(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1コンデンサの静電容量は前記第2コンデンサの静電容量以上であるとともに、前記第1コンデンサの定格電圧は前記第2コンデンサの定格電圧以上である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の電源装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、上記特許文献1に記載の電流遮断装置では、両極性に対応可能なコンデンサを備える必要がある。ここで、一般的に、両極性に対応可能なコンデンサは、一方の極性のみに対応可能なコンデンサに比べて、容量あたりの大きさが大きい。このため、両極性に対応可能なコンデンサを備えることによって、装置が大型化するという問題点がある。
【0008】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、装置の大型化の抑制を図ることが可能な電源装置および遮断スイッチ回路を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、この発明の一の局面による電源装置は、負荷に電力を供給する電源と、電源と負荷との間に設けられる主回路スイッチと、主回路スイッチに並列に接続され、第1コンデンサを含む第1転流回路と、主回路スイッチおよび第1転流回路の各々に並列に接続され、第2コンデンサを含む第2転流回路と、第1転流回路および第2転流回路の各々に対して共通に直列接続される共振リアクトルと、を備え、主回路スイッチに所定の電流値よりも大きい過電流が流れた場合に、第1コンデンサを放電することにより過電流を打ち消す方向に重畳電流を主回路スイッチに流した後に、重畳電流により共振リアクトルに蓄積されたエネルギーを第2コンデンサに充電するように構成されている。
【0010】
この発明の第1の局面による電源装置では、上記のように、第1コンデンサを放電することにより重畳電流を流すとともに、共振リアクトルに蓄積されたエネルギーを第2コンデンサに充電することにより、第1コンデンサおよび第2コンデンサの各々が、重畳電流を流すための放電、および、共振リアクトルからのエネルギーの充電のうちのいずれか一方のみを行うように構成することができる。これにより、第1コンデンサおよび第2コンデンサの各々を、上記充電および放電の両方に対応可能にするために両極性対応のコンデンサにより構成する必要がない。すなわち、第1コンデンサおよび第2コンデンサの各々を、一方の極性に対応可能なコンデンサにより構成することができる。ここで、一般的に、両極性に対応可能なコンデンサの容量と一方の極性に対応可能なコンデンサの容量とが等しい場合では、一方の極性に対応可能なコンデンサの大きさは、両極性に対応可能なコンデンサの大きさの半分よりも小さい。したがって、第1コンデンサおよび第2コンデンサの各々を、一方の極性に対応可能なコンデンサにより構成することによって、電源装置の大型化の抑制を図ることができる。
【0011】
また、共振リアクトルを、第1転流回路および第2転流回路の各々に対して共通に設けることによって、第1転流回路および第2転流回路の各々に個別に共振リアクトルが設けられている場合に比べて、電源装置の構成を簡略化することができるとともに、部品点数の増加を抑制することができる。
【0012】
上記第1の局面による電源装置において、好ましくは、第1転流回路は、転流回路用スイッチを含み、主回路スイッチに過電流が流れた場合に、転流回路用スイッチをオンすることによって重畳電流を主回路スイッチに流すとともに、転流回路用スイッチをオフすることによって共振リアクトルに蓄積されたエネルギーを第2コンデンサに充電するように構成されている。このように構成すれば、転流回路用スイッチのオンオフを切り替えることによって、重畳電流を主回路スイッチに流すタイミング、および、共振リアクトルに蓄積されたエネルギーを消費する(第2コンデンサに充電する)タイミングを容易に制御することができる。
【0013】
