが完全に剥がれるまで30分〜45分程度かかった。また、実施例3(紫外線照射時間:10分)では、60分経っても細胞シートは剥離しなかった。
【0080】
以上より、紫外線照射処理により、形成される細胞シートの剥離性を低下できることを確認した。
【0081】
また、実施例1の紫外線処理前の細胞培養容器(処理前)、実施例1〜3で作製した細胞培養容器E1〜E3について、それぞれ紫外線処理後の刺激応答性層についてXPSスペクトルを取得した。XPSによって得られた各元素総量を100%とした時のN元素の濃度を記したグラフを
図2に示す。
図2より、紫外線照射時間が長くなるにつれてN濃度が減少していることを確認した。これにより、刺激応答性層の刺激応答性ポリマー量が減少していることが確認された。