この場合、好ましくは、重畳電流がピーク値に到達するまでに、転流回路用スイッチをオン状態からオフ状態に切り替えるように構成されている。ここで、重畳電流がピーク値に到達した場合は、第1コンデンサの充電がすべて放電された場合である。このため、重畳電流がピーク値に到達した後も転流回路用スイッチのオン状態が継続された場合は、(共振リアクトルより重畳電流が維持されるので)第1コンデンサが放電前と逆電圧で充電されてしまう。したがって、重畳電流がピーク値に到達するまでに、転流回路用スイッチをオン状態からオフ状態に切り替えることによって、第1コンデンサが放電前と逆電圧で充電されるのを抑制することができる。
【0014】
上記第1の局面による電源装置において、好ましくは、第2転流回路は、ダイオードを含み、ダイオードのアノードは、第2コンデンサと接続されているとともに、ダイオードのカソードは、第1コンデンサから主回路スイッチに向かって重畳電流が流れる配線に接続されている。このように構成すれば、第1コンデンサからの重畳電流が第2コンデンサ側に漏れるのを抑制することができるので、重畳電流によって主回路スイッチに流れる過電流を打ち消すのをより効率的に行うことができる。
【0015】
上記第1の局面による電源装置において、好ましくは、第1コンデンサの静電容量は第2コンデンサの静電容量以上であるとともに、第1コンデンサの定格電圧は第2コンデンサの定格電圧以上である。ここで、コンデンサが保有可能なエネルギーは、コンデンサの静電容量および定格電圧の各々が大きいほど大きくなる。したがって、第1コンデンサの静電容量が第2コンデンサの静電容量以上であるとともに、第1コンデンサの定格電圧が第2コンデンサの定格電圧以上であることによって、第1コンデンサが保有可能なエネルギーを第2コンデンサが保有可能なエネルギーよりも大きくすることができる。その結果、第1コンデンサから放電するとともに第2コンデンサに充電する過程において、第1コンデンサのエネルギーが消費尽くされる(充電が放電し尽くされる)のを抑制することができる。これにより、第1コンデンサに放電前と逆電圧が印加されるのをより効果的に抑制することができる。
【0016】
上記第1の局面による電源装置において、好ましくは、電源装置内の直流回路用の平滑コンデンサをさらに備え、平滑コンデンサは、第1コンデンサを兼ねる。このように構成すれば、平滑コンデンサとは別個に第1コンデンサを設ける場合に比べて、部品点数の増加を抑制することができる。
【0017】
この場合、好ましくは、第1コンデンサは、電源装置内の直流回路からの電力により充電されている。このように構成すれば、電源装置内の直流回路からの電力を流用して第1コンデンサを充電することができる。その結果、第1コンデンサの充電専用の回路が設けられる場合に比べて、部品点数の増加を抑制することができる。
【0018】
上記第1の局面による電源装置において、好ましくは、第1コンデンサおよび第2コンデンサは、有極性のコンデンサであって、順極性に充電される。このように構成すれば、有極性のコンデンサ(一方の極性に対応可能なコンデンサ)は、一般的に、両極性に対応可能なコンデンサよりも比較的小さいので、電源装置の大型化の抑制を容易に図ることができる。また、第1コンデンサおよび第2コンデンサの各々が順極性に充電されることによって、第1コンデンサおよび第2コンデンサの一方が順極性に充電され、他方が逆極性に充電される場合とは異なり、第1コンデンサおよび第2コンデンサを同種類のコンデンサにより構成することができる。その結果、部品種類の増加を抑制することができる。
【0019】
この発明の第2の局面による遮断スイッチ回路は、電源と負荷との間に設けられる主回路スイッチと、主回路スイッチに並列に接続され、第1コンデンサを含む第1転流回路と、主回路スイッチおよび第1転流回路の各々に並列に接続され、第2コンデンサを含む第2転流回路と、第1転流回路および第2転流回路の各々に対して共通に直列接続される共振リアクトルと、を備え、主回路スイッチに所定の電流値よりも大きい過電流が流れた場合に、第1コンデンサを放電することにより過電流を打ち消す方向に重畳電流を主回路スイッチに流した後に、重畳電流により共振リアクトルに蓄積されたエネルギーを第2コンデンサに充電するように構成されている。
【0020】
この発明の第2の局面による遮断スイッチ回路では、上記のように、第1コンデンサを放電することにより重畳電流を流すとともに、共振リアクトルに蓄積されたエネルギーを第2コンデンサに充電することにより、第1コンデンサおよび第2コンデンサの各々が、重畳電流を流すための放電、および、共振リアクトルのエネルギーの充電のうちのいずれか一方のみを行うように構成することができる。その結果、第1コンデンサおよび第2コンデンサの各々を、一方の極性に対応可能なコンデンサにより構成することができるので、遮断スイッチ回路の大型化の抑制を図ることができる。
【0021】
また、共振リアクトルを、第1転流回路および第2転流回路の各々に対して共通に設けることによって、第1転流回路および第2転流回路の各々に個別に共振リアクトルが設けられている場合に比べて、遮断スイッチ回路の構成を簡略化することができるとともに、部品点数の増加を抑制することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、上記のように、装置の大型化の抑制を図ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。
【0025】
[実施形態]
図1〜
図7を参照して、本実施形態による電源装置100および遮断スイッチ回路200の構成について説明する。なお、電源装置100として、無停電電源装置または自動切換装置などが例として挙げられる。なお、後述する交流電源1は3相の交流電源であるが、
図1、および、
図3〜
図9では概略的に図示している。
【0026】
(電源装置の構成)
まず、
図1を参照して、電源装置100および遮断スイッチ回路200の概略の構成について説明する。
図1に示すように、電源装置100は、負荷300に電力を供給する交流電源1を備える。また、電源装置100(遮断スイッチ回路200)は、交流電源1と負荷300との間に設けられる主回路スイッチ2を備える。主回路スイッチ2は、機械式スイッチである。また、電源装置100(遮断スイッチ回路200)には、主回路スイッチ2に過大な電圧が発生することを抑制するために、主回路スイッチ2に並列に接続されるサージアブソーバ2aが設けられている。なお、交流電源1は、特許請求の範囲の「電源」の一例である。
【0027】
また、電源装置100(遮断スイッチ回路200)は、主回路スイッチ2に並列に接続される転流回路3を備える。転流回路3は、転流コンデンサ3aと、充電回路3bと、スイッチ3cとを含む。充電回路3bは、転流コンデンサ3aに並列に接続されており、転流コンデンサ3aを充電する。充電回路3bには、外部の電源等から電力が供給されている。また、転流コンデンサ3aとスイッチ3cとは直列に接続されている。具体的には、スイッチ3cは交流電源1側に配置され、転流コンデンサ3aは負荷300側に配置されている。なお、スイッチ3cは、機械式スイッチである。また、転流回路3は、転流コンデンサ3aと充電回路3bとの間に設けられるダイオード3dを含む。ダイオード3dのカソードが転流コンデンサ3aの正電極端子(
図1において+と表記)に接続され、ダイオード3dのアノードが充電回路3bに接続されている。ダイオード3dにより、充電回路3bから転流コンデンサ3aへの充電電流が充電回路3b側に逆流するのを抑制することが可能である。なお、転流回路3および転流コンデンサ3aは、それぞれ、特許請求の範囲の「第1転流回路」および「第1コンデンサ」の一例である。また、スイッチ3cは、特許請求の範囲の「転流回路用スイッチ」の一例である。
【0028】
転流コンデンサ3aは、負荷300側(スイッチ3cに接続されている側とは反対側)の端子が正電極端子となるように配置されている。転流コンデンサ3aの正電極端子には、充電回路3bにより正電圧が印加(正電荷が充電)されている。なお、転流コンデンサ3aは、たとえば、アルミ電解コンデンサである。
【0029】
また、電源装置100(遮断スイッチ回路200)は、主回路スイッチ2および転流回路3の各々に並列に接続される副転流回路4を備える。副転流回路4は、副転流コンデンサ4aと、放電回路4bと、ダイオード4cとを含む。放電回路4bは、副転流コンデンサ4aに並列に接続されており、副転流コンデンサ4aの充電電圧を放電するために設けられている。これにより、副転流コンデンサ4aが電気的ストレスにより劣化するのを抑制することが可能である。また、副転流コンデンサ4aとダイオード4cとは直列に接続されている。具体的には、副転流コンデンサ4aは交流電源1側に配置され、ダイオード4cは負荷300側に配置されている。なお、副転流回路4および副転流コンデンサ4aは、それぞれ、特許請求の範囲の「第2転流回路」および「第2コンデンサ」の一例である。
【0030】
副転流コンデンサ4aは、交流電源1側(ダイオード4cに接続されている側とは反対側)の端子が正電極端子(
図1において+と表記)となるように配置されている。また、副転流コンデンサ4aの負荷300側(負電極側)の端子は、ダイオード4cのアノードに接続されている。なお、副転流コンデンサ4aは、たとえば、アルミ電解コンデンサである。
【0031】
ここで、本実施形態では、転流コンデンサ3aおよび副転流コンデンサ4aは、有極性のコンデンサであって、順極性に充電される。すなわち、転流コンデンサ3aおよび副転流コンデンサ4aの各々は、正電極端子(
図1において+と表記)に対してのみ充電可能に構成されている。
【0032】
また、本実施形態では、転流コンデンサ3aの静電容量は副転流コンデンサ4aの静電容量よりも大きい。また、転流コンデンサ3aの定格電圧は副転流コンデンサ4aの定格電圧よりも大きい。すなわち、転流コンデンサ3aが保有可能なエネルギーは、副転流コンデンサ4aが保有可能なエネルギーよりも大きい。
【0033】
また、本実施形態では、ダイオード4cのカソードは、転流コンデンサ3aから主回路スイッチ2に向かって重畳電流(後述)が流れる配線5に接続されている。具体的には、ダイオード4cのカソードは、転流コンデンサ3a(正電極側)とサイリスタ7(後述)との間の接続点Aに接続されている。
【0034】
また、電源装置100(遮断スイッチ回路200)は、転流回路3および副転流回路4の各々に対して共通に直列接続される単一の共振リアクトル6を備える。具体的には、共振リアクトル6は、交流電源1とスイッチ3cとの間で、かつ、交流電源1と副転流コンデンサ4aの正電極端子との間に配置されている。
【0035】
また、電源装置100(遮断スイッチ回路200)には、転流回路3および副転流回路4の各々に対して共通に直列接続される単一のサイリスタ7が設けられている。具体的には、サイリスタ7のカソードは、主回路スイッチ2に接続されている。また、サイリスタ7のアノードは、転流コンデンサ3a(正電極側)およびダイオード4c(カソード)と接続されている。
【0036】
また、電源装置100(遮断スイッチ回路200)には、負荷300側に向かって流れる電流値を検出する検出器8が設けられている。
【0037】
ここで、本実施形態では、電源装置100(遮断スイッチ回路200)は、主回路スイッチ2に所定の電流値よりも大きい事故電流(
図4参照)が流れた場合に、転流コンデンサ3aを放電することにより事故電流を打ち消す方向に重畳電流(
図5参照)を主回路スイッチ2に流す。その後、電源装置100(遮断スイッチ回路200)は、重畳電流により共振リアクトル6に蓄積されたエネルギーを副転流コンデンサ4aに充電する。事故電流とは、負荷300側の配線に短絡事故が発生した場合などに、事故点(
図4参照)に向かって流れる電流のことである。事故電流は、電源装置100の通常動作時に流れる電流値よりも大きいので、検出器8の検出値が所定の電流値(検出器8に設定されたしきい値)よりも大きくなる場合がある。この場合、検出器8の検出結果に基づいて、図示しないCPUにより、重畳電流が主回路スイッチ2に流されるように制御される。以下に、
図2〜
図7を参照して、事故電流が流れた際の回路動作を詳細に説明する。なお、事故電流は、特許請求の範囲の「過電流」の一例である。
【0038】
まず、
図3に示すように、電源装置100の通常動作時においては、主回路スイッチ2を介して、交流電源1から負荷300に向かって定常電流が流れている。この場合、主回路スイッチ2はオンしている。また、スイッチ3cおよびサイリスタ7の各々はオフしている。なお、
図2では、定常電流を破線により表示している。
【0039】
図2の期間(1)は、主回路スイッチ2に定常電流が流れている期間である。この期間(1)においては、負荷300側の出力電流(
図2(a)参照)および出力電圧(
図2(b)参照)は大きく変動せず略一定である。また、期間(1)においては、転流コンデンサ3aの充電電圧(
図2(d)参照)は、初期充電量を維持したまま変動しない。
【0040】
次に、
図4に示すように、負荷300側の配線の事故点において事故が発生することにより、主回路スイッチ2を介して、交流電源1から負荷300に向かって事故電流が流れる。
図2の期間(2)は、主回路スイッチ2に事故電流のみが流れている期間である。この期間(2)においては、事故電流が発生することにより、負荷300側の出力電流(
図2(a)参照)が増大する。また、期間(2)においては、負荷300側の出力電圧(
図2(b)参照)は低下するとともに、転流コンデンサ3aの充電電圧(
図2(d)参照)は初期充電量を維持したまま変動しない。なお、
図4では、事故電流を破線により表示している。
【0041】
ここで、本実施形態では、電源装置100(遮断スイッチ回路200)は、
図5に示すように、主回路スイッチ2に事故電流が流れた場合に、スイッチ3cをオンすることによって重畳電流を主回路スイッチ2に流す。
図2の期間(3)は、主回路スイッチ2に重畳電流および事故電流が流れている期間である。具体的には、主回路スイッチ2に事故電流が流れることにより、検出器8の検出結果(電流値)が所定の電流値(検出器8に設定されたしきい値)よりも大きくなると、図示しないCPUまたは駆動装置により、スイッチ3cおよびサイリスタ7の各々にオン指令が送信される。また、スイッチ3cおよびサイリスタ7の各々にオン指令が送信されるのと同時に、主回路スイッチ2にオフ指令が送信される。
【0042】
これにより、転流コンデンサ3a(正電極側)から主回路スイッチ2に向かって重畳電流が流れる。具体的には、重畳電流は、転流コンデンサ3a、サイリスタ7、主回路スイッチ2、共振リアクトル6、および、スイッチ3cにより構成される共振回路を流れる。主回路スイッチ2を流れる重畳電流の向きは、主回路スイッチ2を流れる事故電流の向きと反対方向である。なお、この場合、ダイオード4cにより、重畳電流が副転流コンデンサ4aに流れることが防止されている。
【0043】
また、期間(3)(
図2参照)において、事故電流が重畳電流により打ち消されることにより、負荷300側の出力電流(
図2(a)参照)は低下する。また、期間(3)において、重畳電流が流れることにより共振リアクトル6の通電電流(
図2(c)参照)は増加し、転流コンデンサ3aの充電が放電されることにより転流コンデンサ3aの充電電圧(
図2(d)参照)は低下する。そして、負荷300側の出力電流(事故電流)が0Aになったことにより、スイッチ3cにオフ指令が送信される。
【0044】
ここで、本実施形態では、電源装置100(遮断スイッチ回路200)は、重畳電流がピーク値に到達するまでに、スイッチ3cをオン状態からオフ状態に切り替えるように構成されている。すなわち、スイッチ3cがオン状態からオフ状態に切り替えられる時点において、転流コンデンサ3aにはエネルギー(充電電圧)は残存している(
図2(d)参照)状態である。
【0045】
また、本実施形態では、電源装置100(遮断スイッチ回路200)は、
図6に示すように、スイッチ3cをオフすることによって共振リアクトル6に蓄積されたエネルギーを副転流コンデンサ4aに充電する。
図2の期間(4)は、共振リアクトル6に蓄積されたエネルギーが副転流コンデンサ4aに充電される期間である。具体的には、期間(3)において重畳電流により共振リアクトル6には所定のエネルギーが蓄積される。これにより、スイッチ3cがオフされることにより転流コンデンサ3aから重畳電流が流れなくなった期間(4)において、共振リアクトル6に蓄積されたエネルギーにより重畳電流が維持される。共振リアクトル6によって維持される重畳電流は、共振リアクトル6、副転流コンデンサ4a、ダイオード4c、サイリスタ7、および、主回路スイッチ2により構成される閉回路を流れる。これにより、副転流コンデンサ4a(正電極側)が重畳電流により充電される。なお、期間(4)において、サイリスタ7のゲートに入力されている信号がオフにされる。
【0046】
また、期間(4)において、共振リアクトル6の通電電流(重畳電流)(
図2(c)参照)は、ピーク値まで上昇した後に除々に低下し、0Aになる。また、期間(4)において、副転流コンデンサ4aの充電電圧(
図2(e)参照)は、共振リアクトル6により維持される重畳電流が0Aになるまで除々に増加する。なお、共振リアクトル6の通電電流(重畳電流)が0Aになることにより、ゲート信号がオフにされているサイリスタ7は、自然消弧され、オフ状態になる。
【0047】
そして、
図7に示すように、サイリスタ7がオフ状態である期間(5)(
図2参照)において、副転流コンデンサ4aに充電された電圧(
図2(e)参照)が、放電回路4bにより放電される。期間(5)において、副転流コンデンサ4aの充電電圧は0V近傍まで低下する。なお、期間(5)においては、ダイオード4cにより転流コンデンサ3aから副転流コンデンサ4a側への放電が防止されるので、転流コンデンサ3aの充電電圧(
図2(d)参照)は一定値に維持される。
【0048】
(本実施形態の効果)
本実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0049】
本実施形態では、上記のように、主回路スイッチ2に所定の電流値よりも大きい事故電流が流れた場合に、転流コンデンサ3aを放電することにより事故電流を打ち消す方向に重畳電流を主回路スイッチ2に流した後に、重畳電流により共振リアクトル6に蓄積されたエネルギーを副転流コンデンサ4aに充電するように、電源装置100を構成する。これにより、転流コンデンサ3aおよび副転流コンデンサ4aの各々が、重畳電流を流すための放電、および、共振リアクトル6からのエネルギーの充電のうちのいずれか一方のみを行うように構成することができる。その結果、転流コンデンサ3aおよび副転流コンデンサ4aの各々を、上記充電および放電の両方に対応可能にするために両極性対応のコンデンサにより構成する必要がない。すなわち、転流コンデンサ3aおよび副転流コンデンサ4aの各々を、一方の極性に対応可能なコンデンサにより構成することができる。ここで、一般的に、両極性に対応可能なコンデンサの容量と一方の極性に対応可能なコンデンサの容量とが等しい場合では、一方の極性に対応可能なコンデンサの大きさは、両極性に対応可能なコンデンサの大きさの半分よりも小さい。したがって、転流コンデンサ3aおよび副転流コンデンサ4aの各々を、一方の極性に対応可能なコンデンサにより構成することによって、電源装置100の大型化の抑制を図ることができる。
【0050】
また、共振リアクトル6を、転流回路3および副転流回路4の各々に対して共通に設けることによって、転流回路3および副転流回路4の各々に個別に共振リアクトルが設けられている場合に比べて、電源装置100の構成を簡略化することができるとともに、部品点数の増加を抑制することができる。
【0051】
また、本実施形態では、上記のように、主回路スイッチ2に事故電流が流れた場合に、スイッチ3cをオンすることによって重畳電流を主回路スイッチ2に流すとともに、スイッチ3cをオフすることによって共振リアクトル6に蓄積されたエネルギーを副転流コンデンサ4aに充電するように、電源装置100を構成する。これにより、スイッチ3cのオンオフを切り替えることによって、重畳電流を主回路スイッチ2に流すタイミング、および、共振リアクトル6に蓄積されたエネルギーを消費する(副転流コンデンサ4aに充電する)タイミングを容易に制御することができる。
【0052】
また、本実施形態では、上記のように、重畳電流がピーク値に到達するまでに、スイッチ3cをオン状態からオフ状態に切り替えるように、電源装置100を構成する。ここで、重畳電流がピーク値に到達した場合は、転流コンデンサ3aの充電がすべて放電された場合である。このため、重畳電流がピーク値に到達した後もスイッチ3cのオン状態が継続された場合は、(共振リアクトル6より重畳電流が維持されるので)転流コンデンサ3aが放電前と逆電圧で充電されてしまう。したがって、重畳電流がピーク値に到達するまでに、スイッチ3cをオン状態からオフ状態に切り替えることによって、転流コンデンサ3aが放電前と逆電圧で充電されるのを抑制することができる。
【0053】
また、本実施形態では、上記のように、副転流回路4が、ダイオード4cを含み、ダイオード4cのアノードが、副転流コンデンサ4aと接続されているとともに、ダイオード4cのカソードが、転流コンデンサ3aから主回路スイッチ2に向かって重畳電流が流れる配線5に接続されるように、電源装置100を構成する。これにより、転流コンデンサ3aからの重畳電流が副転流コンデンサ4a側に漏れるのを抑制することができるので、重畳電流によって主回路スイッチ2に流れる事故電流を打ち消すのをより効率的に行うことができる。
【0054】
また、本実施形態では、上記のように、転流コンデンサ3aの静電容量が副転流コンデンサ4aの静電容量よりも大きく、転流コンデンサ3aの定格電圧が副転流コンデンサ4aの定格電圧よりも大きくなるように、電源装置100を構成する。ここで、コンデンサに保有可能なエネルギーは、コンデンサの静電容量および定格電圧が大きいほど大きくなる。したがって、転流コンデンサ3aの静電容量が副転流コンデンサ4aの静電容量よりも大きく、転流コンデンサ3aの定格電圧が副転流コンデンサ4aの定格電圧よりも大きいことによって、転流コンデンサ3aが保有可能なエネルギーを副転流コンデンサ4aが保有可能なエネルギーよりも大きくすることができる。その結果、転流コンデンサ3aから放電するとともに副転流コンデンサ4aに充電する過程において、転流コンデンサ3aのエネルギーが消費尽くされる(充電が放電し尽くされる)のを抑制することができる。これにより、転流コンデンサ3aに放電前と逆電圧が印加されるのをより効果的に抑制することができる。
【0055】
また、本実施形態では、上記のように、転流コンデンサ3aおよび副転流コンデンサ4aが、有極性のコンデンサであって、順極性に充電されるように、電源装置100を構成する。これにより、有極性のコンデンサ(一方の極性に対応可能なコンデンサ)は、一般的に、両極性に対応可能なコンデンサよりも比較的小さいので、電源装置100の大型化の抑制を容易に図ることができる。また、転流コンデンサ3aおよび副転流コンデンサ4aの各々が順極性に充電されることによって、転流コンデンサ3aおよび副転流コンデンサ4aの一方が順極性に充電され、他方が逆極性に充電される場合とは異なり、転流コンデンサ3aおよび副転流コンデンサ4aを同種類のコンデンサにより構成することができる。その結果、部品種類の増加を抑制することができる。
【0056】
また、本実施形態では、上記のように、主回路スイッチ2に所定の電流値よりも大きい事故電流が流れた場合に、転流コンデンサ3aを放電することにより事故電流を打ち消す方向に重畳電流を主回路スイッチ2に流した後に、重畳電流により共振リアクトル6に蓄積されたエネルギーを副転流コンデンサ4aに充電するように、遮断スイッチ回路200を構成する。これにより、転流コンデンサ3aおよび副転流コンデンサ4aの各々が、重畳電流を流すための放電、および、共振リアクトル6のエネルギーの充電のうちのいずれか一方のみを行うように構成することができる。その結果、転流コンデンサ3aおよび副転流コンデンサ4aの各々を、一方の極性に対応可能なコンデンサにより構成することができるので、遮断スイッチ回路200の大型化の抑制を図ることができる。
【0057】
また、共振リアクトル6を、転流回路3および副転流回路4の各々に対して共通に設けることによって、転流回路3および副転流回路4の各々に個別に共振リアクトルが設けられている場合に比べて、遮断スイッチ回路200の構成を簡略化することができるとともに、部品点数の増加を抑制することができる。
【0058】
[変形例]
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
【0059】
たとえば、上記実施形態では、主回路スイッチとして、機械式スイッチを用いる例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、サイリスタにより構成されている主回路スイッチを用いてもよい。
【0060】
具体的には、
図8に示すように、電源装置101(遮断スイッチ回路201)には、互いに向きが反転して配置された2つのサイリスタにより構成される主回路スイッチ20が設けられている。この場合、主回路スイッチ20に並列に接続されるサージアブソーバを設ける必要はない。
【0061】
また、上記実施形態では、充電回路(3b)に外部の電源等から電力が供給されている例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、電源装置の直流回路の電力を利用して転流コンデンサを充電してもよい。
【0062】
たとえば、
図9に示すように、電源装置102(遮断スイッチ回路202)は、電源装置102内の直流回路9用の平滑コンデンサ9aを備える。この電源装置102では、平滑コンデンサ9aが転流コンデンサ3aを兼ねている。具体的には、電源装置102は、直流電源9b(たとえばバッテリ)と、チョッパ9cと、インバータ9dとを備える。チョッパ9cは、直流電源9bからの直流電圧を昇圧または降圧する。また、インバータ9dは、チョッパ9cからの直流電圧を交流電圧に変換する。平滑コンデンサ9aは、チョッパ9cおよびインバータ9dの各々に並列に接続されている。電源装置102では、平滑コンデンサ9aに充電されている電圧が放電されることにより重畳電流が流れる。これにより、平滑コンデンサ9aとは別個に転流コンデンサ3aを設ける場合に比べて、部品点数の増加を抑制することができる。
【0063】
また、この場合、平滑コンデンサ9a(転流コンデンサ3a)は、電源装置102内の直流回路9からの電力により充電されている。すなわち、平滑コンデンサ9a(転流コンデンサ3a)は、直流電源9b(チョッパ9c)または図示しない整流器等からの直流電圧を利用して充電されている。これにより、転流コンデンサ3aの充電専用の回路が設けられる場合に比べて、部品点数の増加を抑制することができる。
【0064】
また、上記実施形態では、サイリスタ(7)が1つだけ設けられている構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、複数のサイリスタが設けられていてもよい。
【0065】
たとえば、
図10に示すように、電源装置103(遮断スイッチ回路203)には、複数のサイリスタにより構成されるサイリスタブリッジ70が設けられている。具体的には、サイリスタブリッジ70は、サイリスタ70aと、サイリスタ70bと、サイリスタ70cと、サイリスタ70dとを含む。サイリスタ70aのアノードは、サイリスタ70cのカソードに接続されている。また、サイリスタ70aのカソードは、サイリスタ70bのカソードに接続されている。サイリスタ70bのアノードは、サイリスタ70dのカソードに接続されている。サイリスタ70cのアノードは、サイリスタ70dのアノードに接続されている。また、サイリスタ70aのアノードは、交流電源1および主回路スイッチ2に接続されている。また、サイリスタ70aのカソードは、共振リアクトル6に接続されている。また、サイリスタ70bのアノードは、主回路スイッチ2および負荷300に接続されている。サイリスタ70cおよびサイリスタ70dのアノードは、接続点Aに接続されている。これにより、サイリスタブリッジ70の各サイリスタのオンオフを制御することにより、重畳電流の流れる向きを反転させることが可能である。すなわち、主回路スイッチ2に流れる事故電流の向きがいずれの場合でも、重畳電流により事故電流の打ち消しを行うことが可能である。この回路は、交流電源1からの交流電圧が、単相の交流電圧である場合に有効である。
【0066】
また、上記実施形態では、サイリスタ(7)が設けられている構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、サイリスタ(7)の代わりに他の半導体スイッチ(たとえば、MOSFET(Metal−Oxide−Semiconductor Field−Effect Transistor)またはIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor))を用いてもよい。
【0067】
また、上記実施形態では、電源として交流電源を用いる例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、電源として直流電源を用いてもよい。
【0068】
また、上記実施形態では、転流回路用スイッチ(スイッチ3c)として、機械式スイッチを用いる例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、転流回路用スイッチとして、自己消弧能力を有している半導体スイッチ(たとえば、MOSFETまたはIGBT)を用いてもよい。
【0069】
また、上記実施形態では、第1コンデンサ(転流コンデンサ3a)の静電容量が第2コンデンサ(副転流コンデンサ4a)の静電容量よりも大きく、第1コンデンサ(転流コンデンサ3a)の定格電圧が第2コンデンサ(副転流コンデンサ4a)の定格電圧よりも大きい例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、第1コンデンサ(転流コンデンサ3a)の静電容量が第2コンデンサ(副転流コンデンサ4a)の静電容量と等しく、第1コンデンサ(転流コンデンサ3a)の定格電圧が第2コンデンサ(副転流コンデンサ4a)の定格電圧と等しくてもよい。また、第1コンデンサ(転流コンデンサ3a)の静電容量が第2コンデンサ(副転流コンデンサ4a)の静電容量と等しく、第1コンデンサ(転流コンデンサ3a)の定格電圧が第2コンデンサ(副転流コンデンサ4a)の定格電圧よりも大きくてもよい。また、第1コンデンサ(転流コンデンサ3a)の静電容量が第2コンデンサ(副転流コンデンサ4a)の静電容量よりも大きく、第1コンデンサ(転流コンデンサ3a)の定格電圧が第2コンデンサ(副転流コンデンサ4a)の定格電圧と等しくてもよい。